説明

超音波診断装置

【課題】操作者が設定した所望のMI値となるように超音波の送信を行なう超音波診断装置において、前記所望のMI値で超音波の送信を行なうことができるか否かを知ることができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブ2と、所定のMI値となる送信条件で前記超音波プローブ2に超音波を送信させる送受信部3と、所望のMI値を設定するMI値設定部と、前記超音波プローブによる超音波の送信によって形成される超音波ビームのフォーカス位置を設定するフォーカス位置設定部と、フォーカス位置設定部によって設定されたフォーカス位置に応じた送信条件に基づく所定のMI値m2を、前記MI値設定部によって設定された所望のMI値m1とともに表示させる表示制御部5と、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特にMI値の設定を行なう超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、被検体の体表面に超音波プローブを当接して被検体内に超音波を送信し、得られたエコー信号に基づいて画像を作成する。このような超音波診断装置において、血管に造影剤を注入して超音波の送信を行ない、そのエコー信号に基づいて作成された画像を表示する装置が、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
ここで、造影剤を用いた超音波撮影においては、操作者が所望のMI(Mechanical Index)値を設定し、この設定MI値を一定に保ちながら超音波の送信を行なっている(例えば、特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−142474号公報
【特許文献2】特開平7−67877号公報
【特許文献3】特開2009−240699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MI値は、負のピーク音圧を中心周波数の平方根で割った値である。負のピーク音圧は、超音波振動子に印加する送信電圧によって変わるので、MI値は送信電圧と関係している。
【0006】
ここで、被検体に対する安全性の観点から、超音波ビームのフォーカス位置の深さに応じて送信電圧の制限があり、深さ位置毎に最大送信電圧が決まっている。従って、フォーカス位置によっては、設定MI値に対応する送信電圧が前記最大送信電圧を超えてしまい、設定MI値での超音波の送信を行なうことができない場合がある。また、送信電圧は、装置において離散的な値で設定されるようになっている場合がある。このような場合においては、設定MI値に対応する送信電圧を設定することができないことがある。従って、設定されたMI値で超音波の送信を行なうことができない場合があった。
【0007】
以上のように、上述のような解決すべき課題があることから、前記所望のMI値で超音波の送信を行なうことができるか否かを知ることができる超音波診断装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するためになされた第1の観点の発明は、被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブと、所定のMI値となる送信条件で前記超音波プローブに超音波を送信させる送信制御部と、所望のMI値を設定するMI値設定部と、前記超音波プローブによる超音波の送信によって形成される超音波ビームのフォーカス位置を設定するフォーカス位置設定部と、該フォーカス位置設定部によって設定されたフォーカス位置に応じた送信条件に基づく所定のMI値を、前記MI値設定部によって設定された所望のMI値とともに表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0009】
第2の観点の発明は、第1の観点の発明において、フォーカス位置に応じて予め設定された最大送信電圧に対応する最大MI値と、前記所望のMI値とを比較する比較部を備え、該比較部で比較した結果、前記所望のMI値が前記最大MI値以下である場合、前記表示制御部は、前記所定のMI値として、前記設定されたフォーカス位置に応じた超音波送信時における送信時MI値を前記所望のMI値とともに表示させ、一方で、前記所望のMI値が、前記最大MI値を超える場合、前記表示制御部は、前記所定のMI値として前記最大MI値を前記所望のMI値とともに表示させることを特徴とする超音波診断装置である。
【0010】
第3の観点の発明は、第1の観点の発明において、フォーカス位置に応じて予め設定された最大送信電圧と、前記所望のMI値に対応する送信電圧とを比較する比較部を備え、該比較部で比較した結果、前記所望のMI値に対応する送信電圧が前記最大送信電圧以下である場合、前記表示制御部は、前記所定のMI値として、前記設定されたフォーカス位置に応じた超音波送信時における送信時MI値を前記所望のMI値とともに表示させ、一方で、前記所望のMI値に対応する送信電圧が、前記最大送信電圧を超える場合、前記表示制御部は、前記所定のMI値として前記最大送信電圧に対応する最大MI値を前記所望のMI値とともに表示させることを特徴とする超音波診断装置である。
【0011】
第4の観点の発明は、第2又は3の観点の発明において、前記送信時MI値は、所定のフォーカス位置において離散的に設定される複数の異なる送信電圧に対応するMI値のうち、前記所望のMI値と等しいMI値か、あるいは該所望のMI値に最も近い近接MI値であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0012】
第5の観点の発明は、第2又は3の観点の発明において、所定のフォーカス位置において離散的に設定される複数の異なる送信電圧に対応するMI値のうち前記所望のMI値に最も近い近接MI値と、前記所望のMI値との差が所定の閾値よりも小さい場合、前記送信時MI値は前記近接MI値であり、一方で前記近接MI値と前記所望のMI値との差が前記閾値よりも大きい場合、前記送信時MI値は、前記複数の異なる送信電圧に対応するMI値のうち、前記所望のMI値以下であって該所望のMI値に最も近いMI値であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0013】
第6の観点の発明は、第2又は3の観点の発明において、前記最大送信電圧以下において、前記所望のMI値に対応する送信電圧が設定可能である場合において、前記送信時MI値は前記所望のMI値と等しいMI値であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0014】
第7の観点の発明は、第1〜6のいずれか一の観点の発明において、前記表示部に表示される所定のMI値が、前記所望のMI値から所定以上離れた値である場合、または前記表示部に最大MI値が表示される場合に警告を行なう警告部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0015】
第8の観点の発明は、被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブと、所定のMI値となる送信条件で前記超音波プローブに超音波を送信させる送信制御部と、所望のMI値を設定するMI値設定部と、前記超音波プローブによる超音波の送信によって形成される超音波ビームのフォーカス位置毎のMI値に基づいて、前記所望のMI値で超音波の送信を行なえるフォーカス位置の範囲を認識しうる認識表示を表示させる表示制御部と、を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【0016】
第9の観点の発明は、第8の観点の発明において、前記フォーカス位置毎のMI値は、前記フォーカス位置に応じて予め設定された最大送信電圧に対応する最大MI値であることを特徴とする超音波診断装置である。
【0017】
第10の観点の発明は、第8又は9の観点の発明において、前記MI値設定部によって設定された所望のMI値と、前記フォーカス位置毎のMI値とを比較する比較部を備え、前記表示制御部は、前記比較部による比較結果に基づいて前記認識表示を表示させることを特徴とする超音波診断装置である。
【0018】
第11の観点の発明は、第8又は9の観点の発明において、前記MI値設定部によって設定された所望のMI値に対応する送信電圧と、フォーカス位置に応じて予め設定された最大送信電圧とを比較する比較部を備え、前記表示制御部は、前記比較部による比較結果に基づいて前記認識表示を表示させることを特徴とする超音波診断装置である。
【0019】
第12の観点の発明は、第8〜11のいずれか一の観点の発明において、前記超音波プローブによる超音波の送信によって形成される超音波ビームのフォーカス位置を設定するフォーカス位置設定部を備え、該フォーカス位置設定部によって設定されたフォーカス位置が、前記所望のMI値で超音波の送信を行なうことができる範囲に存在していない場合に警告を行なう警告部を備えることを特徴とする超音波診断装置である。
【発明の効果】
【0020】
上記観点の発明によれば、操作者が所望とする設定MI値とともに、フォーカス位置に応じた送信条件に基づく所定のMI値が表示されるので、操作者は所望のMI値で超音波の送信を行なうことができるか否かを知ることができる。
【0021】
また、他の観点の発明によれば、前記所望のMI値で超音波の送信を行なえるフォーカス位置を認識しうる認識表示が表示されるので、操作者は所望のMI値で超音波の送信を行なうことができるか否かを知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施形態の一例の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す超音波診断装置における制御部の詳細を示すブロック図である。
【図3】第一実施形態の超音波診断装置の作用を示すフローチャートである。
【図4】所望のMI値と最大MI値とが表示された表示部を示す図である。
【図5】所望のMI値と送信時MI値とが表示された表示部を示す図である。
【図6】第一実施形態における第三変形例の説明図である。
【図7】第二実施形態の超音波診断装置の作用を示すフローチャートである。
【図8】第二実施形態において認識表示が表示された表示部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について、図1〜図5に基づいて詳細に説明する。図1に示す超音波診断装置1は、超音波プローブ2、送受信部3、エコーデータ処理部4、表示制御部5、表示部6、操作部7、制御部8及び記憶部9を備える。
【0024】
前記超音波プローブ2は、アレイ状に配置された超音波振動子(図示省略)を有して構成され、この超音波振動子によって被検体に対して超音波を送信し、そのエコー信号を受信する。また、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2を所定の送信条件で駆動させ、スキャン面を超音波ビームによって音線順次で走査させる。前記送受信部3は前記制御部7からの制御信号によって前記超音波プローブを駆動させる。前記送信条件としては、超音波ビームのフォーカス位置や、超音波の送信時に前記超音波振動子に印加する送信電圧などが含まれる。前記超音波プローブ2は、本発明における超音波プローブの実施の形態の一例であり、また前記送受信部3及び前記制御部7は、本発明における送信制御部の実施の形態の一例である。
【0025】
ここで、本例では、送信電圧は、被検体内におけるフォーカス位置の深さに応じて予め設定された最大送信電圧v1に対して所定の割合で段階的に設定されるようになっているものとし、連続した値ではなく、離散的に設定されるようになっている。これに伴い、実際の超音波送信時に取りうるMI値も離散的になっている。
【0026】
また、前記送受信部3は、前記超音波プローブ2で得られたエコー信号について、整相加算処理等の信号処理を行ない、信号処理後のエコーデータを前記エコーデータ処理部4へ出力する。
【0027】
前記エコーデータ処理部4は、前記送受信部3から出力されたエコーデータに対し、対数圧縮処理、包絡線検波処理等の所定の処理を行う。この所定の処理は、造影剤からのエコー信号を含むデータに基づいて超音波画像を作成するために必要な処理である。
【0028】
前記表示制御部5は、DSC(Digital Scan Converter)を含んで構成され、前記エコーデータ処理部4で所定の処理がなされたデータを、前記表示部6に表示される超音波画像データに走査変換する。そして、この超音波画像データに基づく超音波画像を前記表示部6に表示させる。
【0029】
また、前記表示制御部5は、後述のMI値設定部81によって設定された所望のMI値m1を前記表示部6に表示させるとともに、後述のフォーカス位置設定部82によって設定されたフォーカス位置に応じた送信条件に基づくMI値m2を前記表示部6に表示させる。前記表示制御部5は、本発明における表示制御部の実施の形態の一例である。
【0030】
ちなみに、前記MI値m2は、実際の超音波送信時に取りうるMI値である。
【0031】
前記操作部7は、操作者が指示や情報を入力するためのキーボード及びポインティングデバイス(図示省略)などを含んで構成されている。
【0032】
前記制御部8は、CPU(CentRal Processing Unit)で構成され、HDD(Hard Disk Drive)などで構成される前記記憶部9に記憶された制御プログラムを読み出し、前記超音波診断装置1の各部における機能を実行させる。
【0033】
また、前記制御部8は、図2に示すようにMI値設定部81、フォーカス位置設定部82、MI値決定部83及び比較部84を有している。前記MI値設定部81は、操作者が所望とするMI値m1を設定する。具体的には、このMI値設定部81は、前記操作部7において入力された所望のMI値m1を記憶するメモリ(Memory)を含んで構成される。所望のMI値m1は、操作者により前記操作部7のキーボード等を用いて入力される。前記MI値設定部81及び前記操作部7は、本発明におけるMI値設定部の実施の形態の一例である。
【0034】
また、前記フォーカス位置設定部82は、超音波ビームのフォーカス位置を設定する。具体的には、このフォーカス位置設定部82は、前記操作部7において入力されたフォーカス位置を記憶するメモリを含んで構成される。フォーカス位置は、前記操作部7のポインティングデバイス等によって前記表示部6における所定の点を指定して入力される。前記フォーカス位置設定部82及び前記操作部7は、本発明におけるフォーカス位置設定部の実施の形態の一例である。
【0035】
また、前記MI値決定部83は、前記フォーカス位置設定部82によって設定されたフォーカス位置に応じて予め設定された最大送信電圧v1に対応する最大MI値mMAXを求める。詳細は後述する。また、前記MI値決定部83は、前記設定されたフォーカス位置に応じた超音波送信時における送信時MI値mTRAを求める。詳細は後述する。
【0036】
さらに、前記比較部84は、前記MI値設定部81によって設定された所望のMI値m1と、最大送信電圧v1に対応する最大MI値mMAXとを比較し、前記所望のMI値m1が前記最大MI値mMAXを超えているか否かを判定する。前記比較部84は、本発明における比較部の実施の形態の一例である。
【0037】
さて、本例の超音波診断装置1の作用について説明する。前記超音波診断装置1において造影剤を用いた撮影を行なうにあたっては、先ずフォーカス位置やMI値などの送信条件の設定動作を行なう。そして、設定動作が終了すると、被検体に対する超音波の送受信を行なって造影剤からのエコー信号に基づく超音波画像を前記表示部6に表示する。超音波の送受信を行なう時には、所定のMI値(送信時MI値mTRA又は最大MI値mMAX)となる送信条件で送信を行なう。いったん設定されたフォーカス位置を変更した場合であっても、所定のMI値を維持するような送信条件が設定されて超音波の送信を行なう。
【0038】
送信条件の設定動作時には、所望のMI値m1と前記設定されたフォーカス位置に応じた送信条件に基づくMI値m2とが表示される。MI値m2は、後述するように前記送信時MI値mTRA又は最大MI値mMAXのいずれかである。前記所望のMI値m1は、本発明における所望のMI値の実施の形態の一例であり、また前記MI値m2は、本発明における所定のMI値の実施の形態の一例である。
【0039】
前記所望のMI値m1及び前記MI値m2の表示について、図3に示すフローチャートに基づいて詳しく説明する。先ず、ステップS1では、操作者が前記操作部7を操作してフォーカス位置と所望のMI値m1とを設定する。
【0040】
次に、ステップ2では、前記MI値決定部83は、ステップS1において設定されたフォーカス位置に応じて予め設定された最大送信電圧v1に対応する最大MI値mMAXを求める。この最大MI値mMAXは、最大送信電圧v1で超音波の送信を行なう場合におけるMI値である。
【0041】
ここで、前記MI値決定部83は、前記最大MI値mMAXを、前記最大送信電圧v1に基づいて演算により求めてもよい。また、予め最大送信電圧v1に対応するMI値を記憶させたテーブルを記憶しておき、このテーブルに基づいて前記MI値決定部83が前記最大MI値mMAXを求めてもよい。
【0042】
次に、ステップS3では、前記比較部84は、前記所望のMI値m1と前記最大MI値mMAXとを比較し、前記所望のMI値m1が前記最大MI値mMAXを超えているか否かを判定する。前記所望のMI値m1が前記最大MI値mMAXを超える場合(m1>mMAX、図3でYES)、ステップS4へ移行する。一方、前記所望のMI値m1が前記最大MI値mMAX以下である場合(m1≦mMAX、図3でNO)、ステップS5へ移行する。
【0043】
ステップS4では、前記表示制御部5は、図4に示すように、前記所望のMI値m1とともに、前記MI値m2として前記最大MI値mMAXを前記表示部6に表示させる。
【0044】
また、ステップS5では、前記MI値決定部83は、送信時MI値mTRAを求める。この送信時MI値mTRAは、実際に超音波の送信を行なう時のMI値である。そして、前記表示制御部5は、図5に示すように、前記所望のMI値m1とともに、前記MI値m2として前記送信時MI値mTRAを前記表示部6に表示させる。
【0045】
ここで、送信時MI値mTRAについて説明する。前記MI値決定部83は、ステップS1で設定されたフォーカス位置において設定可能な送信電圧に基づいて、この送信電圧に対応するMI値を演算により求め、このMI値のうち、所望のMI値と等しいか、または最も近いMI値を送信時MI値mTRAとしてもよい。あるいは、前記所望のMI値m1で超音波の送信を行なう場合の送信電圧v2を演算により求め、設定可能な送信電圧のうち、前記送信電圧v2と等しいか、またはこの送信電圧v2に最も近い送信電圧に対応するMI値を送信時MI値mTRAとしてもよい。さらに、フォーカス位置の深さに応じて設定可能な複数の送信電圧とこの送信電圧に対応するMI値とを定めたテーブルを前記記憶部9に記憶しておき、このテーブルにおいて、前記所望のMI値m1と等しいか、またはこの所望のMI値m1に最も近いMI値を送信時MI値mTRAとしてもよい。
【0046】
以上説明した本例によれば、前記ステップS4において、前記所望のMI値m1と前記最大MI値mMAXとが前記表示部6に表示されることにより、前記所望のMI値m1が前記最大MI値mMAXを超えていることが分かり、前記所望のMI値m1で超音波の送信を行なうことができないことを知ることができる。
【0047】
また、前記所望のMI値m1が前記最大MI値mMAX以内であっても、設定可能な送信電圧によって、前記送信時MI値mTRAが前記所望のMI値m1を取ることができる場合とできない場合とがある。従って、前記ステップS5において、前記所望のMI値m1と前記送信時MI値mTRAとが前記表示部6に表示されることにより、所望のMI値m1で超音波の送信を行なうことができるか否かを知ることができる。
【0048】
ちなみに、ステップS3において前記所望のMI値m1が前記最大MI値mMAXを超えていると判断された場合には、前記最大MI値mMAXとなる送信条件で超音波の送信を行うようにしてもよい。
【0049】
次に、第一実施形態の変形例について説明する。先ず、第一変形例について説明する。第一変形例では、前記表示部6に表示される前記送信時MI値mTRAが前記所望のMI値m1から所定以上離れた値である場合、または前記表示部6に前記最大MI値mMAXが表示される場合、前記表示制御部5が前記表示部6に警告を表示する。警告の形態としては、例えば前記MI値m2を通常とは異なる色で表示したり、警告を意味する文字を表示したりすることなどが挙げられる。前記表示制御部5及び前記表示部6は、本発明における警告部の実施の形態の一例である。
【0050】
次に、第二変形例について説明する。この第二変形例では、ステップS3において、前記比較部84は、前記最大送信電圧v1と、前記所望のMI値m1から算出される送信電圧v2とを比較し、この送信電圧v2が前記最大送信電圧v1を超えているか否かを判定する。前記送信電圧v2が前記最大送信電圧v1を超えていれば、前記所望のMI値m1が前記最大MI値mMAXを超えていることになる。一方、前記送信電圧v2が前記最大送信電圧v1以下であれば、前記所望のMI値m1が前記最大MI値mMAX以下であることになる。従って、前記送信電圧v2が前記最大送信電圧v1を超えている場合には、ステップS4へ移行し、一方で前記送信電圧v2が前記最大送信電圧v1以下である場合には、ステップS5へ移行する。
【0051】
次に、第三変形例について説明する。この第三変形例では、前記ステップS5において、前記ステップS1で設定されたフォーカス位置において設定可能な送信電圧に対応するMI値のうち、前記所望のMI値m1に最も近い近接MI値と、前記所望のMI値との差Rに基づいて前記送信時MI値mTRAを求めてもよい。
【0052】
具体的に図6に基づいて説明する。この図6において、mX,mY(mX<mY)は設定されたフォーカス位置において設定可能な送信電圧に対応するMI値である。そして、mX<m1<mYであり、またMI値mYが、前記所望のMI値m1に最も近い近接MI値であるものとする。この場合、MI値mXは、前記設定可能な送信電圧に対応するMI値のうち、前記所望のMI値m1以下であってこの所望のMI値m1に最も近いMI値になる。
【0053】
前記近接MI値mYと前記所望のMI値m1との差Rが、所定の閾値よりも小さい場合、前記近接MI値mYを前記送信時MI値mTRAとする。一方、前記差Rが所定の閾値よりも大きい場合、前記MI値mXを前記送信時MI値mTRAとする。
【0054】
ここで、造影剤を破壊しないように撮影を行なう場合において、送信時MI値mTRAが前記所望のMI値m1よりも高すぎると、造影剤が破壊されて好ましくない。従って、本例のように、所望のMI値m1に最も近いMI値が所望のMI値m1よりも大きい場合、前記差Rが大きくなるほど造影剤がより多く破壊されることになる。そこで、前記所定の閾値は、前記送信時MImTRAとして前記MI値mYが設定された場合であっても、造影剤の破壊ができるだけ抑制される値に設定される。
【0055】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態の超音波診断装置の基本構成は前記第一実施形態と同一であり、以下第一実施形態と異なる事項についてのみ説明する。
【0056】
本例においては、前記MI値決定部83は、被検体内におけるフォーカス位置の深さに応じたMI値m3を、所定の深さ位置ごとに算出する。ここで、このMI値m3は、フォーカス位置の深さに応じて設定された前記最大送信電圧v1に基づいて算出される。すなわち、前記MI値m3はフォーカス位置毎の最大MI値である。ただし、前記MI値m3は、フォーカス位置の深さに応じて予めテーブルとして記憶されていてもよい。
【0057】
また、前記比較部84は、異なる深さのフォーカス位置毎に算出される前記MI値m3と前記所望のMI値m1とを比較する。
【0058】
さらに、前記表示制御部5は、前記所望のMI値m1で超音波の送信を行なえるフォーカス位置の範囲を認識しうる認識表示IRを前記表示部6に表示させる(図7参照)。前記表示制御部5は、前記比較部84の比較結果に基づいて前記認識表示IRを表示させる。詳細は後述する。
【0059】
前記認識表示IRは、矢印で構成されており、前記表示部6に表示される深さスケールSd上に表示される。前記認識表示IRは、この認識表示IRによって示される範囲において、所望のMI値m1で超音波の送信を行なうことができることを表している。
【0060】
ちなみに、前記深さスケールSdは、被検体内の体表面からの深さを示す目盛りと数値とで構成されている。
【0061】
本例において、送信条件の設定動作を行なう時の作用について図7に示すフローチャートに基づいて説明する。先ず、ステップS11では、操作者が前記操作部7を操作して所望のMI値m1を設定する。
【0062】
次に、ステップS12では、前記表示制御部5が、図8に示すように前記表示部6に前記認識表示IRを表示させる。詳しく説明すると、前記表示制御部5は、前記比較部84による前記MI値m3と前記所望のMI値m1との比較結果に基づいて、前記MI値m3が前記所望のMI値m1以下である(m3≦m1)深さ位置の範囲に、前記認識表示IRを表示させる。
【0063】
以上説明した本例によれば、前記認識表示IRが前記表示部6に表示されるので、操作者は所望のMI値で超音波の送信を行なうことができるか否かを知ることができる。
【0064】
次に、第二実施形態の変形例について説明する。先ず、第一変形例について説明する。第一変形例では、フォーカス位置を設定した場合において、前記表示制御部5は、設定されたフォーカス位置が前記認識表示IRが表示された範囲に存在していない場合、前記表示部6に警告を表示する。警告の形態としては、例えば文字などが挙げられる。前記表示制御部5及び前記表示部6は、本発明における警告部の実施の形態の一例である。
【0065】
次に、第二変形例について説明する。この第二変形例では、前記比較部84は、前記所望のMI値m1から算出される送信電圧v2と、フォーカス位置毎の前記最大送信電圧v1とを比較し、前記最大送信電圧v1が前記送信電圧v2以下であるか否かを判定する。前記最大送信電圧v1が前記送信電圧v2を超えていれば、前記MI値m3が前記所望のMI値m1を超えていることになる。一方、前記最大送信電圧v1が前記送信電圧v2以下であれば、前記MI値m3が前記所望のMI値m1以下であることになる。従って、前記表示制御部5は、前記最大送信電圧v1が前記送信電圧v2以下である範囲に、前記認識表示IRを表示させる。
【0066】
以上、本発明を前記各実施形態によって説明したが、本発明はその主旨を変更しない範囲で種々変更実施可能なことはもちろんである。例えば、第一実施形態において、前記最大送信電圧v1の範囲内において、連続的な送信電圧の設定が行えるようになっていてもよい。この場合、前記最大送信電圧v1の範囲内においては、前記所望のMI値m1に対応する送信電圧が設定できる。従って、前記ステップS5で表示される送信時MI値MTRAは、前記所望のMI値m1と等しくなる。
【0067】
また、第二実施形態において、前記認識表示IRは、前記MI値m3が所望のMI値m1を超える(m3>m1)深さ位置の範囲、すなわち所望のMI値m1で超音波の送信を行なうことができない範囲に表示されるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 超音波診断装置
2 超音波プローブ
3 送受信部(送信制御部)
5 表示制御部
81 MI値設定部
82 フォーカス位置設定部
84 比較部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブと、
所定のMI値となる送信条件で前記超音波プローブに超音波を送信させる送信制御部と、
所望のMI値を設定するMI値設定部と、
前記超音波プローブによる超音波の送信によって形成される超音波ビームのフォーカス位置を設定するフォーカス位置設定部と、
該フォーカス位置設定部によって設定されたフォーカス位置に応じた送信条件に基づく所定のMI値を、前記MI値設定部によって設定された所望のMI値とともに表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
フォーカス位置に応じて予め設定された最大送信電圧に対応する最大MI値と、前記所望のMI値とを比較する比較部を備え、
該比較部で比較した結果、前記所望のMI値が前記最大MI値以下である場合、前記表示制御部は、前記所定のMI値として、前記設定されたフォーカス位置に応じた超音波送信時における送信時MI値を前記所望のMI値とともに表示させ、
一方で、前記所望のMI値が、前記最大MI値を超える場合、前記表示制御部は、前記所定のMI値として前記最大MI値を前記所望のMI値とともに表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
フォーカス位置に応じて予め設定された最大送信電圧と、前記所望のMI値に対応する送信電圧とを比較する比較部を備え、
該比較部で比較した結果、前記所望のMI値に対応する送信電圧が前記最大送信電圧以下である場合、前記表示制御部は、前記所定のMI値として、前記設定されたフォーカス位置に応じた超音波送信時における送信時MI値を前記所望のMI値とともに表示させ、
一方で、前記所望のMI値に対応する送信電圧が、前記最大送信電圧を超える場合、前記表示制御部は、前記所定のMI値として前記最大送信電圧に対応する最大MI値を前記所望のMI値とともに表示させる
ことを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記送信時MI値は、所定のフォーカス位置において離散的に設定される複数の異なる送信電圧に対応するMI値のうち、前記所望のMI値と等しいMI値か、あるいは該所望のMI値に最も近い近接MI値である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
所定のフォーカス位置において離散的に設定される複数の異なる送信電圧に対応するMI値のうち前記所望のMI値に最も近い近接MI値と、前記所望のMI値との差が所定の閾値よりも小さい場合、前記送信時MI値は前記近接MI値であり、一方で前記近接MI値と前記所望のMI値との差が前記閾値よりも大きい場合、前記送信時MI値は、前記複数の異なる送信電圧に対応するMI値のうち、前記所望のMI値以下であって該所望のMI値に最も近いMI値である
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記最大送信電圧以下において、前記所望のMI値に対応する送信電圧が設定可能である場合において、前記送信時MI値は前記所望のMI値と等しいMI値であることを特徴とする請求項2又は3に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記表示部に表示される所定のMI値が、前記所望のMI値から所定以上離れた値である場合、または前記表示部に最大MI値が表示される場合に警告を行なう警告部を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
被検体に対して超音波の送受信を行なう超音波プローブと、
所定のMI値となる送信条件で前記超音波プローブに超音波を送信させる送信制御部と、
所望のMI値を設定するMI値設定部と、
前記超音波プローブによる超音波の送信によって形成される超音波ビームのフォーカス位置毎のMI値に基づいて、前記所望のMI値で超音波の送信を行なえるフォーカス位置の範囲を認識しうる認識表示を表示させる表示制御部と、
を備えることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
前記フォーカス位置毎のMI値は、前記フォーカス位置に応じて予め設定された最大送信電圧に対応する最大MI値であることを特徴とする請求項8に記載の超音波診断装置。
【請求項10】
前記MI値設定部によって設定された所望のMI値と、前記フォーカス位置毎のMI値とを比較する比較部を備え、
前記表示制御部は、前記比較部による比較結果に基づいて前記認識表示を表示させる
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の超音波診断装置。
【請求項11】
前記MI値設定部によって設定された所望のMI値に対応する送信電圧と、フォーカス位置に応じて予め設定された最大送信電圧とを比較する比較部を備え、
前記表示制御部は、前記比較部による比較結果に基づいて前記認識表示を表示させる
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の超音波診断装置。
【請求項12】
前記超音波プローブによる超音波の送信によって形成される超音波ビームのフォーカス位置を設定するフォーカス位置設定部を備え、
該フォーカス位置設定部によって設定されたフォーカス位置が、前記所望のMI値で超音波の送信を行なうことができる範囲に存在していない場合に警告を行なう警告部を備えることを特徴とする請求項8〜11のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−120706(P2011−120706A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280027(P2009−280027)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(300019238)ジーイー・メディカル・システムズ・グローバル・テクノロジー・カンパニー・エルエルシー (1,125)
【Fターム(参考)】