説明

超音波診断装置

【課題】
煩雑な操作を行わずに、検査時に患者の過去の検査結果を視覚的、直感的に理解することができる超音波診断装置を提供する。
【解決手段】
超音波を照射し、反射された超音波を受信して受信信号を生成する超音波プローブ1と、受信信号を超音波画像データに変換する信号処理部2、3と、超音波画像データを超音波画像として表示する表示部5と、生体の体表形状または臓器形状を示すボディマークであって、標準としてあらかじめ設定された初期設定ボディマークを保存する初期設定記憶部6と、初期設定ボディマークを表示部に表示させる制御部8、9と、ボディマークであって、患者の過去の検査時に生成された履歴ボディマークを保存する患者履歴記憶部7とを備え、制御部8、9は、患者の履歴ボディマークまたは初期設定ボディマークを選択的に表示部5に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体に超音波を送信して、その反射波から断層画像を得る超音波診断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から超音波診断装置は、多岐にわたる診療科に対応できように汎用性を有するものが多い。そのため、超音波診断装置には、画像パラメータや計測ソフトウェア、ボディマークなどが多数用意されている。すなわち、選択肢が多くなり、ユーザーが所望の設定を行うための操作が煩雑となる。
【0003】
この問題を解消するため、診断目的に適した複数の装置条件をあらかじめ組み合わせて装置内へ登録し、ユーザーが検査開始時に診断対象に応じて、操作卓上のキー操作で呼び出せるようにしたもの(プリセット)が、用意されている。プリセットは、診断目的に適した装置初期値DB(データベース)と、過去の診断時にユーザーが装置へ登録した患者IDや計測値結果を格納した患者履歴記憶部に格納されたデータベースから呼び出されるようになっている。
【0004】
装置初期値DBに格納されているボディマークとプローブマークは、取得した超音波画像の診断部位を確認するうえで重要な情報である。使用頻度が高いルーチン検査では、検査ごとにボディマークとプローブマークを手動で設定すると、設定を繰り返して行うことになり操作が煩雑になる。このボディマークとプローブマークの設定、表示を自動化しようとすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この超音波診断装置は、探触子に装着した磁気センサにより座標情報を取得し、三次元のボディマークにプローブマークをリアルタイム表示する。すなわち、現在、表示部に表示されている超音波画像についての被検体と探触子との位置関係を、図形化表現によってユーザーへ直感的に提供することができる。
【0006】
また、従来のボディマークとプローブマークは、ヒトの体内の三次元構造をボディマークで代用することで、診断の補助手段として使用される場合がある。例えば、産科領域の検査では胎児の胎位や胎向を表現したい場合の使用がそれにあたる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−118142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、超音波検査において、同一患者を経過観察することがさまざまな診療科で日常的に行われているにもかかわらず、検査時に過去の検査における情報を呼び出すには、複数の操作が必要である。
【0009】
過去の検査結果を呼び出す手段として、レポート機能があるが、レポート表示画面を表示するために操作部の複数種類のキーを押下する必要があり、操作が煩雑である。また、レポート表示では表現手段の多くが文字であるために、直感性や視認性に乏しく、過去の検査情報を理解するのに時間を要する。
【0010】
本発明は、上記従来の問題を解決するもので、煩雑な操作を行わずに、検査時に患者の過去の検査結果を視覚的、直感的に理解することができる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の超音波診断装置は、上記課題を解決するために、超音波を照射し、反射された超音波を受信して受信信号を生成する超音波プローブと、前記受信信号を超音波画像データに変換する信号処理部(送受信回路、DSC回路)と、前記超音波画像データを超音波画像として表示する表示部と、生体の体表形状または臓器形状を示すボディマークであって、標準としてあらかじめ設定された初期設定ボディマークを保存する初期設定記憶部(装置初期設定記憶部)と、前記初期設定ボディマークを前記表示部に表示させる制御部と、前記ボディマークであって、患者の過去の検査時に生成された履歴ボディマークを保存する患者履歴記憶部とを備え、前記制御部は、前記患者の前記履歴ボディマークまたは前記初期設定ボディマークを選択的に前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0012】
また、患者識別情報を入力可能とする入力部を備え、前記制御部は、入力された前記患者識別情報に対応する前記履歴ボディマークが前記患者履歴記憶部に存在する場合に、前記履歴ボディマークを前記表示部に表示させる構成にすることもできる。
【0013】
また、前記制御部は、入力された前記患者識別情報に対応する前記履歴ボディマークが前記患者履歴記憶部に存在しない場合に、前記初期設定ボディマークを前記表示部に表示させる構成にすることもできる。
【0014】
また、前記履歴ボディマークまたは前記初期設定ボディマークを前記超音波画像に重畳表示可能な構成にすることもできる。
【0015】
また、前記履歴ボディマークには、前記超音波画像を撮影した時の前記患者に対する前記超音波プローブの位置を示すプローブマークを含む構成にすることができる。
【0016】
また、前記履歴ボディマークおよび前記初期設定ボディマークを編集可能な編集部を有する構成にすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、患者の過去の検査時に生成された履歴ボディマークを保存する患者履歴記憶部を備え、煩雑な操作を行わずに、検査時に患者の過去の検査結果を視覚的、直感的に理解することができる超音波診断装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図
【図2】実施の形態1に係る超音波診断装置の動作を示すフロー図
【図3】実施の形態1に係る超音波診断装置の表示画像を示す図
【図4】本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置の表示画像を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。超音波プローブ1は、送信信号により駆動されて超音波パルスを被検体体内に照射する。また、超音波プローブ1は、被検体の音響インピーダンスの異なる組織の境界面から反射された超音波を受信して電気信号に変換する。送受信回路2は、送信信号を生成して超音波プローブ1に供給する。また、送受信回路2は、超音波プローブ1で変換された電気信号を信号処理して、エコー信号を生成する。
【0020】
DSC回路3は、エコー信号を表示部5に表示可能な超音波画像データに走査変換する。画像合成回路4は、超音波画像データに基づく超音波画像に、生体の体表形状または臓器形状を示すボディマーク(初期設定ボディマークおよび履歴ボディマーク)を合成した合成画像データを生成する。表示部5は、合成画像データを合成画像として表示する。
【0021】
装置初期設定記憶部6は、データベースを有している。本発明の実施の形態1に係る超音波診断装置は、さまざまな診療科に対応できるように設計されているため、超音波診断装置内部には、画像パラメータや計測ソフト、ボディマークなどが多彩に用意されている。装置初期設定記憶部6には、画像パラメータや計測ソフト、ボディマークなどの最適化されたパラメータの組み合わせ(プリセット)が、OB(産科)、Abd(腹部)、Card(心臓)などの診断目的に応じて保存されている。以下、診断目的に応じた標準として最適設定されたボディマークを初期設定ボディマークと称する。このため、ユーザーは目的とする診断領域に応じて、検査開始時に操作部10から簡単なキー操作でパラメータを設定することが可能である。
【0022】
患者履歴記憶部7には、過去の検査時にユーザーが装置へ登録した患者IDや計測値結果とともに、検査結果を反映した履歴ボディマークが格納されている。そして、検査施行日、履歴ボディマークは、患者IDと関連付けられて管理されている。
【0023】
制御部9は、操作部10から入力された患者IDをボディマーク選択部8に出力する。また、後述する装置初期設定記憶部6に保存された初期設定ボディマークまたは患者履歴記憶部7に保存された履歴ボディマークを画像合成回路4に出力する。操作部10は、ユーザーが超音波診断装置に対応して指示を入力するために、多数のボリウムツマミやトラックボールを含むハードキーや、タッチスクリーン上のソフトキーを有している。
【0024】
ボディマーク選択部8は、制御部9から出力された患者IDを患者履歴記憶部7に記憶されている患者IDと照合し、一致した患者IDがあった場合には、その患者IDに関連付けられた前回の検査施行日の履歴ボディマークを取り出す。また、一致した患者IDがない場合には、装置初期設定記憶部6から初期条件に応じた初期設定ボディマークを取り出す。
【0025】
次に、以上のように構成された超音波診断装置の動作について説明する。図2は、本実施の形態に係る超音波診断装置の動作の流れを示すフロー図である。この超音波診断装置の動作において、産科の超音波検査を行い、表示部5にボディマークを表示する場合を例に説明する。
【0026】
あらかじめ、患者ごとに患者IDが振り当てられている。まず、ステップS101において、妊婦の検査を開始するに際して、ユーザーにより操作部10がキー操作されて、患者属性入力欄に患者IDが入力される。
【0027】
次に、ステップ102において、ボディマーク選択部8は、患者IDと患者履歴記憶部7に記憶されている患者IDとを照合する。患者履歴記憶部7に記憶されている患者IDの中に入力された患者IDと一致するものがある場合は、以前に患者を検査したことがあることを示す。この場合、ユーザーに入力情報の確認キー操作を促す。この入力情報には、前回の検査で行われた装置条件を含めることができる。確認キー操作が行われると、患者属性入力欄を閉じる。
【0028】
なお、ボディマーク選択部8が行う入力された患者IDと患者IDとの照合は、入力された患者IDが完全に入力されてから行ってもよいが、入力途中に逐次行ってもよい。ユーザーが患者IDを入力している途中に逐次照合を行うと、入力される患者IDと対応しそうな候補の患者IDを患者属性入力欄に自動表示させることができ、入力操作の簡便化を図ることができる。
【0029】
次に、ステップS103において、ボディマーク選択部8は、入力された患者IDに関連付けられ、前回の検査で使用された履歴ボディマークを患者履歴記憶部7から取り出す。そして、制御部9が画像合成回路4に履歴ボディマークを出力し、画像合成回路4が履歴ボディマークを表示部5に表示する。履歴ボディマークが表示されることにより、ユーザーは、前回の検査結果を視覚的、直感的に理解することができる。
【0030】
図3は、ステップS103において履歴ボディマークが表示部5に表示された表示画像を模式的に示した図である。表示画像21には、患者ID表示領域22と、画像付帯情報表示領域23と、超音波画像表示領域24とを有する。患者ID表示領域22には、患者IDおよび検査当日の妊娠週数が表示される。画像付帯情報表示領域23には、超音波画像に関する装置パラメータや画像計測を行った際の計測値表示などの画像に付帯した情報が表示される。
【0031】
超音波画像表示領域24には、履歴ボディマーク26と、現時点では表示されていない超音波画像25と、現時点では表示されていない装置初期設定記憶部6の産科用プリセットから呼び出された初期設定ボディマーク27とが表示可能である。
【0032】
履歴ボディマーク26が、超音波画像を取得する前すなわちユーザーが超音波プローブ1により走査を開始する前に表示されることで、ユーザーは、前回の胎児の胎位や胎向を直感的に把握できる。同時に妊婦へ検査履歴を説明する場合に、図形化した履歴ボディマーク26はわかりやすい情報伝達手段であるため、インフォームド・コンセント(informed consent)のツールとして有用である。
【0033】
次に、ステップS104において超音波検査を開始する。送受信回路2は、送信信号を生成して超音波プローブ1に供給する。超音波プローブ1は、送信信号により駆動されて超音波パルスを被検体体内に照射し、胎児などにより反射された超音波を受信して電気信号に変換する。送受信回路2は、超音波プローブ1で変換された電気信号を信号処理して、エコー信号を生成する。
【0034】
DSC回路3は、エコー信号を表示部5に表示可能な超音波画像データに走査変換する。画像合成回路4は、超音波画像データに基づく超音波画像に履歴ボディマークを合成した合成画像データを生成する。表示部5は、合成画像データを合成画像として表示する。
【0035】
次に、ステップS105において、超音波画像を保存する場合に、前回の検査で使用した履歴ボディマークを継続表示するか否かをユーザーに判断させる。履歴ボディマークを継続表示することは、臨床検査において有用である。また、胎児の胎位や胎向が前回の検査時と同じ状態であれば、表示中の履歴ボディマーク26を継続表示することで、操作卓のキーステップ数を低減することができる。一方、現在の超音波画像表示領域24に表示されている画像を説明用として保存する場合には、履歴ボディマークを表示しないことが望ましい場合がある。これらの状況に対応するため、超音波画像表示領域24の画像を保存する場合に、ユーザーの判断により履歴ボディマークの表示、非表示の選択がされる。
【0036】
履歴ボディマークを表示しない場合は、ステップS106において履歴ボディマーク26を非表示状態にして、ステップS107に進む。一方、履歴ボディマークを表示したままとする場合は、ステップS107に進む。
【0037】
次に、ステップS107においてボディマーク選択部8は、装置初期設定記憶部6の産科用プリセットから初期設定ボディマークを選択して、超音波画像表示領域24の画像に初期設定ボディマーク27を表示させて、ステップS110に進む。初期設定ボディマーク27の表示は、公知の技術に基くもので、初期設定ボディマークを表示することにより表示部上の超音波画像の診断部位を直感的に確認することができる。
【0038】
なお、装置初期設定記憶部6から呼び出された初期設定ボディマークは、いわゆるプリセット機能にすぎず、常に同じものが最初に表示される。ユーザーは、表示された初期設定ボディマークを適切なボディマークに変更、修正することができる。
【0039】
また、ユーザーの好みに応じて、初期設定ボディマーク27を表示しないようにすることもできる。
【0040】
また、ユーザーの所望に応じて、履歴ボディマーク26を1つあるいは複数個表示することもできる。
【0041】
ステップS102において、患者履歴記憶部7に記憶されている患者IDの中に入力された患者IDと一致するものがない場合には、過去にこの患者を検査したことが無いことを示す。この場合は、ステップS108においてユーザーに対して、表示部5に表示される患者情報の患者属性入力欄に患者のカルテ番号や氏名、最終生理日や出産予定日などの入力を促す。患者情報が入力されると、患者属性入力欄を閉じる。この時プリセットに含まれる装置条件に設定してもよい。
【0042】
次に、ステップS109において超音波検査を開始する。ステップS109における超音波検査は、ステップS104における超音波検査と同様である。超音波検査が終了すると、次にステップS107において初期設定ボディマークを表示する。
【0043】
ユーザーが一連の検査を終了する際に、ステップS110において、制御部9は、その時点で検査に使用していたボディマークを履歴ボディマークとして患者履歴記憶部7に登録する。さらに、履歴ボディマークに関連させて一連の超音波検査手順中にユーザーが胎児発育診断として検出した計測値、患者ID、および日付を患者履歴記憶部7に記憶させる。これにより、次回の検査においてこの患者IDが入力されると、対応する履歴ボディマークや日付などを表示することができる。
【0044】
超音波検査では、ひとりの患者に対して複数種類の臓器を観察する場合があるため、ユーザーによっては複数種類のボディマークを検査対象に応じて使い分ける場合もある。そのため、患者履歴記憶部7に登録できるボディマークは、1種類に限定されることなく、複数種類が保管される構成にすることもできる。これら複数種類・複数枚のボディマークは検査時間順、あるいは検査時間中に最も表示時間が長かったボディマークから順に並んだ画像リスト(サムネイル)として表示できるようにしておいてもよく、または枚数を表示してアップダウンできるようにしても良い。
【0045】
患者履歴記憶部7に登録可能な履歴ボディマーク26の種類が1種類の場合には、装置が有するタイマーで表示時間を監視し、当該患者に要した検査時間中に最も表示時間が長かったボディマークを履歴ボディマークとしてもよいし、検査終了時のボディマークを履歴ボディマークとしてもよい。
【0046】
なお、超音波画像に重畳して表示させた履歴ボディマーク26と初期設定ボディマーク27を、視覚的に差別化することなく同時に表示させることは、ユーザーが混乱をきたす可能性がある。
【0047】
図3に示した例では、患者履歴記憶部7から呼び出した履歴ボディマーク26の図形化表示サイズを縮小して表示している。同時に、患者履歴記憶部7に保存されているデータから、履歴ボディマーク26の近傍に前回の妊娠週数である20wks0d(妊娠20週0日)を文字表示させることで、ユーザーがボディマークを識別することを容易にしている。なお、検査当日の妊娠週数は、患者ID表示領域22に装置の自動計算機能によって算出され、24wks0d(妊娠24週0日)と表示される。
【0048】
図3に示した履歴ボディマーク26の例は、簡単な線画による2次元グラッフィク表示であったが、装置初期設定記憶部6のボディマークデータベースに、よりリアルな3次元グラフィックイメージを格納している場合には、それを用いても良い。
【0049】
また、履歴ボディマーク26と初期設定ボディマーク27の更なる視覚的差別化のために、履歴ボディマーク26を着色変更することができるようにしてもよい。
【0050】
さらに、ユーザーの更なる好みに応じて、履歴ボディマーク26と初期設定ボディマーク27は、表示画像21上の任意の位置へ移動できるものであってもよい。
【0051】
以上のように、本実施の形態に係る超音波診断装置は、入力された患者IDに基づいて患者の前回の診断で使用された履歴ボディマークを表示することができる。これにより、ユーザーは、過去の検査結果を視覚的、直感的に理解することができる。
【0052】
また、初診の場合であっても、初期設定ボディマークが表示されるので、初期設定ボディマークに対して、変更、修正を行うことにより、超音波検査の後に結果をボディマークに反映させやすくなる。
【0053】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る超音波診断装置は、実施の形態1に係る超音波診断装置で表示されたボディマークを編集してマスマークを重畳させるものである。本実施の形態における超音波診断装置の構成は、実施の形態1における超音波診断装置にマスマークを編集する編集手段(図示せず)が追加された構成である。本実施の形態における超音波診断装置において実施の形態1における超音波診断装置と同様の構成要素については同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
本実施の形態では、診断領域が腹部であり、患者に肝臓癌がある経過観察中の診断を例に挙げて説明する。ヒトの癌や結石などの解剖学的異常像(マス、mass)は、人体内の不特定位置にさまざまな数や大きさで出現する。超音波診断装置による経過観察では、断層画像上の変化を図形情報化して追跡観察することで、有効な治療や診断を行うことができる。
【0055】
図4は、本実施の形態における超音波診断装置の超音波画像を取得した後の表示画像を示す図である。画像付帯情報表示領域23には、肝臓を模した履歴ボディマーク26bと、3個の解剖学的異常像を示すマスマーク28と、超音波画像の断層像を得た超音波プローブ1の位置を示すプローブマーク29が表示されている。
【0056】
本実施の形態にかかる超音波診断装置は、履歴ボディマーク26bに、検査時に得られた診断情報としてのマスマーク28を重畳表示させる編集手段を有している。この構成により、ユーザーが履歴ボディマーク26bへの加筆・修正などの編集作業を行うことで、任意の形状に図形化したマスマークを表示することが可能である。編集手段については、例えば、特開2007−029456号公報に開示された発明に係る手段と同様の手段を用いることができる。
【0057】
履歴ボディマーク26bは、マスマーク28が重畳された状態で、患者履歴記憶部7に格納され、一致する患者IDが入力されると、呼び出される。呼び出された履歴ボディマークにはマスマークが重畳されており、ユーザーがこれらのマークに対して編集手段を用いて、断層画像の観察で得た新たな画像上の変化について、追記や変更などを行うことができる。したがって、患者履歴記憶部7に格納された履歴ボディマークおよびマスマークを利用して新たなボディマークを作成できるため、入力時間の短縮につながると同時に、前回検査時との病態変化が比較しやすいという効果が生じる。
【0058】
上記の履歴ボディマーク26bにマスマーク28を重畳させる例では、図形の構造が複雑なことや、断層画像に基いて、癌などの計測値を文字情報としてマスマーク28へ追加できることが望ましい場合がある。そのため、マスマークなどを拡大させても、断層画像と重畳しないように、画像合成回路4は、マスマークなどを画像付帯情報表示領域23に表示させて、視認性を高めることができる。
【0059】
一方、マスマーク28の表示は、患者にとって有益でない場合がある。そのため、ユーザーの判断によって、表示部5に表示中の履歴ボディマーク26bとマスマーク28を非表示状態とし、仰臥位状態で検査を受けている患者の視線から死角となる位置にボディマークを表示する構成にすることができる。例えば、装置の操作部10にタッチスクリーンを設け、タッチスクリーンに履歴ボディマークなどを表示できる構成にすることもできる。
【0060】
以上のように、本実施の形態に係る超音波診断装置は、ボディマークにマスマークやプローブマークを重畳表示することにより、ユーザーが過去の検査結果を視覚的、直感的に理解することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、検査時に、前回の検査時に得たボディマークを表示させることにより、前回の検査結果をユーザーが視覚的、直感的に理解することができるという効果を有し、特に臨床で行われる経過観察に優れた超音波診断装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 超音波プローブ
2 送受信回路
3 DSC回路
4 画像合成回路
5 表示部
6 装置初期設定記憶部
7 患者履歴記憶部
8 ボディマーク選択部
9 制御部
10 操作部
21 表示画像
22 患者ID表示領域
23 画像付帯情報表示領域
24 超音波画像表示領域
25 超音波画像
26、26b 履歴ボディマーク
27 初期設定ボディマーク
28 マスマーク
29 プローブマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を照射し、反射された超音波を受信して受信信号を生成する超音波プローブと、
前記受信信号を超音波画像データに変換する信号処理部と、
前記超音波画像データを超音波画像として表示する表示部と、
生体の体表形状または臓器形状を示すボディマークであって、標準としてあらかじめ設定された初期設定ボディマークを保存する初期設定記憶部と、
前記初期設定ボディマークを前記表示部に表示させる制御部と、
前記ボディマークであって、患者の過去の検査時に生成された履歴ボディマークを保存する患者履歴記憶部とを備え、
前記制御部は、前記患者の前記履歴ボディマークまたは前記初期設定ボディマークを選択的に前記表示部に表示させることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
患者識別情報を入力可能とする入力部を備え、
前記制御部は、入力された前記患者識別情報に対応する前記履歴ボディマークが前記患者履歴記憶部に存在する場合に、前記履歴ボディマークを前記表示部に表示させる請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記制御部は、入力された前記患者識別情報に対応する前記履歴ボディマークが前記患者履歴記憶部に存在しない場合に、前記初期設定ボディマークを前記表示部に表示させる請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記履歴ボディマークまたは前記初期設定ボディマークを前記超音波画像に重畳表示可能な請求項1〜3のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記履歴ボディマークには、前記超音波画像を撮影した時の前記患者に対する前記超音波プローブの位置を示すプローブマークを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記履歴ボディマークおよび前記初期設定ボディマークを編集可能な編集部を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−136044(P2011−136044A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298224(P2009−298224)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】