説明

超音波診断装置

【課題】パルス波測定モードと連続波測定モードにおいて互いに設定情報を反映させる。
【解決手段】連続波測定モードで利用されるCWカーソル100は、アレイ振動子10上に設けられた原点Pと測定箇所を結ぶように設定され、CWカーソル100上の測定箇所にはCWゲートCが設定される。そして、CWカーソル100に対応した連続波の送信ビームTBと受信ビームRBが形成される。この設定状態でCWモードによる測定が行われた後にPWモードへ切り換えられると、CWカーソル100に重なるように図示しないPWカーソルが設定され、CWゲートCと同じ位置に図示しないPWゲートが設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、パルス波と連続波を利用する超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波のパルス波を利用するPWモードと超音波の連続波を利用するCWモードを備えた超音波診断装置が知られている(特許文献1参照)。パルス波を利用することにより、例えば生体内の断層画像などを形成することができる。一方、連続波を利用した連続波ドプラは、パルス波を利用したパルスドプラに比べて、一般に高速の速度計測の面で優れている。
【0003】
ところが、PWモードとCWモードを備えた従来の装置では、測定に係る機能を各モードごとに個別に設定することが一般的であった。例えば、測定状況に応じて各種の機能を設定してPWモードで測定を行い、その後にCWモードを利用する場合に、PWモードからCWモードへ切り換えた直後においては、CWモードに係る機能がデフォルト設定となりCWモードに係る機能の設定を個別にやり直す必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−222746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した技術的な状況を背景としつつ、本願の発明者は、パルス波と連続波を利用した超音波診断装置の開発に従事してきた。
【0006】
本発明は、その開発の過程において成されたものであり、その目的は、パルス波の測定モードと連続波の測定モードにおいて互いに設定情報を反映させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、超音波を送受する複数の振動素子を配列したアレイ振動子と、前記アレイ振動子上の基準点と測定箇所を結ぶようにカーソルを設定する制御部と、前記アレイ振動子を制御することにより前記カーソルに対応した送信ビームを形成する送信部と、前記アレイ振動子から得られる信号を処理することにより前記カーソルに対応した受信ビームを形成する受信部と、を有し、前記制御部は、パルス波によるパルス波測定モードと連続波による連続波測定モードの一方から他方へ測定モードを切り換える場合に、一方の測定モードにおけるカーソルの設定情報を他方の測定モードにおけるカーソルの設定に反映させる、ことを特徴とする。
【0008】
望ましい具体例において、前記制御部は、カーソル上に測定箇所を示すゲートを設定し、前記設定情報として記憶される一方の測定モードに関するゲート位置情報に基づいて、測定モード間でゲート位置が維持されるように、他方の測定モードのカーソルとゲートを設定する、ことを特徴とする。
【0009】
望ましい具体例において、前記制御部は、前記設定情報として記憶される一方の測定モードに関するカーソル角度情報に基づいて、測定モード間でカーソル角度が維持されるように、他方の測定モードのカーソルを設定する、ことを特徴とする。
【0010】
望ましい具体例において、前記制御部は、パルス波測定モードにおいて、前記アレイ振動子上のパルス波基準点と測定箇所を結ぶようにパルス波カーソルを設定し、連続波測定モードにおいて、前記アレイ振動子上に予め設けられた複数の基準点候補の中から連続波基準点を選択し、連続波基準点と測定箇所を結ぶように連続波カーソルを設定する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記制御部は、パルス波測定モードから連続波測定モードへ切り換える場合に、測定モード間でゲート位置を維持しつつ、測定モード間でカーソル角度差が最小となる連続波基準点を選択して連続波カーソルを設定することを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記制御部は、パルス波測定モードから連続波測定モードへ切り換える場合に、測定モード間でゲート深さとカーソル角度を維持しつつ、パルス波基準点に最も近い連続波基準点を選択して連続波カーソルを設定する、ことを特徴とする。
【0013】
望ましい具体例において、前記制御部は、パルス波測定モードから連続波測定モードへ切り換える場合に、連続波による測定が可能な領域内で、パルス波カーソルのゲート位置に最も近い地点に連続波カーソルのゲートを設定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、パルス波の測定モードと連続波の測定モードにおいて互いに設定情報を反映させることが可能になる。例えば、本発明の好適な態様によれば、一方の測定モードにおけるカーソルの設定情報が他方の測定モードにおけるカーソルの設定に反映される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置を説明するための図である。
【図2】CWカーソルの原点の選択を説明するための図である。
【図3】カーソル設定の具体例1を説明するための図である。
【図4】カーソル設定の具体例2を説明するための図である。
【図5】カーソル設定の具体例3を説明するための図である。
【図6】本発明の実施において好適な超音波診断装置の内部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の好適な実施形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置を説明するための図である。アレイ振動子10は、超音波を送受する複数の振動素子で構成される。図1には、複数の振動素子を直線状に配列したリニアタイプのアレイ振動子10が図示されている。アレイ振動子10は、例えば数十個から数百個程度の複数の振動素子で形成される。具体的には、例えば200個の振動素子でアレイ振動子10が形成される。なお、リニアタイプに代えてコンベックスタイプのアレイ振動子10が利用されてもよい。
【0018】
アレイ振動子10は、超音波のパルス波と連続波を送受することができる。パルス波を利用した測定モード(PWモード)においては、アレイ振動子10が備える全ての振動素子のうちのいくつかの振動素子が利用されて超音波ビームが形成され、その超音波ビームに沿って受信信号が収集される。例えば、図1において、アレイ振動子10の左側から、いくつかの振動素子を利用して深さ方向に沿って超音波ビームを形成し、右側に向かって利用する振動素子と超音波ビームを移動させつつ受信信号を収集することにより、破線で囲まれた走査領域Sに対応したBモード画像が形成される。もちろん、パルス波を用いたパルスドプラの機能によりドプラ情報を得るようにしてもよい。
【0019】
連続波を利用した測定モード(CWモード)においては、CWカーソル(連続波カーソル)100が利用される。CWカーソル100は、アレイ振動子10上に設けられた原点P(連続波基準点)と血流などの測定箇所を結ぶように設定され、CWカーソル100上の測定箇所にはCWゲートCが設定される。そして、CWカーソル100に対応した連続波の送信ビームTBと受信ビームRBが形成される。
【0020】
送信ビームTBは、アレイ振動子10が備える全ての振動素子の中から選択される複数の送信用振動素子12を利用して形成され、一方、受信ビームRBは、アレイ振動子10が備える全ての振動素子の中から選択される複数の受信用振動素子14を利用して形成される。送信ビームTBと受信ビームRBは、例えばCWゲートCの位置を焦点とするように形成される。こうして、別々の振動素子を利用して連続波の送信と受信が実行され、例えば連続波ドプラの機能により測定箇所からドプラ情報などが得られる。
【0021】
本実施形態では、連続波を利用したCWモードとパルス波を利用したPWモードにおいて、一方の測定モードにおけるカーソルの設定情報が他方の測定モードにおけるカーソルの設定に反映される。例えば、CWモードからPWモードへ切り換わる場合に、測定モード間でカーソル角度とゲート位置が維持される。例えば、図1に示す設定状態でCWモードによる測定が行われた後にPWモードへ切り換えられると、CWカーソル100に重なるように図示しないPWカーソルが設定され、CWゲートCと同じ位置に図示しないPWゲートが設定される。
【0022】
PWモードからCWモードへ切り換わる場合にも、例えば、測定モード間でカーソル角度とゲート位置を維持することを優先条件とする。但し、以下に説明する原点の設定事情のために、この優先条件に従えない場合もある。
【0023】
PWモードの場合には、アレイ振動子10上の所望の位置に原点(パルス波基準点)を設定できる構成が望ましい。つまり、図1に示す原点Pと同じ位置にパルス波の原点を設定できる構成とする。連続波の原点とパルス波の原点を厳密に一致させることができない場合においては、実質的に同じ位置とみなせる程度に近接させればよい。
【0024】
これに対し、CWモードの場合には、アレイ振動子10上に予め設けられた複数の原点候補の中から連続波の原点が選択される。
【0025】
図2は、CWカーソルの原点の選択を説明するための図である。図2には、図1に示したアレイ振動子10とそのアレイ振動子10に対応した走査領域Sが図示されている。
【0026】
アレイ振動子10上には、予め複数の原点候補が設けられている。例えば、図2に示すように、右側原点Pと左側原点Pが設けられている。そして、これら二つの原点の中から診断に適した原点が選択される。例えば、CWカーソルの傾斜角度に基づいたエリアが設定され、そのエリアに応じて原点が選択される。
【0027】
R側エリアは、右側原点Pを通るようにCWカーソルを設定し、アレイ振動子10に対するCWカーソルの傾斜角度が+θから−θの範囲内となる三角形状の領域である。一方、L側エリアは、左側原点Pを通るようにCWカーソルを設定し、アレイ振動子10に対するCWカーソルの傾斜角度が+θから−θの範囲内となる三角形状の領域である。そして、重複エリアは、R側エリアとL側エリアが重なっている領域である。なお、傾斜角度θは例えば30度などに設定される。傾斜角度θをユーザ(検査者)が設定あるいは修正できるようにしてもよい。
【0028】
例えば、重複していないL側エリア内の測定対象OP1を診断する場合には、L側エリアに対応した左側原点Pが選択され、左側原点Pと測定対象OP1を結ぶようにCWカーソルが設定される。そして、複数の送信用振動素子12を利用して送信ビームが形成され、複数の受信用振動素子14を利用して受信ビームが形成される。これにより、右側原点Pを利用する場合よりも、アレイ振動子10に対するCWカーソルの傾斜角度が小さくなり、送信ビームと受信ビームのビーム特性が良好になり、測定の精度が向上する。
【0029】
一方、重複していないR側エリア内の測定対象OP2を診断する場合には、R側エリアに対応した右側原点Pが選択され、右側原点Pと測定対象OP2を結ぶようにCWカーソルが設定される。そして、複数の送信用振動素子12を利用して送信ビームが形成されて、複数の受信用振動素子16を利用して受信ビームが形成される。これにより、左側原点Pを利用する場合よりも、アレイ振動子10に対するCWカーソルの傾斜角度が小さくなり、送信ビームと受信ビームのビーム特性が良好になり測定の精度が向上する。
【0030】
なお、重複エリア内の測定対象OP3を診断する場合には、右側原点Pと左側原点Pのどちらが利用されてもよいし、アレイ振動子10に対するCWカーソルの傾斜角度の小さい方が選択されてもよい。また、測定対象の速度ベクトルとCWカーソルの交差角度に応じて一方の原点が選択されてもよい。
【0031】
測定対象の位置は、例えばユーザ(検査者)が設定する。この場合において、例えばユーザの指定する位置が重複していないR側エリア内にあると右側原点Pが選択される。そして、ユーザの指定する位置が移動され、重複していないR側エリア内から重複エリア内に入ると、どちらの原点が利用されてもよいため、例えば右側原点Pの選択が維持される。さらに、ユーザの指定する位置が移動され、重複エリア内から、重複していないL側エリアに入ると左側原点Pが選択される。
【0032】
このように、CWモードにおいては、アレイ振動子10上に予め設けられた複数の原点候補の中から連続波の原点が選択されるため、PWモードからCWモードへ切り換わる際に、測定モード間でカーソル角度とゲート位置を維持するという優先条件に従えない場合がある。そこで、優先条件に従えない場合におけるカーソル設定の具体例について説明する。
【0033】
図3は、カーソル設定の具体例1を説明するための図である。図3には、図1に示したアレイ振動子10とそのアレイ振動子10に対応した走査領域Sが図示されている。
【0034】
PWモードにおいて、図3に示す原点Pをパルス波の原点(パルス波基準点)としてPWカーソル(パルス波カーソル)200が設定され、さらに、そのPWカーソル200上にPWゲートPがされ、この設定状態で測定が行われたとする。つまり、PWカーソル200に対応した送信ビームと受信ビームが形成され、例えばPWゲートP内のドプラ情報が測定されたとする。
【0035】
このPWゲートP内のドプラ情報を連続波で測定したい場合に、ユーザ(検査者)はPWモードからCWモードへ装置の動作を切り換える。図3に示す具体例1では、PWモードからCWモードへ切り換えられる場合に、測定モード間でゲート位置を維持しつつ、測定モード間でカーソル角度差が最小となるように、CWモードの機能が設定される。
【0036】
つまり、PWゲートPと同じ位置にCWゲート(図示省略)が設定され、さらに、右側原点Pと左側原点Pのうち、CWカーソル100とPWカーソル200と角度差が小さくなる方の原点候補が選択される。図3の例では、右側原点Pが選択される。
【0037】
これにより、PWモードにおける測定条件に極めて近い条件でCWモードによる測定が可能になる。なお、必要に応じて、CWカーソル100とPWカーソル200の角度差を算出し、この角度差に基づいてCWモードで得られたドプラ情報またはPWモードで得られたドプラ情報を補正するなどしてから、両モードの測定結果を比較してもよい。
【0038】
図4は、カーソル設定の具体例2を説明するための図である。図3に示した設定例と同様に、図4には、原点Pをパルス波の原点としてPWカーソル200が設定され、さらに、そのPWカーソル200上にPWゲートPが設定された状態が図示されている。そして、この設定状態でPWカーソル200に対応した送信ビームと受信ビームが形成されて、例えばPWゲートP内のドプラ情報が測定されたとする。
【0039】
このPWゲートP内のドプラ情報を連続波で測定したい場合に、ユーザ(検査者)はPWモードからCWモードへ装置の動作を切り換える。図4に示す具体例2では、PWモードからCWモードへ切り換えられる場合に、測定モード間でゲートの深さとカーソルの角度を維持しつつ、パルス波の原点Pに最も近い原点候補が選択され、CWモードの機能が設定される。
【0040】
つまり、右側原点Pと左側原点Pのうち、原点Pに近い方の右側原点Pが選択され、アレイ振動子10に対する角度がPWカーソル200と同じになるように、CWカーソル100が設定され、さらに、PWゲートPと同じ深さにCWゲートCが設定される。
【0041】
頚動脈などの診断においては、走査領域S内で血管がアレイ振動子10の伸長方向に沿ってアレイ振動子10に対して平行に近い状態で配置される場合がある。例えば、このような場合に、図4の具体例2では、PWモードとCWモードにおいて同じビーム角度で同じ血管内の流れを測定することが可能になる。
【0042】
なお、診断状況などに応じて、図3に示した具体例1と図4に示した具体例2をユーザが選択できるようにしてもよい。
【0043】
図5は、カーソル設定の具体例3を説明するための図である。図3,4に示した設定例と同様に、図5には、原点Pをパルス波の原点としてPWカーソル200が設定され、さらに、そのPWカーソル200上にPWゲートPが設定された状態が示されている。そして、この設定状態でPWカーソル200に対応した送信ビームと受信ビームが形成されて、例えばPWゲートP内のドプラ情報が測定されたとする。
【0044】
このPWゲートP内のドプラ情報を連続波で測定したい場合に、ユーザ(検査者)はPWモードからCWモードへ装置の動作を切り換える。図5に示す具体例3では、PWモードからCWモードへ切り換えられる場合に、連続波による測定が可能な領域内で、PWゲートPの位置に最も近い地点に、CWゲートCが設定される。
【0045】
つまり、連続波による測定が可能なR側エリアとL側エリアのうち、PWゲートPの位置に最も近い地点として、R側エリアの境界にCWゲートCが設定され、さらに、右側原点Pを連続波の原点としてR側エリアの境界に沿ってCWカーソル100が設定される。
【0046】
なお、連続波による測定が可能なR側エリアとL側エリアのうち、PWゲートPと同じ深さでPWゲートPの位置に最も近い地点に、CWゲートCを設定するようにしてもよい。
【0047】
図6は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の内部構成を示す図である。アレイ振動子10は、図1に示したものであり、超音波を送受する複数の振動素子で構成される。図6には、200個(200素子)の振動素子で形成されたアレイ振動子10が図示されている。図6において、アレイ振動子10内に記載された数字は素子番号である。
【0048】
セレクタ20は、アレイ振動子10を構成する複数の振動素子の中から、送受信部30に電気的に接続されるいくつかの振動素子を選択する回路である。セレクタ20は、例えば200個の振動素子の中から連続的に配列された100個の振動素子を選択し、1個の振動素子を1チャンネルに対応付けることにより、選択した100個の振動素子を100チャンネルの信号線を介して送受信部30に接続する。セレクタ20は、選択する振動素子を段階的に移動させる。これにより、例えば、リニア走査が実現される。
【0049】
例えば、素子番号1〜100までの振動素子が選択されると、送受信部30は、これらの振動素子を利用してパルス波の超音波を送受させることにより、送信ビームと受信ビームを形成し、受信ビームに沿って受信信号を収集する。次に、例えば、素子番号2〜101までの振動素子が選択され、送受信部30は、これらの振動素子を利用して受信ビームを形成して受信信号を収集する。さらに、選択する100個の振動素子を段階的に移動させつつ受信信号を収集する。こうして、収集された受信信号に基づいて、パルス波処理部40がBモード画像を形成する。これにより、例えば、図1の走査領域Sに対応したBモード画像が形成されて表示部60に表示される。
【0050】
また、PWモードのドプラ計測では、PWカーソル200(図3等)に対応した送信ビームと受信ビームが形成され、パルス波処理部40が、その受信ビームに沿って得られる受信信号からPWゲートP内のドプラ情報を抽出して解析し、速度情報などを示したドプラ画像を形成する。こうして形成されたドプラ画像も表示部60に表示される。
【0051】
CWモードの場合には、セレクタ20により選択された100個の振動素子が、さらに50個の送信用振動素子と50個の受信用振動素子に使い分けられる。例えば、送受信部30に含まれる送受信回路の一部が、送信専用の連続波送信部として利用される。そしてセレクタ20により選択された100個の振動素子のうちの50個が、送信用振動素子として連続波送信部に接続される。また、送受信部30に含まれる送受信回路の一部が、受信専用の連続波受信部として利用され、セレクタ20により選択された100個の振動素子のうちの残りの50個が、受信用振動素子として連続波受信部に接続される。
【0052】
これにより、例えば、図2に示す複数の送信用振動素子12が図6に示す送受信部30の連続波送信部に接続され、図2に示す複数の受信用振動素子14または複数の受信用振動素子16が選択的に図6に示す送受信部30の連続波受信部に接続される。
【0053】
PWモードからCWモードあるいはCWモードからPWモードへと測定モードが切り換えられると、制御部70は、図1から図5を利用して説明したように、切り換え前の測定モードにおけるカーソルの設定情報を反映させつつ、切り換え後の測定モードにおけるカーソルを設定する。
【0054】
なお、CWモードの場合に、セレクタ20は、連続波の原点の位置に応じて、複数の送信用振動素子と複数の受信用振動素子を選択する。例えば、図2において、原点として左側原点Pが設定された場合には、複数の送信用振動素子12と複数の受信用振動素子14が選択され、原点として右側原点Pが設定された場合には、複数の送信用振動素子12と複数の受信用振動素子16が選択される。この例においては、左側原点Pの場合と右側原点Pの場合の両方において複数の送信用振動素子12が共用される。つまり、複数の送信用振動素子12と連続波送信部の接続関係を維持したまま、複数の受信用振動素子14,16と連続波受信部の接続状態を切り換えるだけでよい。そのため、セレクタ20に関わる回路構成を比較的単純にすることができる。
【0055】
また、CWモードの場合に、送受信部30の連続波送信部は、例えば図1に示すように複数の送信用振動素子12を送信制御することにより、CWカーソル100に応じた送信ビームTBを形成し、送受信部30の連続波受信部は、複数の受信用振動素子14から得られる信号を受信処理することによりCWカーソル100の方向に応じた受信ビームRBを形成する。そして、図6の連続波処理部50は、受信ビームに沿って得られる受信信号に含まれるドプラ情報を解析し、受信ビームに沿って得られる速度情報などを示したドプラ画像を形成する。こうして形成されたドプラ画像も表示部60に表示される。
【0056】
なお、図2から5においては、連続波の原点候補として、右側原点Pと左側原点Pの2点の例を説明したが、原点候補は2点に限らない。例えば、アレイ振動子10上のある位置に原点を設定し、その原点を間に挟むように、セレクタ20が複数の送信用振動素子と複数の受信用振動素子を選択する回路構成とすることにより、アレイ振動子10上の多数の位置を原点候補とすることも可能である。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0058】
10 アレイ振動子、12 送信用振動素子、14,16 受信用振動素子、20 セレクタ、30 送受信部、40 パルス波処理部、50 連続波処理部、100 CWカーソル、200 PWカーソル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受する複数の振動素子を配列したアレイ振動子と、
前記アレイ振動子上の基準点と測定箇所を結ぶようにカーソルを設定する制御部と、
前記アレイ振動子を制御することにより前記カーソルに対応した送信ビームを形成する送信部と、
前記アレイ振動子から得られる信号を処理することにより前記カーソルに対応した受信ビームを形成する受信部と、
を有し、
前記制御部は、パルス波によるパルス波測定モードと連続波による連続波測定モードの一方から他方へ測定モードを切り換える場合に、一方の測定モードにおけるカーソルの設定情報を他方の測定モードにおけるカーソルの設定に反映させる、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、カーソル上に測定箇所を示すゲートを設定し、前記設定情報として記憶される一方の測定モードに関するゲート位置情報に基づいて、測定モード間でゲート位置が維持されるように、他方の測定モードのカーソルとゲートを設定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、前記設定情報として記憶される一方の測定モードに関するカーソル角度情報に基づいて、測定モード間でカーソル角度が維持されるように、他方の測定モードのカーソルを設定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、パルス波測定モードにおいて、前記アレイ振動子上のパルス波基準点と測定箇所を結ぶようにパルス波カーソルを設定し、連続波測定モードにおいて、前記アレイ振動子上に予め設けられた複数の基準点候補の中から連続波基準点を選択し、連続波基準点と測定箇所を結ぶように連続波カーソルを設定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、パルス波測定モードから連続波測定モードへ切り換える場合に、測定モード間でゲート位置を維持しつつ、測定モード間でカーソル角度差が最小となる連続波基準点を選択して連続波カーソルを設定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、パルス波測定モードから連続波測定モードへ切り換える場合に、測定モード間でゲート深さとカーソル角度を維持しつつ、パルス波基準点に最も近い連続波基準点を選択して連続波カーソルを設定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記制御部は、パルス波測定モードから連続波測定モードへ切り換える場合に、連続波による測定が可能な領域内で、パルス波カーソルのゲート位置に最も近い地点に連続波カーソルのゲートを設定する、
ことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−200416(P2011−200416A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70353(P2010−70353)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】