説明

超音波診断装置

【課題】超音波画像と音声データの間の綿密な対応関係を実現する。
【解決手段】画像形成部18において形成された複数のイメージデータに基づいて、Bモード画像やドプラ画像などの超音波画像が形成される。音声データ処理部22は、マイクロフォン32を介して得られる信号に基づいて音声データを形成し、超音波画像内の関心位置とその関心位置に関する音声データとを互いに対応付けて、その音声データをデータ記憶部24に記憶する。そして、超音波画像の再生時にその超音波画像の音声データが記憶された関心位置に音声アイコンが表示され、音声アイコンに対するユーザ操作に応じてその音声アイコンに対応した音声データが再生される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置に関し、特に、音声データを記憶する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置を利用して得られた超音波画像に対して、診断時における検査者の所見などを補助的に付け加える技術が知られている。例えば、超音波画像にコメント文などの文字データが添付されて記録される。また、文字データの入力におけるキーボード操作の煩雑さを解消するために音声データを記録する技術も提案されている。例えば、特許文献1から3には、超音波画像の画像データと音声データとを互いに関連付けて記憶する旨の技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−175832号公報
【特許文献2】特開2003−126091号公報
【特許文献3】特開2004−113393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した背景技術に鑑み、本願の発明者は、超音波画像の画像データと音声データを互いに関連付けて記憶する技術について研究開発を重ねてきた。
【0005】
本発明は、その研究開発の過程において成されたものであり、その目的は、超音波画像と音声データの間の綿密な対応関係を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的にかなう好適な超音波診断装置は、超音波を送受する複数の振動素子を備えたプローブと、複数の振動素子から得られる信号に基づいて超音波ビームに沿った受信信号を形成する受信処理部と、超音波ビームに沿った受信信号に基づいて超音波画像の画像データを形成する画像形成部と、超音波画像内の関心位置と当該関心位置に関する音声データとを互いに対応付けて当該音声データを記憶する音声データ処理部と、を有することを特徴とする。
【0007】
望ましい具体例において、前記音声データ処理部は、関心位置の座標データと当該関心位置に関する音声データとを互いに対応付けたテーブルを形成する、ことを特徴とする。
【0008】
望ましい具体例において、前記音声データ処理部は、複数のフレームで構成される超音波画像の各フレームごとに関心位置の座標データと当該関心位置に関する音声データとを互いに対応付けたテーブルを形成する、ことを特徴とする。
【0009】
望ましい具体例において、前記音声データ処理部は、関心位置を指定するユーザ操作に応じて当該関心位置に関する音声データの取得を開始する、ことを特徴とする。
【0010】
望ましい具体例において、前記音声データ処理部は、終了を指示するユーザ操作、無音状態と判断された時間長、又は、取得を開始してからの時間長、に基づいて音声データの取得を終了する、ことを特徴とする。
【0011】
望ましい具体例において、前記超音波診断装置は、超音波画像を再生する際に当該超音波画像の音声データが記憶された関心位置に音声アイコンを表示することを特徴とする。
【0012】
望ましい具体例において、前記超音波診断装置は、前記音声アイコンに対するユーザ操作に応じて当該音声アイコンに対応した音声データを再生する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、超音波画像と音声データの間の綿密な対応関係が実現される。例えば、本発明の好適な態様によれば、超音波画像内の関心位置とその関心位置に関する音声データとを互いに対応付けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。
【図2】音声データ処理部が形成する管理テーブルを説明するための図である。
【図3】音声データの取得と再生を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施において好適な超音波診断装置の全体構成を示す図である。プローブ10は、例えば生体などの被検体に対して超音波を送受する超音波探触子である。プローブ10は、各々が超音波を送受する複数の振動素子を備えており、複数の振動素子が送信ビームフォーマ12によって送信制御されて送信ビームが形成される。また、複数の振動素子が被検体から反射された超音波を受波し、これにより得られた信号が受信ビームフォーマ14へ出力され、受信ビームフォーマ14が受信ビームに沿ったビームデータを形成する。
【0017】
なお、ビームデータは、例えば、RF信号のデータ(RFデータ)であるが、RF信号に対して直交検波処理した後のデータ(同相成分データと直交成分データ)をビームデータとしてもよい。ビームデータは、各受信ビームごとに形成される。つまり、複数の受信ビームに対応した複数のビームデータが次々に形成される。
【0018】
ビームプロセッサ16は、受信ビームフォーマ14から得られる複数のビームデータの各々に対して受信処理を施して複数のラインデータを形成する。なお、ビームプロセッサ16は、受信処理として、例えば、検波や直交検波や対数圧縮処理や空間フィルタ処理等の各種フィルタ処理や周波数解析処理などを適宜実行する。
【0019】
画像形成部18は、ビームプロセッサ16から得られるラインデータに対して画像処理を施してイメージデータを形成する。画像形成部18は、各フレームごとに、そのフレームに属する複数のラインデータからイメージデータを形成し、複数のフレームに対応した複数のイメージデータを次々に形成する。画像形成部18において形成された複数のイメージデータに基づいて、Bモード画像やドプラ画像などの超音波画像が形成される。
【0020】
データ処理部20は、画像形成部18から得られる複数のイメージデータに基づいて、超音波画像を含んだ表示画像を形成する。こうして形成された表示画像が表示部40に表示される。データ処理部20は、音声データ処理部22を含んでいる。
【0021】
音声データ処理部22は、マイクロフォン32を介して得られる信号に基づいて音声データを形成し、超音波画像内の関心位置とその関心位置に関する音声データとを互いに対応付けて、その音声データをデータ記憶部24に記憶する。音声データ処理部22は、操作デバイス34を介して入力されるユーザ操作に応じて音声データの記憶処理を行う。なお、音声データに加えて、超音波画像の画像データもデータ記憶部24に記憶される。
【0022】
データ処理部20とそれに接続されるデータ記憶部24や操作デバイス34などの複数の機能ブロックは、例えば汎用のコンピュータにより実現することができる。例えば、データ記憶部24は、比較的安価で大容量なハードディスクで実現できる。
【0023】
以上のように、図1の超音波診断装置は、音声データ処理部22を備えており、超音波画像内の関心位置とその関心位置に関する音声データとを互いに対応付けて、その音声データと超音波画像の画像データをデータ記憶部24に記憶する。データ記憶部24に記憶された音声データと画像データは、通信部50を介して、図示しないコンピュータなどに転送されてもよい。
【0024】
次に、図1の超音波診断装置による超音波画像と音声データの対応付けについて説明する。なお、既に図1に示した部分(構成)については、以下の説明においても図1の符号を利用する。
【0025】
図2は、音声データ処理部22が形成する管理テーブルを説明するための図である。データ記憶部24には、複数の画像、例えば互いに異なる複数の被検者から得られる複数の画像に関するデータを記憶することができる。図2には、複数の画像のうちの画像番号Iについてのテーブル内容が図示されている。
【0026】
音声データ処理部22は、複数のフレームで構成される超音波画像の各フレームごとに関心位置の座標データとその関心位置に関する音声データとを互いに対応付けた管理テーブルを形成する。
【0027】
例えば、図2に示すように、フレーム番号1のフレームに対して、複数の関心ポイント(関心位置)が設定される。そして、各関心ポイントごとに、関心ポイントを識別するための番号とその関心ポイントのフレーム内における位置を示す座標データが記憶される。例えば、番号1の関心ポイントは、XY座標系で表現されるフレーム内における座標値が(x1,y1)である。さらに、各関心ポイントごとに、その関心ポイントに対応した音声データのファイル名(音声ファイル名)が記憶される。例えば、番号1の関心ポイントには、音声ファイル名Audio1−1の音声データが対応付けられている。
【0028】
フレーム番号1と同様に、他のフレームについても、例えばフレーム番号2のフレームに対しても、複数の関心ポイント(関心位置)が設定され、各関心ポイントごとに、関心ポイントを識別するための番号とその関心ポイントの位置を示す座標データが記憶され、さらに、各関心ポイントごとに、その関心ポイントに対応した音声データのファイル名が記憶される。
【0029】
音声データ処理部22は、関心ポイントを指定するユーザ操作に応じて、その関心ポイントに関する音声データの取得を開始し、終了を指示するユーザ操作などに応じて音声データの取得を終了する。音声データ処理部22は、音声データを取得する度に、関心ポイントと音声データを対応付けて、図2に示す管理テーブルを形成する。管理テーブルは、例えばデータ記憶部24に記憶される。
【0030】
図3は、音声データの取得と再生を説明するための図であり、図3には、その取得と再生において利用される表示画像100が示されている。表示画像100は、データ処理部20において形成されて表示部40に表示される。表示画像100には、画像形成部18から得られる複数のイメージデータに基づいて形成される超音波画像120と、超音波画像などを解析することにより得られるグラフなどの診断情報130が含まれている。
【0031】
音声データを取得する際、ユーザ(検査者)は、例えば、被検者の対象組織Oに関する動画の超音波画像120を含んだ表示画像100を表示させ、例えば目的とする症状が現れた際に、マウスなどの操作デバイス34を利用して、その目的とする症状が現れた画像位置に関心ポイントを設定する。例えば、ダブルクリック操作により関心ポイントが設定される。そして、その関心ポイントの位置に音声アイコンが表示される。例えば、図3に示すように、ユーザ操作に応じて関心ポイントP1が設定され、関心ポイントP1の位置に音声データ1の音声アイコンが表示される。
【0032】
関心ポイントの位置が指定され音声アイコンが表示されると、音声データ処理部22は音声データの取得を開始する。ユーザは、マイクロフォン32を利用して、例えば目的とする症状に関する所見などを音声により入力する。音声データ処理部22は、マイクロフォン32から得られる音声信号に基づいて音声データを形成する。そして、ユーザが音声アイコンをクリックすることにより、音声データ処理部22は、音声データの取得を終了して音声ファイルのクロージング処理を行い、音声ファイル名を付けてファイルを確定する。
【0033】
なお、マイクロフォン32を介して入力される音声の無音時間が所定時間を経過した場合に音声データの取得を終了させてもよいし、予め設定された録音時間を経過した場合に音声データの取得を終了させてもよい。また、音声データの取得を終了させた後に音声アイコンを非表示としてもよい。
【0034】
関心ポイントP1に対応した音声データ1が取得された後に、ユーザ操作に応じて関心ポイントP2の位置が指定されると、その位置に音声データ2の音声アイコンが表示され、関心ポイントP2に対応した音声データ2を取得することができる。複数のフレームで構成される超音波画像120の各フレームごとに複数の関心ポイントを指定することができる。また、音声データを取得する度に、関心ポイントと音声データを対応付けて、管理テーブル(図2参照)が形成される。
【0035】
なお、図3に示すように、診断情報130内に関心ポイントが設定され、その関心ポイントに対応した音声データ3が取得されてもよい。
【0036】
次に、音声データを再生する際、ユーザは、例えばデータ記憶部24に記憶された複数の画像データの中から、診断対象となる被検者の画像データを選択し、これにより、図3に示すように、対象組織Oに関する動画の超音波画像120を含んだ表示画像100が再生される。そして、複数のフレームで構成される超音波画像120が再生され、関心ポイントが設定されているフレームを再生する際に音声アイコンが表示される。例えば、関心ポイントP1が設定されたフレームを再生する際に、そのフレームの前後数秒間程度に亘って、関心ポイントP1の位置に音声データ1の音声アイコンが表示される。
【0037】
ユーザは、マウスなどの操作デバイス34を利用して、表示された音声アイコンに対して操作を行うことにより、例えば音声アイコンをクリックすることにより、音声データを再生させる。例えば、ユーザが音声データ1の音声アイコンをクリックすると、音声データ処理部22が、管理テーブル(図2参照)を参照してデータ記憶部24に記憶された複数の音声データ(音声ファイル)の中から音声データ1のデータを読み出し、音声データ1を再生する。音声データに対応した音声は、例えばスピーカやイヤホンなどから出力される。
【0038】
なお、ユーザによる音声アイコンのクリック操作を省略し、例えば、超音波画像120の再生と並行して、超音波画像120に含まれる全ての音声データを順次再生するようにしてもよい。また、音声認識処理を利用して音声データからコメントデータ(テキストデータ)を形成し、音声データの再生に代えて又は音声データの再生に加えて、その音声データに対応した文字によるコメントを表示画像100内に表示させてもよい。
【0039】
上述した実施形態によれば、超音波画像内の関心位置とその関心位置に関する音声データが互いに対応付けられているため、例えば、通信部50を介して音声データと画像データを遠隔地へ送信することにより、超音波画像と音声データの間の綿密な対応関係を利用した詳細な遠隔診療が可能になる。また、胎児の超音波画像に対してその胎児の親の音声データを対応付けることにより、画像に音声を付加したデータをその親に提供するなどのサービスも実現できる。
【0040】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0041】
18 画像形成部、20 データ処理部、22 音声データ処理部、24 データ記憶部、32 マイクロフォン、34 操作デバイス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を送受する複数の振動素子を備えたプローブと、
複数の振動素子から得られる信号に基づいて超音波ビームに沿った受信信号を形成する受信処理部と、
超音波ビームに沿った受信信号に基づいて超音波画像の画像データを形成する画像形成部と、
超音波画像内の関心位置と当該関心位置に関する音声データとを互いに対応付けて当該音声データを記憶する音声データ処理部と、
を有する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置において、
前記音声データ処理部は、関心位置の座標データと当該関心位置に関する音声データとを互いに対応付けたテーブルを形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記音声データ処理部は、複数のフレームで構成される超音波画像の各フレームごとに関心位置の座標データと当該関心位置に関する音声データとを互いに対応付けたテーブルを形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記音声データ処理部は、関心位置を指定するユーザ操作に応じて当該関心位置に関する音声データの取得を開始する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項4に記載の超音波診断装置において、
前記音声データ処理部は、終了を指示するユーザ操作、無音状態と判断された時間長、又は、取得を開始してからの時間長、に基づいて音声データの取得を終了する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
超音波画像を再生する際に当該超音波画像の音声データが記憶された関心位置に音声アイコンを表示する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項6に記載の超音波診断装置において、
前記音声アイコンに対するユーザ操作に応じて当該音声アイコンに対応した音声データを再生する、
ことを特徴とする超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−92249(P2011−92249A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246360(P2009−246360)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】