説明

超音波診断装置

【課題】配線を複雑化せずに、グループの送信遅延時間を振動子に適切に割り当てることが可能な超音波診断装置を提供する。
【解決手段】実施形態の超音波診断装置は、複数の振動子、タイミングパルス発生手段、スイッチ手段、及びスイッチ制御手段を有する。振動子は超音波が送信される。タイミングパルス発生手段は、各振動子に対応するチャネルに遅延時間に基づくタイミングパルスを出力する出力端子を有し、複数の出力端子が二以上の所定数ずつの出力端子のグループに分割され、前記グループ毎に所定の時間範囲内の前記送信遅延時間を生成する。スイッチ手段は、チャネルと出力端子とを選択的に接続させる。スイッチ制御手段は、複数のチャネルを所定数と同数ずつのチャネルの領域に分割し、チャネルと出力端子とを接続させることにより、グループと領域とを対応させるようにスイッチ手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、3次元の超音波画像をリアルタイムに表示可能な二次元アレイプローブが開発され、診断に用いられてきている。このプローブには、数千個に及ぶ振動子による送受信を制御する電子回路が内蔵されている。
【0003】
送信時において、振動子から送信される超音波波面が焦点でそろうように遅延時間が設定され、遅延時間に基づくタイミングパルスがタイミングパルス発生手段の遅延回路から生成され、出力端子から振動子のチャネル(channel:振動子への又は振動子から信号経路をチャネルという。)に出力される。
【0004】
そして、タイミングパルスに基づく高周波の電圧パルスがパルサから振動子に出力され、それにより、振動子が駆動される。
【0005】
タイミングパルス発生手段には、遅延回路を含む複数機能の回路を一つにまとめた集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)が用いられている。
【0006】
タイミングパルス発生手段はプローブのケースに収容されている。通常、ケースの収容量は100cc程度しかないため、タイミングパルス発生手段の回路規模は可能な限り小さくした方が好ましい。
【0007】
遅延回路を1つの種類で構成したのでは、回路規模が大きくなってしまう。そこで、図8に示すように、遅延回路を、共通の粗い遅延時間を設定する粗調整回路と、それより細かい遅延時間を設定する細調整回路の2種類で構成する。さらに、配列された振動子を複数の領域に分け、タイミングパルス発生手段を複数のグループに分割し、グループ毎に2種類の回路を持たせる。さらに、グループと領域(複数の振動子から構成される領域)とを対応させる。図8では、複数のグループの一部をG0〜G7の符号を付して示す。例えば、グループG0は、0[μs]の遅延時間を設定する粗調整回路と、0.1[μs]間隔で9つの遅延時間を設定する細調整回路とを有する。すなわち、グループG0においては、0[μs]〜0.8[μs]の時間範囲内で、グループG0に対応する領域内の振動子に遅延時間が割り当てられる。また、例えば、グループG7は、7.0[μs]の遅延時間を設定する粗調整回路と、0.1[μs]間隔で9つの遅延時間を設定する細調整回路とを有する。すなわち、グループG7においては、7.0[μs]〜7.8[μs]の時間範囲内で、グループG7に対応する領域内の振動子に遅延時間が割り当てられる。以上により、グループ毎に遅延時間の範囲を異ならせることが可能となる。このように、グループ内の2種類の回路を用いて、領域内の振動子に遅延時間を割り当てればよいので、それぞれの種類の回路を小型にでき、全体的な回路規模を小さくすることが可能となる。なお、振動子とチャネルとは対応しているので、振動子の領域というときは、チャネルの領域をいう場合がある。
【0008】
タイミングパルス発生手段のグループは、例えば診断モードに応じて選択される。このとき、そのグループに対応する領域が一義的に選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−42244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、一義的に選択された領域によっては、領域内の振動子同士が許容範囲以上に離れて配置されていて、そのような振動子の遅延時間が設定可能な範囲を超える場合があり、その結果、振動子の遅延が不十分となって、偏向角度や開口が制約され、画質や感度の劣化の要因となる。
【0011】
図9は比較例に係る超音波探触子の一部を示す模式図である。図9では、9×8のマトリクス状に配列された振動子を行列の番号(a11〜a98)を付して示し、グループG1及びG2に対応する領域を太線で囲った領域A1及びA2として示す。
【0012】
図9を参照して、振動子にどのように遅延時間を割り当てるかについて説明する。なお、領域A1に割り当てられるグループG1の遅延時間の範囲を0[μs]〜0.8[μs]とする。また、領域A2に割り当てられるグループG2の遅延時間の範囲を0.3[μs]〜1.1[μs]とする。
【0013】
図9に示す領域A1において、3×3の形状に配列された振動子a14、a15、…、a36に、グループG1の遅延時間0[μs]、0.1[μs]、…、0.8[μs]が割り当てられる。
【0014】
これに対し、図9に示すA2において、3×3の形状でない変形形状に配列振動子a17、a18、a27、a28、a37、a38、a48、a58、a68に、遅延時間を割り当てるとき、例えば、振動子a17、a18、a27、a28、a37、a38、a48に、0.3[μs]、0.4[μs]、0.6[μs]、0.7[μs]、0.9[μs]、1.0[μs]、1.1[μs]の遅延時間が割り当てられる。しかし、振動子a58、a68に割り当てるべき遅延時間がグループの遅延時間の範囲(0.3[μs]〜1.1[μs])を超えているため、仮に、振動子a58、a68に1.1[μs]の遅延時間を割り当てたとしても、それらの振動子a58、a68の遅延が不十分となる。遅延が不十分な振動子を図9にハッチングを付して示す。
【0015】
このように、振動子の遅延が不十分になる要因は、数千個の振動子を例えば領域A1のような3×3の形状で分割していくと、領域A2のような変形形状の領域が端数として生じてしまうことにある。
【0016】
端数が生じないような領域に分割すればよいのだが、例えば、そのように分割された領域は一つの診断モードに対応していても、他の診断モードに対応しているとは限らない。その結果、診断モードに応じて、分割された領域が異なる種類のプローブを用意する必要がある。
【0017】
仮に、遅延時間の範囲が1.1[μs]を超える他のグループが存在したとして、そのグループと領域A2とを対応させればよいのだが、振動子のチャネルと他のグループの出力端子との接続を無理に配線しようとすると、配線が複雑化し、グループの遅延時間を振動子に適切に割り当てることが困難になるという問題点があった。
【0018】
この実施形態は、上記の問題を解決するものであり、配線を複雑化せずに、グループの遅延時間を振動子に適切に割り当てることが可能な超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、実施形態の超音波診断装置は、複数の振動子、タイミングパルス発生手段、スイッチ手段、及びスイッチ制御手段を有する。振動子は超音波が送信される。タイミングパルス発生手段は、各振動子に対応するチャネルに遅延時間に基づくタイミングパルスを出力する出力端子を有し、複数の出力端子が二以上の所定数ずつの出力端子のグループに分割され、前記グループ毎に所定の時間範囲内の前記送信遅延時間を生成する。スイッチ手段は、チャネルと出力端子とを選択的に接続させる。スイッチ制御手段は、複数のチャネルを所定数と同数ずつのチャネルの領域に分割し、チャネルと出力端子とを接続させることにより、グループと領域とを対応させるようにスイッチ手段を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施形態に係る超音波診断装置の構成ブロック図。
【図2】振動子がマトリクス状に配列された超音波探触子の模式図。
【図3】送信回路のブロック図。
【図4】タイミングパルス発生手段の回路を示す模式図。
【図5】マトリクススイッチの一部を示す模式図。
【図6】マトリクススイッチの一部を示す模式図。
【図7】超音波探触子の一部を示す模式図。
【図8】グループの回路構成を示す模式図。
【図9】比較例に係る超音波探触子の一部を示す模式図。
【図10】比較例に係る超音波探触子の一部を示す模式図。
【図11】診断モードの選択から超音波の送信までの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本実施形態に係る超音波診断装置について図面を参照して説明する。
図1は実施形態に係る超音波診断装置の構成ブロック図である。
【0022】
図1に示すように、超音波診断装置は、超音波探触子1、送信回路3、受信走査手段4、振幅検出手段5、血流情報検出手段6、表示処理手段7、及びディスプレイ8を有している。
【0023】
(超音波探触子)
超音波探触子1は、被検体の内部を超音波により電子的に高速で走査することができるように、電気信号と音響信号とを相互変換するための数千個の振動子を有している。それぞれの振動子はマトリクス状に配列されている。
【0024】
図2は、マトリクス状に配された振動子の一部の模式図である。
【0025】
図2に示すように、例えば、振動子が9×8のマトリクス状に配されている。図2では、振動子の符号を、その振動子が配列されている行番号、列番号の組み合わせで示す。例えば、1行1列の振動子〜9行8列の振動子を、a11〜a98の符号で示す。
【0026】
図3は送信回路のブロック図である。図3では、振動子のチャネルを、振動子と同じ符号a11、a12,a13及びa96、a97、a98で示す。
【0027】
(送信回路)
次に送信回路について図1及び図3を参照して説明する。送信回路3は、クロック発生器(図示省略)、分周器(図示省略)、タイミングパルス発生手段31、パルサ32、スイッチ手段33、及びスイッチ制御手段34を有している。クロック発生器は、クロックパルスを発生する。分周器は、クロックパルスを例えば5MHz程度のパルスに落とす。なお、超音波プローブは、タイミングパスル発生手段31、パルサ32、スイッチ手段33、及びその全部または一部のスイッチ制御手段34により構成されている。スイッチ制御手段34の一部が超音波プローブに設けられる場合、スイッチ制御手段34の他の部分は超音波診断装置の本体側に設けられる。
【0028】
タイミングパルス発生手段31は、このクロックパルスに基づいてタイミングパルスを出力端子から出力する。図3では、タイミングパルス発生手段31の一部を模式的に示している。なお、タイミングパルス発生手段31の詳細について後述する。
【0029】
パルサ32は、タイミングパルスを基に高周波の電圧パルスを発生し、超音波探触子1の振動子を駆動することで機械的に振動させる。それにより、振動子から超音波を発生させる。図3では、パルス32の一部を模式的に示している。なお、パルス32の詳細について後述する。
【0030】
発生された超音波は、被検体内の音響インピーダンスの境界で反射して、超音波探触子1に戻ってきて、振動子を機械的に振動する。これにより各振動子に電気信号が個別に発生する。
【0031】
(受信走査手段)
受信走査手段4は、この電気信号を増幅・整相加算する。これにより、指向性を有する信号(エコー信号)が生成される。
【0032】
(振幅検出手段)
振幅検出手段5では、受信走査手段4からのエコー信号に基づいて、組織の形態的な情報を提供するBモード像データを生成する。表示処理手段7は、上述した振幅検出手段5で生成したBモード像データを用いて組織形態画像断面表示を行う。
【0033】
(血流情報検出手段)
血流情報検出手段6は、いわゆるカラードプライメージング(CDI)を実現するユニットであり、まず、受信走査手段4からのエコー信号を直交位相で検波して周波数偏移を受けたドプラ信号を取り出し、この取り出したドプラ信号からMTIフィルタで特定の周波数成分だけを通し、その通過した信号の周波数を自己相関器により求め、この周波数から演算部で平均速度、分散、パワーを演算するように構成されている。
【0034】
なお、MTIフィルタの通過帯域を調整することにより、主に血流を映像化する一般的なドプラモード(このモードによる画像データを血流ドプラ画像データと称する)と、主に心筋等の臓器を映像化する組織ドプラモード(このモードによる画像データを組織ドプラ画像データと称する)とを切り替えることができるようになっている。
【0035】
(表示処理手段、ディスプレイ)
また、表示処理手段7は、上述した血流情報検出手段6で生成した血流ドプラ画像データと組織形態画像データを、合成して表示する。この組織形態画像データと機能画像データとの合成画像は、ディスプレイ8に表示される。
【0036】
次に、送信回路3の詳細について図3及び図4を参照して説明する。図4はタイミングパルス発生手段31の回路を示す模式図である。
【0037】
(タイミングパルス発生手段)
タイミングパルス発生手段31は、複数(例えば200〜300)のグループに分割されている。図3では、その中の8グループを抜粋し、G0〜G7の符号を付して示す。
【0038】
各グループは同じ構成をしている。以下、一つのグループを代表して説明する。グループは、0[μs]〜7[μS]までの時間を粗い遅延時間(例えば、1.0μS)毎に設定する1つの回路(粗遅延設定回路:図8参照)と、0[μs]〜0.8[μs]までの時間を細かい遅延時間(例えば、0.1[μs])毎に設定する9つの回路(細遅延設定回路)とにより構成されている。
【0039】
グループが設定する遅延時間は、粗い遅延時間及び細かい遅延時間を加算した時間となる。例えば、グループG0において、粗い遅延時間を5.0[μs]とし、細かい遅延時間を0[μs]、0.1[μs]、…、0.8[μs]とすると、グループG0の遅延時間は、5.0[μs]、5.1[μs]、…、5.8[μs]となる。
【0040】
また、例えば、グループG1において、粗い遅延時間を6.0[μs]とし、細かい遅延時間を0[μs]、0.1[μs]、…、0.8[μs]とすると、グループG0の遅延時間は、6.0[μs]、6.1[μs]、…、6.8[μs]となる。
以上のようにして、細かい遅延時間と組み合わせられる粗い遅延時間をグループ間で異ならせることにより、振動子に割り当られる複数種類の送信遅延時間を備えることが可能となる。
【0041】
図4において、3×3のマトリクス状に配された細遅延設定回路を、グループの符号、行番号及び列番号の組み合わせで示す。例えば、グループG0において、1行1列目〜3行3列目の細遅延設定回路を、G011〜G033の符号で示す。また、例えば、グループG7において、1行1列目〜3行3列目の細遅延設定回路を、G711〜G733の符号で示す。
【0042】
なお、細遅延設定回路の出力端子を、回路の符号と同じ符号を付して図3に示す。図3では、代表として、グループG0における細遅延設定回路G011、G012、G013の出力端子を、符号G011、G012、G013で示す。また、グループG7における細遅延設定回路G731、G732、G733の出力端子を、符号G731、G732、G733で示す。例えば、G011〜G033の出力端子から出力されるタイミングパルスは、5.0[μs]、5.1[μs]、…、5.8[μs]の遅延がかけられる。
【0043】
(パルサ)
次に、パルサ32について図3を参照して説明する。図3に、パルサ32を構成する複数の増幅器をマトリクス状に配列されたパルサ32を示す。パルサ32は、スイッチ手段33と超音波探触子1との間に配置され、増幅器の入力端子がスイッチ手段33を介してタイミングパスル発生手段31の出力端子に接続され、増幅器の出力側が振動子のチャネルに接続されている。図3では、増幅器の入力端子を、その出力端子が接続されるチャネルの符号と同じ符号a11、a12、a13、a96、a97、a98を付して示す。
【0044】
(スイッチ手段)
次に、マトリクススイッチを含むスイッチ手段33について図3〜図6を参照して説明する。図3では、マトリクススイッチを想像線で示す。
【0045】
マトリクススイッチは、タイミングパルス発生手段31の出力端子とチャネルとスイッチ制御手段34からの指示によりを選択的に接続させる。
【0046】
マトリクススイッチは、入力側の複数の信号線と出力側の複数の信号線とが碁盤状に配置され、信号線の交わる位置に開閉スイッチが配置されている。
【0047】
図3に示すように、入力側の信号線がグループG0〜G7の各出力端子G011〜G731に接続され、出力側の信号線が振動子の各チャネルa11〜a98に接続されている。開閉スイッチのオン/オフにより、出力端子から入力されたタイミングパルスが各チャネルに分配される。
【0048】
図5は、マトリクススイッチの一部の模式図である。図5では、グループG0の出力端子をG011〜G033の符号で示し、1行1列〜3行3列までのチャネルをa11〜a33で示し、さらに、1行4列、2行4列、3行4列のチャネルをa14、a24、a34で示す。さらに、オンにされた開閉スイッチを図6に黒丸で示す。
【0049】
図5に示す開閉スイッチの状態では、グループG0の出力端子G011〜G033から出力されたタイミングパルスは、チャネルa11〜a33に分配される。グループG0のタイミングパルスが分配されるチャネルa11〜a33に対応する振動子を図2に太線で囲まれた領域A0で示す。
【0050】
以上のように、開閉スイッチを制御することにより、グループG0と領域A0とを対応させ、グループG0のタイミングパルスを領域A〜内の振動子に分配させることが可能となる。
【0051】
同様に、開閉スイッチを制御することにより、他のグループと他の領域とを対応させることが可能となる。
【0052】
図6は、マトリクススイッチの一部の模式図である。図6では、オンからオフにされた開閉スイッチを白丸で示し、オフからオンにされた開閉スイッチを黒丸で示す。
【0053】
図6に示す開閉スイッチの状態では、グループG0の出力端子G011〜G033から出力されたタイミングパルスは、チャネルa11〜a14、a21〜a24、a34に分配される。グループG0のタイミングパルスが分配されるチャネルa11〜a14、a21〜a24、a34に対応する振動子の領域を図7に太線で囲まれた領域A0で示す。
【0054】
なお、図7に示す領域A0においては、領域A0内のいずれの振動子も選択条件(後述する)を満たしていて、グループが設定可能な遅延時間の範囲(例えば、0[μs]〜0.8[μs])内にある。
【0055】
例えば、領域A0内の振動子a11、a12、a13、a14、a21、a22、a23、a24、a34には、遅延時間0[μs]、0.1[μs]、0.2[μs]、0.3[μs]、0.4[μs]、0.5[μs]、0.6[μs]、0.7[μs]、0.8[μs]が割り当てられる。
【0056】
以上のように、開閉スイッチを制御することにより、グループG0と新たな領域A0とを対応させ、グループG0のタイミングパルスを新たな領域A0内の振動子に分配させることが可能となる。
【0057】
同様に、開閉スイッチを制御することにより、他のグループと他の新たな領域とを対応させることが可能となる。
【0058】
(スイッチ制御手段)
次に、スイッチ制御手段34について図1、図2及び図7を参照して説明する。
【0059】
スイッチ制御手段34は、開閉スイッチを制御することで、グループに対応させる領域を選択させる。なお、スイッチ制御手段34によるグループに対応する領域の選出は、循環器診断においては全体の振動子の送受信が終了する毎に、腹部・汎用診断においては設定したグループの振動子の送受信が終了する毎に行われる。
【0060】
領域を選択するときの条件としては、領域内において、振動子同士が隣接し、かつ、いずれの振動子も他の振動子に対し所定の個数分を超えて離れないように配置されることである。
【0061】
次に、領域を選択するときの条件(選択条件)について説明する。
【0062】
選択条件は、領域の外形形状の組み合わせパターンとして記憶部(図示省略)に記憶されている。パターンは、超音波プローブの識別情報および診断モードに対応している。記憶部は超音波プローブまたは超音波診断装置の本体に設けられている。
【0063】
領域の外形形状としては、3×3の形状(3×3のマトリクス状に配列された形状)、及び、その変形形状(1×9のマトリクス状に配列された形状を含む)を含む。
【0064】
パターンが選択条件を満たすか否かは、遅延回路の性能と振動子の物理的形状(寸法)に依存するが、経験上、選択条件は2つある。一つは、領域内の9つの振動子が互いに隣接して配置されていること。もう一つは、領域内において、いずれの振動子も他の振動子に対し所定個分を超えて離れないように配置されていること。ここで、振動子同士が所定個分離れているとは、所定個をMとし、いずれかの振動子を”0”とし、その”0”から行方向または列方向で1個分離れる振動子を”1”とし、さらにその”1”と行方向または列方向で1個分離れる振動子を”2”とするように、1個分離れるに応じて振動子の数を増やしていくと、”M”となる振動子がM個分離れた振動子となる。
【0065】
選択条件を満たさないパターンの一例として、図9に示す領域A2のような変形形状が含まれるものがある。この変形形状の領域A2では4個分超えて離れて配置された振動子が含まれる。すなわち、a17を”0”とすると、a58が”5”、a68が”6”となり、それぞれの振動子a58、a68が”0”から4個分を超えて離れて配置されている。なお、ここでは、最も早い遅延時間が割り当てられる振動子a17を”0”とする。
【0066】
図10は、比較例に係る超音波探触子の一部を示す模式図である。
【0067】
選択条件を満たすパターンの一例として、図10に示す変形形状の組み合わせパターンがある。
【0068】
図10に示す領域A1では5個分超えて離れた振動子が含まれない。すなわち、a15を”0”とすると、a16及びa25が”1”、a17及びa26が”2”、a18及びa27が”3”、a28が”4”、a38が”5”となり、いずれの振動子も”0”から5個分を超えて離れて配置されない。なお、ここでは、最も早い遅延時間が割り当てられる振動子a15を”0”とする。
【0069】
また、領域A2でも5個分超えて離れた振動子が含まれない。すなわち、a35を”0”とすると、a36及びa45が”1”、a37及びa46が”2”、a47が”3”、a48及びa57が”4”、a58が”5”となり、いずれの振動子も”0”から5個分を超えて離れて配置されない。なお、ここでは、最も早い遅延時間が割り当てられる振動子a35を”0”とする。
【0070】
スイッチ制御手段34は、超音波プローブの識別情報および診断モードに基づき、記憶部からグループに対応させる領域を選出する。なお、スイッチ制御手段34は、グループに対応させる領域の候補を求め、その候補が選択条件を満たすかどうかを算出し、選択条件を満たす領域を選択させてもよい。
【0071】
次に、図10に示す領域A1及びA2内の各振動子に十分な遅延時間が割り当てられるかについて説明する。なお、グループG1及びG2の遅延時間の範囲を0[μs]〜0.8[μs]及び0.5[μs]〜1.3[μs]とする。
【0072】
領域A1内の振動子a14、a15、a16、a24、a25、a26、a34、a35、a36には、0[μs]、0.1[μs]、0.2[μs]、0.3[μs]、0.4[μs]、0.5[μs]、0.6[μs]、0.7[μs]、0.8[μs]の遅延時間が割り当てられる。すなわち、グループG1の遅延時間を領域A1内の振動子に適切に割り当てることが可能となる。
【0073】
また、領域A2内の振動子a35、a36、a37、a45、a46、a47、a48、a57、a58には、0.5[μs]、0.6[μs]、0.7[μs]、0.8[μs]、0.9[μs]、1.0[μs]、1.1[μs]、1.2[μs]、1.3[μs]の遅延時間が割り当てられる。すなわち、グループG2の遅延時間を領域A2内の振動子に適切に割り当てることが可能となる。
【0074】
(作用)
次に、送信回路3の動作について図11を参照して説明する。図11は診断モードの選択から超音波の送信までの動作を示すフローチャートである。
【0075】
(S101)
図11に示すように、先ず、診断モードを選択する。診断モードは、超音波診断装置本体の入力手段により入力され、本体の記憶部(図示省略)に記憶される。入力された診断モードは記憶部からスイッチ制御手段34により読み出される。診断モードの一例としては、Aモード、Bモード、Mモード、ドプラモード、カラードプラモード、4Dモード、診断対象(循環器、腹部等)がある。なお、4Dモードはリアルタイムに3D像画像を再構成するものである。
【0076】
(S102)
次に、超音波プローブの識別情報を読み取る。超音波プローブの記憶部(図示省略)には識別情報が記憶されている。超音波プローブを超音波診断装置の本体に接続したときに、スイッチ制御手段34により、記憶部から識別情報が読み出される。
【0077】
(S103)
次に、スイッチ制御手段34は、診断モード及び超音波プローブの識別情報を基に、記憶部からグループに対応する領域を選出する。
【0078】
(S104)
次に、スイッチ制御手段34は、グループと領域とを対応させるように、開閉スイッチを制御する。
【0079】
(S105)
次に、タイミングパルス発生手段31は、各グループの出力端子から各チャネルにタイミングパルスを出力する。パルサ32は、タイミングパルスを基に高周波の電圧パルスを発生し、振動子を機械的に振動させる。それにより、振動子から超音波が送信される。
【0080】
この実施形態では、スイッチ制御手段34により、スイッチ手段33を制御して、グループに対応させる振動子の領域を選択させるようにしたので、配線を複雑化せずに、グループの遅延時間を振動子に適切に割り当てることが可能となる。
【0081】
なお、実施形態においては、粗遅延設定回路と9つの細遅延設定回路とを組み合わせることにより、タイミングパルス発生手段31のグループを構成した。しかし、この組み合わせは、一つのグループにおける、細遅延設定回路と粗遅延設定回路との組み合わせに限られていた。
【0082】
これに対し、一のグループ内の細遅延設定回路と他のグループの粗遅延設定回路との間にスイッチ手段を設けることにより、一つのグループ内の細遅延設定回路と他のグループの粗遅延設定回路とを組み合わせる。それにより、設定可能な遅延時間の範囲が大きくなり、結果的に、回路規模をさらに小さくすることが可能となる。
【0083】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるととともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 超音波探触子
3 送信回路
31 タイミングパルス発生手段
32 パルサ
33 スイッチ手段
34 スイッチ制御手段
4 受信走査手段
5 振幅検出手段
6 血流情報検出手段
7 表示処理手段
8 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波が送信される複数の振動子と、
前記各振動子に対応するチャネルに送信遅延時間に基づくタイミングパルスを出力する出力端子を有し、複数の出力端子が二以上の所定数ずつの出力端子のグループに分割され、前記グループ毎に所定の時間範囲内で前記送信遅延時間を生成するタイミングパルス発生手段と、
前記チャネルと前記出力端子とを選択的に接続させるスイッチ手段と、
前記複数のチャネルを前記所定数と同数ずつのチャネルの領域に分割し、前記チャネルと前記出力端子とを接続させることにより、前記グループと前記領域とを対応させるように前記スイッチ手段を制御するスイッチ制御手段と、
を有する
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記スイッチ制御手段は、前記領域内のチャネルに対応する前記振動子おいて、振動子同士が互いに隣接し、かつ、いずれの振動子も他の振動子に対し所定の個数分を超えて離れないように分割することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記複数の振動子を備え、その識別情報が設けられた超音波プローブを有し、
前記スイッチ制御手段は、前記超音波プローブの前記識別情報に基づいて分割することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記スイッチ制御手段は、診断モードに基づいて分割することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記スイッチ制御手段による前記分割のタイミングは、前記超音波が送受信されるときであることを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記複数の振動子は、マトリクス状に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記スイッチ手段は、入力側に前記出力端子が配され、出力側に前記チャネルが配置されたマトリクススイッチを有することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−39277(P2013−39277A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178935(P2011−178935)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】