説明

足場の組立て方法

【課題】本発明は、単管足場の組立て作業においても作業者の安全を確保することができる足場の組立て方法を提供することを目的とする。
【解決方法】 本発明を概説すると、手摺が未設置状態の最上層の上の層については、すでに手摺が取り付けられた最上層の作業床からの作業で作業床と後述する安全装置を取り付け、その後、最上層の上層の作業床に上がり安全装置に安全帯のフックを係止して墜落防止策を講じた上で、最上層の上層の手摺等の取り付け作業を行うように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に支柱、踏板、踏板支持材、及び手摺からなり、これらを現場にてクランプや楔で緊結して構成される足場の組立て方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の建築や修繕の際に建物の周囲にめぐらされる足場は、足場を使用する作業者の安全が確保することを目的として仮設されるものであるが、その組立てや解体の際の安全性については充分な検討がなされておらず、組立て作業者あるいは解体作業者の墜落事故が発生する危険性をはらんでいた。
【0003】
近年、組立てや解体の際の安全性に対する意識が高まりつつあり、例えば、建設業労働災害防止協会によって、手摺が取り付けられ安全に作業ができる最上層(完成状態での最上層という意味ではなく、途中段階において少なくとも作業床と手摺が取り付けられた最も上の層という意味である)から最上層の上層の手摺を早い段階で取り付けることで手摺のない状態で作業することが防止できる足場の組立て工法を示した「手摺先行工法等に関するガイドライン」なども策定されている。しかし、このガイドラインにて具体的な例が示されているのは、くさび緊結式足場、即ち支柱の所定位置に設けられた支柱緊結部(くさび受け)に手摺やブラケット等の端部に設けられたくさびを嵌め込んで緊結し組み立てる足場のみであり、単管足場、即ち単管からなる支柱、手摺、ブラケットなどの部材をクランプにて緊結して組み立てる足場については具体的な例が示されていない。
【0004】
特許文献1には、最上層からの作業によって2つの拠点足場ブロックをその上層に取り付け、この2つの拠点足場ブロック間に親綱を展張し、親綱に作業者の命綱を連結することで上層において安全に足場の組立てや解体をする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−180011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に記載の方法は、比較的大規模で空地も充分に確保された建物に用いられる「枠組足場」の組立て解体方法であり、空地が充分確保できない戸建住宅などの建物で用いられる単管足場においては水平手摺2´に相当する部材がなく適用は困難である。また、中間作業床、梯子型ブラケット等、上層へ移設すべき部材が多く着脱作業に手間がかかるという問題もある。
【0007】
本発明は、従来技術の課題を解決し、単管足場の組立て作業においても作業者の安全を確保することができる足場の組立て方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、本発明は、所定間隔で起立する複数の支柱と、支柱の所定の高さに取り付けられる踏板支持材と、隣接する二つの踏板支持材間に架け渡される踏板と、複数の支柱に跨って取り付けられる手摺とを備えた複層の足場の組立て方法において、下記工程を有することを特徴とするものである。
(1)複数の支柱を所定間隔で地上面に起立させる工程。
(2)支柱に踏板支持材を取り付け、踏板を架け渡し第1層作業床A1Aを形成する工程。
(3)地上面に立った状態で、隣接する2本の支柱の一方に対して、下端に支柱固定部を有し上端に仮設手摺掛止部を有する第1仮設支柱を、該支柱固定部が第1層作業床近傍の高さとなるように取り付け、続いて第1仮設支柱の仮設手摺掛止部に仮設手摺の一端を掛止し、更に隣接する2本の支柱の他方に、第1仮設支柱と同一構成の第2仮設支柱を、仮設手摺掛止部に仮設手摺の他端を掛止した状態で、第1仮設支柱と同一高さとなるように、地上面から取り付けて、第1作業床用の仮設安全装置を組み立てる工程。
(4)第1層作業床に上り、仮設手摺に安全帯のフックを係止し、地上面から供給される仮設手摺よりも長尺の手摺材を第1層作業床から所定の高さとなるように支柱に取り付け第1層手摺を形成する工程。
(5)地上面から供給される踏板支持材及び踏板を受け取って取り付け、第2層作業床A2Aを形成する工程。
(6)第1層作業床に立った状態で、仮設支柱及び仮設手摺を取り外し、前記工程3と同一の要領で第2層作業床用の仮設安全装置を組み立てる工程。
(7)第2層作業床に上り、仮設手摺に安全帯のフックを係止し、地上面あるいは第1作業床から供給される仮設手摺よりも長尺の手摺材を第2層作業床から所定の高さとなるように支柱に取り付け第2層手摺を形成する工程。を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の足場の組立て方法は、単管足場にも適用することができ、また、新規に必要な部材を最小限におさえ、従来から一般に広く使用されている足場構成部材を最大限活用して足場を組み立てることができる。また、着脱すべき部材を最小限におさえ、安全かつ簡易に足場の組立て作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】足場の完成状態を示す図である。
【図2】安全装置の構成を示す図である。
【図3】足場の組立て方法を示す図である。
【図4】足場の組立て方法を示す図である。
【図5】足場の組立て方法を示す図である。
【図6】足場の組立て方法を示す図である。
【図7】足場の組立て方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図を参照して、本発明に係る足場の組立て方法の一実施形態について説明する。まず、本発明を概説すると、手摺が未設置状態の最上層の上の層については、すでに手摺が取り付けられた最上層の作業床からの作業で作業床と後述する安全装置を取り付け、その後、最上層の上層の作業床に上がり安全装置に安全帯のフックを係止して墜落防止策を講じた上で、最上層の上層の手摺等の取り付け作業を行うように構成したものである。
【0012】
本実施形態の足場は、図1に示すような単管足場であり、支柱1(1A、1B)、ブラケット(踏板支持材)2、踏板3、手摺材44等の部材を、主にクランプを用いて緊結することで構成されるものである。支柱1(1A、1B)は長尺の単管からなり、内部側(建物側)に立設される複数の内側支柱1Aと外部側に立設される複数の外側支柱1Bとが建物の壁面に沿って二列縦隊状態で配列される。ブラケット2は、所定の高さで踏板3を支持する為の部材であり、水平材の中間部を支持するように頬杖状の斜材が取り付けられ、根元側となる水平材の一端及び斜材の下端には外側支柱1Bに緊結する為のクランプ部を有し、先端側となる水平材の他端には内側支柱1Aに緊結する為のクランプ部を有して構成されている。ブラケット2は、外壁面に対して平面視直角に(支柱1の配列方向とは直角をなすように)外側支柱1Bと内側支柱1Aとの間に介在するように取り付けられる。踏板3は、両短辺側に設けられたフックをブラケット2の水平材に掛止することで支持されて各層の作業床(A1A、A2A、・・・)を構成する。手摺材4は単管からなり、支柱間に掛け渡されて直交クランプにて取り付けられ各層の手摺(A1B、A2B、・・・)を構成する。
【0013】
足場Aの組立てにあたっては図2に示す安全装置Bを使用する。安全装置Bは一対の仮設支柱11と仮設手摺12からなる。仮設支柱11の下端には、円形断面の支柱1に固定する為の仮設支柱固定部11Aが形成されている。仮設支柱固定部11Aは上部固定部11A1と下部固定部11A2とからなる。上部固定部11A1の先端にはU字状に加工され更にピン挿通部を設けられた一対の挟持片が形成され、該一対の挟持片とピン挿通部に挿通されるピン11cとによって支柱1に簡易的に固定される。また下部固定部11A2の先端はクランプが固着され、該クランプにて支柱1に緊結される。仮設支柱11の上端には、仮設手摺12を掛止する為の仮設手摺掛止フック11Bが形成されている。仮設手摺12は標準的な支柱1の間隔(1800mm)に対応した長さを有し、その両端には仮設手摺掛止フック11Bに対し回動自在に掛止しうる掛止孔12Aが形成されている。
安全装置Bは仮設支柱11の支柱本体や仮設手摺12が、手摺と緩衝しないように外側にオフセットされた状態で取り付けられる。
【0014】
続いて、安全装置Bを用いた足場Aの組立て方法について詳細に説明する。
まず、建物の外周部に沿って所定の間隔(通常は1800mm)でからなる複数の2列の支柱1(内側支柱1A、外側支柱1B)を起立させる。同じ列にて隣接する内側支柱1A、外側支柱1Bどうしはその下端付近において単管からなる根がらみ5を直交クランプを用いて緊結する。また、内側支柱1Aと外側支柱1Bとは端部にクランプ部を備えたブラケット6にて連結する。また、支柱1下端には適宜敷板7をかませて沈下を防止する。
【0015】
次に、内側支柱1A、外側支柱1Bとの間に踏板3を支持する為の踏板支持材(端部にクランプ部を備えたブラケット)2を取り付けたのち、隣接する踏板支持材2間に両端にフックを備えた踏板3を架け渡し第1層作業床A1Aを形成する。
【0016】
次に、地上面からの作業で、第1層作業床A1Aのレベルに合わせて仮設安全装置Bを組み立てる。即ち、地上面に立った状態で、隣接する2本の支柱の一方に対して、第1の仮設支柱11を仮設支柱固定部11Aが第1層作業床A1A近傍の高さとなるように取り付ける。この際、まず上部固定部11A1を用いて簡易的に固定し、その後下部固定部11A2を用いて緊結する。続いて、第1仮設支柱11の仮設手摺掛止フック11Bに仮設手摺12の一方の掛止孔12Aを掛止し、更に隣接する2本の外側支柱1Bの他方に、第1の仮設支柱11と同一構成の第2の仮設支柱11を、仮設手摺掛止フック11Bに仮設手摺12の他方の掛止孔12Aを掛止した状態で、第1仮の設支柱11と同一高さとなるように取り付ける。なお、外側支柱1Bと手摺材4との直交クランプ8での緊結作業時に仮設支柱11が邪魔とならないように、仮設支柱11の持ち出し方向を、支柱1の整列方向(作業床の長手方向)と直角方向ではなく、45度程度振って取り付ける。(以上図3、4を参照)
【0017】
次に、第1層作業床A1Aに上り、仮設手摺12に安全帯のフックを係止し、地上面から供給され仮設手摺よりも長尺の手摺材4を第1層作業床A1Aから所定の高さとなるように直交クランプを用いて外側支柱1Bに取り付け第1層手摺A1Bを形成する。(図5を参照)
次に、地上面の作業補助者から供給される踏板支持材2及び踏板3を受け取って取り付け、第1層作業床A1Aと同じ要領で第2層作業床A2Aを形成する。(図6を参照)
【0018】
次に、第1層作業床A1Aに立った状態で、仮設支柱11及び仮設手摺12を取り外し、取り外した仮設支柱11及び仮設手摺12を用いて前記工程3と同じ要領で第2層作業床A2Aのレベルに合わせて仮設安全装置Bを組み立てる。(図7を参照)
次に、第2層作業床A2Aに上り、仮設手摺12に安全帯のフックを係止し、地上面あるいは第1層作業床A2Aに立つ作業補助者から供給され仮設手摺12よりも長尺の手摺材4を第2層作業床A2Aから所定の高さとなるように外側支柱1Bに取り付け第2層手摺A2Bを形成する。
【0019】
支柱1の継ぎ足しが必要な場合は適宜継ぎ足し作業を行いながら、第3層以上についても順次同様の方法で作業床と手摺を形成する。
最後に、火打ち、筋交、壁つなぎ、などを適宜取り付け、養生ネットを張りめぐらす。
【0020】
上記構成によれば、上層に対し仮設安全装置を手摺に先行して容易に取り付けることができるので安全に足場の組立て作業を行うことができる。また、下の層で使用した仮設安全装置を順次上の層に付け替えてゆくので、新規に必要となるのは仮設安全装置1セットのみであり、足場の構成部材そのものは従来品がそのまま使用できる。従って、多額のコストを掛けることなく導入することができる。なお、複数セット用意して複数個所で組立て作業を同時進行させることも勿論可能である。
【符号の説明】
【0021】
A 足場
A1A 第1層作業床
A1B 第1層手摺
A2A 第2層作業床
A2B 第1層手摺
B 安全装置
1 支柱
1A 内側支柱
1B 外側支柱
2 踏板支持材(ブラケット)
3 踏板
4 手摺材
5 根がらみ
6 ブラケット
7 敷板
8 直交クランプ
11 仮設支柱
11A 仮設支柱固定部
11A1 上部固定部
11A2 下部固定部
11B 仮設手摺掛止フック
11c ピン
12 仮設手摺
12A 掛止孔
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は足場の解体作業においても、上記組立作業の手順とは逆の手順を踏むことで使適用することができる。また、より狭隘な場所に用いる抱き足場(2本の水平な単管を支柱に抱き合わせて緊結することで作業床を形成する足場)にも適用が可能である。更にくさび緊結式足場にも適用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程を有することを特徴とする、所定間隔で起立する複数の支柱と、支柱の所定の高さに取り付けられる踏板支持材と、隣接する二つの踏板支持材間に架け渡される踏板と、複数の支柱に跨って取り付けられる手摺とを備えた複層の足場の組立て方法。
(1)複数の支柱を所定間隔で地上面に起立させる工程。
(2)支柱に踏板支持材を取り付け、踏板を架け渡し第1層作業床A1Aを形成する工程。
(3)地上面に立った状態で、隣接する2本の支柱の一方に対して、下端に支柱固定部を有し上端に仮設手摺掛止部を有する第1仮設支柱を、該支柱固定部が第1層作業床近傍の高さとなるように取り付け、続いて第1仮設支柱の仮設手摺掛止部に仮設手摺の一端を掛止し、更に隣接する2本の支柱の他方に、第1仮設支柱と同一構成の第2仮設支柱を、仮設手摺掛止部に仮設手摺の他端を掛止した状態で、第1仮設支柱と同一高さとなるように、地上面から取り付けて、第1作業床用の仮設安全装置を組み立てる工程。
(4)第1層作業床に上り、仮設手摺に安全帯のフックを係止し、地上面から供給される仮設手摺よりも長尺の手摺材を第1層作業床から所定の高さとなるように支柱に取り付け第1層手摺を形成する工程。
(5)地上面から供給される踏板支持材及び踏板を受け取って取り付け、第2層作業床A2Aを形成する工程。
(6)第1層作業床に立った状態で、仮設支柱及び仮設手摺を取り外し、前記工程3と同一の要領で第2層作業床用の仮設安全装置を組み立てる工程。
(7)第2層作業床に上り、仮設手摺に安全帯のフックを係止し、地上面あるいは第1作業床から供給される仮設手摺よりも長尺の手摺材を第2層作業床から所定の高さとなるように支柱に取り付け第2層手摺を形成する工程。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−127376(P2011−127376A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288612(P2009−288612)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)