説明

足裏指圧器及び足裏指圧槽

【課題】楽な姿勢で入浴や足湯をしながら効果的な指圧作用が得られる足裏指圧器及びそのような足裏指圧器を備えた浴槽や足湯槽を得る。
【解決手段】槽の底面に設けた凹所の底板に設けた開口の周縁部を本体の上縁とフランジの周縁とで挟持して水密構造で固定した往復駆動装置と、フランジを貫通して往復駆動装置の上面に突出する往復動杆の上端に揺動自在に連結した足載せ板とを備える。槽の底面と同一面となるように設けられた足載せ板上に、多数の押圧突起が設けられている。足載せ板は、往復動体の上下動により、凹所にはめ込まれた状態で揺動可能に上下往復動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、浴槽や足湯槽に設置して足裏を指圧する器具及びそのような器具を取り付けた浴槽ないし足湯槽(この明細書及び特許請求の範囲において「足裏指圧槽」という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴槽の床面や足側壁面に突起を設け、足を暖めながらその突起に足裏を押し付けることによって足裏を刺激できるようにした浴槽や足湯槽は公知である。
【0003】
また、スリッパや靴のように足に履いて足裏に当る部分に設けた突起を脈動する水圧を利用して進退ないし出没させることにより、足裏のツボを刺激するようにした足裏指圧器は公知である。そして、このような足裏指圧器を浴槽内で使用できるようにすること、更にこのような足裏指圧器の底面に設けた吸盤で浴槽の床面や壁面に取り付けることができるようにした装置も提案されている。
【0004】
足裏を始めとする身体の指圧やマッサージは、温湯内で行うことにより、血行の増進、筋肉の疲労回復、リラクシゼーション効果などがよりよく発揮されるので、足裏指圧器も入浴時に使用するのが、より効果的である。
【0005】
なお、使用者の足裏に当る部分や当該部分に設けた突起を電磁コイルを利用して振動ないし進退させる足裏指圧器は、漏電等の危険があるため、浴槽内で使用する足裏指圧器としては、不適当である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特願2006−158960号公報
【特許文献2】登録実用新案第3120357号公報
【特許文献3】特開2000-254190号公報
【特許文献4】特開2009-247749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
浴槽や足湯槽の底面や足側壁面に突起を設けて、その突起に足を意識的に押し付けて指圧効果を得る方法は、使用者が積極的に足に力を入れて動かさない限り指圧作用が得られない。しかし、入浴時には、ゆったりと体を休めたいという要望が強いから、積極的に足に力を入れて動かさなければならないということは、ゆったりと寛ぎたいという要望に反し、単に突起を設けた部分に足を置いておくだけということになりやすく、効果が少ない。そして、効果を得ようとすると、ゆったりと寛いだ状態で入浴することができない。
【0008】
一方、足に履いた状態で浴槽内で使用する指圧器であって、足裏への刺激が脈動する水圧などによって能動的に行われる足裏指圧器は、ゆったりと寛いだ状態で指圧効果を得ることができる。
【0009】
しかし、このような足裏指圧器は、足裏に当る部分の裏側(足と反対の側)に当該部分に設けた突起などを出没させたり振動させたりするための駆動装置を設けなければならい。そのため、装置の底面、すなわち浴槽の床面や壁面に当る面から足裏に当る面(足載せ板)までの高さ寸法が高くなり、入浴時にこれを使用しようとすると、足が持ち上げられて膝が湯の上に出てしまったり、浴槽内への姿勢が窮屈になるという問題がある。
【0010】
また、このような足裏指圧器は、履いたまま洗い場に上ることは困難なので、浴槽に出入りするときに、履いたり脱いだりしなければならず、また、脱いだものを適当な場所に置いておかねばならず、しかもこのような足裏指圧器には、水圧を供給するためのホースが接続されているため、脱いだ足裏指圧器を体裁良く片付ける作業が比較的面倒である。
【0011】
この発明は、上記のような問題を解決することを課題としており、入浴しながら、又は足湯をしながら足裏の指圧効果が得られる装置であって、足に力を入れたり動かしたりすることなく、楽な姿勢で入浴や足湯をしながら効果的な指圧作用が得られる足裏指圧器、及びそのような足裏指圧器を備えた浴槽や足湯槽を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の足裏指圧器1は、浴槽2や足湯槽に設置して入浴や足湯をしながら足裏に指圧作用を与える指圧器である。この発明の足裏指圧器1は、駆動装置3と足載せ板11と甲押え12とを備えている。駆動装置3は、一端が開口されかつ他端にパイプ連結口を備えた筒状の本体31と、この本体に螺着されて前記開口を閉鎖するフランジ32と、このフランジの周縁及び筒状の本体31の開口周縁に装着された水封パッキン35a、35bと、筒状の本体31にその筒軸方向に往復動自在に内挿された往復動体5と、この往復動体からフランジ32を摺動自在に貫通して伸びる往復動杆39と、この往復動杆の先端に設けた球状連結端40とを備えている。足載せ板11は、上面に複数の押圧突起13を備え、下面略中央部が往復動杆の球状連結端40に揺動自在に嵌合されている。この発明の足裏指圧器は、駆動装置3のパイプ連結口を脈動水圧源6、43に連結して使用する。
【0013】
この発明の足裏指圧槽は、上記構造の足裏指圧器1を槽底面の凹所24に設置した浴槽ないし足湯槽である。足湯槽は、足の膝から下の部分を湯に浸すのに使用する容器である。足裏指圧器1を設置する浴槽は、腰掛け部を有していることが好ましい。
【0014】
この発明の足裏指圧槽は、槽の底面21に設けた凹所24と、この凹所の底板25を貫通して設けた排水口26と、この凹所24の底板25に設けた開口27の周縁部を筒状の本体31の上縁とフランジ32の周縁とで挟持して当該底板25に水密構造で固定した往復駆動装置3と、フランジ32を貫通して往復駆動装置3の上面に突出する往復動杆39の上端に揺動自在に連結した足載せ板11とを備えている。足載せ板11は、その上面が槽の底面21と同一面となるように設けられている。足載せ板11上には、多数の押圧突起13が設けられている。足載せ板11は、凹所24に揺動かつ上下動自在にはめ込まれた状態となっており、往復動体5の上下動により、凹所24にはめ込まれた状態で揺動可能に上下往復動する。
【0015】
足裏指圧器1及びこれを設置する槽底面の凹所24は、浴槽又は足湯槽の底面21と足側壁面22との連接部に設けても良い。比較的容量の小さい家庭用の浴槽においては、この構造により、入浴者の姿勢が窮屈になるのを避けることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の足裏指圧器は、浴槽や足湯槽に、その底面や壁面と同一面にして足裏を載せる足載せ板を配置できるので、自然な姿勢で使用することができ、浴槽や足湯槽に足を入れた後、当該槽に設置された足湯指圧器に足先を差し込んで使用すればよいので、装脱が簡単で、脱いだときに片付ける手間がかからない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の足裏指圧槽の一例を示す断面図
【図2】図1の足裏指圧槽の平面図
【図3】図1の足裏指圧槽に設けた足裏指圧器の断面図
【図4】図3の平面図
【図5】図3の足裏指圧器への流体圧配管を示す図
【図6】手動切換弁の弁体の横断面図
【図7】図6の切換弁のA−A部の経断面図
【図8】図6の切換弁のB−B部の経断面図
【図9】自動切換弁の例を示した図
【図10】浴槽底面の凹所と足載せ板の隙間を塞ぐ塞ぎ板を示す平面図
【図11】浴槽底面の凹所を塞ぐ蓋板を示す平面図
【図12】この発明の足裏指圧槽の他の例を示す図1と同様な図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の足裏指圧器を設置した浴槽を示す図面を参照して、この発明を更に説明する。図1は、この発明の足裏指圧器1を浴槽2の底面21に設置した例を示した図であり、図12は、浴槽の底面21と足側壁面22との角部に設置した例を示す図である。図に示す浴槽2は、平面が角丸矩形で、縦横の断面がそれぞれ逆台形であり、その底面21の縦方向の一方の側に腰掛けて下半身浴を可能にする座面23が形成されている。
【0019】
図1のものでは、浴槽の底面21の略中央部に、また図12のものでは、座面23に腰掛けた入浴者の足側壁面22と底面21との連接部に、凹所24が形成されている。この凹所は、両側辺が揃えた両足の外縁に沿うように屈曲した略正方形の凹所24aの座面側の辺の中央に半円形の凹所24bを連接した平面形状をしている。そして、この略正方形の凹所24aが足裏指圧器1の装着部となり、半円形の凹所24bが排水パイプ42の装接続部となっている。
【0020】
この凹所24の底板25には、円形の3個の開口が設けられている。半円形の凹所24b部分の1個の開口26は、浴槽の排水口となっており、略正方形の凹所24aの左右に設けた開口27、27が、左足用と右足用の足裏指圧器1を取り付けるための開口となっている。
【0021】
足裏指圧器1は、駆動装置3と足載せ板11と甲押え12とで構成されている。駆動装置3は、開口端の内周縁に雌ねじ33を備えた有底円筒形の本体31と、雌ねじ33に螺合されて当該開口端を閉鎖するフランジ32とを備えている。本体31の底部には、駆動流体圧を供給するパイプ41が接続され、フランジ32の中心にはロッド挿通孔が貫通している。
【0022】
浴槽底面の凹所24に設けた足裏指圧器を取り付けるための開口27、27の直径は、足裏指圧器本体の雌ねじ33に螺合するフランジの雄ねじ34の外径より僅かに大きく、かつ、本体31の開口端及びフランジ32の外径より小さい。そして、本体31の開口端及びフランジ32の、雌ねじ33及び雄ねじ34の外径より外側の対向面には、水封用のパッキン(ガスケット)35a、35bが取り付けられている。
【0023】
足裏指圧器の本体31の内周は、内挿されたピストン5のためのシリンダ孔38となっており、このピストンから延びるロッド39が、フランジ32のロッド挿通孔を貫通している。ロッド39の先端は、球状の連結端40となっている。フランジ32には、ピストン5とフランジ32とで閉鎖された本体内の空間36を浴槽内に連通する通孔37が設けられている。
【0024】
足載せ板11は、左足用と右足用の2種類のものがあり、表面に多数の突起13が一体成形されている。図の足載せ板11には、裏面に裏当て板14が貼着され、この裏当て板14の裏面略中央部に、駆動装置のロッド先端の球状連結端40の球と嵌合する球状凹部15が形成されている。球状連結端40の球は、球状凹部15の周縁の弾性変形により、球状凹部15に嵌脱自在である。足載せ板上面の突起13は、足裏の凹凸やツボの位置に合せて、すなわち土踏まずの位置に対応する突起は高く、またツボの位置に対応する突起は、若干高くするなど複数本のものを異なる高さで設けてある。
【0025】
甲押え12は、好ましくはある程度の保形性を備えた、柔軟な帯状の部材で、その両端を浴槽の凹所24の底面ないし側面に固定するか、又は駆動装置のフランジ32の側面に固定して、設けられている。
【0026】
足裏指圧器の駆動装置3と足載せ板11とは、両者を引き離す方向に力を加えることで、球状連結端40と球状凹部15の嵌合を外して、分離することができる。また、駆動装置の本体31とフランジ32は、雌ねじ33と雄ねじ34の螺合を解いて分解することができる。この分解状態で本体31とフランジ32のパッキン35a、35bで浴槽の略正方形の凹所24aに設けた開口27の周縁を挟んで、雌ねじ33と雄ねじ34をしっかりと螺合すれば、駆動装置3は、当該凹所の開口27部分に、左右のものが個別に水密状態で固定される。この状態で足載せ板11の先端側を甲押え12の内側に差し込んで、ロッド先端の球状連結端40と球状凹部15とを嵌合すれば、足載せ板11が駆動装置のロッド39の先端に若干揺動可能な状態で取り付けられる。
【0027】
この取り付け状態において、ピストン5を下降端の位置にしたとき、最も高い突起13の先端が浴槽の底面21より僅かに低い位置となり、上昇端の位置にしたときに、足載せ板11の表面が浴槽の底面21と略同一面となるように、ピストン5のストローク及びロッド39の長さを設定するのがよい。
【0028】
図の実施例のものでは、駆動装置3に流体圧を供給する供給パイプ41を手動の切換弁43と減圧弁44を介して水道の蛇口6に連結している。切換弁43は、手動のハンドル45を90度右または左回りに回動することにより、供給パイプ41が水道の蛇口に連結した圧力パイプ46と排水パイプ42とに交互に連通されるようにした、いわゆるコック構造の切換弁である。足裏指圧器1に駆動流体圧を供給する切換弁としては、このようなコック構造のものに限らず、スプール構造のものやダイヤフラム構造のものなど、各種構造のものを利用することができる。
【0029】
また、このような手動の切換弁に替えて、設定された周期で往復動する自動切換弁により、周期的に圧力が変動する流体圧を足裏指圧器1に供給することも勿論可能である。このような自動切換弁として、例えば供給パイプ41側の水圧で切換弁43のスプール47を供給パイプ41側と排水パイプ42側を連通する方向に動かし、供給パイプ41側の圧力が排出されたときに、スプール47を逆方向に動かす復帰ばね48を設けた構造の弁を用いることができる。この場合、切換周期は、供給パイプ41側とスプール駆動側49とを繋ぐパイロット配管50に設けた絞り弁51で設定することができる。
【0030】
足裏指圧器1は、右足用と左足用のものがそれぞれ1個ずつ浴槽底部の略正方形凹所24aに設けた開口27、27に取り付けられる。入浴者は、足先を甲押え12の内側にくぐらせて足載せ板11上に足を置き、切換弁43を好みの間隔で左右に操作する。足裏指圧器1が水道の蛇口側に連通されると、ピストン5により足載せ板11が押し上げられ、定位置に固定されている甲押え12との間で足を上下に挟み、足載せ板の突起13が使用者の足裏を指圧する。切換弁43を逆方向に回して足裏指圧器1を排水側に連通すると、足の重さによってピストン5が下降し、足裏に作用していた指圧力が開放される。この動作を繰り返すことにより、入浴者は温湯の中で足裏の指圧効果ないしマッサージ効果を得ることができる。
【0031】
浴槽の底面に設けた凹所24の平面形状に応じて、図10に示す塞ぎ板28を準備しておけば、足裏指圧器の左右の足載せ板11の隙間や排水用の円形凹所24b塞ぐことができる。また、図11に示す蓋板29を準備しておけば、足裏指圧器1を使用しないときに、足載せ板11を下降端にして蓋板29で凹所24を塞ぐことにより、例えば入浴者が座面23側を足側にして入浴したときに、足裏指圧器が邪魔になるのを防止できる。
【0032】
なお、蓋板29に設けたスリット30は、排水時に浴槽内の水を通過させるための孔である。塞ぎ板28の場合は、足載せ板11と塞ぎ板28の間から水が流れるので、このようなスリットを設けなくても浴槽の水を排水することができる。
【0033】
足裏指圧器1を浴槽の底面21と足側壁面22の連接部に設けた図12に示す構造では、排水時に凹所24内に浴槽内の水が総て流入するように、凹所24の下辺を浴槽の底面21の最も低くなる位置になるように設けなければならない。また、図12に示す構造では、足裏指圧器の足載せ板11が浴槽の側壁面22に沿う方向の斜めの方向となるので、足裏指圧器の駆動装置のロッド39の往復動の方向も当該斜めに設置した足載せ板11に直交する方向となることは当然であり、また塞ぎ板28や蓋板29は、その側面形状が浴槽の側壁面22から底面21に連接する部分の断面形状に合せた形状となることも勿論である。また、上記説明は、浴槽についてのものであるが、足湯槽に設ける場合にも同様な構造で設けることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 足裏指圧器
2 浴槽
3 往復駆動装置
5 往復動体(ピストン)
11 足載せ板
12 甲押え
13 押圧突起
21 槽の底面
22 槽の足側壁面
24 槽底面の凹所
26 排水口
31 筒状の本体
32 フランジ
35a、35b 水封パッキン
39 往復動杆(ロッド)
40 球状連結端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽又は足湯槽の底面に設けた凹所と、この凹所の底板を貫通して設けた排水口と、この凹所の底板に設けた開口の周縁部を本体上縁とフランジ周縁とで挟持して当該底板に水密構造で固定した往復駆動装置と、前記フランジを貫通して当該往復駆動装置の上面に突出する往復動体の上端に揺動自在に連結した上面が前記底面と同一面をなす足載せ板と、この足載せ板上に設けた多数の押圧突起とを備え、前記足載板は、上記凹所にはめ込まれた状態で揺動可能に上下往復動する、足裏指圧槽。
【請求項2】
前記凹所を、浴槽又は足湯槽の底面とと足側壁面との連接部に設けた、請求項1記載の足裏指圧槽。
【請求項3】
一端が開口されかつ他端にパイプ連結口を備えた筒状の本体と、この本体に螺着されて前記開口を閉鎖するフランジと、このフランジの周縁及び前記筒状本体の開口周縁に装着された水封パッキンと、前記本体にその筒軸方向に往復動自在に内挿された往復動体と、この往復動体から前記フランジを摺動自在に貫通して伸びる往復動杆と、この往復動杆の先端に設けた球状連結端と、この球状連結端に揺動自在に連結された足載せ板と、この足載せ板の反往復動杆側に立設された複数の押圧突起とを備え、前記パイプ連結口を脈動水圧源に連結したパイプに連結して使用する、足裏指圧器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−120642(P2012−120642A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272841(P2010−272841)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(391007275)金沢中央発条工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】