説明

足関節運動装置

【課題】利用者の筋力が衰えていたり関節が硬くなっていたりしても足関節の充分な運動を行えるようにすることにある。
【解決手段】基台1と、前記基台に上下方向揺動可能に支持されたペダル2bと、前記ペダルを揺動駆動するアクチュエータ2cと、前記アクチュエータの作動を制御する制御装置3と、前記基台に立設された、当該装置の利用者Uが立った状態でその利用者の体を支えるためのサポートパイプ4とを具えてなる、足関節運動装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、足関節機能のリハビリテーション等に用いて好適な足関節運動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の上述の如き装置としては、特許文献1記載の脚部ストレッチ器具が公知であり、この脚部ストレッチ器具は、上下方向揺動可能に支持された、両足を同時に乗せるための一つのペダルと、そのペダルの揺動限位置を規制するストッパピンと、手で持ってペダル上の体を支えるためのハンドルとを具えている。
【特許文献1】実用新案登録3030897号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の器具は、筋力が衰えていたり関節が硬くなっていたりすると充分にペダルを揺動させられないという問題や、障害があるため特に片足について慎重なリハビリが必要等、左右の足関節で曲げて良い範囲が異なる場合に対応できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を有利に解決する多機能な足関節運動装置を提供することを目的とするものであり、この発明の足関節運動装置は、基台と、前記基台に上下方向揺動可能に支持されたペダルと、前記ペダルを揺動駆動するアクチュエータと、前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、前記基台に立設された、当該装置の利用者が立った状態でその利用者の体を支えるための支持手段と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0005】
かかる足関節運動装置にあっては、当該装置の利用者が、基台に上下方向揺動可能に支持されたペダルの上に立つと、基台に立設された支持手段がその利用者の体を支え、アクチュエータが、制御手段による作動制御下でそのペダルを揺動駆動する。
【0006】
従って、この発明の足関節運動装置によれば、利用者の筋力が衰えていたり関節が硬くなっていたりしても、アクチュエータの助力によって充分にペダルを揺動させることができるので、足関節の充分な運動を行うことができる。
【0007】
なお、この発明の足関節運動装置においては、前記ペダルおよび前記アクチュエータは、片足分ずつ二組設けられていても良い。このようにすれば、故障があるため特に片足について慎重なリハビリが必要等、左右の足関節で曲げて良い範囲が異なる場合にも対応することができる。
【0008】
また、この発明の足関節運動装置においては、前記ペダルは、かかと押さえ部材が一体的に固定されたものであっても良い。このようにすれば、そのかかと押さえ部材にかかとを突き当てることでかかとの位置が固定されるので、利用者の足がペダルからずり落ちるの防止し得るとともに、そのかかと押さえ部材がペダルと一体で揺動するので、かかとがかかと押さえ部材でこすれて痛くなったり皮が剥けたりするのを防止することができる。
【0009】
さらに、この発明の足関節運動装置においては、前記アクチュエータは、トグル機構を介して前記ペダルを駆動するものであっても良い。このようにすれば、特に力が必要な、ペダルの傾斜角度を大きくするときに、トグル機構で大きな力を出せるので、アクチュエータを小型化することができる。
【0010】
さらに、この発明の足関節運動装置においては、前記制御手段は、前記ペダルの揺動駆動範囲を可変設定できるものであっても良い。このようにすれば、利用者の左右の足関節で曲げて良い範囲が異なる場合に容易に対応することができる。
【0011】
さらに、この発明の足関節運動装置においては、前記制御手段は、前記ペダルの揺動駆動速度を可変設定できるものであっても良い。このようにすれば、利用者の体調に合わせてペダルを揺動させることができるので、無理なく足関節の運動を行うことができる。
【0012】
さらに、この発明の足関節運動装置においては、前記制御手段は、前記ペダルの揺動回数を表示するものであっても良い。このようにすれば、利用者は足関節の運動の程度を容易に知ることができる。
【0013】
さらに、この発明の足関節運動装置においては、前記制御手段は、左右の前記ペダルの揺動駆動速度を異ならせ得るものであっても良い。このようにすれば、利用者の左右の足関節の具合に合わせて運動を行うことができる。
【0014】
そして、この発明の足関節運動装置においては、前記支持手段は、前記基台の前部から上方に延在する支柱部と、その支柱部の上端部から後方へ延在する手摺り部と、その手摺り部の後端部から左右方向へ延在して体の背面を支持する背面支持部とを有するものであっても良い。このようにすれば、手摺り部と背面支持部とを有する支持手段を、基台上に前後方向にコンパクトに配設し得て、当該足関節運動装置を、狭い置き場所でも置けるコンパクトな構成のものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の足関節運動装置の一実施例を一部切り欠いて示す側面図、図2は、その実施例の足関節運動装置を示す平面図、そして図3(a),(b)は、その実施例の足関節運動装置のアクチュエータによるペダルの動きを図1におけるペダル傾斜角度と異なる角度でそれぞれ示す説明図である。
【0016】
この実施例の足関節運動装置は、図1および図2に示すように、薄い箱状の基台1と、その基台1の略中央部に嵌めこまれたペダルユニット2とを具え、そのペダルユニット2は、側方から見て略L字状のフレーム2aと、そのフレーム2aにそれぞれ後端部を上下方向揺動可能に支持された左右二つのペダル2bと、一端部をペダル2bに連結した上リンク部材と一端部をフレーム2aに連結した下リンク部材との他端部同士を互いに連結してなるトグル機構2cを介してそれらのペダル2bをそれぞれ揺動駆動する二台のアクチュエータ2dとを有している。
【0017】
ここで、二台のアクチュエータ2dは各々、減速機付き電動モータでボールねじを回動させてそのボールねじに螺合したボールナットを直線移動させることにより、そのボールナットに結合した作動ロッド2eを進退移動させるとともに、電動モータに設けたロータリエンコーダでボールねじの回動量ひいては作動ロッド2eの進退移動位置を検出する通常のものであり、その作動ロッド2eの先端部でトグル機構2cの上下リンク部材の上記他端部同士の連結部を引くことで、図3(a)および(b)に示すように、ペダル2bの傾斜角度を大きくでき、逆にその連結部を押すことでペダル2bの傾斜角度を小さくでき、それによってペダル2bをその後端部(図1では左端部)周りに揺動させることができる。なお、二つのペダル2bの後端部にはそれぞれ、板状のかかと押さえ部材2fがペダル2bの上面に対し略直角をなすように一体的に固定されている。
【0018】
この実施例の足関節運動装置はさらに、それらのアクチュエータ2dの作動を制御する制御手段としての、あらかじめ与えられたプログラムに基づき作動する通常のマイクロコンピュータを有する制御装置3を基台1内に具えており、この制御装置3は、各アクチュエータ2dの上記電動モータを駆動して各ペダル2bを揺動させるとともに、各アクチュエータ2dの上記ロータリエンコーダからの信号によって検出する作動ロッド2eの進退移動位置から各ペダル2bの傾斜角度を求め、それらの傾斜角度をそれぞれ、後述するサポートパイプ4に固定された表示器3aにより、例えば図3(a)に仮想線で示す水平から10度傾斜したスタート位置で0度、そのスタート位置から下方へ揺動した同図に実線で示す水平な原点位置で−10度、上記スタート位置から上方へ揺動した図3(b)に仮想線で示す水平から25度傾斜した位置で+15度というように表示する。
【0019】
なお、水平から10度傾斜した位置をスタート位置としているのは、図1に仮想線で示すように、当該装置の利用者Uがペダル2b上に立ってサポートパイプ4の後ろ向きに寄り掛かると、その利用者Uの体軸と足の裏とが直角になった状態で足の裏が10度傾斜するように、ペダル2bとサポートパイプ4との位置関係を設定してあるからであり、これにより当該装置の利用者は、ペダル2b上に立ってサポートパイプ4の後ろ向きに寄り掛かりながら、そのスタート位置で足を自然な状態にすることができる。
【0020】
また、この制御装置3は、各アクチュエータ2dの上記電動モータの駆動制御の繰り返し回数から各ペダル2bの揺動回数を計数して、それらの揺動回数も上記表示器3aにより表示する。
【0021】
さらに、この制御装置3は、上記電動モータの駆動制御により各ペダル2bの揺動角度を別個に制御し得るので、この制御装置3に対しては、上記表示器3aに接続されたリモートコントローラ3bからの利用者等の操作入力により、上記求めた各ペダル2bの傾斜角度に基づき各ペダル2bを別個に、例えば当初は図3(a)に仮想線で示す水平から10度傾斜したスタート位置まで揺動させ、次いでそのスタート位置から、下方へは最大で例えば同図に実線で示す水平な原点位置まで揺動させるとともに、上方へは最大で例えば図3(b)に仮想線で示す、上記スタート位置から15度(水平から25度)傾斜した位置まで揺動させてからそのスタート位置に戻すように、ペダル2bの揺動駆動範囲を設定したり、あるいはその上方への最大揺動角度を、例えば図1に仮想線で示す、上記スタート位置から44.33度(水平から54.33度)に設定したりすることができる。
【0022】
さらに、この制御装置3は、上記電動モータの駆動制御により各ペダル2bの揺動駆動速度も別個に制御し得るので、この制御装置3に対しては、上記リモートコントローラ3bからの利用者等の操作入力により、各ペダル2bの揺動駆動速度を別個に可変設定することもできる。
【0023】
そして、この実施例の足関節運動装置はさらに、図1に示すように、ペダル2b上に当該装置の利用者Uが立って後ろ向きに寄り掛かった状態でその利用者Uの体を支えるために、全体的に僅かに後傾するように基台1の前端部に立設された、支持手段としての上記サポートパイプ4を具えている。このサポートパイプ4は、基台1の前端部から僅かに後傾するように上方に延在する各々二重管式の二本の支柱部4aを有しており、それらの支柱部4aは、基台1に固定された外パイプ4bと、その外パイプ4bに摺動自在に差し込まれた内パイプ4cとを持つとともに、その外パイプ4bに各々左右方向に貫通形成されてパイプ長手方向へ整列する多数の調節孔4dの任意の一つと内パイプ4cに左右方向に貫通形成された一つのピン孔とを抜き差し可能に貫通するロックピン4eを持っており、そのロックピン4eを抜いた状態で外パイプ4bに対し内パイプ4cを上げ下げすることでサポートパイプ4の高さを利用者Uに合わせて調節することができ、その調節後にその外パイプ4bの調節孔4dとそこに整列した内パイプ4cの調節孔とにロックピン4eを貫通させることでサポートパイプ4の高さを固定することができる。なお、ロックピン4eは、パイプ4b,4cからの抜け止めのため先端部を折り曲げることができる。
【0024】
このサポートパイプ4はまた、上記二本の支柱部4aの上端部からそれぞれ後方へ水平に延在する左右二本の手摺り部4fと、それらの手摺り部4fの後端部から一旦中央寄りに曲がった後斜め下方に曲がって二本の支柱部4aと平行に下がり、さらに中央寄りに曲がって左右方向へ水平に延在して利用者Uの体の背面を支持する背面支持部4gとを有しており、その背面支持部4gの前面側には、利用者Uの体の背面を柔らかく支持するようにクッションパッド5が装着されている。
【0025】
かかる構成のこの実施例の足関節運動装置にあっては、当該装置の利用者Uが、基台1に上下方向揺動可能に支持された二つのペダル2bの上に立つと、基台1に立設されたサポートパイプ4がその利用者Uの体を支え、二台のアクチュエータ2dが、制御装置3による作動制御下でそれらのペダル2bを揺動駆動する。
【0026】
従って、この実施例の足関節運動装置によれば、利用者Uの筋力が衰えていたり関節が硬くなっていたりしても、アクチュエータ2dの助力によって充分にペダル2bを揺動させることができるので、足関節の充分な運動を行うことができる。
【0027】
しかも、この実施例の足関節運動装置によれば、ペダル2bおよびアクチュエータ2dは、片足分ずつ二組設けられているので、故障があるため特に片足について慎重なリハビリが必要等、左右の足関節で曲げて良い範囲が異なる場合にも対応することができる。
【0028】
また、この実施例の足関節運動装置によれば、各ペダル2bにはかかと押さえ部材2fが一体的に固定されていることから、そのかかと押さえ部材2fにかかとを突き当てることでかかとの位置が固定されるので、利用者Uの足がペダル2bからずり落ちるの防止し得るとともに、そのかかと押さえ部材2fがペダル2bと一体で揺動するので、かかとがかかと押さえ部材2fでこすれて痛くなったり皮が剥けたりするのを防止することができる。
【0029】
さらに、この実施例の足関節運動装置によれば、各アクチュエータ2dは、トグル機構2cを介して各ペダル2bを駆動することから、特に力が必要な、ペダル2bの傾斜角度を大きくするときに、トグル機構2cで大きな力を出せるので、各アクチュエータ2dを小型化することができる。
【0030】
さらに、この実施例の足関節運動装置によれば、制御装置3は、各ペダル2bの揺動駆動範囲を可変設定できるので、利用者Uの左右の足関節で曲げて良い範囲が異なる場合に容易に対応することができる。
【0031】
さらに、この実施例の足関節運動装置によれば、制御装置3は、二つのペダル2bの揺動駆動速度を可変設定できるので、利用者Uの体調に合わせてペダルを揺動させ得て、利用者Uは無理なく足関節の運動を行うことができる。
【0032】
さらに、この実施例の足関節運動装置によれば、制御装置3は、各ペダル2bの揺動回数を表示器3aにより表示するので、利用者Uは足関節の運動の程度を容易に知ることができる。
【0033】
さらに、この実施例の足関節運動装置によれば、制御装置3は、左右のペダル2bの揺動駆動速度を異ならせることができるので、利用者Uは左右の足関節の具合に合わせて運動を行うことができる。
【0034】
そして、この実施例の足関節運動装置によれば、サポートパイプ4は、基台1の前端部から僅かに後傾するように上方に延在する支柱部4aと、その支柱部4aの上端部から後方へ延在する手摺り部4fと、その手摺り部4fの後端部から左右方向へ延在して体の背面を支持する背面支持部4gとを有する構成になっているので、手摺り部4fと背面支持部4gとを有するサポートパイプ4を、基台1上に前後方向にコンパクトに配設し得て、当該足関節運動装置を、狭い置き場所でも置けるコンパクトな構成のものとすることができる。
【0035】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載範囲内で適宜変更し得るものであり、例えば、アクチュエータは電動モータで作動ロッドを駆動するものでなく、流体圧シリンダで作動ロッドを駆動するものでも良く、その場合に制御手段は、その流体圧をマイクロコンピュータ等の電気回路で、流体回路を介して制御するものでも良い。
【0036】
さらに、支持手段は、基台1の前端部から上方に延在する支柱の上端部に前端部を装着されたU字状のベルトを有し、そのベルトで利用者の体を支持するものでも良い。そしてペダルと基台との間には、物や足が挟まらないように伸縮式のカバーが設けられていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
かくしてこの発明の足関節運動装置によれば、利用者の筋力が衰えていたり関節が硬くなっていたりしても、アクチュエータの助力によって充分にペダルを揺動させることができるので、足関節の充分な運動を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明の足関節運動装置の一実施例を示す一部切り欠き側面図である。
【図2】上記実施例の足関節運動装置を示す平面図である。
【図3】(a),(b)は、その実施例の足関節運動装置のアクチュエータによるペダルの動きを図1におけるペダル傾斜角度と異なる角度でそれぞれ示す説明図である。
【符号の説明】
【0039】
1 基台
2 ペダルユニット
2a フレーム
2b ペダル
2c トグル機構
2d アクチュエータ
2e 作動ロッド
2f かかと押さえ部材
3 制御装置
3a 表示器
3b リモートコントローラ
4 サポートパイプ
4a 支柱部
4b 外パイプ
4c 内パイプ
4d 調節孔
4e ロックピン
4f 手摺り部
4g 背面支持部
5 クッションパッド
U 利用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に上下方向揺動可能に支持されたペダルと、
前記ペダルを揺動駆動するアクチュエータと、
前記アクチュエータの作動を制御する制御手段と、
前記基台に立設された、当該装置の利用者が立った状態でその利用者の体を支えるための支持手段と、
を具えてなる、足関節運動装置。
【請求項2】
前記ペダルおよび前記アクチュエータは、片足分ずつ二組設けられている、
請求項1記載の足関節運動装置。
【請求項3】
前記ペダルは、かかと押さえ部材が一体的に固定されたものである、請求項1または2記載の足関節運動装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは、トグル機構を介して前記ペダルを駆動するものである、請求項1から3までの何れか記載の足関節運動装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ペダルの揺動駆動範囲を可変設定できるものである、請求項1から4までの何れか記載の足関節運動装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ペダルの揺動駆動速度を可変設定できるものである、請求項1から5までの何れか記載の足関節運動装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ペダルの揺動回数を表示するものである、請求項1から6までの何れか記載の足関節運動装置。
【請求項8】
前期制御手段は、左右の前記ペダルの揺動駆動速度を異ならせ得るものである、請求項2から7までの何れか記載の足関節運動装置。
【請求項9】
前記支持手段は、前記基台の前部から上方に延在する支柱部と、その支柱部の上端部から後方へ延在する手摺り部と、その手摺り部の後端部から左右方向へ延在して体の背面を支持する背面支持部とを有するものである、請求項1から8までの何れか記載の足関節運動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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