説明

路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具

【課題】PT及びCTを検査する際の準備作業及び終了作業を大幅に簡素化させるようにした、路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具を提供する。
【解決手段】電力ヒューズ12を収納するヒューズ収納本体15a及びヒューズ把持本体15bからなるヒューズホルダ15を備え、電力用変圧器13の一次側で電力量を計測するためのPT18、CT19がこの変圧器に充填された絶縁油13b中に設けられた路上設置形変圧器装置に対するPT、CTの検査が、ヒューズ把持本体をヒューズ収納本体から抜いた状態で行えるように、導電性の棒状部材1aに形成された一端に負荷側固定電極15b2と摺動接触されるように電極接続部1bが形成され、他端に検査電圧が印加されるように電圧印加部1cが形成されると共に、ヒューズ収納本体に着脱自在となるように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相開閉器と三相分からなる電力ヒューズと絶縁油が充填された電力用変圧器とを備えて外箱内に収容され、電力ヒューズを収納するヒューズホルダが電力用変圧器の変圧器ケースを貫通させた状態で取り付けられ、絶縁油中に電力量を計測するためのPT、CTが設けられた路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
路上設置形変圧器装置は、特許文献1に示されるように、一般的に変圧器、三相分からなる電力ヒューズ、三相分からなる開閉装置等を備えて、外箱内に収容されており、開閉装置と電力ヒューズとが電力用変圧器の一次側(高圧側)に電源側から順次に接続されている。
【0003】
電力用変圧器の電源側には通常、過負荷電流や負荷側の短絡事故等による短絡電流から変圧器を保護するために、電力ヒューズが接続されている。この電力ヒューズは、変圧器ケースの側面上部を貫通させた状態で取り付けられた電力用ヒューズホルダに収納されて保持されている。
【0004】
一方、路上設置形変圧器装置に電力量計を設ける場合がある。しかも電力用変圧器の一次側で電力量を計測する場合がある。この電力量の計測を上記のような路上設置形変圧器装置に適用した路上設置形変圧器装置の概略構成図は図3に示され、また、この路上設置形変圧器装置の電気回路図は図4に示される。なお、各図は一相分のみを表示している。
【0005】
図示するように、三相開閉器11と、電力ヒューズ12と、電力用変圧器13とを備えて、外箱14内に収容されており、電力用変圧器13は図示しない変圧器本体が変圧器ケース13a内に収容されて構成され、三相開閉器11は図示しない開閉器本体が開閉器ケース11a内に収容されて構成され、開閉器ケース11aが変圧器ケース13aの側面に取り付けられている。変圧器ケース13a内には絶縁油13bとして、鉱物油等が充填され、開閉器ケース11a内には絶縁ガスとして、SF ガス等が封入されている。三相開閉器11には電源側ブッシング11b及び負荷側ブッシング11cが設けられている。
【0006】
電力ヒューズ12はヒューズホルダ15に収納されており、ヒューズホルダ15は図5(A)(B)に示されるように、ヒューズ収納本体15aとヒューズ把持本体15bとからなり、ヒューズ把持本体15bはヒューズ収納本体15aに出し入れ自在に取り付けられている。ヒューズ収納本体15aは、有底を有する絶縁性の円筒部材15a1と電源側固定電極15a2と負荷側固定電極15a3とからなり、電力ヒューズ12が円筒部材15a1の長手方向に沿って完全に収納された状態での電力ヒューズ12の電源側電極12aに対向する位置の内周面には、リング状の電源側固定電極15a2が取り付けられている。また、電力ヒューズ12が円筒部材15a1の長手方向に沿って完全に収納された状態での電力ヒューズ12の負荷側電極12bに対向する位置には、電力ヒューズ12の負荷側電極12bを摺動接触させるために、チューリップ状に形成された負荷側固定電極15a3が取り付けられている。この電力ヒューズ収納本体15aは、変圧器ケース13aの側面上部を貫通させた状態で、円筒部材15a1の開口側が通るような孔を設けた押さえ板16により、変圧器ケース13aにネジ止めされて取り付けられている。
【0007】
電力ヒューズ把持本体15bは、絶縁性の継手部材15b1、電極把持部材15b2、可動側電極15b3及び蓋部材15b4からなり、継手部材15b1の長手方向の一端には、その長手方向に電力ヒューズ12が向けられた状態で電力ヒューズ12の電源側電極12aをネジ止めにより把持するように形成された電極把持部材15b2が取り付けられ、また、その他端には電力ヒューズ収納本体15aの開口部を閉鎖するための蓋部材15b4が取り付けられている。電極把持部材15b2は、電力ヒューズ12の電源側電極12aと導通させると共に、電源側固定電極15a2の内周に摺動接触させるトロイダルコイル状の電源側可動電極15b3が外周に巻き付けられるように形成されている。
【0008】
三相開閉器11の電源側ブッシング11bにはコネクタ付引き込みケーブル17が接続され、三相開閉器11の負荷側ブッシング11cは電源側固定電極15a2と接続され、負荷側固定電極15a3と電力用変圧器13の一次側コイル13cとが接続されている。変圧器ケース13aに充填された絶縁油13b中には、電力量を計測するための計器用変成器(以下、PT)18、計器用変流器(以下、CT)19が設けられ、かつ、PT18は電力用変圧器13の一次側コイル13cの両端電圧が出力されるように接続され、CT19は電力用変圧器13の一次側電流が出力されるように設けられている。
【0009】
PT18及びCT19の各出力を外部に取り出すために、図4に示されるように、変圧器ケース13aにPT及びCT用貫通端子20,21が設けられており、この貫通端子に電力量計22が接続されている。
【0010】
PT18及びCT19は電力用変圧器13の一次側の電圧が高くなれば、PT、CTの耐圧を上げることになり、さらにPT、CTを気中仕様にすると、寸法が大きくなり、コンパクト化の要求に対応できないために、PT、CTを油中仕様にして小型化し、変圧器ケース13aに充填された絶縁油13b中に設置している。
【0011】
PT18及びCT19を変圧器ケース13aの油中に設けると、熱による劣化が促進されてPT、CTが故障する虞があるので、定期的に検査する必要がある。
【0012】
検査する際には、路上設置形変圧器装置の上位系統の開閉器を「切」状態にして路上設置形変圧器装置への電力供給を停止した後、コネクタ付引き込みケーブル17を取り外すと共に、電力用変圧器13の二次側ブッシングに接続されている、図示しないケーブルを外し、三相開閉器11の電源側ブッシング11bから規定の検査電圧を印加し、PT18の二次側にPTの変圧比に対応する電圧が出力されているかを確認する。また、そのときの電流がCT19の二次側にCTの変流比に対応する電流が出力されているかを確認する。
【特許文献1】特開平9−282985号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の検査では、三相開閉器11の電源側ブッシング11bに接続されているコネクタ付引き込みケーブル17及び電力用変圧器13の二次側ブッシングに接続されているケーブルの脱着が必要となるため、検査の準備作業及び終了作業が繁雑になるという問題がある。また、検査回路に電力ヒューズ12が接続されているため、電力ヒューズの抵抗分が含まれ、PT18の二次側出力に測定誤差が含まれるという問題があり、また、そのときの電流によるCT19の二次側出力に測定誤差が含まれるという問題がある。
【0014】
本発明の目的は、PT及びCTを検査する際の準備作業及び終了作業を大幅に簡素化させるようにした、路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明は、三相開閉器と、三相分からなる電力ヒューズと、絶縁油が充填された電力用変圧器とを備えて外箱に収容され、三相開閉器と電力ヒューズとが電力用変圧器の一次側に電源側から順次に接続され、電力ヒューズを収納するヒューズ収納本体及びヒューズ把持本体からなるヒューズホルダのヒューズ収納本体が電力用変圧器の変圧器ケースを貫通させた状態で取り付けられ、電力ヒューズの電源側電極及び負荷側電極に対応してそれぞれ摺動接触されるようにヒューズ収納本体に電源側固定電極及び負荷側固定電極が設けられ、ヒューズ把持本体は電力ヒューズの電源側電極を把持るように形成されると共に、ヒューズ収納本体に出し入れ自在に取り付けられ、開閉器の電源側ブッシングにはコネクタ付引き込みケーブルが接続され、開閉器の負荷側ブッシングとヒューズ収納本体に設けられた電源側固定電極とが接続され、負荷側固定電極と電力用変圧器の一次側(高圧側)とが接続され、絶縁油中には電力量を計測するための計器用変成器(PT)及び計器用変流器(CT)が設けられ、かつ、計器用変成器は電力用変圧器の一次側電圧が出力されるように接続され、計器用変流器は電力用変圧器の一次側電流が出力されるように設けられた路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具を対象とし、計器用変成器及び計器用変流器の検査がヒューズ把持本体をヒューズ収納本体から抜いた状態で行えるように、導電性の棒状部材からなり、棒状部材に形成された一端に負荷側固定電極と摺動接触されるように電極接続部が形成され、他端に検査電圧が印加されるように電圧印加部が形成されると共に、ヒューズ収納本体に着脱自在となるように形成されるようにしたものである。
【0016】
第2の発明は、第1の発明に加えて、棒状部材を貫通させて電極接続部と電圧印加部との間に支持部材が設けられ、電極接続部が負荷側固定電極に嵌まり込んだ状態で支持部材がヒューズ収納本体の開口部に支持されるように形成されるようにしたものである。
【0017】
第3の発明は、第1または第2の発明に加えて、負荷側固定電極と電力用変圧器の一次側との開開を変圧器ケース外部から可能とする検査補助用三相開閉器が設けられるようにしたものである。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、第1の発明によれば、PT及びCTを検査する際に、コネクタ付引き込みケーブルを脱着させる必要がなくなるので、検査の準備作業及び終了作業を大幅に簡素化させることができる。また、電力ヒューズの抵抗分を介在させることなく電力用変圧器の一次側から検査電圧を印加させるので、PT及びCTの二次側出力を精度よく測定することができる。
【0019】
第2の発明によれば、PT・CT検査用器具をヒューズ収納本体15aに装着させた際に、棒状部材が固定されるので、検査作業を安定して行うことができる。
【0020】
第3の発明によれば、PT及びCTを検査する際に、電力用変圧器の二次側ブッシングに接続されているケーブルを脱着させる必要がなくなるので、検査の準備作業及び終了作業をさらに大幅に簡素化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明に係る路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具の一実施形態を示す概略構成図、図2は本発明に係る路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具を路上設置形変圧器装置に適用している状態を示す図である。PT・CT検査用器具1は図1に示すように、導電性の棒状部材1aと、棒状部材1aの一端に形成された導電性の電極接続部1bと、その他端に検査電圧が印加されるように形成された電圧印加部1cと、電極接続部1bと電圧印加部1cとの間の棒状部材1aを覆うように設けられた筒状の絶縁部材1dと、棒状部材1aを貫通させて電極接続部1bと電圧印加部1cとの間に設けられた、例えば円盤状の支持部材1eとからなる。
【0022】
電極接続部1bは棒状部材1aに適宜に取り付けられ、電力ヒューズ12の負荷側電極12bと同形状に形成され、電圧印加部1cはネジ端子状に形成され、支持部材1eは電極接続部1bが負荷側固定電極12bに完全に嵌まり込んだ状態でヒューズ収納本体15aの開口部に固定して支持されるように形成されている。絶縁部材1dはFRPなどの有機材料からなり、支持部材1eはEPDMなどの有機材料からなる。
【0023】
PT18及びCT19を検査する際には、路上設置形変圧器装置の上位系統の開閉器を「切」状態にして路上設置形変圧器装置への電力供給を停止させるか、または、三相開閉器11を「切」状態にした後、図2に示すように、ヒューズ収納本体15aの負荷側固定電極15a3と電力用変圧器13の一次側との開開を変圧器ケース13aの外部から可能とするように、変圧器ケース13a内に設けられた検査補助用三相開閉器23を「切」状態にし、ヒューズ把持本体15bをヒューズ収納本体15aから引き抜き、PT・CT検査用器具1をヒューズ収納本体15aに押し込み、電極接続部1bを負荷側固定電極15a3に完全に嵌め込んだ状態にする。この状態で電圧印加部1cから規定の検査電圧を印加し、PT18の二次側にPTの変圧比に対応する電圧が出力されているかを、貫通端子20,21から電力量計22を外し、貫通端子20に電圧計を接続して測定する。また、そのときの電流がCT19の二次側にCTの変流比に対応する電流が出力されているかを、貫通端子20,21から電力量計22を外し、貫通端子21に電流計を接続して測定する。
【0024】
このように、PT18及びCT19を検査する際に、コネクタ付引き込みケーブル17及び電力用変圧器13の二次側ブッシングに接続されているケーブルを脱着させる必要がなくなり、また、電力ヒューズの抵抗分を介在させることなく電力用変圧器13の一次側から検査電圧を印加させることができる。さらに、検査作業を安定して行うことができる。
【0025】
上記の実施形態では、PT18及びCT19は別々に構成されているが、一体化したPCTでもよい。また、棒状部材1aは筒状に形成した絶縁部材1dで覆うようにしたが、樹脂材料の絶縁部材で一体化して覆うようにしてもよい。さらに、絶縁部材1dは変圧器の一次側電圧に応じて無くてもよく、または、その肉厚を変化させればよい。さらにまた、電極接続部1bは電力ヒューズ12の負荷側電極12bと同形状に形成したが、これに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具を路上設置形変圧器装置に適用している状態を示す図である。
【図3】電力量の計測を行うようにした従来の路上設置形変圧器装置の概略構成図である。
【図4】図3に示される路上設置形変圧器装置の電気回路図である。
【図5】(A)は、電力用ヒューズホルダを構成するヒューズ収納本体を示す縦断面図、(B)は電力用ヒューズホルダを構成する電力ヒューズ把持本体を示す側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1a 棒状部材
1b 電極接続部
1c 電圧印加部
1e 支持部材
11 三相開閉器
12 電力ヒューズ
13 電力用変圧器
14 外箱
22 開閉器ケース
11 三相開閉器
11b 電源側ブッシング
11c 負荷側ブッシング
12 電力ヒューズ
12a 電源側電極
12b 負荷側電極
13 電力用変圧器
13a 変圧器ケース
13b 絶縁油
14 外箱
15 ヒューズホルダ
15a ヒューズ把持本体
15a2 電源側固定電極
15b2 負荷側固定電極
15b ヒューズ把持本体
17 コネクタ付引き込みケーブル
18 計器用変成器(PT)
19 計器用変流器(CT)
23 検査補助用三相開閉器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相開閉器と、三相分からなる電力ヒューズと、絶縁油が充填された電力用変圧器とを備えて外箱に収容され、
前記三相開閉器と電力ヒューズとが前記電力用変圧器の一次側に電源側から順次に接続され、
前記電力ヒューズを収納するヒューズ収納本体及びヒューズ把持本体からなるヒューズホルダの前記ヒューズ収納本体が前記電力用変圧器の変圧器ケースを貫通させた状態で取り付けられ、
前記電力ヒューズの電源側電極及び負荷側電極に対応してそれぞれ摺動接触されるように前記ヒューズ収納本体に電源側固定電極及び負荷側固定電極が設けられ、
前記ヒューズ把持本体は前記電力ヒューズの電源側電極を把持るように形成されると共に、前記ヒューズ収納本体に出し入れ自在に取り付けられ、
前記開閉器の電源側ブッシングにはコネクタ付引き込みケーブルが接続され、
前記開閉器の負荷側ブッシングと前記ヒューズ収納本体に設けられた電源側固定電極とが接続され、
前記負荷側固定電極と前記電力用変圧器の一次側(高圧側)とが接続され、
前記絶縁油中には電力量を計測するための計器用変成器(PT)及び計器用変流器(CT)が設けられ、かつ、前記計器用変成器は前記電力用変圧器の一次側電圧が出力されるように接続され、
前記計器用変流器は前記電力用変圧器の一次側電流が出力されるように設けられた路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具であって、
前記計器用変成器及び計器用変流器の検査が前記ヒューズ把持本体を前記ヒューズ収納本体から抜いた状態で行えるように、導電性の棒状部材からなり、前記棒状部材に形成された一端に前記負荷側固定電極と摺動接触されるように電極接続部が形成され、他端に検査電圧が印加されるように電圧印加部が形成されると共に、前記ヒューズ収納本体に着脱自在となるように形成された、路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具。
【請求項2】
前記棒状部材を貫通させて前記電極接続部と前記電圧印加部との間に支持部材が設けられ、
前記電極接続部が前記負荷側固定電極に嵌まり込んだ状態で前記支持部材が前記ヒューズ収納本体の開口部に支持されるように形成された、請求項1に記載の路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具。
【請求項3】
前記負荷側固定電極と前記電力用変圧器の一次側との開開を前記変圧器ケース外部から可能とする検査補助用三相開閉器が設けられた請求項1または2に記載の路上設置形変圧器装置のPT・CT検査用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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