車いす固定装置
【課題】作業性が高く、使用時でのリトラクタ本体の揺動を抑えることができる車いす固定装置を提供する。
【解決手段】リトラクタ41のリトラクタ本体42より延出されたリトラクタベルト43の引込力51を利用して車いす13を固定する拘束機構22を備える。リトラクタベルト43の先端をフロア11に固定する。リトラクタ本体42に、車いす13のフレーム21に係止されるフック83を回動可能に設ける。フック83の回動方向をストッパ121で規制する。
【解決手段】リトラクタ41のリトラクタ本体42より延出されたリトラクタベルト43の引込力51を利用して車いす13を固定する拘束機構22を備える。リトラクタベルト43の先端をフロア11に固定する。リトラクタ本体42に、車いす13のフレーム21に係止されるフック83を回動可能に設ける。フック83の回動方向をストッパ121で規制する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定位置に車いすを固定する車いす固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後部室に車いすを搭載できる車両が知られている。
【0003】
この車両では、搭乗した車いすを所定位置に固定する為の固定装置が設けられており、その固定装置としては、車いすをベルトで固定するものが知られている。
【0004】
その一例としては、固定位置に配置された車いすのフレーム前部をベルトで固定するとともに、フレーム後部を後方からベルトで引張して固定する固定装置が挙げられる。
【0005】
すなわち、前記固定位置より前側のフロアには、固定ベルトが固定されており、該固定ベルトの先端には、係止フックが設けられている。また、前記固定位置より後側のフロアには、当該フロアに固定された連結ベルトを介してリトラクタが設けられている。
【0006】
このリトラクタのリトラクタ本体内には、リトラクタベルトが引き出し可能に巻き取られており、当該リトラクタベルトの先端には、前記フレームに係止される係止フックが設けられている。
【0007】
前記リトラクタ本体は、前記リトラクタベルトを巻取方向に付勢するとともに、内蔵のラッチ機構等により前記リトラクタベルトの引出を阻止できるように構成されている。一方、このリトラクタ本体には、ロック解除レバーが設けられており、該ロック解除レバーが操作している間は、前記リトラクタベルトを引き出せるように構成されている。
【0008】
前記固定位置に配置された車いすを固定する際には、前記固定ベルトの係止フックを前記車いすのフレーム前部に係止して、当該車いすの後方への移動を阻止する。この状態において、前記リトラクタベルトの前記係止フックを前記フレームの後部に係止することで、当該フレームを前記リトラクタベルトによって後方へ付勢した状態で、前記車いすを前記固定位置に固定できるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の車いす固定装置において、リトラクタベルトを車いすのフレームに係止する際には、リトラクタ本体を把持しながらロック解除レバーを操作してリトラクタベルトを引き出した後、リトラクタベルトの係止フックを把持して車いすのフレームに係止しなければならなかった。
【0010】
このため、持ち替えが必要となり、作業が煩雑化する。
【0011】
また、重量物である前記リトラクタ本体が連結ベルトとリトラクタベルト間に存在するため、揺動しやすく、ベルト緩みや車いすへの振動伝達等の問題が生じやすかった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、作業性が高く、使用時でのリトラクタ本体の揺動を抑えることができる車いす固定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の車いす固定装置にあっては、リトラクタのリトラクタ本体より延出されたリトラクタベルトの引込力を利用して車いすを固定する拘束機構を備えた車いす固定装置において、前記リトラクタベルトの先端をフロアに固定するとともに、前記リトラクタ本体に、車いすのフレームに係止されるフックを設けた。
【0014】
例えば、フレーム前部が固定ベルトの係止フックで係止された車いすを固定する際には、リトラクタ本体を保持するとともに、その手で当該リトラクタ本体に設けられたロック解除レバー等を操作する。すると、前記リトラクタ本体からはリトラクタベルトの引出が許容されるので、当該リトラクタ本体を前記リトラクタベルトの固定位置から遠ざけて前記車いすに近付けるとともに、該リトラクタ本体に設けられたフックを車いすのフレーム後部に係止する。
【0015】
この状態において、前記ロック解除レバーを離す。すると、前記リトラクタベルトには前記リトラクタ本体内へ向けた引込力が生じるため、前記車いすのフレームは、この引込力によって付勢され拘束される。
【0016】
また、請求項2の車いす固定装置においては、仮想平面に沿って鉤状に屈曲形成された鉤部を前記フックの先端部に設け、該フックの基端部を前記リトラクタ本体に回動自在に支持するとともに、当該フックが前記仮想平面に沿って回動するように構成した。
【0017】
すなわち、前記リトラクタ本体に支持された前記フックは、屈曲形成された鉤部が構成する仮想平面に沿って回動するように構成されている。
【0018】
このため、前記フックが固定された場合と比較して、当該フックを前記フレーム等に係止する際の自由度が高められる。また、前記フックが、どの方向にも動けるように支持された場合と比較して、係止作業性が高められる。
【0019】
さらに、請求項3の車いす固定装置では、係止部位が挿通する前記鉤部の開放側と逆側への当該フックの回動を規制するストッパを設けた。
【0020】
すなわち、前記フックは、前記鉤部の開放側と逆側への回動がストッパによって阻止されており、当該フックをフレーム等に係止する際には、当該フックの逃げ方向への回動が防止される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明の請求項1の車いす固定装置にあっては、リトラクタ本体に設けられたフックの車いすのまでの移動と、当該リトラクタ本体からリトラクタベルトを引き出すためのロック解除レバー等の解除操作と、フックの係止作業とを、同じ手で同時に行うことができる。
【0022】
このため、リトラクタ本体を把持しながらロック解除レバーを操作してリトラクタベルトを引き出した後、該リトラクタベルトの係止フックを把持して車いすのフレームに係止する必要があった従来と比較して、持ち替えが不要となり、作業性が高まる。
【0023】
そして、固定後において、前記リトラクタ本体に設けられたフックが前記車いすの前記フレームに係止されるため、重量物であるリトラクタ本体が連結ベルトとリトラクタベルトとの間に配置される従来と比較して、リトラクタ本体の不用意な揺動やベルト緩みを防止することができるとともに、リトラクタ本体の振動が車いすに伝達されるという問題を未然に解消することができる。
【0024】
したがって、作業性が高く、使用時でのリトラクタ本体の揺動を抑えることができる。
【0025】
また、請求項2の車いす固定装置においては、前記リトラクタ本体に支持された前記フックが、屈曲形成された鉤部が構成する仮想平面に沿って回動するように構成されているので、前記フックがリトラクタ本体に固定された場合と比較して、当該フックを前記フレーム等に係止する際の自由度を高めることができる。
【0026】
さらに、前記フックが、どの方向にも動けるように支持された場合と比較して、係止作業性を高めることができる。
【0027】
そして、請求項3の車いす固定装置では、前記鉤部の開放側と逆側への前記フックの回動をストッパによって阻止することができる。これにより、当該フックをフレーム等に係止する際には、当該フックの逃げ方向への回動を防止することができる。
【0028】
このため、前記フックをフレーム等に係止する際に、当該フックが逃げ方向へ回動してしまう場合と比較して、作業性をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態を示す説明図で、(a)は使用状態を示す斜視図であり、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一の実施の形態を図に従って説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態にかかる車いす固定装置1を示す図であり、当該車いす固定装置1は、車両の後部室に設けられている。
【0032】
すなわち、福祉車両等では、車いす利用者が車いすを利用したまま後部室に搭乗できるように構成されており、当該後部室には、フロア11に設定された固定位置12に搭乗した車いす13を固定する為の車いす固定装置1が設けられている。
【0033】
この車いす固定装置1は、例えば車いす13のフレーム21の前部を固定する固定機構と(図示省略)、前記フレーム21の後部を拘束する拘束機構22とにより構成されている。
【0034】
前記固定機構としては、固定ベルト式のものが挙げられる。この場合、前記固定位置12より車両前方F側に設けられた左右一対の固定ベルトで構成し、各固定ベルトの基端部を前記フロア11に固定するとともに、その先端に係止フックを設ける。
【0035】
これにより、左方の固定ベルトの係止フックを前記固定位置12に配置された車いす13のフレーム21左側前部に係止するとともに、右方の固定ベルトの係止フックを前記車いす13のフレーム21右側前部に係止することで、当該車いす13の車両後方Rへの移動を防止する。
【0036】
また、前記拘束機構22は、図1の(a)及び(b)に示したように、リトラクタ式のもので構成する。このリトラクタ式の拘束機構22は、左右一対のリトラクタ拘束部31を備え(一方のみ図示)、各リトラクタ拘束部31は、前記固定位置12より車両後方R側に設けられている。
【0037】
前記固定機構と同様に、一方のリトラクタ拘束部31は、前記固定位置12に配置された車いす13のフレーム21左側後部を拘束するもので、他方のリトラクタ拘束部31は、前記フレーム21右側後部を拘束するものであり、当該車いす13の車両前方Fへの移動を防止することができる。
【0038】
これにより、前記固定機構と前記拘束機構22とによって、前記車いす13の車両前後方向へ移動を阻止することで、当該車いす13を前記固定位置12に固定できるように構成されている。
【0039】
前記リトラクタ拘束部31は、リトラクタ41を中心に構成されており、該リトラクタ41のリトラクタ本体42内には、リトラクタベルト43が巻き取られた状態で保持されている。該リトラクタベルト43は、前記リトラクタ本体42の後部に設けられた引出口44より延出しており、前記リトラクタ本体42から引き出せるように構成されている。
【0040】
前記リトラクタ本体42は、前記リトラクタベルト43に引込方向への引込力51を常に付与するように構成されており、引き出されたリトラクタベルト43は、リトラクタ本体42側に付勢されるように構成されている。
【0041】
このリトラクタ本体42は、前記リトラクタベルト43の引込方向への移動は許容する一方、引出方向への移動は阻止するロック機構を内蔵しており、該ロック機構は、前記リトラクタ本体42の側面61に設けられたダイヤル62を回転操作することで、前記リトラクタベルト43を補助的にリトラクタ本体42内に巻き取れるように構成されている。
【0042】
また、前記ロック機構は、ロック解除レバー71が操作されている間は、前記リトラクタベルト43の引出を許容するように構成されており、該ロック解除レバー71は、前記リトラクタ本体42前部より斜め上方へ向けて延出している。
【0043】
前記リトラクタ本体42の前部からは、図1の(b)に示したように、矩形状の固定ブラケット81が前方へ向けて延出している。該固定ブラケット81には、軸部82が設けられており、該軸部82には、前記車いす13の前記フレーム21に係止されるフック83が回動自在に支持されている。
【0044】
該フック83は、金属バーで構成されており、仮想平面91を想定した際に、前記金属バーが前記仮想平面91に沿って屈曲形成されることにより形成されている。
【0045】
具体的に説明すると、前記フック83の基端部は、小径リング状に屈曲形成されてなるリング部101が設けられており、該リング部101からは、平面視右側前方へ向けて延出する斜め延出部102が延出している。該斜め延出部102の先端には、前方へ向けて延出した前方延出部103が形成されており、該前方延出部103より先端側には、左方へ向けて円弧状に屈曲された湾曲部104が形成されている。該湾曲部104の先端には、後方へ向けて延出した後方延出部105が形成されており、該後方延出部105の先端と前記リング部101との間には、間隙が形成され前記車いす13の係止部位が挿通される挿通部106が開放形成されている。
【0046】
前記リング部101と前記斜め延出部102と前記前方延出部103と前記湾曲部104と前記後方延出部105との総ては、前記仮想平面91に沿って形成されており、前記前方延出部103と前記湾曲部104と前記後方延出部105とによって、当該フック83の先端部に鉤状に屈曲形成された鉤部111も、前記仮想平面91に沿って形成されている。
【0047】
前記フック83は、前記リング部101に対して前記軸部82が垂直方向に挿通、つまり前記仮想平面91に対して垂直方向に挿通した状態で前記固定ブラケット81に軸支されており、当該フック83は、このリング部101を中心に回転自在に構成されている。これにより、当該フック83は、前記仮想平面91に沿って回動するように構成されている。
【0048】
前記固定ブラケット81の前方右側の角部には、ストッパ121が設けられており、該ストッパ121の前端部には、裏面側に折曲されてなる折曲部122が形成されている。
【0049】
これにより、前記フック83が前記挿通部106が設けられた前記鉤部111の開放側123と逆側124へ回動した際には、前記リング部101が前記ストッパ121の前記折曲部122に当接するように構成されており、前記ストッパ121によって前記フック83の前記逆側124への回動を規制できるように構成されている。
【0050】
そして、前記リトラクタベルト43の先端には、図1の(a)に示したように、円形リング131が固定されており、該円形リング131は、アンカー132に支持されている。該アンカー132は、前記固定位置12より車両後方R側の部位にて前記フロア11に固定されており、前記リトラクタ41は、前記リトラクタベルト43を介して前記フロア11に固定されている。
【0051】
以上の構成にかかる本実施の形態において、この車いす固定装置1を構成する固定機構によって車両後方Rへの移動が阻止された車いす13を固定位置12に固定する際には、拘束機構のリトラクタ拘束部31を構成するリトラクタ本体42を保持するとともに、その手で当該リトラクタ本体42に設けられたロック解除レバー71を操作する。
【0052】
すると、前記リトラクタ本体42からはリトラクタベルト43の引出が許容されるので、当該リトラクタ本体42を前記リトラクタベルト43の固定位置から前記車いす13へ向けて移動するとともに、該リトラクタ本体42に設けられたフック83を車いす13のフレーム21後部に係止する。
【0053】
この係止状態において、前記ロック解除レバー71から手を離す。すると、前記リトラクタベルト43には、前記リトラクタ本体42内へ向けた引込力51が生ずるため、前記車いす13のフレーム21は、この引込力51によって車両方向R側へ付勢され拘束される。これにより、前記リトラクタベルト43の引込力51を利用して前記車いす13を前記固定位置に固定することができる。
【0054】
このように、前記リトラクタ本体42に設けられたフック83の車いす13のまでの移動と、当該リトラクタ本体42からリトラクタベルト43を引き出すためのロック解除レバー71の解除操作と、フック83の係止作業とを、同じ手で同時に行うことができる。
【0055】
このため、リトラクタ本体を把持しながらロック解除レバーを操作してリトラクタベルトを引き出した後、該リトラクタベルトの係止フックを把持して車いすのフレームに係止する必要があった従来と比較して、持ち替えが不要となり、作業性が高まる。
【0056】
そして、固定後において、前記リトラクタ本体42に設けられたフック83が前記車いす13の前記フレーム21に係止されるため、重量物であるリトラクタ本体が連結ベルトとリトラクタベルトとの間に配置される従来と比較して、リトラクタ本体の不用意な揺動やベルト緩みを防止することができるとともに、リトラクタ本体42の振動が車いす13に伝達されるという問題を未然に解消することができる。
【0057】
したがって、作業性が高く、使用時でのリトラクタ本体42の揺動を抑えることができる。
【0058】
また、前記リトラクタ本体42に支持された前記フック83は、前記仮想平面91に沿って回動するように構成されている。このため、当該フック83が固定された場合と比較して、当該フック83を前記フレーム21に係止する際の自由度を高めることができる。
【0059】
また、前記フック83が、どの方向にも動けるように支持された場合と比較して、係止作業性を高めることができる。
【0060】
そして、前記鉤部111の開放側123と逆側124への前記フック83の過度な回動をストッパ121によって阻止することができる。これにより、当該フック83を前記フレーム21に係止する際には、当該フック83の逃げ方向、つまり前記逆側124への回動を防止することができる。
【0061】
このため、前記フック83を前記フレーム21に係止する際に、当該フック83が逃げ方向へ回動してしまう場合と比較して、作業性をさらに向上することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 車いす固定装置
11 フロア
13 車いす
21 フレーム
22 拘束機構
41 リトラクタ
42 リトラクタ本体
43 リトラクタベルト
51 引込力
83 フック
91 仮想平面
111 鉤部
121 ストッパ
123 開放側
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定位置に車いすを固定する車いす固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、後部室に車いすを搭載できる車両が知られている。
【0003】
この車両では、搭乗した車いすを所定位置に固定する為の固定装置が設けられており、その固定装置としては、車いすをベルトで固定するものが知られている。
【0004】
その一例としては、固定位置に配置された車いすのフレーム前部をベルトで固定するとともに、フレーム後部を後方からベルトで引張して固定する固定装置が挙げられる。
【0005】
すなわち、前記固定位置より前側のフロアには、固定ベルトが固定されており、該固定ベルトの先端には、係止フックが設けられている。また、前記固定位置より後側のフロアには、当該フロアに固定された連結ベルトを介してリトラクタが設けられている。
【0006】
このリトラクタのリトラクタ本体内には、リトラクタベルトが引き出し可能に巻き取られており、当該リトラクタベルトの先端には、前記フレームに係止される係止フックが設けられている。
【0007】
前記リトラクタ本体は、前記リトラクタベルトを巻取方向に付勢するとともに、内蔵のラッチ機構等により前記リトラクタベルトの引出を阻止できるように構成されている。一方、このリトラクタ本体には、ロック解除レバーが設けられており、該ロック解除レバーが操作している間は、前記リトラクタベルトを引き出せるように構成されている。
【0008】
前記固定位置に配置された車いすを固定する際には、前記固定ベルトの係止フックを前記車いすのフレーム前部に係止して、当該車いすの後方への移動を阻止する。この状態において、前記リトラクタベルトの前記係止フックを前記フレームの後部に係止することで、当該フレームを前記リトラクタベルトによって後方へ付勢した状態で、前記車いすを前記固定位置に固定できるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の車いす固定装置において、リトラクタベルトを車いすのフレームに係止する際には、リトラクタ本体を把持しながらロック解除レバーを操作してリトラクタベルトを引き出した後、リトラクタベルトの係止フックを把持して車いすのフレームに係止しなければならなかった。
【0010】
このため、持ち替えが必要となり、作業が煩雑化する。
【0011】
また、重量物である前記リトラクタ本体が連結ベルトとリトラクタベルト間に存在するため、揺動しやすく、ベルト緩みや車いすへの振動伝達等の問題が生じやすかった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、作業性が高く、使用時でのリトラクタ本体の揺動を抑えることができる車いす固定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の車いす固定装置にあっては、リトラクタのリトラクタ本体より延出されたリトラクタベルトの引込力を利用して車いすを固定する拘束機構を備えた車いす固定装置において、前記リトラクタベルトの先端をフロアに固定するとともに、前記リトラクタ本体に、車いすのフレームに係止されるフックを設けた。
【0014】
例えば、フレーム前部が固定ベルトの係止フックで係止された車いすを固定する際には、リトラクタ本体を保持するとともに、その手で当該リトラクタ本体に設けられたロック解除レバー等を操作する。すると、前記リトラクタ本体からはリトラクタベルトの引出が許容されるので、当該リトラクタ本体を前記リトラクタベルトの固定位置から遠ざけて前記車いすに近付けるとともに、該リトラクタ本体に設けられたフックを車いすのフレーム後部に係止する。
【0015】
この状態において、前記ロック解除レバーを離す。すると、前記リトラクタベルトには前記リトラクタ本体内へ向けた引込力が生じるため、前記車いすのフレームは、この引込力によって付勢され拘束される。
【0016】
また、請求項2の車いす固定装置においては、仮想平面に沿って鉤状に屈曲形成された鉤部を前記フックの先端部に設け、該フックの基端部を前記リトラクタ本体に回動自在に支持するとともに、当該フックが前記仮想平面に沿って回動するように構成した。
【0017】
すなわち、前記リトラクタ本体に支持された前記フックは、屈曲形成された鉤部が構成する仮想平面に沿って回動するように構成されている。
【0018】
このため、前記フックが固定された場合と比較して、当該フックを前記フレーム等に係止する際の自由度が高められる。また、前記フックが、どの方向にも動けるように支持された場合と比較して、係止作業性が高められる。
【0019】
さらに、請求項3の車いす固定装置では、係止部位が挿通する前記鉤部の開放側と逆側への当該フックの回動を規制するストッパを設けた。
【0020】
すなわち、前記フックは、前記鉤部の開放側と逆側への回動がストッパによって阻止されており、当該フックをフレーム等に係止する際には、当該フックの逃げ方向への回動が防止される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明の請求項1の車いす固定装置にあっては、リトラクタ本体に設けられたフックの車いすのまでの移動と、当該リトラクタ本体からリトラクタベルトを引き出すためのロック解除レバー等の解除操作と、フックの係止作業とを、同じ手で同時に行うことができる。
【0022】
このため、リトラクタ本体を把持しながらロック解除レバーを操作してリトラクタベルトを引き出した後、該リトラクタベルトの係止フックを把持して車いすのフレームに係止する必要があった従来と比較して、持ち替えが不要となり、作業性が高まる。
【0023】
そして、固定後において、前記リトラクタ本体に設けられたフックが前記車いすの前記フレームに係止されるため、重量物であるリトラクタ本体が連結ベルトとリトラクタベルトとの間に配置される従来と比較して、リトラクタ本体の不用意な揺動やベルト緩みを防止することができるとともに、リトラクタ本体の振動が車いすに伝達されるという問題を未然に解消することができる。
【0024】
したがって、作業性が高く、使用時でのリトラクタ本体の揺動を抑えることができる。
【0025】
また、請求項2の車いす固定装置においては、前記リトラクタ本体に支持された前記フックが、屈曲形成された鉤部が構成する仮想平面に沿って回動するように構成されているので、前記フックがリトラクタ本体に固定された場合と比較して、当該フックを前記フレーム等に係止する際の自由度を高めることができる。
【0026】
さらに、前記フックが、どの方向にも動けるように支持された場合と比較して、係止作業性を高めることができる。
【0027】
そして、請求項3の車いす固定装置では、前記鉤部の開放側と逆側への前記フックの回動をストッパによって阻止することができる。これにより、当該フックをフレーム等に係止する際には、当該フックの逃げ方向への回動を防止することができる。
【0028】
このため、前記フックをフレーム等に係止する際に、当該フックが逃げ方向へ回動してしまう場合と比較して、作業性をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態を示す説明図で、(a)は使用状態を示す斜視図であり、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の一の実施の形態を図に従って説明する。
【0031】
図1は、本実施の形態にかかる車いす固定装置1を示す図であり、当該車いす固定装置1は、車両の後部室に設けられている。
【0032】
すなわち、福祉車両等では、車いす利用者が車いすを利用したまま後部室に搭乗できるように構成されており、当該後部室には、フロア11に設定された固定位置12に搭乗した車いす13を固定する為の車いす固定装置1が設けられている。
【0033】
この車いす固定装置1は、例えば車いす13のフレーム21の前部を固定する固定機構と(図示省略)、前記フレーム21の後部を拘束する拘束機構22とにより構成されている。
【0034】
前記固定機構としては、固定ベルト式のものが挙げられる。この場合、前記固定位置12より車両前方F側に設けられた左右一対の固定ベルトで構成し、各固定ベルトの基端部を前記フロア11に固定するとともに、その先端に係止フックを設ける。
【0035】
これにより、左方の固定ベルトの係止フックを前記固定位置12に配置された車いす13のフレーム21左側前部に係止するとともに、右方の固定ベルトの係止フックを前記車いす13のフレーム21右側前部に係止することで、当該車いす13の車両後方Rへの移動を防止する。
【0036】
また、前記拘束機構22は、図1の(a)及び(b)に示したように、リトラクタ式のもので構成する。このリトラクタ式の拘束機構22は、左右一対のリトラクタ拘束部31を備え(一方のみ図示)、各リトラクタ拘束部31は、前記固定位置12より車両後方R側に設けられている。
【0037】
前記固定機構と同様に、一方のリトラクタ拘束部31は、前記固定位置12に配置された車いす13のフレーム21左側後部を拘束するもので、他方のリトラクタ拘束部31は、前記フレーム21右側後部を拘束するものであり、当該車いす13の車両前方Fへの移動を防止することができる。
【0038】
これにより、前記固定機構と前記拘束機構22とによって、前記車いす13の車両前後方向へ移動を阻止することで、当該車いす13を前記固定位置12に固定できるように構成されている。
【0039】
前記リトラクタ拘束部31は、リトラクタ41を中心に構成されており、該リトラクタ41のリトラクタ本体42内には、リトラクタベルト43が巻き取られた状態で保持されている。該リトラクタベルト43は、前記リトラクタ本体42の後部に設けられた引出口44より延出しており、前記リトラクタ本体42から引き出せるように構成されている。
【0040】
前記リトラクタ本体42は、前記リトラクタベルト43に引込方向への引込力51を常に付与するように構成されており、引き出されたリトラクタベルト43は、リトラクタ本体42側に付勢されるように構成されている。
【0041】
このリトラクタ本体42は、前記リトラクタベルト43の引込方向への移動は許容する一方、引出方向への移動は阻止するロック機構を内蔵しており、該ロック機構は、前記リトラクタ本体42の側面61に設けられたダイヤル62を回転操作することで、前記リトラクタベルト43を補助的にリトラクタ本体42内に巻き取れるように構成されている。
【0042】
また、前記ロック機構は、ロック解除レバー71が操作されている間は、前記リトラクタベルト43の引出を許容するように構成されており、該ロック解除レバー71は、前記リトラクタ本体42前部より斜め上方へ向けて延出している。
【0043】
前記リトラクタ本体42の前部からは、図1の(b)に示したように、矩形状の固定ブラケット81が前方へ向けて延出している。該固定ブラケット81には、軸部82が設けられており、該軸部82には、前記車いす13の前記フレーム21に係止されるフック83が回動自在に支持されている。
【0044】
該フック83は、金属バーで構成されており、仮想平面91を想定した際に、前記金属バーが前記仮想平面91に沿って屈曲形成されることにより形成されている。
【0045】
具体的に説明すると、前記フック83の基端部は、小径リング状に屈曲形成されてなるリング部101が設けられており、該リング部101からは、平面視右側前方へ向けて延出する斜め延出部102が延出している。該斜め延出部102の先端には、前方へ向けて延出した前方延出部103が形成されており、該前方延出部103より先端側には、左方へ向けて円弧状に屈曲された湾曲部104が形成されている。該湾曲部104の先端には、後方へ向けて延出した後方延出部105が形成されており、該後方延出部105の先端と前記リング部101との間には、間隙が形成され前記車いす13の係止部位が挿通される挿通部106が開放形成されている。
【0046】
前記リング部101と前記斜め延出部102と前記前方延出部103と前記湾曲部104と前記後方延出部105との総ては、前記仮想平面91に沿って形成されており、前記前方延出部103と前記湾曲部104と前記後方延出部105とによって、当該フック83の先端部に鉤状に屈曲形成された鉤部111も、前記仮想平面91に沿って形成されている。
【0047】
前記フック83は、前記リング部101に対して前記軸部82が垂直方向に挿通、つまり前記仮想平面91に対して垂直方向に挿通した状態で前記固定ブラケット81に軸支されており、当該フック83は、このリング部101を中心に回転自在に構成されている。これにより、当該フック83は、前記仮想平面91に沿って回動するように構成されている。
【0048】
前記固定ブラケット81の前方右側の角部には、ストッパ121が設けられており、該ストッパ121の前端部には、裏面側に折曲されてなる折曲部122が形成されている。
【0049】
これにより、前記フック83が前記挿通部106が設けられた前記鉤部111の開放側123と逆側124へ回動した際には、前記リング部101が前記ストッパ121の前記折曲部122に当接するように構成されており、前記ストッパ121によって前記フック83の前記逆側124への回動を規制できるように構成されている。
【0050】
そして、前記リトラクタベルト43の先端には、図1の(a)に示したように、円形リング131が固定されており、該円形リング131は、アンカー132に支持されている。該アンカー132は、前記固定位置12より車両後方R側の部位にて前記フロア11に固定されており、前記リトラクタ41は、前記リトラクタベルト43を介して前記フロア11に固定されている。
【0051】
以上の構成にかかる本実施の形態において、この車いす固定装置1を構成する固定機構によって車両後方Rへの移動が阻止された車いす13を固定位置12に固定する際には、拘束機構のリトラクタ拘束部31を構成するリトラクタ本体42を保持するとともに、その手で当該リトラクタ本体42に設けられたロック解除レバー71を操作する。
【0052】
すると、前記リトラクタ本体42からはリトラクタベルト43の引出が許容されるので、当該リトラクタ本体42を前記リトラクタベルト43の固定位置から前記車いす13へ向けて移動するとともに、該リトラクタ本体42に設けられたフック83を車いす13のフレーム21後部に係止する。
【0053】
この係止状態において、前記ロック解除レバー71から手を離す。すると、前記リトラクタベルト43には、前記リトラクタ本体42内へ向けた引込力51が生ずるため、前記車いす13のフレーム21は、この引込力51によって車両方向R側へ付勢され拘束される。これにより、前記リトラクタベルト43の引込力51を利用して前記車いす13を前記固定位置に固定することができる。
【0054】
このように、前記リトラクタ本体42に設けられたフック83の車いす13のまでの移動と、当該リトラクタ本体42からリトラクタベルト43を引き出すためのロック解除レバー71の解除操作と、フック83の係止作業とを、同じ手で同時に行うことができる。
【0055】
このため、リトラクタ本体を把持しながらロック解除レバーを操作してリトラクタベルトを引き出した後、該リトラクタベルトの係止フックを把持して車いすのフレームに係止する必要があった従来と比較して、持ち替えが不要となり、作業性が高まる。
【0056】
そして、固定後において、前記リトラクタ本体42に設けられたフック83が前記車いす13の前記フレーム21に係止されるため、重量物であるリトラクタ本体が連結ベルトとリトラクタベルトとの間に配置される従来と比較して、リトラクタ本体の不用意な揺動やベルト緩みを防止することができるとともに、リトラクタ本体42の振動が車いす13に伝達されるという問題を未然に解消することができる。
【0057】
したがって、作業性が高く、使用時でのリトラクタ本体42の揺動を抑えることができる。
【0058】
また、前記リトラクタ本体42に支持された前記フック83は、前記仮想平面91に沿って回動するように構成されている。このため、当該フック83が固定された場合と比較して、当該フック83を前記フレーム21に係止する際の自由度を高めることができる。
【0059】
また、前記フック83が、どの方向にも動けるように支持された場合と比較して、係止作業性を高めることができる。
【0060】
そして、前記鉤部111の開放側123と逆側124への前記フック83の過度な回動をストッパ121によって阻止することができる。これにより、当該フック83を前記フレーム21に係止する際には、当該フック83の逃げ方向、つまり前記逆側124への回動を防止することができる。
【0061】
このため、前記フック83を前記フレーム21に係止する際に、当該フック83が逃げ方向へ回動してしまう場合と比較して、作業性をさらに向上することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 車いす固定装置
11 フロア
13 車いす
21 フレーム
22 拘束機構
41 リトラクタ
42 リトラクタ本体
43 リトラクタベルト
51 引込力
83 フック
91 仮想平面
111 鉤部
121 ストッパ
123 開放側
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リトラクタのリトラクタ本体より延出されたリトラクタベルトの引込力を利用して車いすを固定する拘束機構を備えた車いす固定装置において、
前記リトラクタベルトの先端をフロアに固定するとともに、前記リトラクタ本体に、車いすのフレームに係止されるフックを設けたことを特徴とする車いす固定装置。
【請求項2】
仮想平面に沿って鉤状に屈曲形成された鉤部を前記フックの先端部に設け、該フックの基端部を前記リトラクタ本体に回動自在に支持するとともに、当該フックが前記仮想平面に沿って回動するように構成したことを特徴とする請求項1記載の車いす固定装置。
【請求項3】
係止部位が挿通する前記鉤部の開放側と逆側への当該フックの回動を規制するストッパを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車いす固定装置。
【請求項1】
リトラクタのリトラクタ本体より延出されたリトラクタベルトの引込力を利用して車いすを固定する拘束機構を備えた車いす固定装置において、
前記リトラクタベルトの先端をフロアに固定するとともに、前記リトラクタ本体に、車いすのフレームに係止されるフックを設けたことを特徴とする車いす固定装置。
【請求項2】
仮想平面に沿って鉤状に屈曲形成された鉤部を前記フックの先端部に設け、該フックの基端部を前記リトラクタ本体に回動自在に支持するとともに、当該フックが前記仮想平面に沿って回動するように構成したことを特徴とする請求項1記載の車いす固定装置。
【請求項3】
係止部位が挿通する前記鉤部の開放側と逆側への当該フックの回動を規制するストッパを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の車いす固定装置。
【図1】
【公開番号】特開2012−210312(P2012−210312A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77255(P2011−77255)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)
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