車の装飾品の取外し用工具
【課題】取り付け箇所以外の車体表面を傷つけること無く、車体に後付けされたエアスポイラー、ルーフバイザー、ドアバイザー等の各種ドレスアップ部品等を容易に取り外せる工具を提供することを課題とする。
【解決手段】車の装飾品を車体から取り外す工具であって、該取外し用工具は、装飾品と該装飾品が装着された車体表面間に挿入される爪部と、該爪部が先端に設けられ、車体側に面する側面に所定厚さのクッション材が設けられた支持板と、該支持板が基部に取り付けられ、車体側に面する側に所定厚さのクッション材が設けられた把持体と、から構成される。
【解決手段】車の装飾品を車体から取り外す工具であって、該取外し用工具は、装飾品と該装飾品が装着された車体表面間に挿入される爪部と、該爪部が先端に設けられ、車体側に面する側面に所定厚さのクッション材が設けられた支持板と、該支持板が基部に取り付けられ、車体側に面する側に所定厚さのクッション材が設けられた把持体と、から構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に装着された装飾品を取り外す工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両の塗装仕上げ後に、企業名、車種、型式等を表示するエンブレムが位置決め用治具等によって位置決めされ、両面接着テープを用いて車体の一部に貼り付けることにより取付けられている。そのため、ドアや車体等の板金に凹みが生じた場合、補修する箇所によっては、エンブレムを取り外してから板金加工等をする必要がある。エンブレムの取外す際には、車体の塗装面を傷付けないように注意を払う必要がある。
【0003】
また、車体の表面をなるべく平滑にするため、車体の表面の一部がエンブレムを取り付けられる程度に凹状に形成されており、そこにエンブレムが嵌め込まれている場合がある。
このような構造を有する車体の場合、車体の塗装面を傷付けずに該凹部に嵌め込まれたエンブレムを取り出すことは、困難であった。
【0004】
エンブレム等の装飾品を車体から取り外す目的で、プラスチック等の合成樹脂で形成されたヘラ体或いはスコップ体を使用することができる。しかし、装飾品の取り外し時に、先端部分は力が集中しやすいので、プラスチック等の合成樹脂で形成されたヘラ体或いはスコップ体は、先端が特に破損しやすいという欠点がある。
【0005】
また、実公平7−34669には、スクリーン印刷盤から印刷物を剥離するためのヘラとして、先端を略半円形とした長方形状のヘラ体(1)と該ヘラ体を掴持する柄(2)とからなり、ヘラ体(1)は薄い弾性金属板で形成され、先端外周縁は刃を有しない薄肉状にそぎ落とされているヘラが開示されている。
【0006】
上記ヘラによれば、その先端が薄く形成され且つヘラ体が弾力性を有するので、先端をエンブレムと該エンブレムが装着された車体表面間の接着材層に差し込み、次にヘラ体を弾力的に湾曲させながら徐々に挿入し、上記接着材層を切断することによって、エンブレムを剥離することができる。しかし、上記ヘラは、その先端部分でエンブレムを剥離する際に車体の塗装面を傷つけるおそれがあり、エンブレムを剥離する工具として上記ヘラを使用するには、相当の注意又は熟練が必要であった。
【0007】
【特許文献1】実公平7−34669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、車体の塗装面を傷付けないように、接着されたエンブレム等の装飾品を容易に取り外せる工具を提供することを課題とする。また、本発明は、取り付け箇所以外の車体表面を傷つけること無く、車体に後付けされたエアスポイラー、ルーフバイザー、ドアバイザー等の各種ドレスアップ部品や、内装品として装着された各種の車内アクセサリーを容易に取り外せる工具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解消するために開発されたもので、車体に装着された各種ドレスアップ部品及び車内アクセサリーの取り外しを容易にする工具である。すなわち、請求項1に記載の発明は、接着剤で装着されたエンブレム等の装飾品を車体から取り外す工具であって、装飾品と該装飾品が装着された車体表面間に挿入される爪部と、該爪部が先端に設けられ、車体側に面する側面に所定厚さのクッション材が設けられた支持板と、該支持板が基部に取り付けられ、車体側に面する側に所定厚さのクッション材が設けられた把持体と、から構成されることを特徴としている。
【0010】
上記爪部は、支持板の先端に設けられており、後述するように支持板と一体的な構成にすることができるが、適用されるドレスアップ部品及び車内アクセサリーの形状に対応して交換可能な構成にすることができる。また、上記爪部は、上記支持板に対して0°〜90°の範囲の傾斜角をなすように形成することができる。
【0011】
上記クッション材は、クッション性を有し且つ車体の塗装面との接触痕が付きにくいものであれば、材質は特に限定されない。クッション材として、合成ゴム、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂以外に、硬質スポンジ、不織布、面ファスナーを好適なものとして例示できる。該クッション材は、少なくとも支持板の車体側に面する側面に設けられることを要する。尚、爪部の機能を妨げない範囲で、爪部にもクッション材を設けることができる。例えば、肉厚の薄いクッション材を爪部の裏側に固定すれば、作業時に該クッション材が柔軟に変形できるので、爪部の機能が損なわれない。また、作業時に車体の塗装面と爪部の間にクリアランスを確保できるので、爪部が塗装面を傷付けることを防止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の車の装飾品の取外し用工具において、前記支持板が弾性を有する金属板であることを特徴としている。上記支持板及び爪部のいずれも硬質の合成樹脂及び/又は金属により構成されるが、ステンレス合金で構成されることが好ましい。尚、支持板は、弾性を有する程度の厚さに形成された金属板であることが好ましい。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の車の装飾品の取外し用工具において、前記爪部及び支持板が一体成形されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明の構成によれば、支持板の側面に所定厚さのクッション材が設けられているので、爪部及び支持板が車体の塗装面に直に接しない。そのため、爪部が接着層を切り取る際に、爪部及び支持板によって車体の塗装面が傷つけられず、熟練を要することなく簡単にエンブレムやエアスポイラー等の車用のドレスアップ部品を車体から取り外すことができる。また、把持体において、支持板が取り付けられる基部には、車体側に所定厚さのクッション材が設けられているので、エンブレムやエアスポイラー等の車用のドレスアップ部品を取り外す際に、把持体が接触しても、車体の塗装面が傷つけられるのを防止できる。
【0015】
請求項2に記載の構成によれば、支持板が弾性を有するので、車体の表面の一部に嵌め込まれたエンブレムを取り外す場合であっても、該支持板が車体の表面形状に柔軟に追従するので、車体の塗装面を傷付けずに上記エンブレムを容易に取り出すことができる。
【0016】
請求項3に記載の構成によれば、爪部及び支持板が一体成形されているので、製造が容易になり、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る車の装飾品の取外し用工具(以下、「実施形態○に係る車の装飾品の取外し用工具」を単に「実施形態○の取外し工具」という。)を添付図に基づいて説明する。図1は第1実施形態の取外し工具1の斜視図であり、図2は図1に示す第1実施形態の取外し工具1の底面図である。
【0018】
第1実施形態の取外し工具1は、爪部21が先端に形成され、車体側に面する裏面側に支持板クッション材22が貼り付けられた支持板2と、該支持板2が基部に取り付けられた把持体3と、から構成される。支持板クッション材22は爪部21のみ露出するように支持板2の裏面側を覆い、基部クッション材32は支持板2が取り付けられる把持体3の基部を覆うようにしたものである。
【0019】
車体に接着された装飾品を車体から取り外す際、爪部21、支持板2及び把持体3が車体の塗装面を傷つけ無いようにする必要がある。そのため、図3に示すように、支持板クッション材22を車体Bに当接させた際、爪部の先端部21aと車体とのクリアランスtが約1mm以上確保できるように、支持板クッション材22が成形されていることが好ましい。例えば、爪部21を装飾品と車体の間に容易に差し込めるように、支持板クッション材22の肉厚が先端側で薄肉状になり、把持体3の基部側で厚くなるように、長さ方向で厚さが異なるように支持板クッション材22を形成することができる。
【0020】
支持板クッション材22が形成される範囲は、少なくとも車体と接触する領域である。また、支持板クッション材22の肉厚は、使用される材質によって異なるが、取外し工具1の使用時に容易に剥離しない程度の厚さに形成される必要がある。
【0021】
第1実施形態の取外し工具1の支持板2は、使用時において湾曲し、且つ使用後に元の形状に復元する弾性力を有する金属製材料が使用される。また、爪部21が車体の塗装面を傷つけ無いようにする必要があるので、図3に示すように、爪部の先端部21aが丸められた形状に加工されていることが好ましい。
【0022】
把持体3は、基部クッション材32が作業時に少なくとも車体と接触する領域に形成されているのであれば、図1及び図2に示す棒状の形状以外に、作業者が手で把持するのに好適な形状に適宜成形されたものを用いることができる。また、その材質は特に限定されず、合成樹脂製或いは木製等、適宜選択することができる。尚、基部クッション材32が形成される範囲は、作業時に少なくとも車体と接触する領域であり、その肉厚は、使用される材質によっても異なるが、取外し工具1の使用時に容易に剥離しない程度の厚さに形成される必要がある。
【0023】
以上に述べた第1実施形態の取外し工具1の作用を次に説明する。
上記取外し工具1で、車体Bに接着されたエンブレムEを取り外す場合、まず、図4及び図5に示すように、作業者Hは把持体3を把持し、爪部21を車体B及びエンブレムEとの間に差し込む。そして、爪部21を中心にして取外し工具1を扇状に左右交互に回しながら、支持板2を奥へ挿入する。その時、爪部21がエンブレムEの接着層E1を切り取るので、エンブレムEを剥がし取ることができる。
【0024】
このように、第1実施形態の取外し工具1では、支持板クッション材22及び基部クッション材32が車体と接触する領域に形成されているので、爪部21と車体B間にクリアランスが保たれ、爪部21が車体Bの塗装面に接触しない。また、支持板クッション材22及び基部クッション材32はいずれも合成樹脂等で接触痕が付きにくいように形成されているので、特に熟練を要しないで、車体の塗装面を傷付けずにエンブレムEを剥がし取ることができる。
【0025】
また、第1実施形態の取外し工具1の支持板2は、使用時において湾曲し、且つ使用後に元の形状に復元する弾性力を有するので、装飾品の取外し作業が行い易く、その作業性を向上することができる。
【0026】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態の取外し用工具を添付図に基づいて説明する。図6は第2実施形態の取外し工具1の正面図であり、図7は図1の取外し工具1の使用状態を示す断面図である。
【0027】
第2実施形態の取外し工具1は、第1実施形態の取外し工具1とほぼ同様に構成されるが、図6に示すように、逃がし孔23が支持板2の先端部分に形成されている。支持板クッション材22が柔軟性の高い材質のもので構成されている場合、容易に変形して支持板2を奥へ挿入しやすくなり、作業を行いやすいという利点がある。しかし、該クッション材22が柔軟性の高い材質であるほど、作業中に剥離する不具合を生じるおそれが高い。これは、支持板2を車体B及びエンブレムE等の装飾品との間に差し込んだ際に、上記クッション材22にせん断応力が作用して、該クッション剤22が剥離する方向へ大きく変形するからである。そこで、支持板クッション材22の変形が最も大きい箇所、例えば、支持板2の先端部分に逃がし孔23を形成することによって、せん断応力によって生じた支持板クッション材22の変形部分が上記逃がし孔23に嵌り込むことにより吸収されるので、該クッション材22の剥離を防止することができる。尚、逃がし孔23の数や大きさは特に限定しないが、支持板2及び爪部21の強度を低下させず、使用時にクッション材22が著しく薄くならないように形成する。
【0028】
このように、第2実施形態の取外し工具1は、変形部分の一部を吸収する逃がし孔23が設けられているので、支持板クッション材22の剥離方向への変形の程度が低減され、該クッション材22を剥離する力が低減される。従って、第2実施形態の取外し工具1は、繰り返し使用に対する耐久性が高い。
【0029】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態の取外し用工具を添付図に基づいて説明する。図8は第3実施形態の取外し工具1の斜視図であり、図9は図8の取外し工具1の使用状態を説明する斜視図である。
【0030】
第3実施形態の取外し用工具1は、図8に示すように、爪部の先端部21aを有効に使える長さを十分に確保するため、支持板2を略長方形状に構成したものである。第3実施形態の取外し用工具1を使用して、例えばエアスポイラーA等の装飾品を取り外す場合、まず、図9に示すように、爪部21を車体B及びエアスポイラーの支柱A1との間に差し込む。そして、取外し工具1をその長手方向へ前方、後方と交互に動かしながら、支持板2を奥へ挿入する。その時、爪部21がエアスポイラーの支柱A1の接着層A2を切り取るので、エアスポイラーAを車体から取り外すことができる。
【0031】
第3実施形態の取外し工具1は、爪部の先端部21aを有効に使える長さが十分に確保されている。また、支持板2の裏側に形成された支持板クッション材22が車体と接触する領域も限定され、作業者が加える力も爪部の先端部21aに集中しやすいので、操作が非常に容易になり、作業性を向上することができる。
【0032】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態の取外し用工具を添付図に基づいて説明する。図10は第4実施形態の取外し工具1の使用状態の正面図であり、図11は図10の取外し工具1の使用状態を説明する側面図である。
【0033】
第4実施形態の取外し用工具1は、図10に示すように、爪部21を略U字型状に形成し、図11に示すように支持板2を略「く」字型状に形成したものである。装飾品が車体側にビス状の固着具で接合されている場合、ビス止めされた係止部分を車体から抜き出す必要がある。このようにビス止めされた装飾品、例えば、エンブレムEが係止部E2で車体側に嵌め込まれている場合、まず、図10に示すように、左右の爪部21の間に係止部E2を挟み込み、次に、把持体3を押し下げる。これによって、把持体3を押し下げる力は、折曲部24を支点とする梃子の原理により、エンブレムEを持ち上げる力として作用するので、エンブレムEを車体Bから取外すことができる。
【0034】
第4実施形態の取外し工具1は、爪部21が略U字型状に形成されている。これによって、ビス状の固着具で接合された装飾品の係止部分を確実に挟み込むことができ、力を確実に作用することができる。また、支持板クッション材22が、車体Bと接触する領域に形成されているので、力を加えて装飾品の係止部E2を車体Bから抜き出す際、支持板2は車体Bの塗装面に直に接触しない。このように、第4実施形態の取外し工具1は、ビス状の固着具で接合されたエンブレムEを車体Bから取外す作業において、好適に使用される。
【0035】
上記の通り、本実施形態に係る取外し工具1によれば、特に熟練を要することなく、車体の塗装面を傷つけずに、エンブレム、エアスポイラー等の各種ドレスアップ部品の取外し作業を容易に行うことができ、その作業性を向上することができる。また、本実施形態に係る取外し工具1は、内装品として装着された各種の車内アクセサリーについても、上記各種ドレスアップ部品に対しても同様に使用できる。従って、本実施形態に係る取外し工具1によれば、ダッシュボード等の車両用内装材を損傷することなく、各種の車内アクセサリーを容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車の装飾品の取外し用工具1の斜視図である。
【図2】図1に示す取外し用工具1の底面図である。
【図3】図1に示す取外し用工具1の爪部21の拡大断面図である。
【図4】図1に示す取外し用工具1の使用状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示す取外し用工具1の使用状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る車の装飾品の取外し用工具1の正面図である。
【図7】図6に示す取外し用工具1の使用状態を示す断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る車の装飾品の取外し用工具1の斜視図である。
【図9】図8に示す取外し用工具1の使用状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る車の装飾品の取外し用工具1の使用状態を示す正面図である。
【図11】図10に示す取外し用工具1の使用状態を示す断面図である。
【0037】
1 取外し工具1
2 支持板
3 把持体
21 爪部
21a 爪部の先端部
22 支持板クッション材
22a 支持板クッション材22の変形部分
23 逃がし孔
32 基部クッション材
A エアスポイラー
B 車体表面
E エンブレム
E1 接着層
E2 係止部
H 作業者
t 爪部の先端部21aと車体とのクリアランス
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に装着された装飾品を取り外す工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の車両の塗装仕上げ後に、企業名、車種、型式等を表示するエンブレムが位置決め用治具等によって位置決めされ、両面接着テープを用いて車体の一部に貼り付けることにより取付けられている。そのため、ドアや車体等の板金に凹みが生じた場合、補修する箇所によっては、エンブレムを取り外してから板金加工等をする必要がある。エンブレムの取外す際には、車体の塗装面を傷付けないように注意を払う必要がある。
【0003】
また、車体の表面をなるべく平滑にするため、車体の表面の一部がエンブレムを取り付けられる程度に凹状に形成されており、そこにエンブレムが嵌め込まれている場合がある。
このような構造を有する車体の場合、車体の塗装面を傷付けずに該凹部に嵌め込まれたエンブレムを取り出すことは、困難であった。
【0004】
エンブレム等の装飾品を車体から取り外す目的で、プラスチック等の合成樹脂で形成されたヘラ体或いはスコップ体を使用することができる。しかし、装飾品の取り外し時に、先端部分は力が集中しやすいので、プラスチック等の合成樹脂で形成されたヘラ体或いはスコップ体は、先端が特に破損しやすいという欠点がある。
【0005】
また、実公平7−34669には、スクリーン印刷盤から印刷物を剥離するためのヘラとして、先端を略半円形とした長方形状のヘラ体(1)と該ヘラ体を掴持する柄(2)とからなり、ヘラ体(1)は薄い弾性金属板で形成され、先端外周縁は刃を有しない薄肉状にそぎ落とされているヘラが開示されている。
【0006】
上記ヘラによれば、その先端が薄く形成され且つヘラ体が弾力性を有するので、先端をエンブレムと該エンブレムが装着された車体表面間の接着材層に差し込み、次にヘラ体を弾力的に湾曲させながら徐々に挿入し、上記接着材層を切断することによって、エンブレムを剥離することができる。しかし、上記ヘラは、その先端部分でエンブレムを剥離する際に車体の塗装面を傷つけるおそれがあり、エンブレムを剥離する工具として上記ヘラを使用するには、相当の注意又は熟練が必要であった。
【0007】
【特許文献1】実公平7−34669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は、車体の塗装面を傷付けないように、接着されたエンブレム等の装飾品を容易に取り外せる工具を提供することを課題とする。また、本発明は、取り付け箇所以外の車体表面を傷つけること無く、車体に後付けされたエアスポイラー、ルーフバイザー、ドアバイザー等の各種ドレスアップ部品や、内装品として装着された各種の車内アクセサリーを容易に取り外せる工具を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した問題点を解消するために開発されたもので、車体に装着された各種ドレスアップ部品及び車内アクセサリーの取り外しを容易にする工具である。すなわち、請求項1に記載の発明は、接着剤で装着されたエンブレム等の装飾品を車体から取り外す工具であって、装飾品と該装飾品が装着された車体表面間に挿入される爪部と、該爪部が先端に設けられ、車体側に面する側面に所定厚さのクッション材が設けられた支持板と、該支持板が基部に取り付けられ、車体側に面する側に所定厚さのクッション材が設けられた把持体と、から構成されることを特徴としている。
【0010】
上記爪部は、支持板の先端に設けられており、後述するように支持板と一体的な構成にすることができるが、適用されるドレスアップ部品及び車内アクセサリーの形状に対応して交換可能な構成にすることができる。また、上記爪部は、上記支持板に対して0°〜90°の範囲の傾斜角をなすように形成することができる。
【0011】
上記クッション材は、クッション性を有し且つ車体の塗装面との接触痕が付きにくいものであれば、材質は特に限定されない。クッション材として、合成ゴム、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の合成樹脂以外に、硬質スポンジ、不織布、面ファスナーを好適なものとして例示できる。該クッション材は、少なくとも支持板の車体側に面する側面に設けられることを要する。尚、爪部の機能を妨げない範囲で、爪部にもクッション材を設けることができる。例えば、肉厚の薄いクッション材を爪部の裏側に固定すれば、作業時に該クッション材が柔軟に変形できるので、爪部の機能が損なわれない。また、作業時に車体の塗装面と爪部の間にクリアランスを確保できるので、爪部が塗装面を傷付けることを防止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の車の装飾品の取外し用工具において、前記支持板が弾性を有する金属板であることを特徴としている。上記支持板及び爪部のいずれも硬質の合成樹脂及び/又は金属により構成されるが、ステンレス合金で構成されることが好ましい。尚、支持板は、弾性を有する程度の厚さに形成された金属板であることが好ましい。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の車の装飾品の取外し用工具において、前記爪部及び支持板が一体成形されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明の構成によれば、支持板の側面に所定厚さのクッション材が設けられているので、爪部及び支持板が車体の塗装面に直に接しない。そのため、爪部が接着層を切り取る際に、爪部及び支持板によって車体の塗装面が傷つけられず、熟練を要することなく簡単にエンブレムやエアスポイラー等の車用のドレスアップ部品を車体から取り外すことができる。また、把持体において、支持板が取り付けられる基部には、車体側に所定厚さのクッション材が設けられているので、エンブレムやエアスポイラー等の車用のドレスアップ部品を取り外す際に、把持体が接触しても、車体の塗装面が傷つけられるのを防止できる。
【0015】
請求項2に記載の構成によれば、支持板が弾性を有するので、車体の表面の一部に嵌め込まれたエンブレムを取り外す場合であっても、該支持板が車体の表面形状に柔軟に追従するので、車体の塗装面を傷付けずに上記エンブレムを容易に取り出すことができる。
【0016】
請求項3に記載の構成によれば、爪部及び支持板が一体成形されているので、製造が容易になり、製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る車の装飾品の取外し用工具(以下、「実施形態○に係る車の装飾品の取外し用工具」を単に「実施形態○の取外し工具」という。)を添付図に基づいて説明する。図1は第1実施形態の取外し工具1の斜視図であり、図2は図1に示す第1実施形態の取外し工具1の底面図である。
【0018】
第1実施形態の取外し工具1は、爪部21が先端に形成され、車体側に面する裏面側に支持板クッション材22が貼り付けられた支持板2と、該支持板2が基部に取り付けられた把持体3と、から構成される。支持板クッション材22は爪部21のみ露出するように支持板2の裏面側を覆い、基部クッション材32は支持板2が取り付けられる把持体3の基部を覆うようにしたものである。
【0019】
車体に接着された装飾品を車体から取り外す際、爪部21、支持板2及び把持体3が車体の塗装面を傷つけ無いようにする必要がある。そのため、図3に示すように、支持板クッション材22を車体Bに当接させた際、爪部の先端部21aと車体とのクリアランスtが約1mm以上確保できるように、支持板クッション材22が成形されていることが好ましい。例えば、爪部21を装飾品と車体の間に容易に差し込めるように、支持板クッション材22の肉厚が先端側で薄肉状になり、把持体3の基部側で厚くなるように、長さ方向で厚さが異なるように支持板クッション材22を形成することができる。
【0020】
支持板クッション材22が形成される範囲は、少なくとも車体と接触する領域である。また、支持板クッション材22の肉厚は、使用される材質によって異なるが、取外し工具1の使用時に容易に剥離しない程度の厚さに形成される必要がある。
【0021】
第1実施形態の取外し工具1の支持板2は、使用時において湾曲し、且つ使用後に元の形状に復元する弾性力を有する金属製材料が使用される。また、爪部21が車体の塗装面を傷つけ無いようにする必要があるので、図3に示すように、爪部の先端部21aが丸められた形状に加工されていることが好ましい。
【0022】
把持体3は、基部クッション材32が作業時に少なくとも車体と接触する領域に形成されているのであれば、図1及び図2に示す棒状の形状以外に、作業者が手で把持するのに好適な形状に適宜成形されたものを用いることができる。また、その材質は特に限定されず、合成樹脂製或いは木製等、適宜選択することができる。尚、基部クッション材32が形成される範囲は、作業時に少なくとも車体と接触する領域であり、その肉厚は、使用される材質によっても異なるが、取外し工具1の使用時に容易に剥離しない程度の厚さに形成される必要がある。
【0023】
以上に述べた第1実施形態の取外し工具1の作用を次に説明する。
上記取外し工具1で、車体Bに接着されたエンブレムEを取り外す場合、まず、図4及び図5に示すように、作業者Hは把持体3を把持し、爪部21を車体B及びエンブレムEとの間に差し込む。そして、爪部21を中心にして取外し工具1を扇状に左右交互に回しながら、支持板2を奥へ挿入する。その時、爪部21がエンブレムEの接着層E1を切り取るので、エンブレムEを剥がし取ることができる。
【0024】
このように、第1実施形態の取外し工具1では、支持板クッション材22及び基部クッション材32が車体と接触する領域に形成されているので、爪部21と車体B間にクリアランスが保たれ、爪部21が車体Bの塗装面に接触しない。また、支持板クッション材22及び基部クッション材32はいずれも合成樹脂等で接触痕が付きにくいように形成されているので、特に熟練を要しないで、車体の塗装面を傷付けずにエンブレムEを剥がし取ることができる。
【0025】
また、第1実施形態の取外し工具1の支持板2は、使用時において湾曲し、且つ使用後に元の形状に復元する弾性力を有するので、装飾品の取外し作業が行い易く、その作業性を向上することができる。
【0026】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態の取外し用工具を添付図に基づいて説明する。図6は第2実施形態の取外し工具1の正面図であり、図7は図1の取外し工具1の使用状態を示す断面図である。
【0027】
第2実施形態の取外し工具1は、第1実施形態の取外し工具1とほぼ同様に構成されるが、図6に示すように、逃がし孔23が支持板2の先端部分に形成されている。支持板クッション材22が柔軟性の高い材質のもので構成されている場合、容易に変形して支持板2を奥へ挿入しやすくなり、作業を行いやすいという利点がある。しかし、該クッション材22が柔軟性の高い材質であるほど、作業中に剥離する不具合を生じるおそれが高い。これは、支持板2を車体B及びエンブレムE等の装飾品との間に差し込んだ際に、上記クッション材22にせん断応力が作用して、該クッション剤22が剥離する方向へ大きく変形するからである。そこで、支持板クッション材22の変形が最も大きい箇所、例えば、支持板2の先端部分に逃がし孔23を形成することによって、せん断応力によって生じた支持板クッション材22の変形部分が上記逃がし孔23に嵌り込むことにより吸収されるので、該クッション材22の剥離を防止することができる。尚、逃がし孔23の数や大きさは特に限定しないが、支持板2及び爪部21の強度を低下させず、使用時にクッション材22が著しく薄くならないように形成する。
【0028】
このように、第2実施形態の取外し工具1は、変形部分の一部を吸収する逃がし孔23が設けられているので、支持板クッション材22の剥離方向への変形の程度が低減され、該クッション材22を剥離する力が低減される。従って、第2実施形態の取外し工具1は、繰り返し使用に対する耐久性が高い。
【0029】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態の取外し用工具を添付図に基づいて説明する。図8は第3実施形態の取外し工具1の斜視図であり、図9は図8の取外し工具1の使用状態を説明する斜視図である。
【0030】
第3実施形態の取外し用工具1は、図8に示すように、爪部の先端部21aを有効に使える長さを十分に確保するため、支持板2を略長方形状に構成したものである。第3実施形態の取外し用工具1を使用して、例えばエアスポイラーA等の装飾品を取り外す場合、まず、図9に示すように、爪部21を車体B及びエアスポイラーの支柱A1との間に差し込む。そして、取外し工具1をその長手方向へ前方、後方と交互に動かしながら、支持板2を奥へ挿入する。その時、爪部21がエアスポイラーの支柱A1の接着層A2を切り取るので、エアスポイラーAを車体から取り外すことができる。
【0031】
第3実施形態の取外し工具1は、爪部の先端部21aを有効に使える長さが十分に確保されている。また、支持板2の裏側に形成された支持板クッション材22が車体と接触する領域も限定され、作業者が加える力も爪部の先端部21aに集中しやすいので、操作が非常に容易になり、作業性を向上することができる。
【0032】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態の取外し用工具を添付図に基づいて説明する。図10は第4実施形態の取外し工具1の使用状態の正面図であり、図11は図10の取外し工具1の使用状態を説明する側面図である。
【0033】
第4実施形態の取外し用工具1は、図10に示すように、爪部21を略U字型状に形成し、図11に示すように支持板2を略「く」字型状に形成したものである。装飾品が車体側にビス状の固着具で接合されている場合、ビス止めされた係止部分を車体から抜き出す必要がある。このようにビス止めされた装飾品、例えば、エンブレムEが係止部E2で車体側に嵌め込まれている場合、まず、図10に示すように、左右の爪部21の間に係止部E2を挟み込み、次に、把持体3を押し下げる。これによって、把持体3を押し下げる力は、折曲部24を支点とする梃子の原理により、エンブレムEを持ち上げる力として作用するので、エンブレムEを車体Bから取外すことができる。
【0034】
第4実施形態の取外し工具1は、爪部21が略U字型状に形成されている。これによって、ビス状の固着具で接合された装飾品の係止部分を確実に挟み込むことができ、力を確実に作用することができる。また、支持板クッション材22が、車体Bと接触する領域に形成されているので、力を加えて装飾品の係止部E2を車体Bから抜き出す際、支持板2は車体Bの塗装面に直に接触しない。このように、第4実施形態の取外し工具1は、ビス状の固着具で接合されたエンブレムEを車体Bから取外す作業において、好適に使用される。
【0035】
上記の通り、本実施形態に係る取外し工具1によれば、特に熟練を要することなく、車体の塗装面を傷つけずに、エンブレム、エアスポイラー等の各種ドレスアップ部品の取外し作業を容易に行うことができ、その作業性を向上することができる。また、本実施形態に係る取外し工具1は、内装品として装着された各種の車内アクセサリーについても、上記各種ドレスアップ部品に対しても同様に使用できる。従って、本実施形態に係る取外し工具1によれば、ダッシュボード等の車両用内装材を損傷することなく、各種の車内アクセサリーを容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車の装飾品の取外し用工具1の斜視図である。
【図2】図1に示す取外し用工具1の底面図である。
【図3】図1に示す取外し用工具1の爪部21の拡大断面図である。
【図4】図1に示す取外し用工具1の使用状態を示す斜視図である。
【図5】図1に示す取外し用工具1の使用状態を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る車の装飾品の取外し用工具1の正面図である。
【図7】図6に示す取外し用工具1の使用状態を示す断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る車の装飾品の取外し用工具1の斜視図である。
【図9】図8に示す取外し用工具1の使用状態を示す斜視図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る車の装飾品の取外し用工具1の使用状態を示す正面図である。
【図11】図10に示す取外し用工具1の使用状態を示す断面図である。
【0037】
1 取外し工具1
2 支持板
3 把持体
21 爪部
21a 爪部の先端部
22 支持板クッション材
22a 支持板クッション材22の変形部分
23 逃がし孔
32 基部クッション材
A エアスポイラー
B 車体表面
E エンブレム
E1 接着層
E2 係止部
H 作業者
t 爪部の先端部21aと車体とのクリアランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車の装飾品を車体から取り外す工具であって、
装飾品と該装飾品が装着された車体表面間に挿入される爪部と、
該爪部が先端に設けられ、車体側に面する側面に所定厚さのクッション材が設けられた支持板と、
該支持板が基部に取り付けられ、車体側に面する側に所定厚さのクッション材が設けられた把持体とから構成されることを特徴とする、
車の装飾品の取外し用工具。
【請求項2】
前記支持板が弾性を有する金属板であることを特徴とする、請求項1記載の車の装飾品の取外し用工具。
【請求項3】
前記爪部及び支持板が一体成形されたことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の車の装飾品の取外し用工具。
【請求項1】
車の装飾品を車体から取り外す工具であって、
装飾品と該装飾品が装着された車体表面間に挿入される爪部と、
該爪部が先端に設けられ、車体側に面する側面に所定厚さのクッション材が設けられた支持板と、
該支持板が基部に取り付けられ、車体側に面する側に所定厚さのクッション材が設けられた把持体とから構成されることを特徴とする、
車の装飾品の取外し用工具。
【請求項2】
前記支持板が弾性を有する金属板であることを特徴とする、請求項1記載の車の装飾品の取外し用工具。
【請求項3】
前記爪部及び支持板が一体成形されたことを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の車の装飾品の取外し用工具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−1245(P2008−1245A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−173245(P2006−173245)
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(505391894)有限会社昭和オートリペア (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月23日(2006.6.23)
【出願人】(505391894)有限会社昭和オートリペア (2)
【Fターム(参考)】
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