説明

車両のウインドシールド構造

【課題】乗員の視野を広くすることができ、しかも、ウインドシールドのデザインの自由度を高くすることができる車両のウインドシールド構造を提供する。
【解決手段】フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jが着色されている車両のウインドシールド構造であって、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの着色部12のうち左右中央部1J1の着色部部分12Bが左右両端部1J2の着色部部分12Aよりも幅狭に設定され、着色部12は上側周縁部1Jの左右両端部1J2から左右中央部1J1に向かって徐々に幅狭になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ウインドシールドの上側周縁部が着色されている車両のウインドシールド構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のウインドシールドの周縁部は、ルーフパネルの前下がりの前端部に形成された取り付けフランジに載置されて接着剤で固定される。そして、前記接着剤による接着工程では、ウインドシールドの上側周縁部の左右両端部の裏側に保持部材が配置され、ルーフパネルの取り付けフランジの上面とウインドシールドの周部の裏面とが接着剤で確実に接着するまで、前記保持部材を介して前記上側周縁部がルーフパネルで仮保持されている。
【0003】
このような車両のウインドシールド構造において、接着剤や保持部材がウインドシールドを通して車外側から見えるとウインドシールドの見栄えが悪くなる。そこで、ウインドシールドの全周縁部を黒色等に着色して保持部材と接着剤を車外側から見えないようにしている。
従来、前記上側周縁部の着色部は一定の幅に設定されていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2810106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の構造によれば、前記上側周縁部の着色部は一定の幅に設定されていたために、ウインドシールドの左右中央部の透視可能な幅(上下方向の長さ)が、ウインドシールドの左右両端部の透視可能な幅と同様に短くなっていた。ウインドシールドの左右中央部の透視可能な幅が狭くなると乗員の視野が狭くなることから、視野が広くなるようにウインドシールドの幅を大きくしなければならず、ウインドシールドのデザインの自由度が低下していた。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、乗員の視野を広くすることができ、しかも、ウインドシールドのデザインの自由度を高くすることができる車両のウインドシールド構造を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の特徴は、
ウインドシールドの上側周縁部が着色されている車両のウインドシールド構造であって、
前記ウインドシールドの上側周縁部の着色部のうち左右中央部の着色部部分が左右両端部の着色部部分よりも幅狭に設定されている点にある。(請求項1)
【0007】
上記構成によれば、ウインドシールドの上側周縁部の着色部のうち左右中央部の着色部部分が左右両端部の着色部部分よりも幅狭に設定されているから、ウインドシールドの左右中央部の透視可能な幅を大きくすることができて、乗員の視野を広くすることができる。これにより、ウインドシールドの幅を大きくしなくても済み、ウインドシールドのデザインの自由度を高くすることができる。(請求項1)
【0008】
本発明において、
前記着色部は前記上側周縁部の左右両端部から左右中央部に向かって徐々に幅狭になっていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0009】
前記着色部は前記上側周縁部の左右両端部から左右中央部に向かって徐々に幅狭になっているから、着色部の幅を滑らかに変化させることができて、ウインドシールドの外観をよくすることができる。(請求項2)
【0010】
本発明において、
前記ウインドシールドの上側周縁部はルーフパネルに接着剤で接着され、
前記ウインドシールドの上側周縁部と前記ルーフパネルとの前記接着剤による接着の際に、前記ウインドシールドの上側周縁部の左右両端部が保持部材を介して前記ルーフパネルに仮り保持され、
前記上側周縁部の左右両端部の着色部部分は前記接着剤と前記保持部材を覆い隠し可能な幅に設定され、
前記上側周縁部の左右中央部の着色部部分は前記接着剤を覆い隠し可能な幅に設定されて、前記上側周縁部の左右両端部の着色部分よりも前記保持部材に対応する幅だけ幅狭に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0011】
前記ウインドシールドの上側周縁部と前記ルーフパネルとの前記接着剤による接着の際に、前記ウインドシールドの上側周縁部の左右両端部が保持部材を介して前記ルーフパネルに仮り保持されるから、ウインドシールドの上側周縁部と前記ルーフパネルとの接着剤による接着が不十分な間(接着が完了する前)にウインドシールドが位置ずれすることを防止することができる。
また、前記上側周縁部の左右両端部の着色部部分は前記接着剤と前記保持部材を覆い隠し可能な幅に設定されているから、接着剤と保持部材を車外側から見えなくすることができて、ウインドシールドの外観をよくすることができる。
さらに、上側周縁部の左右中央部の着色部部分は前記接着剤を覆い隠し可能な幅に設定されているから、前記接着剤を車外側から見えなくすることができて、ウインドシールドの外観をよくすることができる。
そして、前記上側周縁部の左右中央部の着色部部分は、前記上側周縁部の左右両端部の着色部分よりも前記保持部材に対応する幅だけ幅狭に形成されているから、ウインドシールドの左右中央部の透視可能な幅を大きくすることができて、乗員の視野を十分広くすることができる。これにより、ウインドシールドの幅を大きくしなくても済み、ウインドシールドのデザインの自由度を高くすることができる。(請求項3)
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、
乗員の視野を広くすることができ、しかも、ウインドシールドのデザインの自由度を高くすることができる車両のウインドシールド構造を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】自動車の上半部の正面図
【図2】図1のA−A断面図
【図3】図1のB−B断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に自動車の上半部に設けられたウインドシールド構造の正面図を示してある。符号1は前下がりに傾斜したフロントウインドシールド(ウインドシールドに相当)、2はフロントフード、3はサイドミラーである。
【0015】
この自動車においては、図3に示すように、ルーフパネル5の車両前方側Frの端部が下側に断面クランク状に折曲されて取り付けフランジ5Fが形成され、ルーフパネル5とほぼ同一幅のルーフフロントインナーレール7の車両前方側Frの端部が上側に断面クランク状に折曲されて取り付けフランジ7Fが形成されている。そして、両取り付けフランジ5F,7Fが上下に重ねられて溶接接合されている。
【0016】
また、図2に示すように、車体の側部側(フロントウインドシールド1の側部側)に位置するフロントピラーインナーエクステンション6の車両前方側Frの端部が上側に断面クランク状に折曲されて取り付けフランジ6Fが形成されている。フロントピラーインナーエクステンション6は板金部材であり、車幅方向外側の端部がフロントピラー20(図1参照)に接している。そして、フロントピラーインナーエクステンション6の取り付けフランジ6Fが、ルーフフロントインナーレール7の取り付けフランジ7Fの車幅方向の端部に下側から重ねられて溶接接合されている。
【0017】
つまり、車体の側部側では、ルーフフロントインナーレール7の車両前方側Frの端部の取り付けフランジ7Fを、ルーフパネル5の取り付けフランジ5Fの車幅方向の端部と、フロントピラーインナーエクステンション6の取り付けフランジ6Fとが挟み込んで、これら三者が一体に溶接接合された状態になっている。
【0018】
前記ルーフパネル5とフロントピラーインナーエクステンション6とルーフフロントインナーレール7の車両前方側Frの端部は前下がりに傾斜している。また、フロントウインドシールド1の前面1Mとルーフパネル5の車両前方側Frの端部の前上方を向く上面5Mとは、水平方向に対する傾斜角がほぼ同一に設定されるとともに、フロントウインドシールド1と直交する方向でほぼ同一位置に位置している。
【0019】
ルーフパネル5の取り付けフランジ5Fの上面5Jとフロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの裏面1Uとは接着剤9で接着されている。
【0020】
図2,図3に示すように、ルーフパネル5の取り付けフランジ5Fとルーフフロントインナーレール7の取り付けフランジ7Fとフロントピラーインナーエクステンション6の取り付けフランジ6Fとは、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの裏側(下側)に入り込んでフロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの裏面1Uに下側から対向し、下側からルーフライニング13で覆われている。ルーフライニング13の車両前方側の端部13Mは、円弧状に湾曲して前端縁13M1がフロントウインドシールド1の裏面1Uに近接し、ルーフパネル5やウインドシールドファスナー8を下側及び前下方から覆っている。
【0021】
図2に示すように、ルーフパネル5の取り付けフランジ5Fはフロントピラーインナーエクステンション6の取り付けフランジ6Fやルーフフロントインナーレール7の取り付けフランジ7Fよりも前下方に延出し、その延出端部の左右両端部に係止孔5Hがそれぞれ形成されている。
【0022】
また、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの左右両端部1J2の裏面1Uに樹脂製のウインドシールドファスナー8(保持部材に相当)が両面テープにより貼着されている。そして、フロントウインドシールド1の係止部8Kが前記係止孔5Hに挿入係止し、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jとルーフパネル5との接着剤9による接着の際に、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの左右両端部1J2がウインドシールドファスナー8を介してルーフパネル5に仮り保持されている。
【0023】
つまり、ウインドシールドファスナー8は、ルーフパネル5の取り付けフランジ5Fの上面5Jとフロントウインドシールド1の上側周縁部の裏面1Uとが接着剤9で確実に接着した状態になるまで、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jとルーフパネル5の間に介在して、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの左右両端部1J2をルーフパネル5に仮り保持させる役割を果たす。そして、接着剤9による接着が完了した後もウインドシールドファスナー8は取り外されることなく、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの左右両端部1J2とルーフパネル5の間に介在したままになっている。ウインドシールドファスナー8は熱可塑性樹脂の一種のポリブチレンテレフタレートで成形されている。
【0024】
前記接着剤9による接着部よりも後ろ上方側のフロントウインドシールド1の上側周縁部1Jとルーフパネル5の取り付けフランジ5Fとの間に樹脂製のウインドシールドモールディング11が介在している。このウインドシールドモールディング11は、フロントウインドシールド1の4辺のうち下辺を除く3辺に両面テープで貼着されている。
【0025】
ウインドシールドモールディング11は全長にわたってほぼ同じ断面形状に形成され、取り付け基部11Kと、取り付け基部11Kからフロントウインドシールド1の外方側に突出してルーフパネル5の前端部の段差面5Dやフロントピラー20に圧接するリップ部11Lとを備えている。このウインドシールドモールディング11はオレフィン系の熱可塑性樹脂の一種のTEOで成形され、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの裏面1Uとルーフパネル5の取り付けフランジ5Fの上面5Jとの間をシールして雨水のエンジンルーム内への浸入を防止している。
【0026】
フロントウインドシールド1を車体に組み付ける場合は、フロントウインドシールド1にウインドシールドモールディング11とウインドシールドファスナー8をそれぞれ両面テープで貼着しておく。そして、前記係止孔5Hにウインドシールドファスナー8の係止部8Kを挿入し、このウインドシールドファスナー8を介してフロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの左右両端部1J2をルーフパネル5で仮り保持する。そして、仮り保持状態で、ルーフパネル5の取り付けフランジ5Fの上面5Jとフロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの裏面1Uとを接着剤9で接着する。
【0027】
図1〜図3に示すように、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jを含むフロントウインドシールド1の全周縁部が黒色に着色され、前記ウインドシールドファスナー8と接着剤9が車外側から見えないようにされている。フロントウインドシールド1の周縁部が黒色以外の色に着色されていてもよい。図1〜図3の二点鎖線のハッチングは着色部12を示している。
【0028】
そして、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの着色部12のうち、前記上側周縁部1Jの左右両端部1J2の着色部部分12Aは、前記接着剤9とウインドシールドファスナー8とウィンドシールドモールディング11の取り付け基部11Kとを覆い隠し可能な幅に設定されている。これにより、接着剤9とウインドシールドファスナー8とウィンドシールドモールディング11の取り付け基部11Kとを車外側から見えなくすることができて、フロントウインドシールド1の外観をよくすることができる。
【0029】
前記左右中央部1J1の着色部部分12Bは、前記接着剤9とウィンドシールドモールディング11の取り付け基部11Kとを覆い隠し可能な幅に設定されている。これにより、接着剤9とウィンドシールドモールディング11の取り付け基部11Kとを車外側から見えなくすることができて、フロントウインドシールド1の外観をよくすることができる。
さらに、前記左右中央部1J1の着色部部分12Bは、前記上側周縁部1Jの左右両端部1J2の着色部分12Aよりもウインドシールドファスナー8に対応する幅だけ幅狭に形成されている。そして、前記上側周縁部1Jの着色部12は、上側周縁部1Jの左右両端部1J2から左右中央部1J1に向かって徐々に幅狭になるように設定されている。
【0030】
上記の構成によれば、フロントウインドシールド1の上側周縁部1Jの着色部12のうち左右中央部1J1の着色部部分12Bが左右両端部1J2の着色部部分12Aよりも幅狭に設定されているから、フロントウインドシールド1の左右中央部1J1の透視可能な幅を大きくすることができて、乗員の視野を広くすることができる。これにより、フロントウインドシールド1の幅を大きくしなくても済み、フロントウインドシールド1のデザインの自由度を高くすることができる。
【0031】
また、前記着色部12は前記上側周縁部1Jの左右両端部1J2から左右中央部1J1に向かって徐々に幅狭になっているから、着色部12の幅を滑らかに変化させることができて、フロントウインドシールド1の外観をよくすることができる。
【0032】
また、前記上側周縁部1Jの左右中央部1J1の着色部部分12Bが、前記上側周縁部1Jの左右両端部1J2の着色部分12Aよりもウインドシールドファスナー8に対応する幅だけ幅狭に形成されているから、フロントウインドシールド1の左右中央部1J1の透視可能な幅を大きくすることができて、乗員の視野を十分広くすることができる。これにより、フロントウインドシールド1の幅を大きくしなくても済み、フロントウインドシールド1のデザインの自由度を高くすることができる。
【0033】
[別実施形態]
(1) 本発明はリヤウインドシールドにも適用することができる。
(2) 前記フロントウインドシールド1の下側周縁部又はリヤウインドシールドの下側周縁部の着色部のうち左右中央部の着色部部分が左右両端部の着色部部分よりも幅狭に設定されていてもよく、この着色部が下側周縁部の左右両端部から左右中央部に向かって徐々に幅狭になっていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ウインドシールド(フロントウインドシールド)
1J 上側周縁部
1J1 左右中央部(上側周縁部の左右中央部)
1J2 左右両端部(上側周縁部の左右両端部)
5 ルーフパネル
8 保持部材(ウインドシールドファスナー)
9 接着剤
12 着色部
12A 左右両端部の着色部部分(上側周縁部の左右両端部の着色部部分)
12B 左右中央部の着色部部分(上側周縁部の左右中央部の着色部部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウインドシールドの上側周縁部が着色されている車両のウインドシールド構造であって、
前記ウインドシールドの上側周縁部の着色部のうち左右中央部の着色部部分が左右両端部の着色部部分よりも幅狭に設定されている車両のウインドシールド構造。
【請求項2】
前記着色部は前記上側周縁部の左右両端部から左右中央部に向かって徐々に幅狭になっている請求項1記載の車両のウインドシールド構造。
【請求項3】
前記ウインドシールドの上側周縁部はルーフパネルに接着剤で接着され、
前記ウインドシールドの上側周縁部と前記ルーフパネルとの前記接着剤による接着の際に、前記ウインドシールドの上側周縁部の左右両端部が保持部材を介して前記ルーフパネルに仮り保持され、
前記上側周縁部の左右両端部の着色部部分は前記接着剤と前記保持部材を覆い隠し可能な幅に設定され、
前記上側周縁部の左右中央部の着色部部分は前記接着剤を覆い隠し可能な幅に設定されて、前記上側周縁部の左右両端部の着色部分よりも前記保持部材に対応する幅だけ幅狭に形成されている請求項1又は2記載の車両のウインドシールド構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−201419(P2011−201419A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70450(P2010−70450)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)