説明

車両のキャブロック装置

【課題】ケーブルを用いることなく、オペレーションロッドの操作性を向上させる。
【解決手段】オペレーションロッド70は、第1ロッド71と第2ロッド72とからなり、第1ロッド71の一端部71aは、ロッククローズ60に回転自在に連結され、第2ロッド72は、ハンドレバー8に対してスライド移動可能に支持される。第1ロッド71の他端部71bと第2ロッド72の一端部72aとは、連結部73によって連結される。連結部73は、第1ロッド71の他端部71bに形成された長孔80と第2ロッド72の一端部72aに形成され長孔80にスライド移動自在に係合するピン81とからなる。連結部73は、ハンドレバー8の回転時に、第2ロッド72の一端部72aに対する第1ロッド71の他端部71bの回転及びスライド移動を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チルト可能なキャブをシャシ側にロックするためのキャブロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャブロックフックとメインロッドとロッククローズとオペレーションロッドとを備え、前端部側のチルト軸を中心としてチルト可能なキャブを非チルト状態でシャシ側にロックするキャブロック装置が知られている。
【0003】
ハンドレバーは、キャブに対して回転自在に支持される。キャブロックフックは、キャブの後端部に設けられ、メインロッドを介してハンドレバーと連動してシャシ側のピンに係合するロック位置とピンとの係合が解除される開放位置との間を移動する。ロッククローズは、キャブの他端部に設けられ、オペレーションロッドは、車体に対してスライド移動自在に支持されている。ロッククローズは、オペレーションロッドのスライド移動に連動してクローズ位置と非クローズ位置との間を移動する。キャブロックフックがロック位置にあるとき、ロッククローズは、クローズ位置でキャブロックフックの移動を阻止するとともに、非クローズ位置でキャブロックフックの移動を許容する。すなわち、非チルト状態のキャブはキャブロックフックによってロックされ、そのロック状態がロッククローズによって保持される。
【0004】
【特許文献1】実開平5−34088号公報
【特許文献2】実開平5−35564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記キャブロック装置において、キャブロックフックによって非チルト状態にロックされ、そのロック状態がロッククローズによって保持されたキャブをチルトする場合、操作者は、オペレーションロッドを操作してロッククローズをクローズ位置から非クローズ位置に移動させ、ハンドレバーを回転してキャブロックフックをロック位置から開放位置へ移動させる。すなわち、操作者は、オペレーションロッドとハンドレバーとを操作する必要がある。このため、オペレーションロッドがハンドレバーにスライド移動自在に支持されいれば、オペレーションロッドの操作性が向上する。
【0006】
しかし、上記従来のキャブロック装置において、オペレーションロッドをハンドレバーに単にスライド移動自在に支持させただけでは、ハンドレバーの回転がオペレーションロッドによって規制されてしまい、ハンドレバーが機能しない。
【0007】
また、上記不都合は、オペレーションロッドに代えてケーブルを用いることによって回避可能であるが、ケーブルの使用は、コストの上昇やケーブルの防水性の確保など他の不都合を招く。
【0008】
そこで、本発明は、ケーブルを用いることなく、オペレーションロッドの操作性を向上させることが可能なキャブロック装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、一端部側を中心としてチルト可能なキャブの他端部側を、非チルト状態でシャシ側にロックするキャブオーバー型車両のキャブロック装置であって、キャブロックフックとハンドレバーと連結機構とロッククローズとオペレーションロッドとを備える。
【0010】
ハンドレバーは、キャブの他端部に設けられ、シャシ側に固定されたピンに係合するロック位置とピンとの係合が解除される開放位置との間を移動可能である。ハンドレバーは、キャブに対して回転自在に支持される。連結機構は、ハンドレバーとキャブロックフックとを連結し、ハンドレバーの回転に連動してキャブロックフックをロック位置と開放位置との間で移動させる。ロッククローズは、キャブの他端部に設けられ、クローズ位置と非クローズ位置との間を移動可能である。オペレーションロッドは、ロッククローズに連結される。
【0011】
キャブロックフックがロック位置にあるとき、ロッククローズは、クローズ位置でキャブロックフックの移動を阻止するとともに、非クローズ位置でキャブロックフックの移動を許容する。
【0012】
オペレーションロッドは、第1ロッドと第2ロッドとを有する。第1ロッドの一端部は、ロッククローズに回転自在に連結される。第2ロッドは、ハンドレバーに対してスライド移動可能に支持される。第1ロッドの他端部と第2ロッドの一端部とは、連結部によって連結される。連結部は、第1ロッドの他端部及び第2ロッドの一端部の一方に設けられた長孔と、その他方に設けられ長孔にスライド移動自在に係合するピンとからなる。
【0013】
連結部は、ハンドレバーの回転時に、第2ロッドの一端部に対する第1ロッドの他端部の回転及びスライド移動を許容する。また、連結部は、キャブロックフックがロック位置にあってロッククローズがクローズ位置にあるとき、操作力伝達状態となり、キャブロックフックが開放位置にあるとき、操作力非伝達状態となる。操作力伝達状態では、第2ロッドが所定の一方向へスライド移動したとき、ピンと長孔の端部とが当接して第1ロッドがクローズ解除方向へ移動し、この第1ロッドのクローズ解除方向への移動に連動してクローズ位置のロッククローズが非クローズ位置へ移動する。操作力非伝達状態では、第2ロッドがスライド移動したとき、第1ロッドは一端部を中心として回転するがロッククローズは移動しない。すなわち、操作力伝達状態では、第2ロッドに操作力が入力されて第2ロッドが一方向へのスライド移動すると、その操作力が連結部及び第1ロッドを介してロッククローズに伝達されて、ロッククローズがクローズ位置から非クローズ位置へ移動する。一方、操作力非伝達状態では、第2ロッドに操作力が入力されて第2ロッドがスライド移動しても、その操作力がロッククローズに伝達されない。
【0014】
上記構成では、キャブロックフックによって非チルト状態にロックされ、そのロック状態がロッククローズによって保持されたキャブをチルトする場合、操作者は、第2ロッドを所定の一方向へスライド移動させる。第2ロッドが所定の一方向へスライド移動すると、ピンが長孔の端部に当接して第1ロッドがクローズ解除方向へ移動し、この第1ロッドの移動に連動してロッククローズが非クローズ位置へ移動する。ロッククローズが非クローズ位置へ移動した後、操作者は、ハンドレバーを回転してキャブロックフックをロック位置から開放位置へ移動させる。このように、ハンドレバーを回転させるためにクローズ位置のロッククローズを非クローズ位置へ移動させる際に、操作者は、ハンドレバーにスライド移動自在に支持された第2ロッドを操作すればよいので、オペレーションロッドの操作性が向上する。
【0015】
また、オペレーションロッドは第1ロッドと第2ロッドとに分割され、第1ロッドの他端部と第2ロッドの一端部とは長孔とピンとからなる連結部によって連結され、この連結部は、ハンドレバーの回転時に第2ロッドの一端部に対する第1ロッドの他端部の回転及びスライド移動を許容するので、ハンドレバーの回転がオペレーションロッドによって規制されることがない。
【0016】
従って、ケーブルを用いることなく、オペレーションロッドの操作性を向上させることができる。
【0017】
また、連結部は、キャブロックフックが開放位置にあるとき、操作力非伝達状態となり、操作力非伝達状態では、第2ロッドに操作力が入力されて第2ロッドがスライド移動しても、その操作力がロッククローズに伝達されない。従って、キャブロックフックが開放位置にある状態で第2ロッドに誤って操作力が入力されてしまった場合であっても、その操作力がロッククローズに伝達されてしまうことがない。
【0018】
また、第2ロッドの一端部を、キャブに対するハンドレバーの回転軸の近傍に配置してもよい。
【0019】
上記構成では、回転時のハンドレバーに常時オーバーラップするように第2ロッドの中間部分を配置することができる。従って、ハンドレバーの回転に伴う第2ロッドの移動のためのスペースを極めて小さく抑えることができ、省スペース化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ケーブルを用いることなく、オペレーションロッドの操作性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は本実施形態のキャブロック装置のロッククローズ状態を車両後方から視た背面図、図2は図1のキャブロック装置のロッククローズ解除操作を示す背面図、図3は図1のキャブロック装置のロック解除操作を示す背面図、図4は図1のキャブロック装置のロック解除状態を示す背面図、図5は図1のキャブロック装置の要部分解図である。なお、以下の説明における左右は、車両前方を向いた状態での車幅方向の左右を示している。
【0023】
図1に示すように、キャブ1の前端部側がシャシ側2に対しチルト軸(図示外)を中心としてチルト可能に支持されたキャブオーバートラックでは、キャブ1の背面には、非チルト状態のキャブ1の後端部側をシャシ側2にロックするキャブロック装置3が設けられ、シャシ側2には、キャブロック装置3に対応してピン4が固定されている。
【0024】
ピン4は、車両前後方向に離間して相対向する支持プレート5の上端部同士を連結する棒体状であり、支持プレート5の下端部はシャシ側2に固定されている。
【0025】
図1〜図5に示すように、本実施形態のキャブロック装置3は、ハンドレバー8とメインロッド9とベース10とリンク11とキャブロックフック12とロッククローズ60とオペレーションロッド70とを備えている。メインロッド9とリンク11とは、ハンドレバー8とキャブロックフック12とを連結し、ハンドレバー8の回転に連動してキャブロックフック12を後述するロック位置と開放位置との間で移動させる連結機構を構成する。また、オペレーションロッド70は、第1ロッド71と第2ロッド72とから構成されている。
【0026】
キャブ1の背面の車幅方向一側(本実施形態では左側)には、ハンドレバーブラケット40が固定され、ハンドレバー8の車幅方向内側の一端部(図1の右端部)8aは、回転軸41を介してハンドレバーブラケット40に回転自在に支持されている。ハンドレバー8は、図1に示すロック位置と図4に示すロック解除位置との間を、回転軸41を中心に回転する。ハンドレバー8は、一端部8aから図1中下方に延びる連結端部8bを有し、連結端部8bは、車幅方向に沿って延びるメインロッド9を介してリンク11に連結されている。ハンドレバー8の他端部(図1の左端部)8cには、グリップ42が固定されている。後述するロッククローズ60が非クローズ位置にあり、ハンドレバー8がロック位置(図2に示す)にある状態で、操作者がグリップ42を押し下げると、ハンドレバー8が回転軸41を中心にロック解除位置(図4に示す)まで回転する。ハンドレバー8がロック位置からロック解除位置へ回転すると、メインロッド9はロック解除方向(図1の右方向)へ移動し、反対にロック解除位置からロック位置へ回転すると、メインロッド9はロック方向(図1の左方向)へ移動する。
【0027】
ハンドレバー8とハンドレバーブラケット40との間には、バネ部材43が設けられている。バネ部材43の一端側はハンドレバー8の一端部8aと他端部8cとの間のバネ支持部44に係止され、バネ部材43の他端側はハンドレバーブラケット40の下端のバネ支持部45に係止されている。バネ部材43は、ハンドレバー8がロック位置とロック解除位置との間を回転する際に、ロック位置から所定の境界位置までの間ではハンドレバー8をロック位置に向かって付勢し、所定の境界位置からロック解除位置までの間ではハンドレバー8をロック解除位置に向かって付勢する。
【0028】
リンク11は、ベース10に対し第1回転軸17を中心としてロック方向及びロック解除方向へ回転自在に支持される。キャブロックフック12は、リンク11に対し第2回転軸24を中心として回転自在に支持され、ベース10に対してロック方向及びロック解除方向へ移動自在となる。リンク11がロック方向へ回転するとキャブロックフック12もロック方向へ移動し、リンク11がロック解除方向へ回転するとキャブロックフック12もロック解除方向へ移動する。
【0029】
ベース10は、相対向して離間する前後のプレート部(前プレート部13と後プレート部14)を有する。キャブ1の背面には、ベース10が固定されるブラケット15が設けられている。ブラケット15は略枠形状を有し、ベース10(前プレート部13及び後プレート部14)はその主要部分がブラケット15の内側に収容された状態でブラケット15に締結固定される。ブラケット15の下部には、キャブ1が非チルト状態のときにピン4及び前後の支持プレート5の上部が挿通されるピン挿通孔(図示省略)が形成されている。また、ブラケット15の下部は、キャブ1が非チルト状態のときに防振用の弾性部材90を介してシャシ側2のキャブマウントブラケット91に支持される。
【0030】
前プレート部13及び後プレート部14には、車両前後方向に沿って延びる第1回転軸17が挿通され支持される第1回転軸支持孔(図示省略)が形成されている。前プレート部13の下部には、キャブ1が非チルト状態のときにピン4を受け入れる係合シャフト収容凹部19が形成されている。また、後プレート部14には、ロッククローズ60を回転自在に支持するロッククローズ連結軸63が後方へ突設されている。
【0031】
リンク11は、相対向して離間する板状の前後のリンクプレート(前リンクプレートは図示を省略)20と、前後のリンクプレート20を連結する連結部(図示省略)と、を有し、ベース10の前後のプレート部13,14の間に収容される。前後のリンクプレート20の一端側(図1の下端側)には、第1回転軸17が挿通される第1回転軸挿通孔(図示省略)がそれぞれ形成され、リンク11は、キャブ1の背面に対して第1回転軸17を中心として回転自在に支持される。
【0032】
前後のリンクプレート20の他端側(図1の上端側)には、車両前後方向に沿って延びる第2回転軸24が挿通され支持される第2回転軸支持孔(図示省略)がそれぞれ形成されている。また、後リンクプレート20の他端側には、メインロッド9が連結されるメインロッド連結軸27が後方へ突設されている。
【0033】
メインロッド9は、後リンクプレート20の後方でメインロッド連結軸27に連結される。ハンドレバー8の他端部8cがロック位置から下方へ回転し、メインロッド9がロック解除方向(図1の右方向)へ移動すると、リンク11は、ハンドレバー8の動きに連動し、第1回転軸17を中心として、ロック位置(図1及び図2に示す位置)から開放位置(図4に示す位置)まで、ロック解除方向(図3中矢印51方向)へ回転する。反対に、ハンドレバー8の他端部8cが上方へ回転し、メインロッド9がロック方向(図1の左方向)へ移動すると、リンク11は、ハンドレバー8の動きに連動し、第1回転軸17を中心として、開放位置からロック位置まで、ロック方向(図3中矢印50方向)へ回転する。
【0034】
キャブロックフック12は、略L状の板形状を有し、リンク11の前後のリンクプレート20の間に配置される。キャブロックフック12の一端側(図1の上端側)には、第2回転軸24が挿通される第2回転軸挿通孔(図示省略)が形成され、キャブロックフック12は、リンク11に対して第2回転軸24を中心として回転自在に支持される。すなわち、キャブ1に対するキャブロックフック12の移動軌跡は、第1回転軸17を中心とした回転と第2回転軸24を中心とした回転とにより規定される。また、キャブロックフック12の他端側(図1の下端側)には、上方が開放された凹状の内側面30を有するフック部29が形成されている。
【0035】
第2回転軸24の外周には、コイル状のバネ部材(図示省略)とスペーサ(図示省略)とが配置される。バネ部材の一側はキャブロックフック12と係合し、他側はリンク11の連結部と係合する。このバネ部材によって、キャブロックフック12は、リンク11に対してロック方向(図3中矢印50方向)へ付勢される。また、特に図示していないが、リンク11には、キャブロックフック12のロック解除方向への移動範囲を規制するストッパが設けられている。このため、キャブロックフック12に外力が加わっていない状態(リンク11が開放位置にある状態を含む)では、バネ部材とストッパとによって、キャブロックフック12はリンク11に対して所定位置に維持される。
【0036】
ロッククローズ60は、略板形状を有し、後プレート部14の後方に配置される。ロッククローズ60の中間部には、ロッククローズ連結軸63が挿通される連結軸挿通孔(図示省略)が形成され、ロッククローズ60は、ベース10に対してロッククローズ連結軸63を中心として回転自在に支持される。ロッククローズ60の他端部(図1の下端部)には、オペレーションロッド70の第1ロッド71が連結されている。リンク11がロック位置にある状態において、ロッククローズ60は、オペレーションロッド70に連動してクローズ位置(図1に示す)と非クローズ位置(図2に示す)との間を移動する。
【0037】
ロッククローズ60の一端側(図1の上端側)の外縁部には、湾曲面状のカム部64が形成され、連結軸挿通孔とカム部64との間にはメインロッド連結軸27と係合可能な係合凹部65が形成されている。また、ロッククローズ連結軸63の外周には、コイル状のバネ部材(付勢部材)62とスペーサ(図示省略)とが配置される。バネ部材62の一端側はロッククローズ60と係合し、他端側はロッククローズ連結軸63と係合する。このバネ部材62によって、ロッククローズ60がクローズ位置へ付勢される。リンク11がロック位置にあるとき、ロッククローズ60はバネ部材62からの付勢力によってクローズ位置に設定され、この状態でロッククローズ60の係合凹部65がメインロッド連結軸27と係合してリンク11のロック解除方向への移動を阻止する。
【0038】
また、係合凹部65とメインロッド連結軸27との係合が解除された非クローズ位置にロッククローズ60が設定され、リンク11がロック位置からロック解除方向へ回転すると、図3及び図4に示すように、カム部64は、メインロッド連結軸27の外周面と当接してロッククローズ60のクローズ位置への移動を阻止する。
【0039】
オペレーションロッド70の第1ロッド71は、車幅方向内側(図1の右側)に配置され、第2ロッド72は、車幅方向外側(図1の左側)に配置されている。第1ロッド71の一端部(図1の右側端部)71aは、ロッククローズ60の他端側(図1の下端側)に回転自在に連結され、他端部(図1の左側端部)71bは、第2ロッド72の一端部(図1に右側端部)72aに連結部73によって連結される。
【0040】
第2ロッド72の一端部72a側には、長孔状のスライド孔74が形成され、第2ロッド72の他端部72bは、所定方向(図1の下方)に曲折されている。ハンドレバー8の一端部8a側には、スライド孔74にスライド可能に係合する係止突起75が突設され、ハンドレバー8の他端部8c側には、ロッド支持プレート76が突設されている。ロッド支持プレート76には、第2ロッド72の他端部72b側が挿通されるロッド挿通孔77が形成されている。第2ロッド72は、その一端部72a側でスライド孔74に係止突起75が係止され、他端部72b側でロッド挿通孔77に挿通されることにより、ハンドレバー8に対してスライド移動可能に支持される。第2ロッド72のスライド方向及び移動可能範囲は、スライド孔74によって規制される。また、第2ロッド72の一端部72aは回転軸41の近傍に位置し、第2ロッド72のうち両端を除く中間部分の全域が、ハンドレバー8にオーバーラップした状態でハンドレバー8と共に回転する。なお、第2ロッド72に係止突起を設け、ハンドレバー8にスライド孔を設けてもよい。
【0041】
第2ロッド72には、バネ支持プレート78が固定されている。バネ支持プレート78は、ロッド支持プレート76よりも車幅方向内側(図1の右側)に配置され、バネ支持プレート78とロッド支持プレート76との間には、バネ部材(付勢部材)79が設けられている。このバネ部材69によって、第2ロッド72がクローズ方向(図1中矢印52方向)へ付勢される。
【0042】
連結部73は、第1ロッド71の他端部71bに形成された長孔80と、第2ロッド72の一端部72aに形成され長孔80にスライド移動自在に係合するピン81とから構成されている。なお、第2ロッド72の一端部72aに長孔を形成し、第1ロッド71の他端部71bに長孔にスライド移動自在に係合するピンを形成してもよい。
【0043】
連結部73は、ハンドレバー8が回転軸41を中心に回転するとき、第2ロッド72の一端部72aに対する第1ロッド71の他端部71bの回転及びスライド移動を許容する。
【0044】
また、連結部73は、キャブロックフック12がロック位置にありロッククローズ60がクローズ位置にあるとき(図1に示す状態のとき)、操作力伝達状態となる。操作力伝達状態では、第2ロッド72の他端部72bが引っ張られ、第2ロッド72がクローズ解除方向(図1に示す矢印53方向)へスライド移動したとき、ピン81が長孔80の車幅方向外側(図1の左側)の端部に当接し、第1ロッド71が引っ張られてクローズ解除方向(図1に示す矢印54方向)へ移動し、この第1ロッド71のクローズ解除方向への移動に連動してクローズ位置のロッククローズ60がクローズ解除方向(図1に示す矢印55方向)へ回転する。
【0045】
また、連結部73は、キャブロックフック12が開放位置にあるとき(図4に示す状態のとき)を含む非ロック状態にあるとき、操作力非伝達状態となる。操作力非伝達状態では、第2ロッド72がクローズ方向(図4に示す矢印52方向)又はクローズ解除方向(図4に示す矢印53方向)へスライド移動しても、第1ロッド71は一端部71aを中心として回転するだけであり、ロッククローズ60は回転しない。
【0046】
すなわち、操作力伝達状態では、第2ロッド72に操作力が入力されて第2ロッド72がクローズ解除方向へのスライド移動すると、その操作力が連結部73及び第1ロッド71を介してロッククローズ60に伝達されて、ロッククローズ60がクローズ位置から非クローズ位置へ移動する。一方、操作力非伝達状態では、第2ロッド72に操作力が入力されて第2ロッド72がスライド移動しても、その操作力がロッククローズ60に伝達されない。
【0047】
このように、リンク11がロック位置にある状態において、オペレーションロッド70(第2ロッド72の他端部72b)が、バネ部材79の付勢力に抗してクローズ解除方向へ引っ張り操作されると、ロッククローズ60は、バネ部材62の付勢力に抗してクローズ位置(図1に示す)から非クローズ位置(図2に示す)へ移動する。
【0048】
キャブロックフック12によって非チルト状態にロックされ、そのロック状態がロッククローズ60によって保持されたキャブ1をチルトする場合、操作者は、図1に示すように、第2ロッド72の他端部72bを、バネ部材79の付勢力に抗してクローズ解除方向53へ引っ張る。第2ロッド72がクローズ解除方向53へ引っ張られてスライド移動すると、ピン81が長孔80の端部に当接して第1ロッド71がクローズ解除方向54へ引っ張られて移動し、第1ロッド71の移動に連動してロッククローズ60がクローズ解除方向55へ回転し、図2に示す非クローズ位置へ移動する。ロッククローズ60が非クローズ位置へ移動した後、操作者は、グリップ42を押し下げ、ハンドレバー8をロック位置からロック解除位置へ向かって回転させる。ハンドレバー8の回転によって、連結部73は操作力伝達状態から操作力非伝達状態へ移行する。
【0049】
ハンドレバー8が回転を開始した後、操作者は、第2ロッド72の引っ張り操作を解除する。第2ロッド72の引っ張り操作が解除されると、第2ロッド72はバネ部材79によってクローズ方向へ付勢されて戻るが、このとき連結部73は操作力非伝達状態に移行しているため、第2ロッド72のスライド移動がロッククローズ60を回転させることはない。また、連結部73が操作力非伝達状態に移行しているため、第2ロッド72の引っ張り操作が解除されたか否かに関わらず、ロッククローズ60がバネ部材62によってクローズ位置へ付勢され、図3に示すように、ロッククローズ60のカム部64がメインロッド連結軸27の外周面と当接し、ロッククローズ60のクローズ位置への移動が阻止される。すなわち、ハンドレバー8の回転に伴って、メインロッド連結軸27の外周面がロッククローズ60のカム部64上を摺動する。
【0050】
図4に示すように、ハンドレバー8がロック解除位置まで回転し、キャブロックフック12が開放位置へ移動した後、操作者はハンドレバー8の回転操作を解除する。ハンドレバー8の回転操作が解除されても、バネ部材43からの付勢力によってハンドレバー8はロック解除位置に保持される。
【0051】
一方、開放位置のキャブロックフック12をロック位置へ移動させる場合、操作者は、ハンドレバー8をロック解除位置からロック位置へ向かって回転させる。ハンドレバー8の移動に連動し、キャブロックフック12がロック方向への移動を開始する。
【0052】
ロック方向へ移動開始直後のキャブロックフック12は、バネ部材とストッパとによってリンク11に対して所定位置に維持されたまま、第1回転軸17を中心として開放位置(図4に示す位置)からロック方向(図4に示す矢印50方向)へ回転する。
【0053】
キャブロックフック12のロック方向への移動が進み、キャブロックフック12の内側縁がピン4と当接すると、バネ部材の付勢力を受けているキャブロックフック12は、ピン4に当接したままリンク11のロック方向への回転に伴って第2回転軸24を中心にロック方向へ移動する。この第2回転軸24を中心とした回転を伴うことにより、フック部29は、ロック方向への移動に伴って下方からピン4へ近づく。
【0054】
キャブロックフック12のロック方向への移動がさらに進むと、ロック位置の直前でフック部29の内側面30がピン4に下方から係合し、ロック位置でフック部29がピン4に対して上方への引張力を付与する。これにより、キャブロック装置3がキャブロック状態となる。キャブロック状態では、キャブ1がシャシ側2に確実且つ堅牢にロックされる。
【0055】
また、リンク11及びキャブロックフック12が開放位置からロック位置の直前まで移動する間では、メインロッド連結軸27の外周面がロッククローズ60のカム部64上を摺動する。メインロッド連結軸27とカム部64との当接により、バネ部材62の付勢力に抗してロッククローズ60のクローズ位置への移動が阻止される。
【0056】
リンク11及びキャブロックフック12がロック位置に達すると、バネ部材62の付勢力によってメインロッド連結軸27がカム部64上から係合凹部65内へ移動し、メインロッド連結軸27が係合凹部65に係合して、ロッククローズ60が非クローズ位置からクローズ位置へ移動する。
【0057】
このように、本実施形態によれば、ハンドレバー8を回転させるためにクローズ位置のロッククローズ60を非クローズ位置へ移動させる際に、操作者は、ハンドレバー8にスライド移動自在に支持された第2ロッド72を引っ張り操作すればよいので、オペレーションロッド70の操作性が向上する。
【0058】
また、オペレーションロッド70は第1ロッド71と第2ロッド72とに分割され、第1ロッド71の他端部71bと第2ロッド72の一端部72aとは長孔80とピン81とからなる連結部73によって連結され、この連結部73は、ハンドレバー8の回転時に第2ロッド72の一端部72aに対する第1ロッド71の他端部71bの回転及びスライド移動を許容するので、ハンドレバー8の回転がオペレーションロッド70によって規制されることがない。
【0059】
従って、ケーブルを用いることなく、オペレーションロッド70の操作性を向上させることができる。
【0060】
また、連結部73は、キャブロックフック12が開放位置にあるとき、操作力非伝達状態となり、操作力非伝達状態では、第2ロッド72に操作力が入力されて第2ロッド72がスライド移動しても、その操作力がロッククローズ60に伝達されない。従って、キャブロックフック12が開放位置にある状態で第2ロッド72に誤って操作力が入力されてしまった場合であっても、その操作力がロッククローズ60に伝達されてしまうことがない。
【0061】
さらに、第2ロッド72の一端部72aが回転軸41の近傍に配置され、第2ロッド72の中間部分の全域が回転時のハンドレバー8に常時オーバーラップするので、ハンドレバー8の回転に伴う第2ロッド72の移動のためのスペースを極めて小さく抑えることができ、省スペース化を図ることができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、メインロッド連結軸27を係合凹部65とのロック係合部として機能させたが、リンク11にロック係合部として機能する係合突起を別途設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、チルト可能なキャブをシャシ側にロックするためのキャブロック装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施形態のキャブロック装置のロッククローズ状態を車両後方から視た背面図である。
【図2】図1のキャブロック装置のロッククローズ解除操作を示す背面図である。
【図3】図1のキャブロック装置のロック解除操作を示す背面図である。
【図4】図1のキャブロック装置のロック解除状態を示す背面図である。
【図5】図1のキャブロック装置の要部分解図である。
【符号の説明】
【0065】
1:キャブ
2:シャシ側
3:キャブロック装置
4:ピン
5:支持プレート
8:ハンドレバー
9:メインロッド(連結機構)
10:ベース
11:リンク(連結機構)
12:キャブロックフック
13:前プレート部
14:後プレート部
15:ブラケット
17:第1回転軸
19:係合シャフト収容凹部
20:リンクプレート
24:第2回転軸
27:メインロッド連結軸
29:フック部
30:フック部の内側面
41:回転軸
60:ロッククローズ
62:バネ部材
63:ロッククローズ連結軸
64:カム部
65:係合凹部
70:オペレーションロッド
71:第1ロッド
71a:第1ロッドの一端部
71b:第1ロッドの他端部
72:第2ロッド
72a:第2ロッドの一端部
72b:第2ロッドの他端部
73:連結部
80:長孔
81:ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部側を中心としてチルト可能なキャブの他端部側を、非チルト状態でシャシ側にロックするキャブオーバー型車両のキャブロック装置であって、
前記キャブの他端部に設けられ、前記シャシ側に固定されたピンに係合するロック位置と前記ピンとの係合が解除される開放位置との間を移動可能なキャブロックフックと、
前記キャブに対して回転自在に支持されたハンドレバーと、
前記ハンドレバーと前記キャブロックフックとを連結し、前記ハンドレバーの回転に連動して前記キャブロックフックを前記ロック位置と前記開放位置との間で移動させる連結機構と、
前記キャブの他端部に設けられ、クローズ位置と非クローズ位置との間を移動可能なロッククローズと、
前記ロッククローズに連結されたオペレーションロッドと、を備え、
前記キャブロックフックが前記ロック位置にあるとき、前記ロッククローズは、前記クローズ位置で前記キャブロックフックの移動を阻止するとともに、前記非クローズ位置で前記キャブロックフックの移動を許容し、
前記オペレーションロッドは、第1ロッドと第2ロッドとを有し、
前記第1ロッドの一端部は、前記ロッククローズに回転自在に連結され、
前記第2ロッドは、前記ハンドレバーに対してスライド移動可能に支持され、
前記第1ロッドの他端部と前記第2ロッドの一端部とは、その一方に設けられた長孔とその他方に設けられ前記長孔にスライド移動自在に係合するピンとからなる連結部によって連結され、
前記連結部は、前記ハンドレバーの回転時に、前記第2ロッドの一端部に対する前記第1ロッドの他端部の回転及びスライド移動を許容するとともに、前記キャブロックフックが前記ロック位置にあって前記ロッククローズが前記クローズ位置にあるとき、操作力伝達状態となり、前記キャブロックフックが前記開放位置にあるとき、操作力非伝達状態となり、
前記操作力伝達状態では、前記第2ロッドが所定の一方向へスライド移動したとき、前記ピンと前記長孔の端部とが当接して前記第1ロッドがクローズ解除方向へ移動し、この第1ロッドのクローズ解除方向への移動に連動して前記クローズ位置のロッククローズが前記非クローズ位置へ移動し、
前記操作力非伝達状態では、前記第2ロッドがスライド移動したとき、前記第1ロッドは前記一端部を中心として回転するが前記ロッククローズは移動しない
ことを特徴とする車両のキャブロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−265393(P2008−265393A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107629(P2007−107629)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【特許番号】特許第4157583号(P4157583)
【特許公報発行日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【出願人】(596162061)株式会社 湘南ユニテック (4)