車両のグリル取付構造
【課題】グリルの爪係合による固定部が衝撃によって壊れてもグリルを再利用することができる車両のグリル取付構造を提供すること。
【解決手段】バンパの開口部周縁に車両前方からグリル1を重ね、該グリル1を前記バンパの開口部周縁に取り付ける車両のグリル取付構造において、前記グリル1と前記バンパの他の部分よりも車両前方に突出して初期衝撃荷重が入力される初期入力側部分の取付構造を爪係合とし、ねじ挿通孔11aが形成された補修用ボス11をグリル1の少なくとも初期入力側部分に形成するとともに、該補修用ボス11をねじによって締結可能な取付面をバンパに形成する。
【解決手段】バンパの開口部周縁に車両前方からグリル1を重ね、該グリル1を前記バンパの開口部周縁に取り付ける車両のグリル取付構造において、前記グリル1と前記バンパの他の部分よりも車両前方に突出して初期衝撃荷重が入力される初期入力側部分の取付構造を爪係合とし、ねじ挿通孔11aが形成された補修用ボス11をグリル1の少なくとも初期入力側部分に形成するとともに、該補修用ボス11をねじによって締結可能な取付面をバンパに形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパの開口部周縁に車両前方から重ねて取り付けられるグリルの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両前面にはラジエータに走行風を導入するためのグリルが設けられるが、このグリルは、バンパの開口部周縁に車両前方から重ね、爪係合やスクリュー締付等によってバンパに取り付けられている。尚、グリルを固定するための爪構造やボス形状は、グリル意匠面へのヒケ対策として意匠面に隣接する根元部分を薄肉化しているために衝撃に対して壊れ易い。
【0003】
ところで、特許文献1〜3には、ヘッドランプのハウジングに本来の取付部以外に補助取付部を設けておき、車両衝突等によってハウジングの取付部が破損した場合には補助取付部を用いてハウジングを取り付け直して該ハウジングを再利用する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−267122号公報
【特許文献2】特開2007−090916号公報
【特許文献3】特許第3936122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグリル取付構造においては、車両の衝突等によってバンパに衝撃が加わった場合には、その衝撃によってグリルの爪係合やスクリュー締付による固定部が破損し、グリルの固定が不安定となって該グリルとバンパとの見切りがずれてしまう。このため、修理の際にはグリルそのものを交換する必要があり、高価なグリルの交換費用をユーザーが負担しなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、グリルの爪係合による固定部が衝撃によって壊れてもグリルを再利用することができる車両のグリル取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、バンパの開口部周縁に車両前方からグリルを重ね、該グリルを前記バンパの開口部周縁に取り付ける車両のグリル取付構造において、前記グリルと前記バンパの他の部分よりも車両前方に突出して初期衝撃荷重が入力される初期入力側部分の取付構造を爪係合とし、ねじ挿通孔が形成された補修用ボスをグリルの少なくとも初期入力側部分に形成するとともに、該補修用ボスをねじによって締結可能な取付面をバンパに形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記バンパに形成された取付面に薄皮部分を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記グリルに形成された補修用ボスを車両後方に向けて突設し、該補修用ボスを受け入れるための車両前方が開口した凹部を前記バンパに形成し、該凹部に前記取付面を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、グリルとバンパの初期入力側部分の取付構造を爪係合としたため、車両衝突時にバンパの初期入力側部分に衝撃力が加わった場合には、比較的脆弱な爪が破壊されてバンパからの衝撃力がグリルに作用しないようにすることができ、グリル自体の破損が防がれる。そして、破損した爪に代えて補修用ボスを用い、これをバンパ側の取付面にねじ結合することによって不具合なく取り付けが可能となってグリルを廃却することなく再利用することができ、修理費を低く抑えてユーザーの負担を軽減することができる。
【0011】
又、車両前後方向の位置関係においてグリルの補修用ボスがバンパの取付面よりも車両の前方に配置されており、グリルの予備の固定部(グリルの補修用ボスとバンパの取付面)が車両衝突時のバンパの後退による影響を受けないため、予備の固定部の破損が確実に防がれ、この予備の固定部を用いてグリルを取り付けてこれを再利用することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、バンパに形成された取付面に薄皮部分を形成したため、工場での組み付け時に作業者が誤って予備の固定部(補修用ボスと取付面)を用いてグリルをバンパに取り付けることがなく、グリルの破損防止を目的とする爪係合による取付構造を実現することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、車両の衝突によってグリルの爪が破損したために補修用ボスを用いてグリルをバンパの取付面に取り付ける際に、補修用ボスがバンパの凹部に入り込み、バンパに対するグリルの位置決めが正確になされる。又、見えない箇所に配置される補修用ボスとバンパの取付面の当接がストッパとなり、工場での組み付け時のグリルのバンパに対する車両前後方向の位置を規制することができ、組み付け時にグリルが当接することによって発生するバンパの意匠面の傷付きを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両の部分正面図である。
【図2】グリルを下方から見上げた正面斜視図である。
【図3】グリルを裏面側から見た部分斜視図である。
【図4】図3のA部拡大詳細図である。
【図5】フロントバンパのグリル取付部周りを斜め上方から見た部分斜視図である。
【図6】図5のB−B線断面図である。
【図7】車両のグリル周りの正面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】図8のD部拡大詳細図である。
【図10】図7のE−E線断面図である。
【図11】(a),(b)は図10のF部拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は車両の部分正面図、図2はグリルを下方から見上げた正面斜視図、図3は同グリルを裏面側から見た部分斜視図、図4は図3のA部拡大詳細図、図5はフロントバンパのグリル取付部周りを斜め上方から見た部分斜視図、図6は図5のB−B線断面図、図7は車両のグリル周りの正面図、図8は図7のC−C線断面図、図9は図8のD部拡大詳細図、図10は図7のE−E線断面図、図11(a),(b)は図10のF部拡大詳細図である。
【0017】
図1に示すように、車両の前面の車幅方向中央部の上下にはグリル(アッパグリル)1とロアグリル2が配されており、グリル1の左右にはヘッドランプ3(図示せず)が配されている。又、ロアグリル2の左右にはフォグランプベゼル4が配されており、グリル1とロアグリル2及び左右のフォグランプベゼル4は樹脂製のフロントバンパ5に取り付けられている。
【0018】
ところで、図5に示すように、フロントバンパ5にはグリル1と同形状の開口部5Aが開口しており、開口部5Aの車幅方向中央にはステー5aが縦方向に形成されている。そして、このフロントバンパ5の開口部5Aの周縁にはグリル1の周縁が車両前方から重ねられ、該グリル1がフロントバンパ5の開口部5Aの周縁に取り付けられる。グリル1及びフロントバンパ5の開口部5Aの周縁に関し、グリル1の下端縁とフロントバンパ5の開口部5Aの下端縁は他の部分よりも車両前方に突出しているため、車両衝突等の車両の前方からの衝撃荷重が作用するときには他の場所よりも早期に初期衝撃荷重が入力される箇所であり、この箇所及び側端縁でのグリル1のフロントバンパ5への取付構造は爪係合とされている。
【0019】
即ち、図2及び図3に示すように、グリル1の下端縁と左右の側端縁の裏面には複数の係合爪6が車両後方に向かって一体に突設されており、図5に示すように、フロントバンパ5の開口部5Aの下端縁と左右の側端縁の複数箇所(グリル1側に形成された前記係合爪6に対応する箇所)には係合孔7が形成されている。ここで、図4に示すように、各係合爪6には矩形の係合孔6aが形成されている。
【0020】
又、グリル1の下端縁及び左右の側端縁以外の上端縁のフロントバンパ5への取付構造はスクリューの締付構造とされている。即ち、図3に示すように、グリル1の上端縁の裏面の複数箇所にはボス8が車両後方に向かって一体に形成されており、図5に示すように、フロントバンパ5の開口部5Aの上端縁の複数箇所(グリル1側に形成された前記ボス8に対応する箇所)には取付面9が形成されている。そして、グリル1に形成された各ボス8には、車両後方に向かって開口するねじ挿通孔8aが形成され、フロントバンパ5に形成された各取付面9にはねじ挿通孔9aがそれぞれ形成されている。尚、図3に示すようにグリル1の裏面の車幅方向中央上部にもボス8が形成されており、図5に示すようにフロントバンパ5のステー5aの1箇所(グリル1側のボス8に対応する箇所)にも取付面9aが形成されており、これらのボス8と取付面9にもねじ挿通孔8a,9aがそれぞれ形成されている。
【0021】
而して、グリル1は、図7に示すように、その周縁がフロントバンパ5の開口部5Aの周縁に車両前方から重ねられ、その裏面の下端縁と左右の側端縁に形成された係合爪6をフロントバンパ5の開口部5Aの下端縁と左右の側端縁に形成された係合孔7に係合させることによって、その下端縁と左右の側端縁がフロントバンパ5に爪係合によって取り付けられる(図8及び図9参照)。尚、図9に詳細に示すように、グリル1側の係合爪6をフロントバンパ5側の係合孔7に車両前方から差し込むと、係合孔7の底部に形成された爪7aが係合爪6の係合孔6aに係合するため、グリル1がフロントバンパ5に爪係合によって取り付けられる。
【0022】
又、グリル1は、その上端縁と車幅方向中央部の裏面に形成されたボス8をフロントバンパ5の開口部5Aの上端縁とステー5aに形成された取付面9に合わせ、各取付面9に形成されたねじ挿通孔9aに裏面から挿通する不図示のスクリューをグリル1側のボス8のねじ挿通孔8aにねじ込むことによって、その上端縁がフロントバンパ5に取り付けられる。尚、本実施の形態では、図8及び図10に示すように、グリル1とフロントバンパ5との間にグリル裏カバー10が配置され、該グリル裏カバー10はグリル1に形成されたボス8及び後述する補修用ボス11を利用して取り付けられている。詳細には、グリル裏カバー10は、該グリル裏カバー10に設けられた孔にボス8,11が挿入され、グリル1とフロントバンパ5によって挟持されている。
【0023】
ところで、図2及び図3に示すように、グリル1の初期入力側部分である下端縁の裏面の車幅方向中央と左右両端部には補修用ボス11が車両後方に向かって一体に突設されており、各補修用ボス11には、図4に詳細に示すように、車両後方に向かって開口するねじ挿通孔11aが形成されている。
【0024】
又、図5及び図6に示すように、フロントバンパ5の開口部5Aの下端縁の複数箇所(グリル1に形成された前記補修用ボス11に対応する箇所)には車両前方に向かって開口する凹部12が形成されており、各凹部12の奥の座面は取付面13を構成している。ここで、各凹部12は後述のようにグリル1側に設けられた補修用ボス11を受け入れるためのものであって、図6に示すように、その両側面12aは車両後方(図6の上方)に向かって絞られた傾斜面を形成しており、これに対応してグリル1側に形成された補修用ボス11の両側面11bも車両後方に向かって階段状に幅が狭くなるようテーパ状に構成されている。又、図10及び図11(a)に示すように、各取付面13には薄皮部分13aが形成されている。
【0025】
以上のように、本実施の形態では、グリル1とフロントバンパ5の初期入力側部分、つまり、車両衝突時に最初に衝撃が加わる部分である下端縁の取付構造を係合爪6と係合孔7との爪係合としたため、車両衝突時にフロントバンパ5の初期入力側部分に衝撃力が加わった場合には、比較的脆弱な係合爪6が破壊されてフロントバンパ5からの衝撃力がグリルに作用しないようにすることができ、グリル1自体の破損が防がれる。そして、修理時のグリル1の取り付けでは、破損した係合爪6に代えて補修用ボス11を用い、これをフロントバンパ5に形成された凹部12内に図6、図10及び図11(a)に示すように車両前方から挿入し、図11(b)に示すように、スクリュー14を凹部12の奥の取付面13に形成された薄皮部分13aを貫通してグリル1側の補修用ボス11に形成されたねじ挿通孔11aにねじ込めば、係合爪6が破損したグリル1をフロントバンパ5に再び取り付けることができる。このように、グリル1を廃却することなくそのまま再利用することができるため、修理費が低く抑えられてユーザーの経済的負担が軽減される。この場合、補修用ボス11が車幅方向中央と左右両端部に配置されているため、グリル1とフロントバンパ5の見切りも当初と同様に良好に維持される。
【0026】
又、車両前後方向の位置関係において、グリル1の予備の固定部(グリル1の補修用ボス11とバンパ5の取付面13)が車両衝突時のフロントバンパ5の後退による影響を受けないため、予備の固定部の破損が確実に防がれ、この予備の固定部を用いてグリル1を取り付けてこれを再利用することができる。
【0027】
更に、本実施の形態では、フロントバンパ5に形成された取付面13に薄皮部分13aを形成したため、工場での組み付け時に作業者が誤って予備の固定部(補修用ボス11と取付面13)を用いてグリル1をフロントバンパ5に取り付けることがなく、係合爪6と係合孔7によるグリル1の破損防止を目的とする爪係合の取付構造を実現することができる。
【0028】
又、車両の衝突によってグリル1の係合爪6が破損したために補修用ボス11を用いてグリル1をフロントバンパ5の取付面13に取り付ける際に、補修用ボス11がフロントバンパ5の凹部12に入り込み、フロントバンパ5に対するグリル1の位置決めが正確になされる。このとき、図6に示すように、凹部12の両側面12aと補修用ボス11の両側面11bを共に車両後方に向かって幅が狭くなるテーパ面としたため、補修用ボス11の凹部12に対する位置決めがスムーズになされる。
【0029】
そして、グリル1の正面から見えない箇所に配置される補修用ボス11とフロントバンパ5の取付面13の当接がストッパとなり、工場での組み付け時のグリル1のフロントバンパ5に対する車両前後方向の位置を規制することができるため、組み付け時にグリル1が当接することによって発生するフロントバンパ5の意匠面の傷付きを防ぐことができるという効果も得られる。
【0030】
尚、以上の実施の形態では、グリル1の下端縁のみに補修用ボス11を形成したが、グリル1の周縁全体に補修用ボス11を形成しても良く、補修用ボス11をグリル1とは別体に構成しても良い。又、同様の取付構造をロアグリル2に対して採用しても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 グリル(アッパグリル)
2 ロアグリル
3 ヘッドランプ
4 フォグランプベゼル
5 フロントバンパ
5A フロントバンパの開口部
5a フロントバンパのステー
6 係合爪
6a 係合爪の係合孔
7 係合孔
7a 係合孔の爪
8 グリル1のボス
8a 取付面のねじ挿通孔
9 フロントバンパの取付面
9a 取付面のねじ挿通孔
10 グリル裏カバー
11 補修用ボス
11a 補修用ボスのねじ挿通孔
11b 補修用ボスの両側面
12 フロントバンパの凹部
12a 凹部の両側面
13 フロントバンパの取付面
13a 取付面の薄皮部分
14 スクリュー
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンパの開口部周縁に車両前方から重ねて取り付けられるグリルの取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両前面にはラジエータに走行風を導入するためのグリルが設けられるが、このグリルは、バンパの開口部周縁に車両前方から重ね、爪係合やスクリュー締付等によってバンパに取り付けられている。尚、グリルを固定するための爪構造やボス形状は、グリル意匠面へのヒケ対策として意匠面に隣接する根元部分を薄肉化しているために衝撃に対して壊れ易い。
【0003】
ところで、特許文献1〜3には、ヘッドランプのハウジングに本来の取付部以外に補助取付部を設けておき、車両衝突等によってハウジングの取付部が破損した場合には補助取付部を用いてハウジングを取り付け直して該ハウジングを再利用する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−267122号公報
【特許文献2】特開2007−090916号公報
【特許文献3】特許第3936122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のグリル取付構造においては、車両の衝突等によってバンパに衝撃が加わった場合には、その衝撃によってグリルの爪係合やスクリュー締付による固定部が破損し、グリルの固定が不安定となって該グリルとバンパとの見切りがずれてしまう。このため、修理の際にはグリルそのものを交換する必要があり、高価なグリルの交換費用をユーザーが負担しなければならないという問題があった。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、グリルの爪係合による固定部が衝撃によって壊れてもグリルを再利用することができる車両のグリル取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、バンパの開口部周縁に車両前方からグリルを重ね、該グリルを前記バンパの開口部周縁に取り付ける車両のグリル取付構造において、前記グリルと前記バンパの他の部分よりも車両前方に突出して初期衝撃荷重が入力される初期入力側部分の取付構造を爪係合とし、ねじ挿通孔が形成された補修用ボスをグリルの少なくとも初期入力側部分に形成するとともに、該補修用ボスをねじによって締結可能な取付面をバンパに形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記バンパに形成された取付面に薄皮部分を形成したことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記グリルに形成された補修用ボスを車両後方に向けて突設し、該補修用ボスを受け入れるための車両前方が開口した凹部を前記バンパに形成し、該凹部に前記取付面を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、グリルとバンパの初期入力側部分の取付構造を爪係合としたため、車両衝突時にバンパの初期入力側部分に衝撃力が加わった場合には、比較的脆弱な爪が破壊されてバンパからの衝撃力がグリルに作用しないようにすることができ、グリル自体の破損が防がれる。そして、破損した爪に代えて補修用ボスを用い、これをバンパ側の取付面にねじ結合することによって不具合なく取り付けが可能となってグリルを廃却することなく再利用することができ、修理費を低く抑えてユーザーの負担を軽減することができる。
【0011】
又、車両前後方向の位置関係においてグリルの補修用ボスがバンパの取付面よりも車両の前方に配置されており、グリルの予備の固定部(グリルの補修用ボスとバンパの取付面)が車両衝突時のバンパの後退による影響を受けないため、予備の固定部の破損が確実に防がれ、この予備の固定部を用いてグリルを取り付けてこれを再利用することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、バンパに形成された取付面に薄皮部分を形成したため、工場での組み付け時に作業者が誤って予備の固定部(補修用ボスと取付面)を用いてグリルをバンパに取り付けることがなく、グリルの破損防止を目的とする爪係合による取付構造を実現することができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、車両の衝突によってグリルの爪が破損したために補修用ボスを用いてグリルをバンパの取付面に取り付ける際に、補修用ボスがバンパの凹部に入り込み、バンパに対するグリルの位置決めが正確になされる。又、見えない箇所に配置される補修用ボスとバンパの取付面の当接がストッパとなり、工場での組み付け時のグリルのバンパに対する車両前後方向の位置を規制することができ、組み付け時にグリルが当接することによって発生するバンパの意匠面の傷付きを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】車両の部分正面図である。
【図2】グリルを下方から見上げた正面斜視図である。
【図3】グリルを裏面側から見た部分斜視図である。
【図4】図3のA部拡大詳細図である。
【図5】フロントバンパのグリル取付部周りを斜め上方から見た部分斜視図である。
【図6】図5のB−B線断面図である。
【図7】車両のグリル周りの正面図である。
【図8】図7のC−C線断面図である。
【図9】図8のD部拡大詳細図である。
【図10】図7のE−E線断面図である。
【図11】(a),(b)は図10のF部拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は車両の部分正面図、図2はグリルを下方から見上げた正面斜視図、図3は同グリルを裏面側から見た部分斜視図、図4は図3のA部拡大詳細図、図5はフロントバンパのグリル取付部周りを斜め上方から見た部分斜視図、図6は図5のB−B線断面図、図7は車両のグリル周りの正面図、図8は図7のC−C線断面図、図9は図8のD部拡大詳細図、図10は図7のE−E線断面図、図11(a),(b)は図10のF部拡大詳細図である。
【0017】
図1に示すように、車両の前面の車幅方向中央部の上下にはグリル(アッパグリル)1とロアグリル2が配されており、グリル1の左右にはヘッドランプ3(図示せず)が配されている。又、ロアグリル2の左右にはフォグランプベゼル4が配されており、グリル1とロアグリル2及び左右のフォグランプベゼル4は樹脂製のフロントバンパ5に取り付けられている。
【0018】
ところで、図5に示すように、フロントバンパ5にはグリル1と同形状の開口部5Aが開口しており、開口部5Aの車幅方向中央にはステー5aが縦方向に形成されている。そして、このフロントバンパ5の開口部5Aの周縁にはグリル1の周縁が車両前方から重ねられ、該グリル1がフロントバンパ5の開口部5Aの周縁に取り付けられる。グリル1及びフロントバンパ5の開口部5Aの周縁に関し、グリル1の下端縁とフロントバンパ5の開口部5Aの下端縁は他の部分よりも車両前方に突出しているため、車両衝突等の車両の前方からの衝撃荷重が作用するときには他の場所よりも早期に初期衝撃荷重が入力される箇所であり、この箇所及び側端縁でのグリル1のフロントバンパ5への取付構造は爪係合とされている。
【0019】
即ち、図2及び図3に示すように、グリル1の下端縁と左右の側端縁の裏面には複数の係合爪6が車両後方に向かって一体に突設されており、図5に示すように、フロントバンパ5の開口部5Aの下端縁と左右の側端縁の複数箇所(グリル1側に形成された前記係合爪6に対応する箇所)には係合孔7が形成されている。ここで、図4に示すように、各係合爪6には矩形の係合孔6aが形成されている。
【0020】
又、グリル1の下端縁及び左右の側端縁以外の上端縁のフロントバンパ5への取付構造はスクリューの締付構造とされている。即ち、図3に示すように、グリル1の上端縁の裏面の複数箇所にはボス8が車両後方に向かって一体に形成されており、図5に示すように、フロントバンパ5の開口部5Aの上端縁の複数箇所(グリル1側に形成された前記ボス8に対応する箇所)には取付面9が形成されている。そして、グリル1に形成された各ボス8には、車両後方に向かって開口するねじ挿通孔8aが形成され、フロントバンパ5に形成された各取付面9にはねじ挿通孔9aがそれぞれ形成されている。尚、図3に示すようにグリル1の裏面の車幅方向中央上部にもボス8が形成されており、図5に示すようにフロントバンパ5のステー5aの1箇所(グリル1側のボス8に対応する箇所)にも取付面9aが形成されており、これらのボス8と取付面9にもねじ挿通孔8a,9aがそれぞれ形成されている。
【0021】
而して、グリル1は、図7に示すように、その周縁がフロントバンパ5の開口部5Aの周縁に車両前方から重ねられ、その裏面の下端縁と左右の側端縁に形成された係合爪6をフロントバンパ5の開口部5Aの下端縁と左右の側端縁に形成された係合孔7に係合させることによって、その下端縁と左右の側端縁がフロントバンパ5に爪係合によって取り付けられる(図8及び図9参照)。尚、図9に詳細に示すように、グリル1側の係合爪6をフロントバンパ5側の係合孔7に車両前方から差し込むと、係合孔7の底部に形成された爪7aが係合爪6の係合孔6aに係合するため、グリル1がフロントバンパ5に爪係合によって取り付けられる。
【0022】
又、グリル1は、その上端縁と車幅方向中央部の裏面に形成されたボス8をフロントバンパ5の開口部5Aの上端縁とステー5aに形成された取付面9に合わせ、各取付面9に形成されたねじ挿通孔9aに裏面から挿通する不図示のスクリューをグリル1側のボス8のねじ挿通孔8aにねじ込むことによって、その上端縁がフロントバンパ5に取り付けられる。尚、本実施の形態では、図8及び図10に示すように、グリル1とフロントバンパ5との間にグリル裏カバー10が配置され、該グリル裏カバー10はグリル1に形成されたボス8及び後述する補修用ボス11を利用して取り付けられている。詳細には、グリル裏カバー10は、該グリル裏カバー10に設けられた孔にボス8,11が挿入され、グリル1とフロントバンパ5によって挟持されている。
【0023】
ところで、図2及び図3に示すように、グリル1の初期入力側部分である下端縁の裏面の車幅方向中央と左右両端部には補修用ボス11が車両後方に向かって一体に突設されており、各補修用ボス11には、図4に詳細に示すように、車両後方に向かって開口するねじ挿通孔11aが形成されている。
【0024】
又、図5及び図6に示すように、フロントバンパ5の開口部5Aの下端縁の複数箇所(グリル1に形成された前記補修用ボス11に対応する箇所)には車両前方に向かって開口する凹部12が形成されており、各凹部12の奥の座面は取付面13を構成している。ここで、各凹部12は後述のようにグリル1側に設けられた補修用ボス11を受け入れるためのものであって、図6に示すように、その両側面12aは車両後方(図6の上方)に向かって絞られた傾斜面を形成しており、これに対応してグリル1側に形成された補修用ボス11の両側面11bも車両後方に向かって階段状に幅が狭くなるようテーパ状に構成されている。又、図10及び図11(a)に示すように、各取付面13には薄皮部分13aが形成されている。
【0025】
以上のように、本実施の形態では、グリル1とフロントバンパ5の初期入力側部分、つまり、車両衝突時に最初に衝撃が加わる部分である下端縁の取付構造を係合爪6と係合孔7との爪係合としたため、車両衝突時にフロントバンパ5の初期入力側部分に衝撃力が加わった場合には、比較的脆弱な係合爪6が破壊されてフロントバンパ5からの衝撃力がグリルに作用しないようにすることができ、グリル1自体の破損が防がれる。そして、修理時のグリル1の取り付けでは、破損した係合爪6に代えて補修用ボス11を用い、これをフロントバンパ5に形成された凹部12内に図6、図10及び図11(a)に示すように車両前方から挿入し、図11(b)に示すように、スクリュー14を凹部12の奥の取付面13に形成された薄皮部分13aを貫通してグリル1側の補修用ボス11に形成されたねじ挿通孔11aにねじ込めば、係合爪6が破損したグリル1をフロントバンパ5に再び取り付けることができる。このように、グリル1を廃却することなくそのまま再利用することができるため、修理費が低く抑えられてユーザーの経済的負担が軽減される。この場合、補修用ボス11が車幅方向中央と左右両端部に配置されているため、グリル1とフロントバンパ5の見切りも当初と同様に良好に維持される。
【0026】
又、車両前後方向の位置関係において、グリル1の予備の固定部(グリル1の補修用ボス11とバンパ5の取付面13)が車両衝突時のフロントバンパ5の後退による影響を受けないため、予備の固定部の破損が確実に防がれ、この予備の固定部を用いてグリル1を取り付けてこれを再利用することができる。
【0027】
更に、本実施の形態では、フロントバンパ5に形成された取付面13に薄皮部分13aを形成したため、工場での組み付け時に作業者が誤って予備の固定部(補修用ボス11と取付面13)を用いてグリル1をフロントバンパ5に取り付けることがなく、係合爪6と係合孔7によるグリル1の破損防止を目的とする爪係合の取付構造を実現することができる。
【0028】
又、車両の衝突によってグリル1の係合爪6が破損したために補修用ボス11を用いてグリル1をフロントバンパ5の取付面13に取り付ける際に、補修用ボス11がフロントバンパ5の凹部12に入り込み、フロントバンパ5に対するグリル1の位置決めが正確になされる。このとき、図6に示すように、凹部12の両側面12aと補修用ボス11の両側面11bを共に車両後方に向かって幅が狭くなるテーパ面としたため、補修用ボス11の凹部12に対する位置決めがスムーズになされる。
【0029】
そして、グリル1の正面から見えない箇所に配置される補修用ボス11とフロントバンパ5の取付面13の当接がストッパとなり、工場での組み付け時のグリル1のフロントバンパ5に対する車両前後方向の位置を規制することができるため、組み付け時にグリル1が当接することによって発生するフロントバンパ5の意匠面の傷付きを防ぐことができるという効果も得られる。
【0030】
尚、以上の実施の形態では、グリル1の下端縁のみに補修用ボス11を形成したが、グリル1の周縁全体に補修用ボス11を形成しても良く、補修用ボス11をグリル1とは別体に構成しても良い。又、同様の取付構造をロアグリル2に対して採用しても良いことは勿論である。
【符号の説明】
【0031】
1 グリル(アッパグリル)
2 ロアグリル
3 ヘッドランプ
4 フォグランプベゼル
5 フロントバンパ
5A フロントバンパの開口部
5a フロントバンパのステー
6 係合爪
6a 係合爪の係合孔
7 係合孔
7a 係合孔の爪
8 グリル1のボス
8a 取付面のねじ挿通孔
9 フロントバンパの取付面
9a 取付面のねじ挿通孔
10 グリル裏カバー
11 補修用ボス
11a 補修用ボスのねじ挿通孔
11b 補修用ボスの両側面
12 フロントバンパの凹部
12a 凹部の両側面
13 フロントバンパの取付面
13a 取付面の薄皮部分
14 スクリュー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンパの開口部周縁に車両前方からグリルを重ね、該グリルを前記バンパの開口部周縁に取り付ける車両のグリル取付構造において、
前記グリルと前記バンパの他の部分よりも車両前方に突出して初期衝撃荷重が入力される初期入力側部分の取付構造を爪係合とし、ねじ挿通孔が形成された補修用ボスをグリルの少なくとも初期入力側部分に形成するとともに、該補修用ボスをねじによって締結可能な取付面をバンパに形成したことを特徴とする車両のグリル取付構造。
【請求項2】
前記バンパに形成された取付面に薄皮部分を形成したことを特徴とする請求項1記載の車両のグリル取付構造。
【請求項3】
前記グリルに形成された補修用ボスを車両後方に向けて突設し、該補修用ボスを受け入れるための車両前方が開口した凹部を前記バンパに形成し、該凹部に前記取付面を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両のグリル取付構造。
【請求項1】
バンパの開口部周縁に車両前方からグリルを重ね、該グリルを前記バンパの開口部周縁に取り付ける車両のグリル取付構造において、
前記グリルと前記バンパの他の部分よりも車両前方に突出して初期衝撃荷重が入力される初期入力側部分の取付構造を爪係合とし、ねじ挿通孔が形成された補修用ボスをグリルの少なくとも初期入力側部分に形成するとともに、該補修用ボスをねじによって締結可能な取付面をバンパに形成したことを特徴とする車両のグリル取付構造。
【請求項2】
前記バンパに形成された取付面に薄皮部分を形成したことを特徴とする請求項1記載の車両のグリル取付構造。
【請求項3】
前記グリルに形成された補修用ボスを車両後方に向けて突設し、該補修用ボスを受け入れるための車両前方が開口した凹部を前記バンパに形成し、該凹部に前記取付面を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両のグリル取付構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−241216(P2010−241216A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90637(P2009−90637)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
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