説明

車両のグリル構造

【課題】成形時にバリが発生し難く、かつ、風切り騒音を抑制できるラジエータグリルを提供する。
【解決手段】車体外表面に取り付けられる車両の外装部品に設けられた空気流通用グリルの構造であって、前記グリルは、空気流通方向に略沿った方向に開閉可能に設けられた一対の成形型を用いて成形され、空気流通用開口部を形成する格子部材10に、該格子部材の基体部分11よりも空気流通方向に略直交する方向の厚さが大きい第1厚肉部13と、該第1厚肉部よりも空気流通方向における下流側に位置し、空気流通方向に略直交する方向の厚さが前記基体部分よりも大きく且つ前記第1厚肉部よりも小さい第2厚肉部15とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体外表面に取り付けられる車両の外装部品に設けられた空気流通用グリルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、例えば自動車等の車両では、一般に、車体前部のエンジンルーム内の前端領域にラジエータが設置され、このラジエータの前側が、車両外装部品として車体外表面に取り付けられたラジエータグリルで覆われている。このラジエータグリルは、走行風をラジエータ側に取り込むために多数の空気流通用開口部を有しており、通常、合成樹脂等を材料に用いて成形プロセスにより製作される。
【0003】
ラジエータグリル等の空気流通用開口部を有するグリルを成形する場合、例えば特許文献1に開示されているように、グリルの前面側を成形する前型とグリルの後面側を成形する後型とを前後に衝合するように組み合わせ、成形キャビティ内に溶融材料を充填した後、両型を相対的に前後方向へ引き抜くことによって成形を行うのが一般的である。
【0004】
このとき、前型と後型との衝合面にはグリルの空気流通用開口部を形成する格子部材の長手方向に沿って延びる型割線が形成されることになるが、この型割線に対応する成形ラインが外方(前方)から見えて外観性が損なわれることを回避する観点から、型割線に沿って直後側に段差を設けて型割線による成形ラインが前方から見えないようにすることが知られている。
【0005】
ところが、この型割線がグリルの格子部材の長手方向に沿って延びその直後側に段差が形成されるので、車両走行時、空気流通用開口部を通して走行風が取り込まれた際には、前記段差によってその後側に渦流が発生する。そして、特に、型割線がグリルの格子部材の長手方向に沿って延び、しかも、格子部材の前端から型割線までの距離が一定である場合には、渦流が型割線に沿って長く連続的に発生し成長していくために、大きな風切り騒音(いわゆる笛吹き音)が生じるという問題がある。
【0006】
この問題に対して、前記特許文献1には、型割線を格子部材の長手方向に亘って前後にずらせるか、又は格子部材の長手方向に亘って凹凸状に形成することで、格子部材の長手方向に亘って渦流の発生位置を前後方向でずらせて渦流同士を干渉させ打ち消し合うようにし、風切り騒音を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3575189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に開示された構成では、風切り騒音を抑制する機構として、格子部材の長手方向に亘って渦流の発生位置を前後方向でずらせるために、型割線自体を格子部材の長手方向に沿って後方へ傾斜するように形成するか、又は型割線自体に凹凸を形成する必要がある。つまり、このような傾斜または凹凸は、前型と後型とを衝合させて形成されることになるので、両型の衝合部の製作および衝合動作を非常に高精度に維持しなければ、成形時にバリが発生し易くなる、という難点があった。
【0009】
そこで、この発明は、風切り騒音を抑制する機構を設けるに際して、型製作および型の衝合動作の高精度化を特に伴うことなく、成形時にバリが発生し易くなることを防止できるようにすることを、基本的な目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため、本願の第1の発明は、車体外表面に取り付けられる車両の外装部品に設けられた空気流通用グリルの構造であって、前記グリルは、空気流通方向に略沿った方向に開閉可能に設けられた一対の成形型を用いて成形されるものであり、空気流通用開口部を形成する格子部材に、該格子部材の基体部分よりも空気流通方向に略直交する方向の厚さが大きい第1厚肉部と、該第1厚肉部よりも空気流通方向における下流側に位置し、空気流通方向に略直交する方向の厚さが前記基体部分よりも大きく且つ前記第1厚肉部よりも小さい第2厚肉部とが設けられている、ことを特徴としたものである。
【0011】
また、本願の第2の発明は、前記第1の発明において、前記第2厚肉部は、その厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向において、断続して複数個が設けられている、ことを特徴としたものである。
【0012】
更に、本願の第3の発明は、前記第1の発明において、前記第2厚肉部は、前記第1厚肉部の空気流通方向における直下流側に隣接して設けられた上流側第2厚肉部と、該上流側第2厚肉部よりも空気流通方向における下流側に設けられた下流側第2厚肉部とを含む、少なくとも2種類が設けられている、ことを特徴としたものである。
【0013】
また更に、本願の第4の発明は、前記第3の発明において、前記第2厚肉部の少なくとも1種類については、その厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向において、断続して複数個が設けられている、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本願の第1の発明によれば、空気流通用開口部を形成する格子部材に、その基体部分よりも空気流通方向に略直交する方向の厚さが大きい第1厚肉部が設けられ、その下流側に同厚さが前記基体部分よりも大きく且つ前記第1厚肉部よりも小さい第2厚肉部とが設けられている。従って、成形型の型割線に沿ってその直下流側に第1厚肉部による段差を設けることで、型割線に対応した成形ラインが空気流通方向における上流側から見えないようにすることができる。また、車両走行時、空気流通用開口部を通して走行風が取り込まれた際に、第1厚肉部の下流端部に形成された段差によって発生した渦流は、下流側の第2厚肉部の下流端部に形成された段差によって発生した渦流に干渉されて、少なくとも一部が打ち消されるようにすることができる。これにより、大きな風切り騒音(いわゆる笛吹き音)の発生が有効に抑制される。
しかも、この場合、風切り騒音を抑制する機構である第2厚肉部は第1厚肉部の下流側に設けられるので、従来のように、風切り騒音を抑制する機構を一対の成形型の型割線自体に設ける必要はなく、成形型の衝合部の製作および衝合動作を過度に高精度なものとする必要はなくなる。すなわち、風切り騒音を抑制する機構を設けるに際して、型製作および型の衝合動作の高精度化を特に伴うことなく、成形時にバリが発生し易くなることを有効に防止できるのである。
【0015】
また、本願の第2の発明によれば、基本的には、前記第1の発明と同様の効果を奏することができる。特に、前記第2厚肉部は、その厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向において、断続して複数個が設けられているので、第2厚肉部の厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向に沿って渦流が長く連続的に成長することを防止でき、大きな風切り騒音の発生がより効果的に抑制される。
【0016】
更に、本願の第3の発明によれば、基本的には、前記第1の発明と同様の効果を奏することができる。特に、前記第2厚肉部は、第1厚肉部の空気流通方向における直下流側に隣接して設けられた上流側第2厚肉部と、それよりも下流側に更に設けられた下流側第2厚肉部とを含む、少なくとも2種類が設けられているので、第1厚肉部の下流端部に形成された段差によって発生した渦流は、少なくとも2種類の第2厚肉部の下流端部にそれぞれ形成された各段差で発生した渦流に干渉され、大きな風切り騒音の発生がより一層有効に抑制される。
【0017】
また更に、本願の第4の発明によれば、基本的には、前記第3の発明と同様の効果を奏することができる。特に、前記第2厚肉部の少なくとも1種類については、その厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向において、断続して複数個が設けられているので、第2厚肉部の厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向に沿って渦流が長く連続的に成長することを防止でき、大きな風切り騒音の発生がより一層効果的に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るラジエータグリルの正面図である。
【図2】前記ラジエータグリルの縦断面構造を示す図で、図1のY2−Y2線に沿った縦断面図である。
【図3】前記ラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。
【図4】前記格子部材の縦断面構造を示す図で、図3のY4−Y4線に沿った縦断面図である。
【図5】前記ラジエータグリルの成形型の前記格子部材の成形部分の構造を示す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。
【図7】前記第2の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材の縦断面構造を示す図で、図6のY7−Y7線に沿った縦断面図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。
【図11】前記第5の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材の縦断面構造を示す図で、図10のY11−Y11線に沿った縦断面図である。
【図12】前記第5の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材の縦断面構造を示す図で、図10のY12−Y12線に沿った縦断面図である。
【図13】本発明の第6の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。
【図14】本発明の第7の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。
【図15】本発明の第8の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。
【図16】本発明の第9の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、自動車のラジエータグリルに適用した場合を例にとって、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
<第1の実施形態>
まず、第1の実施形態について、図1から図5を参照しながら説明する。
図1は第1の実施形態に係るラジエータグリルの正面図、図2はこのラジエータグリルの縦断面構造を示す図で、図1のY2−Y2線に沿った縦断面図である。
これらの図に示すように、本実施形態に係るラジエータグリル1は、自動車の車両外装部品として、車体前部のエンジンルーム内の前端領域に設置されたラジエータの前側を覆うようにして車体外表面に取り付けられるもので、車両走行中に走行風をラジエータ側に取り込むために多数の空気流通用開口部2を有している。
【0021】
前記ラジエータグリル1は、その外枠を形成するフレーム部材4と、それぞれ複数の縦方向(上下方向)の格子部材5及び横方向(水平方向)の格子部材10とで構成され、正面視における略中央部分には、好ましくは所謂オーナメント7が配設されている。縦横の格子部材5,10を互いに格子状に直交するように組み合わせることにより、格子部材5,10間および格子部材5,10とフレーム部材4との間に格子窓2が形成され、この格子窓2が空気流通用開口部を構成している。
本実施形態では、後述するように、ラジエータグリル1は合成樹脂を材料に用いて成形プロセスにより製作されたもので、フレーム部材4と各格子部材5,10は一体成形されている。
【0022】
図3は前記ラジエータグリル1の横方向の格子部材10を示す部分断面斜視図、図4は、前記格子部材10の縦断面構造を示す図で、図3のY4−Y4線に沿った縦断面図である。これらの図から良く分かるように、前記格子部材10は、全体としては、所定厚さの板状もしくはブレード状に形成されているが、車両走行時における走行風の流入方向(空気流通方向:図2及び図4における矢印A方向)における上流端部には、当該格子部材10の基体部分11よりも上下方向(空気流通方向に略直交する方向)の厚さが大きい第1厚肉部13が形成されている。
【0023】
この第1厚肉部13は、基体部分11よりも下方へ突き出るように形成され、その下流端部には上下方向の段差13sが形成されている。尚、前記格子部材10は、車両正面視では、基体部分11の上面側のみが視認でき、その下面側については視点を下方に落として覗き込まない限りは見えることはない。
【0024】
本実施形態では、前記第1厚肉部13よりも下流側に、より具体的には、第1厚肉部13の下流付け根部に、上下方向(空気流通方向に略直交する方向)の厚さが、基体部分11よりも大きく、且つ、前記第1厚肉部13よりも小さい、第2厚肉部15が設けられている。この第2厚肉部15も、基体部分11よりも下方へ突き出るように形成され、その下流端部には上下方向の段差15sが形成されている。これら第2厚肉部15及び第1厚肉部13は共に、格子部材10の長手方向(横方向:図3における往復矢印B参照)に連続して伸長している。
【0025】
以上のように、第1厚肉部13よりも下流側に第2厚肉部15を設けたことにより、車両走行時、空気流通用開口部2を通して走行風が取り込まれた際には、第1厚肉部13の下流端部に形成された段差13sによって発生した渦流は、下流側の第2厚肉部15の下流端部に形成された段差15sによって発生した渦流に干渉されて、少なくとも一部が打ち消される。これにより、大きな風切り騒音(いわゆる笛吹き音)の発生が有効に抑制されるのである。
【0026】
図5は、前記ラジエータグリル1の成形型の前記横方向格子部材10の成形部分の構造を示す断面図である。
前記ラジエータグリル1は、車体表面に取り付けた状態での前面側(空気流通方向における上流側)を成形する第1成形型(前型)M1と、車体表面に取り付けた状態での後面側(空気流通方向における下流側)を成形する第2成形型(後型)M2とを用いて成形される。
【0027】
この一対の成形型(第1,第2成形型)M1,M2は、空気流通方向に略沿った方向(図5における左右方向)に開閉可能に設けられており、両者M1,M2を衝合させて形成される成形キャビティMc内に、溶融状態の合成樹脂材料を充填し固化させた後、成形型M1,M2を図5における左右方向に型開きすることにより、ラジエータグリル1が成形される。ラジエータグリル1の前記第1厚肉部13による段差13sは、成形型M1,M2の型割線Lmに沿ってその直下流側に設けられている。これにより、型割線Lmに対応した成形ライン13mは、空気流通方向における上流側から(つまり、車両前方側から)正面視で見えないようになっており、ラジエータグリル1の外観性が損なわれることが防止されている。
【0028】
しかも、この場合、風切り騒音を抑制する機構である第2厚肉部15は第1厚肉部13の下流側に設けられるので、従来のように、風切り騒音を抑制する機構を一対の成形型の型割線自体に設ける必要はなく、成形型M1,M2の衝合部の製作および衝合動作を過度に高精度なものとする必要はなくなる。
すなわち、風切り騒音を抑制する機構(第2厚肉部15)を設けるに際して、型製作および型の衝合動作の高精度化を特に伴うことなく、成形時にバリが発生し易くなることを有効に防止できるのである。
【0029】
尚、基体部分11の上面および下面の傾斜,第1厚肉部13の下面の傾斜,第2厚肉部15の下面の傾斜は、何れも、成形型M1,M2の開閉動作に支障を来すことが無いように、その傾斜方向が設定されている。
【0030】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について、図6及び図7を参照しながら説明する。
図6は本発明の第2の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図、また、図7は第2の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材の縦断面構造を示す図で、図6のY7−Y7線に沿った縦断面図である。
尚、以下の説明において、第1の実施形態における場合と同様の構成を備え同様の作用をなすものについては、同一の符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0031】
図6及び図7に示すように、第2の実施形態に係る格子部材20では、基体部分21の上流端部の第1厚肉部23の下流側に設けられる第2厚肉部25は、その厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向、つまり格子部材20の長手方向(横方向:図6における往復矢印B参照)において、断続して複数個が設けられている。
【0032】
この第2の実施形態によれば、基本的には第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができ、しかも、その上、第1厚肉部23の下流側に設けられる第2厚肉部25を、格子部材10の長手方向において、断続して複数個設けるようにしたことにより、同方向に沿って渦流が長く連続的に成長することを防止でき、大きな風切り騒音の発生をより効果的に抑制することができる。
【0033】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図8は本発明の第3の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。この図に示すように、第3の実施形態に係る格子部材30では、基体部分31の上流端部の第1厚肉部33の下流側において所定間隔を置いて第2厚肉部35が設けられている。これら第2厚肉部35及び第1厚肉部33は共に、格子部材30の長手方向(横方向:図8における往復矢印B参照)に連続して伸長している。
【0034】
この第3の実施形態によれば、基本的には第1の実施形態と同様の作用効果を奏することができ、特に、第2厚肉部35の第1厚肉部33からの間隔を適宜設定することで、大きな風切り騒音の発生をより好適に抑制することが可能になる。
【0035】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
図9は本発明の第4の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。この図に示すように、第4の実施形態に係る格子部材40では、基体部分41の上流端部の第1厚肉部43の下流側に設けられる第2厚肉部45は、その厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向、つまり格子部材40の長手方向(横方向:図9における往復矢印B参照)において、断続して複数個が設けられている。
【0036】
この第4の実施形態によれば、基本的には第3の実施形態と同様の作用効果を奏することができ、しかも、その上、第1厚肉部43の下流側に設けられる第2厚肉部45を、格子部材40の長手方向において、断続して複数個設けるようにしたことにより、同方向に沿って渦流が長く連続的に成長することを防止でき、大きな風切り騒音の発生をより効果的に抑制することができる。
【0037】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について、図10から図12を参照しながら説明する。
図10は本発明の第5の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図、図11は第5の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材の縦断面構造を示す図で、図10のY11−Y11線に沿った縦断面図、また、図12は第5の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材の縦断面構造を示す図で、図10のY12−Y12線に沿った縦断面図である。
【0038】
これらの図に示されるように、第5の実施形態に係る格子部材50では、基体部分51の上流端部に設けられる第1厚肉部53は、基体部分51の上流端部を曲げ込んで下流側へ折り返すように形成されており、その折り返し部分の上面と基体部分51の上流端近傍の下面との間には、格子部材50の長手方向(横方向:図11における往復矢印B参照)に延びる溝部52が形成されている。
【0039】
つまり、第1厚肉部53は、第1から第4の実施形態におけるもののように基体部分に至るまで中実ではなく、基体部分51との間に溝部52が存在している。
また、第1厚肉部53の下流側に設けられる第2厚肉部55は、その厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向、つまり格子部材50の長手方向(横方向)において、断続して複数個が設けられている。
【0040】
この第5の実施形態によれば、基本的には第2の実施形態と同様の作用効果を奏することができ、しかも、その上、第1厚肉部53は、基体部分51に至るまで中実ではなく、基体部分51との間に溝部52が存在しており、第1厚肉部53の見掛けの厚さを十分に確保した上で、格子部材50の軽量化も図ることができる。また、より厚さの大きい第1厚肉部53を設ける場合でも、成形時に所謂「引け巣」が生じることを効果的に防止することができる。
【0041】
<第6の実施形態>
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
図13は本発明の第6の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。この図から分かるように、第6の実施形態は、前述の第1の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせたものである。
【0042】
図13に示されるように、第6の実施形態に係る格子部材60では、基体部分61の上流端部に設けられた第1厚肉部63の直下流側に連続して上流側第2厚肉部65が設けられ、更に、この上流側第2厚肉部65の下流側において所定間隔を置いて下流側第2厚肉部67が設けられている。これら下流側第2厚肉部67,上流側第2厚肉部65及び第1厚肉部63は何れも、格子部材60の長手方向(横方向:図13における往復矢印B参照)に連続して伸長している。
【0043】
この第6の実施形態によれば、基本的には第1及び第3の実施形態と同様の作用効果を奏することができ、特に、下流側第2厚肉部67の上流側第2厚肉部65からの間隔を適宜設定することで、大きな風切り騒音の発生をより好適に抑制することが可能になる。
【0044】
<第7の実施形態>
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。
図14は本発明の第7の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。この図から分かるように、第7の実施形態は、前述の第1の実施形態と第4の実施形態とを組み合わせたものである。
【0045】
図14に示されるように、第7の実施形態に係る格子部材70では、基体部分71の上流端部に設けられた第1厚肉部73の直下流側に連続して上流側第2厚肉部75が設けられ、更に、この上流側第2厚肉部75の下流側において所定間隔を置いて下流側第2厚肉部77が設けられている。
【0046】
この場合、上流側第2厚肉部75及び第1厚肉部73は何れも、格子部材70の長手方向(横方向:図14における往復矢印B参照)に連続して伸長しているが、下流側第2厚肉部77は、格子部材70の長手方向において、断続して複数個が設けられている。
【0047】
この第7の実施形態によれば、基本的には第6の実施形態と同様の作用効果を奏することができ、しかも、その上、上流側第2厚肉部75の更に下流側に設けられる下流側第2厚肉部77を、格子部材70の長手方向において、断続して複数個設けるようにしたことにより、同方向に沿って渦流が長く連続的に成長することを防止でき、大きな風切り騒音の発生をより効果的に抑制することができる。
【0048】
<第8の実施形態>
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。
図15は本発明の第8の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。この図から分かるように、第8の実施形態は、前述の第2の実施形態と第3の実施形態とを組み合わせたもの、換言すれば、第6の実施形態において、上流側第2厚肉部を不連続としたものである。
【0049】
図15に示されるように、第8の実施形態に係る格子部材80では、基体部分81の上流端部に設けられた第1厚肉部83の直下流側に隣接して上流側第2厚肉部85が設けられ、更に、この上流側第2厚肉部85の下流側において所定間隔を置いて下流側第2厚肉部87が設けられている。
【0050】
この場合、下流側第2厚肉部87及び第1厚肉部83は何れも、格子部材80の長手方向(横方向:図15における往復矢印B参照)に連続して伸長しているが、上流側第2厚肉部85は、格子部材80の長手方向において、断続して複数個が設けられている。
【0051】
この第8の実施形態によれば、基本的には第6の実施形態と同様の作用効果を奏することができ、しかも、その上、上流側第2厚肉部85を、格子部材80の長手方向において、断続して複数個設けるようにしたことにより、同方向に沿って渦流が長く連続的に成長することを防止でき、大きな風切り騒音の発生をより効果的に抑制することができる。
【0052】
<第9の実施形態>
次に、本発明の第9の実施形態について説明する。
図16は本発明の第9の実施形態に係るラジエータグリルの格子部材を示す部分断面斜視図である。この図から分かるように、第9の実施形態は、前述の第2の実施形態と第4の実施形態とを組み合わせたもの、換言すれば、第7の実施形態において、上流側第2厚肉部に加えて更に下流側第2厚肉部も不連続としたものである。
【0053】
図16に示されるように、第9の実施形態に係る格子部材90では、基体部分91の上流端部に設けられた第1厚肉部93の直下流側に隣接して上流側第2厚肉部95が設けられ、更に、この上流側第2厚肉部95の下流側において所定間隔を置いて下流側第2厚肉部97が設けられている。
【0054】
この場合、第1厚肉部93は格子部材90の長手方向(横方向:図16における往復矢印B参照)に連続して伸長しているが、上流側第2厚肉部95及び下流側第2厚肉部97は共に、格子部材90の長手方向において、断続して複数個が設けられている。
【0055】
この第9の実施形態によれば、基本的には第8の実施形態と同様の作用効果を奏することができ、しかも、その上、下流側第2厚肉部97も、格子部材80の長手方向において、断続して複数個設けるようにしたことにより、同方向に沿って渦流が長く連続的に成長することを防止でき、大きな風切り騒音の発生をより効果的に抑制することができる。
【0056】
尚、上記第6から第9の実施形態においては、第2厚肉部としては、第1厚肉部の空気流通方向における直下流側に隣接して設けられた上流側第2厚肉部と、該上流側第2厚肉部よりも空気流通方向における下流側に設けられた下流側第2厚肉部の2種類が設けられていたが、これに加えて更に他の種類の第2厚肉部を設けるようにしてもよい。
【0057】
また、以上の実施形態(第1から第9の実施形態)において、第2厚肉部は、その厚さ,長さ,幅をランダムに変えることによっても、同様の効果が得られるようにすることができる。
【0058】
更に、以上の実施形態は何れも、ラジエータグリルの横方向(水平方向)の格子部材を例にとったものであったが、本発明は、縦方向(上下方向)の格子部材についても適用できるものである。すなわち、縦方向(上下方向)の格子部材5に設けた第1厚肉部の下流側の側面において、当該第1厚肉部の段差よりも所定距離下流側に第2厚肉部を設ければよい。この第2厚肉部は、第1から第9の実施形態における場合と同様の構成のものを設けることができ、効果も同様に得ることができる。
【0059】
尚、本発明は、ラジエータグリルに限らず、車体外表面に取り付けられるものであれば、他の種々の空気流通用グリルの構造として有効に適用し得るものである。
このように、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更や設計上の改良等を行い得るものであることは、言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、車体外表面に取り付けられる車両の外装部品に設けられた空気流通用グリルの構造に関し、例えば、自動車の車体前部のエンジンルーム内の前端領域に設置されるラジエータの前側を覆うラジエータグリルの構造として、有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 ラジエータグリル
2 空気流通用開口部
10,20,30,40,50,60,70,80,90 格子部材
11,21,31,41,51,61,71,81,91 基体部分
13,23,33,43,53,63,73,83,93 第1厚肉部
15,25,35,45,55 第2厚肉部
65,75,85,95 上流側第2厚肉部
67,77,87,97 下流側第2厚肉部
M1,M2 成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体外表面に取り付けられる車両の外装部品に設けられた空気流通用グリルの構造であって、
前記グリルは、空気流通方向に略沿った方向に開閉可能に設けられた一対の成形型を用いて成形されるものであり、
空気流通用開口部を形成する格子部材に、該格子部材の基体部分よりも空気流通方向に略直交する方向の厚さが大きい第1厚肉部と、該第1厚肉部よりも空気流通方向における下流側に位置し、空気流通方向に略直交する方向の厚さが前記基体部分よりも大きく且つ前記第1厚肉部よりも小さい第2厚肉部とが設けられている、ことを特徴とする車両のグリル構造。
【請求項2】
前記第2厚肉部は、その厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向において、断続して複数個が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両のグリル構造。
【請求項3】
前記第2厚肉部は、前記第1厚肉部の空気流通方向における直下流側に隣接して設けられた上流側第2厚肉部と、該上流側第2厚肉部よりも空気流通方向における下流側に設けられた下流側第2厚肉部とを含む、少なくとも2種類が設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の車両のグリル構造。
【請求項4】
前記第2厚肉部の少なくとも1種類については、その厚さ方向および空気流通方向の両方向に略直交する方向において、断続して複数個が設けられている、ことを特徴とする請求項3に記載の車両のグリル構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−173534(P2010−173534A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19751(P2009−19751)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)