説明

車両のサイドドア構造

【課題】衝突時、サイドドア外部から側突荷重が入力したとき、アームレスト別体部から乗員へ伝達される衝撃荷重低減と撃吸収部材による乗員保護とを両立可能な車両のサイドドア構造。
【解決手段】ドアトリム7と一体的に形成されたアームレスト本体部と、このアームレスト本体部の後端に連なるようにアームレスト本体部に対して別体に形成されたアームレスト別体部32とを有し、アームレスト別体部32の下方位置にフロントサイドドア4に入力した側突荷重を吸収可能なトリム側衝撃吸収部材26と、トリム側衝撃吸収部材26より上方且つアームレスト30の車幅方向外側側方に対応する位置に外部から入力した衝撃をアームレスト30に伝達する衝撃伝達部材10とを設け、フロントサイドドア4に外部から側突荷重が入力したとき、衝撃伝達部材10がアームレスト別体部32を押動して、アームレスト別体部32とドアトリム7との連結のみを解除可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドドアの車室内側に設けられたドアトリムから車室内側へ膨出して形成されたアームレストと側突荷重を吸収可能な衝撃吸収部材とを備えた車両のサイドドア構造に関し、特にアームレスト本体部の後端に連なるアームレスト別体部と前記ドアトリムとの連結のみを解除可能に構成した車両のサイドドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のアームレストは、シート装置に着座した乗員が腕部や肘部を載置するため、ドアインナパネルの車室内側に設けられたドアトリムから車室内側へ膨出して形成され、乗員の腕部から入力される荷重に耐え得る剛性を備えている。このようなアームレストの設置高さは、着座した乗員の胸部下部付近に相当する。それ故、アームレストの内部空間に側面衝突時の荷重により破断又は屈曲変形するリブ等を設け、側突時、乗員が受けるアームレストからの衝撃を低減している。
【0003】
前記のようなリブ等を備えたアームレストでは、アームレストが乗員に接触した結果、リブ等が破断又は屈曲変形して、乗員の受ける衝撃を低減している。しかし、着座した乗員の胸部下部に近接したアームレストの後端側部分は、デザイン上の観点から、ドアトリム側へ滑らかに収束するように緩湾曲形状に形成されるため、その内部空間が小さくなり前記のような衝撃吸収用のリブ等を配置することが難しい。それ故、アームレストの後端側部分は、リブ等が配置された中央側部分に比べて剛性が増している。そこで、乗員とアームレストとの干渉を回避するため、側突時、側突荷重が車室内側へ作用したタイミングでアームレストを乗員の近傍から退避させることも行われている。
【0004】
特許文献1に記載されたドアトリム構造は、乗員に車幅方向で対向するアームレストの後半部分とこのアームレストの後半部分の下方に位置するドアトリム部分とによりドアトリム本体から分離可能なアームレスト分離部を設け、このアームレスト分離部の上部を車幅方向に変形可能なブラケットによりドア本体部と連結し、アームレスト分離部の下部を下部取付部によってドア本体部に対して回動可能に取付けている。前記ブラケットは、ドアインナパネルにピンを用いて固定される立上部と、この立上部下端の折り返し部において上方に折り返されたブラケット本体部と、ブラケット本体部上端部においてアームレスト分離部の上部と接合された屈曲部とを備えている。
【0005】
このドアトリム構造では、ドアアウタパネルとドアインナパネルとの間にドアインナパネルを貫通する乗員の腰部等を保護するための緩衝部材を設け、この緩衝部材がアームレスト分離部のアームレストよりも下方の車室外側部分に当接している。これにより、外部から側突荷重が入力したとき、緩衝部材がアームレスト分離部の車室外側部分を車室内側へ押動するため、ブラケット本体部が折り返し部を中心に車室内側へ回動し、アームレスト分離部が下部取付部を中心として車室内側へ回動し、その結果、アームレスト分離部におけるアームレストの後半部分が下方位置に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−100581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1のドアトリム構造では、側突荷重が車室内側方向へ作用したタイミングでアームレスト分離部を下方へ移動し、アームレスト分離部から乗員に伝達される衝撃を低減することができる。しかし、アームレスト分離部が下方に移動するため、アームレスト分離部に設置された緩衝部材が当初の設置位置、所謂腰部等の衝撃吸収部位に対応する位置から下方へ移動し、乗員の衝撃吸収部位を保護するための衝撃吸収効果を十分に得ることができない虞が有る。
【0008】
アームレスト分離部の下方への移動量を考慮して、緩衝部材を設置することも考えられるが、側突毎に側突荷重や側突方向が異なり、ブラケットの変形量、つまり緩衝部材の下方移動量を予め予測することが困難である。また、ドアトリムに対して緩衝部材を広範囲に設置する場合、製作費のコストアップや車室空間の減少等の新たな問題を生じる。
【0009】
本発明の目的は、側突時、サイドドアに外部から側突荷重が入力したとき、アームレスト別体部から乗員へ伝達される衝撃荷重低減と衝撃吸収部材による乗員保護とを両立可能な車両のサイドドア構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の車両のサイドドア構造は、サイドドアの車室内側に設けられたドアトリムと、このドアトリムに車室内側へ膨出状に設けられ乗員の腕部を載置するアームレストとを備えた車両のサイドドア構造において、前記アームレストの下方位置に前記サイドドアに入力した側突荷重を吸収可能なアームレスト下方用衝撃吸収部材が設けられ、前記アームレスト下方用衝撃吸収部材より上方且つ前記アームレストの車幅方向外側側方に対応する位置に前記サイドドアの外部から入力した衝撃を前記アームレストに伝達する衝撃伝達部材が設けられ、前記サイドドアに外部から側突荷重が入力したとき、前記衝撃伝達部材が前記アームレストを押動して、前記アームレストの少なくとも一部と前記ドアトリムとの連結のみを解除可能に設けられたことを特徴としている。
【0011】
この車両のサイドドア構造では、アームレストの下方に側突荷重を吸収可能なアームレスト下方用衝撃吸収部材を設け、アームレストの車幅方向外側側方に対応する位置に衝撃伝達部材が設けられているため、サイドドアに外部から側突荷重が入力したとき、アームレスト下方用衝撃吸収部材を機能させつつ、少なくともアームレストの一部のドアトリムとの連結を解除することができる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記衝撃伝達部材の車幅方向内側端部に前記サイドドアの外部から入力した衝撃を吸収可能なアームレスト用衝撃吸収部材を設けたことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記衝撃伝達部材は車幅方向に突出する凸状に構成されたことを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記サイドドアのアウタパネルとインナパネルとの間に昇降可能なドアガラスを設け、前記衝撃伝達部材は、前記ドアガラスより車幅方向内方且つ前記アームレストの側方に対応する位置に車幅方向外側へ突出する第1凸設部と、この第1凸設部から車幅方向内側へ突出する第2凸設部と、前記前記ドアガラスより車幅方向外方且つ前記第1凸設部の側方に対応する位置に車幅方向内側へ突出する第3凸設部を備えたことを特徴としている。
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記サイドドアのインナパネルに前記第1凸設部と第2凸設部を形成し、前記サイドドアのアウタパネルに前記第3凸設部を設けたことを特徴としている。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1〜5の何れか1つの発明において、前記アームレストは、前記シート装置に着座した乗員と車幅方向で対向する領域を前記ドアトリムとは別体のアームレスト別体部で形成されたことを特徴としている。
請求項7の発明は、請求項6の何れか1つの発明において、前記アームレスト別体部の下端部とこの下端部と対向し且つアームレスト別体部を取付けるためのドアトリム側取付部とに係合機構を設け、前記係合機構は、前記アームレスト別体部の下端部と前記ドアトリム側取付部の一方から他方側へ突出する突起部と、前記アームレスト別体部の下端部と前記ドアトリム側取付部の他方に形成され前記突起部と嵌合し且つ前記アームレスト別体部の押動により嵌合解除可能な嵌合部と、前記嵌合部端部に連なると共に車室内側程車両前方と後方の少なくとも一方へ傾斜する案内部を備えたことを特徴としている。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1〜7の何れか1つの発明において、前記シート装置は前記ドアトリムから所定距離離隔して配置され、前記アームレスト別体部の車幅方向長さは前記シート装置とドアトリムとの離隔距離より小さく形成されたことを特徴としている。
請求項9の発明は、請求項6〜8の何れか1つの発明において、前記シート装置のシートバックには、前記サイドドアに前記側突荷重が入力したとき、前記サイドドアと前記シート装置との間に展開可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置を有し、前記アームレスト別体部を車室内側程前記エアバッグの展開方向に移動するように構成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、サイドドアに外部から側突荷重が入力したとき、衝撃伝達部材がアームレストを押動して、少なくともアームレストの一部とドアトリムとの連結のみを解除可能に構成したため、コストアップや車室空間の減少等を生じることなく、アームレストの一部とドアトリムとの連結のみを解除することができる。つまり、側突荷重を利用してアームレストとドアトリムとの連結を解除するため、外部から入力する側突荷重の伝達をアームレストとドアトリムとの連結部分で低減でき、アームレストから乗員に伝達される衝撃荷重を低減することができる。しかも、乗員に伝達される衝撃荷重を低減する一方、アームレストとドアトリムとの連結のみを解除するため、アームレスト下方用衝撃吸収部材はアームレストの連結解除に伴う移動を生じることなく乗員の衝撃吸収部位、例えば腰部等に対する衝撃吸収を効果的に行うことができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、アームレストと衝撃伝達部材との間にアームレスト用衝撃吸収部材を設けることができ、アームレストから乗員に伝達される衝撃荷重を一層低減することができる。
請求項3の発明によれば、側突荷重をアームレストへ迅速に伝達でき、衝撃伝達部材によるアームレストの車幅方向内側への押動をサイドドアの車室内側への進入時期に対して早期に開始することができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、各凸設部の間の空走距離を短くすることができ、アウタパネルに入力した側突荷重をアームレストへ短時間で伝達でき、アームレストの連結を迅速に解除することができる。
請求項5の発明によれば、ドアガラスの昇降動作に影響を与えることなく、衝撃伝達部材を形成することができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、アームレスト別体部から乗員に伝達される衝撃荷重を確実に低減することができる。
請求項7の発明によれば、突起部と嵌合部によりアームレスト別体部をトリム側取付部に取付けるため、アームレスト別体部とドアトリムとの連結のみを解除でき、乗員の腕部を載置し且つ腕部から入力される荷重を支持することができる。しかも、案内部は、アームレスト別体部を車室内側程車両前方と後方の少なくとも一方へ案内できるため、側突荷重が入力したとき、アームレスト別体部が乗員との接触を回避することができる。
【0020】
請求項8の発明によれば、シートクッションとサイドドアとの間にアームレスト別体部を案内することができ、連結解除後、アームレスト別体部と乗員との接触を防止することができる。
請求項9の発明によれば、アームレスト別体部をエアバッグの車両前方への展開力を利用して移動することができ、アームレスト別体部の車両前方への移動をサイドドアの侵入量が少なく、側突荷重によるアームレスト別体部の前後方向の移動量が得られない場合でも、アームレスト別体部を大きく移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のフロントサイドドアを車室内側から見た側面図である。
【図2】図1のフロントサイドドアのII−II線断面図である。
【図3】図1のフロントサイドドアのIII−III線断面図である。
【図4】ドアインナパネルを除去した状態で示すサイドドアの側面図である。
【図5】ドアトリムの斜視図である。
【図6】アームレスト別体部を除去した状態で示すドアトリムの斜視図である。
【図7】アームレスト別体部及びドアトリム側取付部の分解斜視図である。
【図8】アームレスト別体部及びドアトリム側取付部の要部拡大断面図である。
【図9】アームレスト別体部の挙動を説明する説明図である。
【図10】サイドエアバッグ装置が作動する前の図2相当図である。
【図11】サイドエアバッグ装置が作動したときの図1相当図である。
【図12】サイドエアバッグ装置が作動したときの図3相当図である。
【図13】第2実施例に係る図7相当図である。
【図14】第2実施例に係る図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について実施例に基づいて説明する。尚、以下の実施例において、車両の前後方向を前後方向として説明する。
【実施例1】
【0023】
本発明の実施例について図1〜図12に基づいて説明する。
車両1には、車室2内部に乗員が着座可能なシート装置3と、このシート装置3の車幅方向外側のフロントサイドドア4とリヤサイドドア(図示略)等が設けられている。フロントサイドドア4とリヤサイドドアの前端部には、夫々ヒンジ部(図示略)が設けられ車体に対してフロントサイドドア4とリヤサイドドアを開閉可能に枢着している。フロントサイドドア4とリヤサイドドアとは略同様の構成であるため、以下、フロントサイドドア4について説明する。
【0024】
フロントサイドドア4は、車幅方向外側のアウタパネル5と、アウタパネル5より車室内側のインナパネル6と、フロントサイドドア4の外部から入力した衝撃を後述するアームレスト30に伝達する衝撃伝達部材10と、インナパネル6の車室内側を覆うドアトリム7と、ドアガラス8用開口部の上側外縁を形成するドアサッシュ9と、フロントサイドドア4に入力した側突荷重を吸収可能なトリム側衝撃吸収部材26(アームレスト下方用衝撃吸収部材)と、ドアガラス8の昇降移動をガイドする前後1対のガラスガイド35等を備えている。
【0025】
鋼板製のアウタパネル5とインナパネル6は、両パネル5,6の間に内部空間を形成するように互いの側縁部分及び下縁部分を溶接等で接合し、上縁部分にはドアガラス8を昇降させるためのスリット状の開口部を設けている。衝撃伝達部材10は、両パネル5,6の間の内部空間においてトリム側衝撃吸収部材26より上方且つアームレスト30の車幅方向外側側方に対応する位置に設けられている。衝撃伝達部材10は、車幅方向に突出する凸状に構成され、両パネル5,6に各々設けられる複数の第1〜第3凸設部11〜13等を備えている。
【0026】
アウタパネル5は、車幅方向外側にフロントサイドドア4の開閉操作を行うドアアウタハンドル(図示略)と、ドアガラス8より車幅方向外方位置に車幅方向内側に突出する凸状の第3凸設部13等を備えている。第3凸設部13は、アウタパネル5の上下方向中段部で且つ後側部分の位置、つまり、後述するアームレスト別体部32の車幅方向外側側方に対応する位置に設置されている。
【0027】
図2,図3に示すように、鋼板製の第3凸設部13は、車幅方向内側へ突出形成され車幅方向に垂直な平面部13aと、平面部13aの外縁部に形成されたフランジ部13bを備えた断面略ハット状に構成されている。第3凸設部13は、フランジ部13bをアウタパネル5の車幅方向内側面に対して合成樹脂等を用いて固着される。
【0028】
図2〜図4に示すように、インナパネル6は、ドアガラス8より車幅方向内方且つアームレスト別体部32の車幅方向外側側方に対応する位置に車幅方向外側へ突出する凸状の第1凸設部11と、この第1凸設部11の車幅方向内側面から車室2側へ突出する凸状の第2凸設部12と、インナパネル6の上下方向中段部において前後方向に延びる上側インパクトバー14と、インパクトバー14の下方において前後方向に延びる下側インパクトバー15と、ドアモジュール16等を備えている。
【0029】
第1凸設部11は、アームレスト別体部32と第3凸設部13との間にインナパネル6と一体的に形成され、平面部13aと対向するように車幅方向外側へ突出し且つ車幅方向に垂直な平面部11aと、平面部11aの外周に連続した傾斜部11bを備えた断面略台形状に構成されている。平面部11aと平面部13aとは所定距離離隔しており、ドアガラス8を下降させたとき、ドアガラス8は平面部11aと平面部13aとの間を通過してフロントサイドドア4の内部空間に収容される。
【0030】
鋼板製の第2凸設部12は、アームレスト別体部32と第1凸設部11との間に形成され、車室2内側へ突出形成され車幅方向に垂直な平面部12aと、平面部12aの外縁部に形成されたフランジ部12bを備えた断面略ハット状に構成されている。第2凸設部12は、フランジ部12bを平面部11aの車幅方向内側面に溶接等で接合することにより第1凸設部11に固着される。
【0031】
第2凸設部12の平面部12aの車幅方向内側面、つまり衝撃伝達部材10の車幅方向内側端部には、側突時にアームレスト別体部32を車室内側へ押動すると共にフロントサイドドア4の外部から入力した衝撃を吸収可能な合成樹脂発泡体製の第2ドア側衝撃吸収部材29(アームレスト用衝撃吸収部材)が設けられている。第2ドア側衝撃吸収部材29は、アームレスト別体部32の車幅方向外側側方に配置されている。これにより、アームレスト別体部32が移動したとき、乗員と第2凸設部12との直接的な接触を防止し、乗員と対向する広い範囲で乗員への衝撃緩和を図ることができる。
【0032】
車両1に他の車両が側突してアウタパネル5が車幅内方へ侵入したとき、衝撃伝達部材10は、第3凸設部13の平面部13aがドアガラス8を介して対向する第1凸設部11の平面部11aと接触する。平面部13aと平面部11aとの接触後、第1凸設部11の移動変形に伴って、第2凸設部12が車幅内側に向かって移動する。それ故、両パネル5,6間における各々の凸設部11〜13の空走距離を短くすることができ、アウタパネル5に入力した側突荷重を第2凸設部12に迅速に伝達することができる。
【0033】
上側インパクトバー14は、断面略ハット状に形成され、アウタパネル5の内側近傍位置においてフロントサイドドア4の前後幅の略全幅に亙って後方程低くなる後方下がり傾斜状に配置されている。上側インパクトバー14の前端部はインナパネル6の中段部にブラケット14aを介して固着され、上側インパクトバー14の後端部はラッチ部(図示略)よりも下方位置にブラケット14bを介して固着される。
【0034】
上側インパクトバー14の後側部分には、側突時に乗員に対する衝撃を緩和するための合成樹脂発泡体製のドア側衝撃吸収部材21が設けられている。ドア側衝撃吸収部材21は、上側インパクトバー14の下方且つシート装置3に着座した乗員の腰部に対応する位置にブラケット(図示略)を介して配置されている。
【0035】
下側インパクトバー15は、断面略ハット状に形成され、アウタパネル5の内側近傍且つ上側インパクトバー14よりも車幅方向内側位置においてフロントサイドドア4の前後幅の略全幅に亙って後方程低くなる後方下がり傾斜状に配置されている。下側インパクトバー15の前端部はブラケット14aよりも下方においてインナパネル6にブラケット15aを介して固着され、上側インパクトバー14の後端部はブラケット14bよりも下方においてインナパネル6にブラケット15bを介して固着される。
【0036】
図4に示すように、ドアモジュール16には、ドアガラス8を昇降移動可能なウインドレギュレータ17と、複数のコネクタを有するハーネス(図示略)と、スピーカ(図示略)等が設けられている。ウインドレギュレータ17は、ドアガラス8の昇降移動をガイドするレギュレータ18と、ドアガラス8を支持するキャリアプレート19と、キャリアプレート19を昇降駆動するモータ20等により構成されている。
【0037】
次に、ドアトリム7について説明する。
図1〜図3,図5〜図9に示すように、合成樹脂製のドアトリム7は、ドアトリム7の上下方向中段部に前後方向に延びるアームレスト30と、アームレスト30の前側下方に配置され且つスピーカを収容可能なスピーカグリル23と、アームレスト30の途中部下方に配置されたドアポケット部24と、トリム側衝撃吸収部材26を収容する衝撃吸収部材収容部25と、アームレスト30の後端側部分下方且つ衝撃吸収部材収容部25の上方位置に設けられたドアトリム側取付部22と、アームレスト別体部32をドアトリム側取付部22とを連結し且つアームレスト別体部32をドアトリム側取付部22との連結のみを解除可能な係合機構40等を備えている。ドアトリム7の外縁部の複数個所は、クリップ等の取付部材(図示略)によりインナパネル6に固定されている。尚、ドアトリム7は、繊維強化プラスチックを用いて形成してもよく、その表面に表皮材として布や革等を用いても良い。
【0038】
アームレスト30は、ドアトリム7から車室内側へ膨出状に形成されたアームレスト本体部31と、このアームレスト本体部31の後端に連なるようにアームレスト本体部31に対して別体に形成され且つシート装置3に着座した乗員と車幅方向で対向するアームレスト別体部32を備えている。アームレスト別体部32は、ドアトリム側取付部22に係合機構40によって取付けられている。
【0039】
ドアトリム側取付部22は、2つの傾斜部を備え、車幅方向外側端部よりも車幅方向内側端部が下方に位置する傾斜状に構成されている。ドアトリム側取付部22は、ドアトリム7から車幅内側へ略水平状に延びる水平部22aと、水平部22aの車幅内側端部から車幅内側下方に傾斜状に延びる傾斜部22bと、傾斜部22bの車幅内側端部から車幅内側へ略水平状に延びる水平部22cと、水平部22cの車幅内側端部から衝撃吸収部材収容部25の上部まで車幅内側へ下方に傾斜状に延びる傾斜部22d等を備えている。
【0040】
アームレスト本体部31は、ドアトリム7の上下方向中段部に前後方向に延びるように形成され、ドアトリム7と一体的に形成されている。アームレスト本体部31は、ドアトリム7から車室内方へ延びて乗員の腕部を載置する略水平な上面部31aと、上面部31aの車室内側先端から下方に延びる側面部31bと、側面部31bの下端からドアトリム7に繋がる下面部31cと、後端部31dを備えている。アームレスト本体部31の内部空間には、所定荷重以上の入力により破断又は屈曲変形可能なリブ(図示略)が形成され、側突時、乗員に対する衝撃を低減するように構成されている。
【0041】
上面部31aは、前方程車幅方向の幅が狭くなるように形成されている。上面部31aの前後方向途中部には、ドアミラースイッチやパワーウインドウスイッチ等が設置されるスイッチ部27と、スイッチ部27の後方に隣接するリセス部28等を備えている。側面部31bの前端側部分は、車室外側に湾曲してドアトリム7に繋がるように形成されている。後端部31dは、車室内側程車両前方に移行する傾斜状に構成されている。
【0042】
アームレスト別体部32は、車幅方向長さがシート装置3とドアトリム7との離隔距離より小さく形成され、ドアトリム7側から車室内側に延びて乗員の腕部を載置する略水平な上面部32aと、上面部32aの車室内側先端から下方へ延びる側面部32bと、上面部32aの車室外側先端から下方へ延びる側面部32cと、前端部32dと、後端部32eと、側面部32bの下端と側面部32cの下端との間に形成された下端部33を備えている。
【0043】
上面部32aは、後方程車幅方向の幅が狭くなるように形成されている。側面部32bと側面部32cの後端側部分は、湾曲して後端部32eに繋がるように形成されている。前端部32dは、車室内側程車両前方に移行する傾斜状に構成されている。それ故、アームレスト別体部32の前端部32dは、外部から側突荷重が入力したとき、アームレスト本体部31の後端部31dに摺動しながら車室内側へ移行し、この車室内側への移行と同期して車両前方へ移動することができる。尚、アームレスト本体部31の前端部32dは、後端部31dに面接触するように構成されているが、線接触や点接触でも良く、当接形態は任意に選択可能である。
【0044】
下端部33は、2つの段部を介して車室内側程下方へ移行する傾斜状に構成されている。下端部33は、側面部32cの下端から車幅内側へ略水平状に延びる水平部33aと、水平部33aの車幅内側端部から車幅内側下方へ傾斜状に延びる傾斜部33bと、傾斜部33bの車幅内側端部から車幅内側へ略水平状に延びる水平部33cと、水平部33cの車幅内側端部から側面部32bの下端まで車幅内側下方へ傾斜状に延びる傾斜部33d等を備えている。
【0045】
以上により、ドアトリム側取付部22の水平部22aと水平部22cはアームレスト別体部32の水平部33aと水平部33cと面接触し、ドアトリム側取付部22の傾斜部22bと傾斜部22dはアームレスト別体部32の傾斜部33bと傾斜部33dと面接触している。それ故、アームレスト別体部32を介して乗員の腕部から入力された荷重を水平部22aと水平部22cにより支持することができる。
【0046】
次に、係合機構40について説明する。
図7,図8に示すように、係合機構40は、アームレスト別体部32の下端部33と、この下端部33と対向するドアトリム側取付部22との間に亙って設けられ、ドアトリム側取付部22から上方へ突出する前後1対の突起部41と、アームレスト別体部32の下端部33に形成され前記1対の突起部41と嵌合可能な前後1対の嵌合部42と、これら嵌合部42の車室外側端部に連なり車室内側程車両前方と後方の両方向へ傾斜する案内部43等を備えている。
【0047】
1対の突起部41は、夫々略円柱状に構成され、ドアトリム側取付部22の傾斜部22dに前後方向に隣接して固着されている。
1対の嵌合部42は、アームレスト別体部32の内部に夫々の突起部41が嵌合可能な略筒状に構成され、アームレスト別体部32の傾斜部33dに1対の突起部41に対応するよう前後方向に隣接して設けられている。嵌合部42の車幅外側端部は、傾斜部33dの車幅外側端部近傍に配置され、嵌合部42の車幅外側部分の一部を切欠いた切欠部42aを形成している。この切欠部42aの前後方向の離隔長さは突起部41の直径よりも小さく形成され、切欠部42aは突起部41と嵌合部42との車幅方向の相対移動を規制するよう構成されている。また、アームレスト別体部32が所定以上の車幅内側への荷重を受けたとき、嵌合部42が突起部41に対して車室内側へ押されるため、切欠部42aが破断又は屈曲変形する。これにより、突起部41と嵌合部42との嵌合状態が解除(連結解除)され、アームレスト別体部32による車幅内側への移動が許容される。本実施例において、連結解除状態の定義は、完全に分離移動された状態に限られず、少なくとも、直接的な衝撃荷重の伝達が阻害される状態(位置決め固定が解除された状態)としている。
【0048】
案内部43は、切欠部42aの後端部に連なり車幅内側程前方へ傾斜する第1案内部43aと、切欠部42aの前端部に連なり車幅内側程後方へ傾斜する第2案内部43bを備えている。第1案内部43aと第2案内部43bとは、夫々切欠部42aの前後端部から側面部32cに亙って形成されている。第1案内部43aと第2案内部43bとの車両前後方向の幅は車室外側程大きいため、案内部43は、平面視で見て、略台形状に形成されている。それ故、斜め後方から側突荷重が入力したとき、突起部41と嵌合部42との係合が解除された後、第1案内部43aが突起部41に対してアームレスト別体部32を車室内側へ移行する程前方へ案内でき、斜め前方から側突荷重が入力したとき、突起部41と嵌合部42との係合が解除された後、第2案内部43bが突起部41に対してアームレスト別体部32を車室内側へ移行する程後方へ案内でき、何れの方向から側突荷重が入力しても前後方向に向けてスムーズにアームレスト別体部32を案内することができる。
【0049】
合成樹脂発泡体製のトリム側衝撃吸収部材26は、ドア側衝撃吸収部材21とインナパネル6を介して車幅方向内側側方に配置され、アームレスト別体部32の下方位置に配置されている。ドア側衝撃吸収部材21とトリム側衝撃吸収部材26との距離は、第1凸設部11の平面部11aと第3凸設部13の平面部13aとの離隔距離よりも大きく設定されている。側突時、ドア側衝撃吸収部材21がトリム側衝撃吸収部材26へ向けて移動して接触することにより、衝撃吸収部位、例えば乗員の腰部等に伝達される側突荷重をドア側衝撃吸収部材21とトリム側衝撃吸収部材26とが協働して吸収することができる。
【0050】
衝撃吸収部材収容部25は、アームレスト別体部32の下方においてアームレスト別体部32の車幅方向車室内側端部と略同一位置まで車室内側へ膨出するようドアトリム7と一体的に形成されている。衝撃吸収部材収容部25の上側部分はドアトリム側取付部22によって形成され、衝撃吸収部材収容部25の前側部分はドアポケット部24の後側部分と一体的に形成されている。
【0051】
次に、側突時におけるアームレスト別体部32の挙動について説明する。
車両1に他の車両が側突してアウタパネル5が車幅内方へ侵入したとき、衝撃伝達部材10の第3凸設部13が車幅方向内側へ移動し、第1凸設部11と接触する。第2凸設部12は、第1凸設部11の車幅方向内側への移動に同期して車幅方向内側への移動を開始する。図9に示すように、第2凸設部12の車幅内方への移動が進行した場合、第2凸設部12の平面部12aの車幅方向内側面に設置された第2ドア側衝撃吸収部材29がドアトリム7を介してアームレスト別体部32の側面部32cに接触し、アームレスト別体部32を車室内側へ押動する。衝撃伝達部材10から第2ドア側衝撃吸収部材29を介してアームレスト別体部32に伝達された側突荷重は、突起部41を介して嵌合部42の切欠部42aに作用し、所定以上の車幅内側への側突荷重の場合、突起部41が切欠部42aを破断又は屈曲変形し、アームレスト別体部32とドアトリム側取付部22との連結(係合)のみを解除する。
【0052】
これにより、衝撃伝達部材10まで伝達された側突荷重は、アームレスト別体部32とドアトリム側取付部22との連結解除により、側突荷重がアームレスト別体部32とドアトリム側取付部22との間の係合機構40(連結部分)で低減されて伝達されるため、アームレスト別体部32が乗員に接触しても、アームレスト別体部32から乗員に伝達される衝撃荷重をアウタドア6から衝撃伝達部材10まで伝達された側突荷重に比べて低減することができる。しかも、乗員に伝達される衝撃荷重を低減する一方、アームレスト別体部32とドアトリム7との連結のみを解除するため、トリム側衝撃吸収部材26はアームレスト別体部32の連結解除に伴う移動を生じることなく乗員の衝撃吸収部位である腰部等に対する衝撃吸収を効果的に行うことができる。
【0053】
所定以上の車幅内側への側突荷重の場合、第2ドア側衝撃吸収部材29からアームレスト別体部32に伝達された側突荷重は、突起部41を介して嵌合部42の切欠部42aに作用し、突起部41が切欠部42aを破断又は屈曲変形し、アームレスト別体部32を車室内側へ押動する。このとき、斜め後方から側突荷重が入力した場合、第1案内部43aが突起部41に対してアームレスト別体部32を前方に案内すると共にアームレスト本体部31の後端部31dがアームレスト別体部32の前端部32dを前方に案内するため、アームレスト別体部32が車室内側へ移動する程、アームレスト別体部32は前方へ移動する。また、斜め前方から側突荷重が入力した場合、第2案内部43bが突起部41に対してアームレスト別体部32を後方に案内するため、アームレスト別体部32が車室内側へ移動する程、アームレスト別体部32は後方へ移動する。これにより、乗員とアームレスト別体部32との接触を回避することができる。
【0054】
次に、シート装置3について説明する。
図1〜図3に示すように、シート装置3は、ドアトリム7の車室内側に所定距離離隔して配置されている。ドアトリム7とシート装置3との間隔は、アームレスト別体部32の車幅方向長さ(幅)よりも大きく設定され、側突時、アームレスト別体部32がドアトリム側取付部22から分離したとき、ドアトリム7とシート装置3との間に案内可能に構成されている。
【0055】
シート装置3は、車両1に対して前後方向にスライド可能なシートクッション51と、シートバックフレーム(図示略)とパッド材(図示略)を収容したシートバック52と、シートバック52の車室外側の上方位置に配置されたサイドエアバッグ装置60と、ヘッドレスト等を有している。尚、シートバック52の車室外側の上下方向中段部上方のパッド材には、サイドエアバッグ装置60が作動できるように部分的に破断可能な脆弱部が形成されている。
【0056】
サイドエアバッグ装置60は、車室外側、例えばシートバック52の右側中段部上方のシートバックフレームに固定され、インフレータ61と、ロール状に折り畳まれたサイドエアバッグ62等から構成されている。インフレータ61は、例えば上下に長い筒状ケースにガス発生剤を収容し、側突時、側突検出センサ(図示略)から出力される駆動電流により、ガス発生剤が反応を起こしてサイドエアバッグ62の展開用のガスを瞬時に発生させる構造である。
【0057】
サイドエアバッグ62は、側突時、フロントサイドドア4のドアトリム7とシート装置3との間に展開可能に構成されている。サイドエアバッグ62は、乗員の胸部や腹部に対応する位置において展開する上部バッグ部62aと、乗員の腰部に対応する位置において展開する下部バッグ62bを備える。サイドエアバッグ62の展開時、上部バッグ部62aは、アームレスト別体部32の後端部32eに当接し、アームレスト別体部32を押動するように展開量、展開タイミング及び展開方向が設定されている。
【0058】
次に、側突時におけるサイドエアバッグ装置60の作動について説明する。
図10〜図12に示すように、このサイドエアバッグ装置60では、この車両1に他の車両が側突し、側突検出センサにより側突が検知されると、側突荷重により乗員がドアトリム7やアームレスト30(アームレスト別体部32)と二次衝突するまでの瞬時の間に、インフレータ61から発生する展開用のガスがサイドエアバッグ62に供給される。これにより、上部バッグ部62aと下部バッグ62bとがサイドエアバッグ装置60からドアトリム7とシート装置3との間において前方に向かって展開し、乗員とドアトリム7等との接触を回避できる。
【0059】
側突時、上部バッグ部62aがアームレスト別体部32の後端部32eに当接するため、図10に示すように、突起部41と嵌合部42との係合解除後、フロントサイドドア4の車幅内側への侵入量が小さく、アームレスト別体部32の前方への移動量が少ない場合やアームレスト別体部32がドアトリム側取付部22から分離不十分な場合、或いは斜め前方から側突荷重が入力した場合であっても、アームレスト別体部32をアームレスト本体部31の後端部31dや第1案内部43aと協働して積極的に車両前方及び下方へ押動でき、アームレスト別体部32の前方への移動量を確保することができる。
【0060】
次に、本サイドドア構造の作用・効果について説明する。
このサイドドア構造は、フロントサイドドア4の車室内側に設けられたドアトリム7と、このドアトリム7に車室内側へ膨出状に設けられ乗員の腕部を載置するアームレスト30とを備え、アームレスト30の下方位置にフロントサイドドア4に入力した側突荷重を吸収可能なトリム側衝撃吸収部材26が設けられ、トリム側衝撃吸収部材26より上方且つアームレスト30の車幅方向外側側方に対応する位置にフロントサイドドア4の外部から入力した衝撃をアームレスト30に伝達する衝撃伝達部材10が設けられ、フロントサイドドア4に外部から側突荷重が入力したとき、衝撃伝達部材10がアームレスト30を押動して、アームレスト30の少なくとも一部(アームレスト別体部32)とドアトリム7との連結のみを解除可能に設けられている。
【0061】
このサイドドア構造によれば、フロントサイドドア4に外部から側突荷重が入力したとき、衝撃伝達部材10がアームレスト30を押動して、少なくともアームレスト別体部32とドアトリム7との連結のみを解除可能に構成したため、コストアップや車室空間の減少等を生じることなく、アームレスト別体部32とドアトリム7との連結のみを解除することができる。つまり、側突荷重を利用してアームレスト別体部32とドアトリム7との連結を解除するため、外部から入力する側突荷重の伝達をアームレスト別体部32とドアトリム7との連結部分で低減でき、アームレスト別体部32から乗員に伝達される衝撃荷重を低減することができる。しかも、乗員に伝達される衝撃荷重を低減する一方、アームレスト別体部32とドアトリム7との連結のみを解除するため、トリム側衝撃吸収部材26はアームレスト別体部32の連結解除に伴う移動を生じることなく乗員の衝撃吸収部位、例えば腰部等に対する衝撃吸収を効果的に行うことができる。
【0062】
衝撃伝達部材10の第2凸設部12の平面部12aにフロントサイドドア4の外部から入力した衝撃を吸収可能な第2ドア側衝撃吸収部材29を設けているため、アームレスト7と衝撃伝達部材10との間に第2ドア側衝撃吸収部材29を設けることができ、アームレスト別体部32から乗員に伝達される衝撃荷重を一層低減することができると共に、アームレスト別体部32が移動したあとに乗員と接触した場合でも、所定の衝撃を低減することで、乗員への衝撃を低減させることができる。
衝撃伝達部材10の第1〜第3凸設部11〜13は各々車幅方向に突出する凸状に構成されているため、側突荷重をアームレスト別体部32へ迅速に伝達でき、衝撃伝達部材10によるアームレスト別体部32の車幅方向内側への押動をフロントサイドドア4の車室内側への進入時期に対して早期に開始することができる。
【0063】
フロントサイドドア4のアウタパネル5とインナパネル6との間に昇降可能なドアガラス8を設け、衝撃伝達部材10は、ドアガラス8より車幅方向内方且つアームレスト30の側方に対応する位置に車幅方向外側へ突出する第1凸設部11と、この第1凸設部11から車幅方向内側へ突出する第2凸設部12と、ドアガラス8より車幅方向外方且つ前記第1凸設部11の側方に対応する位置に車幅方向内側へ突出する第3凸設部13を備えたため、各第1〜第3凸設部11〜13の間の空走距離を短くすることができ、アウタパネル5に入力した側突荷重をアームレスト別体部32へ短時間で伝達でき、アームレスト別体部32の連結を迅速に解除することができる。
【0064】
フロントサイドドア4のインナパネル6に第1凸設部11と第2凸設部12を形成し、フロントサイドドア4のアウタパネル5に第3凸設部13を設けたため、ドアガラス8の昇降動作に影響を与えることなく、衝撃伝達部材10を形成することができる。
アームレスト30は、シート装置3に着座した乗員と車幅方向で対向する領域がドアトリム7とは別体のアームレスト別体部32で形成されたため、アームレスト別体部32から乗員に伝達される衝撃荷重を確実に低減することができる。
【0065】
アームレスト別体部32の下端部33とこの下端部33と対向し且つアームレスト別体部32を取付けるためのドアトリム側取付部22とに係合機構40を設け、この係合機構40は、ドアトリム側取付部22からアームレスト別体部32の下端部33へ突出する突起部41と、アームレスト別体部32の下端部33に形成され突起部41を嵌合可能な嵌合部42を備えたため、アームレスト別体部32とドアトリム側取付部22との連結のみを解除でき、アームレスト別体部32をドアトリム側取付部22に位置決めでき、アームレスト別体部32が乗員の腕部を載置し且つ腕部から入力される荷重を支持することができる。嵌合部42の車室外側端部に形成された切欠部42aに連なると共に車室内側程車両前方と後方へ傾斜する第1,第2案内部43a,43bを設けたため、車幅方向内側への荷重がかかったとき、切欠部42aを破断又は屈曲変形して突起部41と嵌合部42との連結(嵌合)を解除して、アームレスト別体部32の車室内方への移動を許容し、この車室内方への移動と同期してアームレスト別体部32を車両前方又は後方へ案内することができる。
【0066】
シート装置3はドアトリム7から所定距離離隔して配置され、アームレスト別体部32の車幅方向長さはシート装置3とドアトリム7との離隔距離より小さく形成されているため、シートクッション51とフロントサイドドア4との間にアームレスト別体部32を案内することができ、連結解除後、アームレスト別体部32と乗員との接触を防止することができる。
【0067】
シート装置3のシートバック52には、フロントサイドドア4に側突荷重が入力したとき、フロントサイドドア4とシート装置3との間に展開可能なサイドエアバッグ62を備えたエアバッグ装置60を有し、アームレスト別体部32を車室内側程サイドエアバッグ62の展開方向に移動するように構成されたため、アームレスト別体部32をサイドエアバッグ62の車両前方への展開力を利用して移動することができ、アームレスト別体部32の車両前方への移動をフロントサイドドア4の侵入量が少なく、側突荷重によるアームレスト別体部32の前後方向の移動量が得られない場合でも、アームレスト別体部32を大きく移動することができる。
【実施例2】
【0068】
次に、実施例2のサイドドア構造について図13,図14に基づいて説明する。
この車両1のフロントサイドドア4Aは、突起部41をドアトリム側取付部22に設置する代わりに、突起部41Aをアームレスト別体部32Aの下端部33に設置している。実施例1と同様の主要な構成要素には同じ参照符号を付けて図示し、それらについての説明は省略し、異なる構成要素についてのみ説明する。
【0069】
図13,図14に示すように、係合機構40Aは、アームレスト別体部32Aの下端部33Aと、この下端部33Aと対向するドアトリム側取付部22Aとの間に亙って設けられ、アームレスト別体部32Aの下端部33Aから下方へ突出する前後1対の突起部41Aと、ドアトリム側取付部22Aに形成され前記1対の突起部41Aと嵌合可能な前後1対の嵌合部42Aと、これら嵌合部42Aの車室内側端部に連なり車室内側程車両前方と後方の両方向へ傾斜する案内部43A等を備えている。
【0070】
1対の突起部41Aは、夫々略円柱状に構成され、下端部33Aの傾斜部33bに前後方向に隣接して設けられた前後1対の筒状の凹入部33eに夫々嵌合され固着されている。
1対の嵌合部42Aは、夫々突起部41Aと嵌合可能な略筒状に構成され、ドアトリム側取付部22Aの段部22bに1対の突起部41に対応するよう前後方向に隣接して設けられている。嵌合部42Aの車室内側端部は、段部33bの車室内側端部近傍に配置され、嵌合部42Aの車室内側端部の一部を切欠いた切欠部42bを形成している。
【0071】
案内部43Aは、切欠部42bの前端部から車室内側程前方へ傾斜する第1案内部43cと、切欠部42bの後端部から車室内側程車両後方へ傾斜する第2案内部43dを備えている。第1案内部43c第2案内部43dとは、夫々切欠部42aの前後端部から傾斜部22dの途中部まで形成されている。それ故、斜め後方から側突荷重が入力したとき、突起部41Aと嵌合部42Aとの係合が解除された後、第1案内部43cが突起部41Aを車室内側へ移行する程前方へ案内でき、斜め前方から側突荷重が入力したとき、突起部41Aと嵌合部42Aとの係合が解除された後、第2案内部43dが突起部41Aを車室内側へ移行する程後方へ案内することができる。
【0072】
次に、前記実施例を部分的に変更した変形例について説明する。
1〕前記実施例においては、回動式フロントサイドドアの例を説明したが、少なくとも、ドアトリムを備えたサイドドアであればよく、リヤサイドドアに適用することも可能である。また、回動式サイドドアに限ることなく、スライド式サイドドアに適用することも可能である。
【0073】
2〕前記実施例においては、サイドエアバック装置をシート装置に備えた例を説明したが、少なくとも、サイドドアに外部から側突荷重が入力したとき、側突荷重を利用してアームレスト別体部のみをドアトリムから連結解除可能であればよく、サイドエアバック装置を備えていない車両のサイドドアに適用することも可能である。
【0074】
3〕前記実施例においては、アームレスト別体部とトリム側取付部の間に破断又は屈曲変形により係合解除可能な係合機構を設置した例を説明したが、少なくとも、サイドドアに外部から側突荷重が入力したとき、アームレスト別体部のみを連結解除できれば良く、側突荷重で係合を解除する機構であれば何れの機構でも適用可能である。
【0075】
4〕その他、当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱することなく、前記実施例に種々の変更を付加した形態で実施可能であり、本発明はそのような変更形態も包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、サイドドアの車室内側に設けられたドアトリムから車室内側へ膨出して形成されたアームレストを備えた車両のサイドドア構造において、アームレスト本体部の後端に連なるアームレスト別体部をドアトリムから分離して車両前方又は後方へ移動することにより、乗員とアームレスト別体部との干渉を回避できる。
【符号の説明】
【0077】
1 車両
2 車室
3 シート装置
4,4A フロントサイドドア
5 アウタパネル
6 インナパネル
7 ドアトリム
10 衝撃伝達部材
11 第1凸設部
12 第2凸設部
13 第3凸設部
22,22A ドアトリム側取付部
26 トリム側衝撃吸収部材(アームレスト下方用衝撃吸収部材)
29 第2ドア側衝撃吸収部材(アームレスト用衝撃吸収部材)
30 アームレスト
31 アームレスト本体部
32,32A アームレスト別体部
33,33A 下端部
40,40A 係合機構
41,41A 突起部
42,42A 嵌合部
42a,42b 切欠部
43,43A 案内部
43a,43c 第1案内部
43b,43d 第2案内部
51 シートクッション
52 シートバック
60 サイドエアバッグ装置
62 サイドエアバッグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドドアの車室内側に設けられたドアトリムと、このドアトリムに車室内側へ膨出状に設けられ乗員の腕部を載置するアームレストとを備えた車両のサイドドア構造において、
前記アームレストの下方位置に前記サイドドアに入力した側突荷重を吸収可能なアームレスト下方用衝撃吸収部材が設けられ、
前記アームレスト下方用衝撃吸収部材より上方且つ前記アームレストの車幅方向外側側方に対応する位置に前記サイドドアの外部から入力した衝撃を前記アームレストに伝達する衝撃伝達部材が設けられ、
前記サイドドアに外部から側突荷重が入力したとき、前記衝撃伝達部材が前記アームレストを押動して、前記アームレストの少なくとも一部と前記ドアトリムとの連結のみを解除可能に設けられたことを特徴とする車両のサイドドア構造。
【請求項2】
前記衝撃伝達部材の車幅方向内側端部に前記サイドドアの外部から入力した衝撃を吸収可能なアームレスト用衝撃吸収部材を設けたことを特徴とする請求項1に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項3】
前記衝撃伝達部材は車幅方向に突出する凸状に構成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項4】
前記サイドドアのアウタパネルとインナパネルとの間に昇降可能なドアガラスを設け、
前記衝撃伝達部材は、前記ドアガラスより車幅方向内方且つ前記アームレストの側方に対応する位置に車幅方向外側へ突出する第1凸設部と、この第1凸設部から車幅方向内側へ突出する第2凸設部と、前記前記ドアガラスより車幅方向外方且つ前記第1凸設部の側方に対応する位置に車幅方向内側へ突出する第3凸設部を備えたことを特徴とする請求項3に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項5】
前記サイドドアのインナパネルに前記第1凸設部と第2凸設部を形成し、前記サイドドアのアウタパネルに前記第3凸設部を設けたことを特徴とする請求項4に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項6】
前記アームレストは、前記シート装置に着座した乗員と車幅方向で対向する領域が前記ドアトリムとは別体のアームレスト別体部で形成されたことを特徴とする請求項1〜5の何れか1つに記載の車両のサイドドア構造。
【請求項7】
前記アームレスト別体部の下端部とこの下端部と対向し且つアームレスト別体部を取付けるためのドアトリム側取付部とに係合機構を設け、
前記係合機構は、前記アームレスト別体部の下端部と前記ドアトリム側取付部の一方から他方側へ突出する突起部と、前記アームレスト別体部の下端部と前記ドアトリム側取付部の他方に形成され前記突起部と嵌合し且つ前記アームレスト別体部の押動により嵌合解除可能な嵌合部と、前記嵌合部端部に連なると共に車室内側程車両前方と後方の少なくとも一方へ傾斜する案内部を備えたことを特徴とする請求項6に記載の車両のサイドドア構造。
【請求項8】
前記シート装置は前記ドアトリムから所定距離離隔して配置され、
前記アームレスト別体部の車幅方向長さは前記シート装置とドアトリムとの離隔距離より小さく形成されたことを特徴とする請求項1〜7の何れか1つに記載の車両のサイドドア構造。
【請求項9】
前記シート装置のシートバックには、前記サイドドアに前記側突荷重が入力したとき、前記サイドドアと前記シート装置との間に展開可能なエアバッグを備えたエアバッグ装置を有し、前記アームレスト別体部を車室内側程前記エアバッグの展開方向に移動するように構成されたことを特徴とする請求項6〜8の何れか1つに記載の車両のサイドドア構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−189842(P2011−189842A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57721(P2010−57721)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】