車両のシフト切換装置
【課題】運転者のシフト変更操作に応じてアクチュエータが制御されることにより走行レンジが切り換えられる車両のシフト切換装置において、装置の制御性を向上させることができる車両のシフト切換装置を提供する。
【解決手段】マニュアルバルブ31のスプール弁子124を走行レンジに対応する位置に位置決めする位置決め機構が、電動アクチュエータ34の出力軸84とコントロールロッド118とのスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側に設けられるため、電動アクチュエータ34の出力軸84とコントロールロッド118との間のスプライン嵌合部(連結部)に生じるガタ(組付余裕)の影響なく電動アクチュエータ34の回転を制御することができるようになり、シフト切換装置105の制御性を向上させることができる。
【解決手段】マニュアルバルブ31のスプール弁子124を走行レンジに対応する位置に位置決めする位置決め機構が、電動アクチュエータ34の出力軸84とコントロールロッド118とのスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側に設けられるため、電動アクチュエータ34の出力軸84とコントロールロッド118との間のスプライン嵌合部(連結部)に生じるガタ(組付余裕)の影響なく電動アクチュエータ34の回転を制御することができるようになり、シフト切換装置105の制御性を向上させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者のシフト変更操作に応じてアクチュエータが制御されることにより走行レンジが切り換えられる所謂シフトバイワイヤ式の車両のシフト切換装置に係り、特に、シフト切換装置の制御性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転者のシフト変更操作に応じてアクチュエータを制御することにより走行レンジを変更する所謂シフトバイワイヤ式の車両のシフト切換装置が実現されている。例えば、特許文献1の車両制御システムがその一例である。特許文献1では、アクチュエータ内に内蔵されたエンコーダ(角度検出装置)と、ディテントプレートに設けられたシフトレンジ検出装置とから走行レンジを検出し、エンコーダとシフトレンジ検出装置とから検出される走行レンジが一致しないとき、車両の異常を判定する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−336710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1においては、アクチュエータとコントロールロッドとの接続部位よりも動力伝達系において後段側にディテント機構(位置決め機構)が存在する。ここで、アクチュエータとコントロールロッドとの接続部は、通常、スプライン嵌合などによって連結されるため、所定のガタ(スプラインガタ等)が生じる。そして、この所定のガタにより、アクチュエータを所定の走行レンジの対応する回転位置まで回転させても、ガタ分さらに余計に回転させないとディテント機構(位置決め機構)を狙いの位置へ移動させることができないなどの不都合が生じ、シフト切換装置の制御性が低下する可能性があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、運転者のシフト変更操作に応じてアクチュエータが制御されることにより走行レンジが切り換えられる車両のシフト切換装置において、装置の制御性を向上させることができる車両のシフト切換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)変速機内部の油路を切り換えることで走行レンジを変更する油路変更手段と、前記走行レンジに応じた回転位置に変位されることにより前記油路変更手段の油路を切り換えるコントロールロッドと、そのコントロールロッドに動力伝達可能に連結されることでそのコントロールロッドを回転可能なアクチュエータと、所定の回転部材の回転位置を検出する位置検出手段とを、備え、前記位置検出手段によって検出される所定の回転部材の回転位置に基づいて前記アクチュエータの回転を制御して走行レンジを切り換える車両のシフト切換装置において、(b)前記油路変更手段を走行レンジに対応する切換位置に位置決めする位置決め機構を備え、(c)その位置決め機構は、前記アクチュエータの出力軸と前記コントロールロッドの入力軸との連結部よりも前記アクチュエータ側に設けられることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両のシフト切換装置において、前記位置決め機構は前記アクチュエータ内部に設けられることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両のシフト切換装置において、前記位置決め機構は、前記アクチュエータの出力軸が挿通されるケース孔の内周面において、前記アクチュエータの出力軸の走行レンジに対応する回転位置に形成された複数個の凹部と、前記アクチュエータの出力軸から弾性部材によってそのケース孔の内周面に当接するように付勢されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置になったとき、前記所定の走行レンジに対応する凹部と嵌合する凸部部とを、有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3の車両のシフト切換装置において、前記アクチュエータの出力軸の回転に従って走行レンジが第1シフトレンジ、第2シフトレンジ、第3シフトレンジと順番に切り換えられるとき、前記第1シフトレンジに対応する第1の凹部と前記第3シフトレンジに対応する第3の凹部とが、第1の凸部と嵌合状態となり、前記第2シフトレンジに対応する第2の凹部が前記第1の凸部と別体で設けられた第2の凸部と嵌合状態となることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項4の車両のシフト切換装置において、前記第1の凸部および第2の凸部は、前記アクチュエータの出力軸内を径方向に貫通する貫通孔に内挿された共通の弾性部材によってそれぞれ径方向に押圧されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両のシフト切換装置において、前記位置決め機構は、前記アクチュエータのケース孔に設けられて、前記アクチュエータの出力軸の外周面と当接するように付勢される凸部と、前記アクチュエータの出力軸に形成されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置となると前記凸部と嵌合する複数個の凹部とを有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記油路変更手段を前記走行レンジに対応する位置に位置決めする位置決め機構が、前記アクチュエータの出力軸と前記コントロールロッドの入力軸との連結部よりも前記アクチュエータ側に設けられるため、前記アクチュエータの出力軸と前記コントロールロッドの入力軸との間の連結部に生じるガタ(組付余裕)の影響なくアクチュエータの回転を制御することができる。これにより、シフト切換装置の制御性を向上させることができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記位置決め機構は前記アクチュエータ内部に設けられるため、前記ガタの影響を考慮することなく、アクチュエータの回転を制御することができ、シフト切換装置の制御性が向上する。
【0014】
また、請求項3にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記位置決め機構は、前記アクチュエータの出力軸が挿通されるケース孔の内周面において、前記アクチュエータの出力軸の走行レンジに対応する回転位置に形成された複数個の凹部と、前記アクチュエータの出力軸から、弾性部材によってそのケース孔の内周面に当接するように付勢されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置になったとき、前記所定の走行レンジに対応する凹部と嵌合する凸部とを、有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されるものである。このようにすれば、前記位置決め機構をアクチュエータ内部に設けることができ、且つ、位置決め機構をコンパクトに構成することができる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記アクチュエータの出力軸の回転に従って走行レンジが第1シフトレンジ、第2シフトレンジ、第3シフトレンジと順番に切り換えられるとき、前記第1シフトレンジに対応する第1の凹部と前記第3シフトレンジに対応する第3の凹部とが、第1の凸部と嵌合状態となり、前記第2シフトレンジに対応する第2の凹部が前記第1の凸部と別体で設けられた第2の凸部と嵌合状態となるものである。このようにすれば、第1シフトレンジと第3シフトレンジとの間に位置する第2シフトレンジの第2の凹部を、第1の凹部および第3の凹部とは離れた位置に形成することができる。これにより、第1の凹部、第2の凹部、および第3の凹部の間隔を拡げることができ、ケースの強度を確保することができる。
【0016】
また、請求項5にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記第1の凸部および第2の凸部は、前記アクチュエータの出力軸内を径方向に貫通する貫通孔に内蔵された共通の弾性部材によってそれぞれ径方向に押圧されるため、部品点数が少なくなり、しかも、第1の凸部および第2の凸部の構成を簡潔にすることができる。
【0017】
また、請求項6にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記位置決め機構は、前記アクチュエータのケース孔に設けられて、前記アクチュエータの出力軸の外周面と当接するように付勢される凸部と、前記アクチュエータの出力軸に形成されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置となると前記凸部と嵌合する複数個の凹部とを有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されるものである。このようにすれば、前記位置決め機構をアクチュエータ内部に設けることができ、且つ、位置決め機構をコンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここで、好適には、請求項3にかかる発明において、さらにケース孔の内周面において、前記アクチュエータの誤作動によってアクチュエータの出力軸がオーバーランしたとき、さらなる回転を阻止するストッパ溝が形成されるものである。このようにすれば、アクチュエータの故障により、出力軸がオーバーランしてもその回転が阻止されるので、さらなる出力軸の過回転による意図しない走行レンジ切換等が回避され、変速機内部の過負荷による破損等を回避することができる。
【0019】
また、好適には、前記位置検出手段は、前記アクチュエータの出力軸の回転位置を検出するものである。このようにすれば、位置決め機構による位置決めの制御性が向上する。
【0020】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明が適用された車両の自動変速機(本発明の変速機に対応)6の構成を説明する骨子図である。本実施例における上記車両は、縦置き型の自動変速機6を有するものであってFR(フロントエンジン・リアドライブ)型の駆動方式を採用するものであり、走行用の動力源としてエンジン8を備えている。内燃機関にて構成されるエンジン8の出力は、流体伝動装置として機能するトルクコンバータ10、自動変速機6、図示しない差動歯車装置および一対の車軸などを介して図示しない左右の駆動輪へ伝達されるようになっている。
【0022】
図1において、自動変速機6は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース(以下、ケースと表す)11内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心C上に備え、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は、走行用の動力源であるエンジン8によって回転駆動されるトルクコンバータ10のタービン軸でもある。出力軸24は、上述のようにたとえば図示しない差動歯車装置や一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、自動変速機6は、出力軸24の軸心すなわち上記共通の軸心Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心Cの下半分が省略されている。
【0023】
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。また、第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2及びP3、そのピニオンギヤP2及びP3を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP2及びP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
【0024】
図1におけるクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2(以下特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと記載する)は、油圧シリンダから成る油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置である。第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、ブレーキB1を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1すなわち第2中間出力経路PA2に選択的に連結され、さらにクラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1すなわち第1中間出力間接経路PA1bに選択的に連結されるようになっている。
【0025】
また、第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびCA3)は、ブレーキB2を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、クラッチC2を介して入力軸22すなわち第1中間出力直結経路PA1aに選択的に連結されるようになっている。また、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。また、第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されるようになっている。
【0026】
また、第2回転要素RM2とケース11との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1がブレーキB2と並列に設けられている。また、第3回転部材RM3の外周側には、後述の駐車ロック機構としても機能するシフト切換装置105の一部を構成し、後述の図6に示すパーキングロックポール108と噛み合うことにより出力軸24の回転を阻止するパーキングギヤ106が固設されている。
【0027】
図2は、図1に示す自動変速機6において変速比の異なる複数の変速段を成立させる際の前記クラッチC、ブレーキB、一方向クラッチF1を含む各係合要素の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみの係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。図2に示すように、本実施例の自動変速機6は、上記各係合要素が選択的に係合させられることにより変速比(自動変速機6の入力軸回転数を出力軸回転数で除した値)が異なる前進8段を含む複数の変速段が成立するようになっている。なお、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比によって適宜定められる。
【0028】
図3は、図1に示すクラッチCおよびブレーキBにそれぞれ設けられた油圧アクチュエータACT1〜ACT6の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL6等に関する油圧制御回路25の要部を示す回路図である。
【0029】
図3において、油圧供給装置26は、エンジン8によって回転駆動される機械式のオイルポンプ27(図1参照)から発生する油圧を元圧として第1ライン油圧PL1を調圧する例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(第1調圧弁)28と、そのプライマリレギュレータバルブ28から排出される油圧を元圧として第2ライン油圧PL2を調圧するセカンダリレギュレータバルブ(第2調圧弁)29と、アクセル操作量(アクセル開度)Acc或いはスロットル弁開度θTHで表されるエンジン負荷等に応じた第1ライン油圧PL1および第2ライン油圧PL2が調圧されるためにプライマリレギュレータバルブ28およびセカンダリレギュレータバルブ29へ信号圧PSLTを供給するリニアソレノイドバルブSLTと、第1ライン油圧PL1を元圧としてモジュレータ油圧PMを一定値に調圧するモジュレータバルブ30とを備えている。また、油圧供給装置26は、後述の図4に示すシフトレバー38およびパーキングスイッチ40の操作すなわちシフトレンジ(シフトポジション)切換操作に基づいて出力される電気的駆動指令信号SAに従って駆動する電動アクチュエータ(アクチュエータ)34により油路が切り換えられ、シフトレバー38が予め定められた操作位置のうちのドライブレンジ指令位置(前進走行指令位置)Dへ操作されたときには、入力された第1ライン油圧PL1をドライブレンジ油圧PDとして出力し、シフトレバー38がリバースレンジ指令位置(後進走行指令位置)Rへ操作されたときには、入力された第1ライン油圧PL1をリバースレンジ油圧PRとして出力し、シフトレバー38がニュートラルレンジ指令位置(動力伝達遮断指令位置)Nへ操作されるか、あるいはパーキングスイッチ40がパーキングレンジ指令位置(駐車指令位置)Pへ操作されるすなわちパーキングレンジ切換操作が行われたときには、油圧の出力を遮断するマニュアルバルブ(シフトレンジ切換弁)31を備えている。油圧供給装置26は、第1ライン油圧PL1、第2ライン油圧PL2、モジュレータ油圧PM、ドライブレンジ油圧PD、およびリバースレンジ油圧PRを出力するようになっている。
【0030】
前記クラッチCおよびブレーキBにそれぞれ設けられた油圧シリンダから成る油圧アクチュエータACT1〜ACT6には、リニアソレノイドバルブSL1〜SL6(以下特に区別しない場合はリニアソレノイドバルブSLと記載する)がそれぞれ設けられている。油圧アクチュエータACT1、ACT2、ACT5、ACT6には、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブSL1、SL2、SL5、SL6により、油圧供給装置26からそれぞれ供給されたドライブレンジ油圧PDが調圧されて供給される。また、各油圧アクチュエータACT3、ACT4には、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブSL3、SL4により、油圧供給装置26からそれぞれ供給されたリバースレンジ油圧PRが調圧されて供給される。なお、ブレーキB2の油圧アクチュエータACT6には、リニアソレノイドバルブSL6の出力油圧またはリバースレンジ油圧PRのどちらかがシャトル弁33を介して供給されるようになっている。
【0031】
ここで、上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL6は、基本的には何れも同じ構成であり、それぞれ独立に励磁、非励磁や電流制御がなされて各油圧アクチュエータACT1〜ACT6へ供給される油圧を独立に調圧制御し、各クラッチCおよびブレーキBの係合圧をそれぞれ制御するものである。そして、自動変速機6は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合要素が係合されることによって各変速段が成立させられる。例えば、図2の係合作動表に示すように第5変速段から第4変速段へのダウンシフトに際しては、クラッチC2が解放されると共にクラッチC4が係合され、変速ショックを抑制するようにクラッチC2の解放過渡油圧とクラッチC4の係合過渡油圧とが適切に制御される。
【0032】
図4は、後述のシフト切換装置105のシフトレンジを切り換えるためのシフトレンジ切換操作の入力装置として機能するシフト操作装置36を示す斜視図である。図4において、シフト操作装置36は、例えば運転席の近傍に配設されて運転者により操作され、車両前後方向に配列された3つの操作位置すなわちドライブレンジ指令位置D、リバースレンジ指令位置R、ニュートラルレンジ指令位置Nへ操作されるシフトレバー38と、駐車する際に押圧操作されることでパーキングレンジ指令位置Pへ位置させられる押釦式のパーキングスイッチ40とを備えている。上記シフトレバー38は、図示しないスプリングの付勢力に従って、非操作時には図4に示す位置すなわち原位置(ホームポジション)に自動的に復帰させられるモーメンタリータイプ(自動復帰型)である。また、シフトレバー38は、上記原位置からニュートラルレンジ指令位置Nを通過してドライブレンジ指令位置Dまたはリバースレンジ指令位置Rへ操作されるようになっている。また、シフト操作装置36は、シフトレバー38の操作位置を検出してその操作位置を示すシフトレバー位置信号PSHを後述の電子制御装置46に供給するシフトレバーポジションセンサ42と、P操作スイッチ94が押圧操作されてパーキングレンジ指令位置Pへ位置させられたことを示す駐車指令信号PPを後述の電子制御装置46に供給するパーキングポジションセンサ44とをさらに備えている。シフト操作装置36は、シフトレバー38およびパーキングスイッチ40の操作すなわちシフトレンジ切換操作を電気的に検出し、そのシフトレンジ切換操作に応じてシフトレンジ指令信号に相当する上記シフトレバー位置信号PSHおよび駐車指令信号PPを発生するものである。
【0033】
ここで、上記ドライブレンジ指令位置Dは、シフトレンジを車両が前進走行させられるドライブレンジ(「D」レンジ)に切り換えるための操作位置であって、図2に示す第1速ギヤ段「1st」〜第8速ギヤ段「8th」のいずれか1つが成立させられる。
【0034】
また、リバースレンジ指令位置Rは、シフトレンジを車両が後進走行させられるリバースレンジ(「R」レンジ)に切り換えるための操作位置であって、図2に示す第1後進ギヤ段「Rev1」または第2後進ギヤ段「Rev2」が成立させられる。
【0035】
また、ニュートラルレンジ指令位置Nは、シフトレンジを自動変速機6の動力伝達経路が遮断状態にされるニュートラルレンジ(「N」レンジ)に切り換えるための操作位置である。
【0036】
また、パーキングレンジ指令位置Pは、シフトレンジを自動変速機6の動力伝達経路が遮断状態にされ、且つ後述のシフト切換装置105によって自動変速機6の出力軸24の回転が機械的に固定されるパーキングレンジ(「P」レンジ)に切り換えるための操作位置である。
【0037】
図5は、図1に示す自動変速機6やエンジン8などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図5において、電子制御装置46は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8の出力制御や自動変速機6の変速制御やシフトレンジを切り換えるシフトレンジ切換制御等を実行する。なお、この電子制御装置46は、必要に応じて出力制御用や変速制御用やシフトレンジ切換制御用などに分けて構成されるものであり、本実施例では、上記シフトレンジ切換制御を行うシフトバイワイヤ用電子制御装置としてのSBW−ECU48を含んで構成されている。
【0038】
図5に示すように、電子制御装置46には、車速V[km/h]を検出する車速センサ58、アクセルペダル60の操作量すなわちアクセル操作量Acc[%]を検出するアクセル操作量センサ62、常用ブレーキであるフットブレーキ64の操作量すなわちブレーキ操作量B[%]を検出するフットブレーキ操作量センサ66、シフトレバー38の操作位置を検出してシフトレバー位置信号PSHを出力するするシフトレバーポジションセンサ42、パーキングスイッチ40がパーキングレンジ指令位置Pへ操作されたことを検出して駐車指令信号PPを出力するパーキングポジションセンサ44、電動アクチュエータ34内部に配設され、その電動アクチュエータ34の出力軸84の回転位置に応じて出力されるポジション電圧PVを検出するニュートラルスタートスイッチ82等から、車速V、アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、シフトレバー位置信号PSH、駐車指令信号PP、ポジション信号PVなどを表す信号が供給される。
【0039】
また、電子制御装置46からは、シフトレバー位置信号PSHが変更されたことや駐車指令信号PPが供給されたことに応じてマニュアルバルブ31の油路や後述の駐車ロック機構の切り換えを行うことにより走行レンジを切り換えるために、電動モータやソレノイド等からなる電動アクチュエータ34へ駆動指令信号SAが出力される。本実施例では、シフトレバー38やパーキングスイッチ44の操作すなわちシフトレンジ切換操作に従って電動アクチュエータ34の回転が制御されることにより走行レンジが切り換えられるようになっている。なお、本実施例のSBW−ECU48は、ニュートラルスタートスイッチ82から出力されるポジション電圧PVを取得して上記電動アクチュエータ34の実際の回転状況を検出し、指令位置となるまで電動アクチュエータ34を駆動するフィードバック制御を行うようになっている。
【0040】
図6は、自動変速機6の出力軸24の回転を機械的に固定するパーキングロックを行う駐車ロック機構としても機能し、シフトレバー位置信号PSHまたは駐車指令信号PPに従って作動する電動アクチュエータ34によりシフトレンジを切り換えるシフト切換装置105の構成を示す斜視図である。
【0041】
図6において、シフト切換装置105は、自動変速機6の出力軸24に固定されたパーキングギヤ106と、パーキングギヤ106に噛み合う噛合位置へ回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ106に噛み合わされることにより出力軸24を回転不能に固定するパーキングロックポール108と、パーキングロックポール108に係合するテーパ部材110に挿し通されてそのテーパ部材110を一端部において支持するパーキングロッド112と、パーキングロッド112に設けられてテーパ部材110をその小径方向へ付勢するスプリング114と、パーキングロッド112の他端部に回動可能に接続されてマニュアルバルブ31のスプール弁子124を軸心方向に移動させるプレート116と、プレート116に固設されて一軸心まわりに回転可能に支持されたコントロールロッド118と、コントロールロッド118を回転駆動させる電動アクチュエータ34とを、備えている。なお、マニュアルバルブ31が自動変速機6内部の油路を切り換える本発明の油路変更手段に対応しており、電動アクチュエータ34が本発明のアクチュエータに対応している。
【0042】
プレート116には、マニュアルバルブ31のスプール弁子124の一端がプレート116に設けられたピン126を介してそのピン126まわりに回動可能且つプレート116に対してコントロールロッド118とピン126とを結ぶ直線方向に相対移動可能に設けられており、コントロールロッド118の回転すなわちプレート116のコントロールロッド118の軸心まわりの回動に伴ってマニュアルバルブ31のスプール弁子124がそのスプール弁子124の軸心方向に摺動させられるようになっている。上記スプール弁子124を摺動可能に収容するバルブボデー125内には、油圧制御回路25を構成する油路の一部が設けられている。また、プレート116は、コントロールロッド118を介して電動アクチュエータ34に作動的に連結されている。
【0043】
図6は、シフトレンジがパーキングレンジであるとき、すなわちシフト切換装置105がパーキングロックされた状態を示している。この状態では、パーキングロックポール108がパーキングギヤ106を回転不能に固定しており、車両の出力軸24の回転が阻止されている。この状態から、電子制御装置46から作動のための駆動指令信号SAを受けた電動アクチュエータ34によりコントロールロッド118が図6に示す矢印Aの方向に回転されると、プレート116を介してパーキングロッド112が図6に示す矢印Cの方向に移動され、パーキングロッド112の先端に設けられたテーパ部材110の移動によりパーキングロックポール108が図6に示す矢印Dの方向に移動可能となるとともに、マニュアルバルブ31のスプール弁子124が図6に示す矢印Eの方向すなわちスプール弁子124の軸心方向に摺動させられる。
【0044】
上記電動アクチュエータ34の作動すなわちプレート116の回動に伴って、プレート116が矢印Aの方向へ回転させられたときには、パーキングロックポール108がパーキングギヤ106と噛み合うことのない位置まで矢印Dの方向へ押し下げられる。これにより、出力軸24およびこれに連結された車両の駆動輪が機械的に固定されなくなる。そして、プレート116の回動に伴ってスプール弁子124が移動させられ、マニュアルバルブ31の油路が切り換えられるようになっている。
【0045】
一方、電動アクチュエータ34によりコントロールロッド118が矢印Bの方向に回転させられると、上述とは逆の作動によりシフトレンジがパーキングレンジに切り換えられるとともにマニュアルバルブ31の油路がパーキングレンジに対応する状態に切り換えられるようになっている。すなわち、本実施例のシフト切換装置105では、シフト操作装置36から出力されるシフトレバー位置信号PSHおよび駐車指令信号PPに応じてSBW−ECU48により電動アクチュエータ34が制御されてコントロールロッド118がその軸心まわりに回転させられることによって、プレート116を介してマニュアルバルブ31のスプール弁子124が機械的に一直線方向へ移動させられ、そのスプール弁子124が4つのシフトレンジすなわちドライブレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、またはパーキングレンジのうちの1つに対応する位置に位置決めされることにより油圧制御回路25の油路が切り換えられるようになっている。
【0046】
また、本実施例では、油圧制御装置25の油路を切り換えるスプール弁子124を各走行レンジに対応する切換位置に位置決めする位置決め機構130が電動アクチュエータ34内部に設けられている。図7は、電動アクチュエータ34内部に配設されている位置決め機構130を説明するための電動アクチュエータ34の部分断面図であり、図8は、図7において位置決め機構130を矢印G方向から見た矢視図である。図7において、電動アクチュエータ34の非回転部材であるケース132に形成されたケース孔134に電動アクチュエータ34の出力軸84が回転可能に挿通されている。ここで、電動アクチュエータ34の出力軸84とコントロールロッド118とは、スプライン嵌合によって動力伝達可能に連結されており、電動アクチュエータ34の回転がコントロールロッド118に伝達される。
【0047】
位置決め機構130は、電動アクチュエータ34の出力軸84が挿通されるケース孔134の内周面において、電動アクチュエータ34の出力軸84の走行レンジに対応する回転位置に形成された複数個の凹部と、電動アクチュエータ34の出力軸84から、スプリング140によってケース孔134の内周面に当接するように付勢されて、電動アクチュエータ34の出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置となったとき、その所定の走行レンジに対応する凹部と勘合する第1係合部142および第2係合部144とを有し、電動アクチュエータ34の回転駆動に伴って嵌合状態が適宜変更される。なお、スプリング140が本発明の弾性部材に対応している。
【0048】
ケース132のケース孔134に形成された複数個の凹部は、選択される走行レンジに対応する位置、すなわち出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置となると、第1係合部142および第2係合部144の何れかと嵌合する位置に形成されている。図8において、上部に形成されている「P」レンジに対応するP凹部146から時計方向に、「N」レンジに対応するN凹部148、「R」レンジに対応するR凹部150、「D」レンジに対応するD凹部152が形成され、さらに、電動アクチュエータ34の誤作動時による出力軸84のオーバーラン時において、その回転を停止させる第1ストッパ溝154、および第2ストッパ溝156が形成されている。なお、本実施例のP凹部146、N凹部148、R凹部150、およびD凹部152が、本発明の凹部に対応している。
【0049】
また、円柱形状である第1嵌合部142および第2嵌合部144は、出力軸84の軸心(中心)を通って径方向に貫通する貫通孔138に摺動可能にそれぞれ嵌め入れられており、貫通孔138に内挿された共通のスプリング140の弾性復帰力によって、それぞれ径方向の押圧されている。また、第1嵌合部142および第2嵌合部144の外径側に位置する先端部(158、160)は、ぞれぞれ半球状に形成されており、この先端部(158、160)が、スプリング140の弾性復帰力によってケース孔134の内周面に当接させられる。なお、第1嵌合部142が本発明の凸部および第1の凸部に対応しており、第2嵌合部144が本発明の凸部および第2の凸部に対応している。
【0050】
ここで、図9(図8も同様)は、第1嵌合部142の先端部158がP凹部146に嵌合された状態を示している。このときの出力軸84の回転位置が「P」レンジに対応している。すなわち、第1嵌合部142がP凹部146に嵌合されると、それに連動して作動させられるコントロールロッド118およびプレート116を介してスプール弁子124が「P」レンジに対応する切換位置に移動させられ、油圧制御回路25の油路が切り換えられる。これにより、走行レンジが非走行レンジである「P」レンジに切り換えられる。
【0051】
ここで、図9の状態から出力軸84が電動アクチュエータ34によって時計方向にさらに回転させられると、図10に示すように、第2嵌合部144の先端部160がR凹部150に嵌合される。このときの出力軸84の回転位置が「R」レンジに対応している。すなわち、第2嵌合部144がR凹部150に嵌合されると、それに連動して作動させられるコントロールロッド118およびプレート116を介してスプール弁子124が「R」レンジに対応する切換位置に移動させられ、油圧制御回路25の油路が切り換えられる。これにより、走行レンジが後進走行レンジである「R」レンジに切り換えられる。
【0052】
また、図10の状態から出力軸84が電動アクチュエータ34によって時計方向にさらに回転させられると、図11に示すように、第1嵌合部142の先端部158がN凹部148に嵌合される。このときの出力軸84の回転位置が「N」レンジに対応している。すなわち、第1嵌合部142がN凹部148に嵌合されると、それに連動して作動させられるコントロールロッド118およびプレート116を介してスプール弁子124が「N」レンジに対応する切換位置に移動させられ、油圧制御回路25の油路が切り換えられる。これにより、走行レンジが非走行レンジである「N」レンジに切り換えられる。
【0053】
また、図11の状態から出力軸84が電動アクチュエータ34によって時計方向にさらに回転させられると、図12に示すように、第2嵌合部144の先端部160がD凹部152に嵌合される。このときの出力軸84の回転位置が「D」レンジに対応している。すなわち、第2嵌合部144がD凹部152に嵌合されると、それに連動して作動させられるコントロールロッド118およびプレート116を介してスプール弁子124が「D」レンジに対応する切換位置に移動させられ、油圧制御回路25の油路が切り換えられる。これにより、走行レンジが前進走行レンジである「D」レンジに切り換えられる。
【0054】
また、図9(または図8)の状態から出力軸84が電動アクチュエータ34によって反時計方向にさらに回転させられる、もしくは、図12の状態から出力軸84が時計方向にさらに回転させられると、図13に示すように、第1嵌合部142が第2ストッパ溝156に嵌合される、もしくは、第2嵌合部144が第1ストッパ溝154に嵌合される。なお、図13においては、図8の第1ストッパ溝154および第2ストッパ溝156が共通のストッパ溝として表示されるものとする。ここで、ストッパ溝(154、156)は他の凹部に比べ径方向に長め(深く)に形成されているので、第1嵌合部142または第2嵌合部144が嵌合されると、それぞれの嵌合部(142、144)がストッパ溝(154、156)の深くまで嵌め入れられる。これにより、嵌合部(142、144)が出力軸84の回転停止部材(ストッパ部材)として機能させられ、電動アクチュエータ34の故障によって出力軸84がオーバーランされたとき、その回転を強制停止させる。なお、第1嵌合部142および第2嵌合部144は、電動アクチュエータ34の駆動トルクによって破損されない強度を有するようにその形状が設計される。これに伴い、第1係合部142および第2係合部144の形状は、円柱形状に限定されず、例えば出力軸84の軸心方向に所定の奥行き径を有する形状など、強度を確保するために適宜その形状が変更される。
【0055】
上記のように、図8乃至図12に示すように、出力軸84が時計方向に回転するに従い、「P」、「R」、「N」、「D」レンジと順番にシフトされるが、「P」レンジのP凹部146および「N」レンジのN凹部148が隣り合って形成されると共に、「R」レンジのR凹部150および「D」レンジのD凹部152が前記P凹部146、N凹部148に対して出力軸84の対角側に形成されている。そして、P凹部146とN凹部148とが、出力軸84の回転位置に応じて第1嵌合部142と嵌合状態となり、R凹部150とD凹部152とが、出力軸84の回転位置に応じて第2嵌合部144と嵌合状態となる。これより、走行レンジが出力軸84の回転に伴って「P」、「R」、「N」、「D」レンジと順番に切り換えられる。さらに、R凹部150とD凹部152とが出力軸84の対角側に形成されるので、各凹部が配置される間隔が拡げられてケース132の強度が確保される。
【0056】
ここで、本実施例のシフト切換装置105では、マニュアルバルブ31のスプール弁子124を走行レンジに対応した位置に位置決めする位置決め機構130が、電動アクチュエータ34の出力軸84とマニュアルバルブ31との間に設けられたスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側、具体的には電動アクチュエータ34内部に設けられている。図14は、シフト切換装置105の動力伝達経路を概略的に示した構成図である。図14に示すように、電動アクチュエータ34のモータ部162の動力が例えば歯車装置やベルト車などを介して出力軸84に伝達される。そして、出力軸84が回転駆動させられ、スプライン嵌合を介してコントロールロッド118に回転が伝達される。さらに、コントロールロッド118の回転位置に応じてマニュアルバルブ31のスプール弁子124が移動され、油圧制御回路25の油路が切り換えられる。また、上述したように、位置決め機構130が出力軸84とコントロールロッド118との間のスプライン嵌合部(連結部)よりも上流側に設けられている。また、ニュートラルスタートスイッチ82が出力軸84に直接的に設けられており、出力軸84の回転位置に応じたポジション電圧PVが検出される。なお、ニュートラルスタートスイッチ82が本発明の位置検出手段に対応している。
【0057】
ニュートラルスタートスイッチ82は、図15に示すように、電動アクチュエータ34の出力軸84の周囲であって軸心Oに対して対称位置に配設された一対の磁石86と、出力軸84に一体的に配設されて一体的に軸心Oまわりに回転させられるホール素子88とを備えている。ホール素子88は、磁力の強さに応じて変化するポジション電圧PVを出力するもので、出力軸84の回転に伴ってホール素子88に作用する磁力が変化することにより、その回転角度に応じてポジション電圧PVは連続的に変化する。したがって、このポジション電圧PVの大きさに基づいて出力軸84の回転位置、更にはマニュアルバルブ31のシフトレンジ「P」、「R」、「N」、「D」を検出することができる。
【0058】
このように、ニュートラルスタートスイッチ82は、位置決め機構130と直結された状態で出力軸84の回転位置を直接検出することから、スプライン嵌合部に形成されるガタの影響が生じない。これより、位置決め機構130の精度が向上することとなる。
【0059】
上述のように、本実施例によれば、マニュアルバルブ31のスプール弁子124を走行レンジに対応する位置に位置決めする位置決め機構130が、電動アクチュエータ34の出力軸84とコントロールロッド118とのスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側に設けられるため、電動アクチュエータ34の出力軸84とコントロールロッドとの間のスプライン嵌合部(連結部)に生じるガタ(組付余裕)の影響なく電動アクチュエータ34の回転を制御することができるようになり、シフト切換装置105の制御性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施例によれば、位置決め機構130は電動アクチュエータ34内部に設けられるため、前記ガタの影響を考慮することなく、電動アクチュエータ34の回転を制御することができ、シフト切換装置105の制御性が向上する。また、位置決め機構130をコンパクトに構成することができる。
【0061】
また、本実施例によれば、位置決め機構130は、電動アクチュエータ34の出力軸84が挿通されるケース孔134の内周面において、電動アクチュエータ34の出力軸84の走行レンジに対応する回転位置に形成された複数個の凹部(146、148、150、152)と、電動アクチュエータ34の出力軸84から、スプリング140によってそのケース孔134の内周面に当接するように付勢されて、電動アクチュエータ34の出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置になったとき、その所定の走行レンジに対応する凹部(146、148、150、152)と嵌合する凸部(142、144)とを、有し、電動アクチュエータ34の回転駆動に伴って嵌合状態が変更されるものである。このようにすれば、位置決め機構130を電動アクチュエータ34内部に設けることができ、且つ、位置決め機構130をコンパクトに構成することができる。
【0062】
また、本実施例によれば、電動アクチュエータ34の出力軸84の回転に従って走行レンジが「P」レンジ、「R」レンジ、「N」レンジ、「D」レンジと順番に切り換えられるとき、第「P」レンジに対応するP凹部146と「N」レンジに対応するN凹部148とが、第1嵌合部142と嵌合状態となり、「R」レンジに対応するR凹部150と「D」レンジに対応するD凹部152とが、第1嵌合部142と別体で設けられた第2嵌合部144と嵌合状態となるものである。このようにすれば、「P」レンジと「N」レンジとの間に位置する「R」レンジのR凹部150、並びに、「D」レンジのD凹部152を、P凹部146およびN凹部148とは離れた位置に形成することができる。これにより、P凹部146、N凹部148、R凹部150およびD凹部152の間隔が拡げられて、ケース132の強度を確保することができる。
【0063】
また、本実施例によれば、第1嵌合部142および第2嵌合部144は、電動アクチュエータ34の出力軸84内を径方向に貫通する貫通孔138に内挿された共通のスプリング140によってそれぞれ径方向に押圧されるため、部品点数が少なくなり、しかも、第1嵌合部142および第2嵌合部144の構成を簡潔にすることができる。
【0064】
また、本実施例によれば、さらにケース孔134の内周面において、電動アクチュエータ34の誤作動によって電動アクチュエータ34の出力軸84がオーバーランしたとき、さらなる回転を阻止する第1ストッパ溝154および第2ストッパ溝156が形成されるものである。このようにすれば、電動アクチュエータ34の故障により、出力軸84がオーバーランしてもその回転が停止されるので、さらなる出力軸84の過回転による意図しない走行レンジ切換等が回避され、自動変速機6内部の過負荷による破損等を回避することができる。
【0065】
また、本実施例によれば、ニュートラルスタートスイッチ82は、電動アクチュエータ34の出力軸84の回転位置を直接検出するものである。このようにすれば、位置決め機構130による位置決めの制御性が向上する。
【0066】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0067】
図16は、本発明の他の実施例である位置決め機構200を構成を説明する図であり、図8に対応するものである。本実施例では、出力軸84側に走行レンジに対応する複数個の凹部が形成されると共に、ケース132側に第1嵌合部142および第2嵌合部144が設けられている。
【0068】
位置決め機構200は、電動アクチュエータ34のケース孔134側に設けられて、電動アクチュエータ34の出力軸84の外周面と当接するように付勢される第1嵌合部142および第2嵌合部144と、電動アクチュエータ34の出力軸84に形成されて、電動アクチュエータ34の出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置となると第1嵌合部142または第2嵌合部144と嵌合する複数個の凹部とを、有し、電動アクチュエータ34の回転駆動に伴って嵌合状態が変更される。
【0069】
第1嵌合部142は、ケース132に形成された第1の溝202内に内挿された第1スプリング204の弾性復帰力によって出力軸84の中心方向に押圧され、その先端部158が出力軸84の外周面に当接させられている。また、第2嵌合部144は、第2の溝206内に内挿された第2スプリング208の弾性復帰力によって出力軸84の中心方向に押圧され、その先端部160が出力軸84の外周面に当接させられている。
【0070】
出力軸84では、出力軸84の各走行レンジに対応した回転位置に、P凹部146、N凹部148、R凹部150、D凹部152が適宜形成されている。上記のような構成であっても、電動アクチュエータ34を回転駆動(本実施例では反時計方向)させることにより、走行レンジに対応する回転位置に好適に位置決めすることができる。なお、作動に関する詳細な説明は、前述の実施例と同様であるため、その説明を省略する。
【0071】
本実施例においても、マニュアルバルブ31のスプール弁子124を走行レンジに対応した位置に位置決めする位置決め機構200が、電動アクチュエータ34の出力軸84とマニュアルバルブ31との間に設けられたスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側に設けられるので、スプライン嵌合部のガタによる影響が生じない。これより、位置決め機構200の精度が向上することとなる。
【0072】
また、本実施例によれば、位置決め機構200は、電動アクチュエータ34のケース孔134に設けられて、電動アクチュエータ34の出力軸84の外周面と当接するように付勢される第1嵌合部142および第2嵌合部144と、電動アクチュエータ34の出力軸84に形成されて、電動アクチュエータ34の出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置となると第1嵌合部142または第2嵌合部144と嵌合する複数個の凹部(146、148、150、152)とを有し、電動アクチュエータ34の回転駆動に伴って嵌合状態が変更されるものである。このようにすれば、前記位置決め機構200を電動アクチュエータ34内部に設けることができ、且つ、位置決め機構200をコンパクトに構成することができる。
【実施例3】
【0073】
図17は、本実施例のさらに他の実施例である位置決め機構300の構成を説明する図であり、図8に対応するものである。本実施例では、走行レンジが「P」、「R」、「N」、「D」と電動アクチュエータ34の回転に応じて切り換えられるとき、隣り合う走行レンジに対応する凹部が対角上に形成するのではなく、出力軸84に対して例えば90度位相がずれた位置に形成される。
【0074】
これに伴って、第2嵌合部144は、第1嵌合部142に対して90度位相がずれた回転位置にそれぞれ設けられている。第1嵌合部142は、出力軸84に形成された第1の溝302に内挿されている第1スプリング304の弾性復帰力によって径方向外側に押圧され、その先端部158がケース孔134の内周面に当接させられる。また、第2嵌合部144は、出力軸84に形成された第2の溝306に内挿されている第2スプリング308の弾性復帰力によって径方向外側に押圧され、その先端部160がケース孔134の内周面に当接させられる。そして、電動アクチュエータ34の出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置となると、その走行レンジに対応する凹部が第1嵌合部142および第2嵌合部144の何れかと嵌合状態となる。
【0075】
上記のように構成される位置決め機構300であっても電動アクチュエータ34を回転駆動させることにより、走行レンジに対応する回転位置に好適に位置決めすることができる。
【0076】
上述のように、本実施例においても、マニュアルバルブ31のスプール弁子124を走行レンジに対応した位置に位置決めする位置決め機構300が、電動アクチュエータ34の出力軸84とマニュアルバルブ31との間に設けられたスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側に設けられるので、スプライン嵌合部のガタによる影響が生じない。これより、位置決め機構300の精度が向上することとなる。
【0077】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0078】
例えば、前述の実施例の位置決め機構130、200、300は、電動アクチュエータ34内部に設けられていたが、必ずしも電動アクチュエータ34内部に限定されるものではない。すなわち、位置決め機構が電動アクチュエータ34の出力軸84とマニュアルバルブ31との間に設けられたスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側に設けられる構成であれば、本発明の効果を得ることができる。
【0079】
また、前述の実施例の電動アクチュエータ34は、モータ部162と出力軸84とが2軸で構成されているが、必ずしも2軸に限定されず、例えば1軸形式の構造であっても構わない。
【0080】
また、前述の実施例の凹部の配置は対角線側もしくは90度位相をずらすなどして、配置されているが、凹部の配置は上記に限定されず、適宜変更しても構わない。また、例えば各凹部に対して1つの係合部を設けることで凹部の間隔を拡げた構造であっても構わない。さらに、強度が確保されるのであれば、1つの係合部(凸部)に対して走行レンジ順に単純に凹部を配置した構造であっても構わない。
【0081】
また、前述の実施例では、電動アクチュエータ34とコントロールロッド118の接続部とはスプライン嵌合されているが、例えばキーなどのよる接続であってもガタが生じるので、本発明を適用することができる。すなわち、ガタが生じる接続方法であれば本発明の効果を好適に得ることができる。
【0082】
また、前述の実施例のニュートラルスタートスイッチ82は、例えば回転角度に応じて変化する磁力を検出するホール素子や磁気抵抗素子等を有する非接触式回転角センサにて構成されているが、例えば回転角度に応じてパルスを出力するロータリエンコーダなど、接触式か非接触式を問わず様々な態様が可能である。また、ニュートラルスタートスイッチ82の取付位置は、出力軸84の回転位置を検出する構成であれば、特に限定されるものではない。
【0083】
また、前述の実施例では、弾性部材としてスプリング140が使用されているが、例えば所定の弾性を有する樹脂やゴム材を内挿することで第1嵌合部142および第2嵌合部144を押圧する構造であっても構わない。
【0084】
また、前述の実施例では、燃料の燃焼によって動力を発生させるエンジン駆動車両であったが、電動モータによって駆動する電気自動車、或いは複数の動力源を備えているハイブリッド車両など、種々の車両用のシフト制御装置に好適に適用される。また、前後進を切り換える前後進切換装置や、変速比が異なる複数のギヤ段を有する有段の自動変速機、或いは変速比を連続的に変化させる無段変速機などを有し、シフト機構により駆動状態を変更することができる種々の車両に好適に適用される。
【0085】
また、前述の実施例では、自動変速機として有段式の自動変速機6が用いられていたが、自動変速機の構造は前述の実施例のものに限定されず、遊星歯車装置の数や変速段数、およびクラッチC、ブレーキBの数が遊星歯車装置のどの要素と選択的に連結されているかなど特に限定はない。
【0086】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明が適用された車両の動力伝達機構すなわち自動変速機の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1に示す自動変速機において変速比の異なる複数の変速段を成立させる際の複数の油圧式摩擦係合装置の作動状態を説明する図表である。
【図3】図1に示すクラッチおよびブレーキの各油圧アクチュエータの作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する油圧制御回路の要部を示す回路図である。
【図4】シフトポジションを切り換えるためのシフトポジション切換操作の入力装置として機能するシフト操作装置を示す斜視図である。
【図5】図1に示す自動変速機やエンジンなどを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図6】図5に示すSBW−ECUに供給されるシフトレバー位置信号または駐車指令信号に従って作動する電動アクチュエータによりシフトポジションを切り換えるシフト切換装置の構成を示す斜視図である。
【図7】電動アクチュエータ内部に配設されている位置決め機構を説明するための電動アクチュエータの部分断面図である。
【図8】図7において位置決め機構を矢印G方向から見た矢視図である。
【図9】位置決め機構において、第1嵌合部の先端部がP凹部に嵌合された状態を示す図である。
【図10】位置決め機構において、第2嵌合部の先端部がR凹部に嵌合された状態を示す図である。
【図11】位置決め機構において、第1嵌合部の先端部がN凹部に嵌合された状態を示す図である。
【図12】位置決め機構において、第2嵌合部の先端部がD凹部に嵌合された状態を示す図である。
【図13】位置決め機構において、第1、第2嵌合部の先端部がストッパに嵌合された状態を示す図である。
【図14】シフト切換装置の動力伝達経路を概略的に示した構成図である。
【図15】図14のニュートラルスタートスイッチを説明する概略構成図である。
【図16】本発明の他の実施例である位置決め機構を構成を説明する図であり、図8に対応するものである。
【図17】本実施例のさらに他の実施例である位置決め機構の構成を説明する図であり、図8に対応するものである。
【符号の説明】
【0088】
6:自動変速機(変速機)
31:マニュアルバルブ(油路変更手段)
34:電動アクチュエータ(アクチュエータ)
82:ニュートラルスタートスイッチ(位置検出手段)
84:出力軸(アクチュエータの出力軸)
105:シフト切換装置
118:コントロールロッド
130、200、300:位置決め機構
134:ケース孔
140:スプリング(弾性部材)
142:第1嵌合部(凸部、第1の凸部)
144:第2嵌合部(凸部、第2の凸部)
146:P凹部(凹部)
148:N凹部(凹部)
150:R凹部(凹部)
152:D凹部(凹部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者のシフト変更操作に応じてアクチュエータが制御されることにより走行レンジが切り換えられる所謂シフトバイワイヤ式の車両のシフト切換装置に係り、特に、シフト切換装置の制御性の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運転者のシフト変更操作に応じてアクチュエータを制御することにより走行レンジを変更する所謂シフトバイワイヤ式の車両のシフト切換装置が実現されている。例えば、特許文献1の車両制御システムがその一例である。特許文献1では、アクチュエータ内に内蔵されたエンコーダ(角度検出装置)と、ディテントプレートに設けられたシフトレンジ検出装置とから走行レンジを検出し、エンコーダとシフトレンジ検出装置とから検出される走行レンジが一致しないとき、車両の異常を判定する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−336710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1においては、アクチュエータとコントロールロッドとの接続部位よりも動力伝達系において後段側にディテント機構(位置決め機構)が存在する。ここで、アクチュエータとコントロールロッドとの接続部は、通常、スプライン嵌合などによって連結されるため、所定のガタ(スプラインガタ等)が生じる。そして、この所定のガタにより、アクチュエータを所定の走行レンジの対応する回転位置まで回転させても、ガタ分さらに余計に回転させないとディテント機構(位置決め機構)を狙いの位置へ移動させることができないなどの不都合が生じ、シフト切換装置の制御性が低下する可能性があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、運転者のシフト変更操作に応じてアクチュエータが制御されることにより走行レンジが切り換えられる車両のシフト切換装置において、装置の制御性を向上させることができる車両のシフト切換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)変速機内部の油路を切り換えることで走行レンジを変更する油路変更手段と、前記走行レンジに応じた回転位置に変位されることにより前記油路変更手段の油路を切り換えるコントロールロッドと、そのコントロールロッドに動力伝達可能に連結されることでそのコントロールロッドを回転可能なアクチュエータと、所定の回転部材の回転位置を検出する位置検出手段とを、備え、前記位置検出手段によって検出される所定の回転部材の回転位置に基づいて前記アクチュエータの回転を制御して走行レンジを切り換える車両のシフト切換装置において、(b)前記油路変更手段を走行レンジに対応する切換位置に位置決めする位置決め機構を備え、(c)その位置決め機構は、前記アクチュエータの出力軸と前記コントロールロッドの入力軸との連結部よりも前記アクチュエータ側に設けられることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両のシフト切換装置において、前記位置決め機構は前記アクチュエータ内部に設けられることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両のシフト切換装置において、前記位置決め機構は、前記アクチュエータの出力軸が挿通されるケース孔の内周面において、前記アクチュエータの出力軸の走行レンジに対応する回転位置に形成された複数個の凹部と、前記アクチュエータの出力軸から弾性部材によってそのケース孔の内周面に当接するように付勢されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置になったとき、前記所定の走行レンジに対応する凹部と嵌合する凸部部とを、有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項3の車両のシフト切換装置において、前記アクチュエータの出力軸の回転に従って走行レンジが第1シフトレンジ、第2シフトレンジ、第3シフトレンジと順番に切り換えられるとき、前記第1シフトレンジに対応する第1の凹部と前記第3シフトレンジに対応する第3の凹部とが、第1の凸部と嵌合状態となり、前記第2シフトレンジに対応する第2の凹部が前記第1の凸部と別体で設けられた第2の凸部と嵌合状態となることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、請求項4の車両のシフト切換装置において、前記第1の凸部および第2の凸部は、前記アクチュエータの出力軸内を径方向に貫通する貫通孔に内挿された共通の弾性部材によってそれぞれ径方向に押圧されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、請求項2の車両のシフト切換装置において、前記位置決め機構は、前記アクチュエータのケース孔に設けられて、前記アクチュエータの出力軸の外周面と当接するように付勢される凸部と、前記アクチュエータの出力軸に形成されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置となると前記凸部と嵌合する複数個の凹部とを有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記油路変更手段を前記走行レンジに対応する位置に位置決めする位置決め機構が、前記アクチュエータの出力軸と前記コントロールロッドの入力軸との連結部よりも前記アクチュエータ側に設けられるため、前記アクチュエータの出力軸と前記コントロールロッドの入力軸との間の連結部に生じるガタ(組付余裕)の影響なくアクチュエータの回転を制御することができる。これにより、シフト切換装置の制御性を向上させることができる。
【0013】
また、請求項2にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記位置決め機構は前記アクチュエータ内部に設けられるため、前記ガタの影響を考慮することなく、アクチュエータの回転を制御することができ、シフト切換装置の制御性が向上する。
【0014】
また、請求項3にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記位置決め機構は、前記アクチュエータの出力軸が挿通されるケース孔の内周面において、前記アクチュエータの出力軸の走行レンジに対応する回転位置に形成された複数個の凹部と、前記アクチュエータの出力軸から、弾性部材によってそのケース孔の内周面に当接するように付勢されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置になったとき、前記所定の走行レンジに対応する凹部と嵌合する凸部とを、有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されるものである。このようにすれば、前記位置決め機構をアクチュエータ内部に設けることができ、且つ、位置決め機構をコンパクトに構成することができる。
【0015】
また、請求項4にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記アクチュエータの出力軸の回転に従って走行レンジが第1シフトレンジ、第2シフトレンジ、第3シフトレンジと順番に切り換えられるとき、前記第1シフトレンジに対応する第1の凹部と前記第3シフトレンジに対応する第3の凹部とが、第1の凸部と嵌合状態となり、前記第2シフトレンジに対応する第2の凹部が前記第1の凸部と別体で設けられた第2の凸部と嵌合状態となるものである。このようにすれば、第1シフトレンジと第3シフトレンジとの間に位置する第2シフトレンジの第2の凹部を、第1の凹部および第3の凹部とは離れた位置に形成することができる。これにより、第1の凹部、第2の凹部、および第3の凹部の間隔を拡げることができ、ケースの強度を確保することができる。
【0016】
また、請求項5にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記第1の凸部および第2の凸部は、前記アクチュエータの出力軸内を径方向に貫通する貫通孔に内蔵された共通の弾性部材によってそれぞれ径方向に押圧されるため、部品点数が少なくなり、しかも、第1の凸部および第2の凸部の構成を簡潔にすることができる。
【0017】
また、請求項6にかかる発明の車両のシフト切換装置によれば、前記位置決め機構は、前記アクチュエータのケース孔に設けられて、前記アクチュエータの出力軸の外周面と当接するように付勢される凸部と、前記アクチュエータの出力軸に形成されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置となると前記凸部と嵌合する複数個の凹部とを有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されるものである。このようにすれば、前記位置決め機構をアクチュエータ内部に設けることができ、且つ、位置決め機構をコンパクトに構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
ここで、好適には、請求項3にかかる発明において、さらにケース孔の内周面において、前記アクチュエータの誤作動によってアクチュエータの出力軸がオーバーランしたとき、さらなる回転を阻止するストッパ溝が形成されるものである。このようにすれば、アクチュエータの故障により、出力軸がオーバーランしてもその回転が阻止されるので、さらなる出力軸の過回転による意図しない走行レンジ切換等が回避され、変速機内部の過負荷による破損等を回避することができる。
【0019】
また、好適には、前記位置検出手段は、前記アクチュエータの出力軸の回転位置を検出するものである。このようにすれば、位置決め機構による位置決めの制御性が向上する。
【0020】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明が適用された車両の自動変速機(本発明の変速機に対応)6の構成を説明する骨子図である。本実施例における上記車両は、縦置き型の自動変速機6を有するものであってFR(フロントエンジン・リアドライブ)型の駆動方式を採用するものであり、走行用の動力源としてエンジン8を備えている。内燃機関にて構成されるエンジン8の出力は、流体伝動装置として機能するトルクコンバータ10、自動変速機6、図示しない差動歯車装置および一対の車軸などを介して図示しない左右の駆動輪へ伝達されるようになっている。
【0022】
図1において、自動変速機6は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース(以下、ケースと表す)11内において、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置12を主体として構成されている第1変速部14と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置16およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置18を主体として構成されている第2変速部20とを共通の軸心C上に備え、入力軸22の回転を変速して出力軸24から出力する。入力軸22は、走行用の動力源であるエンジン8によって回転駆動されるトルクコンバータ10のタービン軸でもある。出力軸24は、上述のようにたとえば図示しない差動歯車装置や一対の車軸等を順次介して左右の駆動輪を回転駆動する。なお、自動変速機6は、出力軸24の軸心すなわち上記共通の軸心Cに対して略対称的に構成されており、図1の骨子図においてはその軸心Cの下半分が省略されている。
【0023】
上記第1遊星歯車装置12は、サンギヤS1、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP1、そのピニオンギヤP1を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA1、ピニオンギヤP1を介してサンギヤS1と噛み合うリングギヤR1を備えている。また、第2遊星歯車装置16は、サンギヤS2、ピニオンギヤP2、そのピニオンギヤP2を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA2、ピニオンギヤP2を介してサンギヤS2と噛み合うリングギヤR2を備えている。また、第3遊星歯車装置18は、サンギヤS3、互いに噛み合う複数対のピニオンギヤP2及びP3、そのピニオンギヤP2及びP3を自転及び公転可能に支持するキャリヤCA3、ピニオンギヤP2及びP3を介してサンギヤS3と噛み合うリングギヤR3を備えている。
【0024】
図1におけるクラッチC1〜C4およびブレーキB1、B2(以下特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと記載する)は、油圧シリンダから成る油圧アクチュエータとその油圧アクチュエータに供給される油圧により係合或いは解放される多板式のクラッチあるいはブレーキとを備える油圧式摩擦係合装置である。第1回転要素RM1(サンギヤS2)は、ブレーキB1を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、クラッチC3を介して中間出力部材である第1遊星歯車装置12のリングギヤR1すなわち第2中間出力経路PA2に選択的に連結され、さらにクラッチC4を介して第1遊星歯車装置12のキャリヤCA1すなわち第1中間出力間接経路PA1bに選択的に連結されるようになっている。
【0025】
また、第2回転要素RM2(キャリヤCA2およびCA3)は、ブレーキB2を介してケース11に選択的に連結されて回転停止され、クラッチC2を介して入力軸22すなわち第1中間出力直結経路PA1aに選択的に連結されるようになっている。また、第3回転要素RM3(リングギヤR2およびR3)は、出力軸24に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。また、第4回転要素RM4(サンギヤS3)は、クラッチC1を介してリングギヤR1に連結されるようになっている。
【0026】
また、第2回転要素RM2とケース11との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸22と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチF1がブレーキB2と並列に設けられている。また、第3回転部材RM3の外周側には、後述の駐車ロック機構としても機能するシフト切換装置105の一部を構成し、後述の図6に示すパーキングロックポール108と噛み合うことにより出力軸24の回転を阻止するパーキングギヤ106が固設されている。
【0027】
図2は、図1に示す自動変速機6において変速比の異なる複数の変速段を成立させる際の前記クラッチC、ブレーキB、一方向クラッチF1を含む各係合要素の作動状態を説明する図表であり、「○」は係合状態を、「(○)」はエンジンブレーキ時のみの係合状態を、空欄は解放状態をそれぞれ表している。図2に示すように、本実施例の自動変速機6は、上記各係合要素が選択的に係合させられることにより変速比(自動変速機6の入力軸回転数を出力軸回転数で除した値)が異なる前進8段を含む複数の変速段が成立するようになっている。なお、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置12、第2遊星歯車装置16、および第3遊星歯車装置18の各ギヤ比によって適宜定められる。
【0028】
図3は、図1に示すクラッチCおよびブレーキBにそれぞれ設けられた油圧アクチュエータACT1〜ACT6の作動を制御するリニアソレノイドバルブSL1〜SL6等に関する油圧制御回路25の要部を示す回路図である。
【0029】
図3において、油圧供給装置26は、エンジン8によって回転駆動される機械式のオイルポンプ27(図1参照)から発生する油圧を元圧として第1ライン油圧PL1を調圧する例えばリリーフ型のプライマリレギュレータバルブ(第1調圧弁)28と、そのプライマリレギュレータバルブ28から排出される油圧を元圧として第2ライン油圧PL2を調圧するセカンダリレギュレータバルブ(第2調圧弁)29と、アクセル操作量(アクセル開度)Acc或いはスロットル弁開度θTHで表されるエンジン負荷等に応じた第1ライン油圧PL1および第2ライン油圧PL2が調圧されるためにプライマリレギュレータバルブ28およびセカンダリレギュレータバルブ29へ信号圧PSLTを供給するリニアソレノイドバルブSLTと、第1ライン油圧PL1を元圧としてモジュレータ油圧PMを一定値に調圧するモジュレータバルブ30とを備えている。また、油圧供給装置26は、後述の図4に示すシフトレバー38およびパーキングスイッチ40の操作すなわちシフトレンジ(シフトポジション)切換操作に基づいて出力される電気的駆動指令信号SAに従って駆動する電動アクチュエータ(アクチュエータ)34により油路が切り換えられ、シフトレバー38が予め定められた操作位置のうちのドライブレンジ指令位置(前進走行指令位置)Dへ操作されたときには、入力された第1ライン油圧PL1をドライブレンジ油圧PDとして出力し、シフトレバー38がリバースレンジ指令位置(後進走行指令位置)Rへ操作されたときには、入力された第1ライン油圧PL1をリバースレンジ油圧PRとして出力し、シフトレバー38がニュートラルレンジ指令位置(動力伝達遮断指令位置)Nへ操作されるか、あるいはパーキングスイッチ40がパーキングレンジ指令位置(駐車指令位置)Pへ操作されるすなわちパーキングレンジ切換操作が行われたときには、油圧の出力を遮断するマニュアルバルブ(シフトレンジ切換弁)31を備えている。油圧供給装置26は、第1ライン油圧PL1、第2ライン油圧PL2、モジュレータ油圧PM、ドライブレンジ油圧PD、およびリバースレンジ油圧PRを出力するようになっている。
【0030】
前記クラッチCおよびブレーキBにそれぞれ設けられた油圧シリンダから成る油圧アクチュエータACT1〜ACT6には、リニアソレノイドバルブSL1〜SL6(以下特に区別しない場合はリニアソレノイドバルブSLと記載する)がそれぞれ設けられている。油圧アクチュエータACT1、ACT2、ACT5、ACT6には、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブSL1、SL2、SL5、SL6により、油圧供給装置26からそれぞれ供給されたドライブレンジ油圧PDが調圧されて供給される。また、各油圧アクチュエータACT3、ACT4には、それぞれ対応するリニアソレノイドバルブSL3、SL4により、油圧供給装置26からそれぞれ供給されたリバースレンジ油圧PRが調圧されて供給される。なお、ブレーキB2の油圧アクチュエータACT6には、リニアソレノイドバルブSL6の出力油圧またはリバースレンジ油圧PRのどちらかがシャトル弁33を介して供給されるようになっている。
【0031】
ここで、上記リニアソレノイドバルブSL1〜SL6は、基本的には何れも同じ構成であり、それぞれ独立に励磁、非励磁や電流制御がなされて各油圧アクチュエータACT1〜ACT6へ供給される油圧を独立に調圧制御し、各クラッチCおよびブレーキBの係合圧をそれぞれ制御するものである。そして、自動変速機6は、例えば図2の係合作動表に示すように予め定められた係合要素が係合されることによって各変速段が成立させられる。例えば、図2の係合作動表に示すように第5変速段から第4変速段へのダウンシフトに際しては、クラッチC2が解放されると共にクラッチC4が係合され、変速ショックを抑制するようにクラッチC2の解放過渡油圧とクラッチC4の係合過渡油圧とが適切に制御される。
【0032】
図4は、後述のシフト切換装置105のシフトレンジを切り換えるためのシフトレンジ切換操作の入力装置として機能するシフト操作装置36を示す斜視図である。図4において、シフト操作装置36は、例えば運転席の近傍に配設されて運転者により操作され、車両前後方向に配列された3つの操作位置すなわちドライブレンジ指令位置D、リバースレンジ指令位置R、ニュートラルレンジ指令位置Nへ操作されるシフトレバー38と、駐車する際に押圧操作されることでパーキングレンジ指令位置Pへ位置させられる押釦式のパーキングスイッチ40とを備えている。上記シフトレバー38は、図示しないスプリングの付勢力に従って、非操作時には図4に示す位置すなわち原位置(ホームポジション)に自動的に復帰させられるモーメンタリータイプ(自動復帰型)である。また、シフトレバー38は、上記原位置からニュートラルレンジ指令位置Nを通過してドライブレンジ指令位置Dまたはリバースレンジ指令位置Rへ操作されるようになっている。また、シフト操作装置36は、シフトレバー38の操作位置を検出してその操作位置を示すシフトレバー位置信号PSHを後述の電子制御装置46に供給するシフトレバーポジションセンサ42と、P操作スイッチ94が押圧操作されてパーキングレンジ指令位置Pへ位置させられたことを示す駐車指令信号PPを後述の電子制御装置46に供給するパーキングポジションセンサ44とをさらに備えている。シフト操作装置36は、シフトレバー38およびパーキングスイッチ40の操作すなわちシフトレンジ切換操作を電気的に検出し、そのシフトレンジ切換操作に応じてシフトレンジ指令信号に相当する上記シフトレバー位置信号PSHおよび駐車指令信号PPを発生するものである。
【0033】
ここで、上記ドライブレンジ指令位置Dは、シフトレンジを車両が前進走行させられるドライブレンジ(「D」レンジ)に切り換えるための操作位置であって、図2に示す第1速ギヤ段「1st」〜第8速ギヤ段「8th」のいずれか1つが成立させられる。
【0034】
また、リバースレンジ指令位置Rは、シフトレンジを車両が後進走行させられるリバースレンジ(「R」レンジ)に切り換えるための操作位置であって、図2に示す第1後進ギヤ段「Rev1」または第2後進ギヤ段「Rev2」が成立させられる。
【0035】
また、ニュートラルレンジ指令位置Nは、シフトレンジを自動変速機6の動力伝達経路が遮断状態にされるニュートラルレンジ(「N」レンジ)に切り換えるための操作位置である。
【0036】
また、パーキングレンジ指令位置Pは、シフトレンジを自動変速機6の動力伝達経路が遮断状態にされ、且つ後述のシフト切換装置105によって自動変速機6の出力軸24の回転が機械的に固定されるパーキングレンジ(「P」レンジ)に切り換えるための操作位置である。
【0037】
図5は、図1に示す自動変速機6やエンジン8などを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。図5において、電子制御装置46は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8の出力制御や自動変速機6の変速制御やシフトレンジを切り換えるシフトレンジ切換制御等を実行する。なお、この電子制御装置46は、必要に応じて出力制御用や変速制御用やシフトレンジ切換制御用などに分けて構成されるものであり、本実施例では、上記シフトレンジ切換制御を行うシフトバイワイヤ用電子制御装置としてのSBW−ECU48を含んで構成されている。
【0038】
図5に示すように、電子制御装置46には、車速V[km/h]を検出する車速センサ58、アクセルペダル60の操作量すなわちアクセル操作量Acc[%]を検出するアクセル操作量センサ62、常用ブレーキであるフットブレーキ64の操作量すなわちブレーキ操作量B[%]を検出するフットブレーキ操作量センサ66、シフトレバー38の操作位置を検出してシフトレバー位置信号PSHを出力するするシフトレバーポジションセンサ42、パーキングスイッチ40がパーキングレンジ指令位置Pへ操作されたことを検出して駐車指令信号PPを出力するパーキングポジションセンサ44、電動アクチュエータ34内部に配設され、その電動アクチュエータ34の出力軸84の回転位置に応じて出力されるポジション電圧PVを検出するニュートラルスタートスイッチ82等から、車速V、アクセル操作量Acc、ブレーキ操作量B、シフトレバー位置信号PSH、駐車指令信号PP、ポジション信号PVなどを表す信号が供給される。
【0039】
また、電子制御装置46からは、シフトレバー位置信号PSHが変更されたことや駐車指令信号PPが供給されたことに応じてマニュアルバルブ31の油路や後述の駐車ロック機構の切り換えを行うことにより走行レンジを切り換えるために、電動モータやソレノイド等からなる電動アクチュエータ34へ駆動指令信号SAが出力される。本実施例では、シフトレバー38やパーキングスイッチ44の操作すなわちシフトレンジ切換操作に従って電動アクチュエータ34の回転が制御されることにより走行レンジが切り換えられるようになっている。なお、本実施例のSBW−ECU48は、ニュートラルスタートスイッチ82から出力されるポジション電圧PVを取得して上記電動アクチュエータ34の実際の回転状況を検出し、指令位置となるまで電動アクチュエータ34を駆動するフィードバック制御を行うようになっている。
【0040】
図6は、自動変速機6の出力軸24の回転を機械的に固定するパーキングロックを行う駐車ロック機構としても機能し、シフトレバー位置信号PSHまたは駐車指令信号PPに従って作動する電動アクチュエータ34によりシフトレンジを切り換えるシフト切換装置105の構成を示す斜視図である。
【0041】
図6において、シフト切換装置105は、自動変速機6の出力軸24に固定されたパーキングギヤ106と、パーキングギヤ106に噛み合う噛合位置へ回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ106に噛み合わされることにより出力軸24を回転不能に固定するパーキングロックポール108と、パーキングロックポール108に係合するテーパ部材110に挿し通されてそのテーパ部材110を一端部において支持するパーキングロッド112と、パーキングロッド112に設けられてテーパ部材110をその小径方向へ付勢するスプリング114と、パーキングロッド112の他端部に回動可能に接続されてマニュアルバルブ31のスプール弁子124を軸心方向に移動させるプレート116と、プレート116に固設されて一軸心まわりに回転可能に支持されたコントロールロッド118と、コントロールロッド118を回転駆動させる電動アクチュエータ34とを、備えている。なお、マニュアルバルブ31が自動変速機6内部の油路を切り換える本発明の油路変更手段に対応しており、電動アクチュエータ34が本発明のアクチュエータに対応している。
【0042】
プレート116には、マニュアルバルブ31のスプール弁子124の一端がプレート116に設けられたピン126を介してそのピン126まわりに回動可能且つプレート116に対してコントロールロッド118とピン126とを結ぶ直線方向に相対移動可能に設けられており、コントロールロッド118の回転すなわちプレート116のコントロールロッド118の軸心まわりの回動に伴ってマニュアルバルブ31のスプール弁子124がそのスプール弁子124の軸心方向に摺動させられるようになっている。上記スプール弁子124を摺動可能に収容するバルブボデー125内には、油圧制御回路25を構成する油路の一部が設けられている。また、プレート116は、コントロールロッド118を介して電動アクチュエータ34に作動的に連結されている。
【0043】
図6は、シフトレンジがパーキングレンジであるとき、すなわちシフト切換装置105がパーキングロックされた状態を示している。この状態では、パーキングロックポール108がパーキングギヤ106を回転不能に固定しており、車両の出力軸24の回転が阻止されている。この状態から、電子制御装置46から作動のための駆動指令信号SAを受けた電動アクチュエータ34によりコントロールロッド118が図6に示す矢印Aの方向に回転されると、プレート116を介してパーキングロッド112が図6に示す矢印Cの方向に移動され、パーキングロッド112の先端に設けられたテーパ部材110の移動によりパーキングロックポール108が図6に示す矢印Dの方向に移動可能となるとともに、マニュアルバルブ31のスプール弁子124が図6に示す矢印Eの方向すなわちスプール弁子124の軸心方向に摺動させられる。
【0044】
上記電動アクチュエータ34の作動すなわちプレート116の回動に伴って、プレート116が矢印Aの方向へ回転させられたときには、パーキングロックポール108がパーキングギヤ106と噛み合うことのない位置まで矢印Dの方向へ押し下げられる。これにより、出力軸24およびこれに連結された車両の駆動輪が機械的に固定されなくなる。そして、プレート116の回動に伴ってスプール弁子124が移動させられ、マニュアルバルブ31の油路が切り換えられるようになっている。
【0045】
一方、電動アクチュエータ34によりコントロールロッド118が矢印Bの方向に回転させられると、上述とは逆の作動によりシフトレンジがパーキングレンジに切り換えられるとともにマニュアルバルブ31の油路がパーキングレンジに対応する状態に切り換えられるようになっている。すなわち、本実施例のシフト切換装置105では、シフト操作装置36から出力されるシフトレバー位置信号PSHおよび駐車指令信号PPに応じてSBW−ECU48により電動アクチュエータ34が制御されてコントロールロッド118がその軸心まわりに回転させられることによって、プレート116を介してマニュアルバルブ31のスプール弁子124が機械的に一直線方向へ移動させられ、そのスプール弁子124が4つのシフトレンジすなわちドライブレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジ、またはパーキングレンジのうちの1つに対応する位置に位置決めされることにより油圧制御回路25の油路が切り換えられるようになっている。
【0046】
また、本実施例では、油圧制御装置25の油路を切り換えるスプール弁子124を各走行レンジに対応する切換位置に位置決めする位置決め機構130が電動アクチュエータ34内部に設けられている。図7は、電動アクチュエータ34内部に配設されている位置決め機構130を説明するための電動アクチュエータ34の部分断面図であり、図8は、図7において位置決め機構130を矢印G方向から見た矢視図である。図7において、電動アクチュエータ34の非回転部材であるケース132に形成されたケース孔134に電動アクチュエータ34の出力軸84が回転可能に挿通されている。ここで、電動アクチュエータ34の出力軸84とコントロールロッド118とは、スプライン嵌合によって動力伝達可能に連結されており、電動アクチュエータ34の回転がコントロールロッド118に伝達される。
【0047】
位置決め機構130は、電動アクチュエータ34の出力軸84が挿通されるケース孔134の内周面において、電動アクチュエータ34の出力軸84の走行レンジに対応する回転位置に形成された複数個の凹部と、電動アクチュエータ34の出力軸84から、スプリング140によってケース孔134の内周面に当接するように付勢されて、電動アクチュエータ34の出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置となったとき、その所定の走行レンジに対応する凹部と勘合する第1係合部142および第2係合部144とを有し、電動アクチュエータ34の回転駆動に伴って嵌合状態が適宜変更される。なお、スプリング140が本発明の弾性部材に対応している。
【0048】
ケース132のケース孔134に形成された複数個の凹部は、選択される走行レンジに対応する位置、すなわち出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置となると、第1係合部142および第2係合部144の何れかと嵌合する位置に形成されている。図8において、上部に形成されている「P」レンジに対応するP凹部146から時計方向に、「N」レンジに対応するN凹部148、「R」レンジに対応するR凹部150、「D」レンジに対応するD凹部152が形成され、さらに、電動アクチュエータ34の誤作動時による出力軸84のオーバーラン時において、その回転を停止させる第1ストッパ溝154、および第2ストッパ溝156が形成されている。なお、本実施例のP凹部146、N凹部148、R凹部150、およびD凹部152が、本発明の凹部に対応している。
【0049】
また、円柱形状である第1嵌合部142および第2嵌合部144は、出力軸84の軸心(中心)を通って径方向に貫通する貫通孔138に摺動可能にそれぞれ嵌め入れられており、貫通孔138に内挿された共通のスプリング140の弾性復帰力によって、それぞれ径方向の押圧されている。また、第1嵌合部142および第2嵌合部144の外径側に位置する先端部(158、160)は、ぞれぞれ半球状に形成されており、この先端部(158、160)が、スプリング140の弾性復帰力によってケース孔134の内周面に当接させられる。なお、第1嵌合部142が本発明の凸部および第1の凸部に対応しており、第2嵌合部144が本発明の凸部および第2の凸部に対応している。
【0050】
ここで、図9(図8も同様)は、第1嵌合部142の先端部158がP凹部146に嵌合された状態を示している。このときの出力軸84の回転位置が「P」レンジに対応している。すなわち、第1嵌合部142がP凹部146に嵌合されると、それに連動して作動させられるコントロールロッド118およびプレート116を介してスプール弁子124が「P」レンジに対応する切換位置に移動させられ、油圧制御回路25の油路が切り換えられる。これにより、走行レンジが非走行レンジである「P」レンジに切り換えられる。
【0051】
ここで、図9の状態から出力軸84が電動アクチュエータ34によって時計方向にさらに回転させられると、図10に示すように、第2嵌合部144の先端部160がR凹部150に嵌合される。このときの出力軸84の回転位置が「R」レンジに対応している。すなわち、第2嵌合部144がR凹部150に嵌合されると、それに連動して作動させられるコントロールロッド118およびプレート116を介してスプール弁子124が「R」レンジに対応する切換位置に移動させられ、油圧制御回路25の油路が切り換えられる。これにより、走行レンジが後進走行レンジである「R」レンジに切り換えられる。
【0052】
また、図10の状態から出力軸84が電動アクチュエータ34によって時計方向にさらに回転させられると、図11に示すように、第1嵌合部142の先端部158がN凹部148に嵌合される。このときの出力軸84の回転位置が「N」レンジに対応している。すなわち、第1嵌合部142がN凹部148に嵌合されると、それに連動して作動させられるコントロールロッド118およびプレート116を介してスプール弁子124が「N」レンジに対応する切換位置に移動させられ、油圧制御回路25の油路が切り換えられる。これにより、走行レンジが非走行レンジである「N」レンジに切り換えられる。
【0053】
また、図11の状態から出力軸84が電動アクチュエータ34によって時計方向にさらに回転させられると、図12に示すように、第2嵌合部144の先端部160がD凹部152に嵌合される。このときの出力軸84の回転位置が「D」レンジに対応している。すなわち、第2嵌合部144がD凹部152に嵌合されると、それに連動して作動させられるコントロールロッド118およびプレート116を介してスプール弁子124が「D」レンジに対応する切換位置に移動させられ、油圧制御回路25の油路が切り換えられる。これにより、走行レンジが前進走行レンジである「D」レンジに切り換えられる。
【0054】
また、図9(または図8)の状態から出力軸84が電動アクチュエータ34によって反時計方向にさらに回転させられる、もしくは、図12の状態から出力軸84が時計方向にさらに回転させられると、図13に示すように、第1嵌合部142が第2ストッパ溝156に嵌合される、もしくは、第2嵌合部144が第1ストッパ溝154に嵌合される。なお、図13においては、図8の第1ストッパ溝154および第2ストッパ溝156が共通のストッパ溝として表示されるものとする。ここで、ストッパ溝(154、156)は他の凹部に比べ径方向に長め(深く)に形成されているので、第1嵌合部142または第2嵌合部144が嵌合されると、それぞれの嵌合部(142、144)がストッパ溝(154、156)の深くまで嵌め入れられる。これにより、嵌合部(142、144)が出力軸84の回転停止部材(ストッパ部材)として機能させられ、電動アクチュエータ34の故障によって出力軸84がオーバーランされたとき、その回転を強制停止させる。なお、第1嵌合部142および第2嵌合部144は、電動アクチュエータ34の駆動トルクによって破損されない強度を有するようにその形状が設計される。これに伴い、第1係合部142および第2係合部144の形状は、円柱形状に限定されず、例えば出力軸84の軸心方向に所定の奥行き径を有する形状など、強度を確保するために適宜その形状が変更される。
【0055】
上記のように、図8乃至図12に示すように、出力軸84が時計方向に回転するに従い、「P」、「R」、「N」、「D」レンジと順番にシフトされるが、「P」レンジのP凹部146および「N」レンジのN凹部148が隣り合って形成されると共に、「R」レンジのR凹部150および「D」レンジのD凹部152が前記P凹部146、N凹部148に対して出力軸84の対角側に形成されている。そして、P凹部146とN凹部148とが、出力軸84の回転位置に応じて第1嵌合部142と嵌合状態となり、R凹部150とD凹部152とが、出力軸84の回転位置に応じて第2嵌合部144と嵌合状態となる。これより、走行レンジが出力軸84の回転に伴って「P」、「R」、「N」、「D」レンジと順番に切り換えられる。さらに、R凹部150とD凹部152とが出力軸84の対角側に形成されるので、各凹部が配置される間隔が拡げられてケース132の強度が確保される。
【0056】
ここで、本実施例のシフト切換装置105では、マニュアルバルブ31のスプール弁子124を走行レンジに対応した位置に位置決めする位置決め機構130が、電動アクチュエータ34の出力軸84とマニュアルバルブ31との間に設けられたスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側、具体的には電動アクチュエータ34内部に設けられている。図14は、シフト切換装置105の動力伝達経路を概略的に示した構成図である。図14に示すように、電動アクチュエータ34のモータ部162の動力が例えば歯車装置やベルト車などを介して出力軸84に伝達される。そして、出力軸84が回転駆動させられ、スプライン嵌合を介してコントロールロッド118に回転が伝達される。さらに、コントロールロッド118の回転位置に応じてマニュアルバルブ31のスプール弁子124が移動され、油圧制御回路25の油路が切り換えられる。また、上述したように、位置決め機構130が出力軸84とコントロールロッド118との間のスプライン嵌合部(連結部)よりも上流側に設けられている。また、ニュートラルスタートスイッチ82が出力軸84に直接的に設けられており、出力軸84の回転位置に応じたポジション電圧PVが検出される。なお、ニュートラルスタートスイッチ82が本発明の位置検出手段に対応している。
【0057】
ニュートラルスタートスイッチ82は、図15に示すように、電動アクチュエータ34の出力軸84の周囲であって軸心Oに対して対称位置に配設された一対の磁石86と、出力軸84に一体的に配設されて一体的に軸心Oまわりに回転させられるホール素子88とを備えている。ホール素子88は、磁力の強さに応じて変化するポジション電圧PVを出力するもので、出力軸84の回転に伴ってホール素子88に作用する磁力が変化することにより、その回転角度に応じてポジション電圧PVは連続的に変化する。したがって、このポジション電圧PVの大きさに基づいて出力軸84の回転位置、更にはマニュアルバルブ31のシフトレンジ「P」、「R」、「N」、「D」を検出することができる。
【0058】
このように、ニュートラルスタートスイッチ82は、位置決め機構130と直結された状態で出力軸84の回転位置を直接検出することから、スプライン嵌合部に形成されるガタの影響が生じない。これより、位置決め機構130の精度が向上することとなる。
【0059】
上述のように、本実施例によれば、マニュアルバルブ31のスプール弁子124を走行レンジに対応する位置に位置決めする位置決め機構130が、電動アクチュエータ34の出力軸84とコントロールロッド118とのスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側に設けられるため、電動アクチュエータ34の出力軸84とコントロールロッドとの間のスプライン嵌合部(連結部)に生じるガタ(組付余裕)の影響なく電動アクチュエータ34の回転を制御することができるようになり、シフト切換装置105の制御性を向上させることができる。
【0060】
また、本実施例によれば、位置決め機構130は電動アクチュエータ34内部に設けられるため、前記ガタの影響を考慮することなく、電動アクチュエータ34の回転を制御することができ、シフト切換装置105の制御性が向上する。また、位置決め機構130をコンパクトに構成することができる。
【0061】
また、本実施例によれば、位置決め機構130は、電動アクチュエータ34の出力軸84が挿通されるケース孔134の内周面において、電動アクチュエータ34の出力軸84の走行レンジに対応する回転位置に形成された複数個の凹部(146、148、150、152)と、電動アクチュエータ34の出力軸84から、スプリング140によってそのケース孔134の内周面に当接するように付勢されて、電動アクチュエータ34の出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置になったとき、その所定の走行レンジに対応する凹部(146、148、150、152)と嵌合する凸部(142、144)とを、有し、電動アクチュエータ34の回転駆動に伴って嵌合状態が変更されるものである。このようにすれば、位置決め機構130を電動アクチュエータ34内部に設けることができ、且つ、位置決め機構130をコンパクトに構成することができる。
【0062】
また、本実施例によれば、電動アクチュエータ34の出力軸84の回転に従って走行レンジが「P」レンジ、「R」レンジ、「N」レンジ、「D」レンジと順番に切り換えられるとき、第「P」レンジに対応するP凹部146と「N」レンジに対応するN凹部148とが、第1嵌合部142と嵌合状態となり、「R」レンジに対応するR凹部150と「D」レンジに対応するD凹部152とが、第1嵌合部142と別体で設けられた第2嵌合部144と嵌合状態となるものである。このようにすれば、「P」レンジと「N」レンジとの間に位置する「R」レンジのR凹部150、並びに、「D」レンジのD凹部152を、P凹部146およびN凹部148とは離れた位置に形成することができる。これにより、P凹部146、N凹部148、R凹部150およびD凹部152の間隔が拡げられて、ケース132の強度を確保することができる。
【0063】
また、本実施例によれば、第1嵌合部142および第2嵌合部144は、電動アクチュエータ34の出力軸84内を径方向に貫通する貫通孔138に内挿された共通のスプリング140によってそれぞれ径方向に押圧されるため、部品点数が少なくなり、しかも、第1嵌合部142および第2嵌合部144の構成を簡潔にすることができる。
【0064】
また、本実施例によれば、さらにケース孔134の内周面において、電動アクチュエータ34の誤作動によって電動アクチュエータ34の出力軸84がオーバーランしたとき、さらなる回転を阻止する第1ストッパ溝154および第2ストッパ溝156が形成されるものである。このようにすれば、電動アクチュエータ34の故障により、出力軸84がオーバーランしてもその回転が停止されるので、さらなる出力軸84の過回転による意図しない走行レンジ切換等が回避され、自動変速機6内部の過負荷による破損等を回避することができる。
【0065】
また、本実施例によれば、ニュートラルスタートスイッチ82は、電動アクチュエータ34の出力軸84の回転位置を直接検出するものである。このようにすれば、位置決め機構130による位置決めの制御性が向上する。
【0066】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例2】
【0067】
図16は、本発明の他の実施例である位置決め機構200を構成を説明する図であり、図8に対応するものである。本実施例では、出力軸84側に走行レンジに対応する複数個の凹部が形成されると共に、ケース132側に第1嵌合部142および第2嵌合部144が設けられている。
【0068】
位置決め機構200は、電動アクチュエータ34のケース孔134側に設けられて、電動アクチュエータ34の出力軸84の外周面と当接するように付勢される第1嵌合部142および第2嵌合部144と、電動アクチュエータ34の出力軸84に形成されて、電動アクチュエータ34の出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置となると第1嵌合部142または第2嵌合部144と嵌合する複数個の凹部とを、有し、電動アクチュエータ34の回転駆動に伴って嵌合状態が変更される。
【0069】
第1嵌合部142は、ケース132に形成された第1の溝202内に内挿された第1スプリング204の弾性復帰力によって出力軸84の中心方向に押圧され、その先端部158が出力軸84の外周面に当接させられている。また、第2嵌合部144は、第2の溝206内に内挿された第2スプリング208の弾性復帰力によって出力軸84の中心方向に押圧され、その先端部160が出力軸84の外周面に当接させられている。
【0070】
出力軸84では、出力軸84の各走行レンジに対応した回転位置に、P凹部146、N凹部148、R凹部150、D凹部152が適宜形成されている。上記のような構成であっても、電動アクチュエータ34を回転駆動(本実施例では反時計方向)させることにより、走行レンジに対応する回転位置に好適に位置決めすることができる。なお、作動に関する詳細な説明は、前述の実施例と同様であるため、その説明を省略する。
【0071】
本実施例においても、マニュアルバルブ31のスプール弁子124を走行レンジに対応した位置に位置決めする位置決め機構200が、電動アクチュエータ34の出力軸84とマニュアルバルブ31との間に設けられたスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側に設けられるので、スプライン嵌合部のガタによる影響が生じない。これより、位置決め機構200の精度が向上することとなる。
【0072】
また、本実施例によれば、位置決め機構200は、電動アクチュエータ34のケース孔134に設けられて、電動アクチュエータ34の出力軸84の外周面と当接するように付勢される第1嵌合部142および第2嵌合部144と、電動アクチュエータ34の出力軸84に形成されて、電動アクチュエータ34の出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置となると第1嵌合部142または第2嵌合部144と嵌合する複数個の凹部(146、148、150、152)とを有し、電動アクチュエータ34の回転駆動に伴って嵌合状態が変更されるものである。このようにすれば、前記位置決め機構200を電動アクチュエータ34内部に設けることができ、且つ、位置決め機構200をコンパクトに構成することができる。
【実施例3】
【0073】
図17は、本実施例のさらに他の実施例である位置決め機構300の構成を説明する図であり、図8に対応するものである。本実施例では、走行レンジが「P」、「R」、「N」、「D」と電動アクチュエータ34の回転に応じて切り換えられるとき、隣り合う走行レンジに対応する凹部が対角上に形成するのではなく、出力軸84に対して例えば90度位相がずれた位置に形成される。
【0074】
これに伴って、第2嵌合部144は、第1嵌合部142に対して90度位相がずれた回転位置にそれぞれ設けられている。第1嵌合部142は、出力軸84に形成された第1の溝302に内挿されている第1スプリング304の弾性復帰力によって径方向外側に押圧され、その先端部158がケース孔134の内周面に当接させられる。また、第2嵌合部144は、出力軸84に形成された第2の溝306に内挿されている第2スプリング308の弾性復帰力によって径方向外側に押圧され、その先端部160がケース孔134の内周面に当接させられる。そして、電動アクチュエータ34の出力軸84が所定の走行レンジに対応する回転位置となると、その走行レンジに対応する凹部が第1嵌合部142および第2嵌合部144の何れかと嵌合状態となる。
【0075】
上記のように構成される位置決め機構300であっても電動アクチュエータ34を回転駆動させることにより、走行レンジに対応する回転位置に好適に位置決めすることができる。
【0076】
上述のように、本実施例においても、マニュアルバルブ31のスプール弁子124を走行レンジに対応した位置に位置決めする位置決め機構300が、電動アクチュエータ34の出力軸84とマニュアルバルブ31との間に設けられたスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側に設けられるので、スプライン嵌合部のガタによる影響が生じない。これより、位置決め機構300の精度が向上することとなる。
【0077】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0078】
例えば、前述の実施例の位置決め機構130、200、300は、電動アクチュエータ34内部に設けられていたが、必ずしも電動アクチュエータ34内部に限定されるものではない。すなわち、位置決め機構が電動アクチュエータ34の出力軸84とマニュアルバルブ31との間に設けられたスプライン嵌合部(連結部)よりも電動アクチュエータ34側に設けられる構成であれば、本発明の効果を得ることができる。
【0079】
また、前述の実施例の電動アクチュエータ34は、モータ部162と出力軸84とが2軸で構成されているが、必ずしも2軸に限定されず、例えば1軸形式の構造であっても構わない。
【0080】
また、前述の実施例の凹部の配置は対角線側もしくは90度位相をずらすなどして、配置されているが、凹部の配置は上記に限定されず、適宜変更しても構わない。また、例えば各凹部に対して1つの係合部を設けることで凹部の間隔を拡げた構造であっても構わない。さらに、強度が確保されるのであれば、1つの係合部(凸部)に対して走行レンジ順に単純に凹部を配置した構造であっても構わない。
【0081】
また、前述の実施例では、電動アクチュエータ34とコントロールロッド118の接続部とはスプライン嵌合されているが、例えばキーなどのよる接続であってもガタが生じるので、本発明を適用することができる。すなわち、ガタが生じる接続方法であれば本発明の効果を好適に得ることができる。
【0082】
また、前述の実施例のニュートラルスタートスイッチ82は、例えば回転角度に応じて変化する磁力を検出するホール素子や磁気抵抗素子等を有する非接触式回転角センサにて構成されているが、例えば回転角度に応じてパルスを出力するロータリエンコーダなど、接触式か非接触式を問わず様々な態様が可能である。また、ニュートラルスタートスイッチ82の取付位置は、出力軸84の回転位置を検出する構成であれば、特に限定されるものではない。
【0083】
また、前述の実施例では、弾性部材としてスプリング140が使用されているが、例えば所定の弾性を有する樹脂やゴム材を内挿することで第1嵌合部142および第2嵌合部144を押圧する構造であっても構わない。
【0084】
また、前述の実施例では、燃料の燃焼によって動力を発生させるエンジン駆動車両であったが、電動モータによって駆動する電気自動車、或いは複数の動力源を備えているハイブリッド車両など、種々の車両用のシフト制御装置に好適に適用される。また、前後進を切り換える前後進切換装置や、変速比が異なる複数のギヤ段を有する有段の自動変速機、或いは変速比を連続的に変化させる無段変速機などを有し、シフト機構により駆動状態を変更することができる種々の車両に好適に適用される。
【0085】
また、前述の実施例では、自動変速機として有段式の自動変速機6が用いられていたが、自動変速機の構造は前述の実施例のものに限定されず、遊星歯車装置の数や変速段数、およびクラッチC、ブレーキBの数が遊星歯車装置のどの要素と選択的に連結されているかなど特に限定はない。
【0086】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明が適用された車両の動力伝達機構すなわち自動変速機の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1に示す自動変速機において変速比の異なる複数の変速段を成立させる際の複数の油圧式摩擦係合装置の作動状態を説明する図表である。
【図3】図1に示すクラッチおよびブレーキの各油圧アクチュエータの作動を制御するリニアソレノイドバルブに関する油圧制御回路の要部を示す回路図である。
【図4】シフトポジションを切り換えるためのシフトポジション切換操作の入力装置として機能するシフト操作装置を示す斜視図である。
【図5】図1に示す自動変速機やエンジンなどを制御するために車両に設けられた制御系統の要部を説明するブロック線図である。
【図6】図5に示すSBW−ECUに供給されるシフトレバー位置信号または駐車指令信号に従って作動する電動アクチュエータによりシフトポジションを切り換えるシフト切換装置の構成を示す斜視図である。
【図7】電動アクチュエータ内部に配設されている位置決め機構を説明するための電動アクチュエータの部分断面図である。
【図8】図7において位置決め機構を矢印G方向から見た矢視図である。
【図9】位置決め機構において、第1嵌合部の先端部がP凹部に嵌合された状態を示す図である。
【図10】位置決め機構において、第2嵌合部の先端部がR凹部に嵌合された状態を示す図である。
【図11】位置決め機構において、第1嵌合部の先端部がN凹部に嵌合された状態を示す図である。
【図12】位置決め機構において、第2嵌合部の先端部がD凹部に嵌合された状態を示す図である。
【図13】位置決め機構において、第1、第2嵌合部の先端部がストッパに嵌合された状態を示す図である。
【図14】シフト切換装置の動力伝達経路を概略的に示した構成図である。
【図15】図14のニュートラルスタートスイッチを説明する概略構成図である。
【図16】本発明の他の実施例である位置決め機構を構成を説明する図であり、図8に対応するものである。
【図17】本実施例のさらに他の実施例である位置決め機構の構成を説明する図であり、図8に対応するものである。
【符号の説明】
【0088】
6:自動変速機(変速機)
31:マニュアルバルブ(油路変更手段)
34:電動アクチュエータ(アクチュエータ)
82:ニュートラルスタートスイッチ(位置検出手段)
84:出力軸(アクチュエータの出力軸)
105:シフト切換装置
118:コントロールロッド
130、200、300:位置決め機構
134:ケース孔
140:スプリング(弾性部材)
142:第1嵌合部(凸部、第1の凸部)
144:第2嵌合部(凸部、第2の凸部)
146:P凹部(凹部)
148:N凹部(凹部)
150:R凹部(凹部)
152:D凹部(凹部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機内部の油路を切り換えることで走行レンジを変更する油路変更手段と、前記走行レンジに応じた回転位置に変位されることにより前記油路変更手段の油路を切り換えるコントロールロッドと、該コントロールロッドに動力伝達可能に連結されることで該コントロールロッドを回転可能なアクチュエータと、所定の回転部材の回転位置を検出する位置検出手段とを、備え、前記位置検出手段によって検出される所定の回転部材の回転位置に基づいて前記アクチュエータの回転を制御して走行レンジを切り換える車両のシフト切換装置であって、
前記油路変更手段を走行レンジに対応する切換位置へ位置決めする位置決め機構を備え、
該位置決め機構は、前記アクチュエータの出力軸と前記コントロールロッドの入力軸との連結部よりも前記アクチュエータ側に設けられることを特徴とする車両のシフト切換装置。
【請求項2】
前記位置決め機構は前記アクチュエータ内部に設けられることを特徴とする請求項1の車両のシフト切換装置。
【請求項3】
前記位置決め機構は、
前記アクチュエータの出力軸が挿通されるケース孔の内周面において、前記アクチュエータの出力軸の走行レンジに対応する回転位置に形成された複数個の凹部と、
前記アクチュエータの出力軸から弾性部材によって前記ケース孔の内周面に当接するように付勢されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置になったとき、前記所定の走行レンジに対応する凹部と嵌合する凸部と、
を有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されることを特徴とする請求項2の車両のシフト切換装置。
【請求項4】
前記アクチュエータの出力軸の回転に従って走行レンジが第1シフトレンジ、第2シフトレンジ、第3シフトレンジと順番に切り換えられるとき、前記第1シフトレンジに対応する第1の凹部と前記第3シフトレンジに対応する第3の凹部とが、第1の凸部と嵌合状態となり、前記第2シフトレンジに対応する第2の凹部が前記第1の凸部と別体で設けられた第2の凸部と嵌合状態となることを特徴とする請求項3の車両のシフト切換装置。
【請求項5】
前記第1の凸部および第2の凸部は、前記アクチュエータの出力軸内を径方向に貫通する貫通孔に内挿された共通の弾性部材によってそれぞれ径方向に押圧されることを特徴とする請求項4の車両のシフト切換装置。
【請求項6】
前記位置決め機構は、
前記アクチュエータのケース孔に設けられて、前記アクチュエータの出力軸の外周面と当接するように付勢される凸部と、
前記アクチュエータの出力軸に形成されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置となると、前記凸部と嵌合する複数個の凹部とを
有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されることを特徴とする請求項2の車両のシフト切換装置。
【請求項1】
変速機内部の油路を切り換えることで走行レンジを変更する油路変更手段と、前記走行レンジに応じた回転位置に変位されることにより前記油路変更手段の油路を切り換えるコントロールロッドと、該コントロールロッドに動力伝達可能に連結されることで該コントロールロッドを回転可能なアクチュエータと、所定の回転部材の回転位置を検出する位置検出手段とを、備え、前記位置検出手段によって検出される所定の回転部材の回転位置に基づいて前記アクチュエータの回転を制御して走行レンジを切り換える車両のシフト切換装置であって、
前記油路変更手段を走行レンジに対応する切換位置へ位置決めする位置決め機構を備え、
該位置決め機構は、前記アクチュエータの出力軸と前記コントロールロッドの入力軸との連結部よりも前記アクチュエータ側に設けられることを特徴とする車両のシフト切換装置。
【請求項2】
前記位置決め機構は前記アクチュエータ内部に設けられることを特徴とする請求項1の車両のシフト切換装置。
【請求項3】
前記位置決め機構は、
前記アクチュエータの出力軸が挿通されるケース孔の内周面において、前記アクチュエータの出力軸の走行レンジに対応する回転位置に形成された複数個の凹部と、
前記アクチュエータの出力軸から弾性部材によって前記ケース孔の内周面に当接するように付勢されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置になったとき、前記所定の走行レンジに対応する凹部と嵌合する凸部と、
を有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されることを特徴とする請求項2の車両のシフト切換装置。
【請求項4】
前記アクチュエータの出力軸の回転に従って走行レンジが第1シフトレンジ、第2シフトレンジ、第3シフトレンジと順番に切り換えられるとき、前記第1シフトレンジに対応する第1の凹部と前記第3シフトレンジに対応する第3の凹部とが、第1の凸部と嵌合状態となり、前記第2シフトレンジに対応する第2の凹部が前記第1の凸部と別体で設けられた第2の凸部と嵌合状態となることを特徴とする請求項3の車両のシフト切換装置。
【請求項5】
前記第1の凸部および第2の凸部は、前記アクチュエータの出力軸内を径方向に貫通する貫通孔に内挿された共通の弾性部材によってそれぞれ径方向に押圧されることを特徴とする請求項4の車両のシフト切換装置。
【請求項6】
前記位置決め機構は、
前記アクチュエータのケース孔に設けられて、前記アクチュエータの出力軸の外周面と当接するように付勢される凸部と、
前記アクチュエータの出力軸に形成されて、前記アクチュエータの出力軸が所定の走行レンジに対応する回転位置となると、前記凸部と嵌合する複数個の凹部とを
有し、前記アクチュエータの回転駆動に伴って嵌合状態が変更されることを特徴とする請求項2の車両のシフト切換装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−287755(P2009−287755A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143762(P2008−143762)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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