説明

車両のステアリングステム締結構造

【課題】トップブリッジ回りに配置される部品の形状自由度、配置自由度等の設計自由度並びに生産の自由度を増すことが可能な車両のステアリングステム締結構造を提供する。
【解決手段】ステアリングステム34を、トップブリッジ32にキャップナット36で取付け、このキャップナット36を、円筒部36aと、この円筒部36aの端部に一体に設けられた蓋部36cとから構成し、円筒部36aの内周面にステアリングステム34の端部に形成されたおねじ34bにねじ結合するめねじ36bを形成し、蓋部36cにナット部36eを一体に備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングステム締結構造の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車用前輪を支持するフロントフォークには、車体フレームの前端に設けられたヘッドパイプにステアリングステムを介して操舵自在に取付けられ、ステアリングステムの上端がフロントフォークの左右を連結するトップブリッジに締結されたものがある。
このような従来のステアリングステム締結構造として、ステアリングステムの上端をトップブリッジにナットで締結するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−99675号公報
【0003】
特許文献1の図3、図4を以下に説明する。
ステアリングステム10は、ヘッドパイプ11に軸受(アウタレース16、円筒ころ14及びインナーレース17からなる)を介して回転自在に支持される。
【0004】
ステアリングステム10の上部には、インナーレース17に当たるようにステムナット21がねじ込まれ、このステムナット21に当たるようにアッパーブラケット12が嵌合され、更に、アッパブラケット12より上方に突出するステアリングステム10の上端部にワッシャ31が嵌められるとともにアッパーナット30がねじ込まれて、アッパーブラケット12にステアリングステム10が締結されている。
【0005】
アッパーブラケット12の上面には左右一対のハンドルホルダ22,22が設けられ、これらのハンドルホルダ22,22にそれぞれ2本のボルト26でハンドルホルダ24を取付けることで図示せぬバーハンドルが取付けられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アッパーブラケット12にステアリングステム10を通すために設けられた挿入穴は、左右のハンドルホルダ22,22の間に設けられているため、アッパーブラケット12にバーハンドルを取付けた後では、ステアリングステム10の上端部をアッパーブラケット12の挿入穴に挿入してもステアリングステム10の上端部にアッパーナット30を工具でねじ込むことが難しくなる。即ち、アッパーブラケット12にステアリングステム10をアッパーナット30で取付けた後に、アッパーブラケット12にバーハンドルを取付けることになる。このように、組付け手順に制限を受ける。
【0007】
また、アッパーブラケット12にバーハンドルを取付けた後にステアリングステム10を取付けるようにすると、アッパーナット30がステアリングステム10に工具でねじ込めるようにハンドルホルダ22,22の位置を変更したり、バーハンドルの形状を変更する必要がある。
以上のように、アッパーブラケット12回りに配置される部品の形状自由度、配置自由度等の設計自由度が少なくなり、更に、組付け順、即ち生産の自由度も少なくなる。
【0008】
本発明の目的は、トップブリッジ回りに配置される部品の形状自由度、配置自由度等の設計自由度並びに生産の自由度を増すことが可能な車両のステアリングステム締結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、ヘッドパイプにステアリングステムが回転自在に軸支され、このステアリングステムの上端にフロントフォークを構成するトップブリッジが取付けられ、このトップブリッジにバーハンドルが取付けられた車両のステアリングステム締結構造において、ステアリングステムを、トップブリッジにキャップナットで取付け、このキャップナットを、円筒部と、この円筒部の端部に一体に設けられた蓋部とから構成し、円筒部の内周面にステアリングステムの端部に形成されたおねじにねじ結合するめねじを形成し、蓋部にナット部を一体に備えることを特徴とする。
【0010】
作用として、ステアリングステムのおねじにねじ結合するめねじが円筒部の内周面に形成されるため、円筒部の端部に設けられた蓋部に形成されたナット部の外形を、ステアリングステムの外径に拘わらず、小さくすることが可能になる。
【0011】
ナット部の外形が小さくなれば、ナット部を回すためにナット部に装着する工具の外径が小さくなり、トップブリッジに取付けられたバーハンドルとキャップナットとが接近していても、キャップナットをステアリングステムに締め込むことが可能になる。
【0012】
請求項2に係る発明は、ナット部の外接円の直径を、ステアリングステムの外径よりも小さくしたことを特徴とする。
作用として、例えば、通常の六角ナットをステアリングステムにねじ結合する場合には、六角ナットの外接円の直径はステアリングステムの外径よりも大きくなるため、この六角ナットを回すソケットの外径が更に大きくなるが、本発明では、キャップナットのナット部の外接円の直径をステアリングステムの外径より小さくすることが可能になり、外径がより小さなソケットをナット部に装着して回せるので、トップブリッジ周りのキャップナットの配置の自由度が増える。また、小型のソケットを使用することで、生産ラインでのソケット保管場所の配置自由度も増える。
【0013】
請求項3に係る発明は、トップブリッジにステアリングステムを通すステム挿通穴を開け、このステム挿通穴に、キャップナットをステアリングステムの端部にねじ結合するときにキャップナットの円筒部が挿入される大径部を形成し、キャップナットの蓋部の外径を円筒部の外径よりも大きくしたことを特徴とする。
作用として、キャップナットの円筒部が環状の凹部に挿入されて、トップブリッジの上面からのキャップナットの突出量が小さくなる。
【0014】
請求項4に係る発明は、蓋部の一部が、ステアリングステムの軸方向から見たときに、バーハンドルに重なるようにしたことを特徴とする。
作用として、ステアリングステムの軸方向から見たときに、バーハンドルに蓋部の一部が重なるようにしたことで、トップブリッジを小型にすることが可能になる。バーハンドルに蓋部の一部が重なっても、キャップナットのナット部の外径を小さくすることが可能なので、ナット部に装着する締付け工具の外径が小さくなり、キャップナットの締め込みが支障なく行える。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、ヘッドパイプにステアリングステムが回転自在に軸支され、このステアリングステムの上端にフロントフォークを構成するトップブリッジが取付けられ、このトップブリッジにバーハンドルが取付けられた車両のステアリングステム締結構造において、ステアリングステムを、トップブリッジにキャップナットで取付け、このキャップナットを、円筒部と、この円筒部の端部に一体に設けられた蓋部とから構成し、円筒部の内周面にステアリングステムの端部に形成されたおねじにねじ結合するめねじを形成し、蓋部にナット部を一体に備えるので、例えば、ステアリングステムの端部に形成されたおねじに既存のナットを締め込んでトップブリッジにステアリングステムを取付けるのに比べて、既存のナットよりもキャップナットのナット部の外形を小さくすることができ、キャップナットを締め付ける場合に狭いスペースでも締結作業を行うことができる。
【0016】
従って、トップブリッジ回りに配置される部品の形状自由度、配置自由度等の設計自由度を増すことができ、更に、トップブリッジにステアリングステムを取付ける前にハンドル等の他の部品をトップブリッジに取付けたとしてもステアリングステムの締結に影響が受けにくくなり、生産の自由度をも増すことができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、ナット部の外接円の直径を、ステアリングステムの外径よりも小さくしたので、ナット部に装着するソケットの外径を小さくすることができ、トップブリッジ周りのキャップナットの配置自由度を増すことができる。また、生産ラインにおいてソケットを保管する保管場所での工具配置自由度も増すことができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、トップブリッジにステアリングステムを通すステム挿通穴を
開け、このステム挿通穴に、キャップナットをステアリングステムの端部にねじ結合するときにキャップナットの円筒部が挿入される大径部を形成し、キャップナットの蓋部の外径を円筒部の外径よりも大きくしたので、大径部によってステアリングステムとキャップナットとの締結位置を低くすることができ、トップブリッジ上面からのキャップナットの突出量を抑えることができる。従って、狭いスペースでも締結し易くすることができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、蓋部の一部が、ステアリングステムの軸方向から見たときに、バーハンドルに重なるようにしたので、トップブリッジを小型にすることができ、車体前部をスリムにすることができる。また、キャップナットのナット部を小さくすることで、トップブリッジにバーハンドルを小組みした後で、トップブリッジにステアリングステムをキャップナットを回して取付けることができ、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係るステアリングステム締結構造(第1実施形態)を備える車両の側面図であり、車両10は、プレス成形された複数の部材からなる車体フレーム11を備え、この車体フレーム11の前端部を構成するヘッドパイプ12にフロントフォーク13が操舵自在に取付けられ、車体フレーム11の中央部にエンジン14が配置され、車体フレーム11の下部後部に設けられたピボット軸16に上下スイング自在にリヤフォーク17が取付けられた自動二輪車である。
【0021】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12から後方に延びる一本のメインフレーム21と、このメインフレーム21の中央部から下方に延びるセンタフレーム22と、メインフレーム21の後部及びセンタフレーム22の下部のそれぞれに渡され取付けられたサブフレーム23と、ヘッドパイプ12から後方斜め下方に延びるダウンフレーム24とからなるモノバックボーン型のものである。
【0022】
フロントフォーク13は、左右一対のクッションユニット31,31(手前側の符号31のみ示す。)と、これらのクッションユニット31,31を連結するトップブリッジ32及びボトムブリッジ33と、これらのトップブリッジ32及びボトムブリッジ33のそれぞれに渡されて取付けられたステアリングステム34とからなり、ステアリングステム34はヘッドパイプ12に回動自在に支持され、ステアリングステム34の上端は、トップブリッジ32にキャップナット36で締結されている。
【0023】
左右のクッションユニット31,31のそれぞれの下端には車軸38を介して前輪39が回転自在に取付けられている。
トップブリッジ32の上部にはバーハンドル41が取付けられている。
【0024】
エンジン14は、後部に変速機43が一体的に付設された駆動源であり、ダウンフレーム24の下端部に取付けられたエンジン支持ブラケット45及びセンタフレーム22の下部に支持されたクランクケース46と、このクランクケース46の前部から上方に突出したシリンダ部47とを備える。
シリンダ部47は、シリンダヘッド51を備え、このシリンダヘッド51の後部に吸気装置52が接続され、シリンダヘッド51の前部に排気装置53が接続されている。
【0025】
吸気装置52は、シリンダヘッド51に設けられた吸気マニホールド55に接続されたスロットルボディ56を備える。
排気装置53は、シリンダヘッド51の前部に接続されて後方に延びる排気管61と、この排気管61の後端に接続されたマフラ62とからなる。
【0026】
リヤフォーク17は、後端に車軸63を介して後輪64が取付けられ、リヤフォーク17の後部とメインフレーム21の後部とにリヤクッションユニット65が渡されて取付けられている。
メインフレーム21は、前部に燃料タンク67、後部にこの燃料タンク67に隣接するシート68が取付けられている。
【0027】
燃料タンク67は、吸気装置52を介してエンジン14に燃料を供給する燃料供給装置71が付設された部品である。
燃料供給装置71は、燃料タンク67の底面に取付けられて燃料タンク67内に配置された燃料ポンプ72と、この燃料ポンプ72の下部後部に一端が接続された第1燃料供給管73と、この第1燃料供給管73の他端に接続された燃料フィルタ74と、この燃料フィルタ74の下端に一端が接続された第2燃料供給管76と、この第2燃料供給管76の他端に接続された燃料噴射弁77と、燃料フィルタ74から燃料タンク67内に燃料を戻すために燃料フィルタ74の上端に一端が接続されるとともに他端が燃料タンク67の底面に接続された燃料戻り管78とからなり、燃料噴射弁77はスロットルボディ56に接続されている。
【0028】
ここで、81はフロントフェンダ、82はサイドかバー、83はリヤボディカバー、84,84(手前側の符号84のみ示す。)はメインフレーム21の後部に取付けられた左右一対のグラブレール、85はテールランプ、86はリヤフェンダ、87は変速機43から後輪64に動力を伝える駆動チェーン、88はチェーンカバー、91はスタンドである。
【0029】
図2は本発明に係る車体前部を示す断面図(第1実施形態)であり、ヘッドパイプ12にステム軸受101,102を介してステアリングステム34が回動自在に支持され、このステアリングステム34の下端部にボトムブリッジ33が取付けられ、ステアリングステム34の上端部にステムナット103とキャップナット36とに挟まれるようにトップブリッジ32が取付けられ、クッションユニット31がトップブリッジ32及びボトムブリッジ33に取付けられている。
【0030】
ここで、105はトップブリッジ32にクッションユニット31を取付けるフォークボルト、106はワッシャ、107はボトムブリッジ33にクッションユニット31を締め付けるボルト、111はトップブリッジ32に取付けられたキーシリンダ、112はキーシリンダ111の上方を覆うキーシャッター、113,113(手前側の符号113のみ示す。)はトップブリッジ32に一体に設けられた左右一対のハンドル支持部114(手前側の符号114のみ示す。)とでバーハンドル41を固定するハンドルブラケットである。
【0031】
ステム軸受101は、ヘッドパイプ12に圧入されたアウターレース121と、ステアリグステム34に嵌合されたインナーレース122と、これらのアウターレース121及びインナーレース122のそれぞれの間に設けられた複数の鋼製のボール123とからなり、ステム軸受102は、ステアリグステム34に圧入されたインナーレース125と、ヘッドパイプ12に圧入されたアウターレース126と、これらのインナーレース125及びアウターレース126のそれぞれの間に設けられた複数の鋼製のボール127とからなる。なお、128はダストカバー、131はダストシールである。
【0032】
ステムナット103は、ステアリングステム34に形成されたおねじ34aにねじ結合され、ステム軸101のインナーレース122を押さえるとともにトップブリッジ32の下面を支持している。
【0033】
トップブリッジ32は、ステアリングステム34の上端部を挿入するステアリングステム挿入穴32aと、このステアリングステム挿入穴32aよりも内径が大きな大径穴32bとが形成され、キャップナット36は、ステアリングステム34の上端部に形成されたおねじ34bにねじ結合された円筒部36aがトップブリッジ32の大径穴32bに挿入されている。なお、135はワッシャである。
【0034】
図3は本発明に係るキャップナットの断面図(第1実施形態)であり、キャップナット36は、内面にめねじ36bが形成された円筒部36aと、この円筒部36aの端部に一体に形成された蓋部36cとからなり、蓋部36cは、そのテーパ面36dに六角柱状のナット部36eを一体に備え、蓋部36cの外径D1は、円筒部36aの外径D2よりも大きい。
また、ナット部36eの六角に外接する外接円の直径D3は、ステアリングステム34(図2参照)の外径DS(図2参照)よりも小さい。
【0035】
このように、ナット部36eの外接円直径D3をステアリングステム34の外径DSよりも小さくすることで、ナット部36eに装着するソケット等の工具140(図5(b)参照)の外径を小さくすることができ、トップブリッジ32周りのキャップナット36の配置自由度を増すことができる。また、生産ラインにおいて工具140を保管する保管場所での工具配置自由度も増すことができる。
【0036】
図4は図1の4矢視図(第1実施形態)であり、ステアリングステム34の軸方向から見た図である。なお、キーシリンダ111(図2参照)及びキーシャッター112(図2参照)は省略する。
ステアリングステム34の軸方向から見たときに、キャップナット36に設けられた蓋部36cは、その一部がバーハンドル41に重なっているが、キャップナット36のナット部36eはバーハンドル41とは重なっていなので、このナット部36eに筒状の工具140を掛けてキャップナット36を回して締め付けることができる。
【0037】
また、蓋部36cの一部をバーハンドル41に重なるようにすることで、トップブリッジ32の後部の突出量を小さくすることができ、トップブリッジ32の前後の幅が小さくなり、トップブリッジ32を小型にすることができる。これにより、トップブリッジ32の軽量化が図れるとともに車体前部をスリムにすることができる。
【0038】
ここで、32dはキーシャッター112を取付けるためにトップブリッジ32の前部に設けられた取付座、32e,32eはキーシャッター112を取付けるボルトを挿入するためにトップブリッジ32に開けられた取付穴、32fはキーシリンダ111を通すためにトップブリッジ32に開けられたキーシリンダ挿通穴である。
【0039】
以上に述べたキャップナット36をステアリングステム34に締め付ける要領を次に説明する。
図5(a),(b)は本発明に係るキャップナットの締め付け要領を示す作用図(第1実施形態)である。
(a)において、トップブリッジ32にバーハンドル41が取付けられた状態で、キャップナット36をトップブリッジ32の大径穴32b及びステアリングステム34の上端部の上方まで移動させ、キャップナット36を手回しでステアリングステム34の上端部にねじ込む。
【0040】
(b)において、キャップナット36をステアリングステム34に途中まで締め込んだら、ナット部36eに工具140を装着し、工具140でキャップナット36を本締めする。これで、キャップナット36の締め付けが完了する。
【0041】
以上の図2及び図3に示したように、ステアリングステム34を、トップブリッジ32にキャップナット36で取付け、このキャップナット36を、円筒部36aと、この円筒部36aの端部に一体に設けられた蓋部36cとから構成し、円筒部36aの内周面にステアリングステム34の端部に形成されたおねじ34bにねじ結合するめねじ36bを形成し、蓋部36cにナット部36eを一体に備えるので、例えば、ステアリングステムの端部に形成されたに既存のナットを締め込んでトップブリッジにステアリングステムを取付けるのに比べて、既存のナットよりもキャップナット36のナット部36eの外形を小さくすることができ、キャップナット36を締め付ける場合に狭いスペースでも締結作業を行うことができる。
【0042】
従って、トップブリッジ32回りに配置される部品の形状自由度、配置自由度等の設計自由度を増すことができ、更に、トップブリッジ32にステアリングステム34を取付ける前にバーハンドル41等の他の部品を取付けたとしてもステアリングステム34の締結に影響が受けにくくなり、生産の自由度をも増すことができる。
【0043】
また、トップブリッジ32にステアリングステム34を通すステアリングステム挿通穴32aを開け、このステアリングステム挿通穴32aに、キャップナット36をステアリングステム34の端部にねじ結合するときにキャップナット36の円筒部36aが挿入される大径部32bを形成し、キャップナット36の蓋部36cの外径D1を円筒部36aの外径D2よりも大きくしたので、大径部32bによってステアリングステム34とキャップナット36との締結位置を低くすることができ、トップブリッジ32の上面からのキャップナット36の突出量を抑えることができる。従って、狭いスペースでも締結し易くすることができる。
【0044】
更に、図4に示したように、キャップナット36の蓋部36cの一部が、ステアリングステム34の軸方向から見たときに、バーハンドル41に重なるようにしたので、トップブリッジ32を小型にすることができ、車体前部をスリムにすることができる。また、キャップナット36のナット部36eを小さくすることで、トップブリッジ32にバーハンドル41を小組みした後で、トップブリッジ32にステアリングステム34をキャップナット36を回して取付けることができ、生産性を向上させることができる。
【0045】
図6は本発明に係るステアリングステム締結構造(第2実施形態)を示す要部断面図であり、トップブリッジ57にボルト挿通穴57aが開けられ、このボルト挿通穴57aにステアリングステム58が通され、ステアリングステム58の先端部に形成されたおねじ58aにキャップナット59に形成されためねじ59aがねじ係合されて、トップブリッジ57にステアリングステム58が締結されたことを示している。なお、60はワッシャである。
【0046】
キャップナット59は、内面にめねじ59aが形成されたカップ部59bと、このカップ部59bの底に一体に形成された六角柱状のナット部59cとからなり、形状がより単純になり、コストを低減することができる。
【0047】
図7は本発明に係るキャップナット(第3実施形態)を示す断面図であり、図3に示した第1実施形態と同一構成については、同一符号を付け、詳細説明は省略する。
キャップナット69は、内面にめねじ36bが形成された円筒部36aと、この円筒部36aの端部に一体に形成された蓋部69cとからなり、蓋部69cは、その中央に六角穴69dを備え、この六角穴69dに工具を挿入してキャップナット69をステアリングステム34(図2参照)にねじ結合する。
【0048】
図8は本発明に係る車両の中央部の平面図であり、燃料タンク67内に設けられた燃料ポンプ72の後部に燃料吐出口72aが設けられ、この燃料吐出口72aに第1燃料供給管73のジョイント部73aが接続された状態を示している。
【0049】
例えば、燃料ポンプ72の側方(図の上方又は下方)に燃料吐出口を設け、この燃料吐出口にジョイント部73aを接続すると、ジョイント部73aが1本のメインフレーム21よりも側方に突出するため、ジョイント部73aに車体側方からの外力が作用しやすくなるが、本車両では、ジョイント部73aをメインフレーム21の幅内に配置することで、ジョイント部73aを車両側方から作用する外力から保護することができる。
【0050】
図9は本発明に係る車両のリヤボディカバーを示す分解斜視図であり、リヤボディカバー83は、左右一対の左カバー144、右カバー145と、これらの左カバー144及び右カバー145の後部を連結するように配置されたセンタカバー146とからなる。
【0051】
左カバー144及び右カバー145の前部は、それぞれビス148,149,151,152、プレート状ナット153,153でセンタフレーム21(図8参照)に取付けられ、左カバー144及び右カバー145の内側からそれぞれ突出する突出部144a(不図示),145aがそれぞれゴム製のグロメット154を介してセンタフレーム21に設けられた挿入穴(不図示)に嵌合され、左カバー144及び右カバー145の後部は、それぞれセンタカバー146にビス156及びクリップ157で取付けられるとともに、センタカバー146に、左カバー144及び右カバー145にそれぞれ形成された爪部144b,144b,145b,145bで係合されている。
【0052】
図10は本発明に係る左カバーの側面図であり、左カバー144は、センタフレーム21(図8参照)に取付けるビス151(図9参照)を挿入するビス挿入穴144dと、グラブレール84(図1参照)との干渉を避ける切欠き部144f,144gと、ビス156(図9参照)が挿入されるビス挿通穴144jと、爪部144b,144bと、これらの爪部144b,144bの間に設けられた内方突出部144mとを備える。右カバー145(図9参照)は、左カバー144と基本構造は同一であり、説明は省略する。
【0053】
図11は本発明に係るリヤボディカバーの平面図であり、車幅中央を通り、車体前後方向に延びる車体中心線160よりも左方のリヤボディカバー83を示す。
センタカバー146は、側壁146a,146a(一方の符号146aのみ示す。)にそれぞれ段部146bが形成され、側壁146aから段部146bに亘って、爪部144b,144b及び内方突出部144mが挿入されるスリット部146c〜146eが形成されている。図中の146gは内方突出部144mに対向するようにセンタカバー146に設けられたセンタ側内方突出部である。
【0054】
図12(a)〜(c)は本発明に係るリヤボディカバー用クリップの説明図であり、(a),(b)において、クリップ157は、ばね鋼製であり、プレートがコ字状に折り曲げられて形成されたコ字状部157aと、このコ字状部157aの両先端部にそれぞれ内側にV字状に折り曲げられるように形成されたV字屈曲部157a,157aとからなる。
【0055】
(c)は左カバー144(図9参照)(又は右カバー145(図9参照))とセンタカバー146(図9参照)との結合状態を示す断面図であり、左カバー144の内方突出部144m(又は右カバー145の内方突出部145m)とセンタカバー146のセンタ側内方突出部146gとをクリップ157で結合させたことを示している。
【0056】
詳しくは、左カバー144の内方突出部144m(又は右カバー145の内方突出部145m)とセンタカバー146のセンタ側内方突出部146gとを合わせ、これらの内方突出部144m(又は内方突出部145m)とセンタ側内方突出部146gとにクリップ157を嵌め、クリップ157のV字屈曲部157b,157bを、内方突出部144m(又は内方突出部145m)及びセンタ側内方突出部146gにそれぞれ開けられた係止用スリット144r(又は係止用スリット145r)、146wに掛けている。
【0057】
図13は図9の13矢視図であり、リヤボディカバー83の右カバー145とセンタカバー146との結合状態を示している。
即ち、右カバー145の内方突出部145jはビス156でセンタカバー146の前部に取付けられ、右カバー145の爪部145b,145bは、センタカバー146のスリット部146c〜146eに挿入されてセンタカバー146側に係合され、右カバー145の内方突出部145mはセンタカバー146のセンタ側内方突出部146gと合わされて共にクリップ157で挟まれ、結合されている。
【0058】
図14は図13の14矢視図であり、右カバー145の爪部145bは、溝部145nを備え、この溝部145nにセンタカバー146の段部146bが係合され、更に、爪部145bの先端に設けられた爪本体145pが側壁146aに係合されている。
【0059】
センタカバー146のセンタ側内方突出部146gは、センタカバー146の内面146qから延びる起立壁146r,146sと、これらの起立壁146r,146sを繋ぐ平坦壁146tとからなり、この平坦壁146tが右カバー145の内方突出部145mと合わせられてクリップ157で結合されている。
【0060】
このように、平坦壁146tと内方突出部145mとをクリップ157で結合することで、爪部145bが経年劣化してセンタカバー146側との係合が緩んだ場合でも、右カバー145(及び左カバー144)とセンタカバー146とにびびり音が発生するのを押さえることができる。また、ビスを使用しないので、右カバー145(及び左カバー144)及びセンタカバー146の板厚を小さくすることができる。
【0061】
尚、本実施形態では、図8に示したように、燃料ポンプ72の後部に且つメインフレーム21の幅内に燃料吐出口72aを設けたが、これに限らず、燃料ポンプ72の前部に且つメインフレーム21の幅内に燃料吐出口72aを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のステアリングステム締結構造は、二輪車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係るステアリングステム締結構造(第1実施形態)を備える車両の側面図である。
【図2】本発明に係る車体前部を示す断面図(第1実施形態)である。
【図3】本発明に係るキャップナットの断面図(第1実施形態)である。
【図4】図1の4矢視図(第1実施形態)である。
【図5】本発明に係るキャップナットの締め付け要領を示す作用図(第1実施形態)である。
【図6】本発明に係るステアリングステム締結構造(第2実施形態)を示す要部断面図である。
【図7】本発明に係るキャップナット(第3実施形態)を示す断面図である。
【図8】本発明に係る車両の中央部の平面図である。
【図9】本発明に係る車両のリヤボディカバーを示す分解斜視図である。
【図10】本発明に係る左カバーの側面図である。
【図11】本発明に係るリヤボディカバーの平面図である。
【図12】本発明に係るリヤボディカバー用クリップの説明図である。
【図13】図9の13矢視図である。
【図14】図13の14矢視図である。
【符号の説明】
【0064】
10…車両、12…ヘッドパイプ、13…フロントフォーク、32…トップブリッジ、32a…ステム挿通穴(ステアリングステム挿入穴)、32b…大径穴、34…ステアリングステム、34b…ステアリングステムのおねじ、36…キャップナット、36a…円筒部、36b…円筒部のめねじ、36c…蓋部、36e…ナット部、41…バーハンドル、D1…蓋部の外径、D2…円筒部の外径、D3…ナット部の外接円の直径、DS…ステアリングステムの外径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプにステアリングステムが回転自在に軸支され、このステアリングステムの上端にフロントフォークを構成するトップブリッジが取付けられ、このトップブリッジにバーハンドルが取付けられた車両のステアリングステム締結構造において、
前記ステアリングステムは、前記トップブリッジにキャップナットで取付けられ、
このキャップナットは、円筒部と、この円筒部の端部に一体に設けられた蓋部とからなり、前記円筒部の内周面に、前記ステアリングステムの端部に形成されたおねじにねじ結合するめねじが形成され、前記蓋部にナット部を一体に備えることを特徴とする車両のステアリングステム締結構造。
【請求項2】
前記ナット部の外接円の直径は、前記ステアリングステムの外径よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の車両のステアリングステム締結構造。
【請求項3】
前記トップブリッジに前記ステアリングステムを通すステム挿通穴を開け、このステム挿通穴に、前記キャップナットを前記ステアリングステムの端部にねじ結合するときに前記キャップナットの円筒部が挿入される大径部が形成され、前記キャップナットの蓋部の外径が前記円筒部の外径よりも大きくされていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両のステアリングステム締結構造。
【請求項4】
前記蓋部の一部は、前記ステアリングステムの軸方向から見たときに、前記バーハンドルに重なることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項記載の車両のステアリングステム締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−279909(P2008−279909A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126141(P2007−126141)
【出願日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】