説明

車両のドア構造

【課題】 側面衝突時にインサイドハンドルレバーの操作自体を阻止し、簡単な構成で確実にドアが開く虞をなくす。
【解決手段】 ドアインナパネル12側からドアトリム13に加わる外力によりドアトリム13が車室1の内部材側に押された際、ドアトリム13がパッド部材16とインストルメントパネル2とに挟持され、ドアトリム13のインサイドハンドルレバー4の他端側への移動が阻止され、ドアトリム13の開口15の縁によりインサイドハンドルレバー4が回動されることがなく、ドア3が解錠することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドアの施錠を解除するインサイドハンドルレバーを備えたドア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のドアには車室内からドアの施錠を解除する、即ち、車体側のストライカからドア側のラッチを外すための操作を行うインサイドハンドル装置が備えられている。インサイドハンドル装置は、ドアトリムの裏側(ドアパネルとドアトリムの間)に備えられ、インサイドハンドルレバーの部位のドアトリムが開口し、インサイドハンドルレバーが車室側に臨むようになっている。車室内からインサイドハンドルレバーを操作してドアの施錠を解除することでドアを開くことが可能になる。
【0003】
ところで、車両に対して側面からの衝突が生じた場合、ドアの外側から外力が加えられ、ドアパネルが変形してドアトリムを車室側に変位させることになる。ドアトリムが車室側に変位すると、ドアトリムの開口の縁部でインサイドハンドルレバーが操作されてドアが開く虞がある。このため、車両の側面衝突時を想定して、側面衝突時にドアが開く虞をなくした技術が従来から種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、インサイドハンドルレバーの操作力がケーブルを介して伝えられてラッチをストライカから外す装置において、ラッチをストライカから外すための操作力に満たない荷重がケーブルに加わった際に、インサイドハンドルレバーを離脱させ、側面衝突時にインサイドハンドルレバー自体の操作を不能にしてドアが開く虞をなくした構造となっている。
【0005】
特許文献1に開示された技術では、インサイドハンドルレバーを離脱させるために、インサイドハンドルレバーが離脱可能な部材で支持された構造となっている。しかし、車両の側面衝突時にドアが開く虞をなくすために、インサイドハンドルレバーの支持を複雑な構成にする必要があり、汎用性に欠ける技術であった。
【0006】
また、離脱可能な部材の物性により、インサイドハンドルレバーが脱落する荷重が支配されるため、車両の使用環境によりインサイドハンドルレバーの離脱が安定しないことが考えられ、側面衝突時にドアが開く虞をなくす、といった所望の機能を確実に達成させることができない可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−15624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、側面衝突時にインサイドハンドルレバーの操作自体を阻止し、簡単な構成で確実にドアが開く虞をなくすことができる車両のドア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の車両のドア構造は、一端を支点として他端側を操作して回動させることでドアの解錠を行うインサイドハンドルレバーと、前記インサイドハンドルレバーを車室内に臨ませる開口が形成されてドアパネルの前記車室側に配されるドアトリムとを備えた車両のドア構造において、前記インサイドハンドルレバーの他端側の前記ドアトリムと前記ドアパネルとの間の隙間に、前記隙間を埋めるパッド部材を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に係る本発明では、ドアパネル側からドアトリムに向かって荷重が加わってドアパネルが変形しても、ドアトリムはパッド部材を介してドアパネルと共に荷重が加わる方向に移動し、インサイドハンドルレバーの他端側に移動することがない。このため、ドアパネルが変形しても、ドアトリムの開口縁によりインサイドハンドルレバーが回動されることがなく、ドアパネルの変形時にドアが解錠することがない。
【0011】
この結果、側面衝突時にインサイドハンドルレバーが操作されることを阻止することができ、簡単な構成で確実にドアが開く虞をなくすことが可能になる。
【0012】
そして、請求項2に係る本発明の車両のドア構造は、請求項1に記載の車両のドア構造において、前記インサイドハンドルレバーの他端側は、車両の前後方向で前記車室の内部に存在する車室内部材の側に配され、前記パッド部材は、前記車室内部材に対向する位置の前記ドアトリムと前記ドアパネルとの間の隙間に設けられ、前記ドアパネル側から前記ドアトリムに外力が入力し、前記ドアトリムが前記車室内部材側に押された際に、前記ドアトリムが前記パッド部材と前記車室内部材とに挟持され、前記ドアトリムの前記インサイドハンドルレバーの他端側への移動が阻止されることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る本発明では、ドアパネル側からドアトリムに加わる外力によりドアトリムが車室内部材側に押された際に、ドアトリムがパッド部材と車室内部材とに挟持され、ドアトリムのインサイドハンドルレバーの他端側への移動が阻止され、ドアトリムの開口縁によりインサイドハンドルレバーが回動されることがなく、ドアパネルの変形時にドアが解錠することがない。
【0014】
また、請求項3に係る本発明の車両のドア構造は、請求項2に記載の車両のドア構造において、前記車室内部材は、車幅方向に亘って延在するインストルメントパネルであることを特徴とし、ドアトリムがパッド部材とインストルメントパネルとに挟持される。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の車両のドア構造は、請求項3に記載の車両のドア構造において、前記パッド部材は、前記インストルメントパネルの少なくとも車両の幅方向の面が存在する位置に対向して設けられていることを特徴とし、ドアトリムがパッド部材とインストルメントパネルの角部とに挟まれ、ドアトリムのインサイドハンドルレバーの他端側への移動が確実に阻止される。
【0016】
また、請求項5に係る本発明の車両のドア構造は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両のドア構造において、前記パッド部材は、前記ドアトリムに面で接触することを特徴とし、ドアトリムはパッド部材を介して面接触した面部分が押されてドアパネルと共に荷重が加わる方向に移動する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の車両のドア構造は、側面衝突時にインサイドハンドルレバーの操作自体を阻止し、簡単な構成で確実にドアが開く虞をなくすことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態例に係る車両のドア構造を備えた車室内部の概略構成図である。
【図2】図1中の要部構成図である。
【図3】図2中のIII−III線矢視図である。
【図4】外側からのドアの外観図である。
【図5】パッド部材の外観図である。
【図6】側面衝突時のドアの概略断面図である。
【図7】側面衝突時の車室内側からのドアの外観図である。
【図8】パッドが存在しない場合の側面衝突時のドアの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から図5に基づいて本発明の車両のドア構造を説明する。
【0020】
図1には本発明の一実施例に係る車両のドア構造を備えた車室内部のパネル部材を中心にした概略構成、図2にはインサイドハンドルレバーの部位を説明するためのドアの要部構成(図1中の要部拡大状態)、図3には図2中のIII−III線矢視の状態、図4には車室の外側からのドアの構造を説明する外観、図5(a)には車室側からみたパッド部材の外観状態、図5(b)には車両の前方側からみたパッド部材の外観状態を示してある。
【0021】
図1に示すように、車室1の前側には、車幅方向に亘って延在するインストルメントパネル2が備えられている。インストルメントパネル2により車室1とエンジン室が仕切られると共に、インストルメントパネル2には計器類等が支持されるようになっている。
【0022】
インストルメントパネル2の端部の部位に対応する車体に、ドア3が開閉自在に支持されている。ドア3は、車体側のストライカ(図示省略)にドア3側のラッチ(図示省略)を係合させることにより、施錠される。そして、ラッチ(図示省略)を車体側のストライカ(図示省略)から外すための操作を車室1の内部から行うインサイドハンドルレバー4がドア3の内側に備えられている。
【0023】
図2、図3に示すように、ドア3はドアアウタパネル11及びドアインナパネル12により構成され、ドア3の車室1側には、即ち、ドアインナパネル12の内側には、ドアトリム13が取り付けられている。ドアトリム13により車室1側の意匠が決定されて見栄えが保たれ、ドアインナパネル12とドアトリム13の間には空間14(隙間)が存在している。ドアトリム13には、インサイドハンドルレバー4を車室1の内側に臨ませるための開口15が形成されている。
【0024】
インサイドハンドルレバー4は、車両の前後方向の後側の端部(一端)を支点として回動自在に備えられ、車両の前後方向の前側の端部側(他端側)が操作されるようになっている。インサイドハンドルレバー4の他端側を操作して回動させることにより、図示しない策体等を介してドア3側のラッチ(図示省略)が車体側のストライカ(図示省略)から外されて開錠され、ドア3を開くことが可能になる。
【0025】
図3、図4に示すように、車両の前後方向でインストルメントパネル2に対応する部位におけるドアインナパネル12とドアトリム13の間の空間14には、空間14を埋めるパッド部材16が設けられている。パッド部材16は、インストルメントパネル2の車両の幅方向の面2aと車両の前後方向の面2bの交点の部位を含む状態で配されている。即ち、パッド部材16は、インストルメントパネル2の車両の幅方向の面2aが存在する位置に対向して設けられている。
【0026】
図4、図5に示すように、パッド部材16は、ドアインナパネル12の外側面(車室1側の面)に沿った面部16a及びドアトリム13の裏側面(車室1と反対側の面)に沿った面部16bを有する箱型形状の部材とされている。パッド部材16は、ドアインナパネル12の外側面に面部16aが面接触し、ドアトリム13の裏側面に面部16bが面接触するように配される。ドアトリム13の面部16a、16bがインストルメントパネル2の車両の幅方向の面2aと車両の前後方向の面2bの交点の部位に対向する状態に配されている。
【0027】
パッド部材16には、ドアトリム13のボス部(図示省略)に嵌合させるための嵌合部16cが形成されている。そして、パッド部材16は、インストルメントパネル2よりも硬い材質で形成されている。
【0028】
図6から図8に基づいて上述したドア構造の作用を説明する。
【0029】
図6には側面衝突時におけるドア3の断面状態(図3に相当)、図7には側面衝突時におけるドア3の車室内側からみた外観(図2に相当)、図8にはパッド部材が備えられていない場合の側面衝突時におけるドア3の断面状態を示してある。
【0030】
図6、図7に示すように、側面衝突等で、ドア3の外側から(ドアアウタパネル11の外側から)ドアトリム13に向かって荷重が加わった場合(図6中矢印方向)、ドアインナパネル12が車室1側に押されて変形する。ドアインナパネル12が車室1側に変形すると、パッド部材16を介してドアトリム13がドアインナパネル12と共に荷重が加わる方向、即ち、インストルメントパネル2側に移動する。
【0031】
つまり、ドアパネル側(ドアインナパネル12側)からドアトリム13に加わる外力によりドアトリム13がインストルメントパネル2側に押された際に、ドアトリム13がパッド部材16とインストルメントパネル2とに挟持され、ドアトリム13のインサイドハンドルレバー4の他端側(操作部位の側)への移動が阻止される。
【0032】
ドアトリム13がインストルメントパネル2側に移動することで、ドアトリム13がパッド部材16とインストルメントパネル2とに挟持された状態でインストルメントパネル2の端部が潰される。これにより、インストルメントパネル2が面方向に移動することが阻止され、ドアトリム13の開口15の縁部がインサイドハンドルレバー4の他端側に移動することがない。
【0033】
このため、側面衝突等でドアパネル(ドアインナパネル12)が変形しても、ドアトリム13の開口15の縁によりインサイドハンドルレバー4が回動されることがなく、ドアインナパネル12の変形時にドア3が解錠することがない。この結果、側面衝突時にインサイドハンドルレバー4の操作自体が行われる虞がなくなり、インサイドハンドルレバー4の操作を阻止することができ、簡単な構成で確実にドア3が開く虞をなくすことが可能になる。
【0034】
また、パッド部材16は、ドアインナパネル12の外側面に面部16aが面接触し、ドアトリム13の裏側面に面部16bが面接触しているので、ドアトリム13はパッド部材16を介して面接触した面部分が押されてドアインナパネル12と共に荷重が加わる方向に移動する。このため、ドアトリム13がパッド部材16の面部16bとインストルメントパネル2の車両の幅方向の面2a(角部を含む部位)の間に面により挟持され、ドアトリム13のインサイドハンドルレバー4の他端側への移動が確実に阻止される。
【0035】
パッド部材16が設けられていない場合、図8に示すように、側面衝突等で、ドア3の外側から(ドアアウタパネル11の外側から)ドアトリム13に向かって荷重が加わると(図8中矢印方向)、ドアインナパネル12が車室1側に押されて車室1側に湾曲変形する。ドアインナパネル12の湾曲によりドアトリム13が面方向にずらされ、ドアトリム13の開口15の縁部がインサイドハンドルレバー4の他端側に移動し、インサイドハンドルレバー4が回動して解錠される虞がある。
【0036】
上述した実施例は、ドア3の外側から(ドアアウタパネル11の外側から)ドアトリム13に向かって荷重が加わった場合に、パッド部材16を介してドアトリム13がインストルメントパネル2に挟持されてドアトリム13の面方向の移動を阻止する例を挙げて説明したが、本願発明は、ドアトリム13とドアインナパネル12との間の隙間を埋めるパッド部材16を介在させてドアトリム13の面方向の移動を阻止させる構造であればよい。インストルメントパネル2以外の車室内部材との間にドアトリム13が挟まれてインストルメントパネル2の面方向の移動が阻止されたり、パッド部材16で隙間が埋められたこと自体でインストルメントパネル2の面方向の移動が阻止されたりする構造が適用される。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、車両のドアの施錠を解除するインサイドハンドルレバーを備えたドア構造の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 車室
2 インストルメントパネル
3 ドア
4 インサイドハンドルレバー
11 ドアアウタパネル
12 ドアインナパネル
13 ドアトリム
14 空間
15 開口
16 パッド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を支点として他端側を操作して回動させることでドアの解錠を行うインサイドハンドルレバーと、
前記インサイドハンドルレバーを車室内に臨ませる開口が形成されてドアパネルの前記車室側に配されるドアトリムとを備えた車両のドア構造において、
前記インサイドハンドルレバーの他端側の前記ドアトリムと前記ドアパネルとの間の隙間に、前記隙間を埋めるパッド部材を設けた
ことを特徴とする車両のドア構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のドア構造において、
前記インサイドハンドルレバーの他端側は、車両の前後方向で前記車室の内部に存在する車室内部材の側に配され、
前記パッド部材は、前記車室内部材に対向する位置の前記ドアトリムと前記ドアパネルとの間の隙間に設けられ、
前記ドアパネル側から前記ドアトリムに外力が入力し、前記ドアトリムが前記車室内部材側に押された際に、前記ドアトリムが前記パッド部材と前記車室内部材とに挟持され、前記ドアトリムの前記インサイドハンドルレバーの他端側への移動が阻止される
ことを特徴とする車両のドア構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両のドア構造において、
前記車室内部材は、車幅方向に亘って延在するインストルメントパネルである
ことを特徴とする車両のドア構造。
【請求項4】
請求項3に記載の車両のドア構造において、
前記パッド部材は、前記インストルメントパネルの少なくとも車両の幅方向の面が存在する位置に対向して設けられている
ことを特徴とする車両のドア構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車両のドア構造において、
前記パッド部材は、前記ドアトリムに面で接触する
ことを特徴とする車両のドア構造。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−67237(P2013−67237A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206092(P2011−206092)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)