説明

車両のランプ取付構造

【課題】生産ラインでの車両ボディへのランプボディの取付を容易にすると共に、ランプボディの取外し時に連結部材に負担を掛けることがない。
【解決手段】ランプ取付構造1は、ランプ取付部3と、クリップ部材10と、ランプボディ21と、ネジ部材30と、により構成されている。ネジ挿通穴14にネジ部材30を挿入し、このネジ部材30の先端部31をネジ噛合部27に噛合することによってクリップ部材はランプボディ21に取付けられる。このクリップ部材10の基部11の一端11a側を取付穴4に挿入し、係合部12とフランジ部13とがランプ取付部3の裏面側と表面側とにそれぞれ係合することによって、ターンランプ20はランプ取付部3に取付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のランプ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体ボディへのランプボディの取付けをネジ止めによって行うものが知られている。
【0003】
【特許文献1】実開平6−20134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記構成では、車両ボディへランプボディを位置決めした後にネジ止めを行うため、生産ラインでの取付性に欠けるという問題があった。また、車両ボディへのランプボディの取付けをクリップ止めによって行った場合、位置決めと同時に取付けが行われるため、生産性に問題はないものの、取外しと取付けを繰り返すとクリップが破損してしまう恐れがあった。
【0005】
そこで、本発明は、生産ラインでの車両ボディへのランプボディの取付けを容易にすると共に、ランプボディの取外し時に部品に負担を掛けないことが可能なランプ取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明は、車体ボディ側のランプ取付部と、連結部材と、ネジ部材と、ランプが装着されるランプボディと、を備えている。ランプ取付部は、表面側から裏面側へ貫通する取付穴を有する。連結部材は、基部と、係合部と、ネジ挿通穴と、を有する。基部は、ランプ取付部の表面側から取付穴に挿入される一端側を有する。係合部は、基部の一端側を取付穴に挿入したときランプ取付部と係合して取付穴からの基部の抜けを阻止する。ネジ挿通穴は、基部の一端側から他端側に貫通する。ネジ部材は、基部の一端側からネジ挿通穴に挿入される。ランプボディは、ネジ挿通穴に挿入されたネジ部材のうち基部の他端側から突出する先端部と噛合する噛合部を有する。連結部材は、ネジ挿通穴にネジ部材を挿入し、このネジ部材の先端部を噛合部に噛合することによってランプボディに取付けられる。ランプボディは、取付けられた連結部材の基部の一端側を取付穴に挿入し、係合部とランプ取付部とを係合させることによって、ランプ取付部に取付けられる。
【0007】
上記構成では、ネジ挿通穴にネジ部材を挿入し、このネジ部材の先端部を噛合部に噛合することによって連結部材はランプボディに取付けられる。この連結部材の基部の一端側を取付穴に挿入し、係合部とランプ取付部とを係合させることによって、ランプボディはランプ取付部に取付けられる。従って、連結部材を取付穴に挿入することによってランプボディの車体ボディへの位置決め及び取付けを同時に行うことができるため、生産ラインでの組付性が向上する。
【0008】
また、部品交換時や点検時には、車体ボディ側にランプボディが取付けられた状態で、ランプ取付部の裏面側からネジ部材を締結解除方向へ回転させて、連結部材からランプボディを取外す。これにより、車体ボディ側のランプ取付部に連結部材を残したまま、ランプボディを車体ボディ側から取外すことができる。また、ランプボディの取外し時に連結部材に過大な負担が掛からないため、連結部材の耐久性が向上する。
【0009】
さらに、部品交換時や点検時に車体ボディ側から取外したランプボディを車体ボディ側に再度取付ける場合には、ランプボディのネジ噛合部をランプ取付部に取付けられている連結部材に対応するように配置して位置決めを行い、ランプ取付部の裏面側からネジ部材を連結部材のネジ挿通穴へ挿入して締結方向へ回転させることによって取付けることができる。
【0010】
また、ランプ取付部及びランプボディの一方には、引っ掛け穴を設け、ランプ取付部及びランプボディの他方には、ランプボディがランプ取付部に取付けられた状態で引っ掛け穴を挿通する脱落防止爪を設けてもよい。脱落防止爪は、ランプボディがランプ取付部から離脱したとき、引っ掛け穴の周縁部に引っ掛かり、ランプボディの落下を阻止する。
【0011】
上記構成では、ランプボディがランプ取付部の連結部材から離脱したとき、脱落防止爪が引っ掛け穴の周縁部に引っ掛かるため、ランプボディの落下を防止することができる。また、上記取外したランプボディを再びランプ取付部に取付ける場合、引っ掛け穴に脱落防止爪を引っ掛けることにより、ランプ取付部にランプボディを仮保持させることができる。従って、ランプボディのランプ取付部への再取付け時の作業性が良い。
【0012】
さらに、噛合部とネジ部材と連結部材とを、それぞれ複数設け、複数の噛合部を、ランプボディの周縁のうちランプ取付部との間で位置決め基準となる基準縁の近傍に複数設けてもよい。複数の連結部材は、複数の噛合部に対してネジ部材によってそれぞれ取付けられ、複数の取付穴は、複数の噛合部に対応してそれぞれ所定の位置に配設される。
【0013】
上記構成では、基準縁近傍の複数の噛合部に対して取付けられた連結部材の係合部を対応する取付穴にそれぞれ挿入することにより、ランプボディがランプ取付部に取付けられる。すなわち、基準縁の近傍でランプボディが位置決めされる。従って、ランプボディに固定されるランプレンズに隣接して他の部品が配置され、ランプレンズの外縁と他の部品の外縁とが隣接する場合、ランプボディの周縁のうち、他の部品と隣接する部分を基準縁とすることにより、他の部品の上記外縁に対するランプレンズの上記外縁の位置のばらつきを小さく抑えることができ、外観上の見栄えが向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、生産ラインでの車両ボディへのランプボディの取付けを容易にすると共に、ランプボディの取外し時に連結部材に負担を掛けることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面に基づいて説明する。図1は本実施形態に係る車両を示す外観斜視図、図2はランプ取付構造を示す分解斜視図、図3はクリップ部材を取付けたターンランプの裏面側を示す概略斜視図、図4は図3のターンランプを車体ボディに取付けた状態におけるA−A矢視断面図を示したものである。なお、図中、UPは車両上方を示し、FRは車両前方を示す。
【0016】
図1〜図4に示すように、車両のランプ取付構造1は、ランプ取付部3、連結部材であるクリップ部材10、ターンランプ20、ネジ部材30により構成されている。
【0017】
車体ボディ2の前面の車幅方向外側にはランプ取付部3が形成されている。ランプ取付部3の車幅方向外側には表面側から裏面側へ貫通する取付穴4が上下2箇所に形成され、取付穴4の近傍及び車幅方向内側には表面側から裏面側へ貫通する引っ掛け穴5が3箇所に形成されている。
【0018】
クリップ部材10は、樹脂性部材によって構成され、略矩形筒形状を有する基部11と、基部11の一端11a側に形成される係合部12と、基部11の一端11aと他端11bとの間の周縁部から外側に延びるフランジ部13と、基部11の一端11a側から他端11b側に貫通するネジ挿通穴14と、を有する。
【0019】
ターンランプ20は、ランプボディ21と、ランプボディ21の前面開口を覆うランプレンズ22と、ランプボディ21の表面側に配設され光を反射するリフレクター23と、リフレクター23とランプレンズ22とによって区画形成されるランプバルブ収容部24と、ランプバルブ収容部24に配設されるランプバルブ25と、を有する。
【0020】
ランプボディ21の裏面の車幅方向外側には、上下2箇所にクリップ部材10の基部11の他端11bが挿入されるクリップ部材挿入部26が形成され、クリップ部材挿入部26の奥にはネジ部材30が噛合可能なネジ噛合部27が形成される。ランプボディ21の裏面のクリップ部材挿入部26近傍及び車幅方向内側には、引っ掛け穴5の周縁部に引っ掛かることができる脱落防止爪28が3箇所に形成されている。
【0021】
ここで、車体ボディ2のランプ取付部3へのターンランプ20の取付けについて説明する。
【0022】
先ず、ターンランプ20のランプボディ21のクリップ部材挿入部26にクリップ部材10の基部11の他端11bを挿入する。クリップ部材10の基部11の一端11a側からネジ部材30をネジ挿通穴14に挿入し、ネジ部材30を締結方向に回転させてネジ部材30の先端部31をネジ噛合部27に噛合することによってランプボディ21にクリップ部材10が取付けられる。
【0023】
次に、上記ランプボディ21に取付けられたクリップ部材10の基部11の一端11a側を車体ボディ2のランプ取付部3の取付穴4に挿入すると、クリップ部材10の係合部12が撓み変形して係合部12とフランジ部13とがランプ取付部3の裏面側と表面側とにそれぞれ係合することによってランプ取付部3にターンランプ20が取付けられる。
【0024】
ランプ取付部3に取付られたターンランプ20を部品交換時や点検時に取外す場合には、ランプ取付部3の裏面側からネジ部材30の頭部32をドライバー等で締結解除方向へ回転させる。ネジ部材30の先端31とネジ噛合部27との噛合が解除されると、クリップ部材10からターンランプ20を取外すことができる。この状態では、クリップ部材10は車体ボディ2のランプ取付部3に残ったままである。なお、ネジ部材30の先端31とネジ噛合部27との噛合が解除されると、ターンランプ20は自重によってクリップ部材10から離脱する方向に移動するが、脱落防止爪28が引っ掛け穴5の周縁部に引っ掛かるため、ターンランプ20が落下することはない。
【0025】
部品交換時や点検時に取外したターンランプ20をランプ取付部3に再び取付ける場合には、先ず、ランプ取付部3に残っているクリップ部材10の基部11の他端11bをターンランプ20のランプボディ21のクリップ部材挿入部26に挿入させて位置決めを行う。この状態では、脱落防止爪28が引っ掛け穴5に差し込まれて引っ掛け穴5の周縁部に引っ掛かるため、ターンランプ20はランプ取付部3に対して一時的に保持される。そして、クリップ部材10の基部11の一端11a側からネジ部材30をネジ挿通穴14に挿入し、ネジ部材30を締結方向に回転させてネジ部材30の先端部31をネジ噛合部27に噛合することによってターンランプ20が再びランプ取付部3に取付けられる。
【0026】
このように、本実施形態によれば、ネジ挿通穴14にネジ部材30を挿入し、このネジ部材30の先端部31をネジ噛合部27に噛合することによってクリップ部材はランプボディ21に取付けられる。このクリップ部材10の基部11の一端11a側を取付穴4に挿入し、係合部12とフランジ部13とがランプ取付部3の裏面側と表面側とにそれぞれ係合することによって、ターンランプ20はランプ取付部3に取付けられる。従って、クリップ部材10を取付穴4に挿入することによってターンランプ20の車体ボディ2への位置決め及び取付けを同時に行うことができるため、生産ラインでの組付性が向上する。
【0027】
また、部品交換時や点検時には、車体ボディ2側にランプボディ21が取付けられた状態で、ランプ取付部3の裏面側からネジ部材30を締結解除方向へ回転させて、クリップ部材10からターンランプ20を取外す。これにより、車体ボディ2側のランプ取付部3にクリップ部材10を残したまま、ターンランプ20のみを車体ボディ2側から取外すことができる。また、ターンランプ20の取外し時にクリップ部材10に過大な負担が掛からないため、クリップ部材10の耐久性が向上する。
【0028】
さらに、部品交換時や点検時に車体ボディ2側から取外したターンランプ20を車体ボディ2側に再度取付ける場合には、ランプボディ21のネジ噛合部27をランプ取付部3に取付けられているクリップ部材10に対応するように配置して位置決めを行い、ランプ取付部3の裏面側からネジ部材30をクリップ部材10のネジ挿通穴14へ挿入して締結方向へ回転させることによって取付けることができる。
【0029】
また、ターンランプ20がランプ取付部3のクリップ部材10から離脱したとき、脱落防止爪28が引っ掛け穴5の周縁部に引っ掛かるため、ターンランプ20の落下を防止することができる。また、上記取外したターンランプ20を再びランプ取付部3に取付ける場合、引っ掛け穴5に脱落防止爪28を挿入して引っ掛けることにより、ランプ取付部3にターンランプ20を仮保持させることができる。従って、ターンランプ20のランプ取付部3への再取付け時の作業性が良い。
【0030】
さらに、ランプボディ21の周縁のうちランプ取付部3との間で位置決め基準となる基準縁40近傍の2箇所のクリップ部材挿入部26に対して取付けられたクリップ部材10の係合部12を対応する取付穴4にそれぞれ挿入することにより、ランプボディ21がランプ取付部3に取付けられる。すなわち、基準縁40の近傍でランプボディ21が位置決めされる。従って、ランプボディ21に固定されるランプレンズ22に隣接してヘッドランプ50のランプレンズ51が配置され、ランプレンズ22の外縁41とヘッドランプ50のランプレンズ51の外縁52とが図1に示すように隣接する場合、ランプボディ21(図2参照)の周縁のうち、ヘッドランプ50のランプレンズ51と隣接する部分を基準縁とすることにより、ヘッドランプ50のランプレンズ51の外縁52に対するランプレンズ22の外縁41の位置のばらつきを小さく抑えることができ、外観上の見栄えが向上する。
【0031】
なお、上記実施形態では、引っ掛け穴5と脱落防止爪28とをそれぞれランプ取付部3とランプボディ21とに形成した例を示したが、引っ掛け穴5と脱落防止爪28とをそれぞれランプボディ21とランプ取付部3とに形成してもよい。
【0032】
また、ネジ噛合部27とネジ部材30とクリップ部材10と取付穴4とは、それぞれ2箇所よりも多く設けてもよい。
【0033】
さらに、ネジ噛合部27にはネジ山を設けてもよい。
【0034】
また、上記実施形態では、本発明を車両前面に取付けられるターンランプに適用した例を示したが、コンビランプやヘッドランプ等他のランプに対して適用してもよく、車両前面以外の場所に取付けられるランプに対して適用してもよい。
【0035】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、この実施形態による本発明の開示の一部をなす論述及び図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本実施形態に係る車両を示す外観斜視図である。
【図2】ランプ取付構造を示す分解斜視図である。
【図3】クリップ部材を取付けたターンランプの裏面側を示す概略斜視図である。
【図4】図3のターンランプを車体ボディに取付けた状態におけるA−A矢視断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…ランプ取付構造、2…車体ボディ、3…ランプ取付部、4…取付穴、5…引っ掛け穴、10…クリップ部材(連結部材)、11…基部、11a…一端、11b…他端、12…係合部、13…フランジ部、14…ネジ挿通穴、20…ターンランプ、21…ランプボディ、22…ランプレンズ、23…リフレクター、24…ランプバルブ収容部、25…ランプバルブ、26…クリップ部材挿入部、27…ネジ噛合部、28…脱落防止爪、30…ネジ部材、31…先端部、32…頭部、40…基準縁、41…外縁、50…ヘッドランプ、51…ランプレンズ、52…外縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側から裏面側へ貫通する取付穴を有する車体ボディ側のランプ取付部と、
前記ランプ取付部の表面側から前記取付穴に挿入される一端側を有する基部と、この基部の一端側を前記取付穴に挿入したとき前記ランプ取付部と係合して前記取付穴からの前記基部の抜けを阻止する係合部と、前記基部の一端側から他端側に貫通するネジ挿通穴と、を有する連結部材と、
前記基部の一端側から前記ネジ挿通穴に挿入されるネジ部材と、
前記ネジ挿通穴に挿入された前記ネジ部材のうち前記基部の他端側から突出する先端部と噛合する噛合部を有し、ランプが装着されるランプボディと、を備え、
前記連結部材は、前記ネジ挿通穴に前記ネジ部材を挿入し、このネジ部材の前記先端部を前記噛合部に噛合することによって前記ランプボディに取付けられ、
前記ランプボディは、前記取付けられた連結部材の前記基部の一端側を前記取付穴に挿入し、前記係合部と前記ランプ取付部とを係合させることによって、前記ランプ取付部に取付けられる
ことを特徴とする車両のランプ取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載のランプ取付構造であって、
前記ランプ取付部及び前記ランプボディの一方は、引っ掛け穴を有し、
前記ランプ取付部及び前記ランプボディの他方は、前記ランプボディが前記ランプ取付部に取付けられた状態で前記引っ掛け穴を挿通する脱落防止爪を有し、
前記脱落防止爪は、前記ランプボディが前記ランプ取付部から離脱したとき、前記引っ掛け穴の周縁部に引っ掛かり、前記ランプボディの落下を阻止する
ことを特徴とする車両のランプ取付構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のランプ取付構造であって、
前記噛合部と前記ネジ部材と前記連結部材とは、それぞれ複数設けられ、
前記複数の噛合部は、前記ランプボディの周縁のうち前記ランプ取付部との間で位置決め基準となる基準縁の近傍に複数設けられ、
前記複数の連結部材は、前記複数の噛合部に対して前記ネジ部材によってそれぞれ取付けられ、
前記複数の取付穴は、前記複数の噛合部に対応してそれぞれ所定の位置に配設されている
ことを特徴とする車両のランプ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−126929(P2008−126929A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−316794(P2006−316794)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】