説明

車両の変速機をロックする装置及びその製造方法

本発明は、変速機の一要素によって車両の駆動輪に接続された歯車(9)と、パーキングホイールの連続する2つの歯(9a)の間に係合することにより前記パーキングホイールを介して駆動輪を停止させることができる旋回ロックフィンガーとを備えた、車両の変速機をロックする装置に関する。本発明は、パーキングホイール(9)が差動装置のリングギヤ(3)に組み込まれていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、変速機の一要素によって車両の駆動輪に接続された歯付きパーキングホイールと、パーキングホイールの2つの連続した歯の間に係合することにより、前記パーキングホイールを介して駆動輪を固定することができる旋回ロック爪とを備えたパーキングブレーキ式の車両用変速機のロックに関する。
本発明の好ましい用途は、遊星歯車セットを有する自動変速機又は自動化されたギヤ変速機であるが、これらに限定されない。
【0002】
全ての車両は、ハンドブレーキに依存せずに停止できなくてはならない。マニュアルギヤ変速機では、この停止機能は、ギヤレバーを用いてギヤ比を手動で係合させて変速機をロックすることによって行われる。真のギヤシフトレバーが無い場合、即ち運転手のレバー又はセレクタとギヤボックスの間に直接的な機械的接続が無い場合、一般に、変速機の出力に配置されている回転部又はパーキングホイールと、パーキングホイール及び変速機の回転を停止させることが可能な旋回爪とを備えている「パーキングブレーキ」システムが使用される。
仏国特許出願公開第2664957号明細書に開示されている従来の一構成では、パーキングホイールは、ギヤボックスの遊星歯車セットの出力に取り付けられる。遊星歯車セットが無い場合、特に自動化されたギヤボックスの場合は、変速機の回転部に他の取付け箇所を見つける必要がある。この点に関し、独国特許出願公開第10244395号明細書は、パーキングホイールを差動装置に、ケーシング上に一連の歯部を直接機械加工することによって組み込むことを提案している。この解決策には、製造上の困難性に加え、パーキングホイールのあらゆる新規寸法決定に、新しい差動装置用ケーシングの製造が必然的に伴うため、制約が極めて大きいという大きな欠点がある。
【0003】
本発明の目的は、あらゆる種類の変速機に対応するロック装置の製造及び適用を容易にすることである。
このために、本発明は、差動装置のリングギヤにパーキングホイールを組み込むことを提案する。
【0004】
第1の実施形態によれば、差動装置のリングギヤの入力ピニオンは、このピニオンを保持するシャフトの軸受の内側に取り付けられている。
第2の実施形態によれば、差動装置のリングギヤの入力ピニオンは、このピニオンを保持するシャフトの軸受の外側に取り付けられている。
【0005】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照して後述に説明する本発明の非限定的な実施形態から更に明らかとなる。
【0006】
図面に、遊星歯車を担持するピン2及びそのリングギヤ3を備えている、変速機の差動装置のケーシング1を示す。このケーシングは、変速機のクラッチハウジング6内で、軸受4によって支持されている。リングギヤ3は、ギヤボックスの二次シャフト8によって担持されている、差動装置の入力ピニオン7と係合している。
詳細には、ここで問題としている変速機は、一次シャフト及び二次シャフト8を含む少なくとも2つの平行なシャフトを有しており、差動装置のリングギヤの入力ピニオン7を含む複数のピニオンを支持している。この変速機は、2つの同軸の一次シャフトに接続している2つの入力クラッチ及び2つの二次シャフトを備える「ツインクラッチ」変速機とすることができる。しかしながら、このような適用は限定的なものではなく、本発明は、一般に、平行なシャフト及びギヤを有するあらゆる種類の手動又は自動変速機、或いは1つ以上の遊星歯車セットを有する自動変速機に適用される。
【0007】
本発明によれば、パーキングホイール9は、あらゆる種類の変速機の差動装置のリングギヤ3に組み込まれる。ホイール9の外周には、旋回ロック爪(図示せず)と協働する1組の歯9aが設けられており、このロック爪が連続する2つの歯9aの間に係合することにより駆動輪が固定される。
図1では、差動装置のリングギヤ3の入力ピニオン7は、このピニオンを担持するシャフト8(ギヤボックスの二次シャフト)の軸受11の内側に配置されている。一方、図2では、入力ピニオン7は軸受11の外側に配置されている。この第2の構成では、シャフト8の軸受11を担持するために、ギヤボックスに、クラッチハウジング6に固定された内部カバー12等の追加部品を追加する必要がある。この構成には、差動装置の軸上に利用可能な自由空間13を有するという利点があり、このような自由空間は図1にはない。有利には、旋回爪の制御機構(図示せず)の一部が空間13を占有することができ、これにより、ギヤボックス内における機構の有効空間要件が低減できる。
【0008】
本発明によれば、パーキングホイール9の歯列は、差動装置のリングギヤ3に鍛造することにより製造できる。このように組込むことで、歯車自体を含め、多数の個別部品を省くことができ、更にはホイールを変速機の回転部に固定するために使用される従来の取付け要素(ねじ、留め金具等)を省くことができる。更に、ケーシング自体に歯車を組み込むことに関し、ここで提案されている解決法は、このケーシングが、使用される変速機の特性に応じて様々な寸法のリングギヤを収納することができることにより、同一のケーシングを異なる用途に使用し続けることができるという利点を有する。
必要に応じて、歯の仕上げを改善するために、パーキングホイールの鍛造を行った後でリングギヤを機械加工することができる。よって、機械加工作業には、好ましくは、差動装置のケーシングにリングギヤを取付けるための穴をドリルで開けること、及びケーシング内でリングギヤをセンタリングすることが含まれる。最後に、ケーシングにリングギヤを取付けるための穴は、パーキングホイール9の歯9a間の隙間に開口することができる。
【0009】
要するに、本発明は、実施の容易性を含め、先行技術による既知の解決法より優れた多くの利点を提供する。これは、差動装置のケーシング自体を鍛造するより差動装置のリングギヤを鍛造する方が簡単であり、また、歯車の歯列が差動装置のリングギヤの本体に簡単に鍛造形成されるため、要求される機能について、パーキングホイールの歯列に十分な精度を提供できるためである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明の別の一実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の変速機をロックする装置であって、前記変速機の一要素によって車両の駆動輪に接続された歯付きパーキングホイール(9)と、前記パーキングホイールの連続する2つの歯(9a)の間に係合することにより、前記パーキングホイールを介して駆動輪を停止させることができる旋回ロック爪とを備え、パーキングホイール(9)が、差動装置のリングギヤ(3)に鍛造されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
差動装置のリングギヤ(3)の入力ピニオン(7)が、当該ピニオンを担持するシャフト(8)の軸受(11)の内側に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のロック装置を備えた車両の変速機。
【請求項3】
差動装置のリングギヤ(3)の入力ピニオン(7)が、当該ピニオンを担持するシャフト(8)の軸受(11)の外側に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のロック装置を備えた車両の変速機。
【請求項4】
軸受(11)が、内部の軸受担持カバー(12)に取り付けられていることを特徴とする、請求項3に記載の変速機。
【請求項5】
内部のカバー(12)が、クラッチハウジング(6)に固定されていることを特徴とする、請求項4に記載の変速機。
【請求項6】
複数のピニオンを支持する少なくとも2つの平行なシャフトを有することを特徴とする、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項7】
少なくとも2つの同軸の一次シャフト、及び差動装置のリングギヤ(3)の入力ピニオン(7)を担持する二次シャフトを有することを特徴とする、請求項2ないし6のいずれか1項に記載の変速機。
【請求項8】
パーキングホイール(9)の歯部を、変速機の差動装置のリングギヤ(3)の本体に鍛造することを特徴とする、変速機をロックする歯付きパーキングホイールの製造方法。
【請求項9】
パーキングホイールを鍛造した後でリングギヤ(3)を機械加工することにより、歯列の仕上げを行うことを特徴とする、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
リングギヤの機械加工作業が、差動装置のケーシング(1)にリングギヤを固定するための穴(13)をドリルで開けること、及びケーシング(1)内でリングギヤ(3)をセンタリングすることを含むことを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−501672(P2009−501672A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522026(P2008−522026)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050555
【国際公開番号】WO2007/010151
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)