説明

車両の換気構造

【課題】空気の排出に関与しない無駄な開口を省くことを可能にするとともに、空気の円滑な排出を行うことを可能にする。
【解決手段】車室12側に設けられる内板16と、この内板16に設けられた室内側開口部23と、内板16よりも車外側に設けられた外板17と、この外板17に設けられた車外側開口部25と、を備え、室内側開口部23と車外側開口部25とを通じて車室12内の空気を車外に排出する車両の換気構造30であって、室内側開口部23の上方に設けられた支持部41を中心に車外側に回動可能に支持され、内板16の車外側に室内側開口部23を覆うバルブ33を設け、車外側開口部25の上縁部は、バルブ33が最大に開いた最大開度位置でのバルブ33の延在方向よりも下方に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアを閉めたときに、車室内の圧力の高まりを抑制する車両の換気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の換気構造として、車室と車外とを連通させる開口を設け、この開口にルーバを設け、ドアの閉まり性能を向上するものが知られている。
この種の車両の換気構造は、ドアを閉めたときに、車室内の空気を車外に排出できるようにしたものである。このような、車両の換気構造として、車室と車外とを連通させる開口にバルブを設けるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1の車両の換気構造には、車室の内壁を構成する車体の内板に室内側開口部を設け、この室内側開口部からベンチレータボックスを介して、室外側開口部に空気を送ることが開示されている。また、室内側開口部を開閉するバルブを設けることも合わせて開示されている。
【0004】
特許文献1の車両の換気構造では、室内側開口部を開閉するバルブが、室内側開口部の上方を支点として車外側に回動する場合、室内側開口部から排出される空気は、バルブに沿って室内側開口部の下方且つ車外側に向かって排出されることになる。
【0005】
しかし、特許文献1の車両の換気構造では、空気の流れる方向にベンチレータボックスの下壁があり、空気がスムーズに排出されない。また、バルブの最大に開いた状態で、バルブの下端よりも上方では、空気が排出され難いことがある。さらに、車体の外板に設けられる車外側開口部、及びベンチレータボックスの開口がバルブの下端よりも上方まで延びている。すなわち、車外側開口部が無駄に大きい。
【0006】
特に、車外側開口部が車両の外観面の場合には、大きな開口があると外観が低下する。また、車外側開口部から水やゴミ等が車体の外板と車体の内板との間に侵入しやすい。さらに、ルーバを設けて外観の低下及びゴミの侵入を防止しているので、部品点数及びコストの増加を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭61−39612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、空気の排出に関与しない無駄な開口を省くことができるとともに、空気の円滑な排出を行うことができる車両の換気構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車室側に設けられる内板と、この内板に設けられた室内側開口部と、内板よりも車外側に設けられた外板と、この外板に設けられた車外側開口部と、を備え、室内側開口部と車外側開口部とを通じて車室内の空気を車外に排出する車両の換気構造であって、室内側開口部の上方に設けられた支持部を中心に車外側に回動可能に支持され、内板の車外側に室内側開口部を覆うバルブを設け、車外側開口部の上縁部は、バルブが最大に開いた最大開度位置でのバルブの延在方向よりも下方に位置することを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、内板に、車両上下方向に延びる平坦部を備え、室内側開口部が平坦部に形成され、外板に、車両上下方向の上側から下側に向かうにつれて平坦部に近づく傾斜面を備え、車外側開口部が傾斜面に設けられることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、外板に、バルブが最大に開いた最大開度位置での該バルブの延在方向に対し略直交する傾斜面を備え、車外側開口部は、傾斜面に設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、室内側開口部と車外側開口部との間に、空気の流れを規制するガイド部材を備え、ガイド部材に、室内側開口部の下縁部から車外側に突出する下側壁と、この下側壁の両端から車体上方に突出する一対の側壁部と、これらの側壁部の上端の間を開放させた開放部とを備え、バルブの車両幅方向の長さは、一対の側壁部間の長さとほぼ同一にすることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、ガイド部材に、下側壁及び一対の側壁部とを連結するとともに、外板に沿わせて延びる連結壁を備え、連結壁に、車外側開口部と略同一形状の開口部と、この開口部から車外側に突出する突出部とを備え、突出部を、車外側開口部に貫通させるとともに、突出部の外周を、車外側開口部に当接させることを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、下側壁に、開口部の下縁と側縁とのコーナから側壁部まで延ばした線を描き、この線を一辺とするときに、下側壁、連結壁及び側壁部の交差する頂部から一辺に向けて下向きに傾斜させた下側壁斜面が形成されたことを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、バルブが、室内側開口部に取付けられるアウトレット部材に揺動自在に取付けられ、このアウトレット部材に、内板の車内側に当接する本体部と、本体部の裏面に形成され、車外側に延ばすとともに室内側開口部を貫通する係止基部と、係止基部から本体部側に延ばされ、アウトレット部材を内板に係止するアウトレット側係止爪と、このアウトレット側係止爪の先端と本体部の裏面との間に形成される空隙と、を備え、ガイド部材に、空隙に挿入されアウトレット部材に係止されるガイド側係止爪を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項8に係る発明は、アウトレット部材に、本体部の裏面に形成され、車外側に突出するアウトレット突出部と、本体部に形成され、車室内から車外側に引き回されるハーネスをガイドするハーネスガイド部を備え、ガイド部材が、アウトレット突出部とハーネスガイド部との間に挟持されることを特徴とする。
【0017】
請求項9に係る発明は、車外側開口部の車外側に燃料タンクが配置され、車外側開口部は燃料タンクで覆われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以下の効果を奏する。
請求項1に係る発明では、車両の換気構造は、車室側に設けられる内板と、この内板に設けられた室内側開口部と、内板よりも車外側に設けられた外板と、この外板に設けられた車外側開口部と、を備え、室内側開口部と車外側開口部とを通じて車室内の空気を車外に排出する。
室内側開口部の上方に設けられた支持部を中心に車外側に回動可能に支持され、内板の車外側に室内側開口部を覆うバルブを設け、車外側開口部の上縁部は、バルブが最大に開いた最大開度位置でのバルブの延在方向よりも下方に位置する。すなわち、バルブが最大に開いた最大開度位置でのバルブの延在方向よりも上方には車外側開口部が存在しない。従って、空気の排出に関与しない無駄な開口を省くことができ、開口を小さくすることができる。
また、室内側開口部に対して、車外側開口部を下側にずらして配置したものといえる。これにより、開口面積を広げることなく空気の排出を円滑に行うことができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、内板に、車両上下方向に延びる平坦部を備え、室内側開口部が平坦部に形成され、外板に、車両上下方向の上側から下側に向かうにつれて平坦部に近づく傾斜面を備え、車外側開口部が傾斜面に設けられたので、車外側開口部の開口面積を小さくすることができる。例えば、室内側開口部から排出される空気は、バルブに沿って室内側開口部の下方かつ車外側に向かって排出されることになる。すなわち、内板と外板とが平行に延びる場合に比べて、空気の流れる方向と外板とがなす角度を垂直に近づけることができるので、車外側開口部の開口面積を一番小さくすることができる。
【0020】
請求項3に係る発明では、傾斜面を、バルブが最大に開いた最大開度位置でのバルブの延在方向に対し略直交するように設定した。すなわち、バルブの延在方向と排出する空気の流れる方向はほぼ等しいので、空気の流れる方向と外板とがなす角度を略垂直とすることができ、最も車外側開口部の開口面積を小さくすることができる。
【0021】
請求項4に係る発明では、室内側開口部と車外側開口部との間に、空気の流れを規制するガイド部材を備え、ガイド部材に、室内側開口部の下縁部から車外側に突出する下側壁と、この下側壁の両端から車体上方に突出する一対の側壁部と、これらの側壁部の上端の間を開放させた開放部とを備える。
バルブの車両幅方向の長さは、一対の側壁部間の長さとほぼ同一にした。すなわち、室内側開口部の下縁とバルブとの間から排出された空気は、ガイド部材の下側壁と一対の側壁部及びバルブの開状態で開放部を覆ったバルブによってガイドされるので、効率的に車外側開口部まで空気を導き出せる。
また、例えば、ガイド部材が筒状だと、バルブが開く際にバルブと上側の壁の間の空気が圧縮される。この結果、圧力が上がり、バルブを押し戻すため、バルブの開きが阻害される。本発明の車両の換気構造では、ガイド部材は、側壁部の上端の間を開放させた開放部を備えるので、バルブの開閉をスムーズに行うことができる。
【0022】
請求項5に係る発明では、連結壁に、車外側開口部と略同一形状の開口部と、この開口部から車外側に突出する突出部とを備え、突出部を、車外側開口部に貫通させるとともに、突出部の外周を車外側開口部に当接させたので、ガイド部材を車外側開口部に位置決めしつつ支持できる。従って、ガイド部材を安定して保持できる。さらに、水及びゴミが浸入することを抑制できる。
【0023】
請求項6に係る発明では、下側壁は、開口部の下縁と側縁とのコーナから側壁部まで延ばした線を描き、この線を一辺とするときに、下側壁、連結壁及び側壁部の交差する頂部から一辺に向けて下向きに傾斜させた下側壁斜面が形成されたので、ガイド部材の剛性を高めることができる。また、頂部付近にゴミや水が溜まるのを抑制できる。
【0024】
請求項7に係る発明では、バルブが、室内側開口部に取付けられるアウトレット部材に揺動自在に取付けられる。
アウトレット部材に、内板の車内側に当接する本体部と、本体部の裏面に形成され、車外側に延ばすとともに室内側開口部を貫通する係止基部と、係止基部から本体部側に延ばされ、アウトレット部材を内板に係止するアウトレット側係止爪と、このアウトレット側係止爪の先端と本体部の裏面との間に形成される空隙と、を備え、ガイド部材に、空隙に挿入されアウトレット部材に係止されるガイド側係止爪を備えたので、アウトレット部材の構造の簡略化をすることができる。
【0025】
請求項8に係る発明では、アウトレット部材に、本体部の裏面に形成され、車外側に突出するアウトレット突出部と、本体部に形成され、車室内から車外側に引き回されるハーネスをガイドするハーネスガイド部を備え、ガイド部材が、アウトレット突出部とハーネスガイド部との間に挟持されるので、ガイド部材の共振の防止を図ることができる。
【0026】
請求項9に係る発明では、車外側開口部の車外側に燃料タンクが配置され、車外側開口部は燃料タンクで覆われるので、燃料タンクによって車外側開口部から水及びゴミ等が侵入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る車両の換気構造を採用した車両の斜視図である。
【図2】本発明に係る車両の換気構造の斜視図である。
【図3】図2に示された車両の換気構造の車室側から見た斜視図である。
【図4】図2に示された車両の換気構造の側面断面図である。
【図5】図2に示された車両の換気構造のバルブが開状態の側面断面図である。
【図6】図2に示された車両の換気構造のバルブ組立体の斜視図である。
【図7】図2に示された車両の換気構造のバルブ組立体の車室側から見た斜視図である。
【図8】図2に示された車両の換気構造のバルブ組立体のガイド部材の斜視図である。
【図9】図6の9−9線断面図である。
【図10】図6の10−10線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0029】
図1〜図3に示されるように、車両10は、車体11の前方に設けられる車室12と、車体11の後方に設けられる荷台13と、荷台13の下方に設けられる燃料タンク15と、車体11の内板16と車体11の外板17との間に設けられるバルブ組立体(換気ユニット)18と、車体11に開閉自在に取付けられる車両用ドア19と、を備える。
なお、室内側とは内板16基準として車体前方、車外側とは内板16を基準として車体後方をいう。また、前後・左右・上下は、車両10(車体11)を基準とする。
【0030】
内板16は、車室12側に設けられる。詳細には、車両上下方向に延びる平坦部22と、この平坦部22に形成された室内側開口部23と、を備える。
外板17は、内板16よりも車外側に設けられる。詳細には、車両上下方向の上側から下側に向かうにつれて内板16の平坦部22に近づく(車両前方に向かって傾斜する)傾斜面24と、この傾斜面24に形成される車外側開口部25とを備える。車両前方若しくは車両後方から見たときに、車外側開口部25と室内側開口部23は車幅方向(車両の左右方向)及び上下方向では重なり部分がある。また、図4及び図5に示されたように、室内側開口部23の下縁部23aよりも車外側開口部25の下縁部25bの方が下に設けられる。
【0031】
傾斜面24は、後述するバルブ33が最大に開いた最大開度位置でのバルブ33の延在方向に対し略直交するように形成されている。
燃料タンク15は、後述する車外側開口部25の車外側に配置され、車外側開口部25を覆っている。
【0032】
車両の換気構造30は、燃料タンク15、バルブ組立体18、室内側開口部23及び車外側開口部25を含むとともに、室内側開口部23と車外側開口部25とを通じて車室12内の空気を車外に排出する換気構造である。これにより、車両用ドア19を閉めるときのドア閉まり性能が向上する。
【0033】
図4〜図10に示されたように、バルブ組立体18は、室内側開口部23に取付けられるアウトレット部材32と、このアウトレット部材32に揺動自在に取付けられるバルブ(フラップ)33と、アウトレット部材32に支持されるとともに室内側開口部23と車外側開口部25との間に設けられ、空気の流れを規制するガイド部材34と、からなる。
【0034】
アウトレット部材32は、内板16の車内側に当接する本体部36と、この本体部36の裏面36aに、車外側開口部25側に突出させて室内側開口部23を貫通するアウトレット突出部37と、からなる。
【0035】
本体部36は、上辺36bに形成されバルブ33を揺動自在に支持する複数の支持部41と、本体部36の裏面36aに設けられ、車外側開口部25側に延ばした複数の係止基部42a〜42eと、本体部36の裏面36aに設けられ、複数の係止基部42a〜42e間に設けられる接続リブ43a〜43fと、本体部36の裏面36aに車外側に突出され、車室12(図1参照)内から車外側に引き回されるハーネス(不図示)をガイドする第1のハーネスガイド部(ハーネスガイド部)47と、本体部36の裏面36aに車外側に突出され、車室12内から車外側に引き回されるハーネス(不図示)をガイドする第2のハーネスガイド部48と、を備える。さらに、本体部36の裏面36aに、内板16に当接するパッキン44〜46(図3及び図4参照)が貼られている。
【0036】
係止基部42aは、係止基部42aの車外側の先端から本体部36側に延ばされ、アウトレット部材32を内板16に係止するアウトレット側係止爪51と、このアウトレット側係止爪51の先端に形成され、本体部36の裏面36aに向かって突出する突起52と、この突起52と本体部36の裏面36aとの間に形成される空隙53と、が形成される。なお、係止基部42b〜42eは、係止基部42aと同一構成の部分である。また、本体部36の裏面36aの左に不図示の係止基部が形成されている。
【0037】
アウトレット突出部37は、室内側開口部23と略同形状のアウトレット開口部56と、このアウトレット開口部56に設けられ、アウトレット開口部56を補強する格子部57と、が形成される。
【0038】
図8に示されたように、ガイド部材34は、室内側開口部23の下縁部23a(図4参照)から車外側に突出する下側壁61と、この下側壁61の両端から車体上方に突出する一対の(左右の)側壁部62,63と、下側壁61及び一対の側壁部62,63とを連結するとともに、外板17に沿わせて延びる連結壁64と、一対の側壁部62,63の上端の間を開放させた開放部65とを備える。下側壁61および側壁部62,63は内板16から外板17までの間に、ほぼ隙間なく延在している。
【0039】
右の側壁63は、アウトレット部材32側の係止基部42a(図9参照)の空隙53に挿入され、突起52に嵌合する第1のガイド側係止爪(ガイド側係止爪)71が形成される。
【0040】
下側壁61は、アウトレット部材32側の係止基部42d(図10参照)の空隙53に挿入され、突起52に嵌合する第2のガイド側係止爪(ガイド側係止爪)72と、左右に形成され、ガイド部材34のコーナ付近の剛性を高める下側壁斜面75,75が形成される。
左の側壁62は、接続リブ42eに当接する第3のガイド側係止爪73を備える。
【0041】
連結壁64は、車外側開口部25と略同一形状の開口部(連結壁側開口部)66と、この開口部66から車外側開口部25側に突出する突出部(連結壁側突出部)67と、を備える。連結壁64は、連結壁パッキン69を介して車外側開口部25の廻りの外板17に当接させる。
突出部67は、車外側開口部25に貫通させる。また、突出部67の外周67aを、車外側開口部25に当接させる。
【0042】
ガイド部材34は、第1〜第3のガイド側係止爪71〜73がアウトレット部材32に嵌合若しくは当接するとともに、アウトレット突出部37と第1のハーネスガイド部47との間に挟持されている。
【0043】
下側壁斜面75は、下側壁61に、開口部66の下縁66aと側縁66bとのコーナ78から側壁部63まで延ばした線を描き、この線を一辺76とするときに、下側壁61、連結壁64及び側壁部の交差する頂部77から一辺76に向けて下向きに傾斜させた斜面である。なお、先に示したように、側壁部62側にも同一の下側壁斜面75が形成される。
【0044】
バルブ33は、本体部36(アウトレット部材32)の上辺36bに形成された複数の支持部41で揺動自在に支持されているフラップである。また、バルブ33は、硬質ゴムなどの弾性部材にて形成される。詳細には、バルブ33は、アウトレット開口部56を開閉自在に覆うバルブ本体81と、このバルブ本体81から延出され、支持部41に揺動(回動)自在に嵌合する複数の嵌合突起部82と、からなる。
【0045】
図4及び図5に示されたように、バルブ33は、室内側開口部23の上方に設けられた支持部41を中心に車外側に回動可能に支持され、内板16の車外側で室内側開口部23を覆うものということもできる。また、図5にバルブ33が最大に開いた最大開度位置が示され、バルブ33は、最大に開いた最大開度位置でのバルブ33の延在方向は、車外側開口部25の上縁部25aよりも、距離S1だけ上方に位置するように設定される。さらに、図7に示されたように、バルブ33の車両幅方向の長さは、一対の側壁部62,63間の長さとほぼ同一に形成されている。
【0046】
車両の換気構造30は、車室12(図1参照)側に設けられる内板16と、この内板16に設けられた室内側開口部23と、内板16よりも車外側に設けられた外板17と、この外板17に設けられた車外側開口部25と、を備え、室内側開口部23と車外側開口部25とを通じて車室12内の空気を車外に排出する。
【0047】
室内側開口部23の上方に設けられた支持部41を中心に車外側に回動可能に支持され、内板16の車外側に室内側開口部23を覆うバルブ33を設け、車外側開口部25の上縁部25aは、バルブ33が最大に開いた最大開度位置でのバルブ33の延在方向よりも下方に位置する。すなわち、バルブ33が最大に開いた最大開度位置でのバルブ33の延在方向よりも上方には車外側開口部25が存在しない。従って、空気の排出に関与しない無駄な開口を省くことができ、開口を小さくすることができる。
【0048】
また、室内側開口部23に対して、車外側開口部25を下側にずらして配置したものといえる。これにより、開口面積を広げることなく空気の排出を円滑に行うことができる。
【0049】
内板16は、車両上下方向に延びる平坦部22を備え、室内側開口部23は、平坦部22に形成され、外板17は、車両上下方向の上側から下側に向かうにつれて平坦部22に近づく傾斜面24を備え、車外側開口部25は、傾斜面24に設けられたので、車外側開口部25の開口面積を小さくすることができる。例えば、室内側開口部23から排出される空気は、バルブ33に沿って室内側開口部23の下方かつ車外側に向かって排出されることになる。すなわち、内板16と外板17とが平行に延びる場合に比べて、空気の流れる方向と外板17とがなす角度を垂直に近づけることができるので、車外側開口部25の開口面積を一番小さくすることができる。
【0050】
車両の換気構造30では、傾斜面24を、バルブ33が最大に開いた最大開度位置でのバルブ33の延在方向に対し略直交するように設定した。すなわち、バルブ33の延在方向と排出する空気の流れる方向はほぼ等しいので、空気の流れる方向と外板17とがなす角度を略垂直とすることができ、最も車外側開口部25の開口面積を小さくすることができる。
【0051】
車両の換気構造30では、室内側開口部23と車外側開口部25との間に、空気の流れを規制するガイド部材34を備え、ガイド部材34に、室内側開口部23の下縁部23aから車外側に突出する下側壁61と、この下側壁61の両端から車体上方に突出する一対の側壁部62,63と、これらの側壁部62,63(63は図8参照)の上端の間を開放させた開放部65とを備える。
【0052】
バルブ33の車両幅方向の長さは、一対の側壁部62,63間の長さとほぼ同一にした。すなわち、室内側開口部23の下縁とバルブ33との間から排出された空気は、ガイド部材34の下側壁61と一対の側壁部62,63及びバルブ33の開状態で開放部65を覆ったバルブ33によってガイドされるので、効率的に車外側開口部25まで空気を導き出せる。
【0053】
また、例えば、ガイド部材34が筒状だと、バルブ33が開く際にバルブ33と上側の壁の間の空気が圧縮される。この結果、圧力が上がり、バルブ33を押し戻すため、バルブ33の開きが阻害される。車両の換気構造30では、ガイド部材34は、側壁部62,63の上端の間を開放させた開放部65を備えるので、バルブ33の開閉をスムーズに行うことができる。
【0054】
連結壁64は、車外側開口部25と略同一形状の開口部66と、この開口部66から車外側に突出する突出部67とを備え、突出部67を、車外側開口部25に貫通させるとともに、突出部67の外周67aを、車外側開口部25に当接させたので、ガイド部材34を車外側開口部25に位置決めしつつ支持できる。従って、ガイド部材34を安定して保持できる。さらに、水及びゴミが浸入することを抑制できる。
【0055】
図8に示されたように、車両の換気構造30では、下側壁61は、開口部66の下縁66aと側縁66bとのコーナ78から側壁部63まで延ばした線を描き、この線を一辺76とするときに、下側壁61、連結壁64及び側壁部63の交差する頂部77から一辺76に向けて下向きに傾斜させた下側壁斜面75が形成されたので、ガイド部材34の剛性を高めることができる。また、頂部77付近にゴミや水が溜まるのを抑制できる。
【0056】
図4〜図10に示されたように、バルブ33は、室内側開口部23に取付けられるアウトレット部材32に揺動自在に取付けられる。アウトレット部材32に、内板16の車内側に当接する本体部36と、本体部36の裏面36aに形成され、車外側に延ばすとともに室内側開口部23を貫通する係止基部42a,42dと、係止基部42a,42dに本体部36側に延ばされ、アウトレット部材32を内板16に係止するアウトレット側係止爪51,51と、アウトレット側係止爪51,51の先端(突起52)と本体部36の裏面36aとの間に形成される空隙53,53と、を備え、ガイド部材34に、空隙53,53に挿入されアウトレット部材32に係止される第1及び第2のガイド側係止爪71,72を備えたので、アウトレット部材32の構造の簡略化をすることができる。
【0057】
アウトレット部材32は、本体部36の裏面36aに形成され、車外側に突出するアウトレット突出部37と、本体部36に形成され、車室12(図1参照)内から車外側に引き回されるハーネス(不図示)をガイドする第1のハーネスガイド部47を備え、ガイド部材34が、アウトレット突出部37と第1のハーネスガイド部47との間に挟持されるので、ガイド部材34の共振の防止を図ることができる。
【0058】
車両の換気構造30では、車外側開口部25の車外側に燃料タンク15が配置され、車外側開口部25は燃料タンク15で覆われるので、燃料タンク15によって車外側開口部25から水及びゴミ等が侵入することを抑制することができる。
【0059】
尚、本発明に係る車両の換気構造は、図4に示すように、バルブ33はアウトレット部材32の本体部36の上辺36bに設けられたが、これに限るものではなく、室内側開口部23の上方に回動可能に支持されるものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る車両の換気構造は、軽トラックや中小型トラックなどに採用するのに好適である。
【符号の説明】
【0061】
10…車両、12…車室、15…燃料タンク、16…内板、17…外板、22…平坦部、23…室内側開口部、23a…下縁部、24…傾斜面、25…車外側開口部、25a…上縁部、30…車両の換気構造、32…アウトレット部材、33…バルブ、34…ガイド部材、36…本体部、37…アウトレット突出部、41…支持部、42a,42d…係止基部、47…ハーネスガイド部(第1のハーネスガイド部)、51…アウトレット側係止爪、53…空隙、56…アウトレット開口部、61…下側壁、62,63…一対の側壁部(左右の側壁部)、64…連結壁、65…開放部、66…開口部(ガイド部材側開口)、66a…下縁、66b…側縁、67…突出部(連結壁側突出部)、67a…外周、71,72…ガイド部材側係止爪(第1及び第2のガイド側係止爪)、75…下側壁斜面、76…一辺、77…頂部、78…コーナ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側に設けられる内板と、この内板に設けられた室内側開口部と、前記内板よりも車外側に設けられた外板と、この外板に設けられた車外側開口部と、を備え、前記室内側開口部と前記車外側開口部とを通じて車室内の空気を車外に排出する車両の換気構造であって、
前記室内側開口部の上方に設けられた支持部を中心に車外側に回動可能に支持され、前記内板の車外側に前記室内側開口部を覆うバルブを設け、
前記車外側開口部の上縁部は、前記バルブが最大に開いた最大開度位置での前記バルブの延在方向よりも下方に位置することを特徴とする車両の換気構造。
【請求項2】
前記内板は、車両上下方向に延びる平坦部を備え、前記室内側開口部は、前記平坦部に形成され、
前記外板は、車両上下方向の上側から下側に向かうにつれて前記平坦部に近づく傾斜面を備え、前記車外側開口部は、前記傾斜面に設けられることを特徴とする請求項1記載の車両の換気構造。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記バルブが最大に開いた最大開度位置での該バルブの延在方向に対し略直交することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両の換気構造。
【請求項4】
前記室内側開口部と前記車外側開口部との間に、空気の流れを規制するガイド部材を備え、
前記ガイド部材は、前記室内側開口部の下縁部から車外側に突出する下側壁と、この下側壁の両端から車体上方に突出する一対の側壁部と、これらの側壁部の上端の間を開放させた開放部とを備え、
前記バルブの車両幅方向の長さは、前記一対の側壁部間の長さとほぼ同一にすることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の車両の換気構造。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記下側壁及び前記一対の側壁部とを連結するとともに、前記外板に沿わせて延びる連結壁を備え、
前記連結壁は、前記車外側開口部と略同一形状の開口部と、この開口部から車外側に突出する突出部とを備え、
前記突出部を、前記車外側開口部に貫通させるとともに、前記突出部の外周を、前記車外側開口部に当接させることを特徴とする請求項4記載の車両の換気構造。
【請求項6】
前記下側壁は、前記開口部の下縁と側縁とのコーナから前記側壁部まで延ばした線を描き、この線を一辺とするときに、前記下側壁、連結壁及び側壁部の交差する頂部から一辺に向けて下向きに傾斜させた下側壁斜面が形成されたことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の車両の換気構造。
【請求項7】
前記バルブは、前記室内側開口部に取付けられるアウトレット部材に揺動自在に取付けられ、
このアウトレット部材は、前記内板の車内側に当接する本体部と、前記本体部の裏面に形成され、車外側に延ばすとともに前記室内側開口部を貫通する係止基部と、前記係止基部から前記本体部側に延ばされ、前記アウトレット部材を前記内板に係止するアウトレット側係止爪と、このアウトレット側係止爪の先端と本体部の裏面との間に形成される空隙と、を備え、
前記ガイド部材は、前記空隙に挿入され前記アウトレット部材に係止されるガイド側係止爪を備えたことを特徴とする請求項4、請求項5又は請求項6記載の車両の換気構造。
【請求項8】
前記アウトレット部材は、前記本体部の裏面に形成され、車外側に突出するアウトレット突出部と、前記本体部に形成され、前記車室内から車外側に引き回されるハーネスをガイドするハーネスガイド部を備え、
前記ガイド部材は、前記アウトレット突出部と前記ハーネスガイド部との間に挟持されることを特徴とする請求項7記載の車両の換気構造。
【請求項9】
前記車外側開口部の車外側に燃料タンクが配置され、前記車外側開口部は前記燃料タンクで覆われることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の車両の換気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−84212(P2011−84212A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239638(P2009−239638)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】