説明

車両の直進性能検査システム

【課題】本発明は被検査車両をテストコースで実際に走行させながら車両流れに影響を与えている要因を解析して確認できる車両の直進性能検査システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は被検査車両の進入角及び走行車両が左右に流れる量を示す車両流れ量を計測するための計測部と検査処理装置と、を備え、計測部は第1〜第3のレーザ送受信装置と各レーザ送受信装置が計測した計測情報を検査処理装置に送信する送信装置とを備え検査処理装置は進入角を算出する進入角算出手段と流れ量測定値を算出する流れ量算出手段と進入角算出手段及び流れ量算出手段による算出結果と気象測定部から受信した気象情報とに基づいて、車両流れ量を携行端末から受信した車両識別情報に関連付けて最終決定する車両流れ量決定手段と車両流れ量決定手段により決定した車両流れ量の検査合否を判定する合否判定手段とを備えることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の直進性能検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車組立工場において、各部品を組み付ける組立工程を経て完成した車両は、検査工程で多種多様な検査が行われている。
【0003】
その検査工程で行う車両検査の1つとして走行直進性能の検査がある。
例えば、被検査車両を実際にテストコースで走行させ、直線ラインにおいて、テストドライバーがハンドルから手を離した状態で、かつ一定速度(例えば100Km/h)に保持した状態で、前記直線ライン上に設定した検査区間に進入させて所定距離の検査区間を通過させ、当該検査区間の最初と最後とで車両が左右方向へどの程度ずれたかを示す車両流れ量を測定している。
【0004】
直進走行している車両が、所定距離の検査区間に直進方向に対して垂直な方向に操舵と無関係に移動した距離を指す車両の流れ量は、車両固有のアライメント、タイヤ、左右の駆動力等によって影響を受けることとなるが、例えば米国のように広大な土地を略一直線に走る道路が多い場合、車両の直進性能は重要な走行性能として位置付けられている。
【0005】
そして、かかる車両流れ量を検出する具体的な方法として、例えば、レーザ式距離測定器を用いて被検査車両までの距離を測定することが知られている(特許文献1を参照。)。かかる検査方法は、被検査車両が走行する検査区間の最初と最後の位置にレーザ式距離測定器をそれぞれ設置して、レーザ式距離測定器から被検査車両に出射部よりレーザ光を照射し、戻りレーザ光を受光部で検知したのち、両レーザ光から被検査車両までの距離を算出して、被検査車両までの測定値a1、a2をそれぞれ検出する。このとき、検査区間の距離b1と、走行方向と走行方向に垂直な方向とでなす角θにより、算出式 b1×tanθ=(a2−a1)により流れ量を算出するというものである。
【0006】
【特許文献1】特開平8−313401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、走行直進性能の検査では、上述した車両流れ量に応じて、この車両流れ量が許容値内であるか否かの合否判定を行う必要があるが、上記特許文献1の技術は、例えば車両流れ量が許容値内であるか否かの合否判定が否となった場合、その否となった原因が、被検査車両自体による要因によって生起しているか、或は、検査時のテストコースにおける気象条件による要因かを分析して知ることができるようなものではなかった。また、特許文献1を含むこの種の検査においては、検査開始から終了までを系統的に実施できるようなシステムは確立されていない。
【0008】
そこで、本発明は、被検査車両をテストコースで実際に走行させながら、車両流れに影響を与えている要因を解析しつつ車両の直進性能をスムーズに検査することのできる車両の直進性能検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、かかる目的を達成すべく、請求項1に記載の発明は、テストコースで車両を走行させて当該車両の直進性能を検査する車両の直進性能検査システムであって、被検査車両内に持ち込み可能であり、当該被検査車両の車両情報が記録された車両コードから車両識別情報を読み取る携行端末と、被検査車両が走行する前記テストコース内の気象情報を計測する気象測定部と、前記テストコースの直線路に設置され、走行する被検査車両の進入角及び走行車両が左右に流れる量を示す車両流れ量を計測するための計測部と、前記テストコース外に設置され、前記携行端末と相互通信可能に無線接続されるとともに、前記気象測定部及び計測部それぞれと有線又は無線で接続された検査処理装置と、を備え、前記計測部は、前記直進路に沿って所定間隔をあけて配置され、前記直進路を走行する前記被検査車両に向けてそれぞれレーザ光を出射して車両までの距離を計測する第1〜第3のレーザ送受信装置と、各レーザ送受信装置が計測した計測情報を前記検査処理装置に送信する送信装置とを備え、前記検査処理装置は、前記第1レーザ送受信装置と前記第2レーザ送受信装置による計測結果に基づいて前記被検査車両の進入角を算出する進入角算出手段と、前記第2レーザ送受信装置と前記第3レーザ送受信装置による計測結果に基づいて前記被検査車両の流れ量測定値を算出する流れ量算出手段と、前記進入角算出手段及び前記流れ量算出手段による算出結果と、前記気象測定部から受信した気象情報とに基づいて、前記被検査車両の車両流れ量を、前記携行端末から受信した車両識別情報に関連付けて最終決定する車両流れ量決定手段と、この車両流れ量決定手段により決定した車両流れ量の検査合否を判定する合否判定手段と、を備えることとした。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両の直進性能検査システムにおいて、前記検査処理装置は、前記合否判定手段による判定結果を前記携行端末に送信する合否結果送信手段を備える一方、前記携行端末は、受信した判定結果を表示する表示部を備えていることとした。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車両の直進性能検査システムおいて、被検査車両のハンドルに取付けてハンドル角度を計測し、ハンドル角度の変化量を検出可能とし、かつ前記携行端末と無線接続されたハンドル角度測定装置をさらに備え、前記ハンドル角度測定装置は、前記ハンドルの角度の変化量を前記携行端末に送信し、前記携行端末は、前記ハンドル角度測定装置から受信した前記ハンドルの角度の変化量を前記検査処理装置に送信し、前記検査処理装置は、前記携行端末から受信した前記ハンドルの角度の変化量を、前記合否判定手段による検査合否の判定の際に参照することとした。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両の直進性能検査システムおいて、前記ハンドル角度測定装置は、ハンドルの略中央位置であって、ハンドル中心よりも上部位置に取付可能とした薄型箱状のケーシング内に、ハンドルの角度を検知する加速度センサ、この加速度センサで検知したアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換部、中央演算装置、及び記録部とからなるマイクロコンピュータ部と、ディジタル信号を通信データに変換する通信データ変換部と、通信データを携行端末に送信する無線通信部とを収納した構成であることとした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被検査車両をテストコースで実際に走行させながら、車両流れに影響を与えている要因を解析しつつ車両の直進性能をスムーズに検査することが可能となり、しかも、これまでテストドライバーの経験などに頼っていた車両流れの合否判断を合理的かつ正確に行うことが可能となる。また、被検査車両の車両流れ検査において車両流れに影響を与えている要因を瞬時に解析して確認できる効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図1は本実施形態に係る車両の直進性能検査システムの概略を説明する構成図、図2(a)はハンドル角度測定装置を示す斜視図、図2(b)は携行端末及びハンドル角度測定装置の機能説明図、図3(a)は車両内のハンドルにハンドル角度測定装置を取り付けた状態を示す正面図、図3(b)は車両内のハンドルにハンドル角度測定装置を取り付けた状態を示す斜視図、図4(a)は携行端末を示すブロック図、図4(b)は検査処理装置を示すブロック図、図5は車両流れ量の計測状態を示す説明図である。
【0016】
[直進性能検査システムの構成]
本実施形態に係る車両の直進性能検査システム1は、図1に示すように、テストコースCで車両(被検査車両2)を走行させて当該車両2の直進性能を検査するようにしたものである。
【0017】
すなわち、被検査車両2内に持ち込み可能であり、当該被検査車両2の車両情報が記録された車両コード4から車両識別情報を読み取る携行端末10と、被検査車両2が走行する前記テストコースC内の気象情報を計測する気象測定部18と、前記テストコースCの直線路に設置され、走行する被検査車両2の進入角θ(図5参照)及び走行車両が左右に流れる量を示す車両流れ量T(図5参照)を計測するための計測部40と、前記テストコースC外に設置され、前記携行端末10と相互通信可能に無線接続されるとともに、前記気象測定部18及び計測部40それぞれと有線又は無線で接続された検査処理装置20と、を備えている。
【0018】
そして、前記計測部40は、前記直進路に沿って所定間隔をあけて配置され、前記直進路を走行する前記被検査車両2に向けてそれぞれレーザ光を出射してこの被検査車両2までの距離を計測する第1、第2、第3のレーザ送受信装置41,42,43と、各レーザ送受信装置41,42,43が計測した計測情報を前記検査処理装置20に送信する送信装置44,45,46とを備え、前記検査処理装置20は、前記第1レーザ送受信装置41と前記第2レーザ送受信装置42による計測結果に基づいて前記被検査車両2の進入角θを算出する進入角算出手段(図4(b)の制御部21)と、前記第2レーザ送受信装置42と前記第3レーザ送受信装置43による計測結果に基づいて前記被検査車両2の流れ量測定値を算出する流れ量算出手段(図4(b)の制御部21)と、前記進入角算出手段及び前記流れ量算出手段による算出結果と、前記気象測定部18から受信した気象情報とに基づいて、前記被検査車両2の車両流れ量Tを、前記携行端末10から受信した車両識別情報に関連付けて最終決定する車両流れ量決定手段(図4(b)の制御部21)と、この車両流れ量決定手段により決定した車両流れ量Tの検査合否を判定する合否判定手段(図4(b)の制御部21)と、を備えている。
【0019】
かかる構成とすることにより、被検査車両2をテストコースCで実際に走行させながら、車両流れに影響を与えている要因を解析しつつ車両直進性能をシステマチックに検査することが可能となる。したがって、これまでテストドライバーの経験などに頼っていた車両流れの合否判断についても、合理的かつ正確に行うことが可能となる。さらに、被検査車両2の車両流れに影響を与えている要因も瞬時に解析することが可能となる。
【0020】
ところで、被検査車両2は自動車組み立てを完了して出荷される前の車両であり、本実施形態では、かかる被検査車両2を、テストコースCの直進路の第1測定位置P、第2測定位置Q、第3測定位置Rを順に通過させながら、テストコースCの外に設けた計測部40により被検査車両2までの距離を計測している。そして、検査処理装置20において、この計測情報を基にして進入角及び流れ量測定値を算出して、これらの算出結果、取得した気象情報を参照して、車両流れ量を携行端末10から受信した車両識別情報に関連付けて最終決定した後、車両流れ量の検査合否を判定するのである。
【0021】
以下、本直進性能検査システム1の構成について、より具体的に説明する。
被検査車両2には、当該車両を識別でき、かつ当該車両に関する各種情報を読み取り可能にした車両情報シート3を取り付けている。
【0022】
車両情報シート3は、被検査車両2のフレーム番号、ボデー番号、フレーム区分等の車両情報を印字し、さらに他の各種車両情報が記録された車両コード4を、例えばQRコードにして印刷している。また、QRコード方式の他にバーコード方式を用いるようにしてもよい。
【0023】
なお、車両コード4としては、例えばQRコードのように車両コード4から車両識別情報を後述する携行端末10の撮像部11(図2(b)参照)で読み取る方式の他に、読み書き可能なICチップをシート状のカードに内蔵し、このICチップに車両情報を記録するようにしてもよい。この場合、携行端末10は、ICチップの読み取り手段を備え、この読み取り手段によりICチップ内の車両識別情報を読み取れるようにすればよい。
【0024】
携行端末10は、図2(b)及び図4(a)に示すように、被検査車両2に添付された車両情報シート3のQRコード4から車両情報を読み取るCCDやCMOS等からなる撮像部11と、車両識別情報や後述する検査処理装置20から送信される車両流れ検査の合否判定の情報を表示する表示部12と、表示部12に表示する各種情報を入力するキーパッド部13と、被検査車両2のハンドル5の中央の上部に設けられ、ハンドル5の回動角度を検出するハンドル角度測定装置60(図3参照)及び検査処理装置20との双方向通信を行う通信部14と、車両識別情報や前記ハンドル角度測定装置60が計測したハンドル角度の変化量の情報等を記録する記録部15と、携行端末10の前記各部を制御する制御部16を備えている。なお、ハンドル角度測定装置60については後に詳述する。
【0025】
この通信部14には、ハンドル角度測定装置60との通信を行う通信機能としての例えばBluetooth(登録商標)と検査処理装置20との双方向通信を行う通信機能として例えば無線LAN(Local Area Network)とを兼ね備えている。
【0026】
気象測定部18は、被検査車両2が走行するテストコースCと略同じ環境となるように、図1に示すように、当該テストコースCの近傍に設けられており、テストコースC上と極めて近似した気温、湿度、風向、風速、大気圧の気象情報を、例えば6秒ごとに1回計測し、気象用通信装置19を介して検査処理装置20へ送信している。
【0027】
気象用通信装置19は、有線或は無線で検査処理装置20と通信可能に接続している。
【0028】
テストコースCには、車両を走行させて各種検査を可能とした直線路やコーナー路が設けられており、直線路には被検査車両が走行を開始するスタート地点(図示せず)と、このスタート地点から所定間隔、すなわち、被検査車両2が加速して所定の速度となることが可能な位置に第1測定位置Pを設定し、また、第1測定位置Pから所定間隔を空けて第2測定位置Qを設定し、さらに、第2測定位置Qから所定間隔を空けて第3測定位置Rが設定される。そして、第1から第3測定位置には、走行している被検査車両2の左右の流れ量を計測するための計測部40が設けられる。例えば、第1測定位置Pと第2測定位置Qとの間隔を25mとし、第2測定位置Qと第3測定位置Rとの間隔を100mとした。
【0029】
計測部40は、図1に示すように、第1測定位置Pにおいて走行方向に垂直な方向に第1レーザ送受信装置41を設け、第2測定位置Qにおいて走行方向に垂直な方向に第2レーザ送受信装置42を設け、さらに第3測定位置Rにおいて走行方向に垂直な方向に第3レーザ送受信装置43を設けている。これら第1〜第3レーザ送受信装置41,42,43には、検査処理装置20との通信を行う第1〜第3送信装置44,45,46がそれぞれ接続されている。
【0030】
各レーザ送受信装置41,42,43は、図5に示すように、被検査車両2にレーザ光L1,L2,L3を出射する出射部41a,42a,42cと、被検査車両2から反射された戻りレーザ光L1’,L2’,L3’を受信する受信部41b,42b,43bと、レーザ光L1,L2,L3と戻りレーザ光L1’,L2’,L3’をアナログ信号からディジタル信号に変換する各A/D変換部41c,42c,43cとを備え、各出射部41a,42a,43aから被検査車両2に出射した各レーザ光L1,L2,L3と反射して得られた各戻りレーザ光L1’,L2’,L3’から被検査車両2までの距離である第1〜第3計測情報が算出されることになる。これら第1〜第3計測情報は、各入出力部41d,42d,43dから各第1〜第3送信装置44,45,46を介して検査処理装置20に送信される。
【0031】
検査処理装置20は、図4(b)に示すように、各種手段として機能する制御部21と、携行端末10及び気象用通信装置19及び各第1〜第3送信装置44,45,46と各種情報を送受信する通信部22と、各種情報を記録する記録部23と、各種情報を表示する表示モニタ部24と、入力装置であるキーボード25とを備えている。
【0032】
各種情報とは、気象情報、車両識別情報、レーザ送受信装置41,42,43から被検査車両2までの距離である第1〜第3計測情報、ハンドル角度の変化量、後述する各種手段により算出される値である。
【0033】
制御部21は、第1レーザ送受信装置41と第2レーザ送受信装置42による計測結果の第1計測情報と第2計測情報に基づいて被検査車両2の進入角を算出する進入角算出手段と、第2レーザ送受信装置42と第3レーザ送受信装置43による計測結果の第2計測情報と第3計測情報に基づいて被検査車両2の流れ量測定値を算出する流れ量算出手段と、進入角算出手段及び流れ量算出手段による算出結果と、気象測定部18から受信した気象情報とに基づいて、被検査車両2の車両流れ量を、携行端末10から受信した車両識別情報に関連付けて最終決定する車両流れ量決定手段と、この車両流れ量決定手段により決定した車両流れ量の検査合否を判定する合否判定手段として機能する。
【0034】
さらに、制御部21は、第2レーザ送受信装置42と第3レーザ送受信装置43による計測結果の第2計測情報と第3計測情報に基づいて被検査車両2の速度を算出する速度算出手段としても機能するものである。
【0035】
通信部22(図4(b)参照)は、双方向通信を可能としており、携行端末10の通信部14から送信される車両識別情報やハンドル角度測定装置60が計測したハンドル角度の変化量、気象用通信装置19から送信される気象情報、第1〜第3送信装置44,45,46から送信される第1〜第3計測情報を受信すると共に、さらに、車両流れ量の検査合否を判定した情報や各種情報を携行端末10に送信するものである。
【0036】
記録部23は、車両識別情報、気象情報、第1〜第3計測情報、ハンドル角度測定装置60が計測したハンドル角度の変化量α、進入角算出手段及び流れ量算出手段による算出結果と、合否判定手段による車両流れ量の検査合否結果等を記録している。
【0037】
表示モニタ部24は、記録部23が記録した上述の車両識別情報に関連付けされた気象情報、第1〜第3計測情報、ハンドル角度測定装置60が計測したハンドル角度の変化量α、進入角算出手段及び流れ量算出手段による算出結果と、合否判定手段による車両流れ量の検査合否結果等が表示される。
【0038】
[被検査車両の進入角]
被検査車両2の進入角θは、被検査車両2の基準となる直進方向と実際の進行方向とがなす角であり、図5に示すように、通常は被検査車両2が直進して位置Qとなるところが位置Q’となった場合における角度である。したがって、被検査車両2の進入角θは次のようにして算出することができる。
【0039】
すなわち、図5に示すように、被検査車両2が第1測定位置Pから第2測定位置Qの区間を走行したとき、検査処理装置20は、第1レーザ送受信装置41から第1計測情報を、第2レーザ送受信装置42からは第2計測情報を得る。すなわち、第1測定位置Pにおける第1レーザ送受信装置41から被検査車両2までの距離となる第1計測情報と、第2測定位置Qにおける第2レーザ送受信装置42から被検査車両2までの距離である第2計測情報とが、それぞれ検査処理装置20へ送信されると、検査処理装置20の制御部21の進入角算出手段は、第1計測情報及び第2計測情報と、第1測定位置Pから第2測定位置Qまでの距離に基づき、三角関数により第2測定位置Qにおける被検査車両2の進入角θを算出するのである。
【0040】
[被検査車両の車両流れ量]
車両流れ量T(図5参照)とは、被検査車両2が第1測定位置Pから第3測定位置Rまで走行する間の横方向(左右方向)への変化量であり、第1測定位置Pの位置を基準とした場合に第3測定位置Rでの流れ位置R’との差で表わされるが、第1測定位置Pへの進入角度θがゼロでない場合はその補正が必要となる。そこで、本実施形態における被検査車両2の車両流れ量Tは、次のようにして算出している。
【0041】
すなわち、図5に示すように、被検査車両2が第2測定位置Qから第3測定位置Rまでの区間を走行したとき、検査処理装置20は、第2レーザ送受信装置42から第2計測情報を、第3レーザ送受信装置43からは第3計測情報を得る。すなわち、第2測定位置Qにおける第2レーザ送受信装置42から被検査車両2までの距離である第2計測情報と、第3測定位置Rにおける第3レーザ送受信装置43から被検査車両2までの距離を示す第3計測情報とが、それぞれ検査処理装置20へ送信されると、検査処理装置20の制御部21の流れ量算出手段は、第2及び第3計測情報と第2測定位置Qから第3測定位置Rまでの距離に基づき、三角関数により第3測定位置Rにおける被検査車両2の流れ量測定値を算出する。そして、車両流れ量決定手段は、進入角算出手段により算出した進入角度θに基づいて被検査車両2の車両流れ量を算出する。このとき、必要に応じて、気象測定部18から受信した気象情報を勘案して、被検査車両2の車両流れ量を最終決定し、携行端末10から受信した車両識別情報に関連付けて記録する。
【0042】
次に、ハンドル5に取り付けてハンドル5の角度を測定するハンドル角度測定装置60について説明する。
図2(a)に示すように、ハンドル角度測定装置60は、直方体を長手方向の中途部から鈍角に屈曲して形成した、側面視略山形状の形状を有するケーシング71内に各種装置や機器類を組み込んで構成している。本実施形態におけるケーシング71は、高さH1を20mm、幅W1を75mm、長さL1を70mmとなる基端側の箱と、高さH2を25mm、幅W2を75mm、長さL2を80mmとなる前端側の箱を一体化した形状としている。
【0043】
すなわち、ハンドル角度測定装置60は、図2(b)に示すように、ハンドル5の角度を検知する加速度センサ61と、加速度センサ61で検知したアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換部62、中央演算装置63、及び読み書き可能なROMとRAMからなる記録部64を備えたマイクロコンピュータ部65と、ディジタル信号を通信データに変換する通信データ変換部66と、通信データを携行端末10にアンテナ75を介して送信する無線通信部67と、本装置60を駆動するための電源供給用の電池68とをケーシング71内に収納するとともに、ハンドル角度の測定の操作開始及び操作終了を行うスイッチ69はケーシング71と、ハンドル5の0度(基準点)を設定する基準点スイッチ70と、左右基準点設定スイッチ72,73と、測定完了ランプ74を具備し、ケーシング71に設けた構成としている。
【0044】
そして、このハンドル角度測定装置60は、図3に示すように、被検査車両2のハンドル角度を計測するためハンドル5内の中央部5aの上面に、基端側の箱部分が締結バンド80により締結される一方、前端側の箱部分が斜め下方に伸延した状態で取付けられる。そして、操作開始及び操作終了を行うスイッチ69は、本実施形態では、ハンドル5の周縁のグリップに取り付けられるように、ケーシング71から伸延させた構成とすることにより、テストドライバーが走行中に押し易くしている。
【0045】
ハンドル角度測定装置60は、そのケーシング71が上述したようにコンパクトに形成されており、上述したような形態でハンドル5の中央部5aに取付けられているため、取付けが簡単で、かつテストドライバーがハンドル5の操作を行う際の障害とならず、さらに、背部のインパネ50内の速度計51を視認するときの障害とならない効果がある。しかも、ハンドル5内に搭載されているエアバックの作動にも支障とならないため、テストドライバーは安全に被検査車両2を走行させて車両流れ検査を行うことが可能となる。
【0046】
[ハンドル角度の変化量]
ハンドル角度測定装置60によるハンドル角度の変化量α(図3(a)参照)は次のようにして計測する。
【0047】
被検査車両2がテストコースCのスタート地点に停車している状態において、基準点スイッチ70を押してハンドル5の基準点を設定する。被検査車両2が所定速度となったのちに第1測定位置P(図5参照)の手前において、スイッチ69(図3参照)をオンすると測定を開始し、加速度センサ61(図2(b)参照)が被検査車両2のハンドル角度の変化量αを検知すると所定の信号を出力して、このハンドル角度の変化量αの信号を記録部64(図2(b)参照)に記録する。
【0048】
被検査車両2が第3測定位置R(図5参照)を通過した時点において、スイッチ69(図3参照)を押して測定を終了する。ハンドル角度の変化量αの信号を記録部64(図2(b)参照)より読み出して通信データ変換部66で通信用のデータに変換し、無線通信部67からハンドル角度の変化量αの通信用のデータを携行端末10に送信している。
【0049】
携行端末10は、受信したハンドル角度の変化量αを記録部15に記録したのち、通信部14から無線回線でハンドル角度の変化量αを検査処理装置20(図1参照)に送信する。
【0050】
検査処理装置20は、受信したハンドル角度の変化量αを記録部23(図4(b)参照)に記録する。このハンドル角度の変化量αは、後述する検査処理装置20の制御部21における合否判定手段による検査合否の判定の際に参照されることとなる。
【0051】
[直進性能検査システムによる車両流れ検査手順]
本実施形態の直進性能検査システム1を用いて行う車両流れ検査の手順について説明する。図6は本実施形態の直進性能検査システム1による検査の流れを示す説明図、図7は検査処理装置の表示モニタ部に表示される検査結果一覧表である。
【0052】
気象測定部18(図1参照)では、テストコースC上の風向、風速、気温、湿度、大気圧の気象情報を計測する(ステップS20)。本実施形態では、気象測定部18は、例えば6秒ごとに気象情報をサンプリングするようにしている。
【0053】
気象測定部18は、取得した気象情報を気象用通信装置19を介して検査処理装置20に送信する(ステップS21)。なお、気象測定部18から送信される気象情報は、検査処理装置20の処理の流れにおいて、ステップS16に示されるように、記録部23(図4(b)参照)に記録されることになる。
【0054】
また、被検査車両2がテストコースCを走行する前に、テストドライバーは、予め、被検査車両2に添付した車両情報シート3(図1参照)のQRコード4を携行端末10の撮像部11(図2(b)参照)で読み取る(ステップS10)。読み取った結果は、車両情報のうち車両識別情報が読み込まれて携行端末10の表示部12に表示される。
【0055】
携行端末10は、車両識別情報を通信部14を介して検査処理装置20に送信する。検査処理装置20は、受信した車両識別情報を記録する。また、ハンドル角度測定装置60をハンドル5上部(図3参照)に取り付ける。こうして、車両流れ測定準備がなされ(ステップS11)、被検査車両2はテストコースCのスタート地点に停車して計測部40(図1参照)による車両流れ量の測定の順番を待つことになる。
【0056】
車両流れ量の測定は以下の手順で行われる。
テストドライバーがハンドル5上部(図3参照)に取り付けたハンドル角度測定装置60の基準点スイッチ70を押圧してハンドル5の基準点を設定すると、このスイッチ押圧操作をトリガーとして、ハンドル角度の変化量αの計測が開始される(ステップS30)。
【0057】
具体的には、テストドライバーは、基準点スイッチ70を押圧して被検査車両2をスタート地点から走行させる。そして、第1測定位置Pに至る直前までに被検査車両2が所定の速度、例えば100km/hとなるように、スタート地点から加速して行く。そして、テストドライバーは、第1〜第3測定位置P,Q,Rを通過するまで、この所定の速度を維持するように被検査車両2を走行させる。
【0058】
車両流れ量の測定では、先ず、被検査車両2の進入角計測の開始がなされる。すなわち、被検査車両2が所定の速度を維持した状態で第1測定位置P(図5参照)に接近すると、テストドライバーは、ハンドル5から手を離す。そして、かかる状態で被検査車両2が第1測定位置Pを通過するタイミングで被検査車両2の進入角計測が開始される(ステップS12)。
【0059】
この第1測定位置P(図5参照)においては、第1レーザ送受信装置41の出射部41aから第1レーザ光L1が前方に向けて出射されており、被検査車両2が通過すると、通過中にこの被検査車両2に反射された戻り第1レーザ光L1’を受信部41bで受光し、第1レーザ光L1と戻り第1レーザ光L1’とから被検査車両2までの距離である第1計測情報を算出する。この第1計測情報を第1送信装置44を介して検査処理装置20(図4(b)参照)に送信する。検査処理装置20は受信した第1計測情報を記録部23に記録する。
【0060】
次に被検査車両2は所定の速度で第2測定位置Q(図5参照)を通過する。このとき被検査車両2の進入角計測を終了する(ステップS13)と共に車両流れ量の計測を開始する(ステップS14)。
【0061】
この第2測定位置Qにおいては、第2レーザ送受信装置42の出射部42aから第2レーザ光L2が出射されており、第2レーザ送受信装置42は、前方を通過する被検査車両2から反射された戻り第2レーザ光L2’を受信部42bで受光し、第2レーザ光L2と戻り第2レーザ光L2’とから被検査車両2までの距離である第2計測情報を算出する。この第2計測情報を第2送信装置45を介して検査処理装置20(図4(b)参照)に送信する。検査処理装置20は、受信した第2計測情報を記録部23に記録する。
【0062】
引き続き被検査車両2は所定の速度で第3測定位置R(図5参照)を通過する。このとき被検査車両2の車両流れ量の計測を終了する(ステップS15)。第3測定位置Rにおいては、前方を通過する被検査車両2に向けて第3レーザ送受信装置43の出射部43aから第3レーザ光L3が出射されており、第3レーザ送受信装置43は、被検査車両2から反射された戻り第3レーザ光L3’を受信部43bで受光し、第3レーザ光L3と戻り第3レーザ光L3’とから被検査車両2までの距離である第3計測情報を算出する。この第3計測情報を第3送信装置46を介して検査処理装置20(図4(b)参照)に送信する。検査処理装置20は、受信した第3計測情報を記録部23に記録する。
【0063】
また、被検査車両2が第3測定位置R(図5参照)を通過すると、ハンドル5の周縁に設けたハンドル角度測定装置60(図3参照)の操作開始のスイッチ69を押圧し、ハンドル角度の変化量の計測を終了する(ステップS31)。
【0064】
ハンドル角度の変化量αの計測を開始してから終了までの期間において、ハンドル角度測定装置60(図2(b)参照)の記録部64にはハンドル角度の変化量αが記録される。この記録部64に記録されたハンドル角度の変化量を通信データ変換部66から無線通信部67を介して携行端末10へ送信する。携行端末10は、受信したハンドル角度の変化量αを記録部15(図4(a)参照)に記録する(ステップS32)。
【0065】
そして、携行端末10の記録部15に記録したハンドル角度の変化量αは、通信部14を介して無線回線で検査処理装置20(図4(b)参照)に送信される。検査処理装置20は、受信したハンドル角度の変化量αを記録部23に記録する。また、テストドライバーは、被検査車両2内において携行端末10に表示されたハンドル角度の変化量αを視認することができる。
【0066】
上述したように検査処理装置20(図4(b)参照)の記録部23は、気象情報、車両識別情報、第1〜第3計測情報、ハンドル角度の変化量α、各種手段により算出した被検査車両2の進入角θ、被検査車両2の流れ量測定値、第2測定位置Qから第3測定位置Rまでの区間における被検査車両2の速度を記録する(ステップS16)。
【0067】
検査処理装置20の制御部21は、進入角算出手段及び流れ量算出手段による算出結果としての被検査車両2の進入角θと被検査車両2の流れ量測定値と、気象測定部18から受信した気象情報とに基づいて、車両流れ量決定手段により被検査車両2の車両流れ量を、携行端末10から受信した車両識別情報に関連付けて最終決定する。そして、合否判定手段は、この最終決定した車両流れ量と比較テーブルとを比較することにより、車両流れ量が許容値内か否かの車両流れ判定を行う。車両流れ量が許容値内であれば合格となり、許容値外であれば不合格となる。
【0068】
また、合否判定手段は、記録部23から読み出したハンドル角度の変化量と比較テーブルとを比較することにより、ハンドル角度の変化量が許容値内か否かのハンドル切れ角判定を行う。ハンドル角度の変化量が許容値内であれば合格となり、許容値外であれば不合格となる。
【0069】
そして、合否判定手段は、車両識別情報に関連付けて気象情報と車両流れ判定結果とハンドル切れ角判定結果に基いて、検査合否の総合判定を行う。
【0070】
検査処理装置20の表示モニタ部24には後述する各種車両流れ検査の判定結果が表示される(ステップS18)。
【0071】
すなわち、表示モニタ部24には、図7に一例として示した一覧表が表示されており、一覧表には被検査車両2の車両流れ検査を行った日付、時間、車両識別番号、車速、車両流れ量、車両流れ判定、ハンドル切れ角、ハンドル切れ角判定、気象情報、総合判定結果が順に表示される。
【0072】
例えば、車両識別番号のフレーム番号が「2067026」であれば、これに関連付けて、第2計測情報と第3計測情報から算出した車速「98Km/h」及び車両流れ量「0.197m」とが表示され、合否判定手段により判定された車両流れ判定は合格となり「OK」と表示される。
【0073】
さらに、ハンドル角度測定装置60により測定したハンドル切れ角「0.60°」と表示され、合否判定手段により判定されたハンドル切れ角判定は合格となり「OK」と表示される。
【0074】
また、気象情報おける風向「西北西」、風速「0.9m/s」、気温「24℃」、湿度「58%」、大気圧「1013HPa」と表示される。このとき合否判定手段により判定された総合判定結果は、車両流れ判定とハンドル切れ角判定と気象情報とから総合的に判断されて合格となり、「OK」と表示される。
【0075】
また、検査処理装置20の制御部21は、合否結果送信手段により携行端末10に上記合否情報を送信し、被検査車両2の携行端末10で受信される。
【0076】
そして、テストドライバーは、テストコースCの外に被検査車両2を停車し、携行端末10を確認する。このとき携行端末10(図2(b)参照)の表示部12には、図7に示した一覧表の車両流れ合否情報が表示される。そして、総合判定結果が合格であれば車両流れ検査を終了する(ステップS17)。
【0077】
[検査処理装置]
上述した手順で車両の直進性検査が行われるが、ここで、本直進性能検査システム1における検査処理装置20が行う処理について説明する。図8は検査処理装置が行う各種処理を示すフロー図である。図9は図8の検査処理装置の処理のサブルーチンを示すフロー図である。
【0078】
検査処理装置20の制御部21は、車両情報シート3のQRコード4から携行端末10で読み取られた車両識別情報を、この携行端末10から受信したか否かの判断を行う(ステップS100)。すなわち、制御部21は、車両識別情報を受信するまで同処理を繰り返す一方、車両識別情報を受信するとステップS101の処理に進む。
【0079】
ステップS101では、制御部21は受信した車両識別情報により被検査車両2を特定する(ステップS101)。次いで、制御部21は、特定された被検査車両2の車両情報が存在するか否かを判定する(ステップS102)。すなわち、車両識別情報で特定された車両が存在するか否か、及びが存在する場合は車両識別情報で特定された車両のスペックとしてのタイヤの種類やメーカー、駆動方式等のスペック情報が生産管理装置6に存在するか否かを判定する。
【0080】
そして、車両識別情報に対応した該当車両があり、その車両のスペック情報を取得した場合、その旨の通知を携行端末10へ行う(ステップS103)。また、このとき制御部21は、計測部40の第1レーザ送受信装置41を稼働する始動信号を送信する。
【0081】
車両識別情報に対応した該当車両があった旨の通知を受信した携行端末10は、車両流れ検査の測定準備完了を示す「SET OK」を表示部12に表示する。そして、テストドライバーは、被検査車両2のハンドル5を角度ゼロに調整したのちハンドル角度測定装置60の基準点スイッチ70を押圧すると、同ハンドル角度測定装置60が始動する。このとき、テストドライバーは、テストコースCのスタート地点の被検査車両2の走行を開始する。
【0082】
一方、被検査車両2の車両識別情報に対応した情報が生産管理装置6にない場合、制御部21は携行端末10へ該当車両なしの通知を送信し(ステップS104)、検査処理を終了する。すなわち、携行端末10に、例えば、車両識別情報が生産管理装置6に蓄積された情報にない年式であるなどの通知を送信する。これを受信した携行端末10の表示部12には、車両流れ検査の測定不可能を示す「NO SET」が表示される。テストドライバーは、被検査車両2の車両流れ量検査を中止し、生産管理装置6への当該被検査車両2に関する上記情報の再登録を行ったうえで改めて車両流れ検査を行うことになる。
【0083】
ステップS105において、計測部40で測定処理を行う。本処理については、図9のフローチャートを基に説明する。
【0084】
図9に示すように、ステップS120において、制御部21は第1レーザ送受信装置41を稼働する始動信号を送信し、この始動信号を受信した第1レーザ送受信装置41は、出射部41aからレーザ光L1を照射し、被検査車両2からの戻りレーザ光L1’を受光する。
【0085】
ステップS121において、制御部21は被検査車両2がテストコースCの直線路の第1測定位置Pを通過するときのレーザ光L1と戻りレーザ光L1’とにより測定された第1計測情報を受信したか否かの判断を行う。すなわち、被検査車両2に照射されたレーザ光L1と被検査車両2から反射した戻りレーザ光L1’とから得られた第1計測情報を第1送信装置44を介して検査処理装置20に送信し、検査処理装置20は、この第1計測情報を受信した場合はこれを記録部23に記録し、次のステップS122の処理に進む。
【0086】
一方、ステップS121において制御部21が第1計測情報を受信しない場合には、ステップS130の処理に進み、このステップS130において、制御部21は第1レーザ送受信装置41からレーザ光L1を連続照射した時間が、所定時間に到達したか否かの判断を行う。そして、所定時間に到達してない場合はステップS121に処理を戻す。
【0087】
所定時間に到達している場合はステップS131の処理に進む。このステップS131において、制御部21は第1レーザ送受信装置41のレーザ光の照射を停止する信号を送信し、第1レーザ送受信装置41は受信した停止信号に基きレーザ光の照射を停止する。
【0088】
ステップS122において、制御部21は第2レーザ送受信装置42に始動信号を送信するとともに、第1レーザ送受信装置41に停止信号を送信する。そして、始動信号を受信した第2レーザ送受信装置42は、出射部42aからレーザ光L2を照射する。また、停止信号を受信した第1レーザ送受信装置41は、レーザ光L1の照射を停止する。
【0089】
ステップS123において、制御部21は被検査車両2がテストコースCの直線路の第2測定位置Qを通過するときのレーザ光L2と戻りレーザ光L2’とにより測定された第2計測情報を受信したか否かの判断を行う。すなわち、被検査車両2に照射されたレーザ光L2と被検査車両2から反射した戻りレーザ光L2’から得られた第2計測情報を第2送信装置45を介して検査処理装置20に送信し、検査処理装置20は、この第2計測情報を受信した場合はこれを記録部23に記録し、次のステップS124の処理に進む。
【0090】
一方、ステップS123において、制御部21が第2計測情報を受信しない場合には、ステップS132の処理に進み、制御部21は第2レーザ送受信装置42からレーザ光L2を連続照射した時間が、所定時間に到達したか否かの判断を行う。そして、所定時間に到達してない場合はステップS123に処理を戻す。
【0091】
所定時間に到達している場合はステップS133の処理に進み、このステップS133において、制御部21は第2レーザ送受信装置42のレーザ光の照射を停止する信号を送信し、第2レーザ送受信装置42は受信した停止信号に基きレーザ光の照射を停止する。
【0092】
ステップS124において、制御部21は第3レーザ送受信装置43に始動信号を送信するとともに、第2レーザ送受信装置42に停止信号を送信する。そして、始動信号を受信した第3レーザ送受信装置43は、出射部43aからレーザ光L3を照射する。また、停止信号を受信した第2レーザ送受信装置42は、レーザ光L2の照射を停止する。
【0093】
ステップS125において、制御部21は被検査車両2がテストコースCの直線路の第3測定位置Rを通過するときのレーザ光L3と戻りレーザ光L3’とにより測定された第3計測情報を受信したか否かの判断を行う。すなわち、被検査車両2に照射されたレーザ光L3と反射した戻りレーザ光L3’から得られた第3計測情報を第3送信装置46を介して検査処理装置20に送信し、検査処理装置20は、この第3計測情報を受信した場合はこれを記録部23に記録し、次のステップS126の処理に進む。
【0094】
一方、ステップS125において、制御部21が第3計測情報を受信しない場合には、ステップS134の処理に進み、制御部21は、第3レーザ送受信装置43からレーザ光L3を連続照射した時間が所定時間に到達したか否かの判断を行う。そして、所定時間に到達してない場合はステップS125に処理を戻す。
【0095】
所定時間に到達している場合はステップS135の処理に進み、このステップS135において、制御部21は第3レーザ送受信装置43のレーザ光の照射を停止する信号を送信し、第3レーザ送受信装置43は受信した停止信号に基きレーザ光の照射を停止する。
【0096】
ステップS126において、制御部21は第3レーザ送受信装置43に停止信号を送信する。そして、停止信号を受信した第3レーザ送受信装置43は、レーザ光L3の照射を停止して次のステップS127の処理に進む。
【0097】
ステップS127において、制御部21は、記録部23に第1〜第3計測情報を記録した状態となり、計測情報の取得が完了したことになって本フローを終了する。
【0098】
なお、上記ステップS131、ステップS133、ステップS135の処理後は、ステップS136において、第1から第3計測情報を未取得の状態で本フローを終了する。
【0099】
計測部の測定処理が終了すると、図8に示すステップS106に処理が移り、制御部21は、記録部23に第1〜第3計測情報の記録状態が正常に処理されているか否かの判断を行う。すなわち、記録部23に第1〜第3計測情報が記録されている場合は正常処理と判定し、ステップS107の処理に進む。一方、記録部23に第1〜第3計測情報のうち一つでも欠落しているような場合は異常処理と判定して本車両流れ検査の処理を終了する。
【0100】
ステップS107において、制御部21は、気象測定部18から気象情報を取得して記録部23に記録する。
【0101】
ステップS108において、制御部21は、ハンドル角度測定装置60が計測したハンドル角度の変化量αを、携行端末10を介して取得して記録部23に記録する。
【0102】
ステップS109において、制御部21は、第2測定位置Qにおける被検査車両2の進入角θを算出する。すなわち、制御部21は、前述したように、進入角算出手段として機能して、上記第1計測情報と上記第2計測情報を基に被検査車両2の第1測定位置Qにおける被検査車両2の進入角θを算出し、記録部23に記録する。
【0103】
ステップS110において、制御部21は、前述したように、流れ量算出手段として機能して、第2計測情報と上記第3計測情報を基に被検査車両2の第3測定位置Rにおける被検査車両2の流れ量測定値を算出し、記録部23に記録する。
【0104】
ステップS111において、制御部21は、前述したように、速度算出手段として機能して、第2計測情報と上記第3計測情報を基に被検査車両2の第2測定位置Qから第3測定位置Rまでの区間における被検査車両2の速度を算出し、記録部23に記録する。
【0105】
ステップS112において、制御部21は、被検査車両2の流れ量の算出結果を、算出した進入角θと、気象測定部18から受信した気象情報とに基づいて、必要があれば補正して、携行端末10から受信した車両識別情報に関連付けて最終決定する。そして、制御部21は合否判定手段として機能し、この最終決定した車両流れ量と比較テーブルとを比較して、車両流れ量が許容値内か否かの流れ判定を行う。そして、車両流れ量が許容値内であれば合格としてステップS113に処理を進める一方、車両流れ量が許容値外であれば不合格として後述するステップS116に処理を移す。
【0106】
ステップS113において、制御部21(合否判定手段)は、記録部23から読み出したハンドル角度の変化量と比較テーブルとを比較することにより、ハンドル角度の変化量が許容値内か否かのハンドル切れ角判定を行い、ハンドル角度の変化量が許容値内であれば合格としてステップS114に処理を進める一方、ハンドル角度の変化量が許容値外であれば不合格としてステップS116に処理を移す。
【0107】
ステップS114において、制御部21(合否判定手段)は、車両流れ判定結果とハンドル切れ角判定結果に基いて検査合否の総合判定を行い、総合判定が合格であればステップS115に処理を進める一方、総合判定が不合格と判定すればステップS116に処理を移す。
【0108】
ステップS115において、制御部21は、上述した合格した旨の判定結果を携行端末10に送信する。携行端末10の表示部12には、合格結果が表示されることになる。
【0109】
一方、ステップS116において、上記ステップS112,S113,S114における判定結果が不合格となった場合、制御部21は、判定結果に不合格した旨を携行端末10に送信する。携行端末10の表示部12には、判定結果に不合格したことが表示され、次のステップS117の処理に進む。
【0110】
ステップS117において、制御部21は検査処理装置20の表示モニタ部24に合否の各判定結果を表示するとともに、日時、時間、車両識別番号、ステップS111の車速、車両流れ量、ステップS108のハンドル角度の変化量、ステップS107の気象情報を表示して本メインフローを終了する。
【0111】
なお、ステップS113におけるハンドル切れ角判定が不合格の場合であっても、例えば、ハンドル角度の変化量αが異常値であるならば、走行中にハンドル5に不用意に接触したことが要因であると判断できるため、再度、テストコースCのスタート地点に戻り車両流れ検査を行うこともできる。
【0112】
また、例えば、気象情報における風速が異常値である場合、走行中にテストコースCに突風が吹いた要因であると判断できるため、再度、テストコースCのスタート地点に戻り車両流れ検査を行うこともできる。
【0113】
また、総合判定が不合格の場合、気象情報、ハンドル角度の変化量が正常値であれば勿論テスト不合格であるが、例えば、タイヤの4輪それぞれの性能違いに起因することが考えられる場合、タイヤの前後左右の取り付けローテーションを行った上で、再度、テストコースCのスタート地点に戻り車両流れ検査を行うこともできる。
【0114】
従来、被検査車両の車両流れ検査では、被検査車両をテストコースで走行させて車両流れ量を測定した後、この車両流れ量が合否判定で不合格となった場合、その不合格となった原因が、例えば気象条件などのように被検査車両自体とは関係のない外部要因により生じたとしても、それを検査中の被検査車両のテストドライバーに報知できるものでなかった。
【0115】
また、従来の走行直進性能の検査を行う際の問題点として、テストドライバーがハンドルから手を離した状態のときに、何かしらの弾みで離したはずの手やその他テストドライバーの身体の一部がハンドルに接触してしまうことによって車両流れ量が変化してしまい、走行直進性が測定できないことがあった。
【0116】
しかし、本実施形態によれば、そのような問題点を解消して、車両流れ量の測定結果が被検査車両に固有のアライメント、タイヤ、左右の駆動力等による要因であるか、計測中にテストドライバーがハンドル5に接触することによる要因であるか、テストコースC上の気象情報による要因であるかを瞬時に解析でき、また、解析結果及び不合格であった場合の原因などを被検査車両2内の携行端末10を介してテストドライバーにも確認させることができるため、効率的で正確な車両流れ合否判定を行うことが可能となる。
【0117】
ところで、検査処理装置20は、図1に示す生産管理装置6と接続しており、生産管理装置6には各被検査車両2に関連付けた情報、例えば、タイヤの種類やメーカー、駆動方式等の情報が記録されている。すなわち、図7に示す一覧の情報に生産管理装置6の情報を関連付けることにより、更にどのような要因かの分析を行うことが可能となり、被検査車両2の品質管理を向上することが可能となる。
【0118】
なお、ハンドル角度測定装置60から得られるハンドル角度の変化量の処理について、検査処理装置20を用いて行うようにしたが、処理速度を向上させるために、専用の処理装置を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本実施形態に係る車両の直進性能検査システムの概略を説明する構成図である。
【図2】(a)ハンドル角度測定装置を示す斜視図である。(b)携行端末及びハンドル角度測定装置の機能説明図である。
【図3】(a)車両内のハンドルにハンドル角度測定装置を取り付けた状態を示す正面図である。(b)車両内のハンドルにハンドル角度測定装置を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】(a)携行端末を示すブロック図である。(b)検査処理装置を示すブロック図である。
【図5】車両流れ量の計測状態を示す説明図である。
【図6】本実施形態の直進性能検査システムによる検査の流れを示す説明図である。
【図7】検査処理装置の表示モニタ部に表示される検査結果一覧表である。
【図8】検査処理装置の処理を示すフロー図である。
【図9】図8の検査処理装置の処理のサブルーチンを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0120】
C テストコース
P 第1測定位置
Q 第2測定位置
R 第3測定位置
1 直進性能検査システム
2 被検査車両
3 車両情報シート
4 車両コード
5 ハンドル
10 携行端末
18 気象測定部
19 気象用通信装置
20 検査処理装置
40 計測部
50 インパネ
60 ハンドル角度測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テストコースで車両を走行させて当該車両の直進性能を検査する車両の直進性能検査システムであって、
被検査車両内に持ち込み可能であり、当該被検査車両の車両情報が記録された車両コードから車両識別情報を読み取る携行端末と、
被検査車両が走行する前記テストコース内の気象情報を計測する気象測定部と、
前記テストコースの直線路に設置され、走行する被検査車両の進入角及び走行車両が左右に流れる量を示す車両流れ量を計測するための計測部と、
前記テストコース外に設置され、前記携行端末と相互通信可能に無線接続されるとともに、前記気象測定部及び計測部それぞれと有線又は無線で接続された検査処理装置と、
を備え、
前記計測部は、
前記直進路に沿って所定間隔をあけて配置され、前記直進路を走行する前記被検査車両に向けてそれぞれレーザ光を出射して車両までの距離を計測する第1〜第3のレーザ送受信装置と、各レーザ送受信装置が計測した計測情報を前記検査処理装置に送信する送信装置とを備え、
前記検査処理装置は、
前記第1レーザ送受信装置と前記第2レーザ送受信装置による計測結果に基づいて前記被検査車両の進入角を算出する進入角算出手段と、
前記第2レーザ送受信装置と前記第3レーザ送受信装置による計測結果に基づいて前記被検査車両の流れ量測定値を算出する流れ量算出手段と、
前記進入角算出手段及び前記流れ量算出手段による算出結果と、前記気象測定部から受信した気象情報とに基づいて、前記被検査車両の車両流れ量を、前記携行端末から受信した車両識別情報に関連付けて最終決定する車両流れ量決定手段と、
この車両流れ量決定手段により決定した車両流れ量の検査合否を判定する合否判定手段と、を備える
ことを特徴とする車両の直進性能検査システム。
【請求項2】
前記検査処理装置は、前記合否判定手段による判定結果を前記携行端末に送信する合否結果送信手段を備える一方、前記携行端末は、受信した判定結果を表示する表示部を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の車両の直進性能検査システム。
【請求項3】
被検査車両のハンドルに取付けてハンドル角度を計測し、ハンドル角度の変化量を検出可能とし、かつ前記携行端末と無線接続されたハンドル角度測定装置をさらに備え、
前記ハンドル角度測定装置は、
前記ハンドルの角度の変化量を前記携行端末に送信し、
前記携行端末は、前記ハンドル角度測定装置から受信した前記ハンドルの角度の変化量を前記検査処理装置に送信し、
前記検査処理装置は、前記携行端末から受信した前記ハンドルの角度の変化量を、前記合否判定手段による検査合否の判定の際に参照する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両の直進性能検査システム。
【請求項4】
前記ハンドル角度測定装置は、
ハンドルの略中央位置であって、ハンドル中心よりも上部位置に取付可能とした薄型箱状のケーシング内に、
ハンドルの角度を検知する加速度センサ、この加速度センサで検知したアナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換部、中央演算装置、及び記録部とからなるマイクロコンピュータ部と、ディジタル信号を通信データに変換する通信データ変換部と、通信データを携行端末に送信する無線通信部とを収納した構成である
ことを特徴とする請求項3記載の車両の直進性能検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−139274(P2010−139274A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313658(P2008−313658)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(596002767)トヨタ自動車九州株式会社 (20)