説明

車両の耐久試験装置

【課題】車両の耐久試験を効率的に実施する。
【解決手段】車両Cの複数の可動部D,…を産業用ロボット1,…により繰り返し操作して耐久性を評価する車両Cの耐久試験装置であって、平面視において、車両Cの外周から外側に離間した位置に、車両Cを囲むように設置されたガイドレール11と、ガイドレール11に係合するガイドローラがロボットベース3の下面に突設されるとともに、圧縮空気を供給することにより上載荷重を支持して床面から浮上させるエアキャスター13,…がロボットベース3の下面に取り付けられた複数の産業用ロボット1,…と、これら産業用ロボット1,…をガイドレール11に沿って移動させた任意の位置でその位置を固定する固定手段21,21,…とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完成車両の可動部を繰り返し操作することによりその耐久性を評価する、車両の耐久試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試作車又は量産車の組立が完了した完成車両において、そのドア、ペダル又はレバー等の可動部を繰り返し操作して行う耐久試験は、耐久性に関する問題点の把握等のために非常に重要である。
このような耐久試験は、可動部一箇所につき数十万回程度の操作を単純に繰り返す必要があるとともに試験を行う箇所が多いため、汎用性の高い産業用ロボットを使用して行われるのが一般的である。
【0003】
このような産業用ロボットを用いた車両の耐久試験装置として、耐久試験を行う車両の左右側面の一方に沿って前後方向に延びるロボット走行装置上に1台の産業用ロボットを設置して前後方向に移動可能とし、耐久試験の各試験項目を行うための各種操作用アタッチメント、該アタッチメントを前記ロボット先端のアタッチメント装着部に択一的に装着させるツールチェンジャ、及び、前記試験項目にしたがって耐久試験を行うために前記ロボット等を制御する制御手段を前記ロボットの周辺の所定位置に備えてなるもの(特許文献1参照。)等がある。
【0004】
【特許文献1】特許第3574832号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成の車両の耐久試験装置は、1つの耐久試験の終了後にアタッチメントを交換することにより別の耐久試験を続けて行うことができる。
しかし、ロボット走行装置上に設置した1台の産業用ロボットを前後方向に移動可能としてその動作範囲を前後方向に拡大することにより、車両の前後のドア、ペダル又はレバー等、耐久試験を行う可動部の位置に対応して耐久試験を順次行う構成であるため、耐久試験に時間が掛かり過ぎるという問題点がある。
その上、産業用ロボットの側方に、前後方向に延びる走行レール及びラック、該ラックに噛合するピニオンが出力軸に装着された走行用モータ並びに産業用ロボットを搭載する走行台等からなるロボット走行装置があることから、このような嵩張るロボット走行装置が車両の出し入れや産業用ロボットのティーチング作業等の邪魔になる場合があるため、多種類の車両の耐久試験エリアへの搬入及び耐久試験エリアからの搬出作業並びに産業用ロボットのティーチング作業の作業性が低下するという問題点もある。
【0006】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、耐久試験に掛かる時間を短縮することができ、多種類の車両の耐久試験エリアへの搬入及び耐久試験エリアからの搬出作業並びに産業用ロボットのティーチング作業の作業性が向上することができ、車両の耐久試験の効率化を図ることができる車両の耐久試験装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る車両の耐久試験装置は、前記課題解決のために、車両の可動部を産業用ロボットにより繰り返し操作して耐久性を評価する、車両の耐久試験装置であって、平面視において、前記車両の外周から外側に離間した位置に、前記車両を囲むように設置されたガイドレールと、該ガイドレールに係合するガイドローラがロボットベースの下面に突設されるとともに、圧縮空気を供給することにより上載荷重を支持して床面から浮上させるエアキャスターがロボットベースの下面に取り付けられた複数の産業用ロボットと、これら産業用ロボットを前記ガイドレールに沿って移動させた任意の位置又は所定の位置でその位置を固定する固定手段とを備えたものである。
【0008】
ここで、前記ガイドローラが係合するガイドレールを、床面がフラットになるように床に埋め込んでなると好ましい。
【0009】
また、前記ガイドローラを前記ロボットベースの下面中央に1個突設し、前記エアキャスターを前記ロボットベースの下面四隅に取り付けてなると好ましい。
【0010】
さらに、前記固定手段が、平面視略矩形の前記ロボットベースの側面に沿って前記ガイドレールを横切る水平方向にスライド移動可能に支持されたスライド体と、該スライド体に螺合し上下方向に延びるねじ軸と、該ねじ軸の下端部に設けられて前記ガイドレールに係合するガイドローラと、前記ねじ軸を回転させるレバーと、前記スライド体の前記スライド移動を不能にするストッパーとからなると好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る車両の耐久試験装置によれば、車両の可動部を産業用ロボットにより繰り返し操作して耐久性を評価する、車両の耐久試験装置であって、平面視において、前記車両の外周から外側に離間した位置に、前記車両を囲むように設置されたガイドレールと、該ガイドレールに係合するガイドローラがロボットベースの下面に突設されるとともに、圧縮空気を供給することにより上載荷重を支持して床面から浮上させるエアキャスターがロボットベースの下面に取り付けられた複数の産業用ロボットと、これら産業用ロボットを前記ガイドレールに沿って移動させた任意の位置又は所定の位置でその位置を固定する固定手段とを備えたので、固定手段による固定を解除した状態でエアキャスターに圧縮空気を供給して複数の産業用ロボットを床面から浮上させることにより、複数の産業用ロボットをガイドレールに沿って、実施する耐久試験項目に合わせた位置に手動により容易に移動させことができるため、所望の位置へ移動させた状態でエアキャスターへの圧縮空気の供給を停止して固定手段により固定することができる。
よって、車両を囲むように設置されたガイドレールに沿って複数の産業用ロボットを耐久試験項目に合わせた位置に迅速に移動させ、これらの産業用ロボットにより1台の車両における複数の可動部の耐久試験を並行して行うことができるため、車両の耐久試験に掛かる時間を短縮することができる。
【0012】
その上、車両の周囲に嵩張るロボット走行装置がない構成であり、耐久試験エリアへの車両の出し入れや産業用ロボットのティーチング作業等の際に邪魔になる構造物がないことから、多種類の車両の耐久試験エリアへの搬入及び耐久試験エリアからの搬出作業並びに産業用ロボットのティーチング作業の作業性が向上するため、さらに車両の耐久試験の効率化を図ることができる。
その上さらに、産業用ロボットをガイドレールから外した状態でエアキャスターに圧縮空気を供給すれば手動により容易に移動させことができることから、複数の耐久試験エリア間で、耐久試験項目に適した動作範囲やツール等を有する産業用ロボットを必要に応じて容易に移動させて使用することができるため、耐久試験用産業用ロボットを有効に活用することができる。
あるいは、複数の耐久試験エリアのガイドレールを繋ぐ連結ガイドレールを設置しておけば、産業用ロボットをガイドレールから外さなくても、エアキャスターに圧縮空気を供給して手動により容易に移動可能な状態とすることにより、複数の耐久試験エリア間で連結ガイドレールに沿って産業用ロボットを移動させて有効に活用することができる。
その上、車両の周囲の複数の産業用ロボット(例えば4台の産業用ロボット)により複数のドア(例えば左右のフロントドア及び左右のリアドア)を同時に操作することにより、車両に実際に生じ得る圧力、振動又は騒音等の大きさを測定することができることから、耐久試験のみに留まらず、これらの車両に実際に生じ得る圧力の大きさ等の測定にも適した構成であるため、耐久試験前又は耐久試験後に前記圧力の大きさ等の測定を行うことにより、車両に実際に生じ得る圧力の大きさ等を把握して設計改良等に活かすことができる。
【0013】
また、前記ガイドローラが係合するガイドレールを、床面がフラットになるように床に埋め込んでなると、車両の周囲がフラットになるため、車両の耐久試験エリアへの搬入及び耐久試験エリアからの搬出作業並びに産業用ロボットのティーチング作業の作業性をさらに向上することができる。
【0014】
さらに、前記ガイドローラを前記ロボットベースの下面中央に1個突設し、前記エアキャスターを前記ロボットベースの下面四隅に取り付けてなると、前記効果に加え、ロボットベースの下面四隅のエアキャスターにより産業用ロボットを安定かつ確実に浮上させながら、ロボットベースの下面中央に突設された1個のガイドローラをガイドレールに係合させた状態で、曲線部分を含むガイドレールの全経路に沿って産業用ロボットを容易に移動させることができる。
【0015】
さらにまた、前記固定手段が、平面視略矩形の前記ロボットベースの側面に沿って前記ガイドレールを横切る水平方向にスライド移動可能に支持されたスライド体と、該スライド体に螺合し上下方向に延びるねじ軸と、該ねじ軸の下端部に設けられて前記ガイドレールに係合するガイドローラと、前記ねじ軸を回転させるレバーと、前記スライド体の前記スライド移動を不能にするストッパーとからなると、前記効果に加え、車両の耐久試験実施のためにガイドローラに沿って所望の位置に移動させた後の産業用ロボットに対し、ストッパーによりスライド体をロボットベースに固定するとともに、レバーによりねじ軸を回転させてガイドローラをガイドレールに対して上下動させてガイドローラに圧接することにより、前記産業用ロボットを、床面に固定することなく、ガイドレールに対して容易かつ確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書においては、ガイドレールに沿う方向を前後方向とし、前後方向に直交する水平方向を左右方向とする。
【0017】
図1〜図8は、本発明の実施の形態に係る車両の耐久試験装置の構成を示す概略図であり、図1は2つの耐久試験エリアA1,A2全体の平面図、図2及び図3はそれぞれ各耐久試験エリアA1,A2の拡大図、図4は図2の矢視X−X縦断面図、図5は固定手段21の構成を示す要部拡大部分断面図、図6は同じく平面図、図7はエアキャスター13の作動原理図、図8はガイドレールを床に埋め込む構成例を示す要部拡大部分断面図である。
なお、図5(a)及び図8はガイドレール11に沿う水平方向から見た図、図5(b)はガイドレール11に直交する水平方向から見た図、図6(a)はロボットベース3の固定手段21,21がある側面がガイドレール11に直交する状態を示す図、図6(b)は図6(a)の状態からロボットベース3を鉛直軸まわりに揺動させた状態を示す図である。
【0018】
図1〜図4に示すように、耐久試験エリア(耐久試験室)A1,A2は、それぞれ安全柵(壁)Bで囲まれており、その中央部には耐久試験を行う車両Cが車両固定治具E,…により固定された状態で床面F上に設置される。
また、平面視において、車両Cの外周から外側に離間した位置に、車両Cを囲むように、例えば矩形のコーナ部分を円弧状としてなる直線部分と曲線部分とを組み合わせた形状のガイドレール11が設置され、ガイドレール11に沿って後述するように手動で容易に移動可能な複数の産業用ロボット1,2,…(本実施の形態では4台の産業用ロボット)のロボットベース3,…が、それぞれ固定手段21,21により適宜位置に固定される。
【0019】
なお、ガイドレール11の形状は、平面視において楕円状等の曲線レールのみによる構成又は例えば図3の二点鎖線に示すような直線レールのみによる構成であってもよい。
また、ガイドレール11は、所定形状のブロックレールを接続して構成しているため、車両Cの大きさや形状に対応して容易に構成を組み替えることができる。例えば車両Cが軽自動車であって全長が短い場合には、図3の二点鎖線に示すように、ガイドレール11の設置位置を容易に内側へ変更することができる。
【0020】
複数の産業用ロボット1,2,…には、各々ロボット動力盤7及びロボット制御盤8が接続され、ティーチングペンダント9によりティーチング作業を行うことができるとともに、中央制御盤10により、1台の車両Cに対して、その周囲に複数配設された産業用ロボット1,2,…を一括して制御することができるため、1台の車両Cにおける複数の可動部D,…の耐久試験を並行して行うことができる。
なお、図1〜図3に示す複数の可動部D,…は左右のフロントドアのみを例示しているが、可動部Dには、耐久試験が実施される、左右のリアドア、左右のスライドドア、ハッチバックドア、ボンネット若しくはトランク等、アクセルペダル、ブレーキペダル若しくはクラッチペダル等、又は、シフトレバー若しくはパーキングブレーキレバー等が含まれる。
【0021】
また、産業用ロボット1,2は、位置及び姿勢を変更する自由度が高く人の操作に近い操作を行うことができるように、例えば6自由度垂直多関節形であり、産業用ロボット1は、そのアームが車両Cの外側に位置し、例えば車両Cの外部回りの耐久試験を行うものであり、産業用ロボット2は、車両Cのドア開口から車両内部にロボットアームを入れることができるため、例えば車両Cの内部回り及び外部回りの両方の耐久試験を行うことができるものである。
【0022】
図4に示すように、産業用ロボット1,…の先端フランジ(ツールフランジ)4には、例えば2分割(3分割以上であってもよい。)回転式のチャック5A,5Bが取り付けられ、チャック5A,5Bには試験項目に適したツール6A,6Bが取り付けられる。
また、産業用ロボット2にも、図1及び図3に示すように、その先端フランジに試験項目に適したツール6Cが取り付けられる。
したがって、複数の可動部D,…に取り付けた図示しないアタッチメントに試験項目に合わせて選択したツールを係合させた状態で産業用ロボット1,2,…を駆動することにより、複数の可動部D,…を同時に操作して耐久試験を並行して行うことができる。
【0023】
産業用ロボット1,2,…の先端フランジに、上記のような回転式のチャックを装着して複数のツールを取り付けておくことにより、ツールを取り替える時間を短縮することができるため、耐久試験に掛かる時間を短縮することができる。
なお、回転式のチャックに装着したツール以外のツールにより作業を行うためにツール交換が必要な場合は、人手により交換してもよいし、耐久試験エリア内の適宜位置に設置したATC(Automatic Tool Changer)により交換してもよい。
【0024】
次に、産業用ロボット1,2,…のガイドレール11への係合及び該係合後の移動について説明する。
図5(a)に示すように、ガイドレール11には、上面の開口11Aの下側にコ字状の開口が対向する左右のレール部11B,11Bが形成されているとともに、図1〜図3に示す分離部11Cが取り外し可能となっている。
また、図5(b)及び図6に示すように、産業用ロボット1,2,…のロボットベース3の下面中央には、1個の軸12A及びその下側のガイドローラ12Bが突設され、図5に示すように、ロボットベース3の前後の固定手段21,21には、ねじ軸24A及びその下側のガイドローラ24Bが設けられる。
したがって、ガイドレール11の分離部11Cを取り外した状態で、ロボットベース3の前後に位置するガイドローラ24B,12B,24Bをガイドレール11左右のレール部11B,11Bに係合させることができる。
【0025】
ここで、ガイドレール11の分離部11Cを取り外した状態で、車両Cの耐久試験を行うために必要な産業用ロボット1,2,…の全てをガイドレール11に係合させた後に、分離部11Cを図2に示すような取り外し前の状態に戻して床面Fに固定すれば、産業用ロボット1,2,…を、平面視において車両Cの周囲を囲む無端状のガイドレール11に沿って適宜位置へ移動させることができる。
なお、ガイドレール11は、平面視において車両Cの周囲を囲む無端状のものに限定されるものではなく、例えば分離部11Cが最初から無いもののように、その一部を最初から切り欠いたままの構成であってもよい。
【0026】
図5及び図6に示すように、圧縮空気を供給することにより上載荷重を支持して床面Fから浮上させるエアキャスター13,…がロボットベース3の下面四隅に取り付けられているため、エアキャスター13,…に圧縮空気を供給して産業用ロボット1,2,…を浮上させることにより、手動により容易に移動させことができる。
このようなエアキャスター13の作動原理について図7を用いて説明する。
図7(a)に示すように、圧縮空気17を供給しない状態のエアキャスター13は、基体14の下面に取り付けた接地パッド15が床面Fに接地しており、接地パッド15及び基体14により上載荷重Wを支持しているため、円環状のトーラスバッグ16が上載荷重Wを受けて損傷しないように保護される。
【0027】
図7(a)に示す状態から図7(b)に示すように、配管18から圧縮空気17を供給すると、供給室19からトーラスバッグ16に圧縮空気17が供給されてトーラスバッグ16が膨張するとともに、床面Fとの間に形成された密閉空間20にも供給室19から圧縮空気17が充填されるため、密閉空間20の内圧Pが上昇する。
図7(b)に示す状態からさらに圧縮空気17を供給し、図7(c)に示すように、上記内圧Pが上昇して上載荷重Wを支持するまでに上昇すると、トーラスバッグ16と床面Fとの間から空気が均一に漏れ出して、上載荷重W及びエアキャスター13が薄い空気層(約0.1mm)の上に載った状態となり、上載荷重Wを支持したエアキャスター13が床面F上に浮上した状態が保持されて摩擦係数が大幅に小さくなるため(例えば、0.001〜0.007程度)、重量物である産業用ロボット1,2,…を小さな力でガイドレール11に沿って移動させることができる。
【0028】
また、ロボットベース3の下面中央に突設された1個のガイドローラ12Bがガイドレール11に係合しているため、後述する固定手段21,21による固定を解除した状態では、ロボットベース3の下面四隅のエアキャスター13,…により産業用ロボット1,2,…を安定かつ確実に浮上させながら、1個のガイドローラ12Bをガイドレール11に沿わせて、曲線部分を含むガイドレール11の全経路に沿って産業用ロボット1,2,…を容易に移動させることができる。
なお、ガイドレール11に係合していない産業用ロボット1,2,…を前記のとおりガイドレール11に係合させる際にも、エアキャスター13,…に圧縮空気17を供給して産業用ロボット1,2,…を浮上させた状態とすれば、産業用ロボット1,2,…を手動により容易に移動させることができるため、産業用ロボット1,2,…をガイドレール11に係合させる作業を容易に行うことができる。
【0029】
次に、産業用ロボット1,2,…をガイドレール11に沿わせて移動させた後の固定について説明する。
図5及び図6に示すように、産業用ロボット1,2,…の固定手段21,21は、平面視略矩形のロボットベース3の側面に沿って取り付けられた上下のリニアガイド23,23により、ガイドレール11を横切る水平方向にスライド移動可能に支持されたスライド体22と、スライド体22に螺合して上下方向に延びるねじ軸24Aと、ねじ軸24Aの下端部に設けられてガイドレール11に係合するガイドローラ24Bと、ねじ軸24Aを回転させるレバー25と、スライド体22の前記スライド移動を不能にするストッパー26,26とからなる。
【0030】
固定手段21のスライド体22に対し、スライド体22のスライド移動方向の前後に取り付けられたストッパー26,26は、ロボットベース3の側面に直交するボルト27A(図5(b)参照。)をレバー28により回転させて、上下のリニアガイド23,23間に位置する、ロボットベース3の側面に沿って水平方向に形成されたねじ穴27B,…(図5参照。)にボルト27Aを螺合することにより、ロボットベース3の側面に沿う水平方向のスライド体22の移動を阻止するものであり、レバー28によりボルト27Aを回転させて、ボルト27Aとねじ穴27Bとの螺合を解除することにより、スライド体22の前記スライド移動を可能にすることも容易である。
【0031】
このような構成の固定手段21,21によれば、ストッパー26,26によりスライド体22をロボットベース3に固定した状態で、レバー25によりねじ軸24Aを回転させてガイドローラ24Bをガイドレール11に対して上下動させて圧接することにより、産業用ロボット1,2,…を、ガイドレール11に沿って移動させた任意の位置で、床面Fに固定することなく、ガイドレール11に対して容易かつ確実に固定することができる。
なお、産業用ロボット1,2,…の固定手段は、産業用ロボット1,2,…をガイドレール11に沿って移動させた所定の位置で、ボルト等によりガイドレール又は床面に固定する構成等であってもよい。
【0032】
また、産業用ロボット1,2,…をガイドレール11に沿って移動させる際には、固定手段21のレバー25を回転させてガイドローラ24Bのガイドレール11への圧接を解除するとともに、ストッパー26,26のレバー28を回転させてボルト27Aとねじ穴27Bとの螺合を解除して、スライド体22をロボットベース3の側面に沿ってスライド移動可能な状態とすればよい。
固定手段21,21のスライド体22をロボットベース3の側面に沿ってスライド移動可能とした状態では、例えば図6(a)の状態から図6(b)の状態まで、ロボットベース3の下面中央に突設された1個のガイドローラ12Bまわりにロボットベース3を容易に回転させることができるため、車両Cに対する産業用ロボット1,2,…の設置自由度が高くなるため、耐久試験前のセットアップの作業効率を向上することができる。
【0033】
以上のような車両の耐久試験装置の構成によれば、固定手段21,21による固定を解除した状態でエアキャスター13,…に圧縮空気を供給して複数の産業用ロボット1,2,…を床面Fから浮上させることにより、複数の産業用ロボット1,2,…をガイドレール11に沿って、実施する耐久試験項目に合わせた位置に手動により容易に移動させことができるため、所望の位置へ移動させた状態でエアキャスター13,…への圧縮空気の供給を停止して固定手段21,21により固定することができる。
よって、車両Cを囲むように設置されたガイドレール11に沿って複数の産業用ロボット1,2,…を耐久試験項目に合わせた位置に迅速に移動させ、これらの産業用ロボット1,2,…により1台の車両Cにおける複数の可動部D,…の耐久試験を並行して行うことができるため、車両Cの耐久試験に掛かる時間を短縮することができる。
【0034】
その上、車両Cの周囲に嵩張るロボット走行装置がない構成であり、耐久試験エリアA1,A2への車両Cの出し入れや産業用ロボット1,2,…のティーチング作業等の際に邪魔になる構造物がないことから、多種類の車両の耐久試験エリアA1,A2への搬入及び耐久試験エリアA1,A2からの搬出作業並びに産業用ロボット1,2,…のティーチング作業の作業性が向上するため、さらに車両Cの耐久試験の効率化を図ることができる。
【0035】
その上さらに、産業用ロボット1,2,…をガイドレール11から外した状態でも、エアキャスター13,…に圧縮空気17を供給すれば手動により容易に移動させことができることから、図1の一点鎖線に示すように、複数の耐久試験エリア(例えばA1,A2)間で、耐久試験項目に適した動作範囲やツール等を有する産業用ロボット1,2,…を必要に応じて容易に移動させて必要な箇所で使用することができるため、耐久試験用産業用ロボット1,2,…を有効に活用することができる。
あるいは、複数の耐久試験エリア(例えばA1,A2)のガイドレール11,…を繋ぐ連結ガイドレールを設置しておけば、産業用ロボット1,2,…をガイドレール11から外さなくても、エアキャスター13,…に圧縮空気17を供給して手動により容易に移動可能な状態とすることにより、複数の耐久試験エリア間で前記連結ガイドレールに沿って産業用ロボット1,2,…を移動させて有効に活用することができる。
【0036】
なお、このような連結ガイドレールを設置した場合又は複数の耐久試験エリア間での産業用ロボットの移動を行わない場合には、図8に示すように、ガイドレール11を床に埋め込んで床面Fから上側に突出する部分がないようにして床面Fをガイドレール設置箇所も含めフラットにすることができる。このように構成すると、エアキャスター13の下面(床面F)よりもガイドローラ12B,24Bが下側に位置することになるが、産業用ロボット1,2,…をガイドレール11に沿わせることにより、ガイドレール11を床に埋め込まない場合と同様に移動させることができる。このようにガイドレール11を床に埋め込むことにより、車両Cの周囲がフラットになるため、車両の耐久試験エリアへの搬入及び耐久試験エリアからの搬出作業並びに産業用ロボットのティーチング作業の作業性がさらに向上する。
【0037】
その上、車両Cの周囲の複数の産業用ロボット1,2,…(例えば4台の産業用ロボット)により複数のドア(例えば左右のフロントドア及び左右のリアドア)を同時に操作することにより、車両Cに実際に生じ得る圧力、振動又は騒音等の大きさを測定することができることから、耐久試験のみに留まらず、これらの車両Cに実際に生じ得る圧力の大きさ等の測定にも適した構成であるため、耐久試験前又は耐久試験後に前記圧力の大きさ等の測定を行うことにより、車両Cに実際に生じ得る圧力の大きさ等を把握して設計改良等に活かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の耐久試験装置における2つの耐久試験エリアA1,A2全体の平面図である。
【図2】耐久試験エリアA1の拡大図である。
【図3】耐久試験エリアA2の拡大図である。
【図4】図2の矢視X−X縦断面図である。
【図5】固定手段の構成を示す要部拡大部分断面図であり、(a)はガイドレールに沿う水平方向から見た図、(b)はガイドレールに直交する水平方向から見た図である。
【図6】同じく平面図であり、(a)はロボットベースの固定手段がある側面がガイドレールに直交する状態を示す図、(b)は(a)の状態からロボットベースを鉛直軸まわりに揺動させた状態を示す図である。
【図7】エアキャスターの作動原理図である。
【図8】ガイドレールを床に埋め込む構成を示すガイドレールに沿う水平方向から見た要部拡大部分断面図である。
【符号の説明】
【0039】
A1,A2 耐久試験エリア(耐久試験室)
B 安全柵(壁)
C 車両
D 可動部
E 車両固定治具
F 床面
1,2 産業用ロボット
3 ロボットベース
4 先端フランジ(ツールフランジ)
5A,5B チャック
6A,6B,6C ツール
7 ロボット動力盤
8 ロボット制御盤
9 ティーチングペンダント
10 中央制御盤
11 ガイドレール
11A 開口
11B レール部
11C 分離部
12A 軸
12B ガイドローラ
13 エアキャスター
14 基体
15 接地パッド
16 トーラスバッグ
17 圧縮空気
18 配管
19 供給室
20 圧力室
21 固定手段
22 スライド体
23 リニアガイド
24A ねじ軸
24B ガイドローラ
25 レバー
26 ストッパー
27A ボルト
27B ねじ穴
28 レバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の可動部を産業用ロボットにより繰り返し操作して耐久性を評価する、車両の耐久試験装置であって、
平面視において、前記車両の外周から外側に離間した位置に、前記車両を囲むように設置されたガイドレールと、
該ガイドレールに係合するガイドローラがロボットベースの下面に突設されるとともに、圧縮空気を供給することにより上載荷重を支持して床面から浮上させるエアキャスターがロボットベースの下面に取り付けられた複数の産業用ロボットと、
これら産業用ロボットを前記ガイドレールに沿って移動させた任意の位置又は所定の位置でその位置を固定する固定手段と、
を備えたことを特徴とする車両の耐久試験装置。
【請求項2】
前記ガイドローラが係合するガイドレールを、床面がフラットになるように床に埋め込んでなる請求項1記載の車両の耐久試験装置。
【請求項3】
前記ガイドローラを前記ロボットベースの下面中央に1個突設し、前記エアキャスターを前記ロボットベースの下面四隅に取り付けてなる請求項1又は2記載の車両の耐久試験装置。
【請求項4】
前記固定手段が、平面視略矩形の前記ロボットベースの側面に沿って前記ガイドレールを横切る水平方向にスライド移動可能に支持されたスライド体と、該スライド体に螺合し上下方向に延びるねじ軸と、該ねじ軸の下端部に設けられて前記ガイドレールに係合するガイドローラと、前記ねじ軸を回転させるレバーと、前記スライド体の前記スライド移動を不能にするストッパーとからなる請求項1又は2記載の車両の耐久試験装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−192484(P2009−192484A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−36090(P2008−36090)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(390007308)本田工業株式会社 (5)