説明

車両の蒸発燃料処理装置

【課題】簡易な構造で蒸発燃料が大気に流出(燃料噴出)することを抑制する。
【解決手段】燃料を貯留する燃料タンク2と、燃料タンク2の給油口3に取付けられる開閉自在な給油キャップ4と、蒸発燃料貯留器6と、燃料タンク2と蒸発燃料貯留器6とを連通させるチャージ通路5と、蒸発燃料貯留器6と内燃機関の吸気系とを連通させるパージ通路8と、給油キャップ4を開閉自在に覆う、車体側に支持されたリッド10と、を備える車両の蒸発燃料処理装置において、チャージ通路5と燃料タンク2との間に介在し、燃料タンク2の内圧が所定圧になったときに開弁して、燃料タンク2と蒸発燃料貯留器6とを連通させる正圧調整弁16を設け、リッド10が開かれた際に、正圧調整弁16が開放するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料タンク内部で発生した蒸発燃料を燃料タンク外部に導く車両の蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、密閉式燃料タンクを備えた車両の蒸発燃料処理装置において、タンク内圧が高いときの給油時に給油口から蒸発燃料又は燃料がタンク外に流出するのを防ぐために、電子制御でタンク内圧を制御するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−156496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に係るシステムは、比較的大型の四輪車両等では好適に用いることができるが、スペースが少なく廉価が求められ、また給油口の開閉をキー操作で直接行なう自動二輪車等では適用し難い点がある。
【0005】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で蒸発燃料が大気に流出することを抑制し、小型車両に好適に用い得る車両の蒸発燃料処理装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載の発明は、燃料を貯留する燃料タンク(2,31)と、前記燃料タンク(2,31)の給油口(3,32)に取付けられる開閉自在な給油キャップ(4,33)と、吸着剤によって蒸発燃料を吸着して貯留する蒸発燃料貯留器(6)と、前記燃料タンク(2,31)と前記蒸発燃料貯留器(6)とを連通させるチャージ通路(5)と、前記蒸発燃料貯留器(6)と内燃機関の吸気系(7)とを連通させるパージ通路(8)と、前記給油キャップ(4)を開閉自在に覆う、車体側に支持されたリッド(10,28)と、を備える車両の蒸発燃料処理装置において、前記チャージ通路(5)と前記燃料タンク(2,31)との間に介在し、前記燃料タンク(2,31)の内圧が所定圧になったときに開弁して、前記燃料タンク(2,31)と前記蒸発燃料貯留器(6)とを連通させる開閉弁(16,47)を備え、前記開閉弁(16,47)は、給油時における前記リッド(10,28)の開操作時にも該開操作に連動して開弁し、前記給油キャップ(4,33)の開放操作前の前記リッド(10,28)の開操作時に、前記燃料タンク(2,31)と前記蒸発燃料貯留器(6)とが連通し、前記燃料タンク(2,31)内の蒸発燃料が、前記蒸発燃料貯留器(6)に開放されるようにしたことを特徴とする車両の蒸発燃料処理装置を提供する。
なお、本発明でいうリッドは、蓋として機能するものを意味し、車両に配置されるシートも含むものである。
【0007】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の構成において、前記リッド(10)は、ヒンジアーム部(11)を有し、該ヒンジアーム部(11)によって、前記燃料タンク(2)を覆う車体カバー(9)に保持されたヒンジ軸(13)に回転可能に支持され、前記開閉弁(16)は、前記車体カバー(9)の内側に位置し、前記ヒンジアーム部(11)の動作により、前記開閉弁(16)が開弁することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の構成において、前記開閉弁(16)は、弁体(17)と、該弁体(17)を閉方向に付勢するスプリング(19)と、該弁体(17)に取付けられた第1の永久磁石(20)と、を有し、前記燃料タンク(2)の外壁において前記給油キャップ(4)に隣接して設けられた弁収容部(14)内部に設けられ、前記弁収容部(14)は、前記開閉弁(16)を介して前記燃料タンク(2)内部に連通するとともに、前記チャージ通路(5)に接続され、前記ヒンジアーム部(11)は、前記リッド(10)の開操作時に前記第1の永久磁石(20)に近づくように配置された第2の永久磁石(21)を有することを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の構成において、前記開閉弁(16)は、前記燃料タンク(2)内の圧力が所定値以上になったときに開弁する正圧調整弁と、前記燃料タンク(2)内の圧力が所定値以下になったときに開弁する負圧調整弁と、で構成され、前記弁収容部(14)は、気液分離室として所定の容積を有し、前記第1の永久磁石(20)は、前記正圧調整弁に設けられ、前記弁収容部(14)における壁部であって、前記正圧調整弁に対面し、かつ前記リッド(10)が開いた際に前記ヒンジアーム部(11)の前記第2の永久磁石(21)に対面する壁部に、前記弁収容部(14)内部側にへこむ弧状の凹部(14B)が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明では、請求項4に記載の構成において、前記弁収容部(14)は、前記燃料タンク(2)の上壁部に配置され、車体搭載時における該弁収容部(14)の車幅方向中央であって、前記凹部(14B)ではない上面に、前記チャージ通路(5)が接続されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明では、請求項2に記載の構成において、前記開閉弁(16)は、弁体(17)と、該弁体(17)を閉方向に付勢するスプリング(19)と、該弁体(17)に取付けられた第1の永久磁石(20)と、を有し、前記燃料タンク(2)の外壁において前記給油キャップ(4)に隣接して設けられた弁収容部(14)内部に設けられ、前記弁収容部(14)の外側には、電磁石(26)が設けられ、前記ヒンジアーム部(11)には、前記リッド(10)が開操作された際に前記車体カバー(9)の内壁から離間するスイッチ当接部(23)が設けられるとともに、前記内壁には、前記リッド(10)が閉じた状態において前記スイッチ当接部(23)が当接するスイッチ(24)が設けられ、前記リッド(10)の開操作により、前記スイッチ(24)は、リッド開検出信号を制御装置(25)に送信し、該制御装置(25)のリッド開判定に応じて、前記電磁石(26)に電流が入力され、前記開閉弁(16)が磁力により開放することを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明では、請求項2に記載の構成において、前記開閉弁(16)は、弁体(17)と、該弁体(17)を閉方向に付勢するスプリング(19)と、該弁体(17)に取付けられた第1の永久磁石(20)と、を有し、前記燃料タンク(2)の外壁に設けられた弁収容部(14)内部に設けられ、前記弁収容部(14)の外側には、電磁石(26)が設けられ、前記燃料タンク(2)又は前記弁収容部(14)には、押圧式のスイッチ(24)が設けられ、前記ヒンジアーム部(11)には、前記リッド(10)が開操作された際に前記スイッチ(24)を押圧するスイッチ当接部(23)が設けられ、前記リッド(10)の開操作により、前記スイッチ当接部(23)が前記スイッチ(24)を押圧することで、前記電磁石(26)に電流が入力され、前記開閉弁(16)が磁力により開弁することを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明では、請求項1に記載の構成において、前記リッド(28)を支持する車体側には、該リッド(28)を閉じた状態で保持するラッチ(60)が設けられ、該ラッチ(60)の解除動作に連動して、前記開閉弁(47)が開放することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の構成において、前記リッド(28)は自動二輪車のシートであり、前記燃料タンク(31)はシートによって覆われることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、給油キャップを開ける際のリッドを開く動作に連動して開閉弁を開放させることで、給油キャップを開ける前に、燃料タンクの内圧を蒸発燃料貯留器側へ抜くことができるため、給油キャップを開けた際に燃料タンクの内圧に起因して蒸発燃料が大気に流出するのを抑制することができる。また、リッドを開く動作を利用した簡易な構造で蒸発燃料が大気に流出するのを防ぐことができるため、利便性に優れ、小型車両に好適に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る蒸発燃料処理装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る蒸発燃料処理装置の要部断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る蒸発燃料処理装置の要部断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る蒸発燃料処理装置の概略構成を示す図である。
【図5】第3の実施形態に係る蒸発燃料処理装置の要部断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る蒸発燃料処理装置の操作方法を説明する蒸発燃料処理装置の要部断面図である。
【図7】第3の実施形態の蒸発燃料処理装置の変形例に係る要部断面図である。
【図8】第2の実施形態の蒸発燃料処理装置の変形例に係る要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明で用いる図面においてUPは上方を示し、FRは前方を示すものとし、説明の便宜上、下記実施形態ではこれらの方向を基準に説明を行うものとする。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は自動二輪車用の燃料タンクに適用された第1の実施形態に係る蒸発燃料処理装置1の概略構成を示している。この蒸発燃料処理装置1は、燃料タンク2と、燃料タンク2の給油口3に開閉可能に取り付けられた給油キャップ4と、燃料タンク2内部に連通するチューブ状の樹脂材料等からなるチャージ配管5と、燃料タンク2外部でチャージ配管5に接続する蒸発燃料貯留器6と、蒸発燃料貯留器6と吸気系を構成する一部材であるコネクティングチューブ7とを連通させるパージ配管8と、を備えている。
【0019】
蒸発燃料貯留器6には大気を吸入するドレン管6Aが設けられている。図中9は、燃料タンク2を覆う車体カバーを示している。車体カバー9において給油キャップ4の上方の部位には、開閉自在なリッド10が設けられ、リッド10を開けると、給油キャップ4が車体カバー9から外部に露出するようになっている。給油キャップ4は給油口3に螺合によって取付けられている。
【0020】
チャージ配管5は、後述の弁収容部14を介して燃料タンク2内部に連通し、蒸発燃料貯留器6に燃料タンク2内部で生じた蒸発燃料を送る。蒸発燃料貯留器6は、内部に吸着剤を有し、チャージ配管5から送給された蒸発燃料を吸着させて貯留するものである。
【0021】
図2に示すように、リッド10は、その内側面にヒンジアーム部11を備え、このヒンジアーム部11によって車体カバー9の内壁にブラケット12を介して支持されたヒンジ軸13に回転可能に支持されている。なお、ヒンジアーム部11はリッド10と一体のものであっても、別体で取付けられるものであってもよい。
【0022】
燃料タンク2には、ヒンジ軸13の下方において上記弁収容部14が設けられ、この弁収容部14は、燃料タンク2の上壁部を貫通し、給油キャップ4に隣接した位置に設けられている。なお、弁収容部14は燃料タンク2の上壁部に載置されるように設けられてもよい。弁収容部14は気液分離室として内部に一定空間(所定の容積)を有し、この空間はチャージ配管5に連通する。また、弁収容部14の下部には、燃料タンク2内部に連通する収納孔15が形成され、この収納孔15に、開閉弁である正圧調整弁16が保持されている。なお、図示省略するが、弁収容部14内には、上記収納孔15と同様の収納孔が別途形成され、この孔には負圧調整弁が設けられている。
【0023】
正圧調整弁16は、収納孔15の上縁に当接して収納孔15を閉塞する傘部17と、傘部17から下方に延出して、収納孔15に挿入される軸部18と、を備えており、傘部17と弁収容部14の上部内壁面との間にはスプリング19が設けられている。これにより、正圧調整弁16は、閉弁方向に付勢され、燃料タンク2の内圧が所定圧になったとき(所定圧以上になったとき)に適宜開放する。なお、傘部17が本発明でいう弁体に対応する。また、上記負圧調整弁は、燃料タンク2の内圧が所定圧以下になったときに適宜開放する。
【0024】
本実施形態では、正圧調整弁16の傘部17の上部に第1の永久磁石20が設けられるとともに、ヒンジアーム部11の先端側に、第2の永久磁石21が設けられ、ここで、ヒンジアーム部11の先端側は、リッド10が開かれると、下方に回転変位し、正圧調整弁16側に近づく。このため、第2の永久磁石21は、リッド10が開かれる際に第1の永久磁石20に近づくように変位する。
【0025】
第1の永久磁石20と第2の永久磁石21は、リッド10が開かれ、第2の永久磁石21が第1の永久磁石20に近づくように変位された際、互いに異なる磁極を上下方向に向き合わせるように、それぞれヒンジアーム部11と正圧調整弁16に設けられる。この例では、第1の永久磁石20が上方にN極20Aを配置し、第2の永久磁石21はヒンジアーム部11の先端方向に向けてS極21Bを向けるように配置されている。
【0026】
ここで、弁収容部14の上壁部14Aには、内部側にへこむ弧状の凹部14Bが設けられ、凹部14Bの底部下面の下方、すなわち、この底部下面に対面する位置に第1の永久磁石20が位置している。そして、ヒンジアーム部11の第2の永久磁石21は、リッド10の開操作時に凹部14Bの外側から凹部14Bの斜面に沿って下方に変位した後、凹部14Bの底部上面に対面するように変位するようになっている。
【0027】
また、ここで、本実施形態では、燃料タンク2は車体搭載時に弁収容部14の左右方向が車幅方向に沿うように構成されるが、弁収容部14の車幅方向中央であって、凹部14Bではない上面に、上記チャージ通路5が接続されるようになっている。
【0028】
このような蒸発燃料処理装置1では、リッド10が開かれた際に、ヒンジアーム部11に設けられた第2の永久磁石21が、第1の永久磁石20に近づき、第2の永久磁石21及び第1の永久磁石20が互いに異なる磁極(S極21B、N極20A)を向け合うことで、第1の永久磁石20を第2の永久磁石21に引き寄せることができる。これにより、正圧調整弁16を開放させ、燃料タンク2の内圧を蒸発燃料貯留器6側に送出することが可能となる。
【0029】
以上に記載したように、上記蒸発燃料処理装置1は、燃料を貯留する燃料タンク2と、燃料タンク2の給油口3に取付けられる開閉自在な給油キャップ4と、蒸発燃料貯留器6と、燃料タンク2と蒸発燃料貯留器6とを連通させるチャージ配管5と、蒸発燃料貯留器6と吸気系とを連通させるパージ配管8と、給油キャップ4を開閉自在に覆う、車体側に支持されたリッド10と、を備え、さらに、チャージ配管5と燃料タンク2との間に介在し、燃料タンク2の内圧が所定圧になったときに開弁して、燃料タンク2と蒸発燃料貯留器6とを連通させる正圧調整弁16を備えている。そして、リッド10が開かれた際に、正圧調整弁16を開放させる。
【0030】
より具体的には、上記蒸発燃料処理装置1では、正圧調整弁16が、燃料タンク2の外壁を貫通し、給油キャップ4に隣接して設けられた弁収容部14内部に設けられるとともに、第1の永久磁石20を有し、弁収容部14が、正圧調整弁16を介して燃料タンク2内部に連通するとともに、チャージ配管5に接続されている。また、リッド10が、ヒンジアーム部11を有し、該ヒンジアーム部11によって、燃料タンク2を覆う車体カバー9に保持されたヒンジ軸13に回転可能に支持され、ヒンジアーム部11が、リッド10が開かれる際に第1の永久磁石20に近づくように配置された第2の永久磁石21を有する。このような構成によって、リッド10が開かれた際に、正圧調整弁16が開放する。
【0031】
したがって、給油キャップ4を開ける際のリッド10を開く動作に連動して正圧調整弁16を開放させることで、給油キャップ4を開ける前に、燃料タンク2の内圧を蒸発燃料貯留器6側へ抜くことができるため、給油キャップ4を開けた際に燃料タンク2の内圧に起因して蒸発燃料が大気に流出するのを抑制することができる。また、リッド10を開く動作を利用した簡易な構造で蒸発燃料が大気に流出するのを防ぐことができるため、利便性に優れ、小型車両に好適に適用できる。
【0032】
また、上記実施形態では、記第1の永久磁石20が、正圧調整弁16に設けられ、弁収容部14における上壁部であって、正圧調整弁16に対面し、かつリッド10が開いた際にヒンジアーム部11の第2の永久磁石21に対面する壁部に、弁収容部14内部側にへこむ弧状の凹部14Bが設けられているが、このような構成では、燃料タンク2の外側に開く正圧調整弁16に第1磁石を設けることで、この正圧調整弁16を開弁させるための構造をシンプルかつ小型化することができ、また、弁収容部14内の気液分離室の容積を確保しつつ、第1の永久磁石20と第2の永久磁石21をより近接させられるので、これら磁石も小型化できる。
【0033】
さらに、弁収容部14は、燃料タンク2の上壁部に配置され、車体搭載時における該弁収容部14の車幅方向中央であって、凹部14Bではない上面に、チャージ通路5が接続されているが、このような構成では、典型的には、自動二輪車において車体がバンクしても弁収容部14(気液分離部)にたまった燃料がチャージ通路5に入りにくい構造となり、燃料の逆流が抑えられる。
【0034】
なお、上記実施形態では、正圧調整弁16として燃料タンク2の内圧が高くなった場合に開放する弁をリッド10の開操作時に開放させる構成を説明したが、負圧調整弁を開放させるようにしてもよい。なお、正圧調整弁と負圧調整弁の双方を採用する構成では、燃料タンクを所定圧力となるまで密封状態とすることができるため、蒸発燃料貯留器へ送られる蒸発燃料量を減らすことができる。
【0035】
また、スプリングを利用する負圧調整弁では、燃料タンク内側から外側に弁体が付勢される構成となるが、負圧調整弁を開放させる場合は、ヒンジアーム部11に取付けられた第1の永久磁石が、負圧調整弁側の第2の永久磁石に近づいた際、互いに反発し合うように磁石を設ける必要がある。
【0036】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1の実施形態と同様の構成要素については同一符号を付して、説明を省略するものとする。
【0037】
本実施形態の蒸発燃料処理装置1’では、ヒンジアーム部11の先端側に、リッド10が開かれる際に車体カバー9の内壁から離間するスイッチ当接部23が形成され、車体カバー9の内壁に、リッド10が閉じた状態において上記スイッチ当接部23が当接する押しボタン式(押圧式)のスイッチ24が設けられる。リッド10が開かれると、スイッチ当接部23がスイッチ24から離間する。
【0038】
スイッチ24は制御装置であるECU(Engine Control Unit)25に電気的に接続されており、スイッチ当接部23がスイッチ24から離間するとECU25は、スイッチ当接部23の離間を検出する。より具体的には、リッド10の開操作により、スイッチ24は、リッド開検出信号をECU25に送信し、ECU25は、スイッチ24からのリッド開検出信号に基づき、リッド10の開いたか否かの判定(リッド開判定)をする。
【0039】
一方で、弁収容部14の外側上部には、電磁石26が設けられ、電磁石26はECU25に電気的にハーネス26Aを介して接続されている。
【0040】
そして、この実施形態の構成では、ECU25が、スイッチ当接部23が離間したことを検出すると、ECU25の制御によって電磁石26に電流が入力される。
これにより、リッド10が開かれた際に、正圧調整弁16の第1の永久磁石20を引き寄せる磁力を電磁石26に発生させ、正圧調整弁16を開放させることができる。
【0041】
なお、この実施形態においても、正圧調整弁16を開放させたが、負圧調整弁を開放させてもよい。
【0042】
<第3の実施形態>
次に本発明の第3の実施形態を説明する。
図4は、本発明の第3の実施形態に係る蒸発燃料処理装置30の概略構成を示しており、この蒸発燃料処理装置30は、燃料タンク31と、燃料タンク31の給油口32に開閉可能に取り付けられた給油キャップ33と、燃料タンク31を貫通して給油キャップ33に接続するチャージ配管5と、燃料タンク31外部でチャージ配管5に接続する蒸発燃料貯留器6と、蒸発燃料貯留器6と吸気系を構成する一部材であるコネクティングチューブ7とを連通させるパージ配管8と、を備えている。蒸発燃料貯留器6には大気を吸入するドレン管6Aが設けられている。
【0043】
燃料タンク31は、車体カバー27によって覆われ、車体カバー27において給油キャップ33の上方の部位には、開閉自在なリッド28が設けられ、リッド28を開けると、給油キャップ33が車体カバー27から外部に露出するようになっている。リッド28は、その内側面にアーム部29を備え、このアーム部29によって車体カバー27の内壁に回転可能に支持されている。
【0044】
図5を参照し、燃料タンク31には、上部外壁から屈曲して凹んだ断面視で凹状の座部34が形成され、給油口32は平面視(上面視)で円形を呈し、座部34の略中央領域に形成されている。チャージ配管5は、給油キャップ33を介して燃料タンク31内部に連通し、蒸発燃料貯留器6に燃料タンク31内部で生じた蒸発燃料を送る。
【0045】
給油キャップ33は、円板状のキャップ本体35を備え、キャップ本体35は、燃料タンク31にヒンジ36によって連結され、開閉可能とされている。キャップ本体35の下面には円筒状のボディキャップ37が設けられ、ボディキャップ37は上端縁にフランジ部38を一体に有し、フランジ部38に貫通される複数のネジ39によってキャップ本体35の下面に固定されている。
【0046】
ボディキャップ37には給油口32の内周面に圧接される樹脂材料からなるシール材40が嵌め込まれている。また、シール材40の内周側においてボディキャップ37にはガイドキャップ41が嵌め込まれている。ガイドキャップ41はボディキャップ37のフランジ部38の内周側に一端を当接したスプリング42によって下方に付勢されている。
【0047】
ガイドキャップ41は上端部を外周方向に屈曲させ、この屈曲部をボディキャップ37のフランジ部38の外周側から垂下するシール材40に当接させることで位置規制される。なお、図中43はシール材40を固定する固定部材を示している。
【0048】
ボディキャップ37にはシリンダ室44が形成され、シリンダ室44にはキーシリンダ44Aが収容されている。キーシリンダ44Aは、キーを挿し込まれて回転されることで、ボディキャップ37のロック状態を解除する。具体的には、キーシリンダ44Aにはキーの回転に応じてキーシリンダ44Aの径方向に進退する図示しない係止片が設けられており、この係止片を燃料タンク31に設けられた図示しない制止部に係止することでボディキャップ37の開放を規制する構成になっている。
【0049】
ボディキャップ37のシリンダ室44の側方には、シリンダ室44に平行に延出する連通室45が形成され、この連通室45の下端部は燃料タンク31内部に開口し、蒸発燃料及び液状の燃料を通過可能な例えばメッシュ状のフィルタ部材46で覆われている。また連通室45の上端部は、金属材からなる押圧板301及び樹脂材料からなる弾性シート302で構成される連係部材300によって気密性をもって覆われている。
【0050】
連通室45には負圧調整弁47が設けられ、負圧調整弁47によって連通室45は、下方の燃料タンク31内部側と上方の燃料タンク31外部側とに分離されている。負圧調整弁47は、燃料タンク31内部側から所定の付勢力で付勢され、燃料タンク31の内圧が所定圧以下になったときに開く。
【0051】
負圧調整弁47は、連通室45の内周面から内径方向に突出して形成された孔部48Aを有する弁座48と、弁座48の孔部48Aに嵌合挿通される軸部49及び軸部49の下端に結合されて弁座48に燃料タンク31の内側から当接する傘部50を有する弁体51と、フィルタ部材46に一端を当接するとともに他端を弁体51の傘部50に当接し弁体51を上方に付勢するスプリング52とで構成されている。スプリング52はフィルタ部材46と弁体51との間に縮めて設けられており、弁体51に所定の付勢力を付与している。
【0052】
連通室45の上端部はボディキャップ37の下面(押圧板301及び弾性シート302)で閉塞される一方、連通室45の上部内周面からはフランジ部38の径方向に延出するキャップ内チャージ通路53が形成されている。キャップ内チャージ通路53はフランジ部38の内部を貫通し、ボディキャップ37と座部34との間に形成される空間において下方に開口している。
【0053】
キャップ内チャージ通路53の下方に向いた開口には円筒状の円筒弾性部材54が気密に結合され、円筒弾性部材54の下端部は、ボディキャップ37の閉じた状態で座部34に密接し、座部34に形成された連通開口55を覆う。連通開口55は座部34から燃料タンク31内部に貫通する孔であり、燃料タンク31の内部に配されたチャージ配管5に気密に接続されている。これにより、燃料タンク31内部から蒸発燃料貯留器6までの経路が形成される。
【0054】
本実施形態では、負圧調整弁47の軸部49の上端が弾性シート302に当接しており、押圧板301及び弾性シート302の上方のキャップ本体35には、カム部材56が回転可能に支持され、このカム部材56において外径方向に突出したカム山部57の軸部58を中心とする回転軌跡上には、押圧板301及び弾性シート302が位置する。
【0055】
カム部材56には、軸部58回りにカム部材56を回転させるためのケーブル59が接続され、ケーブル59は、車体カバー27内壁のリッド28の揺動端側に設けられたラッチ60に接続されている。ラッチ60は回転可能に支持されており、リッド38に設けられたストライカ61を係止してリッド38を閉じた状態で保持する。図6を参照し、ラッチ60は、リッド28が下方に押し下げられると下方に回転し、その後ストライカ61との係止状態を解除してリッド28の開放を許容する構成になっている。
【0056】
図6を続けて参照し、上記構成の蒸発燃料処理装置30では、リッド28が下方に押し下げられてラッチ60が下方に回転すると、ケーブル59が引っ張られてカム部材56が回転し、カム山部57が押圧板301及び弾性シート302を押圧し、弁体51が下がる。このようにリッド28を開く動作に連動して負圧調整弁47が開放することで、燃料タンク31内部から蒸発燃料貯留器6までの経路が連通することになる。
【0057】
したがって、本実施形態では、給油キャップ33を開ける際のリッド28を開く動作に連動して負圧調整弁47を開放させることで、給油キャップ33を開ける前に、燃料タンク31の内圧を蒸発燃料貯留器6側へ抜くことができるため、給油キャップ33を開けた際に燃料タンク31の内圧に起因して蒸発燃料が大気に流出するのを抑制することができる。
【0058】
なお、以上の第3の実施形態ではリッド28の閉じ状態を保持するラッチ60の回転を利用し、負圧調整弁47を開放させる構成を説明したが、当該実施形態の変形例として、図7に示すように、燃料タンク31が車両のシートSに覆われる構成において、シートSの閉じ状態を保持するラッチの回転を利用するようにしても構わない。
【0059】
また、図8は、上記第2の実施形態の変形例に係る構成を示しており、この例では、弁収容部14の上部(厳密には電磁石26の上部)にスイッチ24が設けられている。そして、ヒンジアーム部11には、リッド10が開かれた際にスイッチ24を押圧するスイッチ当接部23が設けられている。この構成では、リッド10の開操作により、スイッチ当接部23がスイッチ24を押圧することで、電磁石26に電流が入力される構成になっている。なお、この構成においては、スイッチ24を燃料タンク2の外壁に設けてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1,1’,30 蒸発燃料処理装置
2,31 燃料タンク
3,32 給油口
4,33 給油キャップ
5 チャージ配管(チャージ通路)
6 蒸発燃料貯留器
8 パージ配管(パージ通路)
9 車体カバー
10,28 リッド
11 ヒンジアーム部
13 ヒンジ軸
14 弁収容部
16 正圧調整弁(開閉弁)
17 傘部(弁体)
19 スプリング
20 第1の永久磁石
21 第2の永久磁石
23 スイッチ当接部
24 スイッチ
26 電磁石
47 負圧調整弁(開閉弁)
60 ラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を貯留する燃料タンク(2,31)と、前記燃料タンク(2,31)の給油口(3,32)に取付けられる開閉自在な給油キャップ(4,33)と、吸着剤によって蒸発燃料を吸着して貯留する蒸発燃料貯留器(6)と、前記燃料タンク(2,31)と前記蒸発燃料貯留器(6)とを連通させるチャージ通路(5)と、前記蒸発燃料貯留器(6)と内燃機関の吸気系(7)とを連通させるパージ通路(8)と、前記給油キャップ(4)を開閉自在に覆う、車体側に支持されたリッド(10,28)と、を備える車両の蒸発燃料処理装置において、
前記チャージ通路(5)と前記燃料タンク(2,31)との間に介在し、前記燃料タンク(2,31)の内圧が所定圧になったときに開弁して、前記燃料タンク(2,31)と前記蒸発燃料貯留器(6)とを連通させる開閉弁(16,47)を備え、
前記開閉弁(16,47)は、給油時における前記リッド(10,28)の開操作時にも該開操作に連動して開弁し、前記給油キャップ(4,33)の開放操作前の前記リッド(10,28)の開操作時に、前記燃料タンク(2,31)と前記蒸発燃料貯留器(6)とが連通し、前記燃料タンク(2,31)内の蒸発燃料が、前記蒸発燃料貯留器(6)に開放されるようにしたことを特徴とする車両の蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
前記リッド(10)は、ヒンジアーム部(11)を有し、該ヒンジアーム部(11)によって、前記燃料タンク(2)を覆う車体カバー(9)に保持されたヒンジ軸(13)に回転可能に支持され、
前記開閉弁(16)は、前記車体カバー(9)の内側に位置し、
前記ヒンジアーム部(11)の動作により、前記開閉弁(16)が開弁することを特徴とする請求項1に記載の車両の蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
前記開閉弁(16)は、弁体(17)と、該弁体(17)を閉方向に付勢するスプリング(19)と、該弁体(17)に取付けられた第1の永久磁石(20)と、を有し、前記燃料タンク(2)の外壁において前記給油キャップ(4)に隣接して設けられた弁収容部(14)内部に設けられ、
前記弁収容部(14)は、前記開閉弁(16)を介して前記燃料タンク(2)内部に連通するとともに、前記チャージ通路(5)に接続され、
前記ヒンジアーム部(11)は、前記リッド(10)の開操作時に前記第1の永久磁石(20)に近づくように配置された第2の永久磁石(21)を有することを特徴とする請求項2に記載の車両の蒸発燃料処理装置。
【請求項4】
前記開閉弁(16)は、前記燃料タンク(2)内の圧力が所定値以上になったときに開弁する正圧調整弁と、前記燃料タンク(2)内の圧力が所定値以下になったときに開弁する負圧調整弁と、で構成され、前記弁収容部(14)は、気液分離室として所定の容積を有し、
前記第1の永久磁石(20)は、前記正圧調整弁に設けられ、
前記弁収容部(14)における壁部であって、前記正圧調整弁に対面し、かつ前記リッド(10)が開いた際に前記ヒンジアーム部(11)の前記第2の永久磁石(21)に対面する壁部に、前記弁収容部(14)内部側にへこむ弧状の凹部(14B)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両の蒸発燃料処理装置。
【請求項5】
前記弁収容部(14)は、前記燃料タンク(2)の上壁部に配置され、車体搭載時における該弁収容部(14)の車幅方向中央であって、前記凹部(14B)ではない上面に、前記チャージ通路(5)が接続されていることを特徴とする請求項4に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項6】
前記開閉弁(16)は、弁体(17)と、該弁体(17)を閉方向に付勢するスプリング(19)と、該弁体(17)に取付けられた第1の永久磁石(20)と、を有し、前記燃料タンク(2)の外壁において前記給油キャップ(4)に隣接して設けられた弁収容部(14)内部に設けられ、
前記弁収容部(14)の外側には、電磁石(26)が設けられ、
前記ヒンジアーム部(11)には、前記リッド(10)が開操作された際に前記車体カバー(9)の内壁から離間するスイッチ当接部(23)が設けられるとともに、前記内壁には、前記リッド(10)が閉じた状態において前記スイッチ当接部(23)が当接するスイッチ(24)が設けられ、
前記リッド(10)の開操作により、前記スイッチ(24)は、リッド開検出信号を制御装置(25)に送信し、
該制御装置(25)のリッド開判定に応じて、前記電磁石(26)に電流が入力され、前記開閉弁(16)が磁力により開放することを特徴とする請求項2に記載の車両の蒸発燃料処理装置。
【請求項7】
前記開閉弁(16)は、弁体(17)と、該弁体(17)を閉方向に付勢するスプリング(19)と、該弁体(17)に取付けられた第1の永久磁石(20)と、を有し、前記燃料タンク(2)の外壁に設けられた弁収容部(14)内部に設けられ、
前記弁収容部(14)の外側には、電磁石(26)が設けられ、
前記燃料タンク(2)又は前記弁収容部(14)には、押圧式のスイッチ(24)が設けられ、
前記ヒンジアーム部(11)には、前記リッド(10)が開操作された際に前記スイッチ(24)を押圧するスイッチ当接部(23)が設けられ、
前記リッド(10)の開操作により、前記スイッチ当接部(23)が前記スイッチ(24)を押圧することで、前記電磁石(26)に電流が入力され、前記開閉弁(16)が磁力により開弁することを特徴とする請求項2に記載の車両の蒸発燃料処理装置。
【請求項8】
前記リッド(28)を支持する車体側には、該リッド(28)を閉じた状態で保持するラッチ(60)が設けられ、該ラッチ(60)の解除動作に連動して、前記開閉弁(47)が開放することを特徴とする請求項1に記載の車両の蒸発燃料処理装置。
【請求項9】
前記リッド(28)は自動二輪車のシートであり、前記燃料タンク(31)はシートによって覆われることを特徴とする請求項8に記載の車両の蒸発燃料処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−19398(P2013−19398A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155592(P2011−155592)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】