説明

車両ガード装置

【課題】車両ガード装置及び軌道の剛性を向上させ、座屈を防止する。
【解決手段】まくらぎ(12)を有した本線レール(11)から脱線した車両を軌道(10)内に留めるガード(24)と、前記まくらぎ(12)に取り付けられると共に前記ガード(24)が設置されたガード床板(21)と、前記ガード床板(21)と前記まくらぎ(12)の端面との間に設置された補強板(29)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本線レールから脱線した車両を軌道内に留める車両ガード装置に関し、詳細には、車両ガード装置及び軌道の剛性を向上させ、且つ、軌道の保守作業に支障しない車両ガード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が本線レールから外れて脱線すると、周辺への影響が甚大となるため本線軌道の外方への移動を阻止するための各種対策が採られている。
【0003】
この一例として、安全レールが用いられている。安全レールは、所定の間隔をあけてレールと平行に配置される。安全レールは、脱線した車両の車輪を規制し、誘導する。これにより、脱線した車両は、レールに沿って走行する。
【0004】
【特許文献1】特許第3851826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車両が安全レールに一定以上の応力を加えると、安全レールを座屈させる可能性がある。また、まくらぎ上に安全レールを設置した場合、マルチプルタイタンパー等を用いた軌道の保守作業が容易に行うことができないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、車両ガード装置及び軌道の剛性を向上させた車両ガード装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の別の課題は、軌道の保守作業に支障しない車両ガード装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、符号を参照して発明の特徴を説明する。なお、符号は参照のためのであり、発明の特徴は実施の形態に限定されない。
【0009】
発明の特徴は、次の車両ガード装置を提供することにある。車両ガード装置は、まくらぎ(12)を有した本線レール(11)から脱線した車両を軌道(10)内に留めるガード(24)を含む。同装置は、前記まくらぎ(12)に取り付けられると共に前記ガード(24)が設置されたガード床板(21)を含む。同装置は、前記ガード床板(21)と前記まくらぎ(12)の端面との間に設置された補強板(29)とを含む。
【0010】
前記ガード床板(21)は前記まくらぎ(12)の端面(12d)と向き合う第1の床板(22a)を含む。前記補強板(29)は前記まくらぎ(12)の端面(12d)と前記第1の床板(22a)との間に設置される。前記補強板(29)は面積について前記第1の床板(22a)よりも広い。
【0011】
前記ガード床板(21)は留め具(B3)によって前記まくらぎ(12)の上面に取り付けられる第2の床板(23b)を含む。前記ガード床板(21)は前記第2の床板(23b)の上に配置されると共に孔(27a)を画成する保護板(27)を含む。前記留め具(B3)は前記保護板の孔の中に配置される。
【0012】
前記ガード(24)は前記まくらぎ(12)の端面(12d)より外側に配置される。
【0013】
前記ガード床板(21)は留め具(B3)によって前記まくらぎ(12)の上面に取り付けられる第2の床板(23b)を含む。前記第2の床板(23b)は前記まくらぎ(12)の幅よりも狭い。
【発明の効果】
【0014】
以上の発明の特徴によれば、補強板は、まくらぎの端面から受ける応力を道床バラスト(図示省略)に伝達するため、車両ガード装置及び軌道の剛性を向上させ、座屈を防止する。
【0015】
補強板は、面積について第1の床板よりも広いので、車両ガード装置及び軌道の剛性をさらに向上させる。
【0016】
保護板は、車両の車輪を留め具の上方で通過させて留め具に接触させないので、留め具を損傷させずに保護する。
【0017】
ガードはまくらぎ端面より外側に設置される、又は、第2の床板はまくらぎの幅より狭いので、マルチプルタイタンパー等による軌道保守作業を支障することがなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態を詳細に説明する。
【0019】
図1を参照して、軌道10は、本線レール11と、本線レール11に沿って所定の間隔で配置されたPCまくらぎ12(以下、「まくらぎ」と称する)と、本線レール11に沿って配置された車両ガード装置20を含む。
【0020】
図2を参照して、各まくらぎ12は、バラストの上に設置される。各まくらぎ12には、レール締結装置(図示省略)を用いて本線レール11を固定する。各まくらぎ12は、概略平面矩形及び横断面台形に形成され、上面から下面へ向かって広がる。まくらぎ12の上面は、ボルトB3を挿入するためにねじが形成された穴12aを有する。まくらぎ12の上面は、レール締結装置(図示省略)のため本線レール11に対して両側に凹所12b、12cを有する。
【0021】
車両ガード装置20は、まくらぎ12の端部に1本置きに固定されたガード床板21を含む。なお、ガード床板21を各まくらぎ12に固定してもよい。車両ガード装置20は、ガード床板21に固定されたガードとしてのガード材24を含む。車両ガード装置20は、ガード材24の継目部20aにおいてガード材24に配置された添板26A、26Bを含む(図1及び4参照)。車両ガード装置20は、ガード床板21の上に配置された保護板27を含む。車両ガード装置20は、まくらぎ12の上面とガード床板21の間に配置されたゴムパッド28を含む。車両ガード装置20は、まくらぎ12の長手方向の端面12dとガード床板21との間に配置された補強板29を含む。
【0022】
ガード床板21は、L形の下床板22と、下床板22に接合された上床板23とを含む。
【0023】
下床板22は、鋼製の板を直角に屈曲することによって形成され、直交する側板22aと上板22bを有する。下床板22は、側板22a及び上板22bの間に延びる斜板22cを含む。第1の床板としての側板22aは、まくらぎ12の長手方向の端面12dと向き合う。側板22aは面積に関してまくらぎ12の長手方向の端面12dよりも小さい。側板22aは、ボルトB1が貫通するための孔(符号なし)を有する。
【0024】
図2及び3を参照して、上床板23は、ガード材24を支持するU形の支持板23aを含む。上床板23は、まくらぎ12の上面に配置されると共に支持板23aと連続する第2の床板としての固定板23bを含む。固定板23bはまくらぎ12の幅よりも狭い。これにより、マルチプルタイタンパーによる軌道保守作業に支障を与えない。支持板23aは、互いに対向する側部23a1、23a2と、両側部23a1、23a2の端の間に延びる頂部23a3とを有する。支持板23aは、頂部23a3に縦方向に延びる3個の孔23cを有する。支持板23aは、孔23cに一致して位置決めされると共に頂部23a3の下面に固定されたナットN1を有する。平らな固定板23bは、ゴムパット28の上に配置される。固定板23bは、まくらぎ12の孔12aに一致する長くした孔23eを有する。この孔23eはボルトB3の軸部の挿入を許容し、ボルトB3の頭部を孔23eの外に配置させる。
【0025】
ガード材24はまくらぎ12の端面12dより外側に配置される。この配置の根拠は、まくらぎ12の上にガード材24があると、本線レール周辺でマルチプルタイタンパー等を用いた軌道保守作業に支障しないようにするためである。ガード材の長さは、例えば、約5mである。図4を参照して、ガード材24は、互いに対向する側板24a、24bと、側板24a、24bの中央部の間に延びる基板24cとを含む。ガード材24は、基板24cの中心線に沿ってまくらぎ12の設置間隔に合わせて配列された、例えば、100mmの長円形の孔24fを有する。この孔24fは、まくらぎ12の設置位置による誤差がある場合、あるいは、使用中にまくらぎが移動した場所でも使用可能にする。上床板23の孔23cが3個あるのは、上記100mmの長円の孔24fで不足した場合に備えるためである。その結果、まくらぎ12の位置が±100mm移動した場合でもガード材24が設置可能である。
【0026】
図3を参照して、平面矩形の保護板27は、固定板23bの上に接合される。保護板27は、固定板23bの孔23eを囲む円形の孔27aを有する。孔27aは内部に留め具としてのボルトB3の頭部を収容する。孔27aの深さは、ボルトB3の頭部の軸方向の長さよりも深い。よって、ボルトB3の軸部がまくらぎ12の穴12aに取り付けられると、保護板27の上面は、ボルトB3の頭部よりも高くなる。すなわち、ボルトB3の上端は保護板27の上面から孔27aの中に後退し、孔27aから上方へ突出しない。
【0027】
図2を参照して、平面矩形の補強板29は、面積に関してまくらぎ12の長手方向の端面12d及び側板22aより広い。補強板29はボルトB1が挿入される孔29aを有する。補強板29は、まくらぎ12の長手方向の端面12dから受ける応力を道床バラスト(図示省略)に伝達するため車両ガード装置20及び軌道10の剛性を向上する。これにより、車両ガード装置20の座屈を防止する。なお、補強板29は、平面円形、楕円形、三角形、又は、多角形でもよい。
【0028】
図4を参照して、添板26A、26Bは、ガード材24同士の間に配置され、ガード材24の基板24cの上下面に配置される。添板26A、26Bは、ガード材24の側板24a、24bの間に挿入され、一方のガード材24にボルトB2で固定される。添板26A、26Bは、中心線に沿って配置されると共にボルトB2が貫通する孔26aを有する。孔26aはガード材24の端部の孔24dに一致している。添板26A、26Bは、側面と下面とが交わる辺部26b、26cを有し、この辺部26b、26cは前記側面及び下面に対して斜めに面取りされている。添板26Bは、孔26aに一致して位置決めされ、溶接されたナットN2を有する。
【0029】
次に、まくらぎ12に対する車両ガード装置20の組み付け方法を説明する。
【0030】
下床板22の側板22aのまくらぎ12の長手方向の端面12d側に補強板29を挿入し、ボルトB1に座金を取り付け、ボルトB1を側板22a及び補強板29のそれぞれのねじ孔にねじ込む。これにより、下床板22に補強板29を固定する。
【0031】
まくらぎ12の上面にゴムパッド28を配置する。ゴムパッド28の上に上床板23の固定板23bを載せ、まくらぎ12の穴12aと孔23eを一致させる。ボルトB3に座金を取り付ける。ボルトB3の軸部を保護板27の孔27aから挿入し、固定板23の孔23eを通過せ、まくらぎ12の穴12aにねじ込む。これにより、まくらぎ12にガード床板21を固定する。ボルトB3の頭部は、孔27の中に配置され、保護板27の上面よりも低くなる。
【0032】
上床板23の支持板23aの上にガード材24を設置する。すなわち、ガード材24の側板24a、24bの間に頂部23a3を挿入し、ガード材24の基板24cを頂部23a3の上に載せる。ボルトB2に角座金W1を取り付け、基板24cの孔24fにボルトB2を通し、ネジによりナットN1に固定する。これにより、ガード床板21にガード材24を固定する。次に、隣り合うガード材24の基板24cの上下面に添板26A、26Bを配置する。ボルトB2に座金を取り付け、基板24cの孔24dにボルトB2を貫通させ、ナットN2にねじ込む。これにより、添板26A、26Bは一方のガード材24に固定され、他方のガード材24に対して移動可能となる。
【0033】
次に、車両ガード装置20の使用方法を説明する。
【0034】
車両ガード装置20は、車両が脱線した場合に脱線車両により被害が想定される区間に設置される。例えば、住宅密集地における踏切において、列車と自動車との衝突により車両が脱線した場合、脱線車両による周辺に及ぼす影響が甚大となると想定される。このような踏切部において、車両ガード装置は、車両が脱線した後車両が軌道外へ逸脱することを防止する。
【0035】
また、鉄道の橋梁、駅構内およびトンネル等のように鉄道の建築限界に接近して建造された構造物の手前において車両が脱線した場合、脱線車両が構造物に対して衝突する。このような衝突を防止するためには、構造物の手前において脱線車両を線路外へ逸脱することを防止するとともに、建築限界の内側まで車両を誘導する。
【0036】
すなわち、図2を参照して、走行する車両の車輪がレール11から外れて車両ガード装置20へ向かって横方向へ移動する。車輪は保護板27に載り、ガード材24へ向かってさらに移動する。車輪が保護板27の孔27aの上を通過するとき、車輪はボルトB3の頭部の上方を通過し、同頭部に接触しないので、ボルトB3を損傷させずに保護する。車輪はガード材24に当たり、横方向への移動を止められる。これにより、軌道10内に車輪を留め、車両が軌道10の外へ逸脱することを防止する。さらに、補強板29は、まくらぎ12から受ける応力を道床バラストに伝達するため、車両ガード装置20の剛性を向上し、座屈を防止する。
【0037】
また、マルチプルタイタンパーにより軌道10の保守作業を行う。このとき、ガード材24はまくらぎ12の端面12dより外側に配置され、また、固定板23bはまくらぎ12の幅より狭いので、同タイタンパーの先端部がまくらぎ12の下に進入することを許容し、保守作業の支障とならない。
【0038】
以上の車両ガード装置20によれば、補強板29は、まくらぎ12の長手方向の端面12dから受ける応力を道床バラストに伝達し、車両ガード装置20の剛性を向上させ、座屈を防止する。
【0039】
補強板29は、下床板22の側板22aよりも広いので、剛性をさらに向上させる。
【0040】
保護板27は、車両の車輪をボルトB3の上方で通過させてボルトB3に接触させないので、留め具B3を損傷させずに保護する。
【0041】
ガード24はまくらぎ12の端面12dより外側に設置されるので、又は、第2の床板23bはまくらぎ12の幅より狭いためマルチプルタイタンパー等による軌道保守作業を支障することがなくなる。
【0042】
なお、本発明は、実施の形態に限定されず、実施の形態の修正及び変更は発明の趣旨を逸脱しない範囲で可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】発明の実施形態に係わる軌道の平面図である。
【図2】(A)は図1に示す軌道の部分立面図であり、(B)は同軌道の側面図である。
【図3】(A)は図2に示す床板の平面図であり、(B)は同床板の側面図である。
【図4】(A)は図1に示すガード材及び添板の組付体の立面図であり、ガード材の継目部に該当し(B)は同組付体の平面図であり、(C)は同ガード材の立面図であり、(D)は同ガード材端部の平面図であり、(E)は同カード材一般部の平面図であり、(F)は同添板の立面図であり、(G)は同添板の平面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 軌道
11 本線レール
12 まくらぎ
20 車両ガード装置
21 ガード床板
22 下床板
23 上床板
24 ガード材
26 添板
27 保護板
28 ゴムパッド
29 補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
まくらぎを有した本線レールから脱線した車両を軌道内に留めるガードと、
前記まくらぎに取り付けられると共に前記ガードが設置されたガード床板と、
前記ガード床板と前記まくらぎの端面との間に設置された補強板とを含む車両ガード装置。
【請求項2】
前記ガード床板は前記まくらぎの端面と向き合う第1の床板を含み、
前記補強板は前記まくらぎの端面と前記第1の床板との間に設置され、
前記補強板は面積について前記第1の床板よりも広い請求項1に記載の車両ガード装置。
【請求項3】
前記ガード床板は留め具によって前記まくらぎの上面に取り付けられる第2の床板を含み、
前記ガード床板は前記第2の床板の上に配置されると共に孔を画成する保護板を含み、
前記留め具は前記保護板の孔の中に配置される請求項1に記載の車両ガード装置。
【請求項4】
前記ガードは前記まくらぎの端面より外側に配置された請求項1に記載の車両ガード装置。
【請求項5】
前記ガード床板は留め具によって前記まくらぎの上面に取り付けられる第2の床板を含み、
前記第2の床板は前記まくらぎの幅よりも狭い請求項1に記載の車両ガード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−235856(P2009−235856A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85934(P2008−85934)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(000230825)日本軌道工業株式会社 (14)