説明

車両ホイールサスペンション試験装置

【課題】車両のサスペンション等の挙動を走行時に近づけられる車両ホイールサスペンション試験装置を提供する。
【解決手段】車輪を回転させる車両ホイールサスペンション試験装置1であって、帯板状のクローラビーム40が循環方向に並んで無限軌道を形成するクローラ10と、クローラ10を循環可能に支持するクローラ支持台11と、車輪を転接させるクローラ10を循環させるクローラ駆動機構20とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪を回転させて車両のホイール、サスペンション等を試験する車両ホイールサスペンション試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪を転接させる円柱状のドラムをモータによって回転駆動し、4つのドラムに車両の前後左右の車輪をそれぞれ転接させ、各ドラムの回転速度を異ならせて加振する車両試験装置がある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平06−294710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の車両試験装置にあっては、車輪のドラムに対する接地面が小さいため、ドラムから車輪に入力される振動や衝撃による車両のサスペンション等の挙動が走行時のものとはかけ離れ、車両の耐久試験等の精度を高められないという問題点があった。
【0004】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、車両のホイール、サスペンション等の挙動を走行時に近づけられる車両ホイールサスペンション試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車輪を回転させる車両ホイールサスペンション試験装置であって、帯板状のクローラビームが循環方向に並んで無限軌道を形成するクローラと、このクローラを循環可能に支持するクローラ支持台と、車輪を転接させるクローラを循環させるクローラ駆動機構とを備える構成とした。
【発明の効果】
【0006】
本発明によると、クローラは循環方向に並ぶクローラビームによって平らな路面を形成するため、車輪の接地面形状が走行時に近いものとなり、車両の耐久試験等の精度を高められる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0008】
図1は車輪を回転させながら加振する車両ホイールサスペンション試験装置1の正面図であり、図2は車両ホイールサスペンション試験装置1の側面図である。ここで、互いに直交するX、Y、Zの3軸を設定し、X軸が略水平前後方向、Y軸が略水平横方向、Z軸が略垂直方向に延びるものとして説明する。
【0009】
図1に示すように、車両ホイールサスペンション試験装置1は、車輪を転接させる環状のクローラ10と、このクローラ10を循環可能に支持するクローラ支持台11と、クローラ10を循環させるクローラ駆動機構20と、クローラ支持台11を加振するクローラ加振機構30とを備える。
【0010】
図2に示すように、クローラ駆動機構20として、クローラ支持台11上には、駆動スプロケット12と従動スプロケット13がそれぞれY軸(水平軸)まわりに回転可能に支持される。クローラ10は、駆動スプロケット12と従動スプロケット13とに渡って掛け渡される。
【0011】
図3の(a)は、クローラ10の側面図である。クローラ10は、帯板状のクローラビーム40が環状に並ぶように連結されたものであり、無限軌道を形成する。
【0012】
クローラ10は、複数のチェーンキャリア41を備え、この各チェーンキャリア41に各クローラビーム40が環状に並ぶように連結される。各チェーンキャリア41は駆動スプロケット12と従動スプロケット13とに渡って掛け回される。クローラ10は、駆動スプロケット12と従動スプロケット13との間で平坦な路面を形成する。
【0013】
チェーンキャリア41は、駒45、46の両端部がピン47を介して回動可能に連結され、ピン47にローラ48が回転可能に嵌合している。
【0014】
左右の駒45にはフランジ49が曲折して形成され、このフランジ49にクローラビーム40の背面が結合される。
【0015】
帯板状の金属製クローラビーム40は、その一端にY軸方向に延びる段部55が形成され、その他端にY軸方向に延びる凹部56が形成される。隣り合うクローラビーム40の段部55と凹部56が互いに係合し、隣り合うクローラビーム40の間隙を埋めるようになっている。
【0016】
図2に示すように、クローラ支持台11上には、Y軸(水平軸)まわりに回転可能に支持される従動シャフト19を備え、この従動シャフト19に複数(3個以上)の従動スプロケット13が連結される。
【0017】
クローラ支持台11上には、Y軸(水平軸)まわりに回転可能に支持される駆動シャフト17を備え、この駆動シャフト17に複数(3個以上)の駆動スプロケット12が連結される。
【0018】
図4は、駆動スプロケット12及びクローラ10の概略構成を示す断面図である。これに示すように、各駆動スプロケット12の歯15が各チェーンキャリア41のローラ48に噛み合い、各チェーンキャリア41を循環させるようになっている。
【0019】
図4に2点鎖線で示すように、クローラ10上に突出するブロック61を設け、このブロック61をクローラビーム40に図示しないボルトを介して締結してもよい。車両の試験時、車輪がクローラビーム40と共に循環するブロック61に転接することにより、車輪がクローラビーム40によってつくられる平らな路面に転接する状態と、車輪がブロック61によってつくられる路面上の突起を乗り越える状態とが繰り返される。これにより、車両が路面上の段差を乗り越える走行状態を再現できる。
【0020】
なお、ブロック61をクローラビーム40に一体形成してもよい。
【0021】
図3の(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。これに示すように、チェーンキャリア41のローラ48に転接するガイドレール18が設けられる。ガイドレール18は、クローラ支持台11上に固定され、チェーンキャリア41の下方に沿って配置される。チェーンキャリア41の上部は、各ローラ48をガイドレール18に転接させることにより、ガイドレール18に沿ってX軸(水平軸)方向に循環する。
【0022】
クローラ駆動機構20は、駆動スプロケット12を回転駆動する電動モータ25と、この電動モータ25の回転を駆動スプロケット12に伝える駆動シャフト21とを備える。
【0023】
なお、駆動スプロケット12を回転駆動するモータは、これに限らず、油圧モータや他のモータを用いてもよい。
【0024】
電動モータ25は架台8に固定され、電動モータ25に対する駆動スプロケット12の変位を吸収するため、駆動シャフト21は、スプラインを介して伸縮する伸縮シャフト部22を有する。そして、駆動シャフト21の一端は等速ジョイント23を介して電動モータ25の出力軸に曲折可能に連結される。駆動シャフト21の他端は等速ジョイント24を介して駆動スプロケット12の入力軸に曲折可能に連結される。
【0025】
これにより、クローラ加振機構30がクローラ支持台11を加振している状態にて、駆動シャフト21がその姿勢を変えながら電動モータ25の回転を駆動スプロケット12に伝えることができる。
【0026】
クローラ加振機構30は、Z軸方向に伸縮作動する6本の昇降アクチュエータ31と、各昇降アクチュエータ31の変位をクローラ支持台11に伝える6本のリンク35とを備え、クローラ支持台11を昇降させるとともにX、Y、Zの3軸まわりに回動(ローリング、ピッチング、ヨーイング)させるものである。
【0027】
各昇降アクチュエータ31は架台9に対してZ軸方向に延びるように固定されるシリンダ32と、このシリンダ32から摺動可能に突出するロッド33とを備え、図示しない油圧制御装置からシリンダ32内に導かれる油圧力によってロッド33が昇降するようになっている。
【0028】
各リンク35は、各昇降アクチュエータ31とクローラ支持台11との間に設けられる。各リンク35の下端は、自在継ぎ手37を介して各昇降アクチュエータ31のロッド33の先端に連結される。各リンク35の上端は、自在継ぎ手36を介してクローラ支持台11に連結される。リンク35は、複合材等を用いて軽量化がはかられている。
【0029】
クローラ加振機構30は、各油圧制御装置によって各昇降アクチュエータ31の伸縮作動が互いに連携して制御されることにより、クローラ支持台11を昇降させるとともにX、Y、Zの3軸まわりに回動させるようになっている。
【0030】
図1は、1台の車両ホイールサスペンション試験装置1が単独で設けられる例である。車両の試験時、車両の前輪または後輪が各クローラ10に転接するように配置されて、クローラ加振機構30が各クローラ10を加振して振動試験が行われる。
【0031】
なお、これに限らず、2台の車両ホイールサスペンション試験装置1を並列に設け、2つのクローラ10が所定の間隔を持って互いに並行に配置される構成としてもよい。この場合、四輪車両の左右前輪または左右後輪をそれぞれ各クローラ10に転接するように配置して振動試験を行うことができる。
【0032】
また、4台の車両ホイールサスペンション試験装置1を設け、4つのクローラ10が所定の間隔を持って配置される構成としてもよい。この場合、四輪車両の左右前輪及び左右後輪をそれぞれ各クローラ10に転接するように配置して振動試験を行うことができる。
【0033】
本実施の形態では、車輪を回転させる車両ホイールサスペンション試験装置1であって、帯板状のクローラビーム40が循環方向に並んで無限軌道を形成するクローラ10と、このクローラ10を循環可能に支持するクローラ支持台11と、車輪を転接させるクローラ10を循環させるクローラ駆動機構20とを備える構成とした。
【0034】
上記構成に基づき、クローラ10は循環方向に並ぶクローラビーム40によって平らな路面を形成するため、車輪の接地面形状が走行時に近いものとなり、車両の耐久試験等の精度を高められる。
【0035】
本実施の形態では、クローラ駆動機構20は、回転可能に支持される複数の駆動スプロケット12及び従動スプロケット13と、各駆動スプロケット12及び各従動スプロケット13に掛け回される複数のチェーンキャリア41とを備え、クローラ10は各クローラビーム40が複数のチェーンキャリア41に渡って連結される構成とした。
【0036】
上記構成に基づき、チェーンキャリア41が駆動スプロケット12及び従動スプロケット13に渡って円滑に循環し、環状に並ぶクローラビーム40をチェーンキャリア41によって高速で循環させることが可能となる。
【0037】
本実施の形態では、チェーンキャリア41は駆動スプロケット12及び従動スプロケット13に噛み合うローラ48を備え、このローラ48に転接するガイドレール18を設け、このガイドレール18をクローラ支持台11上に固定する構成とした。
【0038】
上記構成に基づき、チェーンキャリア41は、ガイドレール18に案内されて循環し、各クローラビーム40をガイドレール18に沿って移動させる。ガイドレール18が直線上に延びることにより、クローラビーム40によって平らな路面が形成され、車輪の接地面形状が走行時に近いものとなり、車両の耐久試験等の精度を高められる。
【0039】
本実施の形態では、クローラ10上に突出するブロック61を設ける構成とした。
【0040】
上記構成に基づき、車両の試験時、車輪がクローラビーム40と共に循環するブロック61に転接することにより、車輪がクローラビーム40によってつくられる平らな路面に転接する状態と、車輪がブロック61によってつくられる路面上の突起を乗り越える状態とが繰り返される。これにより、車両が路面上の段差を乗り越える走行状態を再現できる。
【0041】
本実施の形態では、前記クローラ支持台11を加振するクローラ加振機構30とを備える構成とした。
【0042】
上記構成に基づき、クローラ10が加振され、クローラ10から車輪に入力される振動や衝撃を与えることにより、車両の耐久試験等を様々な条件で行うことが可能となる。
【0043】
本実施の形態では、クローラ加振機構30は、略垂直方向(Z軸方向)に伸縮作動する6本の昇降アクチュエータ31と、各昇降アクチュエータ31の変位をクローラ支持台11に伝える6本のリンク35とを備え、クローラ支持台11を昇降させるとともに互いに直交する3軸まわりに回動させる構成とした。
【0044】
上記構成に基づき、クローラ10から車輪に6自由度の振動や衝撃を与えられ、車両のサスペンション等の挙動が走行時に近いものとなり、車両の耐久試験等の精度を高められる。
【0045】
そして、各昇降アクチュエータ31の変位を各リンク35がクローラ支持台11に伝える構成としたため、クローラ加振機構30のコンパクト化がはかれ、車両のトレッド(左右車輪の間隔)に対応するように2つのクローラ10を配置することが可能となる。これにより、車輪の左右車輪に同時に回転させながら振動や衝撃を与えられ、車両のサスペンション等の挙動が走行時に近いものとなり、車両の耐久試験等の精度を高められる。
【0046】
本実施の形態では、クローラ駆動機構20は、駆動スプロケット12を回転駆動するモータ25と、このモータ25の回転を駆動スプロケット12に伝える駆動シャフト21とを備え、駆動シャフト21は軸方向に伸縮する伸縮シャフト部22を有し、駆動シャフト21の一端は等速ジョイント23を介してモータ25の出力軸に曲折可能に連結され、駆動シャフト21の他端は等速ジョイント24を介して駆動スプロケット12の入力軸に曲折可能に連結される構成とした。
【0047】
上記構成に基づき、クローラ加振機構30がクローラ支持台11を加振している状態にて、駆動シャフト21がその姿勢を変えながらモータ25の回転を駆動スプロケット12に伝える。モータ25が架台9に固定して設けられることにより、クローラ支持台11の重量が軽減され、クローラ支持台11の移動速度を高められる。
【0048】
他の実施の形態として、図5に示すように、クローラビーム40の一端にX軸方向に突出する複数に櫛状凸部51が所定の間隔をもってY軸方向に並ぶように形成され、クローラビーム40の他端にスリット(切り欠き)52が所定の間隔をもってY軸方向に並ぶように形成される。隣り合うクローラビーム40の櫛状凸部51とスリット52が互いに係合し、隣り合うクローラビーム40の間隙を埋めるようになっている。
【0049】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態を示す車両ホイールサスペンション試験装置の正面図。
【図2】同じく車両ホイールサスペンション試験装置の側面図。
【図3】同じくクローラの側面図及び断面図。
【図4】同じくチェーンキャリア等の断面図。
【図5】他の実施の形態を示すクローラの平面図。
【符号の説明】
【0051】
1 車両ホイールサスペンション試験装置
10 クローラ
11 クローラ支持台
12 駆動スプロケット
13 従動スプロケット
17 駆動シャフト
18 ガイドレール
19 従動シャフト
20 クローラ駆動機構
30 クローラ加振機構
31 昇降アクチュエータ
35 リンク
40 クローラビーム
41 チェーンキャリア
48 ローラ
61 ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を回転させる車両ホイールサスペンション試験装置であって、
帯板状のクローラビームが循環方向に並んで無限軌道を形成するクローラと、
このクローラを循環可能に支持するクローラ支持台と、
前記車輪を転接させる前記クローラを循環させるクローラ駆動機構とを備えたことを特徴とする車両ホイールサスペンション試験装置。
【請求項2】
前記クローラ駆動機構は、
回転可能に支持される複数の駆動スプロケット及び従動スプロケットと、
前記各駆動スプロケット及び前記各従動スプロケットに掛け回される複数のチェーンキャリアとを備え、
前記クローラは前記各クローラビームが複数の前記チェーンキャリアに渡って連結されることを特徴とする請求項1に記載の車両ホイールサスペンション試験装置。
【請求項3】
前記チェーンキャリアは前記駆動スプロケット及び前記従動スプロケットに噛み合うローラを備え、
このローラに転接するガイドレールを設け、
このガイドレールを前記クローラ支持台上に固定することを特徴とする請求項2に記載の車両ホイールサスペンション試験装置。
【請求項4】
前記クローラ支持台を加振するクローラ加振機構を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の車両ホイールサスペンション試験装置。
【請求項5】
前記クローラ上に突出するブロックを備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の車両ホイールサスペンション試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−145209(P2010−145209A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322022(P2008−322022)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)