説明

車両外装品およびアンテナエレメントの製造方法

【課題】スポイラなどの車両外装品に内蔵されるアンテナエレメントの装着を容易とし、また、エレメントの振動に起因するビビリ音の発生を抑制する。
【解決手段】ルーフスポイラ18の本体20内部にノズル28を挿入する。ノズル28の先端を所定の形状に沿って移動させつつ、導電性ペースト34をノズル先端より吐出させる。吐出された導電性ペーストは、ルーフスポイラ本体20の内壁に付着し、乾燥または加熱により硬化されてアンテナエレメント38となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の外装品として車体に装備され、アンテナエレメントを内蔵する車両外装品および内蔵されるアンテナエレメントに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の外装品として車体に取り付けられる付加物、例えばスポイラ、ウイングなどの空力付加物が知られている。一方、車両外部から情報を受信し、搭乗者にこの情報を提供する様々なシステムが開発されている。通常のAM,FMラジオはもとより、テレビ、自動車電話(携帯電話)、道路,交通情報、更には娯楽施設、飲食店などの情報を配信するシステムなどが実用に供されている。これらのシステムにおいて、外部からの情報を受信するためにそれぞれのシステムの特性に応じたアンテナが車両に備えられている。複数のアンテナが装着されると、煩雑な印象を与え、車両のデザイン上好ましくない。
【0003】
そこで、前記の外装品として取り付けられる付加物に、一つまたは複数のアンテナシステムにそれぞれ対応したアンテナエレメントを内蔵することが行われている。具体的には、導体で所定形状に形成されたアンテナエレメントを付加物にビスなどにより固定している(下記特許文献1および2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−309412号公報
【特許文献2】特開2003−309413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
所定形状に形成されたアンテナエレメントをビス等により固定する場合、所定形状のアンテナエレメントを車両外装付加物内部に挿入する必要があるため、付加物の形状が限定される。例えば、エレメントを内蔵しないのであれば、一体成形が可能な場合であっても、分割構成とし、エレメントを固定した後、一体にするなどの工程が必要となることがある。また、エレメントの一部が振動し、車両外装付加物の内壁面に接触することによりこの付加物が音源となって、いわゆるビビリ音が発生する場合がある。また、エレメントを固定するためのビス、その他の固定具が必要であり、部品点数が多く、コスト、組み付け性、重量面で不利となる。
【0006】
本発明は、上記の問題を少なくとも一つ解決しうるアンテナエレメントを内蔵する車両外装付加物およびその製造方法、または車両外装付加物に内蔵されるアンテナエレメントの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るアンテナエレメントは、導電性ペーストを、車両外装品内部に挿入され、所定の形状に沿って移動するノズルより吐出させてエレメントの形状を形作り、その後、乾燥または加熱により硬化させて形成される。
【0008】
導電性ペーストを吐出する際に、その一部が、外部に設けられた受信回路とエレメントを接続する、あらかじめ設置された信号線の端子に接触するようにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本実施形態の車両の外装付加物の例として空力付加物を取り付けた車両10の後部の外観を示す図である。車両10は、ミニバンと呼ばれる車体形状を有し、独立したトランクを有さず、ルーフ12の後端からバンパ14の上端までを開放するハッチゲート16を有している。本実施形態の空力付加物は、ルーフ12の後端から、これを後方に延長するように突出して設けられるルーフスポイラ18である。ルーフスポイラ18は、ルーフ12の幅とほぼ同じ幅を有し、ルーフ12の表面を流れてきた気流を後方へスムースに流すための空力付加物であり、その形状は、車両幅方向に長く、高さ方向に薄い、大略細長い板状の形状を有している。
【0010】
一方、近年、車両の情報化に伴い車両外部との通信のために、その通信の種別に対応して多くのアンテナエレメントが車両に設けられている。ルーフスポイラなどの空力付加物は、一般的に車両の車体より突出して設けられており、この内部にアンテナエレメントを配置すれば、外部より見えなくなる、または目立たなくすることができ、車両の外観を損なわずに済む。しかしながら、導体板を所定の形状としたエレメントや、プリント基板上に形成されたエレメントなどをルーフスポイラ18に内蔵しようとすると、大きな開口を設けたり、複数の部品に分割したりする必要が生じる。また、エレメントが振動した場合に、周囲との干渉に関する対策を施すなどの必要も生じる。
【0011】
図2は、本実施形態のアンテナエレメントの製造方法に関する説明図である。図2は、ルーフスポイラ18の長手方向に直交する方向に沿って切断した状態を示しており、実際に車体に取りつけられる状態に対して天地が逆転した状態に示されている。また、図中右方向が車両の前方になる。図3、図4は、アンテナエレメントを形成した後の状態を示す図である。
【0012】
ルーフスポイラ18は、合成樹脂の射出成形によるルーフスポイラ本体20にハイマウントストップランプ22などの部品を装着して形成される。車両のルーフ12の後端に密着するルーフスポイラ本体20の前下面24は開口26を有している。この開口26には、ノズル28を挿入する開口(以下ノズル挿入口30)を有するノズル案内板32が装着されている。ノズル28は、ノズル挿入口30に挿入された状態で、その先端が所定の形状に沿って移動され、先端より導電性ペースト34を吐出することで、ルーフスポイラ本体の内壁面36に導電性ペースト34を付着させる。付着した導電性ペースト34は、ノズル先端の移動経路に対応した形状となり、アンテナエレメント38を構成する。図2は、導電性ペースト34を吐出してアンテナエレメント38を形成している過程を示しており、ノズル先端が所定の経路を移動し終わり、ノズル28が抜き取られた後の様子が図3または図4に示されている。
【0013】
ルーフスポイラ本体のアンテナエレメント38が付着される内壁面36には、端子台40が装着される。端子台40には、ルーフスポイラ18の外部に配置される受信回路など回路に接続された信号線42の一端が固定されている。また、端子板44が固定され、これに信号線42の一端が接続されている。さらに、この端子板44の先端は、内壁面36に沿うように延びて、アンテナエレメント38の端が、この部分に接続している。
【0014】
次に、ルーフスポイラ18の製造工程について説明する。ルーフスポイラ本体20は、合成樹脂のブロー成形または射出成形により形成される。その形状に因るが、一体成形が好ましいが、二つ、またはそれ以上の部分に分割して形成され、後に組み立てるようにしてもよい。ルーフスポイラ本体の開口26から、内部の空間に端子台40が入れられて、所定の位置に固定される。そして、端子台40には、端子板44がビス止めされて、さらに、信号線42の端が固定具を介してビス止めされ、その心線が端子板44にはんだ付けされる。信号線42は、これを端子台40に固定する前に、装着前のノズル案内板32に設けられた貫通孔に等されている。信号線42の固定後、ノズル案内板32はルーフスポイラ本体の開口26に装着される。
【0015】
前述のように、ノズル案内板32には、ノズル挿入口30が設けられており、ここからノズル28が挿入される。ノズルを挿入するだけであれば、ルーフスポイラ本体20の開口26を、ノズルが通り、所定の動きができる程度に小さくすることができ、ノズル案内板32は不要である。しかし、前述のようにルーフスポイラ18の内部の空間に端子台40を入れたり、またここにビス止めなどを行うために、本実施形態においては、開口26を大きくとって、ここにノズル案内板32を装着する構成としている。
【0016】
ノズル案内板のノズル挿入口30よりノズル28を挿入する。挿入されたノズル28から導電性ペースト34を吐出させつつ、ノズル先端を所定の形状に沿って移動させ、連続したエレメントのパターンを形成する。このとき、吐出する導電性ペーストの一部が端子板44に接触する。これによってアンテナエレメント38と信号線42が接続され、よってアンテナエレメント38が受信回路に接続される。このノズル先端の移動は、定まった速度で、所定の軌跡を描くようにする必要があり、数値制御などにより行うのが好ましい。吐出する導電性ペースト34は、例えば大塚化学のデントールWK(商品名)を塗料や接着剤に混ぜたものが使用できる。導電性ペースト34が形成するエレメントのパターンの一部が端子板44に接触している。ノズル28を抜いて、ペーストを自然乾燥または加熱乾燥してエレメントのパターンを定着させる。
【0017】
その後、ストップランプ22など、他の部品を装着してルーフスポイラが完成する。本実施形態においてはルーフスポイラに内蔵されるアンテナエレメントに関して説明したが、車体から間隔を空けて配置される空力付加物、いわゆるウイング、さらには空力に影響しない車両の外装品においても同様のエレメントの内蔵化が可能である。さらに、後付の車両外装品だけでなく、車体を構成するルーフ、トランク、ボンネット、バンパなどにも同様の方法でアンテナエレメントを内蔵化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ルーフスポイラが車両に装着された状態を示す図である。
【図2】本実施形態のルーフスポイラの内部を示す図であり、特にアンテナエレメントの形成過程を示す図である。
【図3】本実施形態のルーフスポイラの内部を示す図である。
【図4】本実施形態のリーフスポイラの内部を別の角度から見た状態で示す図である。
【符号の説明】
【0019】
10 車両、18 ルーフスポイラ、20 ルーフスポイラ本体、26 開口、28 ノズル、30 ノズル挿入口、32 ノズル案内板、34 導電性ペースト、36 内壁面、38 アンテナエレメント、42 信号線、44 端子板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両外装品に内蔵されるアンテナエレメントの製造方法であって、
前記車両外装品の内部の空間に挿入されたノズルの先端をアンテナエレメントの形状に対応した軌跡で移動させつつ、当該ノズルの先端より導電性ペーストを吐出する工程と、
前記吐出された導電性ペーストを硬化させアンテナエレメントを形成する工程と、
を有するアンテナエレメントの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナエレメントの製造方法であって、
前記導電性ペーストを吐出する工程において、当該車両外装品の外部に配置される回路と当該アンテナエレメントを接続する信号線の、当該車両外装品内部に配置された端子に、導電性ペーストの一部が接触するようにこれが吐出される、
アンテナエレメントの製造方法。
【請求項3】
アンテナエレメントを内蔵した、車両外装品の製造方法であって、
内部に空間を有する車両外装品本体を形成する工程と、
前記車両外装品本体の内部空間にノズルを挿入し、ノズル先端をアンテナエレメントの形状に対応した軌跡で移動させつつ、当該ノズルの先端より導電性ペーストを吐出し、前記車両外装品本体の内壁面に付着させる工程と、
前記吐出した導電性ペーストを硬化させアンテナエレメントを形成する工程と、
を有する、車両外装品の製造方法。
【請求項4】
アンテナエレメントを内蔵した、車両外装品の製造方法であって、
内部に空間を有し、この空間と外部を連通する開口が設けられた車両外装品本体を形成する工程と、
内蔵されるアンテナエレメントと外部に配置される回路とを接続する信号線の端子を、前記開口より前記空間に挿入し、内壁面に固定する工程と、
前記開口に、より小さい開口を有するふたを装着する工程と、
前記ふたの開口よりノズルを挿入し、ノズル先端をアンテナエレメントの形状に対応した軌跡で移動させつつ、当該ノズルの先端より導電性ペーストを吐出し、前記車両外装品本体の内壁面に付着させ、このとき導電性ペーストの一部が前記端子に接触するようにする工程と、
前記吐出した導電性ペーストを硬化させアンテナエレメントを形成する工程と、
を有する、車両外装品の製造方法。
【請求項5】
車両外装品として車体に取り付けられる車両外装品であって
内部に空間を有する付加物本体と、
前記付加物本体の空間の内壁に導電性ペーストを付着させ、硬化させて形成されたアンテナエレメントと、
を有する、車両外装品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−80929(P2006−80929A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263171(P2004−263171)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】