説明

車両接近報知用発音装置

【課題】静粛性を維持しつつ、必要に応じて、車両の存在を車外の通行人等に報知させること。
【解決手段】車両に設置され、駆動体を駆動させて音声を発生させ、車外に車両の接近を報知させるための車両接近報知用発音装置1において、駆動体により車両のナンバープレート20を振動させて、該ナンバープレート20から音声を発生させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両接近報知用発音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現状の自動車においては、駆動源としてピストンエンジン等の内燃機関が一般的に用いられており、当該内燃機関では、ピストン内における燃料の爆発音とそれに付随する機械音とが発生している。この爆発音と機械音とは重なり合って車両の外側に発せられる。したがって、車両の外側にいる人々は、これらの音に基づいて車両の存在を充分認知することが可能であった。
【0003】
しかしながら、昨今の車社会では、環境保護への取り組みが推進されていることから、ハイブリッド車、さらには、電気モータ車が普及し始めている。これらハイブリッド車および電気モータ車においては、車両自体から発される音は、従来のピストンエンジン車に比べて、遥かに小さい。このため、ハイブリッド車等は、静粛であるという利点を有する反面、通行人が車両の接近を判定するのを困難なものにしている。その結果、通行人が車両の接近を認識できず、自動車と衝突するといった危険性が高まっている。
【0004】
これらの対応策として、自動車車両の所望の位置に、発音体、たとえば、スピーカを装着し、走行状態に応じて、該発音体を適宜、作動させるという構成を有する車両接近告知装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−40317号公報(発明の詳細な説明)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている車両接近告知装置では、発音体は車両のボディの内部に装着されている。この場合、所望の方向に音を発生させて、通行人に車両の存在を認識させるためには、音圧が不足したり、音圧が過大になったりしやすく、音圧をコントロールするのが困難であるという欠点を有する。さらに、音の指向性が拡散し、車両の存在位置等を確認しづらくなってしまう。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、静粛性を維持しつつ、必要に応じて、車両の存在を車外の通行人等に報知させるための車両接近報知用発音装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、車両に設置され、駆動体を駆動させて音声を発生させ、車外に車両の接近を報知させるための車両接近報知用発音装置において、駆動体により車両のナンバープレートを振動させて、該ナンバープレートから音声を発生させるものである。
【0009】
また、ナンバープレートもしくはナンバープレートの周辺部分を発音時に発光させることが好ましい。
【0010】
また、ナンバープレートを傾斜手段により所望の方向に傾けることにより、所定の方向に対して音声に指向性を持たせることが好ましい。
【0011】
また、ナンバープレートから出力される音声の音圧レベルは、制御装置に設けられる音圧調整手段によって制御されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、静粛性を維持しつつ、必要に応じて、車両の存在を車外の通行人等に報知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両接近報知用発音装置およびその制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の車両接近報知用発音装置の分解斜視図である。
【図3】図1中の車両接近報知用発音装置の斜視図である。
【図4】図1中の車両接近報知用発音装置の平面図である。
【図5】図4中の車両接近報知用発音装置をA−A線で切断した断面図である。
【図6】図5において一点鎖線Aで囲んだ部分の拡大図である。
【図7】図5において一点鎖線Bで囲んだ部分の拡大図である。
【図8】図2中の圧電体の構成を示す図であり、上段は、圧電素子を押さえ部材に装着する前の状態を示す図であり、下段は、圧電素子を押さえ部材に装着した後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態に係る車両接近報知用発音装置1について、図面を参照しながら説明する。なお、車両接近報知用発音装置1を制御するための制御装置2の説明についても車両接近報知用発音装置1(以下、単に、発音装置1という。)の説明と併せて行う。また、以下の説明において、図2〜図8に示す矢示X方向を「表」、矢示X方向を「裏」、X方向とX方向の両方向に対し水平方向で直交する方向となる矢示Y方向を「左」、矢示Y方向を「右」、XY平面と直交する方向となる矢示Z方向を「上」および矢示Z方向を「下」とそれぞれ規定する。
【0015】
まず、発音装置1およびその制御装置2の概略構成について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る発音装置1およびその制御装置2の構成を示すブロック図である。
【0016】
発音装置1は、不図示の車両が車外の通行人等に接近した場合に、告知音を発生させて当該車両の存在を通行人等に報知させるための装置である。図1に示すように、発音装置1から出力される告知音となる音声は、制御装置2において送信される作動信号によって制御される。また、車両には車外の音声を検出するためのマイクロフォン4が備えられている。制御装置2における作動信号の出力は、マイクロフォン4で検出された音声信号に基づいて行われる。
【0017】
マイクロフォン4は、たとえば、車両の前方部分に取り付けることが可能である。このマイクロフォン4は制御装置2に電気的に接続されている。また、発音装置1は車両の前方および/または後方のナンバープレート20を振動板とするような構成を有している。すなわち、ナンバープレート20を振動板とする発音装置となっている。なお、発音装置1の詳細な構成については後述する。
【0018】
制御装置2は、図1に示すように、告知音を発生させるための発音信号発生装置10と、増幅装置11と、発音装置1から出力される音圧レベルの調整を行うための音圧調整手段12とを備えている。
【0019】
発音信号発生装置10では、発音装置1から出力される音声信号が生成される。発音信号発生装置10は、たとえば、内蔵したメモリに記憶されたオーディオデータから音声信号を生成することが可能である。当該生成された音声信号は増幅装置11に送信され、その音圧レベルが調整される。
【0020】
増幅装置11は発音装置1に接続されており、該増幅装置11で増幅された音声信号が、発音装置1から告知音として車外へ発音される。
【0021】
音圧調整手段12は、基準電圧器13と、信号比較器14と、音圧制御器15を備えている。基準電圧器13には、予め所定の基準電圧(基準音圧)が記憶されている。信号比較器14は、たとえば、マイクロフォン4で検出された音声信号の音声信号電圧(音圧)と基準電圧器13の基準電圧(基準音圧)とを比較し、その差Vを算出する。なお、本実施の形態では、マイクロフォン4によって車のエンジン音が十分に大きな音であるということが検出された場合、発音装置1から告知音が出力されないように制御がなされる。すなわち、音声信号電圧(音圧)と基準電圧(基準音圧)との差Vが大きな値を示した場合、発音装置1から告知音は出力されない。
【0022】
また、音圧制御器15は増幅装置11に接続されており、音声信号電圧と基準電圧との差Vに基づいて、増幅装置11の増幅率を変え、発音装置1から出力される告知音の音圧レベルを制御する。すなわち、音声信号電圧(音圧)と基準電圧(基準音圧)の差Vに基づいて、音圧制御器15が発音装置1から出力される音声の音圧レベルを制御する構成となっている。
【0023】
次に、発音装置1の構成について図2から図8に基づいて詳述する。図2は、発音装置1の分解斜視図である。図3は、発音装置1の斜視図である。図4は、発音装置1の平面図である。図5は、図4中の発音装置1をA−A線で切断した断面図である。図6は、図5において一点鎖線Aで囲んだ部分の拡大図である。図7は、図5において一点鎖線Bで囲んだ部分の拡大図である。
【0024】
発音装置1は、図2および図3に示すように、不図示の車両のナンバープレート20(以下、単にプレート20と表記する。)を平面振動板として採用し、該プレート20から音声が発生される構成となっている。具体的には、発音装置1は、上述した平板状のプレート20と、プレート20の裏側に配置されるフレーム21と、フレーム21のさらに裏側に配置される略平板状の裏板22と、プレート20の裏側の略中央に装着されるボイスコイル23と、プレート20の裏側において左右一対に装着される圧電体24と、ボイスコイル23を駆動させるための磁気回路25を備えている。なお、ボイスコイル23と磁気回路25とでプレート20を振動させる駆動体を構成している。
【0025】
図2に示すように、プレート20は、発音装置1の最も表側に配置される。プレート20としては、たとえば、自動車において一般的に使用される中型番号標が採用されている。なお、プレート20として中型番号標以外のプレートを採用することも可能である。プレート20は、矩形状の形態を有するアルミニウムの板材から構成されている。プレート20の外形寸法は、たとえば、上下方向となる縦方向の寸法を165mm、左右方向となる横方向の寸法を330mmおよび厚さ寸法を1mmとするのが好ましい。
【0026】
図2に示すように、プレート20の裏側には、略矩形状の外形を有するフレーム21が配置されている。フレーム21は、プレート20を支持するための枠体であり、上下左右となる外周方向においてプレート20よりも約10mm大きな外形寸法を有している。これにより、フレーム21の外形寸法は、縦方向の寸法が185mm、横方向の寸法が350.0mmおよび厚さが7.4mmに形成されている。しかしながら、フレームの外形寸法は、当該寸法に限定されるものではない。また、フレーム21の材料として、アルミニウムが採用されている。さらに、フレーム21の表面にはアルマイト処理が施されている。
【0027】
フレーム21は、四角枠状の枠部26と、枠部26の左右の内縁部に設けられる受け部27,27と、枠部26の短手方向に沿って架け渡されるフランジ部28とを有する。枠部26、受け部27,27およびフランジ部28は、一体的に形成されている。
【0028】
受け部27は、フレーム21の左右の内縁部において、上下方向(短手方向)に沿うように設けられている。この受け部27は、枠部26の表面26aから裏側に向かって約1mmの段差を有するように形成されている。すなわち、深さが約1mmとなるようなザグリ加工が施されている。また、各受け部27,27の横方向の寸法は約10mmに形成されている。なお、受け部27の表面26aからの深さ寸法および受け部27の横方向の寸法は、それぞれ1mmおよび10mmに限定されるものではない。また、フレーム21の裏側には、裏板22を取り付けやすくするために、枠部26に沿うような不図示の段差部が設けられている。この段差部は、フレーム21の裏側において、縦方向の寸法が182.5mm、横方向の寸法が347.5mmおよび深さが1.5mmとなるようにザグリ加工により形成されている。
【0029】
プレート20は、フレーム21の枠部26の内側に表側から嵌め込まれる。この際、プレート20は、フレーム21の受け部27,27によって受け止められることになる。このように、プレート20がフレーム21内に配置された状態では、プレート20の長辺20aと、枠部26の内周側の長辺26bとの間には、上側および下側のそれぞれにおいて約0.25mm〜約0.3mm程度のクリアランスが形成されるように構成されている。
【0030】
フランジ部28は、枠部26の長手方向略中央において短手方向に向かって架け渡されている。フランジ部28は、略平板状の形態を有している。また、フランジ部28の上下の両端には内側に向かって略矩形状に切り欠かれた2つの矩形切欠部30が設けられている。さらに、フランジ部28の上下方向略中央には、円形の挿入孔31が設けられている。挿入孔31は、たとえば、直径約56mmに形成されている。また、挿入孔31の裏側部分の内周部には全周に亘ってエッジ状のエッジ部31aが形成されている(図6参照)。すなわち、エッジ部31aにより挿入孔31には全周に亘って円周状の段差が形成されることになる。挿入孔31のうちエッジ部31aが形成されている部分の直径は、たとえば、約56.05mmに形成されている。
【0031】
フレーム21において、フランジ部28を挟んだ左右の領域には表裏方向から見て矩形状の形態を有する中空部32,32が形成されている。また、フレーム21の枠部26およびフランジ部28には、裏板22をネジ止めするための複数のネジ穴33が設けられている。フレーム21に設けられる受け部27,27および枠部26の裏側に裏板22を嵌め込むために設けられた不図示の段差部は、共に切削加工によって形成される。
【0032】
裏板22は、略矩形状の平板であり、フレーム21の裏側に配置される。裏板22の略中央には、円形の挿入孔34が設けられている。挿入孔34は、たとえば、直径約56mmに形成されている。また、裏板22には、フレーム21のネジ穴33と対応するように複数のネジ穴35が設けられている。
【0033】
本実施の形態では、プレート20とフレーム21との装着は、左右の受け部27の表側に粘着シートを貼り、さらに、フレーム21の長辺側に、たとえば、厚さ0.23mmの所定の厚さのスペーサを設置した状態で行われる。具体的には、受け部27,27に上述した粘着シートを貼り、フレーム21の長辺側にスペーサを設置した状態で、受け部27がプレート20を受け止めるように、該プレート20をフレーム21の枠部26内に設置する。そして、フレーム21の裏面側から受け部27とプレート20との境界部分に紫外線硬化型の接着剤を塗布し、紫外線を照射して該境界部分を硬化させる。さらに、フレーム21の長辺側に設置されたスペーサを抜き取り、その抜き取られた部分に紫外線硬化型のダンプ剤を流し込み、紫外線を照射してダンプ剤を硬化させる。これにより、枠部26とプレート20の長辺との間のクリアランスが封止され、プレート20とフレーム21とが強固に固定される。ダンプ剤の塗布方法としては、たとえば、注射器の内部にダンプ剤を封入し、空気圧を利用して注射針の先端から該ダンプ剤を吐出させる方法を採用することができる。
【0034】
図2等に示すように、プレート20の略中央にはボイスコイル23が配設される。また、ボイスコイル23を挟んだ左右両側には合計2つの圧電体24が配設される。図2に示すように、ボイスコイル23は、コイルスペーサ36を介してプレート20の裏側に取り付けられる。また、圧電体24は、圧電スペーサ37を介してプレート20の裏側に取り付けられる。
【0035】
ボイスコイル23としては、たとえば、内径が25.9mm、巻き幅が3mmおよびインピーダンスが4Ωのコイルを採用することができる。コイルスペーサ36としては、直径約40mm、厚さ約1mmの部材が採用されており、該コイルスペーサ36はアクリル系の二液混合タイプの接着剤を用いてプレート20に取り付けられる。また、ボイスコイル23は、コイルスペーサ36の表面に、たとえば、アクリル系の二液混合タイプの接着剤を塗布することでプレート20に対して固定される。
【0036】
また、圧電体24を取り付けるための圧電スペーサ37は、プレート20を長手方向に2等分する中心線を軸として、当該中心線と設置位置との間隔が約120mmとなるように左右一対に設置されている。圧電スペーサ37は、長さが36mm、幅が18mmおよび厚さが1mmの寸法を有している。これら、スペーサ36,37は、プレート20に凹凸等が存在した場合でも、ボイスコイル23や圧電体24のプレート20に対する平坦度を維持するために設けられている。本実施の形態では、スペーサ36,37の材質としては、アルマイト処理が施されたアルミニウムが採用されているが、当該目的を達成できれば材質はアルミニウムに限定されるものではない。
【0037】
図8は、圧電体24の構成を示す図であり、上段は、圧電素子40を押さえ部材41に装着する前の状態を示す図であり、下段は、圧電素子40を押さえ部材41に装着した後の状態を示す図である。
【0038】
図8に示すように、圧電体24は、圧電素子40と、一対の押さえ部材41とから構成されている。圧電素子40は、薄板42の上下両面に平板状の2枚の圧電セラミックス43を貼り合わせたバイモルフ型の圧電素子とされている。薄板42としては、たとえば、長さ寸法が31mm、幅寸法が13.5mmおよび厚さが0.2mmのステンレス板が採用されている。また、圧電セラミックス43としては、長さ寸法が28mm、幅寸法が13mmおよび厚さが0.15mmのセラミックスもしくはチタン酸バリウムを採用することが可能である。
【0039】
押さえ部材41は、圧電素子40を表裏の両側から狭示するように一対に設けられている。押さえ部材41は、長手状の長手部41aと、長手部41aの長手方向の両端部から一方向へ向かって突出する角柱状の柱状部41bとから構成されている。一対の押さえ部材41は、同一形状を呈している。圧電素子40は、押さえ部材41に設けられる2つの柱状部41b,41bに嵌め込まれ、一対の押さえ部材41を突き合わせることで、該押さえ部材41に固定される。すなわち、圧電素子40は、押さえ部材41の長手部41aによって狭持されることで表裏方向への動きが規制されると共に、柱状部41bの突き合わせにより上下方向への動きが規制される。
【0040】
具体的には、長手部41aを短手方向に沿って切断した断面は略台形形状を呈しており、長手部41aの長手方向の両端部は、表裏方向から見て、たとえば、厚さ0.3mmの矩形状の形態を有している。長手部41aにおいて圧電素子40と対向する側には、長手部41aの短手方向に沿って幅が狭い幅狭面42aを有している。この幅狭面42aはYZ平面に平行な矩形状の平坦な面となっている。また、幅狭面42aの左右両側には、幅狭面42aに対して傾斜する面となる傾斜面42bが形成されている。換言すると、傾斜面42bは、幅狭面42aから長手部41aの短手方向の外側に向かって、長手部41aの厚さが小さくなるようにテーパ状に形成されている。そして、長手部41aの長手方向の両端部に略直方体形状の柱状部41bが固定されている。柱状部41bを長手部41aの両端部に固定した状態では、該柱状部41bは幅狭面42aに対して、たとえば、突き合わせ方向に向かって0.15mmだけ突出している。
【0041】
幅狭面42aの長手方向の寸法は、たとえば、13.5mmとされており、幅狭面42aの短手方向の寸法は、たとえば、0.8mmとされている。また、幅狭面42aに対する傾斜面42bのテーパ状の傾斜角度αは、たとえば、30.6°に形成されている。さらに、たとえば、押さえ部材41の長手方向の寸法は、19.5mm、最大幅寸法は、4mmおよび台形の高さ寸法は、1.5mmに形成されている。以上より、圧電素子40を押さえ部材41に取り付けた場合、該圧電素子40は、幅狭面42aによって狭持された状態になる。なお、押さえ部材41は、アルミニウムから形成されており、その表面にはアルマイト処理が施されている。しかしながら、押さえ部材41の材料はアルミニウムに限定されるものではない。
【0042】
圧電素子40の押さえ部材41への取り付けは、幅狭面42aに二液混合型のアクリル系接着剤を塗布した後、圧電素子40の長手方向略中央部を押さえ部材41によって狭持させる。すなわち、柱状部41bが圧電素子40を短手方向に沿って跨ぐように、圧電素子40を押さえ部材41によって狭持させる。この状態では、圧電素子40は、幅狭面42aによって狭持されることで表裏方向への動きが規制されると共に、柱状部41bにより上下方向への動きが規制された状態となる。
【0043】
そして、圧電素子40を押さえ部材41で狭持した状態で、圧電体24を所定の治具に装着して圧定し、所定時間放置すると、圧電素子40は押さえ部材41に接着される。さらに、圧電体24,24は圧電スペーサ37,37の表面に、たとえば、アクリル系の二液混合タイプの接着剤を用いて取り付けられる。この際、圧電体24は所定時間圧定される。また、圧電体24を所定の治具を用いて正確に位置出しすることも可能である。
【0044】
このように、プレート20の裏側に、ボイスコイル23、圧電体24およびフレーム21が装着された状態で、ボイスコイル23および圧電体24への電気的な接続作業が行われる。この接続作業は、ボイスコイル23および圧電体24に設けられる不図示の端子をフレーム21に設けられる不図示の入力端子に接続することによってなされる。この接続により、ボイスコイル23および圧電体24への信号の入出力が可能となる。ボイスコイル23および圧電体24へは、制御装置2に備えられる音圧調整手段12によって制御された信号が入力される。
【0045】
また、図2および図6等に示すように、フレーム21のフランジ部28における挿入孔31には、磁気回路25が配置される。この磁気回路25は、フレーム21の裏側から挿入孔31に挿入される。磁気回路25が挿入孔31に配置された状態では、磁気回路25の中心とボイスコイル23の中心は一致する。磁気回路25は、ボトムヨーク45と、マグネット46と、トッププレート47とから構成されている。
【0046】
ボトムヨーク45は、磁性材からなる磁気回路25の基盤部材であり、略有底円柱状をなしている。具体的には、ボトムヨーク45は、略円柱状の形態を有するセンターガイド部45aと、このセンターガイド部45aの裏側部分において周方向外側に向かって全周に亘って延出する載置部45bとを有する。載置部45bは、マグネット46およびトッププレート47の表側方向の位置出しを行うために設けられている。ボトムヨーク45は、鉄材にて表面処理が施されている。載置部45bは、外径が56mm、厚さが1.5mmの円板形状を有する。また、センターガイド部45aは、直径が25.6mm、高さが3mmの円柱形状を有する。
【0047】
載置部45bの表側には、ドーナツ状のマグネット46が載置される。このマグネット46は、センターガイド部45aの外周側に位置するように載置部45bに載置される。マグネット46としては、たとえば、外径が58mm、内径が30mmおよび厚さが1.5mmのネオジウムマグネットを用いることができる。また、マグネット46の表側には磁性材からなるドーナツ状のトッププレート47が配置される。このトッププレート47は、マグネット46と対向する位置に、マグネット46を載置部45bとで狭持せしめるように配置される。トッププレート47としては、たとえば、外径が56mm、内径が27.84mmおよび厚さが1.5mmの鉄材からなるプレートを用いることが可能である。また、トッププレート47は、鉄材の表面にクロメート処理が施されている。
【0048】
センターガイド部45aの外周部とトッププレート47の内周部との間には所定間隔を有する磁気ギャップ48が形成されている。このように構成された磁気回路25を挿入孔31に配置させると、磁気ギャップ48には、略円筒状の形態を有するボイスコイル23が配置されることになる(図6参照)。
【0049】
磁気回路25は、ボトムヨーク45、マグネット46およびトッププレート47のそれぞれを二液混合型のアクリル接着剤によって接着することによって形成される。上述したように、磁気回路25は挿入孔31に挿入される。この際、挿入孔31の裏側部分には全周に亘ってエッジ状となる、たとえば、直径56.05mmのエッジ部31aが形成されている。また、マグネット46の外径はトッププレート47の外径よりもわずかに大径となっている。このため、大径となるマグネット46がエッジ部31aに当接することで、磁気回路25が表側に向かって抜け落ちることが防止される。すなわち、磁気回路25はフランジ部28によって保持される。
【0050】
磁気回路25がフランジ部28に保持された状態で、ボイスコイル23に接続されるリード線に入力信号を引加すると、ボイスコイル23が表裏方向に駆動し始め音声が再生される。加えて、圧電体24にも入力信号を引加すると、信号に基づいた音声が再生される。また、磁気回路25を挿入孔31に配置した状態で、フレーム21の裏側に裏板22が装着される。裏板22は、フレーム21の裏側において、縦方向の寸法が182.5mm、横方向の寸法が347.5mmおよび深さが1.5mmとなるようにザグリ加工された部分に嵌まるように装着される。
【0051】
また、裏板22の略中央には、直径約56mmの挿入孔34が形成されている。このため、図6に示すように、裏板22をフレーム21の裏側に装着した状態では、トッププレート47の外周部近傍が挿入孔34の内周部近傍によって裏側から表側に向かって押圧される。換言すると、磁気回路25は、トッププレート47の外周部がエッジ部31aと裏板22の挿入孔34の内周部近傍とに狭持されるように、フレーム21内に保持される。そして、裏板22のネジ穴35からフレーム21のネジ穴33に到達するようにネジ38を螺入させることで、裏板22とフレーム21とが固定される。なお、挿入孔34、挿入孔31およびボイスコイル23の中心軸線は一致しているため、磁気ギャップ48にボイスコイル23を確実に配置することが可能である。
【0052】
次に、発音装置1の動作の一例について説明する。
【0053】
本実施の形態では、不図示の車両内に設けられた不図示の電源をONにすると、車両外部の騒音を自車両のマイクロフォン4で検出する。そして、この騒音に対応した音声信号が発音信号発生装置10に内蔵されるメモリに記憶されたオーディオデータから再生され、該音声信号が増幅装置11に出力される。さらに、増幅装置11で増幅された音声信号が、発音装置1から告知音として車外に発音される。
【0054】
具体的には、自車両のマイクロフォン4で検出された車両外部の騒音から、たとえば、帯域通過フィルタを用いて音声信号が取り出される。また、信号比較器14では、取り出された音声信号の音声信号電圧(音圧)と、基準電圧器13に予め設定した基準電圧(基準音圧)とを比較し、その差Vを算出して、音圧制御器15へ出力する。そして、音圧制御器15は、音声信号電圧と基準電圧との差Vに基づいて増幅装置11の増幅率を制御し、自車両の告知音の音圧レベルを制御する。このように、制御装置2によって制御された音声信号が発音装置1に送信され、発音装置1のプレート20が振動し制御された告知音が出力される。なお、本実施の形態では、マイクロフォン4によって十分に大きな車のエンジン音が検出された場合、発音装置1から告知音は出力されない。
【0055】
以上のように構成された発音装置1では、自車両のマイクロフォン4で検出された車両外部の騒音を考慮しつつ、発音装置1から音声を発生させることが可能である。すなわち、通行人等に告知音を報知させるために、車両外部の騒音よりも大きな告知音が発音装置1から発生されるように制御装置2によって制御することができる。このため、歩行者等に対して自動車の存在を知らせることができる音声を確実に発音装置1から発生させることが可能となる。
【0056】
また、発音装置1は、自動車のナンバープレートを平面振動板とするような構成を有している。このため、自動車の車両の外部に露出した部分から音声を発生させることが可能となる。したがって、歩行者等に対して容易に音声を伝達させることが可能となる。また、ナンバープレートを平面振動板としていることから、車体の前端部および後端部に発音装置1を装着することが可能となる。したがって、前方もしくは後方にいる歩行者等に対して確実に音声を伝達することが可能となる。また、発音装置1を傾けて装着することで、所定の方向に対して指向性を持たせることが可能となる。このため、車両周辺において騒音が発生するのを防ぎつつ、車両の存在を進行方向に存在する歩行者に効果的に知らせることが可能となる。
【0057】
また、発音装置1は、自動車のナンバープレートの位置に設けられているため、遮蔽物がない状態で音声を外部に発生することが可能である。したがって、歩行者等に対して効率良く音声を伝達することが可能となる。また、発音装置1は外部に露出する状態で配置されているため、発音装置1から発生する音声が車両のボディ等に伝達されることがなく、ハイブリッド車等において、静粛性を維持させながら車外の歩行者等に自動車の存在を報知させることが可能となる。
【0058】
また、発音装置1は、自動車のナンバープレートの位置に設けられているため、プレート20を発音時に発光させる構成とすれば、発音装置1から音声を出力させると同時にプレート20を発光させることが可能となる。たとえば、音声の出力時にプレート20を点滅もしくは点灯させる構成とすることが挙げられる。このような構成とすることで、歩行者等に自動車の存在を確実に報知させることが可能となる。また、ナンバープレートの周辺部分を発光させることも可能であるため、ナンバープレート以外の光源を用いて歩行者等に自動車の存在を報知させることが可能となる。なお、発音装置1におけるプレート20以外の部位を発光させる構成としても良い。さらに、ナンバープレートは、車両の位置を報知させるのに極めて適した位置であるため、発音装置1を発音させると共に発光させることによって、車両の存在を車外の人間に報知させるのに大きな効果を発揮することが可能となる。
【0059】
また、発音装置1は、ナンバープレートの位置に設けられているため、前方もしくは後方に指向性を有する。このため、車両の進行方向となる前方および後方の所定の範囲に集中して音声を伝達させることが可能となる。したがって、深夜に住宅街等を走行する場合、横方向に音声が伝わるのを防止でき、住民等の間で騒音問題が発生するのを防止できる。
【0060】
また、発音装置1では、ナンバープレートを振動板として採用しているため、コーン状の振動板を用いる場合と比較して、特に前後方向において指向性を容易に得ることが可能となる。
【0061】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0062】
上述の実施の形態では、歩行者等に車両の接近を報知させるために、発音装置1から発生される音声のみを用いているが、歩行者等に車両の接近を報知させる手段として、発音装置1からの音声とクラクション等の音声を併用するようにしても良い。
【0063】
また、上述の実施の形態では、発音装置1から発される音声には特定の方向に指向性を持たせていないが、制御装置2によって制御することで、たとえば、前方の所定の範囲や斜め前方にのみ音声が到達するように指向性を持たせるようにしても良い。特に、住宅街を走行する場合や、早朝や深夜等の静粛性を要求される場合、前方および/または後方の所定の範囲にのみ音声が到達するようにするのが好ましい。
【0064】
また、ナンバープレートが地面に近い位置に存在する車種においては、発音装置1から発される音声が歩行者等に確実に到達しない場合がある。この場合、発音装置1に該発音装置1を傾斜させることが可能な傾斜手段を設け、発音装置1を上方に傾けた状態で装着させたり、発音装置1の角度を自動もしくは手動で調節できるような構成にして指向性を調節できるようにしても良い。たとえば、傾斜手段としては、発音装置1の車両に対する装着部分に軸を挿通させ、当該軸を中心として発音装置1を回転させる機構、または圧電素子を発音装置1の上下もしくは/および左右方向に対に設け、当該対の圧電素子を伸縮させて発音装置1を傾斜させる機構を挙げることができる。なお、傾斜手段により発音装置1中のプレート20のみを傾斜させる構成としても指向性を調節することが可能である。また、発音装置1をフロントグリル近傍に装着させ、たとえば、上下左右方向に音声を発生させて指向性を持たせるようにしても良い。
【0065】
また、発音装置1を左右方向へ傾ける動きをステアリングの左右方向への切り替えに連動させたり、ウインカーの点滅に連動させたりするようにしても良い。また、本実施の形態では、駆動源として、ボイスコイル23と圧電体24が採用されているが、駆動源はこれらの部材に限定されるものではなく、たとえば、超磁歪アクチュエータを駆動源として採用するようにしても良い。
【0066】
また、上述の実施の形態では、音声は合成音とされていないが、発音装置1から発される音声を自由に選択できるようにしても良いし、音声信号を合成音として任意に作成できるようにしても良い。たとえば、駆動源となるモータの出力波形を元にして音声を合成し、該モータの回転数の変化に伴った音声を発するようにすることで、走行状態に即した音声を容易に告知音として発生させることが可能となる。
【0067】
また、上述の実施の形態では、車外の騒音をマイクロフォン4によって検出しているが、検出方法はマイクロフォン4で行うことに限定されず、たとえば、振動センサ等の他の機器によって検出するようにしても良い。また、本実施の形態では、音声信号電圧(音圧)と基準電圧(基準音圧)とを比較する方法を採用しているが、このような方法に限定されるものではない。
【0068】
また、上述の実施の形態では、発音装置1は発光するような構成とはされていないが、発音装置1を発光するような構成としても良い。たとえば、無機ELパネルや有機ELパネルを採用して発音装置1を発光させても良いし、導光板を採用して発音装置1を発光させるようにしても良い。また、発光状態を点滅させるようにしても良く、外部の状況に応じて自由に発光状態を制御できるようにしても良い。また、発光状態に合わせて音声の発音形態を制御するようにしても良い。また、発光は発音装置1において行うことに限定されるものではなく、たとえば、フレーム等にLED(Light Emitting Diode)を装着して発光させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0069】
1…車両接近報知用発音装置 2…制御装置 12…音圧調整手段 20…ナンバープレート 23…ボイスコイル(駆動体の一部) 24…圧電体 25…磁気回路(駆動体の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置され、駆動体を駆動させて音声を発生させ、車外に車両の接近を報知させるための車両接近報知用発音装置において、
上記駆動体により上記車両のナンバープレートを振動させて、該ナンバープレートから音声を発生させることを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両接近報知用発音装置において、
前記ナンバープレートもしくは前記ナンバープレートの周辺部分を発音時に発光させることを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両接近報知用発音装置において、
前記ナンバープレートを傾斜手段により所望の方向に傾けることにより、所定の方向に対して音声に指向性を持たせることを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項記載の車両用接近用発音装置において、
前記ナンバープレートから出力される音声の音圧レベルは、前記制御装置に設けられる音圧調整手段によって制御されていることを特徴とする車両接近報知用発音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−68293(P2011−68293A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222536(P2009−222536)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(508209990)J&Kカーエレクトロニクス株式会社 (98)
【出願人】(598146850)後藤電子 株式会社 (24)