説明

車両接近報知用発音装置

【課題】静粛性を維持しつつ、簡易な構造でありかつ低コストで、必要に応じて、車両の存在を車外の通行人等に報知させること。
【解決手段】車両に設置され、車外に車両の接近を報知させるための車両接近報知用発音装置1であって、振動板として車両の一部を構成する部材20に対し、駆動体23の駆動によって振動板を打撃することにより音声を発生させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両接近報知用発音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現状の自動車においては、駆動源としてピストンエンジン等の内燃機関が一般的に用いられており、当該内燃機関では、ピストン内における燃料の爆発音とそれに付随する機械音とが発生している。この爆発音と機械音とは重なり合って車両の外側に発せられる。したがって、車両の外側にいる人々は、これらの音に基づいて車両の存在を充分認知することが可能であった。
【0003】
しかしながら、昨今の車社会では、環境保護への取り組みが推進されていることから、ハイブリッド車、さらには、電気モータ車が普及し始めている。これらハイブリッド車および電気モータ車においては、車両自体から発される音は、従来のピストンエンジン車に比べて、遥かに小さい。このため、ハイブリッド車等は、静粛であるという利点を有する反面、通行人が車両の接近を判定するのを困難なものにしている。その結果、通行人が車両の接近を認識できず、自動車と衝突するといった危険性が高まっている。
【0004】
これらの対応策として、自動車車両の所望の位置に、発音体、たとえば、スピーカを装着し、走行状態に応じて、該発音体を適宜、作動させるという構成を有する車両接近告知装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−40317号公報(発明の詳細な説明)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている車両接近告知装置では、発音体は車両のボディの内部に装着されている。この場合、所望の方向に音を発生させて、通行人に車両の存在を認識させるためには、音圧が不足したり、音圧が過大になったりしやすく、音圧をコントロールするのが困難であるという欠点を有する。さらに、音の指向性が拡散し、車両の存在位置等を確認しづらくなってしまう。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、静粛性を維持しつつ、簡易な構造でありかつ低コストで、車両の存在を車外の通行人等に報知させることが可能な車両接近報知用発音装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一側面は、車両に設置され、車外に車両の接近を報知させるための車両接近報知用発音装置であって、振動板として車両の一部を構成する部材に対し、駆動体の駆動によって振動板を打撃することにより音声を発生させるものである。
【0009】
また、駆動体は打撃板と、磁気回路とを備えており、磁気回路の磁力により振動板を打撃板によって打撃することが好ましい。
【0010】
また、磁気回路の磁力により、ムービングコイルもしくはソレノイドを駆動させ、当該駆動に連動するように打撃板を介して振動板を打撃することが好ましい。
【0011】
また、駆動体は、モータと、モータに取り付けられる打撃用ギヤと、打撃用ギヤによって打撃される打撃板と、を備え、打撃板は振動板と打撃用ギヤとの間に配置され、打撃用ギヤによって打撃された打撃板を介して振動板が振動することが好ましい。
【0012】
また、振動板は前記車両のナンバープレートであることが好ましい。
【0013】
また、振動板から出力される音声の音圧は、制御装置に設けられる音圧調整手段によって制御されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、静粛性を維持しつつ、簡易な構造でありかつ低コストで、必要に応じて、車両の存在を車外の通行人等に報知させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る車両接近報知用発音装置およびその制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1中の車両接近報知用発音装置を表側から見た分解斜視図である。
【図3】図1中の車両接近報知用発音装置を表側から見た斜視図である。
【図4】図1中の車両接近報知用発音装置を裏側から見た分解斜視図である。
【図5】図1中の車両接近報知用発音装置の平面図である。
【図6】図4中の車両接近報知用発音装置をA−A線で切断した断面図である。
【図7】図5において一点鎖線Aで囲んだ部分の拡大図である。
【図8】本発明の変形例を表側から見た分解斜視図である。
【図9】本発明の変形例を表側から見た斜視図である。
【図10】本発明の変形例を示す図であり、裏板を外した状態で裏側から見た分解斜視図である。
【図11】本発明の変形例の側断面図である。
【図12】図11において一点鎖線Bで囲んだ部分の拡大図である。
【図13】本発明の変形例に用いられる駆動体の構成を示す図であり、上段は打撃用ギヤが打撃板を打撃している状態の斜視図であり、下段は打撃用ギヤが打撃板を打撃していない状態の斜視図である。
【図14】本発明の変形例に用いられる駆動体の構成を示す図であり、上段は打撃用ギヤが打撃板を打撃している状態の側面図であり、下段は打撃用ギヤが打撃板を打撃していない状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係る車両接近報知用発音装置1について、図面を参照しながら説明する。なお、車両接近報知用発音装置1を制御するための制御装置2の説明についても車両接近報知用発音装置1(以下、単に、発音装置1という。)の説明と併せて行う。また、以下の説明において、図2〜図12に示す矢示X方向を「表」、矢示X方向を「裏」、X方向とX方向の両方向に対し水平方向で直交する方向となる矢示Y方向を「左」、矢示Y方向を「右」、XY平面と直交する方向となる矢示Z方向を「上」および矢示Z方向を「下」とそれぞれ規定する。
【0017】
まず、発音装置1およびその制御装置2の概略構成について説明する。図1は、本発明の一実施の形態に係る発音装置1およびその制御装置2の構成を示すブロック図である。
【0018】
発音装置1は、不図示の車両が車外の通行人等に接近した場合に、告知音を発生させることによって当該車両の存在を通行人等に報知させる装置である。図1に示すように、発音装置1から出力される告知音となる音声は、制御装置2において出力される作動信号によって制御される。また、車両には車外の音声を検出するためのマイクロフォン4が備えられている。制御装置2における作動信号の出力は、マイクロフォン4で検出された音声信号に基づいて行われる。
【0019】
マイクロフォン4は、たとえば、車両の前方部分に取り付けることが可能である。このマイクロフォン4は制御装置2に電気的に接続されている。また、発音装置1は車両の前方および/または後方のナンバープレート20を振動板とするような構成を有している。すなわち、ナンバープレート20を振動板とする発音装置となっている。なお、発音装置1の詳細な構成については後述する。
【0020】
制御装置2は、図1に示すように、告知音を発生させるための発音信号発生装置10と、増幅装置11と、発音装置1から出力される音圧の調整を行うための音圧調整手段12とを備えている。
【0021】
発音信号発生装置10では、発音装置1から出力される音声信号が生成される。発音信号発生装置10は、たとえば、内蔵したメモリに記憶されたオーディオデータから音声信号を生成することが可能である。当該生成された音声信号は増幅装置11に送信され、その音圧レベルが調整される。
【0022】
増幅装置11は発音装置1に接続されており、該増幅装置11で増幅された音声信号が、発音装置1から告知音として車外へ発音される。
【0023】
音圧調整手段12は、基準電圧器13と、信号比較器14と、音圧制御器15を備えている。基準電圧器13には、予め所定の基準電圧(基準音圧)が記憶されている。信号比較器14は、たとえば、マイクロフォン4で検出された音声信号の音声信号電圧(音圧)と基準電圧器13の基準電圧(基準音圧)とを比較し、その差Vを算出する。なお、本実施の形態では、マイクロフォン4によって車のエンジン音が十分に大きな音であるということが検出された場合、発音装置1から告知音が出力されないように制御がなされる。すなわち、音声信号電圧(音圧)と基準電圧(基準音圧)との差Vが大きな値を示した場合、発音装置1から告知音は出力されない。
【0024】
また、音圧制御器15は増幅装置11に接続されており、音声信号電圧と基準電圧との差Vに基づいて、増幅装置11の増幅率を変え、発音装置1から出力される告知音の音圧レベルを制御する。すなわち、音声信号電圧(音圧)と基準電圧(基準音圧)の差Vに基づいて、音圧制御器15が発音装置1から出力される音声の音圧レベルを制御する構成となっている。
【0025】
次に、発音装置1の構成について図2から図7に基づいて詳述する。図2は、発音装置1を表側から見た分解斜視図である。図3は、発音装置1を表側から見た斜視図である。図4は、発音装置1を裏側から見た分解斜視図である。図5は、発音装置1の平面図である。図6は、図5中の発音装置1をA−A線で切断した断面図である。図7は、図5において一点鎖線Aで囲んだ部分の拡大図である。
【0026】
発音装置1は、図2および図3に示すように、不図示の車両のナンバープレート20(以下、単にプレート20と表記する。)を平面振動板として採用する構成を有している。具体的には、発音装置1は、上述した平板状のプレート20と、プレート20の裏側に配置されるフレーム21と、フレーム21のさらに裏側に配置される略平板状の裏板22と、プレート20の裏側の略中央に装着される駆動体となる打撃装置23と備えている。
【0027】
図2に示すように、プレート20は、発音装置1の最も前側に配置される。プレート20としては、自動車において一般的に使用される中型番号標が採用されている。なお、中型番号標以外のプレート20を採用することも可能である。プレート20は、矩形状の形態を有するアルミニウムの板材から構成されている。プレート20の外形寸法は、たとえば、上下方向となる縦方向の寸法を165mm、左右方向となる横方向の寸法を330mmおよび厚さを1mmとするのが好ましい。
【0028】
図2に示すように、プレート20の裏側には、略矩形状の外形を有するフレーム21が配置されている。フレーム21は、プレート20を支持するための枠体であり、上下左右となる外方向においてプレート20よりも約10mm大きな外形寸法を有している。また、フレーム21の厚さは約7.4mmに形成されている。これより、フレーム21の外形寸法は、縦方向の寸法が185mm、横方向の寸法が350.0mmおよび厚さが7.4mmとなる。しかしながら、フレーム21の外形寸法は、当該寸法に限定されるものではない。また、フレーム21の材料として、アルミニウムが採用されている。さらに、フレーム21の表面にはアルマイト処理が施されている。
【0029】
フレーム21は、四角枠状の枠部26と、枠部26の内周側に段差状に設けられる受け部27と、枠部26の短手方向に沿って架け渡されるフランジ部28とを有する。枠部26、受け部27およびフランジ部28は、一体的に形成されている。
【0030】
受け部27は、枠部26の内側に枠状の形態で設けられている。この受け部27は、周方向内側に向かう幅寸法が約5.1mmであり、かつ枠部26の表面26aに対して裏側に向かって約1mmの段差を有するように形成されている。すなわち、幅が約5.1mm、深さが約1mmとなるようにザグリ加工を施すことによって形成されている。なお、受け部27の表面26aからの深さおよび幅寸法は、それぞれ1mmおよび5.1mmに限定されるものではない。
【0031】
フランジ部28は、枠部26の長手方向略中央において短手方向に向かって架け渡されている。具体的には、受け部27の内側に、該受け部27よりも裏側に向かって約2.9mmの段差を有する状態で架け渡されている。このフランジ部28は、略平板状の形態を有している。また、フランジ部28の上下の両端には内側に向かって略矩形字状に切り欠かれた2つの矩形切欠部30が設けられている。さらに、フランジ部28の上下方向略中央には、円形の挿入孔31が設けられている。挿入孔31は、たとえば、直径約56mmに形成されている。また、挿入孔31の裏側部分には全周に亘ってエッジ状のエッジ部31aが形成されている(図7参照)。すなわち、エッジ部31aにより挿入孔31の外周には全周に亘って段差が形成されることになる。挿入孔31のうちエッジ部31aが形成されている部分の直径は、たとえば、約58.05mmに形成されている。なお、エッジ部31aの直径は、約58.05mmに限定されるものではない。
【0032】
フレーム21において、フランジ部28を挟んだ左右の領域には合計2つの中空部32,32が形成されている。また、フレーム21の枠部26およびフランジ部28には、裏板22をネジ止めするための複数のネジ穴33が設けられている。フレーム21の表側に設けられる受け部27は、切削加工によって形成される。
【0033】
プレート20は、フレーム21の枠部26の内側に前方から後方に向かって配置される。この際、プレート20は、フレーム21の受け部27によって受け止められる。
【0034】
裏板22は、略矩形状の平板であり、フレーム21の裏側に配置される。裏板22の略中央には、円形の挿入孔34が設けられている。挿入孔34は、たとえば、直径約56mmに形成されている。また、裏板22には、フレーム21のネジ穴33と対応するように複数のネジ穴35が設けられている。裏板22は該裏板22の裏側からネジ38をネジ穴35に螺入することによってフレーム21に取り付けられる。
【0035】
本実施の形態では、プレート20とフレーム21との装着は、受け部27の表側に粘着シートを貼り、さらに、フレーム21の外周部を受け部27に圧定することにより装着される。さらに、圧定後、フレーム21の裏面側から受け部27とプレート20との境界部分に紫外線硬化型の接着剤を塗布し、紫外線を照射して該境界部分を硬化させる。なお、本実施の形態では、プレート20とフレーム21との装着は、受け部27に粘着シートを貼りことにより行ったが、装着方法は粘着シートを用いる方法に限定されるものではなく、たとえば、接着や機械的な方法を採用するようにしても良い。
【0036】
図2等に示すように、プレート20の略中央には打撃装置23が配設される。具体的には、この打撃装置23は挿入孔31に挿入される形態でプレート20の略中央に配設される。打撃装置23は、図7に示すように、平板状の打撃板40と、打撃板40の外周に取り付けられるサスペンション41と、打撃板40においてサスペンション41よりも内周側に取り付けられる駆動用コイル42と、磁気回路43とを有する。
【0037】
打撃板40は、プレート20の裏側における略中央に配置される。この打撃板40は、直径が約50mm、厚さ約1mmのアルミニウム板から形成されており、その表面にはアルマイト処理が施されている。打撃板40の裏側における略中央には駆動用コイル42が取り付けられる。駆動用コイル42としては、たとえば、内径が25.9mm、巻き幅が3mmおよびインピーダンスが4Ωのボビンレスタイプのコイルを採用することができる。
【0038】
駆動用コイル42は、巻線の巻き始めおよび巻き終わりとなる端部に、たとえば、耐熱性を有する二液混合型のアクリル系接着剤を所定量塗布することによって打撃板40に対して固定される。また、駆動用コイル42は、位置出し用治具を用いて打撃板40の略中央に位置決めされる。なお、駆動用コイル42のリード線は該駆動用コイル42の付け根部となる打撃板40との接着部分より外周方向に向かって這わせ、打撃板40に接着固定させてあるが、その図示は省略するものとする。駆動用コイル42としては、たとえば、絶縁被膜に覆われた銅線を用いることが可能である。
【0039】
サスペンション41は、独立発泡性を有するリング状のクッション材から形成されている。このサスペンション41は、外径が約50mm、内径が約38mm、厚さが1mmの外形寸法を有する。サスペンション41は、粘着シートを用いて打撃板40と磁気回路43の双方に取り付けられる。すなわち、サスペンション41は、その表面が打撃板40に固定され、その裏面が磁気回路43に固定される。なお、打撃板40はプレート20に対して固定されていない。
【0040】
図7に示すように、磁気回路43は、サスペンション41を介して打撃板40の裏側に配設される。図7に示すように、この磁気回路43は、フレーム21の挿入孔31の内側に納められる。磁気回路43は、その中心軸が駆動用コイル42の中心軸と一致するように配設される。磁気回路43は、ボトムヨーク45と、マグネット46と、トッププレート47とから構成されている。
【0041】
ボトムヨーク45は、磁性材からなる磁気回路43の基盤部材であり、略有底円柱状をなしている。具体的には、ボトムヨーク45は、略円柱状の形態を有するセンターガイド部45aと、このセンターガイド部45aの裏側部分において周方向外側に向かって全周に亘って延出する載置部45bとを有する。載置部45bは、マグネット46およびトッププレート47の表側方向の位置出しを行うために設けられている。ボトムヨーク45は、鉄材にて表面処理が施されている。載置部45bは、外径が56mm、厚さが1.5mmの円板形状を有する。また、センターガイド部45aは、直径が25.6mm、高さが3mmの円柱形状を有する。
【0042】
載置部45bの表側には、ドーナツ状のマグネット46が載置される。このマグネット46は、センターガイド部45aの外周側に位置するように載置部45bに載置される。マグネット46としては、たとえば、外径が58mm、内径が30mmおよび厚さが1.5mmのネオジウムマグネットを用いることができる。また、マグネット46の表側には磁性材からなるドーナツ状のトッププレート47が配置される。このトッププレート47は、マグネット46と対向する位置に、マグネット46を載置部45bとで狭持せしめるように配置される。トッププレート47としては、たとえば、外径が56mm、内径が27.84mmおよび厚さが1.5mmの鉄材からなるプレートを用いることが可能である。また、トッププレート47は、鉄材の表面にクロメート処理が施されている。
【0043】
センターガイド部45aの外周部とトッププレート47の内周部との間には所定間隔を有する磁気ギャップ48が形成されている。上述したように、マグネット46の外径はトッププレート47の外径よりもわずかに大径となっている。このように構成された磁気回路43を挿入孔31に配置させると、磁気ギャップ48には、略円筒状の形態を有する駆動用コイル42が配置されることになる(図7参照)。
【0044】
磁気回路43は、ボトムヨーク45、マグネット46およびトッププレート47のそれぞれを二液混合型のアクリル接着剤によって接着することによって形成される。
【0045】
打撃装置23は、サスペンション41および駆動用コイル42が固定された打撃板40を磁気回路43に接着することによって組み立てられる。具体的には、磁気回路43のトッププレート47の表面における外周部分、すなわち、サスペンション41と対応するリング状の部分に接着剤を塗布し、当該塗布面に打撃板40に取り付けられたサスペンション41を接着する。サスペンション41と磁気回路43との接着は、たとえば、サスペンション41を打撃板40側から磁気回路43側に向かって所定時間圧定することによってなされる。このように、磁気回路43とサスペンション41を接着すると、磁気ギャップ48には駆動用コイル42が嵌まり込むことになる。
【0046】
図2および図4等に示すように、打撃装置23は挿入孔31に挿入される。図7に示すように、挿入孔31の裏側部分には全周に亘ってエッジ部31aが形成されている。また、マグネット46の外径はトッププレート47の外径よりもわずかに大径となっている。このため、打撃装置23を挿入孔31に挿入すると、トッププレート47の外径よりも大径に形成されているマグネット46がエッジ部31aに当接することで、打撃装置23が表側に移動して不安定な状態になることが防止される。すなわち、打撃装置23はフランジ部28によって係止された状態となる。
【0047】
プレート20の裏側に、打撃装置23が装着された状態で、上述した、駆動用コイル42への電気的な接続作業が行われる。この接続作業は、駆動用コイル42に設けられる不図示の端子をフレーム21に設けられる不図示の入力端子に接続することによってなされる。この接続により、駆動用コイル42への信号の入出力が可能となる。駆動用コイル42へは、制御装置2に備えられる音圧調整手段12によって制御された信号が入力される。
【0048】
裏板22は、打撃装置23が挿入孔31に配置された状態で、フレーム21の裏側に装着される。裏板22は、上述したように、フレーム21の裏側において、ネジ38を用いて装着される。
【0049】
また、裏板22の略中央には、直径約56mmの挿入孔34が形成されている。このため、図7に示すように、裏板22をフレーム21の裏側に装着した状態では、マグネット46の外周部近傍が挿入孔34の内周部近傍によって裏側から表側に向かって押圧される。換言すると、打撃装置23は、マグネット46の外周部がエッジ部31aと裏板22の挿入孔34の内周部近傍とに狭持されるように、フレーム21内に保持される。この状態で、裏板22のネジ穴35からフレーム21のネジ穴33に到達するようにネジ38を螺入させることで、裏板22とフレーム21とが固定される。なお、挿入孔34、挿入孔31および打撃装置23の中心軸線は一致しているため、磁気ギャップ48に駆動用コイル42を確実に配置することが可能である。
【0050】
このように、裏板22が装着された状態で、駆動用コイル42に接続されるリード線に入力信号を引加すると、駆動用コイル42が表裏方向に駆動し始め音声が再生される。
【0051】
次に、発音装置1の動作の一例について説明する。
【0052】
本実施の形態では、不図示の車両内に設けられた不図示の電源をONにすると、車両外部の騒音を自車両のマイクロフォン4で検出する。そして、この騒音に対応した音声信号が発音信号発生装置10に内蔵されるメモリに記憶されたオーディオデータから再生され、該音声信号が増幅装置11に出力される。さらに、増幅装置11で増幅された音声信号が、発音装置1から告知音として車外に発音される。
【0053】
具体的には、自車両のマイクロフォン4で検出された車両外部の騒音から、たとえば、帯域通過フィルタを用いて音声信号が取り出される。また、信号比較器14では、取り出された音声信号の音声信号電圧(音圧)と、基準電圧器13に予め設定した基準電圧(基準音圧)とを比較し、その差Vを算出して、音圧制御器15へ出力する。そして、音圧制御器15は、音声信号電圧と基準電圧との差Vに基づいて増幅装置11の増幅率を制御し、自車両の告知音の音圧レベルを制御する。
【0054】
このように、制御装置2によって制御された音声信号が、たとえば、正弦波として発音装置1に送信されると、駆動用コイル42が表裏方向に振幅運動を行う。すると、当該駆動用コイル42の振幅運動に伴い打撃板40も表裏方向に振幅運動し、該打撃板40がプレート20に対して接離する。すなわち、打撃板40が自身の振幅運動によってプレート20の裏面を打撃し続ける。このように、打撃板40がプレート20を打撃すると、該プレート20が振動して打撃音が発生する。そして、この打撃音が告知音として発音装置1から出力される。なお、本実施の形態では、マイクロフォン4によって十分に大きな車のエンジン音が検出された場合、発音装置1から告知音は出力されない。
【0055】
なお、本実施の形態では、20Hz〜150Hzの周波数の電圧をスイープさせながら印加すると、200rpm〜9000rpmに相当する回転数の打撃音を得ることが可能である。また、音圧は、印加電圧の大きさを変化させることにより容易に調節できる。さらに、打撃板40やプレート20の材質を変化させたり、打撃板40やプレート20の打撃面に異なる材質の板材を貼り付けたりすること等により、告知音の音質を調節することも可能である。
【0056】
以上のように構成された発音装置1では、自車両のマイクロフォン4で検出された車両外部の騒音を考慮しつつ、発音装置1から音声を発生させることが可能である。すなわち、通行人等に告知音を報知させるために、車両外部の騒音よりも大きな告知音が発音装置1から発生されるように制御装置2によって制御することができる。このため、歩行者等に対して自動車の存在を知らせることができる音声を確実に発音装置1から発生させることが可能となる。
【0057】
また、発音装置1は、自動車のナンバープレートを平面振動板とするような構成、すなわち、打撃装置23を用いてプレート20を振動させるような構成を有している。このため、コストをかけることなく、容易な構成で告知音を発生させることができる。また、自動車のナンバープレートを平面振動板として用いているため、自動車の車両の外部に露出した部分から音声を発生させることが可能となる。したがって、歩行者等に対して確実に音声を伝達させることが可能となる。また、ナンバープレートを平面振動板として用いていることから、車体の前端部および後端部に発音装置1を装着することが可能となる。したがって、前方もしくは後方にいる歩行者等に対して確実に音声を伝達することが可能となる。
【0058】
また、発音装置1は、打撃装置23でプレート20を打ち付けて音声を発生させるといった構成を有するため、打撃装置23を不図示の車両のフェンダーやバンパー等の外板の裏側に配置させ、ナンバープレート以外の場所から告知音を発生させることが可能である。また、発音装置1は、車両の外部に露出した部分に設けられているため、車内には告知音が伝達しにくい構造となり車内において静粛性を維持することが可能となる。一方、発音装置1は、遮蔽物がない状態で音声を外部に発生することが可能であることから、車外の歩行者等に対して効率良く告知音を伝達させることが可能となる。したがって、発音装置1から発生する音声が車両のボディ等に伝達することがなく、ハイブリッド車等において、運転者に対しては静粛性を維持しながら、車外の歩行者等対しては適した音声を発生させることが可能である。
【0059】
また、発音装置1は、駆動用コイル42を駆動させるといった、磁力を利用して音声を発生させる構成を有しているため、駆動源となる打撃装置23の構成の単純化を図ることができ、発音装置1を簡易に製作することが可能となる。また、磁力を利用して発音させていることから、駆動源として駆動用コイル42の代わりにモータ、ムービングコイルもしくはソレノイド等を使用でき、駆動源としての適用範囲が大きくなる。また、打撃板40やプレート20の形状や材質を変化させるといった作業により、容易に告知音の音質を調節することが可能となる。
【0060】
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限定されることなく、種々変形した形態にて実施可能である。
【0061】
上述の実施の形態では、歩行者等に車両の接近を報知させるために、発音装置1から発生される音声のみを用いているが、歩行者等に車両の接近を報知させる手段として、発音装置1からの音声とクラクション等の音声を併用するようにしても良い。
【0062】
また、上述の実施の形態では、発音装置1から発される音声には特定の方向に指向性を持たせていないが、制御装置2によって制御することで、たとえば、前方の所定の範囲や斜め前方にのみ音声が到達するように指向性を持たせるようにしても良い。特に、住宅街を走行する場合や、早朝や深夜等の静粛性を要求される状況下においては、前方および/または後方の所定の範囲にのみ音声が到達するようにするのが好ましい。
【0063】
また、ナンバープレートが地面に近い位置に存在する車種においては、発音装置1から発される音声が歩行者等に確実に到達しない場合がある。この場合、発音装置1に該発音装置1を傾斜させることが可能な傾斜手段を設け、発音装置1を上方に傾けた状態で装着させたり、発音装置1の角度を自動もしくは手動で調節できるような構成にして指向性を調節できるようにしても良い。たとえば、傾斜手段としては、発音装置1の車両に対する装着部分に軸を挿通させ、当該軸を中心として発音装置1を回転させる機構、または圧電素子を発音装置1の上下もしくは/および左右方向に対に設け、当該対の圧電素子を伸縮させて発音装置1を傾斜させる機構を挙げることができる。なお、傾斜装置20により発音装置1中のプレート20のみを傾斜させる構成としても指向性を調節することが可能である。また、発音装置1をフロントグリル近傍に装着させ、たとえば、上下左右方向に音声を発生させて指向性を持たせるようにしても良い。
【0064】
また、発音装置1を左右方向へ傾ける動きをステアリングの左右方向への切り替えに連動させたり、ウインカーの点滅に連動させたりするようにしても良い。また、本実施の形態では、駆動源として、駆動用コイル42が採用されているが、駆動源はこれらの部材に限定されるものではなく、たとえば、ソレノイド等を駆動源として採用するようにしても良い。
【0065】
また、図8から図14に示すように、たとえば、モータ51と、モータ51に取り付けられる打撃用ギヤ53と、打撃板52と、を備えた駆動体を駆動させることによってプレート20を振動させるような構成を有する車両接近報知用発音装置50(以下、単に、発音装置50という。)としても良い。具体的には、プレート20にモータ51および打撃板52を取り付け、モータ51に取り付けられる打撃用ギヤ53によって打撃板52を打撃して音声を発生させるような構成を有している。また、図8から図12に示すように、モータ51および打撃板52が固定されたプレート20の裏側には、モータ51をプレート20に対して保持するためのフレーム54および裏板55が配置されている。ここで、図13および図14に示すように、打撃用ギヤ53は、側面視して、モータ51の出力軸51aを中心とした略十字形状に形成されている。すなわち、出力軸51aを中心として周方向に沿って90度間隔を隔てた位置から合計4つの打撃部53aが径方向外方に向かって突出する形態を有している。そして、図14に示すように、モータ51を駆動して打撃用ギヤ53を回転させると、打撃部53aが打撃板52に当接することで、打撃板52が打撃用ギヤ53によって打撃される。このように、打撃部53aによって打撃板52が打撃されると、その打撃力がプレートに伝達される。これにより、プレート20が振動し、発音装置50から音声が出力される。なお、打撃部53aの数は4つに限定されるものではなく、たとえば、180度の対向位置に直線状に2つ設けるようにしても良い。また、モータ51とプレート20との間にクッション材を介在させるようにしても良い。
【0066】
図8から図10に示すように、上述したフレーム54は、発音装置1を構成するフレーム21と類似する略枠形状を呈している。このフレーム54は、フランジ部28において、円形の挿入孔31ではなく、モータ51の外形形状を有するモータ挿通孔56が形成されている点でフレーム21と相違する。また、裏板55も、発音装置1を構成する裏板22と類似する略矩形状を呈している。裏板55は、該裏板55の略中央において、円形の挿入孔34ではなく、表側から裏側に向かって押し出されたカバー状のカバー部55aが形成されている点で裏板22と相違する。このような構成から、モータ51および打撃板52が固定されたプレート20の裏側にフレーム54を配置させると、図10に示すように、モータ51がモータ挿通孔56に挿通されてフレーム54の裏側に露出する。この状態で、裏板55をフレーム54の裏側に配置させると、図11および図12に示すようにモータ51がカバー部55a内に納まり、該モータ51はフレーム54と裏板55によって取り付け位置に保持された状態となる。このため、モータ51を駆動させると打撃用ギヤ53によって確実かつ一定の力で打撃板52を打撃することができる。
【0067】
また、上述の実施の形態では、音声は合成音とされていないが、発音装置1から発される音声を自由に選択できるようにしても良いし、音声信号を合成音として任意に作製できるようにしても良い。たとえば、駆動源となるモータの出力波形を元にして音声を合成し、該モータの回転数の変化に伴った音声を発するようにすることで、走行状態に即した音声を容易に告知音として発生させることが可能となる。
【0068】
また、上述の実施の形態では、車外の騒音をマイクロフォン4によって検出しているが、検出方法はマイクロフォン4で行うことに限定されず、たとえば、振動センサ等の他の機器によって検出するようにしても良い。また、本実施の形態では、音声信号電圧(音圧)と基準電圧(基準音圧)とを比較する方法を採用しているが、このような方法に限定されるものではない。
【0069】
また、上述の実施の形態では、ナンバープレートを打撃して音声を発生させる構成とされているが、打撃する部位はナンバープレートに限定されるものではなく、たとえば、フェンダーやバンパー等、比較的面積が大きく振動板として適した部位を打撃して音声を発生させるような構成としても良い。
【0070】
また、上述の実施の形態では、発音装置1は発光するような構成とはされていないが、発音装置1を発光するような構成としても良い。たとえば、無機ELパネルや有機ELパネルを採用して発音装置1を発光させても良いし、導光板を採用して発音装置1を発光させるようにしても良い。また、発光状態を点滅させるようにしても良く、外部の状況に応じて自由に発光状態を制御できるようにしても良い。また、発光状態に合わせて音声の発音形態を制御するようにしても良い。また、発光は発音装置1において行うことに限定されるものではなく、たとえば、フレーム等にLED(Light Emitting Diode)を装着して発光させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0071】
1,50…車両接近報知用発音装置 2…制御装置 12…音圧調整手段 20…ナンバープレート(車両の一部を構成する部材、振動板) 23…打撃装置(駆動体) 40,52…打撃板(駆動体の一部) 42…駆動用コイル(駆動体の一部) 43…磁気回路(駆動体の一部) 51…モータ(駆動体の一部) 53…打撃用ギヤ(駆動体の一部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置され、車外に車両の接近を報知させるための車両接近報知用発音装置であって、
振動板として上記車両の一部を構成する部材に対し、駆動体の駆動によって上記振動板を打撃することにより音声を発生させることを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両接近報知用発音装置であって、
前記駆動体は打撃板と、磁気回路とを備えており、上記磁気回路の磁力により前記振動板を上記打撃板によって打撃することを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両接近報知用発音装置であって、
前記磁気回路の磁力により、ムービングコイルもしくはソレノイドを駆動させ、当該駆動に連動するように前記打撃板を介して前記振動板を打撃することを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項4】
請求項1項記載の車両接近報知用発音装置であって、
前記駆動体は、
モータと、
上記モータに取り付けられる打撃用ギヤと、
上記打撃用ギヤによって打撃される打撃板と、
を備え、
上記打撃板は前記振動板と上記打撃用ギヤとの間に配置され、上記打撃用ギヤによって打撃された上記打撃板を介して前記振動板が振動することを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項記載の車両接近報知用発音装置であって、
前記振動板は前記車両のナンバープレートであることを特徴とする車両接近報知用発音装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項記載の車両用接近用発音装置であって、
前記振動板から出力される音声の音圧は、制御装置に設けられる音圧調整手段によって制御されることを特徴とする車両接近報知用発音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−79501(P2011−79501A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235583(P2009−235583)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(508209990)J&Kカーエレクトロニクス株式会社 (98)
【出願人】(598146850)後藤電子 株式会社 (24)