説明

車両整備用リフト

【課題】スイングアームの先端に、エクステンションアームを介して車両受け台が装備される車両整備用リフトにあって、エクステンションアームを交換する際、着脱操作の作業性を改善する。
【解決手段】 エクステンションアーム6は、本体6aと上側連結板13とが相互に上下方向へ回動自在に連結されており、前記受け台支持部11を斜め上方に向け、上側連結板13を水平に保ったまま、連結軸12をスイングアーム5の先端の連結部8に形成されている抜き穴9に挿入し(b)、次に受け台支持部11側を下げて、下側連結板14の逃げ部15を前記連結軸12の頭出し部分に嵌合させ(c)、車両受け台7は、ブッシュ9a付きの連結軸16を受け台支持部11の抜き穴10に挿入することにより装備される(d)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイングアームの先端に、エクステンションアームを水平回動自在ならしめて取り付け、そのエクステンションアームに車両受け台が装備される車両整備用リフトに関する。
【背景技術】
【0002】
スイングアームを備えた車両整備用リフトとしては、例えば特許文献1に記載のように、左右一対の支柱に沿って互いに同調しながら昇降するキャリッジから、互いに向かい合わせとなるようにスイングアームが突出された二柱式リフトが知られており、それらのスイングアームは、水平回動及び伸縮可能に構成されている。
各スイングアームの先端には車両受け台(受け金)が装備されていて、その車両受け台を車両底面のジャッキポイントにあてがって車両を持ち上げ支持することができる。
【0003】
ジャッキポイントの配置は車種毎に異なるし、車輪が邪魔になることもあるので、車両受け台を確実にジャッキポイントにあてがおうとしても、スイングアームの回動、伸縮操作のみで対応することができない場合がある。
そこで従来、例えば特許文献2に記載のように、スイングアームの先端に車両受け台を装備したエクステンションアームを水平回動自在に取り付けて、より多くの車種に対応可能とした車両整備用リフトが開発された。
【0004】
【特許文献1】特開2002−128483号公報
【特許文献2】実用新案登録第3060623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の車両整備用リフトは、車種によってアーム長が足りなかったり逆に長すぎる場合が生ずると、異なる長さのスイングアームと付け換えをしなくては利用できない。
スイングアームをまるごと交換することは、作業が煩雑であるばかりでなく部品の調達や保管も容易ではない。
特許文献2に記載の車両整備用リフトは、スイングアームを伸縮操作すると共に、キャリッジとスイングアームとの連結部、スイングアームとエクステンションアームとの連結の二箇所を関節のように折り曲げることによって、ジャッキポイントにあてがいやすくはなっているが、車種によっては、長さや高さ等の違いによって、形態の異なるエクステンションアームを使い分けしなくてならないことも想定される。
【0006】
又、特許文献2に記載の車両整備用リフトは、スイングアームの前方へ張り出した上下二枚の板体間に連結軸を架設し、その連結軸にエクステンションアームを枢着する構造であって、連結軸は、ロックピンによって上下各板体に固定されている。
そのためエクステンションアームを交換するには、ロックピンを抜いて連結軸を一旦外し、連結されていたエクステンションアームをスイングアームから分離すると共に、交換用のエクステンションアームをスイングアームの先端に位置決めし、位置決めした状態で連結軸を再度挿通し、ロックピンで固定させなくてはならないので、交換作業が煩雑である。
又、エクステンションアームと連結軸とはそれぞれ独立した部材であるし、紛失しやすいロックピンが必須であることから、それらの部品管理にはことのほか神経を使わなくてはならない
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スイングアームの先端に、エクステンションアームを水平回動自在に取り付け、そのエクステンションアームに車両受け台を装備する車両整備用リフトにあって、前記エクステンションアーム交換時の作業性を高めることを目的とするもので、その構成は、前記エクステンションアームには、上下方向に貫通した抜き穴を有する受け台支持部が前方に向けて固定状態にて突設され、後方には、スイングアームの先端部分に上下方向へ貫設された抜き穴に対し、上側より挿し込んで水平回動自在に支持する連結軸を一体的に備えた上側連結体が上下方向へ首振り自在な状態にて突設されていると共に、前記スイングアーム先端の下面側において当接する下側連結体が固定状態にて突設されていることにある。
【0008】
そして前記連結軸を、抜き穴に挿し込んだ状態でスイングアームの下方に頭出しする長さとし、下側連結体には、スイングアームの下側に頭出しした連結軸に周接する逃げ部を形成することができ、上側連結体と下側連結体とはいずれも板状とすることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
スイングアームの先端部分に上下方向へ貫設された抜き穴に対して上方より挿し込まれた連結軸は、その連結軸と一体化されている上側連結体がスイングアーム先端の上面に当接してストッパの役目をするので、単独で抜け落ちることはない。
又、上側連結体がスイングアーム先端の上面に当接した状態では、エクステンションアームが相対的に上下方向へ首振り自在な状態となって先端が自重により下がろうとするが、下側連結体がスイングアーム下面側に当接して水平状態が維持される。
外す場合は、エクステンションアームの先を持ち上げて下側連結体をスイングアームの先端部の下にあたる領域から外に出し、真上に持ち上げることにより連結軸を上方へ抜き外せば完了する。
【0010】
そして連結軸を、抜き穴に差し込んだ状態でスイングアームの下方に頭出しする長さとし、下側連結体に、スイングアームの下側に頭出しした連結軸に周接する逃げ部を形成すれば、頭出しした連結軸が逃げ部に嵌合して確実にロックすることができるし、上側連結体と下側連結体とをいずれも板状とすれば、スイングアームとの当接面が大きくなり、剛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る車両整備用リフトを、二柱式を例に採って説明する。
図1は車両整備用リフトの全体を示した概略図であって、左右に隔てて立設された二本の支柱1,1には、それぞれキャリッジ2,2が各支柱1,1に沿って昇降自在に組み付けられており、それらのキャリッジ2,2は、いずれも支柱1,1内に組み込まれた油圧シリンダ(図示せず)により、チェーン3を介して引き上げ動作されると共に、油圧の解除で下降するようになっている。
両キャリッジ2,2の高さは互いに同調されており、又、各支柱1,1には、側面に沿ってラック1aが固着されていて、キャリッジ2に取り付けられた係止爪4との噛み合いにより落下が防止されるようになっている。
【0012】
キャリッジ2、2には、前後一対ずつのスイングアーム5,5(5,5)が互いに向かい合わせに突設され、それらのスイングアーム5,5は、基端部がいずれもキャリッジ2,2に対して水平回動自在に支持されている。
又各スイングアーム5,5は、外筒5aと内筒5bとを組み合わせた伸縮可能な二重筒構造によって長さ調整が可能になっている。
スイングアーム5の先端にはエクステンションアーム6が取り付けられ、車両受け台7はそのエクステンションアーム6に装備されている。
【0013】
尚、前記スイングアーム5の先端部分に取り付けられているエクステンションアーム6は、図2に示すように、スイングアーム5の先端部分に形成されている連結部8に、上下方向へ貫設された抜き穴9を利用して取り付けられており、その抜き穴9には、前記車両受け台7を取り付けることもできる。
【0014】
エクステンションアーム6は、左右一対の側板を上板と下板とで連結して形成されたエクステンションアームの本体6aから、上下方向に貫通した抜き孔10を有する受け台支持部11を前方に向けて固定状態にて突設し、後方には、連結軸12を備えた上側連結体である上側連結板13が、水平軸を支点として上下方向へ首振り自在な状態にて突設されていると共に、下側連結体である下側連結板14が固定状態にて突設されている。
【0015】
前記上側連結板13から真下に突出するよう上側連結板13の下側に一体的に備えられた連結軸12は、スイングアームの下方に頭出させるべく、スイングアーム5の先端に形成された連結部8(エクステンションアーム6の前方に突設された受け台支持部11)の厚さより長く形成されている。
尚、本実施例では、各抜き穴9,10にブッシュ9a,9’aを嵌め込むタイプの車両整備用リフトについて説明するが、ブッシュ9a,9’aを省略したり、抜き穴に対してネジ込むタイプのブッシュが採用されることもある。
【0016】
続いて、このように形成されたエクステンションアーム6をスイングアーム5に取り付ける手順を、エクステンションアームが利用されていない形態から説明する。
図3の(a)は、スイングアーム5の先端にエクステンションアームが装着されておらず、スイングアーム5先端の連結部8に形成された抜き穴9には、連結ネジ16にブッシュ9aが螺着された車両受け台7が装備されている。
前記連結ネジ16にブッシュ9aが螺着された車両受け台7は、ブッシュ9a付きの連結ネジ16を前記抜き穴9へ上方より挿通することによって装備されている。
エクステンションアーム6を取り付けるには、前もって図3の(b)に示すように、連結ネジ16にブッシュが螺着された車両受け台7を上方へ引き上げて抜き外すことにより、抜き穴9を解放しておく。
【0017】
次に、図4の(a)に示すように、抜き穴9へ新たなブッシュ9’aを嵌め込むと共に、エクステンションアーム6の受け台支持部11を斜め上方に向かせた状態で上側連結板13を水平に保ち、図4の(b)に示すように、連結軸12をブッシュ9’aの穴に真上から挿入する。
ブッシュ9’aの穴に挿入された連結軸12は、下端が連結部8の下方へ頭出しされる。
【0018】
連結軸12が完全に挿入されたら、図4の(c)に示すように、受け台支持部11側を自重で下げ、下側連結板14に形成されている逃げ部15を、前記連結軸12の頭出し部の周囲に密着させ、最後に、図4の(d)に示すように、受け台支持部11の抜き穴10に、前記取り外した車両受け台7の連結ネジ16をブッシュ9aが螺着されたまま挿入する。
【0019】
このようにして取り付けられたエクステンションアーム6は、上下両連結体が板状であるため、連結部8を上下から挟み込んで安定支持されるし、下側連結板に形成されている逃げ部15に、連結軸12の頭出しした部分が嵌合されるため、信頼性の高い装着状態を維持できる。
取り外す場合は、前記取り付けと逆の手順にて容易に行うことができる。
尚、図面に示されている17は、高さ調整用のナットである。
【0020】
エクステンションアームが取り付けられた車両整備用リフトは、車両受け台を車両のジャッキポイントにあてがう場合、スイングアームの回動及び伸縮操作に加え、図5に示すように、エクステンションアーム6を水平方向へ回動操作させることができるので、受け台の位置決めは頗る容易となる。
【0021】
上記実施例は二柱式を例に説明したが、スイングアーム、或いはスイングアームに相当する部材を備えていれば、門型、吊り下げ式など、異なる形式の車両整備用リフトにも適用される。
そして、下側連結体は、エクステンションアームの後方へ突出し、首振りしないように固定状態にて突設させることができれば、スライドさせてエクステンションアーム内へ格納可能に形成することもできる。
又、図6に示すように、エクステンションアームの連結軸12’を、抜き穴9に合致する大径のものに変更すれば、ブッシュを省略することができるし、高さ調整用のナットも省略し、上側連結板13を連結部8の上面に密着させるようにもできる。
ブッシュを省略した場合、下側連結板14に切り欠き形成する逃げ部15’は、前記連結軸12’の径に対応するよう変更される。
更に、連結部とエクステンションアームとの相互間には、水平回動の範囲を規制するストッパ手段を設けたり、エクステンションアームと車両受け台との相互間に、抜け止めピンやCリングなどの脱落防止手段等を設けておくことが望ましい。
【0022】
尚、実施例では板状の上側及び下側連結体を採用しているが、上側連結体は本体に対して相対的に上下方向へ回動自在、いわゆる中折れ式にするためのものであるし、下側連結体は、中折れ式のために受け台支持部が下がるのを水平に保つためのものであるから、いずれも一本、或いは複数本のロッドで形成することもでき、ロッドで形成する場合、その断面形状は自由に設定できる。
又下側連結体は、頭出しした連結軸と逃げ部とが嵌合した状態で連結部の下側に当接されるが、連結軸を頭出ししないように短くしたり、頭出しした連結軸と下側連結体とが接触しないようにして、下側連結体を連結部に密着させた状態で連結部の下側に当接させるようにもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る車両整備用リフトの概略を示した説明図である。
【図2】エクステンションアームの説明図である。
【図3】車両受け台がスイングアームに直接取り付けられている形態の説明図である。
【図4】エクステンションアームの取り付け手順を示した説明図である。
【図5】エクステンションアームの回動操作説明図である。
【図6】変更例の説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・支柱、1a・・ラック、2・・キャリッジ、3・・ラック、4・・係止爪、5・・スイングアーム、5a・・外筒、5b・・内筒、6・・エクステンションアーム、6a・・(エクステンションアームの)本体、7・・車両受け台、8・・連結部、9・・抜き穴、9a、9’a・・ブッシュ、10・・抜き穴、11・・受け台支持部,12,12’・・連結軸、13・・上側連結板、14・・下側連結板、15、15’・・逃げ部、16・・連結ネジ、17・・(高さ調整用の)ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイングアームの先端に、エクステンションアームを水平回動自在ならしめて取り付け、そのエクステンションアームに車両受け台を装備する車両整備用リフトにあって、前記エクステンションアームは、上下方向に貫通した抜き穴を有する受け台支持部が前方に向けて固定状態にて突設され、後方には、スイングアームの先端部分に上下方向へ貫設された抜き穴に対し、上側より挿し込んで水平回動自在に支持する連結軸を備えた上側連結体が上下方向へ首振り自在な状態にて突設されていると共に、前記スイングアーム先端の下面側において当接する下側連結体が固定状態にて突設されている車両整備用リフト。
【請求項2】
連結軸は、抜き穴に差し込んだ状態でスイングアームの下方に頭出しする長さを有し、下側連結体には、スイングアームの下側に頭出しした連結軸に周接する逃げ部が形成されている請求項1に記載の車両整備用リフト。
【請求項3】
上側連結体と下側連結体とがいずれも板状である請求項1又は2に記載の車両整備用リフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−290593(P2006−290593A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116145(P2005−116145)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(390018326)株式会社スギヤス (35)