説明

車両検査ラインシステム

【課題】いずれの作業位置においても検査のための操作及び検査の測定データや評価結果等の確認が容易に行うことができて作業能率を向上した車両検査ラインシステムを提供する。
【解決手段】車両検査ラインに設置した各種テスタ1、2、3、4と、これらテスタ1、2、3、4に接続され各種テスタ1、2、3、4の動作を制御すると共に各種テスタ1、2、3、4からの計測データを演算処理する演算制御装置5と、該演算制御装置5と無線により通信されて検査対象となっている車両の性能や機能の評価結果等を表示すると共に各種テスタ1、2、3、4への動作指示を行う携帯端末装置6とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車整備工場における自動車の1年目、2年目、3年目等の定期の継続検査等に係わる車両の検査及び点検に使用する車両検査ラインシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種の車両検査ラインシステムは、図4に示す如く自動車の各部の性能や機能を計測するサイドスリップテスタとブレーキテスタとスピードメータテスタとからなる複合機aと、自動車のヘッドライトの性能や機能を確認し計測するヘッドライトテスタbと、ガソリンエンジン自動車の排気ガスの成分濃度を計測する排気ガステスタcと、ジーゼルエンジン自動車の排気ガス黒煙濃度を計測するジーゼルスモークメータdと、これらテスタa、b、c、dと実配線により接続されこれらテスタa、b、c、dの作動を制御する制御機能とこれらテスタa、b、c、dからの計測データを演算処理する情報処理機能とを有する演算制御装置eと、該演算制御装置eに有線で接続され前記テスタa、b、c、dにより計測された計測値や計測値の合否判定状況等を表示する表示器fと、該演算制御装置eに有線で接続され計測データや合否判定結果等を印字するミニプリンタgと、各テスタの作動を命令したり、前記表示器fの表示切り替え等を該表示器fの上に設置され該演算制御装置eに有線で接続された受信機hに向って指定信号を発信する光通信式のリモコン送信機iとからなり、前記表示器fが車両検査ラインの天井から吊下げ設置されていた(非特許文献1参照。)。
【0003】
【非特許文献1】平成5年1月1日 株式会社バンザイ発行 自動車整備機器総合カタログ No.90Bの15頁
【0004】
そして、この従来のシステムにおいて、先ず自動車検査員は、車検証を確認しながら筆記具により車両情報(使用者の氏名、住所、自動車登録番号、車台番号、自動車の種別、用途、自家用・事業用の別、車体の形状、車名、型式、乗車定員、最大積載量、車両重量、車両総重量、原動機の型式、長さ、幅、高さ、総排気量又は定格出力、燃料の種類、等)を記入して記録し、この記録に基き現自動車のナンバプレート、車台番号、エンジン型式を確認して同一性の確認を行い、次に検査車両の各部の点検を行ってその結果を筆記具により指定整備記録簿に記入する。
【0005】
その後自動車検査員はリモコン送信機iを表示器fの受信機hに向けて操作し、検車車両の型式指定番号及び類別型式番号を入力すると演算制御装置eに保存されている該当車両の検査判定基準データが読み出される。
【0006】
次に、自動車検査員は検査車両を運転し、各テスタの計測データを取得する。即ち始めに検査車両の前軸を複合機aのサイドスリップ踏板に真っ直ぐに乗り入れて該踏板の前方側端位置でリモコン送信機iを受信機hに向けて操作してサイドスリップ計測データを取得する。検査員は表示器fの判定画面で、取得したサイドスリップ値が道路運送車両法の「自動車の保安基準」(以下、保安基準という)に適合していればサイドスリップ検査を終了する。
【0007】
その後、検査車両が例えばFF車即ち前輪駆動車の場合、検査車両の前軸を前記複合機aの2本のローラの中間にあるリフト位置まで移動させ、検査車両の前軸タイヤがリフトに乗るまで前進して停止する。この時、リモコン送信機iを受信機hに向けて操作して該複合機aのリフトの下降制御を行い、該複合機aをスピード計測モードに切替えて、検査車両の前軸タイヤを該複合機aの2本のローラ上に乗せ、検査車両のアクセルを踏み込み、速度が規定速度に達したときにリモコン送信機iを受信機hに向けて操作して計測データを取得し、アクセルペダルを離す。自動車検査員は表示器fの判定画面で取得した速度値が保安基準に適合していればスピードメータ検査を終了する。
【0008】
次に自動車検査員はリモコン送信機iを受信機hに向けて操作して該複合機aローラ駆動モータの回転開始制御を行って、該複合機aをブレーキ計測モードに切替え、検査車両のブレーキペダルを踏んで前軸のブレーキ制動力を計測し、表示器fの画面計測データを見ながら制動力値が最大になった瞬間にリモコン送信機iを受信機hに向けて操作して計測データを取得する。そして自動車検査員は表示器fの判定画面で取得したブレーキ制動力値が保安基準に適合していれば前軸ブレーキ検査を終了し、リモコン送信機iを受信機hに向けて操作してローラ駆動モータの回転停止制御及びリフト上昇制御を行う。その後、自動車検査員は検査車両の後軸タイヤを前記複合機aの2本のローラの中間にあるリフト位置まで移動して前述の同様の検査を行い、前軸ブレーキ制動力値、後軸ブレーキ制動力値及び駐車ブレーキ値が保安基準に適合していればブレーキ検査を終了する。
【0009】
次に自動車検査員は検査車両をヘッドライトテスタbの規定の計測位置に移動しヘッドライトを点灯及びボンネットを開けてからリモコン送信機iを受信機hに向けて操作しヘッドライトテスタbを検査車両の右灯の正対位置までの移動と計測の制御を行い、その計測結果に応じてヘッドライトの軸合わせと計測データを取得する。そして表示器fの判定画面で取得した右灯の光度値及び照射方向値が保安基準に適合していれば右灯のヘッドライト検査を終了し、保安基準に適合しなければその場で工具によりヘッドライトの照射方向の調整を行う。
【0010】
次に自動車検査員はリモコン送信機iを受信機hに向けて操作してヘッドライトテスタを左灯の正対位置までの移動と計測制御とを前述と同様に行う。そして表示器fの判定画面で取得した左灯の光度値及び照射方向値が保安基準に適合していればボンネットを閉めてヘッドライト検査を終了する。保安基準に適合しなければその場で工具によりヘッドライトの照射方向の調整を行う。
【0011】
次に自動車検査員は検査車両の後方に移動して該検査車両の排気口に排気ガステスタc又はジーゼルスモークメータdのプローブを入れる。その後、自動車検査員は検査車両に乗り込みアクセルを全開にしたときにリモコン送信機iを受信機hに向けて操作して計測データを取得する。表示器fの判定画面で取得したCO値及びHC値、又は、ジーゼル黒煙濃度が保安基準に適合していれば排気ガス検査を終了する。
【0012】
自動車検査員は指定整備記録簿に表示器fの検査結果画面を見ながら検査データを記入する。或いはリモコン送信機iを受信機hに向けて操作してミニプリンタgに計測検査データ、判定結果を印字させ、指定整備記録簿に貼付する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記従来の車両検査ラインシステムの表示器を設置する場所は、天井から吊下げる又は壁面に設置するしかなく、通常はどこの作業位置からでも見渡せる位置に天井から吊下げて設置される。このため、設置工事に多くの設備費用と設置工事費用を必要とする。
【0014】
また、検査員は表示画面確認及びリモコン操作の都度に表示器及び表示器上部に設置されているリモコン受信機の方に注意を払う必要があり、リモコン送信機と受信機の間に障害物が存在すると通信ができない等の問題点もあった。更に、外光、蛍光灯等の影響で光通信式リモコン送受信に影響を与える場合があり、又、表示器の表示の確認作業に困難を伴う場合もあった。
【0015】
本発明は、前述の従来の課題を解決し、いずれの作業位置においても検査のための操作及び検査の測定データや評価結果等の確認が容易に行うことができて作業能率を向上させると共に、設備費用及び設置工事費の低減を計った車両検査ラインシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するため本発明の車両検査ラインシステムは、車両検査ラインに設置した各種テスタと、該各種テスタに接続され該各種テスタの動作を制御すると共に該各種テスタからの計測データを演算処理する演算制御装置と、該演算制御装置と無線により通信されて検査対象となっている車両の性能や機能の評価結果等を表示すると共に各種テスタへの動作指示を行う携帯端末装置とから構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検査員は携帯端末装置に表示された車両の性能や機能の評価結果等を見ながら該携帯端末装置により各種の動作指示を行うことができるため、従来の如く別に設置された表示器を見る煩わしさや、操作指示のために表示器の上に設置されている受信器の方向を向く煩わしさから解放されると共に表示器を設置するための経費を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は、本発明による車両検査ラインシステムの第1実施例の構成を示す説明図である。図中、1は検査対象となっている車両の各部の性能や機能を計測するためのサイドスリップテスタ、ブレーキテスタ、スピードメータテスタで構成された複合機、2は、車両のヘッドライトの性能や機能を計測するヘッドライトテスタ、3は、ガソリンエンジン自動車の排気ガスの成分濃度を計測する排気ガステスタ、4は、ジーゼルエンジン自動車の排気ガス中の黒煙濃度を計測するジーゼルスモークメータであり、これらテスタ1、2、3、4は、それぞれ信号線により、各種テスタを制御すると共にこれらテスタ1、2、3、4からの計測データを演算処理する演算制御装置5に接続されている。
【0020】
6は携帯端末装置であり、表示画面に演算制御装置5と接続されている各種テスタ1、2、3、4の制御モードや各種テスタで得られた計測値、演算処理された評価結果等が表示され、また、タッチパネルにより各種の動作指示を行うことができるように構成されている。
【0021】
そして、これら携帯端末装置6と演算制御装置5は無線により通信されており、各種テスタ1、2、3、4の計測データ等が該演算制御装置5を介して該携帯端末装置6に送信されると共に、該携帯端末装置6から各種テスタ1、2、3、4への動作指示等が前記演算制御装置5に送信される。
【0022】
尚、無線方式としては、従来の赤外線を利用した方式と異なり、機器間に障害物があっても影響が少ないブルートゥース(Bluetooth)の通信方式を採用している。
【0023】
7は計測値や評価結果等を印字出力するためのミニプリンタであり、ブルートゥース無線により前記携帯端末装置6に接続されており、該携帯端末装置6の動作指示に従って印字出力させることができる。
【0024】
8はデジタルカメラであり、該デジタルカメラ8は前記携帯端末装置6に搭載されており、必要に応じて車体等を撮影し、計測値や評価結果等と共に画像データとして前記ミニプリンタ7に送信し、印字出力することができるようにした。
【0025】
9は指定整備記録簿に必要事項を記入し、記入結果を保存するデジタルペンであり、ブルートゥース方式の無線により前記携帯端末装置6に接続されている。
【0026】
10はヘッドホンマイクであり、前記携帯端末装置6と接続されて、各種動作指示を音声で行うことができるようにした。
【0027】
以下に、この実施例の車両検査ラインシステムの具体的な動作を説明する。
【0028】
先ず自動車検査員が車検証を確認しながら筆記具により車両情報(使用者の氏名、住所、自動車登録番号、車台番号、自動車の種別、用途、自家用・事業用の別、車体の形状、車名、型式、乗車定員、最大積載量、車両重量、車両総重量、原動機の型式、長さ、幅、高さ、総排気量又は定格出力、燃料の種類、等)を指定整備記録簿に記入して記録する。
【0029】
次に自動車検査員は予め検査車両の諸元データ(車両番号、各軸重、ヘッドライト高さ、灯式の種別、エンジン種類、等)を携帯端末装置6の諸元入力画面をタッチして入力する。該携帯端末装置6には諸元データにより検査車両の各テスタの判定を行う判定値がセットされる。
【0030】
次に自動車検査員は検査車両の車検証と該検査車両の車両ナンバプレート、車体番号及びエンジン型式を確認して同一性の確認を行う。
【0031】
そして自動車検査員が検査車両の車両点検(定期点検)を行い、その結果を筆記具で指定整備記録簿に手記入する。
【0032】
自動車検査員は検査車両を運転し、各テスタの計測データを取得する。始めに自動車検査員は検査車両に乗った状態で検査車両の前軸を複合機1のサイドスリップ踏板に真っ直ぐに乗り入れて踏板の前方側端位置で携帯端末装置6を操作し、この操作による制御信号を無線により受信した演算制御装置5からの指令信号により複合機1からの計測データを該演算制御装置5との無線通信により携帯端末装置6に伝送する。該携帯端末装置6において計測データを判定値のデータと比較して該計測データのサイドスリップ値が保安基準に適合しているか否か判断してその評価結果を表示し、適合していればサイドスリップ検査を終了する。
【0033】
その後検査車両が例えばFF車即ち前輪駆動車の場合、前記複合機1の2本のローラの中間にあるリフト位置まで検査車両の前軸タイヤが乗るまで検査車両を前進して停止し、携帯端末装置6を操作するとこの操作による制御信号が無線通信により演算制御装置5に伝送され、該演算制御装置5からの制御信号により該複合機1のリフトの下降制御を行うと共に該複合試験機1をスピード計測モードにし、検査車両の前軸タイヤを複合機1のローラ上に乗せる。そして自動車検査員は検査車両のアクセルを踏み速度が規定速度に達した所で携帯端末装置6を操作し、この操作により前述と同様の指令信号により複合機1からの計測データを取得しアクセルペダルを離す。そして該携帯端末装置6において前記計測データを判定値のデータと比較し合否を判断して評価結果を得ることにより速度値が保安基準に適合していればスピードメータ検査を終了する。
【0034】
次に自動車検査員は携帯端末装置6を操作しこの操作により前述と同様に演算制御装置5からの制御信号で複合機1のローラ駆動モータの回転開始制御を行うと共に複合機1をブレーキ計測モードに切り替える。自動車検査員は検査車両のブレーキペダルを踏込んで、前軸タイヤのブレーキ制動力を計測する。その時、携帯端末装置6の画面の計測データを見ながらブレーキ制動力値が最大になった瞬間に携帯端末装置6を操作して前述と同様に計測データを取得する。そして該携帯端末装置6において前記計測データを判定値のデータと比較して合否を判断して評価結果を得、携帯端末装置6の判定画面で取得したブレーキ制動力値が保安基準に適合していれば前軸ブレーキ検査を終了し、携帯端末装置6を操作してローラ駆動モータの回転停止制御及びリフト上昇制御を行う。
【0035】
次に自動車検査員は検査車両の後軸タイヤを前記複合機1の2本のローラの中間にあるリフト位置まで移動して停止し、携帯端末装置6を操作して後軸ブレーキ制動力検査と駐車ブレーキ制動力検査を前述と同じように行う。自動車検査員は携帯端末装置6の判定画面で取得した前軸ブレーキ制動力値、後軸ブレーキ制動力値及び駐車ブレーキ値が保安基準に適合していればブレーキ検査を終了する。
【0036】
自動車検査員は検査車両をヘッドライトテスタ2手前の位置に移動しヘッドライトを点灯及びボンネットを開けてから、携帯端末装置6を操作により前述と同様に演算制御装置5からの制御信号でヘッドライトテスタ2を検査車両の右灯の正対位置まで移動し、更に携帯端末装置6の計測開始制御信号を無線により受信した演算制御装置5からの指令によりヘッドライトテスタ2からの計測データを得ることができ、この計測結果に応じてヘッドライトの軸合わせを行い、該携帯端末装置6において軸合せ後の計測データと判定値のデータと比較して合否を判断して評価結果を得、携帯端末装置6の判定画面で取得した右灯の光度値及び照射方向値が保安基準に適合していれば右灯のヘッドライト検査を終了する。保安基準に適合しなければその場で工具によりヘッドライトの照射方向の調整を行う。
【0037】
次に、自動車検査員は携帯端末装置6を操作して前述と同様にヘッドライトテスタを左灯位置まで移動及び計測制御を行い、更に携帯端末装置6を操作して左灯の光度及び照射方向検査を前述と同じように行う。携帯端末装置6の判定画面で取得した左灯の光度値及び照射方向値が保安基準に適合していればボンネットを閉めてヘッドライト検査を終了する。保安基準に適合しなければその場で工具によりヘッドライトの照射方向の調整を行う。
【0038】
次に自動車検査員は検査車両の後方に移動して該検査車両の排気口にガソリンエンジン自動車ならば排気ガステスタ3又はジーゼルエンジン自動車ならばジーゼルスモークメータ4のプローブを入れる。その後、自動車検査員は検査車両に乗り込みアクセルを全開にしたときに携帯端末装置6を操作してCO値及びHC値又はジーゼル黒煙濃度の計測データを得る。そして該携帯端末装置6において該計測データと判定値と比較して合否を判断して評価結果を得、携帯端末装置6の判定画面で取得したCO値及びHC値、又は、ジーゼル黒煙濃度が保安基準に適合していれば排気ガス検査を終了する。
【0039】
そして、これらの検査が終了した後、自動車検査員は指定整備記録簿に携帯端末装置6の検査結果画面を見ながら計測結果データを記入するか又は、携帯端末装置6を操作してミニプリンタ7に計測検査データ、判定評価結果を印字させ、指定整備記録簿に貼付する。
【0040】
ここで、自動車検査員が指定整備記録簿に車検証を見ながら車両情報を記入する際に、デジタルペン9を使用して記入することにより、デジタルペン9内部のメモリに指定整備記録簿の画像データが保存される。この画像データは携帯端末装置6へブルートゥース無線により転送される。携帯端末装置6に転送された画像データの位置情報より上記車両情報は携帯端末装置6で文字認識を行い文字データに変換し保存される。
【0041】
携帯端末装置6に搭載されたデジタルカメラ8では車両ナンバプレート、車台番号、エンジン型式等の画像を撮り保存される。自動車検査員は携帯端末装置6の表示画面でこの画像データと転送されてきた車両情報を比較して検査車両が車検証の記載事項と一致しているか確認する。
【0042】
そして、自動車検査員はその他の必要な項目も同様にしてデジタルペン9を用いて指定整備記録簿に記入すると共に、記入データを携帯端末装置6に転送して、携帯端末装置6に転送された画像データの位置情報により検査車両に必要な全ての点検項目及び他各種記載項目が記入されているかどうかを携帯端末装置6の点検チェックプログラムにより行い、点検項目及び他各種記載項目に記入漏れが無いことを確認する。点検項目に記入漏れがあった場合は携帯端末装置6の表示で警告メッセージを表示して自動車検査員に注意を促す。記入漏れがあった場合、自動車検査員は指定整備記録簿を再度確認して記入漏れしている項目の記入を行う。
【0043】
次に、自動車検査員は検査車両を再び車両検査ラインに移動し携帯端末装置6の表示パネルをタッチして、又は、ヘッドホンマイク10を用いて車両番号を読み上げ携帯端末装置6の音声認識機能により携帯端末装置6のキータッチ操作と同一の操作をさせて、車両ナンバプレートの下4桁を入力する。
【0044】
携帯端末装置6の画面には入力に対応した車両番号の候補が表示される。該当する車両番号を選択して、車両情報が存在するか確認する。デジタルペン9で入力された又は既に保存された車両情報がある場合、車両情報は既に存在しているので入力しなくても良いが、車両情報が無い場合は携帯端末装置6の画面に従って表示パネルをタッチして車両情報を入力する。これにより、該携帯端末装置6に新たに車両情報が記憶されることになる。次に、携帯端末装置6に表示されている車両情報が指定整備記録簿及び車検証と照合して入力に間違いがないか確認する。
【0045】
次に、携帯端末装置6の計測メニューで検査を行う車両検査ラインのテスタを選択して、継続検査に必要な検査を行う。それぞれの検査で車両情報に従った判定を行い、道路運送車両の保安基準に適合しているか確認を行う。全ての検査が終了すれば、携帯端末装置6に表示される結果画面を確認する。その後、携帯端末装置6より、ミニプリンタ7に無線で印字データを転送して車両検査データ及びデジタルカメラ8の画像データを印字することが可能となる。自動車検査員は携帯端末装置6の検査結果画面、又は、ミニプリンタ7で印字された検査データの車両番号とデジタルカメラ8の画像データを照合して再度、同一性の確認が行える。
【0046】
自動車検査員がデジタルペン9で指定整備記録簿の「検査機器等による検査」項目に上記の車両検査データを見ながら記入する。記入した後、デジタルペン9の画像データは携帯端末装置6へブルートゥース無線により転送する。携帯端末装置6に転送された画像データの位置情報により車両検査データの文字認識を行い数値コードに変換し保存する。
【0047】
これらのデジタルペン9で記入した車両検査データと携帯端末装置6が演算制御装置5より取得・保存した車両検査データを照合して異なっていれば、警告メッセージを携帯端末装置6の画面に表示する。自動車検査員はこれらのメッセージを見ることによって指定整備記録簿に正しく車両検査データが記入できたかをリアルタイムに確認出来る。
【0048】
以上、本願発明の車両検査ラインシステムにすることにより、携帯端末装置6の画面上に自動車の各部性能・機能を確認・計測する各テスタの計測データ及び評価結果が表示されるため、表示装置を別に設ける必要がなくなる。
【0049】
すなわち、多くの車両検査ラインに設置されている天井吊下げ設置型の表示装置を取付ける必要がなくなるため、車検ライン設備費用の削減、設備工事材料の削減、表示装置と演算制御装置を接続する実配線も必要なくなり、設置工事費用の大幅な節減が出来るとともに、設置工事のための高所作業の危険性の排除を検討する必要がなくなり、安全な工事を進めることが出来る。
【0050】
又、ブルートゥース無線通信による伝送を採用した携帯端末装置を設置した車両検査ラインシステムにすることにより、リモコン送信機と受信機の間に障害物が存在しても障害物に影響されること無く確実に信号の伝送をすることが出来るため、自動車検査員が自動車の各部性能・機能を確認・計測する各テスタの操作指示を送信したり、自動車の各部性能・機能を確認・計測する各テスタの計測データの取得/表示をさせたりする際に携帯端末装置を信号受信機の方向に向ける必要が無く、各テスタ上にて計測中に必要とする信号送信時も携帯端末装置に表示される計測データの状況を確認しながら確実にデータの保存指令を送信することが出来、自動車検査員の作業を大幅に軽減することができる。
【0051】
更に、ブルートゥース通信を受信可能なミニプリンタを設置した車両検査ラインシステムにすることにより、ミニプリンタを配線接続することなく任意の場所に設置することが出来、自動車の各部性能・機能を確認・計測する各テスタの計測結果データを印字させることが出来るので、計測結果データを帳票に転記することを省略することが出来たり、表示装置に表示される計測結果データを手記入によりメモしたりする必要がなくなり、自動車検査員の作業簡略化が図れる。
【0052】
又、車両ナンバプレート、車台番号、エンジン型式等の画像を携帯端末装置のデジタルカメラにより撮影する車両検査ラインシステムにすることにより、携帯端末装置からの印字指令によりミニプリンタによる計測結果データの印字時に、画像データも同時伝送し、車両同一性確認のデータとして同時にミニプリンタに印字することが出来、車両情報の帳票への記入確認が容易に実施することが出来る。
【0053】
又、ヘッドホンマイクを設置し、自動車検査員の音声指示を携帯端末装置上画面にある自動車の各部性能・機能を確認・計測する各テスタの作動操作をさせる音声認識機能と音声合成機能を設置した携帯端末装置を持つ車両検査ラインシステムにすることにより、自動車検査員は携帯端末装置画面上の操作キーを押す必要がなくなり、各テスタの操作を、言葉を発することにより可能であり、検査中の車両操作に集中することが出来て安全に作業を進めることが出来る。
【0054】
又、指定整備記録簿にデジタルペンを用いて記入し、該デジタルペンと携帯端末装置を無線で接続するようにしているため、携帯端末装置で容易にデータ入力、記入漏れ検出及び誤記入検出をすることができる。
【実施例2】
【0055】
図2は本発明の車両検査ラインシステムの第2実施例の構成の説明であり、この第2実施例においては、前述の第1実施例の携帯端末装置6がブルートゥース無線通信によりホストコンピュータ11に接続されており、該ホストコンピュータ11は車両情報や顧客情報や点検検査や各種帳票作成情報を入力や保存等の処理する受付け業務を管理するプログラムを具備し、自動車の各部の性能と機能を確認し、各テスタの計測データの保存と各種情報の登録と編集と呼出しをし、後述するプリンタ12に各種帳票の印字指令を行う。
【0056】
12はプリンタを示し、該プリンタ12は前記ホストコンピュータ11に通信線により接続され、各種帳票の印字を行う。
【0057】
この第2実施例のシステムにおいては、先ず自動車検査員は車検証を確認しながらホストコンピュータ11に車両情報(使用者の氏名、住所、自動車登録番号、車台番号、自動車の種別、用途、自家用・事業用の別、車体の形状、車名、乗車定員、最大積載量、車両重量、車両総重量、原動機の型式、長さ、幅、高さ、総排気量又は定格出力、燃料の種類、等)を入力し、記録に基いて検査車両のナンバプレート、車台番号、エンジン型式を確認して同一性の確認を行う。次に、自動車検査員は検査車両の各部の点検を行い、その結果をホストコンピュータ11に入力する。そして自動車検査員は車検証と車両のナンバプレート、車台番号及びエンジン型式を確認して同一性の確認を行う。
【0058】
次に携帯端末装置6の画面パネルをタッチして車両番号(下4桁)を入力し、該車両番号のデータをホストコンピュータ11に無線により送信し、該ホストコンピュータ11は送信されたデータから検査車両の車両情報を読み出して携帯端末装置6に無線により送信し、該携帯端末装置6は該車両情報に基き保安基準に適合する判定値を決定する。
【0059】
その後、複合機1のサイドスリップテスタとスピードメータテスタとブレーキテスタ、そしてヘッドライトテスタ2及び排気ガステスタ3とジーゼルスモークメータ4の各計測を前記第1実施例と同様に順次実行する。
【0060】
また、演算制御装置5は携帯端末装置6からの要求に応じて、第1実施例と同様にして、計測結果データを携帯端末装置6に送信する。
【0061】
すなわち、自動車検査員は、第1実施例と同様にサイドスリップ検査等の一連の検査を実行し、必要な全ての点検項目が終了したことを携帯端末装置6で確認した後、計測結果のデータ等を携帯端末装置6からホストコンピュータ11に無線により送信する。
【0062】
このとき、デジタルカメラ8で撮られた車両ナンバプレート等の画像データも携帯端末装置6からホストコンピュータ11に送信することができる。
【0063】
ホストコンピュータ11では、事前に入力されている車両情報や送信された計測データ等を表示して確認できると共に、プリンタ12により指定整備記録簿を作成できる。
【0064】
また、必要に応じてデジタルカメラ8で撮影された画像データ等もプリンタ12により出力することができる。
【0065】
このように、本願発明の第2実施例によれば、ホストコンピュータ11に車両情報や計測データ等を記憶して管理することができ、また、指定整備記録簿もデジタルペン等を用いて記入することなくプリンタ12の出力により容易に作成することができる。
【実施例3】
【0066】
図3は本発明の車両検査ラインシステムの第3実施例の構成の説明であり、この第3実施例においては、前述の第2実施例の携帯端末装置6にRFID(Radio Frequency IDentification)カードのような非接触ICカード13の読み出し書込み装置(図示せず)が装備されており、又、ホストコンピュータ11にも同様の読み出し書込み装置(図示せず)が接続されている。この非接触ICカード13は、携帯端末装置6又はホストコンピュータ11の読み出し書込み装置に近付けると電磁界などで非接触により読み出しや書込みを可能とするものである。
【0067】
この第3実施例のシステムにおいては、先ず自動車検査員は車検証を確認しながらホストコンピュータ11に車両情報(使用者の氏名、住所、自動車登録番号、車台番号、自動車の種別、用途、自家用・事業用の別、車体の形状、車名、乗車定員、最大積載量、車両重量、車両総重量、原動機の型式、長さ、幅、高さ、総排気量又は定格出力、燃料の種類、等)、定期点検情報(点検項目、等)及び作業指示情報(整備項目、等)を入力し、これらのデータはホストコンピュータ11に接続された読み出し書込み装置(図示せず)を介して非接触ICカード13に車両情報及び作業指示情報として書込まれる。
【0068】
自動車検査員は携帯端末装置6に装備されている読み出し書込み装置(図示せず)を非接触ICカード13に近づけて、最初に、非接触ICカード13から同一性の確認に必要な車両情報を取得し、携帯端末装置6の画面に検査車両番号を表示させると同時に携帯端末装置6からは作業者コード、作業開始時間が非接触ICカード13に書込まれる。
【0069】
自動車検査員は携帯端末装置6に表示されている検査車両ナンバプレート、車台番号、エンジン型式を検査車両で確認して同一性の確認を行い、確認完了を入力する。
【0070】
完了後、携帯端末装置6の読み出し書込み装置を介して非接触ICカード13に同一性確認の項目フラグ及び作業終了時間を書込む。
【0071】
次に、車両整備を行うために携帯端末装置6の読み出し書込み装置を非接触ICカード13に近づけて車両整備に必要な車両情報を取得し、画面に検査車両番号を表示させると同時に作業者コード、作業開始時間を非接触ICカード13に書込む。
【0072】
自動車検査員は、携帯端末装置6に表示される整備項目に従い整備作業を行って、携帯端末装置6に整備結果を入力する。
【0073】
入力後、携帯端末装置6の読み出し書込み装置を介して非接触ICカード13に整備結果データ、整備完了フラグ及び作業終了時間を書込む。
【0074】
次に、定期点検を行うために携帯端末装置6の読み出し書込み装置6を非接触ICカード13に近づけて定期点検に必要な車両情報及び定期点検情報を取得し、画面に定期点検項目を表示させると同時に作業者コード、作業開始時間を非接触ICカード13に書込む。
【0075】
自動車検査員は定期点検を行い、その結果を携帯端末装置6の定期点検項目に入力する。点検終了後、携帯端末装置6の読み出し書込み装置を介して非接触ICカード13に点検結果データ、点検完了フラグ及び作業終了時間を書込む。
【0076】
次に車両検査を行うために携帯端末装置6の読み出し書込み装置を非接触ICカード13に近づけて車両検査に必要な車両情報を取得し、画面に検査メニューを表示させると同時に作業者コード、作業開示時間を非接触ICカード13に書込む。
【0077】
そして、自動車検査員は所定の車両検査を行う。すなわち、複合機1のサイドスリップ検査等を前記第1実施例と同様に順次実施する。
【0078】
必要な検査の全てが完了すれば携帯端末装置6の読み出し書込み装置を介して非接触ICカード13に検査結果データ、検査完了フラグ及び作業終了時間を書込む。
【0079】
以上の確認・整備・点検・検査を終了した後、自動車検査員はホストコンピュータ11の読み出し書込み装置に非接触ICカード13を近づけて書込まれている同一性確認の項目フラグ、整備結果データ等のデータを読み込む。
【0080】
ホストコンピュータ11では、読み込まれた整備結果データ、点検結果データ、検査結果データ等を表示画面で確認できると共に、指定整備記録簿を作成し、プリンタ12で出力することができる。
【0081】
このように、本願発明の第3実施例によれば、指定整備記録簿、作業指示書等の検査車両に関するデータを非接触ICカード13に保存することにより、自動車検査員は非接触ICカード13より取得した情報を携帯端末装置6で見て作業工程を確認できると同時に整備・点検・検査に必要なデータを素早く間違いなく取得することができる。従って、車両番号の誤入力、不必要な整備・点検項目等は発生しなくなり、作業性が向上する。
【0082】
また、非接触ICカード13を介して車両情報更新を行うので、ホストコンピュータ11と携帯端末装置6間の通信ができない状況でも問題なく整備・点検・検査作業を行うことができると共に同一性の確認、車両整備、定期点検、車両検査を別々の携帯端末装置6を使用して作業を行うことが可能となり、一連の作業を分散化することができるため、作業者は各工程での作業に専念でき作業効率が向上する。
【0083】
更に、作業者や作業時間も登録されるので作業に不具合が生じたときの作業者の割出しや、作業者別あるいは車種別の作業時間の平均値等が確認できる。また、非接触ICカード13自体をユーザーカードとして顧客に配布すれば、次回検査時に同じ車両が入庫した場合、データ入力作業が軽減及び過去データとの比較が容易となり顧客管理及び車両カルテとして利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の車両検査ラインシステムは、自動車整備工場において、車両の点検整備を行う際に必要なデータ等を携帯端末装置に表示し、表示された計測データ等を確認しながら作業できるようにしたものであるが、このような車両の点検整備に限定されるものではなく、各種機器・装置等の点検を必要とする分野に利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第1実施例を示す車両検査ラインシステムの構成図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す車両検査ラインシステムの構成図である。
【図3】本発明の第3実施例を示す車両検査ラインシステムの構成図である。
【図4】従来の車両検査ラインシステムの構成図である。
【符号の説明】
【0086】
1 複合機
2 ヘッドライトテスタ
3 排気ガステスタ
4 ジーゼルスモークメータ
5 演算制御装置
6 携帯端末装置
7 ミニプリンタ
8 デジタルカメラ
9 デジタルペン
10 ヘッドホンマイク
11 ホストコンピュータ
12 プリンタ
13 非接触ICカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両検査ラインに設置した各種テスタと、該各種テスタに接続され該各種テスタの動作を制御すると共に該各種テスタからの計測データを演算処理する演算制御装置と、該演算制御装置と無線により通信されて検査対象となっている車両の性能や機能の評価結果等を表示すると共に各種テスタへの動作指示を行う携帯端末装置とからなる車両検査ラインシステム。
【請求項2】
前記携帯端末装置と無線により通信されて、該携帯端末装置の指示に従って検査対象となっている車両の性能や機能の評価結果等を印字出力するプリンタを備えた請求項1に記載の車両検査ラインシステム。
【請求項3】
前記携帯端末装置はデジタルカメラを備えており、検査対象の車両のナンバプレート等を画像データとして記憶し、該車両の性能や機能の評価結果等のデータと共に該画像データを無線により送信して、プリンタで印字出力できるようにした請求項1に記載の車両検査ラインシステム。
【請求項4】
前記携帯端末装置と無線により通信されるデジタルペンを備えており、指定整備記録簿に記入された内容を画像データとして記憶し、無線により送信して、携帯端末装置のパネル画面上で記載漏れの有無及び記載内容の正邪を出来るようにした、請求項1乃至請求項3のいずれか1に記載の車両検査ラインシステム。
【請求項5】
前記携帯端末装置は音声により対話形式で評価結果等の表示や各種動作指示を行うヘッドホンマイクを備えた請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載の車両検査ラインシステム。
【請求項6】
前記携帯端末装置から無線により送信された評価結果等のデータを記憶し編集するホストコンピュータと、該ホストコンピュータに接続されて各種帳票に印字出力するプリンタとを備えた請求項1乃至請求項5のいずれか1に記載の車両検査ラインシステム。
【請求項7】
前記無線による通信はブルートゥース通信である請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項6に記載の車両検査ラインシステム。
【請求項8】
前記携帯端末装置は非接触ICカードの読み出し書込み装置を備えており、点検・整備・検査データ、作業者コード、作業時間等を該非接触ICカードにより読み書きできるようにした請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5又は請求項7のいずれか1に記載の車両検査ラインシステム。
【請求項9】
前記ホストコンピュータは非接触ICカードの読み出し書込み装置を備えており、点検・整備・検査データ、作業者コード、作業時間等を該非接触ICカードにより読み書きできるようにした請求項6又は請求項7に記載の車両検査ラインシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−20437(P2008−20437A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128886(P2007−128886)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000253444)萬歳工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】