説明

車両検査ライン

【課題】車両検査ラインの本数を増やすことなく、車両検査ライン全体のタクトタイムを短縮して生産性を高める。
【解決手段】前輪Wfのトー角度を左右対称とし、この状態でステアリングを水平位置に取り付けるステアリング位置調整ステーションS0と、ステアリング位置調整ステーションS0の下流側に、車輪Wfのホイールアライメント(トー角度)を測定し、この測定結果に基づいて車輪のホイールアライメントを調整するホイールアライメント調整ステーションS1とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組付完成車両の検査を行う車両検査ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の組付ラインの最終工程には、組付が完了した車両の操舵安定性、走行性、及び計器等の検査を行う車両検査ライン(計器ラインとも呼ばれる)が設けられる。例えば図7に示す車両検査ラインは、車輪のホイールアライメント調整を行うホイールアライメント調整ステーションS1’、ヘッドランプの光軸調整及びステアリングの切れ角の確認を行うヘッドランプ調整ステーションS2’、車両の直進走行性を確認するサイドスリップ検査ステーションS3’、車両をドラム上で定位置走行させて走行性や計器の検査を行うドラム検査ステーションS4’、ブレーキ検査を行うブレーキ検査ステーションS5’、及び、車両の下部を確認するリフト検査ステーションS6’を有する。車両検査ラインに投入された車両は、各ステーションS1’〜S6’で順次検査が施され、検査をパスした車両が出荷される。
【0003】
ホイールアライメント調整ステーションS1’には、例えば特許文献1に示されているようなホイールアライメント調整装置が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−335139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような車両検査ラインでは、検査ステーションごとに検査内容が異なるため、タクトタイムが異なる。しかし、検査時間の短いステーションにおいて車両の検査が終了しても、次のステーションの検査が終了するまで車両を移送することができないため、結局、全ステーションのタクトタイムは最も検査時間の長いステーションのタクトタイムに合わせざるを得ない。従って、車両検査ラインの中に多大な検査時間を要するステーションが一つでもあると、このステーションのタクトタイムに全ステーションのタクトタイムを合わせる必要があるため、車両検査ライン全体のタクトタイムが長くなってしまう。
【0006】
タクトタイムが長いステーションとして、ホイールアライメント調整ステーション(図7のS1’参照)が挙げられる。ホイールアライメント調整ステーションには、ホイール角度を測定する機能を有するホイールアライメント調整装置(例えば、上記特許文献1参照)が設けられる。このホイールアライメント調整装置に車両を搬入した後、まず、前輪のホイール角度を測定しながら前輪のトー角度を左右対称とし、この状態でステアリングを水平位置に取り付けるステアリング位置調整が行われる。その後、車輪のホイールアライメントを測定し、この測定結果に基づいて車輪のホイールアライメントを調整するホイールアライメント調整が行われる。このように、一つのステーションにおいて、ステアリング位置調整及びホイールアライメント調整の二つの工程が行うことで、タクトタイムが長くなる。
【0007】
従って、車両検査ライン全体のタクトタイムを短縮して生産性を高めるには、ホイールアライメント調整ステーションのタクトタイムを短くすることが有効である。しかし、工程の効率化等によるタクトタイムの短縮には限界があるため、車両検査ラインの本数を増やすことで要求される生産性に対応しているのが実情である。このように車両検査ラインの本数を増やすと、各ステーションに設けられる装置がラインの本数分だけ必要となるため、設備コストの高騰及び設備スペースの拡大を招く。
【0008】
本発明が解決すべき課題は、ラインの本数を増やすことなく、車両検査ライン全体のタクトタイムを短縮することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明は、検査内容の異なる複数の検査ステーションを有し、組付完成車両に対して各検査ステーションで順次検査が施される車両検査ラインにおいて、複数の検査ステーションが、前輪のトー角度を左右対称とした状態でステアリングを水平位置に取り付けるステアリング位置調整ステーションと、ステアリング位置調整ステーションの下流側に設けられ、車輪のホイールアライメントを測定し、この測定結果に基づいて車輪のホイールアライメントを調整するホイールアライメント調整ステーションとを有するものである。
【0010】
本発明の車両検査ラインでは、従来は一つのステーションで行われていたホイールアライメント調整及びステアリング位置調整を、二つのステーションに分けて行うようにした。すなわち、従来のホイールアライメント調整ステーションで行われていた工程から、ステアリング位置調整を分離してこれを行う別のステーションを設けた。これにより、ホイールアライメント調整ステーションのタクトタイムが短縮されることで、各ステーションにおけるタクトタイムが平準化され、車両検査ライン全体のタクトタイムの短縮が図られる。
【0011】
ところで、車両検査ラインでは、車両をドラム上で定位置走行させながら走行性の検査を行うドラム検査や、車両を後進させながら、実際に後進しているか否かを確認すると共に、バックライトの点灯を確認するバック走行検査が行われる。従来の車両検査ラインでは、車両を前進させながら行うドラム検査と、車両を後進させながら行うバック走行検査とが、一つのステーションで行われていた。
【0012】
ドラム検査は、高速(例えば100km/時以上)で走行させる必要があり、且つ、変速状態の確認やコンピュータの学習など検査項目も多いため、ホイールアライメントを調整した後に行う必要がある。一方、バック走行検査は、走行速度が遅く、且つ、バック走行及びバックライトの点灯が確認できればよいため、必ずしもホイールアライメント調整の後に行う必要はない。本発明者はこの点に着目し、バック走行検査をドラム検査から分離し、上記のステアリング位置調整ステーションに組み込む着想に至った。これにより、ドラム検査ステーションのタクトタイムが短縮され、車両検査ライン全体のタクトタイムをさらに平準化できる。また、上記のステアリング位置調整ステーションにおいて、車両をドラム上で後進走行させながら、前輪のトー角度を左右対称とすると共に、バック走行検査を行うようにすれば、ステアリング位置調整と同時にバック走行検査が行われるため、バック走行検査をステアリング位置調整ステーションに組み込むことによるタクトタイムの延長を回避することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の車両検査ラインによれば、各ステーションにおけるタクトタイムを平準化することで、ラインの本数を増やすことなく車両検査ライン全体のタクトタイムを短縮して生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両検査ラインの模式図である。
【図2】上記車両検査ラインのステアリング位置調整ステーションに設けられるステアリング位置調整装置の平面図である。
【図3】上記ステアリング位置調整装置の側面図である。
【図4a】上記ステアリング位置調整装置の角度測定装置の平面図である。
【図4b】上記角度測定装置で前輪のトー角度を測定する様子を示す平面図である。
【図5】上記ステアリング位置調整装置の平面図である。
【図6】車両のステアリング機構の平面図である。
【図7】従来の車両検査ラインの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
本発明に係る車両検査ラインは、検査内容の異なる複数の検査ステーションを有し、各検査ステーションで組付完成車両の検査が順次行われる。本実施形態の車両検査ラインは、図1に示すように、ステアリング位置調整ステーションS0、ホイールアライメント調整ステーションS1、ヘッドランプ調整ステーションS2、サイドスリップ検査ステーションS3、ドラム検査ステーションS4、ブレーキ検査ステーションS5、及び、リフト検査ステーションS6からなる。以下、各検査ステーションを、ステアリング位置調整ステーションS0を中心に説明する。
【0017】
(0)ステアリング位置調整ステーションS0
ステアリング位置調整ステーションS0では、前輪のトー角度を左右対称にした状態でステアリングを水平位置に取り付けるステアリング位置調整と、バック走行及びバックライトの点灯の確認を行うバック走行検査とが行われる。ステアリング位置調整ステーションS0には、図2に示すステアリング位置調整装置が設けられる。ステアリング位置調整装置は、車両の前輪Wf及び後輪Wr(図2では鎖線で示す)が載置されるドラム10と、前輪Wfの車幅方向間に設けられた前輪センタリング装置20と、後輪Wrの車幅方向間に設けられた後輪センタリング装置30と、前輪Wfのトー角度を測定する角度測定装置40とを備える。
【0018】
ドラム10は、車輪ごとに一対ずつ設けられる。各ドラム10は、車幅方向(図2の上下方向)の回転軸を有し、自由に回転可能とされる。ドラム10の上端部は、地面と略同一面上に配される(図3参照)。
【0019】
前輪センタリング装置20は、左右の前輪Wfを、中心線Lに関して左右対称位置に配置するためのものである。本実施形態の前輪センタリング装置20は、車幅方向に沿ってスライド可能に設けられた一対の当接部21、21と、一対の当接部21、21を、中心線Lに関して左右対称位置に維持しながら、幅方向にスライドさせるスライド機構22とを有する。
【0020】
当接部21は、ガイドレール(図示省略)で車幅方向にスライド自在に案内される。当接部21は、前輪Wfに車幅方向内側から当接するローラ21aと、ローラ21aを回転自在に支持する支持部21bとを有する。図示例では、前後方向に離隔した一対のローラ21a、21aが設けられる。各ローラ21aは、図3に示すように、回転軸が前輪Wfの半径方向に沿うように配される。尚、図3では支持部21bの図示は省略している。
【0021】
スライド機構22は、中心線L上に設けられた回転軸22aと、回転軸22aを回転駆動する駆動部(図示省略)と、回転軸22aの回転により当接部21、21を車幅方向にスライドさせるリンク機構とを有する。リンク機構は、回転軸22aを中心に回転可能なメインリンク22bと、メインリンク22bの両端と一対の当接部21、21とを連結する一対のサブリンク22c、22cとを備える。駆動部により回転軸22aを回転駆動することにより、メインリンク22b及びサブリンク22c、22cを介して一対の当接部21、21が幅方向に接近、離反される。一対の当接部21、21は、中心線Lに関して常に左右対称位置に配される。
【0022】
後輪センタリング装置30は、左右の後輪Wrを、中心線Lに関して左右対称位置に配置するものである。本実施形態の後輪センタリング装置30は、車幅方向にスライド可能に設けられた一対の当接部31、31と、一対の当接部31、31を、中心線Lに関して左右対称位置に維持しながら、幅方向にスライドさせるスライド機構32とを有する。各当接部31は、鉛直方向の回転軸を有する一つのローラ31aと、ローラ31aを回転自在に支持する支持部31bとを有する。スライド機構32は、回転軸32aと、メインリンク32bと、一対のサブリンク32cとを有する。後輪センタリング装置30は、当接部31のローラ31aの構成を除いて前輪センタリング装置20と同様の構成を成しているため、重複説明は省略する。尚、図3では、支持部31bの図示は省略している。
【0023】
角度測定装置40は、前輪Wfのトー角度、すなわち図4(b)に示す平面視における中心線L(図4(b)では中心線Lと平行な線L’を示す)と前輪Wfの走行方向Mとの間の角度θを測定するものである。本実施形態の角度測定装置40は、図4(a)に示すように、シリンダ41と、シリンダ41から伸縮可能なシリンダロッド42と、シリンダロッド42の先端に固定したスライド部材43と、スライド部材43に対して回転可能に取り付けられた回転部材44と、スライド部材43に取り付けられた測長器45と、回転部材44に取り付けられた一対のローラ46、46とを備える。スライド部材43は、シリンダロッド42の伸縮により中心線Lと直交する水平方向にスライドする。回転部材44は、鉛直方向の回転軸44aを介してスライド部材43に取り付けられ、回転軸44aを中心として自由に回転する。測長器45は、スライド部材43のうち、回転軸44aと水平方向に離隔した箇所に設けられ、スライド部材43に対する回転部材43の変位、図示例では、中心線Lと直交する水平方向の変位を測定するものである。具体的に、測長器45は伸縮可能なピン45aを有し、ピン45aの基準位置からの変位を測定可能とされる。一対のローラ46、46は、回転部材44の車幅方向内側の側面に前後方向に離隔して取り付けられ、車輪の回転方向に沿って回転可能とされる。尚、接触式の測長器45に換えて非接触式の測長器を用いてもよい。
【0024】
以下、上記構成のプレトー調整装置を用いて行われるステアリング位置調整及びバック走行検査を説明する。
【0025】
まず、車両をステアリング位置調整装置の上に搬入し、各車輪Wf、Wrをドラム10の上に配置する。そして、車両を後進させ、ドラム10の上で車両を定位置走行させる。この状態で、前輪センタリング装置20のスライド機構22の回転軸22aを回転駆動し、一対の当接部21、21を幅方向外側にスライドさせ、一対の当接部21、21で左右の前輪Wfを車幅方向内側から押圧する(図5参照)。これと同時に、後輪センタリング装置30のスライド機構32の回転軸32aを回転駆動し、一対の当接部31、31を幅方向外側にスライドさせ、一対の当接部31、31で左右の後輪Wrを車幅方向内側から押圧する。これにより、左右の前輪Wf及び後輪Wrの幅方向位置が当接部21、21及び当接部31、31によって矯正され、左右の前輪Wf及び後輪Wrが中心線Lに関して左右対称位置に配される。
【0026】
次に、ステアリング操作により、前輪Wfのトー角度を左右対称とする。具体的には、角度測定装置40により前輪Wfのトー角度を測定し、その測定結果を見ながら作業者がステアリングを操作し、左右の前輪Wfのトー角度が左右対称となるように調整する。
【0027】
ここで、角度測定装置40による前輪Wfのトー角度の測定方法を詳しく説明する。まず、図4(a)に示すように、スライド部材43と回転部材44とを並行にした状態で、測長器45のピン45aを回転部材44に当接させ、この状態を測長器45のピン45aの基準位置として設定する。次に、シリンダロッド42を伸長させてスライド部材43を車幅方向内側にスライドさせ、一対のローラ46、46を前輪Wfの側面に当接させる(図4(b)参照)。このとき、前輪Wfのトー角度θに倣って、回転部材44がピン44aを中心に回転する。この回転部材44に測長器45のピン45aを当接させ、このときのピン45の基準位置からの変位を測定する。この変位量に基づいて、回転部材44の回転量が測定され、この測定値から前輪Wfのトー角度が求められる。このように、回転部材44の回転角度を、直線方向の変位を測定する測長器45を用いて測定することで、簡単な装置で前輪Wfのトー角度を求めることができる。尚、図4(b)では、車輪Wfのトー角度θを誇張して大きく示している。
【0028】
左右の前輪Wfのトー角度が左右対称となったら、車両を停止させ、ステアリングを水平位置に取り付ける。具体的には、作業者がステアリングをステアリングシャフトから一端取り外し、ステアリングを水平位置にして再びステアリングシャフトに取り付ける。このとき、ステアリングは、完全な水平位置(切れ角0°)でステアリングシャフト2に取り付けることが理想的であるが、通常、ステアリングとステアリングシャフトはセレーション嵌合しているため、両者のセレーションの位相を合わせる必要がある。このため、ステアリング1が完全に水平位置とはならず、最大でセレーション1ピッチ分(5〜10°程度)の切れ角をもった状態でステアリングシャフトに装着される場合もあるが、このような状態も「水平位置」に含む。
【0029】
上記のステアリング位置調整において車両を後進させている間に、バック走行検査が行われる。具体的には、実際に車両が後進しているか否か(すなわち駆動輪が後進回転しているいか否か)の確認、及び、バックライトが点灯しているか否かの確認が行われる。このとき、車両の走行速度は比較的遅い速度に設定され、例えば15km/時程度に設定される。このように、バック走行検査は、車両の走行速度が遅く、且つ、比較的簡単な検査のみが行われるため、車輪Wf、Wrのトー角度を高精度に設定した状態でなくても行うことができる。従って、上記のように、バック走行検査を、ホイールアライメント調整を行う前のステアリング位置調整ステーションS0に組み込むことができる。また、ステアリング位置調整とバック走行検査とが同時に行われるため、バック走行検査を組み込むことでステアリング位置調整ステーションS0のタクトタイムが延長されることはない。
【0030】
(1)ホイールアライメント調整ステーションS1
ステアリング位置調整が完了したら、ステアリング位置調整ステーションS0から車両が搬出されてホイールアライメント調整ステーションS1のホイールアライメント調整装置(図示省略)に搬入される。ホイールアライメント調整ステーションS1では、ホイールアライメントの測定及び調整が行われ、本実施形態では、従来のホイールアライメント調整装置を用いて、前輪Wfのトー角度の測定及び調整が行われる。具体的には、車両の前輪Wf及び後輪Wrをドラム上に配置し、定位置で前進走行させ、この状態で前輪Wfのトー角度を測定する。トー角度は、例えばカメラで撮影したタイヤの画像を用いて測定される(図示省略)。詳しくは、各車輪の車軸中心高さのトレッドパターンを前方及び後方からカメラで撮影し、この撮影画像から左右車輪の前方間隔及び後方間隔を求め、この前方間隔及び後方間隔からトー角度を測定する。この他、接触式の測長器(図4参照)や、非接触式の測長器を用いる方法で、トー角度を測定することもできる。
【0031】
そして、測定したトー角度に基づいて、前輪Wfのトー角度が調整される。具体的には、例えば図6に示すステアリング機構において、ステアリング1及びステアリングシャフト2を固定した状態で、ステアリングギア3と前輪Wfのナックル5との間に設けられたタイロッド6のロッド本体6aとロッドエンド部材6bとの螺合深さを変えて、左右のタイロッド6の有効長さを調整することにより、前輪Wfのトー角度を所定値(例えば0°)に調整する。このとき、上記のステアリング位置調整工程で生じたステアリング1の切れ角の誤差を考慮して前輪Wfのトー角度を調整することで、ステアリング1の切れ角を完全に0°にした状態で前輪Wfのトー角度を0°に設定することができる。尚、後輪Wrのトー角度が調整可能な車種の場合は、前輪Wfと同じ手順でトー角度の測定及び調整を行ってもよい。
【0032】
(2)ヘッドランプ調整ステーションS2
ヘッドランプ調整ステーションS2では、ヘッドランプの光軸調整と、ステアリングの切れ角の確認が行われる。ステアリングの切れ角の確認は、ステアリングを左右それぞれに限界まで回し、このときの前輪Wfの切れ角が均等になっているかを確認することで行われる。
【0033】
(3)サイドスリップ検査ステーションS3
サイドスリップ検査ステーションS3で行われるサイドスリップ検査は、車両を所定距離だけ直進走行させ、このときの車両の車幅方向のずれが許容範囲内であるか否かを確認する。これにより、車両の直進走行性が確認される。
【0034】
(4)ドラム検査ステーションS4
ドラム検査は、前輪Wf及び後輪Wrをドラム上に配置し、車両をドラム上で前進走行させた状態で行う。具体的には、異音の有無や、計器の速度と実際の速度との一致の確認、及び、コンピュータ(CVT等)の学習などが行われる。また、AT車やMT車の場合は、トランスミッションの変速の確認も行われる。
【0035】
(5)ブレーキ検査ステーションS5
ブレーキ検査ステーションS5では、ブレーキ解除時の空回り確認、ブレーキの制動検査、パーキングブレーキの確認、及び、ABSの作動確認が行われる。ブレーキ解除時の空回りの確認は、例えば、ブレーキを解除した状態の車両の車輪をドラム上に配置し、ドラムを回転駆動して車輪を回転させたときの抵抗力を測定し、この抵抗力が所定範囲内であることを確認することにより行われる。ブレーキの制動検査は、ドラム上で車両を走行させてブレーキを踏み、このときの止まり具合や、左右の車輪の制動力の差を確認することにより行われる。パーキングブレーキの確認やABSの作動確認も、ドラム上で行われる。
【0036】
(6)リフト検査ステーションS6
リフト検査ステーションS6では、車両全体を持ち上げて、車両の下部の状態を確認するリフト検査が行われる。具体的には、ブレーキ圧を加えたときのオイル漏れの有無の確認や、ボルトの締付不足の有無の確認などが行われる。
【0037】
以上の車両検査ラインの各ステーションS0〜S6で、車両の検査が順次行われる。すなわち、各ステーションにおける検査が完了したら、各ステーションの車両が次のステーションに一斉に移送され、次のステーションで検査が行われる。これを繰り返すことで各車両に対して各種検査が順次行われる。全てのステーションの検査をパスした車両は、製品として出荷される。
【0038】
上記のように、ホイールアライメント調整ステーションS1からステアリング位置調整を分離して別のステーション(ステアリング位置調整ステーションS0)を設けたことで、ホイールアライメント調整ステーションS1のタクトタイムの短縮が図られる。また、ドラム検査ステーションS4からバック走行検査を分離してステアリング位置調整ステーションS0に組み込むことで、ドラム検査ステーションS4のタクトタイムの短縮が図られる。このように、従来の車両検査ラインにおいて検査時間が長かったホイールアライメント調整やドラム検査のタクトタイムが短縮されることで、各ステーションのタクトタイムが平準化され、車両検査ライン全体のタクトタイムが短縮されて生産性の向上が図られる。
【0039】
本発明は上記の実施形態に限られない。例えば、上記のステアリング位置調整ステーションS0において、前輪センタリング装置20の一対の当接部21、21で前輪Wfを車幅方向内側から押圧することにより、前輪Wfのトー角度を左右対称とすることができる場合は、上記の角度測定装置40によるトー角度の測定を省略することができる。具体的には、前輪センタリング装置20の当接部21、21及び後輪センタリング装置30の当接部31、31で前輪Wf及び後輪Wrを内側から押圧することにより、前輪Wf及び後輪Wrのセンタリングを行うと共に、前輪Wfのトー角度を左右対称とする。この状態を維持しながら、ステアリングをステアリングシャフトから一端取り外し、ステアリングを水平位置にして再びステアリングシャフトに装着することにより、ステアリング位置調整が完了する。
【符号の説明】
【0040】
10 ドラム
20 前輪センタリング装置
30 後輪センタリング装置
40 角度測定装置
L 中心線
M 走行方向
S0 ステアリング位置調整ステーション
S1 ホイールアライメント調整ステーション
S2 ヘッドランプ調整ステーション
S3 サイドスリップ検査ステーション
S4 ドラム検査ステーション
S5 ブレーキ検査ステーション
S6 リフト検査ステーション
Wf 前輪
Wr 後輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査内容の異なる複数の検査ステーションを有し、組付完成車両に対して各検査ステーションで順次検査が施される車両検査ラインにおいて、
前記複数の検査ステーションが、前輪のトー角度を左右対称とした状態でステアリングを水平位置に取り付けるステアリング位置調整ステーションと、ステアリング位置調整ステーションの下流側に設けられ、車輪のホイールアライメントを測定し、この測定結果に基づいて車輪のホイールアライメントを調整するホイールアライメント調整ステーションとを有する車両検査ライン。
【請求項2】
ホイールアライメント調整ステーションの下流側に、車両をドラム上で前進走行させながら走行性を検査するドラム検査ステーションを設けると共に、
ステアリング位置調整ステーションにおいて、車両をドラム上で後進走行させながら、前輪のトー角度を左右対称とすると共に、バック走行検査を行うようにした請求項1記載の車両検査ライン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−50415(P2013−50415A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189404(P2011−189404)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)