説明

車両用ウオッシャチューブ

【課題】
車両支持部表示マークを形成する作業の自動化が可能で、生産性に優れていてコスト低減が可能であるとともに認識性も良好な車両用ウオッシャチューブを提供する。
【解決手段】
車両用ウオッシャチューブは、可とう性のウオッシャチューブ本体と;ウオッシャチューブ本体の長さ方向の所定位置においてウオッシャチューブ本体の外周面の略対向する両側面に分離し、かつ全体で外周面の略2/3周以上の領域にわたって形成した支持部表示レーザマークと;を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のウインドウなどを、水などの洗浄液を噴射して洗浄するウインドウウオッシャにおいて、洗浄液を貯留するウオッシャタンクと噴射ノズルとの間を接続して洗浄液を輸送する車両用ウオッシャチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
ウインドウウオッシャは、自動車などの車両のウインドウを洗浄するために欠かせない機構であるが、車種によってウオッシャチューブの長さが多様である。また、図5に示すように、ウオッシャチューブの中間部の所定の適数箇所を例えばクリップなどの固定手段を用いて車両に支持させている(例えば、特許文献1参照。)。なお、図5において、符号3はウオッシャタンク、4はウオッシャチューブ、5はフードパネル、6は噴射ノズル、9はクリップである。また、ウオッシャタンクから噴射ノズルに至る経路を、複数のウオッシャチューブとそれらの間を接続するジョイントとで形成することもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
ウオッシャチューブの車両のクリップなどに支持させる位置を表示して、ウインドウウオッシャの組立の際に、その作業を正確かつ容易に組立を行いやすくするために、従来からウオッシャチューブの位置に車両支持部表示マークを形成している。ウオッシャチューブの組立には1人でまたは2人の作業者が共同して行うので、作業者に認識しやすい車両支持部表示マークでなければならない。車両支持部表示マークを形成した位置を正確に車両のクリップなどに一致させないと、ウオッシャタンク、噴射ノズルやジョイントなどに正しく接続することが困難になる。
【0004】
従来の車両支持部表示マークは、図1の(b)に示すように着色塩化ビニール粘着テープ51をウオッシャチューブ52の全周にわたって2層程度に巻き付けてなる構造である。
【0005】
また、従来のウオッシャチューブは、以下の工程により製造している。すなわち、最初に樹脂原料をチューブ成形機に投入してチューブを成形してからいったん巻取枠に巻取ってから別の場所において、巻取枠からウオッシャチューブを引き出して所定寸法に切断し、その後ウオッシャチューブの所定位置に着色塩化ビニール粘着テープを巻き付けて、ウオッシャチューブの製品を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平02−169350号公報
【特許文献2】特開平10−329657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術においては、着色塩化ビニール粘着テープを巻き付けて車両支持部表示マークを形成する作業を人手に頼るので手間取り、ウオッシャチューブのコストが高くなるばかりでなく、生産性が劣るとともに、周囲温度が高くなると着色塩化ビニール粘着テープが剥がれたり、粘着剤がはみ出て周囲を汚したりしやすいという課題がある。
【0008】
本発明は、車両支持部表示マークを形成する作業の自動化が可能で、生産性に優れていてコスト低減が可能であるとともに認識性も良好な車両用ウオッシャチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の車両用ウオッシャチューブは、可とう性のウオッシャチューブ本体と;ウオッシャチューブ本体の長さ方向の所定位置においてウオッシャチューブ本体の外周面の略対向する両側面に分離し、かつ全体で外周面の略2/3周以上の領域にわたって形成した支持部表示レーザマークと;を具備していることを特徴としている。
【0010】
本発明において、ウオッシャチューブは、ウオッシャタンクと噴射ノズルとの間を直接配索するように形成されていてもよいし、中間にジョイントなどが介在するように形成されていてもよい。
【0011】
また、本発明において、「ウオッシャチューブ本体」とは、ウオッシャチューブから支持部表示レーザマークを除外した残余の部分をいう。ウオッシャチューブ本体は、可とう性であって、所要の配索を行うことができる程度であればよく、その材質、直径および透光性の有無については特段限定されない。
【0012】
支持部表示レーザマークのうち、「支持部」とは、ウオッシャチューブの車両に支持される部位を意味する。また、「レーザマーク」とは、ウオッシャチューブ本体の外周面にレーザビームを照射することによって形成されたマークを意味する。
【0013】
レーザマークは、微小径のレーザビームが照射されることによってウオッシャチューブ本体の表面物質が局部的に焦げて変色することにより形成される。そして、変色することにより、当該部分がその周囲に対してマークとして識別できるようになる。マークの変質部分の深さは、1〜数μm、好適には1〜2μm程度であり、ウオッシャチューブ本体の外径が一般的な7mmの場合、肉厚が1.5mm程度であることから、ウオッシャチューブの機械的強度には実用上影響ない。
【0014】
また、支持部表示レーザマークをウオッシャチューブ本体の外周面の略対向する両側面に分離して形成することにより、断面円形のウオッシャチューブ本体の外周面に1台のレーザマーカと45°近傍の角度で一対の反射鏡をV字状に配置したレーザ反射鏡を用いて外周面の広い範囲にわたる支持部表示レーザマークを形成することが可能になる。しかし、所望によりウオッシャチューブ本体の両側面に対向して2台のレーザマーカを向かい合わせて配設して、レーザを横方向から照射するようにしても上述と同様構造の支持部表示レーザマークを形成することができる。
【0015】
さらに、「外周面の略対向する両側面」とは、支持部表示レーザマークの、ウオッシャチューブの長さ方向に沿った幅の約半分程度までウオッシャチューブの長さ方向に位置が相互にずれていることを許容する意味である。これは、両側面に分離して形成される支持部表示レーザマークを1台のレーザマーカを用いて形成する場合、レーザビームを一方の側面から他方の側面へとスキャンしてマーキングしていくため、支持部表示レーザマークの一方の側面要素を形成してから他方の側面要素を形成し終わるまでに時間差を生じ、その間にウオッシャチューブが走行して位置が変化しているからである。また、上記の程度の位置ずれであれば、全体として単一の支持部表示レーザマークとして認識できるから、実用上も問題がない。
【0016】
さらにまた、ウオッシャチューブ本体の外周面に形成する支持部表示レーザマークを全体で略2/3周以上の領域にわたって形成すれば、車両への組立時に実用上差し支えない程度にウオッシャチューブ本体を中心にしてその周囲のどのような角度範囲からでもマークを認識できることが分かった。支持部表示レーザマークが全体で略2/3周未満になると、認識しにくい角度が生じる。支持部表示レーザマークは、ウオッシャチューブ本体の外周面の全周にわたり形成されているのが望ましいが、このような支持部表示レーザマークをレーザ照射によって低コストで形成するのが困難になる。
【0017】
本発明においては、支持部表示レーザマークをレーザ照射によって形成するに際して、支持部表示レーザマークがウオッシャチューブ本体の外周面の対向する両側面に分離させた。これにより、単一のレーザマーカであっても認識性に優れた支持部表示レーザマークが容易に形成することができる。なお、支持部表示レーザマークが全体で外周面の250〜290°の範囲にわたって形成されていると好適である。この範囲であれば、支持部表示レーザマークの形成が一層容易になるとともに、認識性も問題ない。しかし、290°を超えると、支持部表示レーザマーク形成の困難度が高くなっていく。
【0018】
支持部表示レーザマークとしては、多様な表示パターンを選択することができる。例えば、複数の直線の縦横に交差したパターン、複数の直線が並列したパターンなどまたは文字や数字などを採用できる。このため、車両の特定の位置情報を含ませることが可能であるとともに、レーザ照射により形成されたマークは、色弱者であっても的確な認識が可能である。
【0019】
ウオッシャチューブの製造工程を以下のように改良することで、支持部表示レーザマークの形成が一層容易になる。すなわち、最初に原料をチューブ成形機に投入してチューブを成形した後、巻取枠に巻き取ることなしにライン上を直線状に走行しながら冷却していく途中で、ウオッシャチューブの所定位置ごとに車両支持部表示レーザマークをレーザマーカによって形成した後に、ウオッシャチューブを所定寸法に切断して、ウオッシャチューブの製品を得る。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、車両支持部表示レーザマークをウオッシャチューブ本体の外周面の対向する両側面に分離し、かつ全体で外周面の略2/3周以上の領域にわたって形成したことにより、マーキング時においては、1台のレーザマーカを用いてウオッシャチューブ成形工程においてラインを走行中にウオッシャチューブ本体に対して連続的に車両支持部表示レーザマークを形成することができるので、車両支持部表示レーザマークの形成が容易かつスピードアップすることで著しくコストダウンを図ることができる。
【0021】
また、車両への組立時においては、ウオッシャチューブ本体に対して周囲のどのような角度範囲からでも車両支持部表示レーザマークを支障なく認識でき、しかも車両支持部表示レーザマークが周囲環境の変化に対して耐久性に優れているウオッシャチューブを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を実施するための第1の形態におけるウオッシャチューブおよび従来例の要部切欠正面図および断面図である。
【図2】同じく車両支持部表示レーザマークの表示パターン例を示す図である。
【図3】同じく車両支持部表示レーザマーク形成の光学系配置図である。
【図4】同じくウオッシャチューブの製造工程図である。
【図5】従来のウオッシャチューブの車両への取付状態の例を示すエンジンルームの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0024】
図1の(a)は、本発明を実施するための第1の形態を示している。図において、ウオッシャチューブ1は、ウオッシャチューブ本体11および車両支持部表示レーザマーク12を備えている。
【0025】
ウオッシャチューブ本体11は、可とう性があり、適当な曲率で湾曲させて車両に配索することができる。また、ウオッシャチューブ本体11は、透明または黒色であることを許容する。透明なウオッシャチューブ本体11の場合、塩化ビニールを用いて形成することができる。また、黒色のウオッシャチューブ本体11の場合、塩化ビニールに質量比で10%程度のアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)を添加すると黒色にすることができる。
【0026】
また、ウオッシャチューブ本体11は、例えば外形7mm、内径4mm、肉厚1.5mmに成形されている。自動車1台当たりのウオッシャチューブ1の総延長は、車種により様々であるが、約1m程度から数mのものまであり、複数本のウオッシャチューブ1をジョイント(図示しない。)で接続する場合が多い。特に後部ウインドウに対してもウインドウウオッシャを配設する場合は、ウオッシャチューブの総延長が長くなる。
【0027】
車両支持部表示レーザマーク12は、ウオッシャチューブ本体11の長さ方向の所定位置においてウオッシャチューブ本体11の外周面の略対向する両側面に分離した一対の側面要素12aおよび12bからなる。そして、一対の側面要素12aおよび12bの周方向の長さが全体で外周面の略2/3周以上の領域にわたって形成されている。
【0028】
一対の側面要素12aおよび12bの表示パターンは、図2の(a)ないし(f)に例示するように多様なものであることが許容される。すなわち、(a)は縦横の直線が格子状をなしている。(b)は縦長の梯子状パターンを3個若干の間隔をおいて配列している。(c)は縦の複数の直線が平行に配置されている。(d)は縦長の簾状のパターン要素が2個若干の間隔をおいて配列している。(e)は縦長の格子状をなした単一のパターン要素からなる。(f)は英文字であり、MおよびKを例示している。
【0029】
表示パターンの選択と設定は、レーザマーカ2の図示を省略している制御用パソコンのキーボードを操作して容易に行うことができる。
【0030】
次に、図3を参照して車両支持部表示レーザマークを単一のレーザマーカを用いて形成する際の光学系を説明する。図において、2はレーザマーカ、3はレーザ反射鏡、LB1、LB2はレーザビームである。なお、レーザビームLB1、LB2の照射位置にウオッシャチューブ本体11が配置される。
【0031】
レーザマーカ2は、波長10.6μmのCOレーザで、印字分解能2μm、印字速度最大600文字/秒である。
【0032】
レーザ反射鏡3は、45°近傍の角度でV字状に配置した第1の反射鏡3aおよび第2の反射鏡3bからなり、レーザマーカ2の照射方向の前方に離間した位置を走行するウオッシャチューブ本体11の両側面を包囲するように配設されている。
【0033】
レーザマーカ2は、照射するレーザビームを図において左右および前後方向に走査し、レーザ反射鏡3a、3bで反射してウオッシャチューブ本体11の外周面を照射してマーキングすることができる。例えば、レーザビームLB1は、ウオッシャチューブ本体11の外周面の図において左側面に照射されたときに車両支持部表示レーザマーク12の側面要素12aを形成する。また、レーザビームLB2は、ウオッシャチューブ本体11の外周面の図において右側面に照射されたときに車両支持部表示レーザマーク12の側面要素12bを形成する。なお、車両支持部表示レーザマーク12は、茶色系に着色される。
【0034】
その結果、ウオッシャチューブ本体11の外周面の略対向する両側面に分離した側面要素12a、12bがそれぞれ形成され、それら全体で外周面の略2/3周以上の領域にわたる支持部表示レーザマーク12が形成される。
【0035】
図4は、本発明を実施するための第2の形態を示している。第2の形態は、車両支持部表示レーザマークの形成工程がチューブ成形工程とチューブ切断工程との間に位置している。この工程順序において、連続して成形された長い素管状態のチューブは、成形直後に軟化状態であるが、直線状の走行ラインを走行中に冷却して硬化する。この過程で車両支持部表示レーザマーク12がウオッシャチューブ本体11の所定位置に形成される。
【0036】
なお、レーザマーキングの工程では塩化ビニールが焦げて塩素が発生するので、局所排気を確実に行うべきである。また、長い素管状態のチューブの走行スピードは、15m/分程度に設定することができる。
【0037】
そして、車両支持部表示レーザマークが形成された後に、ウオッシャチューブ本体11が所定長さに切断されて、図1に示す第1の形態のウオッシャチューブ1が得られる。
【0038】
ウオッシャチューブの所定位置情報と所定寸法情報とを連動させてプロセスを制御することで、高速走行中に上記各工程を連続して遂行することができる。
【0039】
本形態の製造工程によれば、ウオッシャチューブを完成するまでに要する手作業を従来の半分程度まで低減することができる。このため、ウオッシャチューブのコストを大幅に低下させることが可能になった。
【符号の説明】
【0040】
1…ウオッシャチューブ、2…レーザマーカ、3…レーザ反射鏡、3a…第1の反射鏡、3b…第2の反射鏡、11…ウオッシャチューブ本体、12…車両支持部表示レーザマーク、12a、12b…側面要素、LB1、LB2…レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可とう性のウオッシャチューブ本体と;
ウオッシャチューブ本体の長さ方向の所定位置においてウオッシャチューブ本体の外周面の略対向する両側面に分離し、かつ全体で外周面の略2/3周以上の領域にわたって形成した支持部表示レーザマークと;
を具備していることを特徴とする車両用ウオッシャチューブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−143739(P2011−143739A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3802(P2010−3802)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(310000783)有限会社共栄電子 (1)
【Fターム(参考)】