説明

車両用エンジンの暖機装置

【課題】エンジン冷機時の暖機促進を行うことを可能とし、冷却水温の検出精度の低下を防止することも可能とする。
【解決手段】冷却水の取込部3と、冷却水の排出部4と、エンジン内部冷却水流路5とを備え、排出部4から排出された冷却水を取込部3に戻すための循環冷却水流路6を備え、循環冷却水流路6はウォータポンプ7と車両機器8とサーモケース9とを備え、サーモケース9は所定条件下で供給冷却水流路13,14,15への冷却水の流入を禁止する遮断弁19,20,21を備え、エンジン内部冷却水流路5を通過した冷却水をウォータポンプ7に戻すバイパス流路22と、エンジン内部の冷却水温を検出する水温センサ23とを備え、水温センサ23の検出する冷却水温が第一所定温度より低い場合に、供給冷却水流路13,14,15への冷却水の流入を禁止し、バイパス流路22のみに冷却水を流すように遮断弁19,20,21を制御する制御装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用エンジンの暖機装置に係り、特に、車両の動力源であるエンジンを冷却する冷却水の流れを制御して、エンジン冷機時のエンジンの暖機促進を目的とした車両用エンジンの暖機装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されたエンジンにおいては、冷機時のエンジン暖機を促進するため、点火時期の遅角化やエンジン回転の上昇等の暖機促進制御を行っている。しかし、エンジンは、これら暖機促進制御を行うと、燃費の悪化を招く問題がある。
このため、エンジンの異なる暖機促進の方法として、エンジン内部に流れる冷却水を早期に昇温させてエンジンの早期暖機を図る技術がある。具体的には、エンジンの冷却水流路内に流路制御弁を設け、この流路制御弁によって所定の冷却水流路を閉じることで、冷却水流路の流路長を短くしたり、冷却水温の低減を行うラジエータヘの冷却水の流入を停止する、といった技術である。
【0003】
上記内容に関する従来技術としては、特開平5−263642号(特許文献1)がある。この特許文献1は、エンジン内部を循環する冷却水をシリンダブロックやシリンダヘッドを介さずにエンジン内部で循環させるためのバイパス通路を設け、シリングヘッドに設けた水温センサの検出する冷却水温が上昇するに従って、シリンダヘッドヘ流れる冷却水の量を増やす構成としている。これより、特許文献1の技術は、エンジンの冷機時における燃焼を安定させると共に、エンジン暖機促進も図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−263642号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1では、エンジンの冷機時における燃焼を安定させることができる一方で、冷却水温を正確に検出できない不都合がある。
つまり、上記特許文献1では、エンジン冷機時にはバイパス通路に冷却水が流れているが、それ以外の冷却水通路では冷却水の流れが滞っており、さらに上記特許文献1では冷却水の流れが滞っているシリンダヘッドの冷却水通路の冷却水温を検出する構成としている。冷却水の流れが滞っている冷却水通路では、エンジン暖機後の冷却水が流れている場合よりも冷却水温の上昇が著しく、これではエンジンの暖機状況を正確に判別することができない。
エンジンが冷機時であるか、または冷機時の可能性があると判断される場合には、エンジンの燃焼の失敗を防止するために燃料噴射量を増量する制御を行っており、エンジンの暖機状況を正確に判断できないと燃料噴射量の増量時間が長くなって燃費悪化につながる問題がある。この燃費悪化を防止するためには、エンジン冷却水温の検出ポイントに応じた最適なエンジン動作を事前に実験等から求めるといった方法があるが、そのための工数は膨大であり、容易になしえることではない。
【0006】
この発明は、エンジン冷機時における冷却水の流れを制御してエンジンの暖機促進を行うことを可能とし、冷却水が局所的に昇温されることによる冷却水温の検出精度の低下を防止することも可能とした車両用エンジンの暖機装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、車両の動力源であるエンジンを冷却する冷却水の流れを制御する車両用エンジンの暖機装置において、前記エンジンは、エンジン内部に冷却水を取り込む取込部と、エンジン外部に冷却水を排出する排出部と、前記取込部及び排出部をエンジン内部で接続してエンジン内部に冷却水を流すエンジン内部冷却水流路とを備え、前記取込部と前記排出部とをエンジン外部で接続して前記排出部から排出された冷却水を前記取込部に戻すための循環冷却水流路を備え、前記循環冷却水流路は、冷却水の圧送水量を変更可能なウォータポンプと、冷却水との熱交換を行う車両機器と、前記排出口から排出された冷却水を前記車両機器に供給する供給冷却水流路が接続されたサーモケースとを備え、前記サーモケースは、所定条件下で前記供給冷却水流路への冷却水の流入を禁止する遮断弁を備え、前記エンジン内部冷却水流路を通過した冷却水を前記ウォータポンプに戻すバイパス流路と、前記エンジン内部の冷却水温を検出する水温センサとを備え、前記水温センサの検出する冷却水温が第一所定温度より低い場合に、前記供給冷却水流路への冷却水の流入を禁止し、前記バイパス流路のみに冷却水を流すように前記遮断弁を制御する制御装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明は、冷却水温が第一所定温度よりも低い場合はサーモケースに設けた遮断弁を閉じて冷却水との熱交換を行う車両機器への冷却水の流れを禁止し、且つバイパス流路を介して冷却水を所定量だけエンジン内部冷却水流路に循環させることで、エンジン内部の冷却水の局所的な昇温を防止して、冷却水温の検出精度の低下を抑制しつつ冷却水の早期昇温を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は車両用エンジンの暖機装置の概略ブロック図である。(実施例)
【図2】図2は暖機時の冷却水制御のフローチャートである。(実施例)
【図3】図3は暖機時の冷却水制御のタイムチャートである。(実施例)
【図4】図4は車両用エンジンの暖機装置の概略ブロック図である。(変形例1)
【図5】図5は暖機時の冷却水制御のフローチャートである。(変形例1)
【図6】図6は暖機時の冷却水制御のタイムチャートである。(変形例1)
【図7】図7は暖機時の冷却水制御のフローチャートである。(変形例2)
【図8】図8は暖機時の冷却水制御のタイムチャートである。(変形例2)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて、この発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。この実施例は、冷却水温が低い場合の車両機器への冷却水の流れが遮断されている時にも少量の冷却水をエンジン内部に循環させることで、冷却水の流れの滞りを防止して冷却水温を均一に昇温させることを目的としている。図1において、1は車両用エンジン(以下、「エンジン」と記す。)、2は暖機装置である。暖機装置2は、エンジン1に、エンジン内部に冷却水を取り込む取込部3と、エンジン外部に冷却水を排出する排出部4と、取込部3及び排出部4をエンジン内部で接続してエンジン内部に冷却水を流すエンジン内部冷却水流路5とを備えている。
前記エンジン内部冷却水流路5は、取込部3から取り込まれた冷却水をエンジン内部(シリンダヘッドやシリンダブロック等)の各部に分岐して流し、エンジン内部の各部を冷却後の冷却水を合流して排出部4に流す流路であり、取込部3から排出部4までの間に複数設けられている。暖機装置2は、取込部3と排出部4とをエンジン外部で接続して、排出部4から排出された冷却水を取込部3に戻すための循環冷却水流路6を備えている。
前記循環冷却水流路6は、エンジン回転数と関係なく冷却水の圧送水量を変更可能な可変容量型のウォータポンプ7と、冷却水との熱交換を行う車両機器8と、車両機器8に冷却水を分配するサーモケース9とを備えている。前記車両機器8は、スロットルバルブの凍結を防止するスロットルボディヒータ10、車室を暖房するヒータコア11、冷却水温の低減を行うラジエータ12等からなる。スロットルボディヒータ10とヒータコア11と行うラジエータ12とには、排出口4から排出された冷却水を供給する供給冷却水流路13、14、15をそれぞれ接続し、冷却水温の低減された冷却水を取込口3に還流する還流冷却水流路16、17、18をそれぞれ接続している。
ウォータポンプ7は、吸引側に各還流冷却水流路16、17、18の下流側を集合して接続し、吐出側をエンジン1の冷却水を取り込む取込部3に接続している。サーモケース9は、入口側をエンジン1の冷却水を排出する排出部4に接続し、出口側に供給冷却水流路13、14、15をそれぞれ接続している。サーモケース9は、所定条件下で各供給冷却水流路13、14、15への冷却水の流入を禁止する遮断弁19、20、21を備えている。
暖機装置2は、エンジン内部冷却水流路5を通過した冷却水をウォータポンプ7に戻すバイパス流路を備えている。この実施例のバイパス流路は、排出部4に接続されたサーモケース9からエンジン外部を通ってウォータポンプ7の吸引側に冷却水を戻す第一バイパス流路22からなる。また、暖機装置2は、エンジン内部の冷却水温を検出する水温センサ23を備えている。水温センサ23の配置場所は、第一バイパス流路22を備える場合には取込部3または排出部4またはエンジン内部冷却水流路5上のエンジン内部中央の、いずれかとする。この実施例の水温センサ23は、図1に実線で示すように、エンジン1の放熱度合いが低く冷却水温の昇温が著しい、エンジン内部冷却水流路5上のエンジン内部中央に配置している。もちろん、水温センサ23は、図1に破線で示すように、取込部3や排出部4に配置しても良い。
暖機装置2は、前記遮断弁19、20、21を制御する制御装置24を備えている。制御装置24は、エンジン1が完全に暖機した状態の冷却水温(完暖水温)を第一所定温度として設定している。制御装置24は、水温センサ23の検出する冷却水温が第一所定温度より低い場合に、供給冷却水流路13、14、15への冷却水の流入を禁止し、第一バイパス流路22のみに冷却水を流すように、遮断弁19、20、21を制御する。
また、暖機装置2は、ウォータポンプ7による圧送水量を2種類に設定し、各遮断弁19、20、21が開いている時と閉じている時とではその圧送水量を異ならせている。各遮断弁19、20、21が閉じている時の圧送水量(第二圧送水量)は、各遮断弁19、20、21が開いている時の圧送水量(第一圧送水量)よりも少ない(第一圧送水量>第二圧送水量)。制御装置24は、各遮断弁19、20、21を閉じている時の圧送水量(第二圧送水量)が、各遮断弁19、20、21を開いている時の圧送水量(第一圧送水量)よりも少なくなるように、ウォータポンプ7を制御する。
【0012】
次に作用を説明する。
エンジン1の暖機装置2は、図2に示すように、制御装置24によるエンジン暖機時の冷却水制御のプログラムがスタートすると(A01)、冷却水温が第一所定温度以上であるかを判断する(A02)。
冷却水温が第一所定温度よりも低く、判断(A02)がNOの場合は、各遮断弁19、20、21を閉じて第二圧送水量になるようにウォータポンプ7を作動し(A03)、プログラムをエンドにする(A04)。これにより、ウォータポンプ7の圧送する第二圧送水量の冷却水は、エンジン内部冷却水流路5と第一バイパス流路22との間を循環する。
一方、冷却水温が第一所定温度以上で、判断(A02)がYESの場合は、各遮断弁19、20、21を開いて第一圧送水量になるようにウォータポンプ7を作動し(A05)、プログラムをエンドにする(A04)。これにより、ウォータポンプ7の圧送する第一圧送水量の冷却水は、エンジン内部冷却水流路5と第一バイパス流路22との間を循環するとともに、エンジン内部冷却水流路5と供給冷却水流路13、14、15及び還流冷却水流路16、17、18との間を循環する。
従来は、図3に波線で示すように、バイパス流路が無い場合はウォータポンプを作動させてもエンジン内部に冷却水温が循環しないので、冷却水温が第一所定温度に達する(t2)までに時間がかかり、また、エンジン内部の冷却水温の検出精度が低く、この結果、エンジン暖機状態を正確に判断できないので、燃料噴射増量時間が延びて燃費悪化につながる。
これに対して、図3に実線で示すように、第一バイパス流路22を備えた暖機装置2は、冷却水がエンジン内部冷却水流路5と第一バイパス流路22との間を循環するので、冷却水温が第一所定温度に達する(t1)までの時間が短くなり、エンジン内部の冷却水の局所的な昇温を防止して、冷却水温の検出精度の低下を抑制しつつ冷却水の早期昇温を行うことができる。
また、水温センサ23は、エンジン1の発する熱により冷却水温が昇温しやすく、且つ昇温された冷却水温の低下しにくい、エンジン内部冷却水流路5上のエンジン内部中央や取込部3、排出部4に配置することで、冷却水温の検出精度の低下を防止できる。
このように、暖機装置2は、冷却水温が第一所定温度よりも低い場合はサーモケース9に設けた遮断弁19、20、21を閉じて冷却水との熱交換を行う車両機器8への冷却水の流れを禁止し、且つ第一バイパス流路22を介して冷却水を所定量だけエンジン内部冷却水流路5に循環させている。暖機装置2は、冷却水温が低い場合の車両機器8への冷却水の流れが遮断されている時にも少量の冷却水をエンジン内部に循環させることで、冷却水の流れの滞りを防止して冷却水温を均一に昇温させることができる。
これにより、暖機装置2は、冷却水が局所的に温められることを抑制して冷却水温の検出精度の低下を防止しつつ、エンジン1の早期暖機を可能とする。また、この暖機装置2は、正確なエンジン1の完全暖機判断が行えることにより、始動時の燃料噴射増量時間の短縮を図ることができ、燃費低減にも貢献できる。
また、この暖房装置2は、バイパス流路をエンジン外部(第一バイパス流路22)に設けることで、冷却水の局所的な昇温を防止して冷却水温の検出精度の低下を抑制しつつ冷却水の早期昇温を行うことができる。
【0013】
図4〜図6は、この発明の変形例1を示すものである。変形例1は、冷却水温の検出精度の低下を防止しつつ、実施例よりもさらにエンジンの早期暖機を可能とすること目的とする。変形例1のエンジン1の暖機装置2は、図1に示したエンジン1の暖機装置2の構成と同様の構成を有しているので、図1に示す符号を引用して説明する。ただし、エンジン内部冷却水流路5を通過した冷却水をウォータポンプ7に戻すバイパス流路は、実施例と配置が相違するので、新たな符号25を付して説明する。
図4に示すように、変形例1のエンジン1の暖機装置2は、エンジン1に、エンジン内部に冷却水を取り込む取込部3と、エンジン外部に冷却水を排出する排出部4と、取込部3及び排出部4をエンジン内部で接続してエンジン内部に冷却水を流すエンジン内部冷却水流路5とを備え、取込部3と排出部4とをエンジン外部で接続して排出部4から排出された冷却水を取込部3に戻すための循環冷却水流路6を備えている。
前記循環冷却水流路6は、冷却水の圧送水量を変更可能なウォータポンプ7と、冷却水との熱交換を行う車両機器8(スロットルボディヒータ10、ヒータコア11、ラジエータ12等)と、車両機器8に冷却水を分配するサーモケース9とを備えている。スロットルボディヒータ10とヒータコア11と行うラジエータ12とには、供給冷却水流路13、14、15をそれぞれ接続し、還流冷却水流路16、17、18をそれぞれ接続している。
ウォータポンプ7は、吸引側に各還流冷却水流路16、17、18の下流側を集合して接続し、吐出側をエンジン1の冷却水を取り込む取込部3に接続している。サーモケース9は、入口側をエンジン1の冷却水を排出する排出部4に接続し、出口側に供給冷却水流路13、14、15をそれぞれ接続している。サーモケース9は、所定条件下で各供給冷却水流路13、14、15への冷却水の流入を禁止する遮断弁19、20、21を備えている。
暖機装置2は、エンジン内部冷却水流路5を通過した冷却水をウォータポンプ7に戻すバイパス流路を備えている。変形例1のバイパス流路は、エンジン内部を通ってウォータポンプ7に冷却水を戻す第二バイパス流路25からなる。第二バイパス流路25は、上流端をサーモケース9に冷却水を排出する排出部4の近傍に接続し、下流端をウォータポンプ7の吸引側に接続している。排出部4の近傍とは、エンジン内部(シリンダヘッドやシリンダブロック)の各部に分岐して冷却水を流すエンジン内部冷却水流路5が合流して、冷却後の冷却水を排出部4に流す部分である。
また、暖機装置2は、エンジン内部の冷却水温を検出する水温センサ23を備えている。水温センサ23の配置場所は、第二バイパス流路25を備える場合にはエンジン内部冷却水流路5上のエンジン内部中央、または、第二バイパス流路25上のエンジン内部中央の、いずれかとする。この変形例1の水温センサ23は、図4に実線で示すように、エンジン1の放熱度合いが低く冷却水温の昇温が著しい、エンジン内部冷却水流路5上のエンジン内部中央に配置している。もちろん、水温センサ23は、図4に破線で示すように、第二バイパス流路25上のエンジン内部中央に配置しても良い。
暖機装置2は、前記遮断弁19、20、21を制御する制御装置24を備えている。制御装置24は、エンジン1が完全に暖機した状態の冷却水温(完暖水温)と異なる第二所定温度を設定している。また、暖機装置2は、ウォータポンプ7による圧送水量を、零(0)水量と、第一圧送水量との、2種類(零水量<第一圧送水量)に設定している。制御装置24は、第二バイパス流路25を備える場合において、冷却水温に応じてウォータポンプ7の圧送水量と各遮断弁19、20、21の開閉とを、以下のように制御する。
制御装置24は、冷却水温が第二所定温度よりも低い時は各遮断弁19、20、21を閉じてウォータポンプ7の作動を停止する。つまり、ウォータポンプ7による圧送水量は、各遮断弁19、20、21が開いている時は第一圧送水量となり、各遮断弁19、20、21が閉じている時は零水量となる。制御装置24は、冷却水温が第二所定温度よりも低く各遮断弁19、20、21を閉じている時の圧送水量が零水量になり、冷却水温が第二所定温度以上で各遮断弁19、20、21を開いている時の圧送水量が第一圧送水量になるように、ウォータポンプ7を制御する。
【0014】
次に作用を説明する。
エンジン1の暖機装置2は、図5に示すように、制御装置24によるエンジン暖機時の冷却水制御のプログラムがスタートすると(B01)、冷却水温が第二所定温度以上であるかを判断する(B02)。
冷却水温が第二所定温度よりも低く、判断(B02)がNOの場合は、各遮断弁19、20、21を閉じてウォータポンプ7の作動を停止し(B03)、プログラムをエンドにする(B04)。これにより、冷却水は、エンジン内部冷却水流路5と第二バイパス流路25とに止まる。
一方、冷却水温が第二所定温度以上で、判断(B02)がYESの場合は、各遮断弁19、20、21を開いて第一圧送水量になるようにウォータポンプ7を作動し(B05)、プログラムをエンドにする(B04)。これにより、ウォータポンプ7の圧送する第一圧送水量の冷却水は、エンジン内部冷却水流路5と第二バイパス流路25との間を循環するとともに、エンジン内部冷却水流路5と供給冷却水流路13、14、15及び還流冷却水流路16、17、18との間を循環する。
従来は、図6に波線で示すように、冷却水温の検出精度向上のために、エンジン始動からウォータポンプを作動させているので、冷却水温が第二所定温度に達する(t2)までに時間がかかり、燃料噴射増量時間が延びて燃費悪化につながる。
これに対して、図6に実線で示すように、第二バイパス流路25を備えた暖機装置2は、冷却水温が第二所定温度よりも低い時は冷却水をエンジン内部冷却水流路5とエンジン内部の第二バイパス流路25との間に止まらせるので、冷却水温が第二所定温度に達する(t1)までの時間が短くなり、エンジン内部の冷却水の局所的な昇温を防止して、冷却水温の検出精度の低下を抑制しつつ冷却水の早期昇温を行うことができる。
また、水温センサ23は、エンジン1の発する熱により冷却水温が昇温しやすく、且つ昇温された冷却水温の低下しにくい、エンジン内部冷却水流路5上や第二バイパス流路25上のエンジン内部中央に配置することで、冷却水温の検出精度の低下を防止できる。
このように、暖機装置2は、冷却水温が第二所定温度よりも低い時は各遮断弁19、20、21を閉じてウォータポンプ7の作動を停止する。暖機装置2は、冷却水温が低い場合の車両機器8への冷却水の流れが遮断されている時にはエンジン内部に冷却水を止まらせることで、冷却水温を早期に昇温させることができる。これにより、暖機装置2は、冷却水温の検出精度の低下を防止しつつ、エンジン1の早期暖機を可能とする。なお、第二所定温度は、エンジン1が完全に暖機した状態の冷却水温(完暖水温)、つまり、第一所定温度として設定しても良い。
また、この暖房装置2は、バイパス流路をエンジン内部(第二バイパス流路25)に設けることで、冷却水の局所的な昇温を防止して冷却水温の検出精度の低下を抑制しつつ冷却水の早期昇温を行うことができる。
【0015】
図7、図8は、この発明の変形例2を示すものである。変形例2は、第一所定温度と第二所定温度とを用いて、冷却水温の検出精度を向上しつつ、さらにエンジンの早期暖機を可能とすること目的とする。変形例2のエンジン1の暖機装置2は、図4に示したエンジン1の暖機装置2の構成と同様の構成を有しているので、図4に示す符号を引用して説明する。
変形例2のエンジン1の暖機装置2は、図4に示すように、エンジン1に、エンジン内部に冷却水を取り込む取込部3と、エンジン外部に冷却水を排出する排出部4と、取込部3及び排出部4をエンジン内部で接続してエンジン内部に冷却水を流すエンジン内部冷却水流路5とを備え、取込部3と排出部4とをエンジン外部で接続して排出部4から排出された冷却水を取込部3に戻すための循環冷却水流路6を備えている。
前記循環冷却水流路6は、冷却水の圧送水量を変更可能なウォータポンプ7と、冷却水との熱交換を行う車両機器8(スロットルボディヒータ10、ヒータコア11、ラジエータ12等)と、車両機器8に冷却水を分配するサーモケース9とを備えている。スロットルボディヒータ10とヒータコア11と行うラジエータ12とには、供給冷却水流路13、14、15をそれぞれ接続し、還流冷却水流路16、17、18をそれぞれ接続している。
ウォータポンプ7は、吸引側に各還流冷却水流路16、17、18の下流側を集合して接続し、吐出側をエンジン1の冷却水を取り込む取込部3に接続している。サーモケース9は、入口側をエンジン1の冷却水を排出する排出部4に接続し、出口側に供給冷却水流路13、14、15をそれぞれ接続している。サーモケース9は、所定条件下で各供給冷却水流路13、14、15への冷却水の流入を禁止する遮断弁19、20、21を備えている。
暖機装置2は、エンジン内部冷却水流路5を通過した冷却水をウォータポンプ7に戻すバイパス流路を備えている。変形例2のバイパス流路は、エンジン内部を通ってウォータポンプ7に冷却水を戻す第二バイパス流路25からなる。第二バイパス流路25は、上流端をサーモケース9に冷却水を排出する排出部4の近傍に接続し、下流端をウォータポンプ7の吸引側に接続している。排出部4の近傍とは、エンジン内部(シリンダヘッドやシリンダブロック)の各部に分岐して冷却水を流すエンジン内部冷却水流路5が合流して、冷却後の冷却水を排出部4に流す部分である。
また、暖機装置2は、エンジン内部の冷却水温を検出する水温センサ23を備えている。水温センサ23の配置場所は、第二バイパス流路25を備える場合にはエンジン内部冷却水流路5上のエンジン内部中央、または、第二バイパス流路25上のエンジン内部中央の、いずれかとする。この変形例2の水温センサ23は、図4に実線で示すように、エンジン1の放熱度合いが低く冷却水温の昇温が著しい、エンジン内部冷却水流路5上のエンジン内部中央に配置している。もちろん、水温センサ23は、図4に破線で示すように、第二バイパス流路25上のエンジン内部中央に配置しても良い。
暖機装置2は、前記遮断弁19、20、21を制御する制御装置24を備えている。制御装置24は、エンジン1が完全に暖機した状態の冷却水温(完暖水温)を第一所定温度として設定し、第一所定温度よりも低い冷却水温(冷機温度)を第二所定温度として設定(第一所定温度>第二所定温度)している。また、暖機装置2は、ウォータポンプ7による圧送水量を、零(0)水量と、第二圧送水量と、第一圧送水量との、3種類(零水量<第二圧送水量<第一圧送水量)に設定している。制御装置24は、第二バイパス流路25を備える場合において、冷却水温に応じてウォータポンプ7の圧送水量と各遮断弁19、20、21の開閉とを、以下のように組み合わせて制御する。
制御装置24は、冷却水温が第二所定温度よりも低い時は各遮断弁19、20、21を閉じてウォータポンプ7の作動を停止、つまり、ウォータポンプ7による圧送水量を零水量とする。制御装置24は、冷却水温が第二所定温度よりも低い時は各遮断弁19、20、21を閉じ、圧送水量が零水量になるようにウォータポンプ7を制御する。
また、制御装置24は、冷却水温が第二所定温度以上で第一所定温度よりも低い時は各供給冷却水流路13、14、15への冷却水の流入を禁止し、第二バイパス流路25のみに冷却水を流すように、遮断弁19、20、21を制御する。つまり、制御装置24は、各遮断弁19、20、21を閉じている時の圧送水量が第二圧送水量になるように、ウォータポンプ7を制御する。
さらに、制御装置24は、冷却水温が第一所定温度以上の時は各供給冷却水流路13、14、15に冷却水を流入させるように、遮断弁19、20、21を制御する。つまり、制御装置24は、制御装置24は、冷却水温が第二所定温度以上の時は各遮断弁19、20、21を開き、圧送水量が第一所定水量になるように、ウォータポンプ7を制御する。
【0016】
次に作用を説明する。
エンジン1の暖機装置2は、図7に示すように、制御装置24によるエンジン暖機時の冷却水制御のプログラムがスタートすると(C01)、冷却水温が第二所定温度以上であるかを判断する(C02)。
冷却水温が第二所定温度よりも低く、判断(C02)がNOの場合は、各遮断弁19、20、21を閉じてウォータポンプ7の作動を停止する(C03)。これにより、冷却水は、エンジン内部冷却水流路5と第二バイパス流路25とに止まる。各遮断弁19、20、21を閉じてウォータポンプ7の作動を停止(C03)した後、また、前記冷却水温が第二所定温度以上で、判断(C02)がYESの場合、冷却水温が第一所定温度以上であるかを判断する(C04)。
冷却水温が第一所定温度よりも低く、判断(C04)がNOの場合は、各遮断弁19、20、21を閉じて第二圧送水量になるようにウォータポンプ7を作動し(C05)、プログラムをエンドにする(C06)。これにより、ウォータポンプ7の圧送する第二圧送水量の冷却水は、エンジン内部冷却水流路5と第二バイパス流路25との間を循環する。
一方、冷却水温が第一所定温度以上で、判断(C04)がYESの場合は、各遮断弁19、20、21を開いて第一圧送水量になるようにウォータポンプ7を作動し(C07)、プログラムをエンドにする(C06)。これにより、ウォータポンプ7の圧送する第一圧送水量の冷却水は、エンジン内部冷却水流路5と第二バイパス流路25との間を循環するとともに、エンジン内部冷却水流路5と供給冷却水流路13、14、15及び還流冷却水流路16、17、18との間を循環する。
従来は、図8に波線で示すように、冷却水温の検出精度向上のために、エンジン始動からウォータポンプを作動させているので、冷却水温が第一所定温度に達するまでに時間(t3)がかかり、燃料噴射増量時間が延びて燃費悪化につながる。
これに対して、図8に実線で示すように、第二バイパス流路25を備えた暖機装置2は、冷却水温が第二所定温度に達する(t1)までは冷却水をエンジン内部冷却水流路5とエンジン内部の第二バイパス流路25との間に止まらせ、冷却水温が第二所定温度以上となって第一所定温度に達する(t2)までは冷却水をエンジン内部冷却水流路5と第二バイパス流路25との間を循環させるので、冷却水温が第二所定温度に達するまでの時間(t2)が短くなり、エンジン内部の冷却水の局所的な昇温を防止して、冷却水温の検出精度の低下を抑制しつつさらに冷却水の早期昇温を行うことができる。
また、水温センサ23は、エンジン1の発する熱により冷却水温が昇温しやすく、且つ昇温された冷却水温の低下しにくい、エンジン内部冷却水流路5上や第二バイパス流路25上のエンジン内部中央に配置することで、冷却水温の検出精度の低下を防止できる。
このように、暖機装置2は、冷却水温が第二所定温度よりも低い時は各遮断弁19、20、21を閉じてウォータポンプ7の作動を停止し、冷却水温が第二所定温度以上で第一所定温度よりも低い時は冷却水をエンジン内部冷却水流路5と第二バイパス流路25との間を循環させることで、冷却水の局所的な昇温を防止して冷却水温の検出精度の低下を抑制しつつ、エンジン始動時からウォータポンプ7を作動させる場合よりも、冷却水温をより早期に昇温させることができる。
また、この暖房装置2は、バイパス流路をエンジン内部(第二バイパス流路25)に設けることで、冷却水の局所的な昇温を防止して冷却水温の検出精度の低下を抑制しつつ冷却水の早期昇温を行うことができる。
なお、この暖房装置2は、バイパス流路をエンジン外部(第一バイパス流路22)またはエンジン内部(第二バイパス流路25)のどちらに設けても良く、いずれの場合でも冷却水の局所的な昇温を防止して冷却水温の検出精度の低下を抑制しつつ冷却水の早期昇温を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、エンジン内部の冷却水の局所的な昇温を防止して、冷却水温の検出精度の低下を抑制しつつ冷却水の早期昇温を行うことができるものであり、車両用エンジンにかぎらず、船舶用エンジンなどの、冷却水により冷却するエンジンに適用が可能である。
【符号の説明】
【0018】
1 車両用エンジン(エンジン)
2 暖機装置
3 取込部
4 排出部
5 エンジン内部冷却水流路
6 循環冷却水流路
7 ウォータポンプ
8 車両機器
9 サーモケース
10 スロットルボディヒータ
11 ヒータコア
12 ラジエータ
13、14、15 供給冷却水流路
16、17、18 還流冷却水流路
19、20、21 遮断弁
22 第一バイパス流路
23 水温センサ
24 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の動力源であるエンジンを冷却する冷却水の流れを制御する車両用エンジンの暖機装置において、前記エンジンは、エンジン内部に冷却水を取り込む取込部と、エンジン外部に冷却水を排出する排出部と、前記取込部及び排出部をエンジン内部で接続してエンジン内部に冷却水を流すエンジン内部冷却水流路とを備え、前記取込部と前記排出部とをエンジン外部で接続して前記排出部から排出された冷却水を前記取込部に戻すための循環冷却水流路を備え、前記循環冷却水流路は、冷却水の圧送水量を変更可能なウォータポンプと、冷却水との熱交換を行う車両機器と、前記排出口から排出された冷却水を前記車両機器に供給する供給冷却水流路が接続されたサーモケースとを備え、前記サーモケースは、所定条件下で前記供給冷却水流路への冷却水の流入を禁止する遮断弁を備え、前記エンジン内部冷却水流路を通過した冷却水を前記ウォータポンプに戻すバイパス流路と、前記エンジン内部の冷却水温を検出する水温センサとを備え、前記水温センサの検出する冷却水温が第一所定温度より低い場合に、前記供給冷却水流路への冷却水の流入を禁止し、前記バイパス流路のみに冷却水を流すように前記遮断弁を制御する制御装置を備えることを特徴とする車両用エンジンの暖機装置。
【請求項2】
前記バイパス流路は、前記排出部からエンジン外部を通って前記ウォータポンプに戻す第一バイパス流路、または前記排出部を経由せずにエンジン内部を通って前記ウォータポンプに戻す第二バイパス流路の、いずれか一方であることを特徴とする請求項1に記載の車両用エンジンの暖機装置。
【請求項3】
前記水温センサの配置場所は、前記第一バイパス流路を備える場合には前記取込部または前記排出部または前記エンジン内部冷却水流路上のエンジン内部中央とし、前記第二バイパス流路を備える場合には前記エンジン内部冷却水流路上のエンジン内部中央または前記第二バイパス流路上のエンジン内部中央とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用エンジンの暖機装置。
【請求項4】
前記第二バイパス流路を備える場合に、冷却水温が前記第一所定温度とは異なる第二所定温度よりも低い時は前記遮断弁を閉じて前記ウォータポンプの作動を停止することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の車両用エンジンの暖機装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−96259(P2013−96259A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237582(P2011−237582)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)