説明

車両用サンシェード

【課題】 駆動装置によって開閉できるとともに、開度調整可能な車両用サンシェードを提供すること。
【解決手段】 車両の屋根1の透光部3を開閉する第一遮光シート18及び第二遮光シート21と、各遮光シート18及び21を閉方向に付勢して巻取る第一リトラクタ19(巻取部材)及び第二リトラクタ22(巻取部材)と、各遮光シート18及び21を開閉駆動するアクチュエータ27(駆動装置)と、アクチュエータ27の駆動力を各遮光シート18及び21に伝達し、少なくとも一部が各遮光シート18及び21の開閉方向に延在するとともに少なくとも一部が対向して配置される第一ラックベルト25(動力伝達部材)及び第二ラックベルト26(動力伝達部材)と、第一平行部25d(対向配置部)及び第二平行部26d(対向配置部)と解除可能に係合することで各遮光シート18及び21を連動させる第一シュー28(係合部材)、第二シュー29(係合部材)、第三シュー31(係合部材)及び第四シュー32(係合部材)と、から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の屋根に設置された透光部を遮光開閉する車両用サンシェードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術による車両用サンシェードでは、巻取バネの付勢力に抗してリトラクタから巻出された遮光シートの開度を保持する為、ガーニッシュに設置されたフックをサンシェードの開閉方向に垂直な開口縁部に形成された保持穴に嵌合させているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−279801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用サンシェードでは、フックを保持穴に嵌合させて保持する為、保持を解除する際にフックを上方に移動させる必要がある。そのため、外部動力等の駆動装置によって開閉する場合、保持を解除する為の機構が複雑化する虞がある。さらに、保持穴が開閉方向に垂直な開口縁部のみに形成されている為、サンシェードの開度を調節できない問題点がある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みて成されたものであり、駆動装置によって開閉できるとともに、手動によっても開度調整可能な車両用サンシェードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の課題解決手段は、車両の屋根の透光部を開閉する遮光シートと、該遮光シートを閉方向に付勢して前記遮光シートを巻取る巻取部材と、前記遮光シートを開閉駆動する為の駆動力を発生する駆動装置と、該駆動装置の駆動力を前記遮光シートに伝達し、少なくとも一部が前記遮光シートの開閉方向に延在するとともに少なくとも一部が対向して配置される一対の動力伝達部材と、前記動力伝達部材の対向配置された対向配置部と解除可能に係合し、前記対向配置部と係合することで前記遮光シートを連動させる係合部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の第2の課題解決手段は、一対の前記動力伝達部材は、同期して前記開閉方向に移動して前記遮光シートを開閉し、前記係合部材と係合する一対の保持部を前記開閉方向に複数有することを特徴とする。
【0008】
本発明の第3の課題解決手段は、前記遮光シートは、前記開閉方向の一方の縁部に連係される移動部材を有し、前記移動部材は、前記動力伝達部材の対向方向の両方の端部に前記対向方向に移動可能に前記係合部材を保持し、前記係合部材を前記動力伝達部材に向かって付勢する付勢部材を有し、前記係合部材の前記動力伝達部材への付勢を解除する操作部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の第4の課題解決手段は、前記動力伝達部材は、ラックベルトであり、前記保持部は、前記動力伝達部材の対向方向に向かって前記ラックベルトに形成される凹部であり、前記係合部材は、前記凹部と嵌合するよう前記対向方向に向かって形成される凸部を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の第5の課題解決手段は、前記遮光シートの開閉方向に延在し、前記動力伝達部材を移動自在に保持するベルト保持部を有する一対のガイドレールを備え、前記遮光シートは、前記開閉方向において複数枚並設されるとともに、複数枚の前記遮光シートのそれぞれの開方向及び前記閉方向が一致することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両用サンシェードでは、遮光シートは、解除可能な係合部材を介して動力伝達部材の対向配置部と係合する為、係合時には駆動装置によって自動で開閉できるとともに、係合を解除すれば手動によっても開度を調整することができる。
【0012】
また、一対の動力伝達部材は、同期して開閉方向に移動して遮光シートを開閉し、係合部材と係合する一対の保持部を前記開閉方向に複数有する為、遮光シートが開閉方向にてずれることなく保持部と確実に係合し、遮光シートの開度を段階的に調節することができる。
【0013】
また、付勢部材が係合部材を動力伝達部材に付勢する為、係合部材と動力伝達部材との係合を維持することができる。また、付勢を解除する操作部を移動部材に設置することによって係合解除時の操作性が向上する。
【0014】
また、動力伝達部材に幅のあるラックベルトを用いることによって、係合部材と嵌合するための凹部を設ける面積を確保できる。また、凸部が凹部に嵌合することにより、確実にラックベルトと係合部とを係合させることができる。
【0015】
また、遮光シートを複数枚配置することによって、巻取長さを増大させることなく、透光部の面積を拡大することができる。また、前記複数枚の遮光シートの開方向及び閉方向を一致させることにより、ガイドレールのベルト保持部を共用化できるだけでなく各遮光シートの係合部材の共用化も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るサンシェードが設置される自動車の屋根を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るサンシェードの閉状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るサンシェードの平面視を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る第一ガーニッシュと第一ラックベルトの斜視説明図である。
【図5】本発明の実施形態に係る第一シューと第一ラックベルトとの係合状態における図3のA−A断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る第一シューと第一ラックベルトとの開放状態における図3のA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の車両用サンシェードを備えた車両について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用サンシェードが設けられる自動車の屋根1の斜視図である。屋根1を形成する屋根パネル2には日光を取込めるように透光部3が形成され、ガラス又は透明な樹脂で成形された透明パネル4が設置されている。透明パネル4の外周縁部4aには、車室内への雨水の浸入を防止する為、図示しないシール部材が配置されている。屋根パネル2の透光部側縁3a近傍の車室側の面2aには、図2に示すサンシェード11(車両用サンシェード)が設置され、サンシェード11の開閉により透光部3からの採光または遮光を行う。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係るサンシェード11の閉状態を示す斜視図である。屋根パネル4の車室側の面2aに、車両前後方向12a(閉方向、開閉方向)及び12b(開方向、開閉方向)に延在する一対の第一ガイドレール13及び第二ガイドレール14が車両左右方向15a(対向方向)及び15b(対向方向)に対向して配置される。各ガイドレール13及び14の車両前方向12aの第一前端部13a及び第二前端部14aは、車両左右方向15a及び15bに延在するフロントフレーム16により連結され、同様に車両後方向12bの第一後端部13b及び第二後端部14bは、リアフレーム17により連結される。各ガイドレール13及び14は、屋根パネル2の形状に合わせて湾曲しており、アルミ等により押出し成型され、各フレーム16及び17は、鋼板等によりプレス成型される。また、各ガイドレール13及び14の車両前後方向12a及び12bの第一中央部13c及び第二中央部14cには、第一遮光シート18を巻取る第一リトラクタ19(巻取部材)が図示しない軸受構造により回転自在に保持され、車両後方向12bの各後端部13b及び14bには、第二遮光シート21を巻取る第二リトラクタ22(巻取部材)が図示しない軸受構造により回転自在に保持される。各リトラクタ19及び22は、車両左右方向15a及び15bに延伸した棒状の芯部材であり、各遮光シート18及び21の車両後方向12bの縁部が各リトラクタ19及び22に固定される。また、各リトラクタ19及び22は、図示しないトーションスプリングによって各遮光シート18及び21を巻取る方向に付勢されている。第一遮光シート18の車両前方向12aの縁部には第一ガーニッシュ23(移動部材)が設置され、第二遮光シート21の車両前方向12aの縁部には第二ガーニッシュ24(移動部材)が設置される。各ガーニッシュ23及び24は、各ガイドレール13及び14に沿って車両前後方向12a及び12bに移動可能に配置される。
【0020】
図3は、本発明の実施形態に係るサンシェード11の平面視を示す説明図である。第一ガイドレール13及びリアフレーム17に沿って第一ラックベルト25(動力伝達部材)が配置され、第一ラックベルト25は、第一後端部13b付近の第一屈曲部25aで屈曲するとともに第一ガイドレール13及びリアフレーム17に摺動可能に保持される。同様に、第二ガイドレール14及びリアフレーム17に沿って第二ラックベルト26(動力伝達部材)が配置され、第二ラックベルト26は、第二後端部14b付近の第二屈曲部26aで屈曲するとともに第二ガイドレール14及びリアフレーム17に摺動可能に保持される。各ラックベルト25及び26は、可撓性の樹脂によって成形され、図示しないスチールワイヤにより補強される。各ラックベルト25及び26のリアフレーム17と平行に配置される部位には、第一ラック歯25b及び第二ラック歯26bを備える第一ラック部25c及び第二ラック部26cが対向して向い合うように形成され、各ガイドレール13及び14と平行に配置される部位には、第一平行部25d(対向配置部)及び第二平行部26d(対向配置部)が形成される。
【0021】
リアフレーム17には、サンシェード11を開閉駆動する為のアクチュエータ27(駆動装置)が設置され、アクチュエータ27の出力ピニオン27aは、各ラック歯25b及び26bと噛合う。アクチュエータ27には、図示しない制御回路によって駆動される図示しないモータが設置され、モータの動力は、セルフロック機能を有する図示しないウォーム減速部により減速されてから出力ピニオン27aより回転出力される。第一ガーニッシュ23の車両右方向15aの第一右端部23aには、車両左右方向15a及び15bに摺動可能に第一シュー28(係合部材)が保持され、第一左端部23bには、第二シュー29(係合部材)が保持される。同様に、第二ガーニッシュ24の第二右端部24a及び第二左端部24bには第三シュー31(係合部材)及び第四シュー32(係合部材)が保持される。第一シュー28及び第三シュー31は、第一ラックベルト25の第一平行部25dに解除可能に係合し、第二シュー29及び第四シュー32は、第二平行部26dに解除可能に係合する。
【0022】
図4は、本発明の実施形態に係る第一ガーニッシュ23と第一ラックベルト25の斜視説明図である。第二ガーニッシュ24は、第一ガーニッシュ23と同一の構造であり、第二ラックベルト26の第二平行部26dは、第一ラックベルト25の第一平行部25dと車両左右方向15a及び15bに関して対称の構造である。第一平行部25dには、車両左右方向15a及び15bに向かって貫通する凹部25e(保持部)が車両前後方向12a及び12bに複数個配置され、凹部25eに第一シュー28が嵌合して連動する(図5参照)。第一ガーニッシュ23は、車両左右方向15a及び15bに延在する中空の棒状の部材であり、樹脂によって成形されている。第一ガーニッシュ23の車両左右方向15a及び15bの中央部付近の車両下方向33bの面に、ブラケット34が図示しないボルトにより固定される。ブラケット34には操作ボタン35(操作部)と回転アーム36が設置され、操作ボタン35は、ボタン部35aを車両前方向12aに向けて、車両前後方向12a及び12bに移動可能に保持される。操作ボタン35には、車両後方向12bに向けて突出する連動部35bが形成され、連動部35bの車両後方向12bの端面は、車両後方向12b及び車両右方向15aに向かう傾斜面となっている。回転アーム36は、車両上下方向33a及び33bに延伸する回転軸36aを有し、回転軸36aは、車両上下方向33a及び33bの両端がブラケット34の図示しない穴に嵌合し、回転アーム36を回転自在に第一ガーニッシュ23に保持する。回転アーム36には、回転軸36aから回転径方向の両側に延在する一対の第一回転プレート部36b及び第二回転プレート部36cが形成され、第二回転プレート部36cは、第一回転プレート部36bよりも車両下方向33bに配置される。各回転プレート部36b及び36cは、回転径方向の両側の端部が、車両上下方向33a及び33bに延在する第一ピン部36d及び第二ピン部36eによって結合され、第一ピン部36dは、第二ピン部36eよりも車両右方向15aに配置される。第二回転プレート部36cの回転径方向の第二ピン部36eの位置に、車両下方向33bに向かって作動ピン部36fが形成され、作動ピン部36fは、操作ボタン35の連動部35bと車両前後方向12a及び12bに当接する。各ピン部36d及び36eの間を縫うように連動ワイヤ37が配置され、連動ワイヤ37は、弾性を有する樹脂から構成されている。連動ワイヤ37は、車両右方向15aから第一ピン部36dの車両前方向12aに当接してから車両後方向12bに巻かれ、第二ピン部36eの車両後方向12bに当接して車両左方向15bに向かって巻出される。連動ワイヤ37のワイヤ右端部37aは、第一シュー28と係合し(図5参照)、同様に図示しないワイヤ左端部が第二シュー29と係合する。
【0023】
図5は、本発明の実施形態に係る第一シュー28と第一ラックベルト25との係合状態における、車両前後方向12a及び12bに垂直な平面での断面を示す、図3のA−A断面図である。第二シュー29及び第二ラックベルト26の第二平行部26dは、第一シュー28及び第一平行部25dと車両左右方向15a及び15bに関して対称の構造である。第一ガイドレール13の断面では、車両左右方向15a及び15bに延出する下辺部13dの車両右方向15a端部から側壁部13eが車両上方向33aに向けて延出し、側壁部13eの車両上方向33aの端部から車両左方向15bに向けて上辺部13fが延出している。下辺部13dの車両左右方向15a及び15bの中間部付近から下壁部13gが車両上方向33aに向かって形成され、上辺部13fから下壁部13gに向かって上壁部13hが形成される。側壁部13eには、車両左方向15bに向かって凹設される溝部13iが形成されており、溝部13iは、下壁部13g及び上壁部13hによって車両上下方向33a及び33bに形成される隙間部13jと車両上下方向33a及び33bに同じ位置である。下辺部13d、側壁部13e、上辺部13f、下壁部13g及び上壁部13hによって囲まれるベルト保持部13kが形成され、下辺部13d、上辺部13f、下壁部13g及び上壁部13hによって囲まれ、車両左方向15bに向かって開口するシュー保持部13lが形成される。第一ラックベルト25の第一平行部25dの断面は、車両上下方向33a及び33bを長辺とする矩形状であり、第一平行部25dは、ベルト保持部13kに車両前後方向12a及び12bに摺動自在に保持される。
【0024】
第一ガーニッシュ23の第一右端部23aに車両上方向33aに向かって隔壁部23cが形成され、隔壁部23cから車両右方向15aの位置に第一シュー28が車両左右方向15a及び15bに摺動自在に保持されている。第一シュー28の車両左方向15bの面に車両左方向15bに向かって円筒状のスプリング保持部28aが凸設され、スプリング保持部28aにコイル状の第一スプリング38(付勢部材)が嵌合する。第一スプリング38は、隔壁部23cと当接し圧縮状態で保持されることによって第一シュー28を車両右方向15aに付勢し、第二シュー29を付勢する図示しない第二スプリングとともに第一ガーニッシュ23をセンタリングする。スプリング保持部28aには、連動ワイヤ37と係合する為車両上方向33aの面からワイヤ係合溝28bが形成され、ワイヤ係合溝28bの車両右方向15aの溝端部28cは溝幅が広くなっている。ワイヤ右端部37aのワイヤ先端部37bは、瘤状の端末処理がなされている。ワイヤ右端部37aがワイヤ係合溝28bに嵌合する際、ワイヤ先端部37bがワイヤ係合溝28bの溝端部28cに嵌合し、第一シュー28と連動ワイヤ37とは車両左右方向15a及び15bに係合する。
【0025】
第一シュー28の車両右方向15aの面に車両右方向15aに向かって凸部28dが凸設され、凸部28dは第一ラックベルト25の凹部25eに嵌合する。凸部28dの先端は、第一平行部25dから車両右方向15aに突出するが、第一ガイドレール13に溝部13iが形成されている為、第一ガイドレール13に当接しない。また、凸部28dの車両前後方向12a及び12bの面は、凸部28dの車両前後方向12a及び12bの幅が車両右方向15aに向かうに従って細くなるように曲面で構成されている。
【0026】
図6は、本発明の実施形態に係る第一シュー28と第一ラックベルト25との開放状態における、車両前後方向12a及び12bに垂直な平面での断面を示す、図3のA−A断面図である。連動ワイヤ37の車両左方向15bの張力により第一スプリング38の付勢力に抗して第一シュー28が車両左方向15bに移動し、凸部28dと凹部25eとの係合が解除されている。
【0027】
サンシェード11の手動操作による開閉動作について説明する。第一遮光シート18の開閉動作について説明するが、第二遮光シート21についても同様の動作である。操作ボタン35のボタン部35aを車両後方向12bに押すと、操作ボタン35がブラケット34に対してスライドし、連動部35bが作動ピン部36fを車両後方向12bに押圧する。作動ピン部36fの押圧により回転アーム36に開放回動方向41aのモーメントが作用し、回転アーム36は、回転軸36aを中心に開放回動方向41aに回動する。第一ピン部36dは、回転軸36a、第一回転プレート部36b及び第二回転プレート部36cに拘束されて弧を描きながら車両左方向15bへ移動し、連動ワイヤ37の第一ピン部36dとの当接部を車両左方向15bへ牽引する。ワイヤ右端部37aには車両左方向15bへの張力が作用し、ワイヤ先端部37bと係合する第一シュー28は、第一スプリング38の付勢力に抗して車両左方向15bへ移動する。また、第二シュー29も同様の動作により車両右方向15aへ移動する。凹部25eから凸部28dが外れることにより第一ガーニッシュ23と第一ラックベルト25との係合が解除され、第一ガーニッシュ23は、車両前後方向12a及び12bへ手動で移動可能となる。第一遮光シート18を所望の開度に調節した後、ボタン部35aから手を離すことにより回転アーム36は係合回動方向41bに回動し、第一シュー28は第一スプリング38によって車両右方向15aに付勢され、凸部28dはいずれかの凹部25eに嵌合する。凸部28dと凹部25eとの嵌合により、第一ガーニッシュ23はトーションスプリングによる巻取方向の付勢力に抗して第一遮光シート18を保持するとともに、第一ラックベルト25と係合して電動による開閉動作が可能となる。
【0028】
次に、サンシェード11の電動による開閉動作について説明する。モータが制御回路により駆動されると、モータの回転力はウォーム減速部によりトルク増幅され、アクチュエータ27の出力ピニオン27aは開回転方向42aに回転する。出力ピニオン27aと第一ラック歯25bが噛合い、第一ラック部25cは車両左方向15bに平行移動する。第一屈曲部25aの位置はリアフレーム17等に対して固定されている為、第一屈曲部25aの第一ラックベルト25に対する相対位置が変化しながら、第一平行部25dが車両後方向12bに移動する。その際、同様に第二ラックベルト26の第二平行部26dも車両後方向12bに移動する。そして、各ラックベルト25及び26に係合している各ガーニッシュ23及び24が車両左方向15bに移動し、各遮光シート18及び21が各リトラクタ19及び22に巻取られ、サンシェード11は開状態となる。各ガーニッシュ23及び24は、図示しないストッパに当接して停止する。閉動作時には、出力ピニオン27aは閉回転方向42bに回転し、各平行部25d及び26dが各ガーニッシュ23及び24を車両前方向12aに移動させ、各ガーニッシュ23及び24がストッパに当接して停止する。また、各ガーニッシュ23又は24の各ラックベルト25又は26に対する相対位置を手動によって変更してから電動作動させると、全開又は全閉動作時にどちらか一方のガーニッシュ23又は24が先にストッパに当接しアンマッチが生じる場合がある。ガーニッシュ23がストッパに先に当接した場合、そのままアクチュエータ27の駆動力によりガーニッシュ23がストッパに押圧され続けることによって、凸部28dの車両前後方向12a及び12bの曲面が第一スプリング38の付勢力に抗して凹部25eの面に乗上げ、一時的に係合が解除される。各ラックベルト25及び26が全開又は全閉の位置で停止すると、凸部28dは再び凹部25eに嵌合してアンマッチが補正される。
【0029】
本発明のサンシェード11では、各遮光シート18及び21の開度を保持する各ガーニッシュ23及び24に各シュー28、29、31及び32を車両左右方向15a及び15bに移動可能に設置している為、各ラックベルト25及び26と各シュー28、29、31及び32との係合を解除することができる。そのため、係合時にはアクチュエータ27の駆動力によって自動で各遮光シート18及び21を開閉でき、係合解除時には各遮光シート18及び21の開度を手動によっても調整することができる。電動だけでなく手動でも開閉操作できる為アイドリングストップ等の場合でも、電動及び電子機器の増加により負担の増加したバッテリーに負荷を強いることなく開閉操作が可能となる。また、キャンプ等のレジャーに多用されるワンボックス車に本サンシェード11を適用すれば、開閉操作に電力を消費せずオルタネータ駆動に伴うアイドリングを低減できる為、キャンプ地である森林や海浜等の自然環境下での排出ガス削減に貢献できる。さらに、開状態において炎天下でバッテリー上がりに遭遇しても、直射日光を遮光できるようバックアップとして手動による閉動作が可能である等のフォールトトレラントシステムを構成することもできる。他の効果として、手動による細かな開度調整が可能となる為、電動操作時の開閉速度を高めて快適性を向上させることもできる。また、第一ラックベルト25の第一平行部25dには、凹部25eが開閉方向である車両前後方向12a及び12bに複数個配置され、第二ラックベルト26も同様な構造である為、凹部25eは、確実に各シュー28及び31を保持できるだけでなく係合する凹部25eを変えて各遮光シート18及び21の開度を段階的に調節することができる。
【0030】
また、第一スプリング38及び第二スプリングが各シュー28及び29を各ラックベルト25及び26に対して付勢する為、各シュー28及び29と各ラックベルト25及び26との係合を維持することができる。さらに、第一スプリング38及び第二スプリングが第一ガーニッシュ23を車両左右方向15a及び15bにセンタリングする為、各シュー28及び29の各ガイドレール13及び14との接触が抑制され、開閉動作時の摺動抵抗を低減することができる。また、各シュー28及び29の各ラックベルト25及び26に対する付勢に抗して係合を解除できる操作ボタン35を第一ガーニッシュ23に設置することによって、係合解除時の操作性が向上する。第二ガーニッシュ24も第一ガーニッシュ23と同様の構成であり同様の効果を有する。
【0031】
また、車両上下方向33a及び33bに幅のある第一ラックベルト25を動力伝達部材に用いることによって、各シュー28及び31と嵌合するための凹部25eを設ける面積を確保することができる。第二ラックベルト26も第一ラックベルト25と同様の構成であり同様の効果を有している。さらに、第一シュー28の凸部28dが凹部25eに嵌合する為、第一シュー28は確実に第一ラックベルト25と係合することができ、第一スプリング38及び第二スプリングの付勢力を低減できる。他の各シュー29、31及び32も同様である。
【0032】
また、各遮光シート18及び21を複数枚配置することによって、各遮光シート18及び21の巻取長さを増大させることなく、透光部3の面積を拡大することができる。そのため、巻取り及び巻出しに要する時間を短縮して迅速に開閉動作することができるとともに、各リトラクタ19及び22の巻取時の径の増大を抑制でき車室内を広くすることができるだけでなく、遮光シートの枚数の組合せにより様々な広さの透光部3に対応できる。また、各遮光シート18及び21の開方向及び閉方向を一致させることにより、ベルト保持部13kを共用化できるだけでなく各遮光シート18及び21の各シュー28、29、31及び32の共用化も可能となる。さらに、手動によって個別調整可能な複数枚の遮光シート18及び21を設置することにより、電動によって各遮光シート18及び21を一斉に開閉操作できるだけでなく、異なる遮光シート18又は21の開度を好みに応じてそれぞれ座席ごとに調整でき利便性が向上する。なお、屋根面積の広い車両ほど遮光シートの枚数が増え、個別開度調整による利便性が向上する。
【0033】
なお、前記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0034】
・前記実施形態において、サンシェード11は、透明パネル4が固定されているサンルーフの採光開閉に適用されているが、スライド式やヒンジ固定によるフリップアウト式等の可動サンルーフに適用されてもよい。
【0035】
・前記実施形態において、各遮光シート18及び21は各リトラクタ19及び22に巻取られるが、蛇腹に折畳まれる方式でもよく、板状の遮光パネルがスライドする方式等であってもよい。
【0036】
・前記実施形態において、サンシェード11は電動のアクチュエータ27によって開閉動作されるが、例えば、流体圧等を用いた電動以外の駆動装置によって開閉されてもよい。
【0037】
・前記実施形態において、動力伝達部材は各ラックベルト25及び26であるが、ローラチェーンや摩擦ベルト等の他の巻掛け伝動要素であってもよい。また、動力伝達部材の進行方向の両端をワイヤ等で牽引することによって、動力伝達部材を牽引力のみで開閉動作させる構成であってもよい。
【0038】
・操作ボタン35の付勢力は第一スプリング38及び第二スプリングによって付与されているが、例えば操作感向上などの必要に応じ、別途スプリングなどを追加して付勢力を与える構成であってもよい。
【0039】
・前記実施形態において、第一シュー28及び第二シュー29と回転アーム36とを連動させる連動ワイヤ37は一本であるが、それぞれ異なる二本で各シュー28及び29と回転アーム36とを連動させる構成にしてもよい。また、連動ワイヤ37は、弾性を有する樹脂で成形されているが金属ワイヤ等で構成されていてもよい。
【0040】
・前記実施形態において、第一シュー28及び第二シュー29は、一対の第一スプリング38及び第二スプリングによって付勢されて嵌合しているが、一体の屈曲板ばね等の他の形状のスプリングによって付勢されていてもよい。また、スプリングによらず摩擦力又はディテント等のロック機構で嵌合が保持されてもよい。
【0041】
・前記実施形態において、第一シュー28及び第二シュー29は、凹凸嵌合によって第一ラックベルト25及び第二ラックベルト26と段階的に係合するが、各シュー28及び29の押圧による摩擦保持機構やラック嵌合機構等によって無段階に係合してもよい。
【0042】
・前記実施形態において、凸部28dは車両右方向15aに第一ラックベルト25から突出しているが、車両左右方向15a及び15bの幅を縮小する為、凸部28dを縮小して凹部25eを非貫通穴とする構成であってもよい。
【0043】
・前記実施形態において、手動で開閉操作した後に電動による開閉動作を行った際、アンマッチは凸部28dに形成した傾斜する曲面の作用により補正されるが、その他の手段で補正されてもよい。例として、操作ボタン35がストッパに当接して係合が解除される等の構成であってもよい。また、前記実施形態では凹部25eは全て同じ形状であるが、アンマッチ補正動作の際に嵌合が外れやすいよう、正規位置の凹部25eと開度調整用の凹部25eとで深さや極面等の形状を変えてもよい。
【0044】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0045】
1 屋根
2 屋根パネル
3 透光部
4 透明パネル
11 サンシェード(車両用サンシェード)
12a 車両前方向(閉方向、開閉方向)
12b 車両後方向(開方向、開閉方向)
13 第一ガイドレール
13k ベルト保持部
14 第二ガイドレール
15a 車両右方向(対向方向)
15b 車両左方向(対向方向)
18 第一遮光シート
19 第一リトラクタ(巻取部材)
21 第二遮光シート
22 第二リトラクタ(巻取部材)
23 第一ガーニッシュ(移動部材)
24 第二ガーニッシュ(移動部材)
25 第一ラックベルト(動力伝達部材)
25d 第一平行部(対向配置部)
25e 凹部(保持部)
26 第二ラックベルト(動力伝達部材)
26d 第二平行部(対向配置部)
27 アクチュエータ(駆動装置)
28 第一シュー(係合部材)
28d 凸部
29 第二シュー(係合部材)
31 第三シュー(係合部材)
32 第四シュー(係合部材)
35 操作ボタン(操作部)
36 回転アーム
37 連動ワイヤ
38 第一スプリング(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根の透光部を開閉する遮光シートと、
該遮光シートを閉方向に付勢して前記遮光シートを巻取る巻取部材と、
前記遮光シートを開閉駆動する為の駆動力を発生する駆動装置と、
該駆動装置の駆動力を前記遮光シートに伝達し、少なくとも一部が前記遮光シートの開閉方向に延在するとともに少なくとも一部が対向して配置される一対の動力伝達部材と、
前記動力伝達部材の対向配置された対向配置部と解除可能に係合し、前記対向配置部と係合することで前記遮光シートを連動させる係合部材と、
を備える車両用サンシェード。
【請求項2】
一対の前記動力伝達部材は、同期して前記開閉方向に移動して前記遮光シートを開閉し、前記係合部材と係合する一対の保持部を前記開閉方向に複数有する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用サンシェード。
【請求項3】
前記遮光シートは、前記開閉方向の一方の縁部に連係される移動部材を有し、
前記移動部材は、前記動力伝達部材の対向方向の両方の端部に前記対向方向に移動可能に前記係合部材を保持し、前記係合部材を前記動力伝達部材に向かって付勢する付勢部材を有し、前記係合部材の前記動力伝達部材への付勢を解除する操作部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用サンシェード。
【請求項4】
前記動力伝達部材は、ラックベルトであり、
前記保持部は、前記動力伝達部材の対向方向に向かって前記ラックベルトに形成される凹部であり、
前記係合部材は、前記凹部と嵌合するよう前記対向方向に向かって形成される凸部を有する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用サンシェード。
【請求項5】
前記遮光シートの開閉方向に延在し、前記動力伝達部材を移動自在に保持するベルト保持部を有する一対のガイドレールを備え、
前記遮光シートは、前記開閉方向において複数枚並設されるとともに、複数枚の前記遮光シートのそれぞれの開方向及び前記閉方向が一致する
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の車両用サンシェード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−126275(P2012−126275A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−280230(P2010−280230)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)