説明

車両用シートバック

【課題】車両用シートバックに、必要な剛性を確保することができる上に、表皮材に張りを持たせ、かつ、角を立たせないように配設可能なバックボードを設定する。
【解決手段】シートバック本体10の背面部に覆われる表皮材20と、表皮材20の中間ピース22Bに面材23Aが重ねられて袋状に形成された袋状部23と、この袋状部23内に詰め込まれてシートバック本体10の背面部を覆った状態として設けられる硬質なバックボード25と、を有する車両用シートバック1である。上記面材23Aは、中間ピース22Bよりも高い伸張性を備え、バックボード25は、袋状部23の内径よりも大きく形成されている。袋状部23内にバックボード25がセットされると、面材23Aが中間ピース22Bよりも大きく伸張して、面材23Aと中間ピース22Bとの縫合部22F1,22F2が、バックボード25の外面側の周縁部に位置した状態として配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートバックに関する。詳しくは、シートバック本体の背面部に覆われる表皮材の一部に形成された袋状部内にバックボードが設定された車両用シートバックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートにおいて、シートバックの背面部にバックボードが配設されて、上記背面部のフラット性や剛性が高められた構成が知られている(特許文献1参照)。上記バックボードは、軟質な合成樹脂板により形成されており、シートバックの背面部に覆われる表皮材の一部に形成された袋状部内に詰め込まれてセットされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−229306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の従来技術では、バックボード全体が軟質であるため、バックボードを袋状部内に角を立たせないように撓ませて配設することはできるが、十分な剛性が得られないという問題がある。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートバックに、必要な剛性を確保することができる上に、表皮材に張りを持たせ、かつ、表皮材に角を立たせないように配設することができるバックボードを設定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の車両用シートバックは次の手段をとる。
第1の発明は、シートバック本体の背面部に覆われる表皮材と、表皮材の構成面部の内面側に面材が重ねられて袋状に形成された袋状部と、袋状部内に上記面材と面を重ねる向きに詰め込まれてシートバック本体の背面部を覆った状態として設けられる、表皮材よりも硬質なバックボードと、を有する車両用シートバックである。袋状部を構成する面材は、表皮材の構成面部よりも高い伸張性を備えている。バックボードは、袋状部の内径よりも大きく形成されている。袋状部内にバックボードがセットされた状態では、面材が表皮材の構成面部よりも大きく伸張して、面材と表皮材の構成面部との結合部が、バックボードの外面側の周縁部に位置した状態として配設される。
【0006】
この第1の発明によれば、バックボードが袋状部内にセットされることにより、袋状部の面材が表皮材の構成面部よりも大きく伸張し、バックボードの外面側の周縁部に、袋状部の面材と表皮材の構成面部との縫合部が位置した状態となる。これにより、表皮材の構成面部にも張りが持たされた状態となると共に、硬質のバックボードの周縁部が、バックボードよりも軟質な表皮材の構成面部、袋状部の面材、及びこれらの縫合部によって外面側から軟らかく覆われた状態として、表皮材の構成面部上に角張らないように保護された状態となる。このように、車両用シートバックに、バックボードの配設により必要な剛性を確保すると共に、表皮材に張りを持たせることができるにもかかわらず、表皮材にバックボードの周縁部を角張らせないようにすることができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、次の構成となっているものである。袋状部を構成する面材は、表皮材の構成面部に重ね合わされて袋状に共縫いされて結合されている。袋状部内にバックボードがセットされることにより、上記面材と表皮材の構成面部との縫合部が、面材と構成面部とにかかる張力作用により、バックボードの周縁部の外面上から立ち上がる形に起こし上げられた状態となり、表皮材の構成面部と、この構成面部と隣接する周縁部が共縫いされた表皮材の隣接面部と、の間に縫合部の立ち上がりに伴う段差形状が形成されるようになっている。
【0008】
この第2の発明によれば、バックボードの圧入により、表皮材の構成面部と、この構成面部に隣接する隣接面部との間に、これらの縫合部を支えとした段差形状が形成される。この段差形状は、隣接面部が、比較的硬質となる構成面部との縫合部の支えにより、立ち上がりの良い形に仕上げられると共に、縫合部により束ねられた比較的軟質な面部の支えにより、立ち上がり後に滑らかに湾曲する形へと繋げられるように仕上げられる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の車両用シートバックを背面側から見た斜視図である。
【図2】表皮材をめくり上げてバックボードを袋状部内に挿入する様子を示した斜視図である。
【図3】図1のIII-III線断面図である。
【図4】図1のIV-IV線断面図である。
【図5】図1のV-V線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
始めに、実施例1の車両用シートバック1の構成について、図1〜図5を用いて説明する。本実施例の車両用シートバック1は、図1に示すように、車両用シートの背凭れ部を構成するものであり、図示は省略されているが、車両のフロア上に設置された着座部となるシートクッションの後端部に連結されて設けられている。上記車両用シートバック1は、図2〜図3に示すように、その骨格を成すバックフレーム11とクッション部となるバックパッド12とによって構成されるシートバック本体10に対し、その表面全体を覆うように布製の表皮材20が被せ付けられて構成されている。
【0012】
上記バックフレーム11は、鋼材が枠状に組まれて構成されており、車両用シートバック1の周縁に沿った内部骨格を形成している。バックパッド12は、発泡ウレタンによりシートバック本体10の外形を成す形に形成されており、着座乗員の背凭れ荷重を弾性的に柔らかく受け止めることのできる比較的低反発なクッション性を備えた構成とされている。上記バックパッド12は、バックフレーム11の前部にシート前方側から組み付けられて、その上下左右の各周辺部に形成されたシート後方側に張り出す各張出部位12Aを、バックフレーム11の上下左右の各枠辺部にそれぞれ外周側からシート後方側へ巻き掛けるように被せ付けた状態として組み付けられている。
【0013】
上記バックパッド12は、バックフレーム11の各枠辺部間に跨って組み付けられた複数本のワイヤーから成る支持バネ11A(コンターマット)により、バックフレーム11の枠内部において後方側から弾性支持された状態とされており、着座乗員の背凭れ荷重を、上記支持バネ11Aによる中央での弾性支持とバックフレーム11による周縁での強い支持とを受けて受け止めるようになっている。
【0014】
表皮材20は、バックパッド12の前後面や左右の側面や上側面など所定の区画領域毎の形に合わせて形成された複数枚の表皮ピースが、1枚に縫合されて繋ぎ合わされた構成となっている。詳しくは、上記表皮材20は、バックパッド12(シートバック本体10)の前面、左右両サイド面及び上面を覆う形となるように複数枚の表皮ピースが繋ぎ合わされて構成された表側覆い面部21と、バックパッド12(シートバック本体10)の後面(背面)を覆うように複数枚の表皮ピースが繋ぎ合わされて構成された裏側覆い面部22と、に大きく仕切られて構成されている。後者の裏側覆い面部22は、図1〜図2に示すように、その上側の縁部が、表側覆い面部21のバックパッド12の上面を被覆する部位のシート後方側に回し込まれた縁部に縫合されており、その左右両サイドの縁部は、表側覆い面部21とは切り離されて構成されている。
【0015】
上記裏側覆い面部22は、表皮材20をバックパッド12に被せ付けて、裏側覆い面部22をバックパッド12の背面側へ回し込んだ状態とした後に、裏側覆い面部22の左右両側の各縁部を、表側覆い面部21のバックパッド12の左右両側面に覆われた部位の各後縁部に、それぞれスライドファスナー24,24(線ファスナー)によって結合することにより、表側覆い面部21と互いにバックパッド12に対して張られた断面環状の状態に繋ぎ合わされるようになっている。
【0016】
ここで、上記裏側覆い面部22は、そのシート幅方向の中央部が、シート高さ方向に3枚の表皮ピース(上ピース22A、中間ピース22B及び下ピース22C)が繋ぎ合わされて構成されている。また、裏側覆い面部22の左右両サイド部には、上記3枚の表皮ピース(上ピース22A、中間ピース22B及び下ピース22C)に跨ってそれぞれ隣接するように、シート高さ方向に長尺なサイドピース22D,22Dがそれぞれ縫合されて繋ぎ合わされている。これらサイドピース22D,22Dは、バックパッド12の左右両サイドの張出部位12A,12Aをそれぞれシート後方側から覆う面部となっている。ここで、「中間ピース22B」が本発明の「構成面部」に相当し、「上ピース22A」及び「下ピース22C」がそれぞれ本発明の「隣接面部」に相当する。上記3枚の表皮ピース(上ピース22A、中間ピース22B及び下ピース22C)及び各サイドピース22D,22D間の各縫合は、裏側覆い面部22の内面側において各ピースの端部同士が面合わせされて縫合されており、各縫合箇所が裏側覆い面部22の外面側からは見えないようになっている。
【0017】
上記各サイドピース22D,22Dの外側の縁部と上述した表側覆い面部21の左右両サイドの後側の縁部との間には、それぞれ、上述したスライドファスナー24,24を構成する各務歯(エレメント)と、これら務歯をスライド動作により噛み合わせたり離したりするスライダーが設定されている。これらスライドファスナー24,24による結合により、表側覆い面部21と裏側覆い面部22とが、互いにバックパッド12を内部に挟んだ状態として断面環状に繋ぎ合わされるようになっており、この結合により、裏側覆い面部22が全体的にシート幅方向にテンションをかけられた状態となって張設されるようになっている。
【0018】
また、上記裏側覆い面部22は、上記スライドファスナー24,24による固定に加え、図3に示すように、その中間ピース22Bと下ピース22Cとの縫合部22F2に樹脂製のフック22Eが一緒に縫合されており、このフック22Eを、下方側に引張り込んでバックフレーム11に固定されたワイヤー11Bに掛着させることにより、上ピース22A及び中間ピース22Bがそれぞれシート高さ方向にもテンションをかけられた状態として張設されている。また、上記フック22Eよりも下側の配置となる下ピース22Cも、図示は省略されているが、その下縁部が、図示しないフック等のバックフレーム11に掛着される手段によって、シート高さ方向にテンションがかけられた状態として張設されている。
【0019】
ここで、上記裏側覆い面部22の上ピース22Aは、上述したバックパッド12の上部の、シート後方側に張り出して垂れ下がる張出部位12Aを、シート後方側から覆うように、この部分の形に合わせた大きさ形状に形成されている。また、中間ピース22Bは、上記バックパッド12の上部の張出部位12Aから下側に外れた領域部、すなわち、バックパッド12の形状がない背面側中央の空間部分12Bを覆うように張設されている。また、下ピース22Cも、上記中間ピース22Bと同様に、中間ピース22Bに続いてバックパッド12の形状がない背面側中央下部の空間部分12Bを覆うように張設されている。ここで、上記下ピース22Cの外側面、すなわちシート後方側の面上には、図1に示すように、後席シート(図示省略)の乗員が物入れとして使用することのできるポケット22C1が形成されている。このポケット22C1は、上記下ピース22Cの面上に別の布材があてがわれて上部が開口するように袋状に縫われることで形成されている。
【0020】
ここで、上記中間ピース22Bは、上述したフック22Eの掛着構造により、上記上ピース22Aとの縫合部22F1から下側に向かって、シートバック本体10の内側(シート前方側)に向けて傾めに張設されている。また、下ピース22Cは、上記シートバック本体10の内側に入り込んだ中間ピース22Bとの縫合部22F2から下側に向かって、シートバック本体10の外側(シート後方側)に向けて傾めに張設されている。これにより、上記中間ピース22Bと下ピース22Cとによって形成される面形状が、シート後方側から見て凹状に窪んだ形となって形成されており、中間ピース22Bと下ピース22Cとが面一状に真っ直ぐに張設される構成に比べて、後席シートの乗員が足を伸ばすことのできる空きスペースがより広く確保された構成とされている。
【0021】
上記中間ピース22Bや下ピース22Cは、上記のようにシート幅方向や高さ方向にテンションがかけられて張設されているが、それら自体の剛性は低いため、それら単体では、後席シートの乗員の足が当たるなどして外部から力がかけられると、強く押し凹まされて破れたり延びたりするおそれがある。また、通常の張設状態においても、皺がよったり縒れたりしやすくなる。そこで、上記中間ピース22Bには、図2〜図4に示すように、その内側面に袋状部23が形成されて硬質のバックボード25が挿入されており、図3及び図5に示すように、下ピース22Cには、その内側面に厚板状のフェルト材26が縫合されて設けられている。これにより、上記中間ピース22Bは、上記バックボード25によって、上述した外力を受けても撓みにくい高い構造強度で支えられた構成とされている。また、下ピース22Cは、上記フェルト材26によって、ポケット22C1の使用性を阻害しない程度の柔軟性を備えて、上述した外力を受けても撓みにくい構造強度で支えられた構成とされている。
【0022】
以下、図2〜図4を用いて、上述した中間ピース22Bに設けられた袋状部23及びバックボード25の構成について詳しく説明する。袋状部23は、上述した中間ピース22Bの内側面(シートバック本体10内を向く側の面)に、中間ピース22Bよりも伸張性の高いゴム製の別の面材23Aが重ねられて、横長となる矩形の袋状に縫合された構成となっている。詳しくは、図2に示すように、上記袋状部23は、その上下両側の長辺S1,S2と図示左側の短辺S3とが縫合されており、図示右側の短辺S4は縫合されずに、バックボード25の挿入口となる開口23Bとして形成された構成となっている。より詳しくは、図3に示すように、上記面材23Aは、その上側の長辺S1が、中間ピース22Bと上ピース22Aとの縫合部22F1に共縫いされており、下側の長辺S2が、中間ピース22Bと下ピース22Cとの縫合部22F2に共縫いされている。また、図4に示すように、上記面材23Aの一方の短辺S3は、中間ピース22Bと一方のサイドピース22Dとの縫合部22F3に共縫いされている。
【0023】
一方、図2に参照して、バックボード25は、硬質のポリプロピレン樹脂により矩形の板形状に形成されている。このバックボード25は、硬質の樹脂板から成ることから、比較的軽量で、かつ、表皮材20(中間ピース22B)に比して十分に高い剛性及び強度を備えた構成とされている。上記バックボード25は、その短手方向Lsの高さ寸法Hbが、袋状部23の上下両側の長辺S1,S2間の高さ寸法Ha(縫い代間の内径寸法)よりも大きく設定されている。また、バックボード25の袋状部23内への挿し込み方向となる長手方向Ldの幅寸法Wbは、袋状部23の両短辺S3,S4間の幅寸法Wa(短辺S3の縫い代と短辺S4の開口23Bとの間の寸法)より僅かに小さい程度のほぼ同じ大きさに設定されている。
【0024】
上記バックボード25は、上記袋状部23を構成する中間ピース22Bと面材23Aとの間の空間内にこれらと面を重ねる向きに挿し込まれることにより、上述した袋状部23との寸法関係により、袋状部23を高さ方向に伸張させながら袋状部23内に圧入されていくようになっている。このとき、上記袋状部23は、図3に示すように、面材23Aがゴム製となっていて中間ピース22Bよりも高い伸張性を備えた構成となっていることから、バックボード25の挿入時には、主に面材23Aのみが集中的に伸張変形するようになっている。したがって、上記面材23Aの伸張変形により、バックボード25が袋状部23内に圧入された状態時には、上記面材23Aと中間ピース22Bとの上下側の各縫合部22F1,22F2が、バックボード25の外面側(シート後方側)の周縁部上にそれぞれ位置した状態とされるようになっている。
【0025】
また、上記バックボード25は、上記挿入により、高さ方向に伸張した面材23Aの弾発力を受けて、高さ方向に押し挟まれる格好で袋状部23内に挿入された位置にて長手方向Ld(図2参照)にも短手方向Ls(図2参照)にも係止された状態として保持されるようになっている。また、上記バックボード25の挿入により、袋状部23を構成する面材23Aの他、中間ピース22Bも更に張りが持たされた状態となって保持される。また、上記バックボード25の挿入により、バックボード25の上下側の各周縁部と中間ピース22Bとの間には、上述した各縫合部22F1,22F2が位置することで、各縫合部22F1,22F2により束ねられている、上ピース22A(下ピース22C)の縫合された先の端面部T1と、中間ピース22Bの縫合された先の端面部T2と、面材23Aの縫合された先の端面部T3とに加え、上記上ピース22Aの縫合部22F1(下ピース22Cの縫合部22F2)まで延びる端面部T4と、面材23Aのバックボード25によって伸張された部位の端面部T5とが、それぞれ折り重なるように積層状に重ね合されて成る5重の面部が位置づけられるようになっている。これら5重の面部は、それぞれ、バックボード25よりも軟質な構成となっていることから、バックボード25の上下側の各周縁部は、それらの角部が、上述した5重に積層された軟質の面部構造によって、中間ピース22B(表皮材20)に角張って浮き出ないように軟らかく覆われた状態として保護されるようになっている。
【0026】
詳しくは、上記各縫合部22F1,22F2は、バックボード25が袋状部23内に圧入されて面材23Aが伸張する張力作用により、バックボード25の外面上から立ち上がる形に起こし上げられた状態とされ、中間ピース22Bと上ピース22A(下ピース22C)との間に縫合部22F1(縫合部22F2)の立ち上がりに伴う段差形状M1(段差形状M2)が形成されるようになっている。このように、上記バックボード25の圧入構造を利用して、中間ピース22Bと上ピース22A(下ピース22C)との間に、段差形状M1(段差形状M2)による意匠面を形作ることができるようになっている。これらの段差形状M1,M2は、比較的硬質となる各縫合部22F1,22F2の支えにより、立ち上がりの良い形に仕上げられると共に、各縫合部22F1,22F2により束ねられた各端面部T1〜T3による支えにより、上記立ち上がり後に滑らかに上ピース22A(下ピース22C)と面一状となる形へと繋げられるように仕上げられた状態とされている。
【0027】
このように、車両用シートバック1に、バックボード25の配設により必要な剛性を確保すると共に、表皮材20(中間ピース22B)に張りを持たせることができるにもかかわらず、表皮材20(中間ピース22B)にバックボード25の周縁部を角張らせないようにすることができる。また、上記バックボード25が、袋状部23の長辺S1,S2間(短手方向Ls)に押し挟まれてセットされるようになっていることから、袋状部23(中間ピース22B)を、上記長辺S1,S2間、すなわち短い寸法間で、両端側から引張ってテンションをかけた状態として、シワが寄らない良好な状態で張設することができる。
【0028】
以上、本発明の実施形態を1つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施することができるものである。例えば、バックボードの材質としては、表皮材に比して十分に高い剛性及び強度を備える樹脂、ゴム、金属その他の種々の材質を適用することができ、また、フェルト等の軟質材を複数枚重ねることによって硬質化させて形成したものであってもよい。また、袋状部の面材の材質としては、上記実施例で示したゴムの他、表皮材よりも高い伸張性を備えた弾性部材であれば、どのような材質のものであっても構わない。また、面材の構成として、表皮材と同等もしく低い伸張性の面材を使用して、その一部を分断してバネやゴム等の弾性体を間に介在させることで、表皮材よりも高い伸張性を持たせた構成としたものであってもよい。また、袋状部を構成する表皮材の構成面部と面材との結合は、縫合によるものでなくてもよく、接着等の各種の結合手段を適用することができる。また、袋状部は、2枚の面材が袋状に重なって形成されるように袋織りされて形成されるものであってもよい。
【0029】
また、表皮材に形成する袋状部は、上側に開口した袋状とされて、バックボードが袋状部内に上側から挿入されてセットされるものであってもよい。また、バックボードの袋状部内への挿入方向は、例えば、袋状部が矩形状に形成されている場合において、上記実施例で示したような長手方向に開口が形成されて挿入されるものであっても、短手方向に開口が形成されて挿入されるものであっても構わない。なお、袋状部の形状は、正方形や三角形や台形等の矩形以外の形に形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 車両用シートバック
10 シートバック本体
11 バックフレーム
11A 支持バネ
11B ワイヤー
12 バックパッド
12A 張出部位
12B 空間部分
20 表皮材
21 表側覆い面部
22 裏側覆い面部
22A 上ピース(隣接面部)
22B 中間ピース(構成面部)
22C 下ピース(隣接面部)
22C1 ポケット
22D サイドピース
22E フック
22F1 縫合部
22F2 縫合部
22F3 縫合部
23 袋状部
23A 面材
23B 開口
24 スライドファスナー
25 バックボード
26 フェルト材
S1,S2 長辺
S3,S4 短辺
Ha 高さ寸法
Hb 高さ寸法
Wa 幅寸法
Wb 幅寸法
Ld 長手方向
Ls 短手方向
T1〜T5 端面部
M1,M2 段差形状


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバック本体の背面部に覆われる表皮材と、該表皮材の構成面部の内面側に面材が重ねられて袋状に形成された袋状部と、該袋状部内に前記面材と面を重ねる向きに詰め込まれて前記シートバック本体の背面部を覆った状態として設けられる、前記表皮材よりも硬質なバックボードと、を有する車両用シートバックであって、
前記袋状部を構成する前記面材は、前記表皮材の構成面部よりも高い伸張性を備え、前記バックボードは、前記袋状部の内径よりも大きく形成され、前記袋状部内に前記バックボードがセットされた状態では、前記面材が前記表皮材の構成面部よりも大きく伸張して前記面材と前記表皮材の構成面部との結合部が前記バックボードの外面側の周縁部に位置した状態として配設されることを特徴とする車両用シートバック。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートバックであって、
前記袋状部を構成する面材は、前記表皮材の構成面部に重ね合わされて袋状に共縫いされて結合されており、前記袋状部内に前記バックボードがセットされることにより、前記面材と前記表皮材の構成面部との縫合部が、前記面材と前記構成面部とにかかる張力作用により前記バックボードの周縁部の外面上から立ち上がる形に起こし上げられた状態となり、前記表皮材の構成面部と該構成面部と隣接する周縁部が共縫いされた前記表皮材の隣接面部との間に前記縫合部の立ち上がりに伴う段差形状が形成されるようになっていることを特徴とする車両用シートバック。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−60077(P2013−60077A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199156(P2011−199156)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】