説明

車両用シートパッド

【課題】薄肉化しても座り心地に優れる車両用シートパッドを提供する。
【解決手段】ポリウレタンフォームよりなる車両用シートパッドにおいて、厚さが50〜80mmであり、円板形の負荷子で負荷速度50mm/minにて加圧して撓み量を測定する撓み試験法において、撓み量が該車両用シートパッドの厚さの25%及び50%となったときの反力をF25及びF50とすると、F50/F25≦1.73であることを特徴とする車両用シートパッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄肉化しても座り心地に優れる車両用シートパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用シートパッドには、クッション性の高い軟質ポリウレタンフォームからなるシートパッドが使用されている。かかる車両用シートパッドは、近年、燃費向上のために車高を低くするなどの理由から、薄肉化が要請されている。例えば、特開2005−211251号公報には、パッド厚みが30〜70mmのクッションパッドが記載されている。
【0003】
しかしながら、このように車両用シートパッドを薄肉化した場合、クッション感が低下したり、底突き感ないしへたり感が生じたりして、座り心地が悪くなるという問題がある。かかる問題を解決するために、従来、種々の取り組みがなされている。
【0004】
例えば、特開2005−124744号公報には、シートクッションパッドを高密度化することが記載されている。かかる高密度化により、6Hz前後の高周波数の振動吸収性が改善され、薄肉化による座り心地の悪化が改善される。また、実開平6−19604号公報には、高弾性フォームを上層に配置し、粘弾性フォームを下層に配置した積層構造のシートクッション構造が記載されている。下層側粘弾性フォームが上層側高弾性フォームを介して柔らかいフィット感を使用者に間接的に与え、上層高弾性フォームがクッション感を使用者に直接与え、これらの相乗的作用により座り心地の改善が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−211251号公報
【特許文献2】特開2005−124744号公報
【特許文献3】実開平6−19604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開2005−124744号公報のようにシートクッションパッドを高密度化した場合、その分だけ材料を要するため、材料費の増加やシート重量の増加などの問題が生じる。また、上記実開平6−19604号公報のようにシートクッションを2重構造にすると、その分だけ厚さが大きくなる、部品点数が多くなるなどの問題が生じる。さらに、かかるシートパッドの高密度化ないし高弾性化のみでは、着座後のクッション感の十分な改善を図ることが困難である。
【0007】
本発明は、薄肉化しても座り心地に優れる車両用シートパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用シートパッドは、ポリウレタンフォームよりなる車両用シートパッドにおいて、厚さが50〜80mmであり、円板形の負荷子で負荷速度50mm/minにて加圧して撓み量を測定する撓み試験法において、撓み量が該車両用シートパッドの厚さの25%及び50%となったときの反力をF25及びF50とすると、F50/F25≦1.73であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の車両用シートパッドは、請求項1において、前記比(F50/F25)が1.5以上1.73以下であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の車両用シートパッドは、請求項1又は2において、F25≦490N≦F50
であることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の車両用シートパッドは、請求項1ないし3のいずれか1項において、JIS K 6400の試験法によるヒステリシスロスが14〜22%であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の車両用シートパッドは、請求項1ないし4のいずれか1項において、JIS K 6400による25%硬度が150〜280Nであることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の車両用シートパッドは、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ポリウレタンフォームは、ポリオール成分配合液及びイソシアネート成分を含有するウレタン配合原液を発泡成形してなるものであり、該ポリオール成分配合液中のポリオールは、重量平均分子量が8500〜12000であることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7の車両用シートパッドは、請求項6において、セル径が500〜1200μmであり、リブの太さが80〜250μmであり、セル穴の個数が6〜10穴/セルであることを特徴とするものである。なお、ポリウレタンフォームはセルの集合体であり、セル穴の個数が6〜10穴/セルとは、1つのセルに存在する穴が6〜10個であることを表わす。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車両用シートパッドによると、F50/F25≦1.73となっており、反力の少しの増加により、厚さが25%から50%まで大きく撓むため、底つき感が解消されてクッション感が向上し、座り心地に優れたものとなる。
【0016】
本発明において、F25≦490N≦F50であると、一般的な着座荷重(490N)付近における単位荷重変化当たりの撓み量が大きくなるため、底つき感が解消されてクッション感が向上し、座り心地に優れたものとなる。
【0017】
本発明において、ヒステリシスロスが14〜22%であると、ふらつき感がなく、かつクッション感により優れたものとなる。
【0018】
本発明において、25%硬度が150〜280Nであると、よりクッション感が向上し、座り心地に優れたものとなる。
【0019】
本発明の車両用シートパッドに用いられるポリウレタンフォームとしては、セル径が500〜1200μmであり、リブの太さが80〜250μmであり、セル穴の個数が6〜10穴/セルであることがより好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1の荷重−撓み曲線を示すグラフである。
【図2】比較例1の荷重−撓み曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の車両用シートパッドは、厚さが50〜80mm好ましくは55〜75mmとりわけ60〜70mmである。厚さが50mm以上特に55mm以上とりわけ60mm以上であると、底つき感が抑制される。80mm以下特に75mm以下とりわけ70mm以下であると、ふらつき感が抑制される。また、厚さが小さいため、車高を低くすることができる。
【0022】
本発明において、反力F25,F55とは、円板形の負荷子(鉄研型負荷子)を該車両用シートパッドに当て、負荷速度50mm/minにて加圧する。そして、撓み量が車両用シートパッドの非荷重時における厚さの25%又は50%になったときの反力をそれぞれ反力F25,F50とする。
【0023】
本発明では、反力F25及び反力F50が、F50/F25≦1.73との関係を有する。このため、単位荷重変化当たりの撓み量が大きくなり、静ばね定数(硬さ変化率)が小さくなる。これにより、反力の少しの増加により、厚さが25%から50%まで大きく撓むことになり、底つき感が解消されてクッション感が向上し、座り心地に優れたものとなる。これら反力F25及び反力F50は、さらにF25≦490N≦F50との関係を有することが好ましい。これにより、一般的な着座荷重(490N)付近における単位荷重変化当たりの撓み量が大きくなり、静ばね定数(硬さ変化率)が小さくなる。例えば、一般的な体重を有する乗員が着座後、路面の凹凸による車両の揺れ等により着座荷重が変化すると、シートパッドが大きく撓むことになる。このため、底つき感が解消されてクッション感が向上し、座り心地に優れたものとなる。上記比F50/F25は、1.70以下であるのが好ましい。上記比F50/F25は、1.50以上特に1.53以上であるのが好ましい。これにより、後述する材料を用いて、車両用シートパッドを容易に製造することができる。
【0024】
なお、上記撓み試験における厚さ30%及び40%時の反力F30,F40については、F30≦490N≦F40であるのがより好ましい。
【0025】
車両用シートパッドのJIS K 6400の試験法によるヒステリシスロスは、14〜22%である。このヒステリシスロスは、特に16%以上とりわけ18%であるのが好ましく、20%以下とりわけ19%以下であるのが好ましい。ヒステリシスロスが14%以上であると、ふらつき感がより抑制される。ヒステリシスロスが22%以下であると、着座後の微小変位挙動に対する反力がより小さくなり、クッション感に優れ、座り心地がより良好なものとなる。
【0026】
車両用シートパッドが柔かすぎると、撓みが大きく、底つきが生じ易い。逆に硬すぎると、撓みが小さすぎ、表面が硬すぎる。このようなことから、本発明の車両用シートパッドのJIS K 6400による25%硬度は、150〜280Nが好ましく、50%硬度は、250〜500Nが好ましい。
【0027】
本発明の車両用シートパッドを構成するポリウレタンフォームは、セル径が500〜1200μmであるのが好ましい。また、リブの太さが80μm〜250μmであるのが好ましい。さらに、セル穴の個数が6〜18穴/個であるのが好ましい。また、このポリウレタンフォームは、膜の破れ度合が60〜100%であるのが好ましい。
【0028】
本発明に従って車両用シートパッドを製造する場合のウレタン配合原液の組成は、特に制限はなく、一般的に採用されている配合のものであればいずれも用いることができる。
【0029】
ウレタン配合原液の調製に用いるポリオールとしては、重量平均分子量が8500〜12000特に9000〜10000のものが好適に用いられる。また、ポリオールとして、1分子当たりの平均官能基数が2〜6特に3〜4のものが好適に用いられる。ここで、1分子当たりの平均官能基数とは、原料の平均官能基数から計算される理論値を、官能基数であると見なしたものである。このポリオールを用いることにより、上記の通り、厚さが50〜80mmであり、F50/F25≦1.73かつF25≦490N≦F50である車両用シートパッドを容易に製造し得る。
【0030】
このポリウレタンフォームは、SEM分析により観察されたセル径が500μm以上特に700μm以上であるのが好ましく、1200μm以下特に1000μm以下であるのが好ましい。また、このポリオールは、SEM分析により観察されたリブの太さが80μm以上特に100μm以上であるのが好ましく、250μm以下特に200μm以下であるのが好ましい。さらに、このポリオールは、SEM分析により観察されたセル穴の個数が6〜10穴/セルであるのが好ましい。また、このポリオールは、膜の破れ度合が60%以上特に70%以上、100%以下であるのが好ましい。セル膜厚みは300nm以上、600nm以下であるのが好ましい。
【0031】
このポリオールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの低分子ポリオール;エチレンジアミン、4,4’−メチレン−ビス−2−クロロアニリン、4,4’−メチレン−ビス−2−エチルアニリンなどのアミン化合物又は低分子ポリオール若しくはアミン化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加重合して得られる、ビスフェノールのプロピレンオキシド付加物などのポリエーテルポリオール;更には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの多価アルコールとフタル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸などの多塩基酸との縮合重合物であって末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ヒマシ油、トール油などを用いることができる。
【0032】
ポリオール成分配合液はポリオール、触媒、整泡剤、必要に応じて添加されるその他の添加成分を配合して混合することにより調製される。
【0033】
ウレタン配合原液の調製に用いるイソシアネート成分としては特に制限はなく、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートであって、脂肪族系及び芳香族ポリイソシアネート化合物、更にこれらの変性物が包含される。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの変性物としては、カルボジイミド変性物、プレポリマー変性物が挙げられる。本発明において好ましいポリイソシアネートは、芳香族系ポリイソシアネート又は芳香族系ポリイソシアネートの変性物であり、特に好ましくはジフェニルメタンイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
また、発泡剤としては、ポリウレタンフォームの製造に使用される全ての発泡剤が使用できる。例えば、低沸点不活性溶剤としてトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のフロン系化合物等、メチレンクロライド、液化炭酸ガス反応によってガスを発生するものとして水、酸アミド、ニトロアルカン等、熱分解してガスを発生するものとして重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等がある。これらのうち、好ましい発泡剤としては、メチレンクロライド、水等が挙げられる。
【0035】
整泡剤としては、シリコーンオイル等を用いることができる。
【0036】
触媒としては、通常のポリウレタンフォームの製造に使用される全ての触媒が使用できる。例えば、ジブチルチンジウラレート、スタナスオクトエート等の錫系触媒、トリエチルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の3級アミン類等が挙げられる。
【0037】
ポリオール成分配合液には、更に必要に応じて、難燃剤、その他の添加成分を配合しても良い。難燃剤としては、トリス(2−クロロエチル)フォスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェート等のような従来公知の難燃剤の他、尿素、チオ尿素のような有機質粉末或いは金属水酸化物、三酸化アンチモン等の無機質粉末を用いることができる。また、その他の助剤としては、顔料、染料などの着色粉末、タルク、グラファイトなどの粉末、ガラス短繊維、その他の無機増量剤や有機溶媒などが挙げられる。
【0038】
本発明で用いるポリオール成分配合液の配合組成には特に制限はないが、例えば次のような配合組成とすることが好ましい。
ポリオール成分:100
触媒:0.1〜2.0
整泡剤:0.1〜2.0
その他の添加成分:5.0以下
【0039】
また、イソシアネート成分は、このようなポリオール成分配合液とイソシアネート成分とを混合して得られるウレタン配合原液のイソシアネートインデックスが、90〜110程度となるように混合することが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。なお、ウレタン配合原液の調製に用いるポリオールとしては、表1に示すものを用いた。
【0041】
【表1】

【0042】
実施例1〜12及び比較例1〜24
表2に示す配合のポリオール成分配合液と、イソシアネート成分(TM20)とを混合して調製したウレタン配合原液(イソシアネートインデックスについては表3〜6の通り)を金型に注入して発泡成形することにより、表3〜6に示す厚みの車両用シートパッドを製造した。
【0043】
【表2】

【0044】
<荷重−撓み特性の測定>
各車両用シートパッドについてF25,F50を測定した。結果をF50/F25の値と共に表3〜6に示す。また、実施例1及び比較例7の荷重−撓み曲線を、それぞれ、図1及び図2に示す。
【0045】
<25%硬度の測定>
各テストピースについて、JIS K 6400に準拠して25%硬度を測定した。その結果を表3〜6に示す。
【0046】
<座り心地性の評価>
各テストピースに実際に着座し、座り心地を、「××」、「×」、「△」、「○」及び「◎」の5段階で評価した。その結果を表3〜6に示す。
【0047】
<ヒステリシスロスの測定>
各テストピースについて、JIS K 6400の試験法に準拠してヒステリシスロスを測定した。その結果を表3〜6に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
<結果>
実施例1〜12は、座り心地に優れている。このことから、F50/F25≦1.73とすることにより、厚さを50〜80mmと小さくしても、車両用シートパッドの座り心地が良好になることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォームよりなる車両用シートパッドにおいて、厚さが50〜80mmであり、円板形の負荷子で負荷速度50mm/minにて加圧して撓み量を測定する撓み試験法において、撓み量が該車両用シートパッドの厚さの25%及び50%となったときの反力をF25及びF50とすると、F50/F25≦1.73であることを特徴とする車両用シートパッド。
【請求項2】
請求項1において、前記比(F50/F25)が1.5以上1.73以下であることを特徴とする車両用シートパッド。
【請求項3】
請求項1又は2において、
25≦490N≦F50
であることを特徴とする車両用シートパッド。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、JIS K 6400の試験法によるヒステリシスロスが14〜22%であることを特徴とする車両用シートパッド。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、JIS K 6400による25%硬度が150〜280Nであることを特徴とする車両用シートパッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記ポリウレタンフォームは、ポリオール成分配合液及びイソシアネート成分を含有するウレタン配合原液を発泡成形してなるものであり、
該ポリオール成分配合液中のポリオールは、重量平均分子量が8500〜12000であることを特徴とする車両用シートパッド。
【請求項7】
請求項6において、セル径が500〜1200μmであり、リブの太さが80〜250μmであり、セル穴の個数が6〜10穴/セルであることを特徴とする車両用シートパッド。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−125397(P2012−125397A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279297(P2010−279297)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】