説明

車両用シート

【課題】車両用シートにアームレストと不使用時にコンパクトに収納可能なテーブルとを設けるにあたり、より少ない部品点数で構成可能とする。
【解決手段】シート20の側部にはアームレスト30が常設された状態として備えられており、アームレスト30は着座者が着座するシートクッションの骨格をなすフレーム部材23に固定されて立設された支柱32,34の上部に肘掛基部40を設けることにより構成されている。アームレスト30の外側位置にはアームレスト30と並列してテーブル50が配設されており、テーブル50は天板52が支持構造60を介して支柱32,34に支持されている。支持構造60は、天板52の一端が支柱32,34に回動自在に連結されるとともに、該回動により天板が水平に保持される使用状態位置と、天板が前記支柱に沿った直立状態の収納位置とに配置切り替え可能な構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。特に、側部にテーブルを備えた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、連続する2つの着座部の間にアームレストとテーブルとを備えた自動車のリアシートが記載されている。このリアシートにおいては、アームレストはシートバック部分に格納されており、前方に倒すように引き出して使用可能とされている。テーブルは、2つの着座部の間のシートクッションの裏面に設けられており、前方へ略180度回動され回動後の上面がテーブルとして利用可能となっている。
【0003】
また、下記特許文献2,3には、アームレストは備えられていないが、テーブルを備えた独立シートが開示されている。これらのシートにおいては、テーブルを固定するための専用のフレームをシートの側部に立設して該フレームに回動可能にテーブルが取り付けられている。テーブルは天板が水平な使用状態位置と、シートの側部に沿う直立状態とされる収納位置とに切り替え可能とされており、不使用時には収納位置としてコンパクトに配置することができる。そのため、例えば、シートアレンジの自由度の向上や車室内の移動性を向上に寄与することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−240553号公報
【特許文献2】特開2002−172041号公報
【特許文献3】特開2003−19916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなテーブルは専用のフレームに支持された構成とされており、アームレストを備えるシートに追加設定した場合、部品点数が増加するという問題点があった。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両用シートにアームレストと不使用時にコンパクトに収納可能なテーブルとを設けるにあたり、より少ない部品点数で構成可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段をとる。
第1の発明は、着座可能とされたシートの側部にはアームレストが常設された状態として備えられており、該アームレストは着座者が着座するシートクッションの骨格をなすフレーム部材に固定されて立設された支柱の上部に肘掛基部を設けることにより構成されており、前記常設されたアームレストの外側位置には該アームレストと並列してテーブルが配設されており、該テーブルは物を載置することのできる天板が支持構造を介して前記支柱に支持される構成であり、前記テーブルの支柱への支持構造は、前記天板の一端が前記支柱に回動自在に連結されるとともに、該回動により天板が水平に保持される使用状態位置と、天板が前記支柱に沿った直立状態の収納位置とに配置切り替え可能な構成とされていることを特徴とする車両用シートである。
【0008】
第1の発明によれば、天板が水平に保持される使用状態位置と、天板が支柱に沿った直立状態の収納位置とに配置切り替え可能なテーブルが、常設されたアームレストを構成する支柱に支持されている。アームレストとテーブルとで支柱を共有することにより、部品点数を少なくすることができる。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明の車両用シートであって、前記テーブルの天板にはカップホルダ部が付設されていることを特徴とする車両用シートである。
【0010】
第2の発明のシートによれば、少ない部品点数でありながらカップホルダ機能をも兼ね備えることができる。
【0011】
第3の発明は、上記第1または第2の発明の車両用シートであって、前記常設されたアームレストの長手方向前方位置にはカップホルダが設けられていることを特徴とする車両用シート。
【0012】
第3の発明によれば、テーブルの配置に関わらず着座者がカップホルダを使用することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記第1の発明によれば、車両用シートにアームレストと不使用時にコンパクトに収納可能なテーブルとを設けるにあたり、より少ない部品点数で構成可能とすることができる。
上記第2の発明によれば、少ない部品点数でありながらカップホルダ機能をも兼ね備えることができる。
上記第3の発明によれば、テーブルの配置に関わらず着座者がカップホルダを使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら本発明の最良の形態について説明する。なお、各図において矢印でF・B・L・Rと示しているが、これは前・後・左・右を示しており、前,後は車両の前後方向の前方,後方を意味しており、左,右は車両後方から前方を見たときの車両の左右方向(車幅方向)の左方,右方を意味している。
【0015】
[実施形態1]
本実施形態に係る車両用シート(以下、単にシートと称する。)20は、図1に示される3列のシートを備える自動車10に装備されている。この自動車10では前から1列目には運転席12と助手席13とが備えられている。2列目には通路16を挟んで離間して配置された2つの独立したシート18,20が備えられている。3列目に備えられたシート14は座面が連続する一続きの所謂ベンチシートで構成されている。この自動車10は、2列目に配置されたシート18,20の間の通路16を通って3列目のシート14へ移動可能にシートが配置されている所謂ウォークスルータイプの自動車である。2列目の右側に配置されているシート20に本発明が適用されている。
【0016】
図2,3に示されるように、シート20は、着座者を直接支持することのできる構成として座面となるシートクッション22、背凭れとなるシートバック24および着座者の頭を支えるヘッドレスト26を備えるとともに、両側部には着座者が肘をもたせ掛けることのできる右アームレスト28と左アームレスト30とを常設された状態として備えている。そして、通路16側の側部には、左アームレスト30と並列してテーブル50を備えている。このテーブル50は、物を載置することのできる天板52が水平に保持される使用状態位置(図2参照)と、直立状態の収納位置(図3参照)とに配置切り替え可能な構成とされている。本実施形態においては、左アームレスト30とテーブル50の構造に特徴を有している。シート20を構成するその他の部分については特に変更を要しないのでその説明は省略する。
【0017】
左アームレスト30は、シート20の左側部において、図2等に示される通常姿勢位置のシートバック24の側方位置から当該シート20の前端位置付近に渡り、シート20の前後方向に沿って設けられている。この左アームレスト30は、図4に示されるように、基本的な骨格部材として2本の支柱32,34と肘掛基部40とを備えている。2本の支柱32,34はシート20の側部において前後方向に間隔を置いて立設されており、下端がブラケット36を介してシートクッション22(図2参照)の骨格をなすフレーム部材23に固定されている。肘掛基部40は、2本の支柱32,34の上端に掛け渡された水平材である。肘掛基部40の上に表皮材で表装されたパッド部材44が固定されて着座者が肘をもたせ掛けることのできる肘掛部42(図2参照)が設けられている。
【0018】
図3に示されるように、このシート20は、左アームレスト30の肘掛部42の長手方向前方位置には肘掛部42に隣接してカップホルダ90を備えている。このカップホルダ90は、ホルダ本体92と蓋部材94とを主体として構成されている。ホルダ本体92は略箱状をなし、上方およびシートクッション22側の側面(右側面)が切り欠かれて開口部92aとされている。この開口部92a内に、蓋部材94が前後方向に沿う軸回りに90度回動可能に保持されている。蓋部材94は断面略L字状であり、ホルダ本体92の開口部92aを覆う閉め状態(図2参照)をとることができるとともに、該蓋部材94を回動させることにより上部を開放させてカップホルダとして利用可能な開き状態(図3参照)をとることができるようになっている。図4に示されるように、カップホルダ90は支柱32にから前方へ水平に張り出す取り付け基部96の上に固定されている。
【0019】
シート20は、支柱32,34、肘掛基部40及びカップホルダ90の取り付け基部96を覆い隠すことのできる2枚の樹脂製のシールド部材(アウタシールド38、インナシールド39)を有している。したがって、支柱32,34、肘掛基部40及びカップホルダ90の取り付け基部96は、アウタシールド38とインナシールド39との間の空間に配置され露出しないようになっており、見かけ上、アウタシールド38とインナシールド39の上に肘掛部42とカップホルダ90とが載置されような格好となっている。
【0020】
なお、右アームレスト28は、カップホルダ90を備えていないものの、2本の支柱の上部に肘掛基部を設けることにより構成されており、その基本構成は左アームレスト30と同様である。
【0021】
左アームレスト30に並列して設けられたテーブル50は、図4等に示されるように、物を載置することのできる天板52が支持構造60を介して左アームレスト30の骨格を構成する支柱32,34に支持されて構成されている。そして、支持構造60により天板52が通路16側に張り出して水平に保持される使用状態位置(図2参照)と、シート20の側面に沿う直立状態の収納位置(図3参照)とに配置切り替え可能な構成とされている。
【0022】
天板52は、使用状態位置で上面となる表面52aには縁の浅い平らなトレー部54が設けられており、トレー部54の前方位置にカップホルダ部56が付設されている。このカップホルダ部56は、2つのカップを左右隣り合う位置に保持することができる。天板52は、カップホルダ部56の設けられている部分はトレー部54の設けられている部分に比して厚みが大きく、カップホルダ部56はトレー部54に比して深い窪みとして形成されている。
このテーブル50は、使用状態位置に配置されて天板52が水平に保持されるとき、図1に二点鎖線で示されるように、天板52が通路16に張り出してシート20と左側のシート18との間の空間(通路16)を遮るように配置される。そのため、テーブル50は、当該テーブル50を備えたシート20の着座者と左側のシート18の着座者とが共同で使用することが可能となっている。
【0023】
図4に示されるように、支持構造60は2本の支柱のそれぞれに対して設けられているが、それらの構造は同じであり共に動作して機能するものであるから、ここでは図4〜6を参照しながら前側の支柱32に設けられた支持構造60を取り上げて説明する。
【0024】
図5等に示されるように、支持構造60は天板52の裏面52bに沿うアーム62と、屈伸可能な支持リンク70とを備えている。アーム62は、天板52の裏面52bに左右方向に沿って固定されている。アーム62は一端が支軸64を介して支柱32に回動自在に連結されている。これにより天板52は使用状態位置における左右方向でみて右側の一端52cがアーム62を介して支柱32に回動自在に連結されている。テーブル50は支軸64を支点として天板52とアーム62とが一体で回動させられることにより、使用状態位置(図5参照)と収納位置(図6参照)とに配置が切り替えられる。
支持リンク70は、天板52の裏面52b側においてアーム62の他端と支柱32とを連結している。支持リンク70は、2本のリンク72,80が支軸76を介して屈伸可能に連結されたものである。以下、説明の便宜上、支柱32と連結されているリンク72を第1リンクと称し、アーム62と連結されているリンク80を第2リンクと称する。
第1リンク72は、支軸64を介して支柱32とアーム62の一端とが連結されている高さ位置よりも下方位置において支軸74を介して支柱32に回動自在に連結されている。この第1リンク72はバネ部材78により図5でみて時計回りに付勢されている。
第2リンク80は、先端が支軸82を介してアーム62の他端に回動自在に連結されている。この支軸82は、第2リンク80に接合されており第2リンク80に対して相対回転しないようになっている。そして、図4に示されるように、この支軸82は後ろ側の支柱34に設けられた支持構造60に掛け渡されており、支柱34に係る第2リンク80の先端とアーム62の他端とをも連結している。この支軸82の後端部にはL字状に屈曲したの操作レバー84(図5参照)が延設されている。
【0025】
以下、支持構造60の動作をテーブル50の配置切り替え方法とともに説明する。
テーブル50を使用するときは、アーム62を介して支柱32に回動自在に連結された天板52の一端52cとは反対側の他端52dを持ち上げ、天板52とアーム62とを一体で回動させる。それに従動して支持リンク70が伸ばされながらアーム62が略水平に張り出されるとバネ部材78の付勢力により支持リンク70が突っ張り状態となる。それにより、天板52が水平状態で維持される(使用状態位置、図5参照)。
テーブル50を使用しないときは、操作レバー84を図5でみて時計回りに回転させる。それにより、第2リンク80は支軸82とともに図5でみて時計回りに回動させられる。上記使用状態位置をとるとき、第2リンク80はバネ部材78の付勢力により支軸82を支点として図5でみて反時計回りに付勢されている。そのため操作レバー84を図5でみて時計回りに回転させることによりバネ部材78の付勢力に抗して第2リンク80が回動させられることとなる。第2リンク80が回動すると、それに従動して第1リンク72が支軸74を支点として図5でみて反時計回りに回動させられ、支持リンク70は屈曲する。支持リンク70の屈曲にともないアーム62と天板52は支軸64を支点として回動し、天板52の他端52dが下方へ移動する。それにより、天板52は自重で支軸64に垂れ下がった格好となり、支持リンク70は天板52アウタシールド38との間に折り込まれる。図4に示されるように、アウタシールド38には天板52の厚みの一部を収納することのできる窪みとしての収納凹部38aが形成されているとともに、該収納凹部38aには支持構造60の支軸82が嵌合可能な嵌合爪38bが設けられている。自重で垂れ下がった天板52をアウタシールド38に押圧することにより支軸82が嵌合爪38bに嵌め合わされる(図6参照)。それにより、天板52は天板52の厚み方向の一部がアウタシールドの窪みに収納された状態で支柱32,34に沿った直立状態を維持することができる(収納位置)。このテーブル50は、支軸82が嵌合爪38bに嵌め合わされる際に節度感が得られるため確実に収納位置に配置される。
【0026】
以上の構成のシート20によれば以下の作用効果を奏する。
シート20は、左アームレスト30とテーブル50とで支柱32,34を共有することにより、常設された左アームレスト30とコンパクトに収納可能なテーブル50とをより少ない部品点数で構成することが可能である。
テーブル50は、天板52に窪みを設けることによりカップホルダ部56が付設されているため、部品点数を増やすことなくシート20にカップホルダ機能を付与することができる。
【0027】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内でその他種々の実施形態が考えられるものである。
テーブル50には必ずしもカップホルダ部56を設ける必要はなく、例えば、天板52の表面52aの全体を平らに形成してもよい。
また、本発明のシートは必ずしもカップホルダ90を設ける必要はないが、上記実施形態1のように、テーブル50の配置に関わらず常時使用可能なカップホルダ90を設けるのが好ましい。
本発明のシートは、テーブル50が使用状態位置と収納位置とに配置切り替え可能であるため、例えばウォークスルータイプの自動車内の独立シートとして好ましく使用することができ、左右方向にスライド可能な独立シートに対して適用することも可能である。したがって、シートの左右方向にスペースが確保可能な場合には、テーブルをシートの左右両側に設置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態1に係る乗用車の模式平面図である。
【図2】本発明の実施形態1に係るシートの斜視図であり、テーブルの使用状態位置を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1に係るシートの斜視図であり、テーブルの収納位置を示す図である。
【図4】図2に示すシートの左側部の分解斜視図である。
【図5】図4に示すシートの左側部の正面図であり、テーブルの使用状態位置を示す図である。
【図6】図4に示すシートの左側部の正面図であり、テーブルの収納位置を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
20 (車両用)シート
22 シートクッション
23 フレーム部材
30 左アームレスト
32,34 支柱
40 肘掛基部
42 肘掛部
44 パッド部材
50 テーブル
52 天板
52c (天板の)一端
56 カップホルダ部
60 支持構造
62 アーム
64 支軸
70 支持リンク
72 第1リンク
74 支軸
76 支軸
78 バネ部材
80 第2リンク
82 支軸
84 操作レバー
90 カップホルダ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座可能とされたシートの側部にはアームレストが常設された状態として備えられており、
該アームレストは着座者が着座するシートクッションの骨格をなすフレーム部材に固定されて立設された支柱の上部に肘掛基部を設けることにより構成されており、
前記常設されたアームレストの外側位置には該アームレストと並列してテーブルが配設されており、該テーブルは物を載置することのできる天板が支持構造を介して前記支柱に支持される構成であり、
前記テーブルの支柱への支持構造は、前記天板の一端が前記支柱に回動自在に連結されるとともに、該回動により天板が水平に保持される使用状態位置と、天板が前記支柱に沿った直立状態の収納位置とに配置切り替え可能な構成とされていることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートであって、
前記テーブルの天板にはカップホルダ部が付設されていることを特徴とする車両用シート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用シートであって、
前記常設されたアームレストの長手方向前方位置にはカップホルダが設けられていることを特徴とする車両用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−214798(P2009−214798A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62464(P2008−62464)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】