説明

車両用シート

【課題】ウェビングがシートバックと車体との間に挟み込まれることを回避でき、乗員の意に反するシートバックのロック機構の解除を防止でき、構造を小型化でき、シートバックの上端部の表皮材の変形や破損を防止でき、乗員にかかる負担を軽減できる車両用シートを提供する。
【解決手段】シートバック5の上面10から操作ノブ7が突出し、ウェビング12がシートバック5の上面10に接し、ベゼル20がシートバック5の上面10に重ね合わされ、ベゼルアッパとベゼルロアはシート幅方向外側W2に延出され、フック34がベゼルアッパに形成され、折り返し部の先端の下方に位置するベゼルアッパの延出端部の裏面に第1係合凸部が突設され、第1被係合部がベゼルロアの延出端部に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
シートバックがシートクッションに対して前倒し可能に構成され、
前記シートバックを起立姿勢にロック及びロック解除するロック機構が前記シートバックの上端部に設けられ、
前記シートバックのシート幅方向外側の上面から前記ロック機構の操作ノブが突出し、
前記シートバックの後方の車体に設けられたシートベルト取出し口とシート側方の下側の固定部とにシートベルト装置のウェビングが張り渡され、
前記ウェビングが前記シートバックのシート幅方向外側の上面に接する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
上記の車両用シートでは、シートバックをシートクッション側に前倒しした時に、シートベルト装置のウェビングがシートバックの上端部からシート幅方向外側に外れる虞がある。このようにウェビングがシートバックの上端部からシート幅方向外側に外れると、シートバックを起立姿勢に戻した時にウェビングがシートバックと車体との間に挟み込まれてしまう。
そこで、従来、特許文献1に開示されているように、シートバックの上端部にシートベルトを挿通させるベルトガイドを設けてあった(以下、「第1の技術」と称する)。このベルトガイドは、ウェビングが挿通するリング部を操作ノブの上端部に一体に設けて構成されていた(特許文献1の第2図参照)。
また、前記特許文献1には、シートバックの上面の表皮材との間にウェビングを挿通させるフィニッシャーをシートバックの上端部に設けて前記ベルトガイドを構成した技術(以下、「第2の技術」と称する)も開示されている(特許文献1の第3図参照)。
この第2の技術において、前記フィニッシャーは操作ノブ挿通口を備え、シート幅方向に長い帯状に形成されてシートバックの上面の表皮材に重ね合わされ、ウェビングよりもシート幅方向外側のフィニッシャーの外側端部と、ウェビングよりもシート幅方向内側の操作ノブ挿通口周りのフィニッシャーの内側端部とがシートバックの表皮材に固定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−121955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、第1の技術では、乗員がシートベルトのウェビングを引っ張った時に操作ノブが引っ張られてシートバックのロック機構がロック解除されることがあった。
また、第2の技術では、ウェビングよりもシート幅方向外側のフィニッシャーの端部がシートバックの上面に固定されていたために、フィニッシャーがシート幅方向外側に長くなり、フィニッシャーが大型化していた。
さらに、ウェビングよりもシート幅方向外側のフィニッシャーの外側端部と、ウェビングよりもシート幅方向内側の操作ノブ挿通口周りのフィニッシャーの内側端部とがシートバックの上面に固定されて、フィニッシャーと表皮材の間にウェビングが挿通されていたために、ウェビングからの引っ張り力がフィニッシャーを介して操作ノブ挿通口周りの表皮材に加わり、表皮材が変形したり破損したりしやすかった。
例えば、車体側にフックを設け、シートバックを前倒しする時は乗員がウェビングをフックに引っ掛けて保持させる手段もあるが、この手段では、乗員によるウェビングの移動操作が必要であり、乗員に負担がかかる。
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、シートバックを前倒し姿勢から起立姿勢に戻した時に、シートベルト装置のウェビングがシートバックと車体との間に挟み込まれることを回避でき、乗員の意に反するシートバックのロック機構の解除を防止でき、構造を小型化でき、シートバックの上端部の表皮材の変形や破損を防止でき、乗員にかかる負担を軽減できる車両用シートを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の特徴は、
シートバックがシートクッションに対して前倒し可能に構成され、
前記シートバックを起立姿勢にロック及びロック解除するロック機構が前記シートバックの上端部に設けられ、
前記シートバックのシート幅方向外側の上面から前記ロック機構の操作ノブが突出し、
前記シートバックの後方の車体に設けられたシートベルト取出し口とシート側方の下側の固定部とにシートベルト装置のウェビングが張り渡され、
前記ウェビングが前記シートバックのシート幅方向外側の上面に接する車両用シートであって、
操作ノブ挿通口を備えたベゼルが前記シートバックのシート幅方向外側の上面に重ね合わされ、
前記ベゼルは、前記シートバックの表皮材を上下に挟み込むベゼルアッパとベゼルロアとから成り、
前記ベゼルアッパとベゼルロアはシート幅方向外側に延出され、
前記ベゼルアッパの延出端部から上方に延びる立ち上がり部と、前記立ち上がり部の上端部からシート幅方向内側に延びる折り返し部とを備えたフックが前記ベゼルアッパに形成され、
前記折り返し部の先端の下方に位置する前記ベゼルアッパの延出端部の裏面に、前記表皮材に形成された第1貫通孔に挿通する第1係合凸部が突設され、
前記第1係合凸部が係合する第1被係合部が前記ベゼルロアの延出端部に形成されている点にある。(請求項1)
【0006】
この構成によれば、ベゼルはベゼルアッパとベゼルロアとから成り、ベゼルアッパの延出端部の裏面に突設された第1係合凸部が表皮材の第1貫通孔に挿通される。さらに、ベゼルロアの延出端部に形成された第1被係合部に前記第1係合凸部が係合し、ベゼルアッパとベゼルロアとでシートバックの表皮材を上下に挟み込む。これにより、ベゼルを表皮材に強固に固定することができる。
そして、ウェビングがシートバックの上端部からシート幅方向外側に外れようとした場合、前記フックでウェビングを受け止めることができる。従って、ウェビングがシートバックの上端部から車室外側に外れることを防止でき、シートバックを起立姿勢に戻した時に、ウェビングがシートバックと車体との間に挟み込まれることを防止することができる。
前記ベゼルアッパの第1係合凸部は、シートベルト装置のウェビングからの引っ張り力が大きく加わるベゼルアッパ部分、すなわち、フックの折り返し部の先端の下方に位置するベゼルアッパの延出端部の裏面に突設されて、ベゼルロアの第1被係合部に係合しているから、ベゼルアッパで前記引っ張り力に十分抗することができ、ベゼルアッパの耐久性を向上させることができる。
その結果、ウェビングをベゼルで安定して支持することができ、第1係合凸部及び第1被係合部付近のベゼルアッパとベゼルロアの変形を防止することができるとともに、第1係合凸部及び第1被係合部付近の表皮材の変形や破損を防止することができる。
また、シート幅方向外側に位置するベゼルアッパの延出端部側のフックでウェビングを受け止めており、前記フックは、ベゼルアッパ及びベゼルロアの操作ノブ挿通口付近の表皮材からはシート幅方向外側に離れているから、ベゼルアッパ及びベゼルロアの操作ノブ挿通口付近の表皮材に加わるウェビングからの引っ張り力を小さくすることができ、前記操作ノブ挿通口付近の表皮材の変形や破損も防止することができる。
しかも、前記第1係合凸部がウェビングよりもシート幅方向外側に位置する構造に比べると、ベゼルアッパとベゼルロアがシート幅方向外側に長くなることを回避することができ、ベゼルアッパ及びベゼルロアを小型化することができる。
また、ウェビングに操作ノブが引っ張られることがないから、乗員の意に反するシートバックのロック機構の解除を防止できる。
さらに、ウェビングを車体側のフックに引っ掛ける等の乗員によるウェビングの移動操作を不要にすることができ、乗員の負担を軽減することができる。(請求項1)
【0007】
本発明において、
前記第1係合凸部は、断面においてシート幅方向に長いリング状に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項2)
【0008】
第1係合凸部をシート幅方向に長く設定することができ、より広い範囲でベゼルをシートバックの上端部に固着することができて、第1係合凸部と第1被係合部の係合構造の剛性・強度を向上させることができる。また、前記係合構造が、シート幅方向に加わる力に対して強い構造になり、シート幅方向でのベゼルの変形を抑制しやすくすることができる。(請求項2)
【0009】
本発明において、
前記第1係合凸部のシート幅方向の中心と、前記フックの折り返し部の先端とがシート幅方向で略同一位置に位置していると、次の作用を奏することができる。(請求項3)
【0010】
シートベルト装置のウェビングからの引っ張り力が大きく加わるベゼルアッパ部分、すなわち、フックの折り返し部の先端の下方のベゼルアッパ部分に第1係合凸部のシート幅方向の中心が位置しているから、ベゼルアッパが前記引っ張り力に十分抗することができ、ベゼルアッパの強度を強くすることができて、ベゼルアッパの耐久性を向上させることができる。(請求項3)
【0011】
本発明において、
前記操作ノブ挿通口はシート幅方向に長い長孔状に形成され、
前記ベゼルアッパの操作ノブ挿通口の周縁部の裏面に、前記表皮材に形成された第2貫通孔に挿通される第2係合凸部が突設され、
前記第2係合凸部が係合する第2被係合部が前記ベゼルロアの操作ノブ挿通口の周縁部に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項4)
【0012】
ベゼルアッパの操作ノブ挿通口の周縁部の裏面に突設された第2係合凸部が表皮材の第2貫通孔に挿通され、ベゼルロアの操作ノブ挿通口の周縁部に形成された第2被係合部に第2係合凸部が係合する。
つまり、ベゼルロアの延出端部に形成された第1被係合部に、ベゼルアッパの延出端部の裏面に突設された第1係合凸部が係合するのに加え、ベゼルロアの操作ノブ挿通口の周縁部に形成された第2被係合部に、ベゼルアッパの操作ノブ挿通口の周縁部の裏面に突設された第2係合凸部が係合して、ベゼルアッパとベゼルロアとでシートバックの表皮材を上下に挟み込む。これにより、ベゼルを表皮材に、より強固に固定することができる。
また、前記第2被係合部はシート幅方向に長いベゼルロアの操作ノブ挿通口の周縁部に形成されているから、第2被係合部をシート幅方向に長く設定することができ、より広い範囲でベゼルをシートバックの上端部に固着することができる。
その結果、第2係合凸部と第2被係合部の係合構造の剛性・強度を向上させることができる。そして、前記係合構造が、シート幅方向に加わる力に対して強い構造になり、シート幅方向でのベゼルの変形を抑制しやすくすることができる。(請求項4)
【0013】
本発明において、
前記第1被係合部は、前記ベゼルロアに形成された長孔と、前記長孔の周縁部に立設された縦壁と、この縦壁に形成され、前記第1係合凸部の係合突起が係合する被係合突起とを備え、
前記第2被係合部は、前記ベゼルロアのベルト挿入口の周縁部に立設された縦壁と、前記縦壁に形成され、前記第2係合凸部の係合突起が係合する被係合突起とを備えていると、次の作用を奏することができる。(請求項5)
【0014】
ベゼルロアの第1被係合部の縦壁が表皮材の第1貫通孔に挿入され、ベゼルロアの第2被係合部の縦壁が表皮材の第2貫通孔に挿入される。これにより、表皮材の第1貫通孔の周縁部が第1係合凸部の下端部に噛み込まれることを防止することができ、表皮材の第2貫通孔の周縁部が第2係合凸部の下端部に噛み込まれることを防止することができる。
そして、第1係合凸部の係合突起が、第1被係合部の縦壁に形成された被係合突起に係合し、第2係合凸部の係合突起が、第2被係合部の縦壁に形成された被係合突起に係合する。これにより、ベゼルアッパとベゼルロアを強固に連結することができ、ベゼルアッパとベゼルロアとでシートバックの表皮材を上下に確実に挟み込むことができる。(請求項5)
【0015】
本発明において、
前記ベゼルロアの第1被係合部の縦壁と前記第2被係合部の縦壁とを接続する第1補強リブが前記ベゼルロアの上面に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項6)
【0016】
シート幅方向に沿ったベゼルの曲げ(シート前後方向に沿う軸芯周りのベゼルの曲げ)に対するベゼルの剛性を向上させることができ、ベゼルアッパとベゼルロアをシート幅方向外側に延出したことに起因するベゼルアッパとベゼルロアの剛性の低下を抑制することができる。(請求項6)
【0017】
本発明において、
前記ベゼルロアの周部に上方に張り出すフランジが形成され、
前記第1被係合部よりもシート幅方向外側に位置する前記ベゼルロアの周部のフランジと前記第1被係合部の縦壁とを接続する第2補強リブが前記ベゼルロアの上面に形成され、
前記第2被係合部よりもシート幅方向内側に位置する前記ベゼルロアの周部のフランジと前記第2被係合部の縦壁とを接続する第3補強リブが前記ベゼルロアの上面に形成されていると、次の作用を奏することができる。(請求項7)
【0018】
前記ベゼルロアの周部に形成された上方に張り出すフランジにより表皮材に対する挟持圧力を強くすることができる。これにより、表皮材をベゼルアッパとベゼルロアで強固に挟み込むことができる。
また、前記第1被係合部よりもシート幅方向外側に位置する前記ベゼルロアの周部のフランジと前記第1被係合部の縦壁とを接続する第2補強リブが前記ベゼルロアの上面に形成され、前記第2被係合部よりもシート幅方向内側に位置する前記ベゼルロアの周部のフランジと前記第2被係合部の縦壁とを接続する第3補強リブが前記ベゼルロアの上面に形成されているから、シート幅方向に沿ったベゼルの曲げ(シート前後方向に沿う軸芯周りのベゼルの曲げ)に対するベゼルの剛性をより向上させることができる。その結果、ベゼルアッパとベゼルロアをシート幅方向外側に延出したことに起因するベゼルアッパとベゼルロアの剛性の低下をより確実に抑制することができる。(請求項7)
【0019】
本発明において、
前記ベゼルアッパの上面は、シート前後方向の中心側ほど上方に位置する断面山形の傾斜面に形成され、
前記ベゼルアッパの上面のシート前後方向の中心にパーティションラインが位置するように前記ベゼルアッパが成形型で成形されていると、次の作用を奏することができる。(請求項8)
【0020】
上面が意匠面、下面(裏面)が表皮材への当接面となるベゼルアッパを成形する場合、通常、上下方向に型抜きする。これにより、意匠面にシボをつけることもできるようになる。しかしながら、本発明のベゼルアッパには前記フックが設けられているので、上下方向に型抜きすることができない。スライド型を用いてベゼルアッパを成形する手段もあるが、この手段ではスライド型の移動方向が意匠面に沿った方向になるために意匠面にシボをつけることが困難になる。
これに対して、本発明の上記構成によれば、前記ベゼルアッパの上面は、シート前後方向の中心側ほど上方に位置する断面山形の傾斜面に形成され、前記ベゼルアッパの上面のシート前後方向の中心にパーティションラインが位置するように前記ベゼルアッパが成形型で成形されているから、ベゼルアッパを成形する場合、シート前後方向に成形型を抜くことができ、スライド型を用いることなくベゼルアッパのフックを成形することができる。
また、ベゼルアッパの意匠面である上面の全体にシボをつけることができ、ウェビングがシートバックの上端部から車室外側に外れることを防止するベゼルアッパの機能を損なうことなくベゼルアッパの外観を向上させることができる。(請求項8)
【0021】
本発明において、
前記ベゼルアッパの周部及び前記ベゼルロアの周部よりも内側の表皮材収容空間の高さ寸法はシート前後方向中央側ほど長く設定されていると、次の作用を奏することができる。(請求項9)
【0022】
ベゼルアッパとベゼルロアで表皮材を挟み込んだ状態で、表皮材の貫通孔の周縁部の圧縮力が小さくなる。従って、シート前後方向中央側での表皮材からのベゼルに対する反力を少なくすることができる。これにより、第1係合凸部と第1被係合部の係合構造や第2係合凸部と第2被係合部の係合構造に加わる表皮材からの反力を小さくでき、前記係合構造の負担を軽減することができる。その結果、前記係合構造の耐久性をより向上させることができる。(請求項9)
【0023】
本発明において、
前記操作ノブは可撓性を備えたバンド部材で形成され、
前記操作ノブと前記フックの立ち上がり部との間に前記ウェビングが位置すると、次の作用を奏することができる。(請求項10)
【0024】
可撓性を備えたバンド部材で形成された操作ノブとフックでウェビングのシート幅方向の移動を阻止することができる。
これにより、シートバックをシートクッション側に前倒しした時に、ウェビングがシート幅方向に移動することを阻止することができるとともに、シートバックの上端部から車室外側に外れることをより確実に防止することができ、シートバックを起立姿勢に戻した時に、ウェビングがシートバックと車体との間に挟み込まれることをより確実に防止することができる。
また、操作ノブは可撓性を備えているので、ウェビングがリトラクタから引き出された時に操作ノブと接触してもウェビングが損傷しにくくなる。(請求項10)
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、
シートバックを前倒し姿勢から起立姿勢に戻した時に、シートベルト装置のウェビングがシートバックと車体との間に挟み込まれることを回避でき、乗員の意に反するシートバックのロック機構の解除を防止でき、構造を小型化でき、シートバックの上端部の表皮材の変形や破損を防止でき、乗員にかかる負担を軽減できる車両用シートを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】車両用シートの斜視図
【図2】(a)はベゼルアッパを意匠面側から見た斜視図、(b)はベゼルアッパを裏面側から見た斜視図、(c)はベゼルアッパの平面図、(d)はベゼルアッパの側面図
【図3】車両用シートに設けられたベゼルとその周囲の構造の斜視図
【図4】図2(c)のA−A断面図
【図5】ベゼルアッパとベゼルロアの組み付け方法をベゼルの表側から見た状態を示す斜視図
【図6】ベゼルアッパとベゼルロアの組み付け方法をベゼルの裏側から見た状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動車の車体1にリアドアのドア開口1Kが形成され、ドア開口1Kの車室内側のフロアにリアシート3(車両用シートに相当)が支持されている。リアシート3は、乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション4と、乗員の上半身を支持するシートバック5とから成り、シートバック5がシートクッション4側に前倒し可能に構成されている。シートバック5を前倒しすることで後部荷室が車両前方側Frに拡大する。
【0028】
前記シートバック5は、シートバックフレームと、シートバックフレームに支持されるシートバックパッドと、シートバックパッドを覆う表皮材6(図4〜図6参照)とから成る。シートバックパッドはウレタンフォームで成形されている。
【0029】
そして、シートバック5のシート幅方向外側W2の上端部(右側の上端部)に、シートバック5を起立姿勢にロック及びロック解除するロック機構(図示せず)が設けられ、シートバック5のシート幅方向外側W2の上面10(表皮材6の意匠面)からロック機構の操作ノブ7が突出している。操作ノブ7は可撓性を備えたバンド部材(ポリエステル布材)で帯板状に形成されている。
【0030】
乗員が前記操作ノブ7を上方に引っ張ると、シートバック5内のロックと車体側のストライカ(図示せず)との係合が解除され、シートバック5をシートクッション4側に前倒しすることができるようになる。シートバック5の上面10の左右中央部にはヘッドレストの左右一対の支持脚を各別に挿入する左右一対の支持孔5Hが開口している。
【0031】
また、シートバック5の後方の車体1の側部に設けられたシートベルト取出し口8Kとシート側方の下側の固定部(図示せず)とにシートベルト装置11のウェビング12が張り渡され、ウェビング12がシートバック5のシート幅方向外側W2の上面10に接している。
【0032】
リトラクタは車体の内部に取り付けられるウェビング12の巻き取り装置であり、ウェビング12を常時巻き取り付勢している。ウェビング12はシートバック5の上方のクォータトリム8に形成されたスリット状のシートベルト取出し口8Kを通して下方に引き出されている。
【0033】
前記ウェビング12の長手方向中間部にはタング(図示せず)が外挿され、このタングをシートクッション4の車室内側の側方のバックル(図示せず)に挿入係合して、乗員をウェビング12でリアシート3に締め付ける。
【0034】
[ベゼル20の構造]
図3に示すように、操作ノブ挿通口20Kを備えた樹脂製のベゼル20がシートバック5のシート幅方向外側W2の上面10に重ね合わされている。このベゼル20は、シートバック5の表皮材6を上下に挟み込むベゼルアッパ30とベゼルロア40とから成る(図2〜図5参照)。前記操作ノブ挿通口20Kもシート幅方向(車幅方向)に長く形成されている。
【0035】
前記ベゼルアッパ30とベゼルロア40はシート幅方向に長い板状に成形されており、シート幅方向外側(車室外側)W2に延出されてウェビング12の幅よりも長く形成されている。
【0036】
[ベゼルアッパ30の構造]
図2(a)〜図2(d),図3に示すように、ベゼルアッパ30の延出端部31から上方に延びる立ち上がり部32と、立ち上がり部32の上端部からシート幅方向内側W1に延びる舌片状の折り返し部33とを備えたフック34がベゼルアッパ30に形成されている。図4,図5にも示すように、ベゼルアッパ30のシート幅方向内側W1の端部30Aとベゼルロア40のシート幅方向内側W1の端部40Aとは舌片状に形成され、シート幅方向内側W1の端縁30A1,40A1が円弧状に形成されている。
【0037】
また、図2(a)〜図2(d),図4,図5に示すように、前記折り返し部33の先端33Aの下方に位置するベゼルアッパ30の延出端部31の裏面に、表皮材6に形成された第1貫通孔6H1に挿通する第1係合凸部35が突設されている。
【0038】
[ベゼルアッパ30の第1係合凸部35の構造]
第1係合凸部35は、断面においてシート幅方向に長いリング状に形成されており、シート幅方向に長い(ベゼルアッパ30の長手方向に長い)断面長円形の筒状の縦壁35Tと、この縦壁35Tの頂部に形成された係合突起35Kとを備えている。この係合突起35Kは縦壁35Tの全周にわたって形成され、縦壁35Tの径方向外方側に突出している。縦壁35T及び係合突起35Kには周方向に間隔を空けて位置する複数のスリット35Sが形成されている。これにより、縦壁35T及び係合突起35Kを弾性変形しやすくすることができ、第1係合凸部35をベゼルロア40の後述の第1被係合部45に係合しやすくすることができる。
また、前記第1係合凸部35のシート幅方向の中心35Cと、フック34の折り返し部33の先端33Aとがシート幅方向で略同一位置に位置している(図2(c),図2(d)参照)。
【0039】
[ベゼルアッパ30の第2係合凸部36の構造]
ベゼルアッパ30の操作ノブ挿通口20Kの周縁部の裏面に、表皮材6に形成された第2貫通孔6H2に挿通される第2係合凸部36が突設されている。第2係合凸部36は、シート幅方向に長い(ベゼルアッパ30の長手方向に長い)断面長円形の筒状の縦壁36Tと、この縦壁36Tの頂部に形成された係合突起36Kとを備えている。この係合突起36Kは縦壁36Tの全周にわたって形成され、縦壁36Tの径方向外方側に突出している。縦壁36T及び係合突起36Kには周方向に間隔を空けて位置する複数のスリット36Sが形成されている。これにより、縦壁36T及び係合突起36Kを弾性変形しやすくすることができ、第2係合凸部36をベゼルロア40の後述の第2被係合部46に係合しやすくすることができる。
【0040】
[ベゼルアッパ30の上面30Mの構造]
図4に示すように、ベゼルアッパ30の上面30Mは、ベゼルアッパ30の幅方向中心側(シート前後方向の中心側)ほど上方に位置する断面山形の傾斜面に形成され、ベゼルアッパ30の上面30Mのシート前後方向の中心にパーティションラインPL(図2(c)参照)が位置するようにベゼルアッパ30が成形型で成形されている。
【0041】
[ベゼルロア40の構造]
図4〜図6に示すように、ベゼルロア40の全周部に上方に張り出すフランジ40Fが形成されている。そして、ベゼルアッパ30の第1係合凸部35が係合する第1被係合部45がベゼルロア40の延出端部41に形成され、ベゼルアッパ30の第2係合凸部36が係合する第2被係合部46がベゼルロア40の操作ノブ挿通口20Kの周縁部に形成されている。
【0042】
[ベゼルロア40の第1被係合部45の構造]
ベゼルロア40の第1被係合部45はシート幅方向に長い長円形の長孔状に形成されており、ベゼルロア40に形成された長孔45Hと、長孔45Tの周縁部に立設された縦壁45Tと、この縦壁45Tの頂部に形成され、第1係合凸部35の係合突起35Kが係合する被係合突起45Kとを備えている。この被係合突起45Kは縦壁45Tの全周にわたって形成され、縦壁45Tの径方向外方側に突出している。シート幅方向における前記長孔45Hの長さはベルト挿入口20Kの長さよりも短く設定されている。
【0043】
そして、第1被係合部45の長手方向の中心45C(長孔45Hの長手方向の中心、図5,図6参照)と、フック34の折り返し部33の先端33Aとがシート幅方向で略同一位置に位置している。
【0044】
[ベゼルロアの第2被係合部46の構造]
図4〜図6に示すように、ベゼルロア40の第2被係合部46は、ベゼルロア40のベルト挿入口20Kの周縁部に立設された縦壁46Tと、この縦壁46Tの頂部に形成され、第2係合凸部36の係合突起36Kが係合する被係合突起46Kとを備えている。この被係合突起46Kは縦壁46Tの全周にわたって形成され、縦壁46Tの径方向内方側に突出している。
【0045】
[ベゼルロア40の補強リブ構造]
図5に示すように、ベゼルロア40の第1被係合部45の縦壁45Tと第2被係合部46の縦壁46Tとを接続するトラス状の第1補強リブ47がベゼルロア40の上面に形成されている。第1補強リブ47は、ベゼルアッパ30の幅方向で互いに間隔を空けて位置する一対の平行な直線状のリブ47Aと、一対の直線状のリブ47A間に架け渡され、互いに斜めに交差する複数の傾斜したリブ47Bとから成る。
【0046】
また、第1被係合部45よりもシート幅方向外側W2に位置するベゼルロア40の周部のフランジ40Fと第1被係合部45の縦壁45Tとを接続する第2補強リブ48がベゼルロア40の上面に形成され、第2被係合部46よりもシート幅方向内側W1に位置するベゼルロア40の周部のフランジ40Fと第2被係合部46の縦壁46Tとを接続する第3補強リブ49がベゼルロア40の上面に形成されている。
【0047】
前記第2補強リブ48はベゼルロア40の幅方向(シート前後方向)で互いに間隔を空けて位置する一対の平行な直線状のリブ48Aから成り、前記第3補強リブ49はベゼルロア40の幅方向で互いに間隔を空けて位置する一対の平行な直線状のリブ49Aから成る。
【0048】
前記第1補強リブ47はトラス状に形成されているが、前記第1補強リブ47が、第2補強リブ48や第3補強リブ49と同様に、前記一対の平行な直線状のリブ47Aだけから構成されていてもよい。すなわち、第1補強リブ47は、前記複数の傾斜したリブ47Bを備えない構造であってもよい。
【0049】
図4に示すように、ベゼルアッパ30の周部のフランジ40F及びベゼルロア40の周部よりも内側の表皮材収容空間Sの高さ寸法はベゼルアッパ30の幅方向中心側(シート前後方向中央側)ほど長くなるように設定されている。
【0050】
また、図5に示すように、フランジ40Fで囲まれているベゼルロア40の上面に、多数の針状の突起50から成る突起群51が突設され、突起50が表皮材6に喰い込んで、ベゼルロア40が表皮材6にしっかりと固定されるよう構成されている。
【0051】
図3に示すように、ウェビング12のシート幅方向外側W2の一側部12Sがベゼルアッパ30の延出端部31とフック34の折り返し部33との間に挿通された状態でウェビング12がベゼルアッパ30の上面30Mに接している。すなわち、操作ノブ7とフック34の立ち上がり部32との間にウェビング12が位置している。
【0052】
上記の構成により、
(1) ベゼルアッパ30の延出端部31の裏面に突設された第1係合凸部35が表皮材6の第1貫通孔6H1に挿通され、ベゼルアッパ30の操作ノブ挿通口20Kの周縁部の裏面に突設された第2係合凸部36が表皮材6の第2貫通孔6H2に挿通される。そして、ベゼルロア40の延出端部41に形成された第1被係合部45に第1係合凸部35が係合し、ベゼルロア40の操作ノブ挿通口20Kの周縁部に形成された第2被係合部46に第2係合凸部36が係合して、ベゼルアッパ30とベゼルロア40とでシートバック5の表皮材6を上下に挟み込む。これにより、ベゼル20を表皮材6に、より強固に固定することができる。
また、ウェビング12がシートバック5の上端部からシート幅方向外側W2に外れようとした場合、フック34がウェビング12を受け止める。これにより、ウェビング12がシートバック5の上端部からシート幅方向外側に外れることを防止することができ、シートバック5を起立姿勢に戻した時に、ウェビング12がシートバック5と車体との間に挟み込まれることを防止することができる。
前記ベゼルアッパ30の第1係合凸部35は、シートベルト装置11のウェビング12からの引っ張り力が大きく加わるベゼルアッパ部分、すなわち、フック34の折り返し部33の先端33Aの下方に位置するベゼルアッパ30の延出端部31の裏面に突設されて、ベゼルロア40の第1被係合部45に係合するから、ベゼルアッパ30で前記引っ張り力に十分抗することができ、ベゼルアッパ30の耐久性を向上させることができる。
その結果、前記ウェビング12をベゼル20で安定して支持することができ、第1係合凸部35及び第1被係合部45付近のベゼルアッパ30とベゼルロア40の変形を防止することができるとともに、第1係合凸部35及び第1被係合部45付近の表皮材6の変形や破損を防止することができる。
また、シート幅方向外側W2に位置するベゼルアッパ30の延出端部31側のフック34でウェビング12を受け止めており、前記フック34は、ベゼルアッパ30及びベゼルロア40の操作ノブ挿通口20K付近の表皮材6からはシート幅方向外側W2に離れているから、ベゼルアッパ30及びベゼルロア40の操作ノブ挿通口20K付近の表皮材6に加わるウェビング12からの引っ張り力を小さくすることができ、前記操作ノブ挿通口20K付近の表皮材6の変形や破損も防止することができる。
しかも、前記第1係合凸部35がウェビング12よりもシート幅方向外側W2に位置する構造に比べると、ベゼルアッパ30とベゼルロア40がシート幅方向外側W2に長くなることを回避することができ、ベゼルアッパ30及びベゼルロア40を小型化することができる。
また、ウェビング12に操作ノブ7が引っ張られることがないから、乗員の意に反するシートバック5のロック機構の解除を防止できる。さらに、ウェビング12を車体側のフック(本実施形態の自動車の車体には設けてない)に引っ掛ける等の乗員によるウェビング12の移動操作を不要にすることができ、乗員の負担を軽減することができる。
【0053】
(2) 前記第1係合凸部35は、断面においてシート幅方向に長いリング状に形成されているから、第1係合凸部35をシート幅方向に長く設定することができ、より広い範囲でベゼル20をシートバック5の上端部に固着することができて、第1係合凸部35と第1被係合部45の係合構造の剛性・強度を向上させることができる。また、前記係合構造が、シート幅方向に加わる力に対して強い構造になり、シート幅方向でのベゼル20の変形を抑制しやすくすることができる。
さらに、前記第1被係合部45はシート幅方向に長い長孔状に形成されているから、第1被係合部45をシート幅方向に長く設定することができ、より広い範囲でベゼル20をシートバック5の上端部に固着することができて、第1係合凸部35と第1被係合部45の係合構造の剛性・強度を向上させることができる。また、前記係合構造が、シート幅方向に加わる力に対して強い構造になり、シート幅方向でのベゼル20の変形を抑制しやすくすることができる。
前記第2被係合部46はシート幅方向に長いベゼルロア40の操作ノブ挿通口20Kの周縁部に形成されているから、第2被係合部46をシート幅方向に長く設定することができ、より広い範囲でベゼル20をシートバック5の上端部に固着することができる。その結果、第2係合凸部36と第2被係合部46の係合構造の剛性・強度を向上させることができる。また、前記係合構造が、シート幅方向に加わる力に対して強い構造になり、シート幅方向でのベゼル20の変形を抑制しやすくすることができる。
【0054】
(3) シートベルト装置11のウェビング12からの引っ張り力が大きく加わるベゼルアッパ部分、すなわち、フック34の折り返し部33の先端33Aの下方のベゼルアッパ部分に第1係合凸部35のシート幅方向の中心35Cが位置しているから、ベゼルアッパ30が前記引っ張り力に十分抗することができ、ベゼルアッパ30の強度を強くすることができて、ベゼルアッパ30の耐久性を向上させることができる。
また、シートベルト装置11のウェビング12からの引っ張り力が大きく加わるベゼルロア部分、すなわち、前記フック34の折り返し部33の先端33Aの下方のベゼルロア部分に第1被係合部45の長手方向の中心45Cが位置しているから、ベゼルロア40が前記引っ張り力に十分抗することができ、ベゼルロア40の強度を強くすることができて、ベゼルロア40の耐久性を向上させることができる。
【0055】
(4) ベゼルロア40の第1被係合部45の縦壁45Tが表皮材6の第1貫通孔6H1に挿入され、ベゼルロア40の第2被係合部46の縦壁46Tが表皮材6の第2貫通孔6H2に挿入される。これにより、表皮材6の第1貫通孔6H1の周縁部が第1係合凸部35の下端部に噛み込まれることを防止することができ、表皮材6の第2貫通孔6H2の周縁部が第2係合凸部36の下端部に噛み込まれることを防止することができる。
そして、第1係合凸部35の係合突起35Kが、第1被係合部45の縦壁45Tに形成された被係合突起45Kに係合し、第2係合凸部46の係合突起46Kが、第2被係合部46の縦壁46Tに形成された被係合突起46Kに係合する。これにより、ベゼルアッパ30とベゼルロア40を強固に連結することができ、ベゼルアッパ30とベゼルロア40とでシートバック5の表皮材6を上下に確実に挟み込むことができる。
【0056】
(5) ベゼルロア40の第1被係合部45の縦壁45Tと第2被係合部46の縦壁46Tとを接続する第1補強リブ47がベゼルロア46の上面に形成されているから、シート幅方向に沿ったベゼル20の曲げ(シート前後方向に沿う軸芯周りのベゼル20の曲げ)に対するベゼル20の剛性を向上させることができ、ベゼルアッパ30とベゼルロア40をシート幅方向外側W2に延出したことに起因するベゼルアッパ30とベゼルロア40の剛性の低下を抑制することができる。
また、前記第1被係合部45よりもシート幅方向外側W2に位置するベゼルロア40の周部のフランジ40Fと第1被係合部45の縦壁45Tとを接続する第2補強リブ48がベゼルロア40の上面に形成され、第2被係合部46よりもシート幅方向内側W1に位置するベゼルロア40の周部のフランジ40Fと第2被係合部46の縦壁46Tとを接続する第3補強リブ49がベゼルロア40の上面に形成されているから、シート幅方向に沿ったベゼル20の曲げ(シート前後方向に沿う軸芯周りのベゼル20の曲げ)に対するベゼル20の剛性をより向上させることができる。その結果、ベゼルアッパ30とベゼルロア40をシート幅方向外側W2に延出したことに起因するベゼルアッパ30とベゼルロア40の剛性の低下をより確実に抑制することができる。
そして、前記ベゼルロア40の周部に形成された上方に張り出すフランジ40Fにより表皮材6に対する挟持圧力を強くすることができる。これにより、表皮材6をベゼルアッパ30とベゼルロア40で強固に挟み込むことができる。
【0057】
(6) 上面が意匠面、下面(裏面)が表皮材への当接面となるベゼルアッパを成形する場合、通常、上下方向に型抜きする。これにより、意匠面にシボをつけることもできるようになる。しかしながら、本発明のベゼルアッパ30には前記フック34が設けられているので、上下方向に型抜きすることができない。スライド型を用いてベゼルアッパ30を成形する手段もあるが、この手段ではスライド型の移動方向が意匠面に沿った方向になるために意匠面にシボをつけることが困難になる。
これに対して、本発明の上記構成によれば、前記ベゼルアッパ30の上面30Mは、シート前後方向の中心側ほど上方に位置する断面山形の傾斜面に形成され、ベゼルアッパ30の上面30Mのシート前後方向の中心にパーティションラインPLが位置するようにベゼルアッパ30が成形型で成形されているから、ベゼルアッパ30を成形する場合、シート前後方向に成形型を抜くことができ、スライド型を用いることなくベゼルアッパ30のフック34を成形することができる。
また、ベゼルアッパ30の意匠面である上面30Mの全体にシボをつけることができ、ウェビング12がシートバック5の上端部から車室外側に外れることを防止するベゼルアッパ30の機能を損なうことなくベゼルアッパ30の外観を向上させることができる。
【0058】
(7) 前記ベゼルアッパ30の周部及びベゼルロア40の周部よりも内側の表皮材収容空間Sの高さ寸法はシート前後方向中央側ほど長く設定されているから、ベゼルアッパ30とベゼルロア40で表皮材6を挟み込んだ状態で、表皮材6の第1貫通孔6H1と第2貫通孔6H2の周縁部の圧縮力が小さくなる。
従って、シート前後方向中央側での表皮材6からのベゼル20に対する反力を少なくすることができる。これにより、第1係合凸部35と第1被係合部45の係合構造や第2係合凸部36と第2被係合部46の係合構造に加わる表皮材6からの反力を小さくでき、前記係合構造の負担を軽減することができる。その結果、前記係合構造の耐久性をより向上させることができる。
【0059】
(8) 前記操作ノブ7は可撓性を備えたバンド部材で形成され、操作ノブ7とフック34の立ち上がり部32との間にウェビング12が位置するから、操作ノブ7とフック34でウェビング12のシート幅方向の移動を阻止することができる。この場合、操作ノブ7にある程度の剛性を備えさせる。
これにより、シートバック5をシートクッション4側に前倒しした時に、ウェビング12がシート幅方向に移動することを阻止することができるとともに、ウェビング12がシートバック5の上端部から車室外側に外れることをより確実に防止することができる。
その結果、シートバック5を起立姿勢に戻した時に、ウェビング12がシートバック5と車体との間に挟み込まれることをより確実に防止することができる。また、操作ノブ7は可撓性を備えているので、ウェビング12がクォータトリム8のスリット状のシートベルト取出し口8Kを通してリトラクタから引き出された時に操作ノブ7と接触してもウェビング12が損傷しにくくなる。
また、ウェビング12により操作ノブ7が隠れないようになっているので、操作ノブ7の操作を円滑に行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 車体(シートバックの上方の車体)
4 シートクッション
5 シートバック
6 表皮材
6H1 第1貫通孔
6H2 第2貫通孔
7 操作ノブ
8K シートベルト取出し口
10 上面(シートバックのシート幅方向外側の上面)
11 シートベルト装置
12 ウェビング
20 ベゼル
20K 操作ノブ挿通口
30 ベゼルアッパ
30M ベゼルアッパの上面
31 ベゼルアッパの延出端部
32 立ち上がり部
33 折り返し部
33A 折り返し部の先端
34 フック
35 第1係合凸部
35C 第1係合凸部のシート幅方向の中心
36 第2係合凸部
40 ベゼルロア
40F フランジ(ベゼルロアのフランジ)
41 ベゼルロアの延出端部
45 第1被係合部
45C 第1被係合部の長手方向の中心
45H 長孔
45K 被係合突起(第1係合凸部の係合突起が係合する第1被係合部の被係合突起)
45T 長孔の周縁部に立設された縦壁(第1被係合部の縦壁)
46 第2被係合部
46K 被係合突起(第2係合凸部の係合突起が係合する第2被係合部の被係合突起)
46T ベゼルロアのベルト挿入口の周縁部に立設された縦壁(第2被係合部の縦壁)
47 第1補強リブ
48 第2補強リブ
49 第3補強リブ
PL パーティションライン
S 表皮材収容空間
W1 シート幅方向内側
W2 シート幅方向外側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックがシートクッションに対して前倒し可能に構成され、
前記シートバックを起立姿勢にロック及びロック解除するロック機構が前記シートバックの上端部に設けられ、
前記シートバックのシート幅方向外側の上面から前記ロック機構の操作ノブが突出し、
前記シートバックの後方の車体に設けられたシートベルト取出し口とシート側方の下側の固定部とにシートベルト装置のウェビングが張り渡され、
前記ウェビングが前記シートバックのシート幅方向外側の上面に接する車両用シートであって、
操作ノブ挿通口を備えたベゼルが前記シートバックのシート幅方向外側の上面に重ね合わされ、
前記ベゼルは、前記シートバックの表皮材を上下に挟み込むベゼルアッパとベゼルロアとから成り、
前記ベゼルアッパとベゼルロアはシート幅方向外側に延出され、
前記ベゼルアッパの延出端部から上方に延びる立ち上がり部と、前記立ち上がり部の上端部からシート幅方向内側に延びる折り返し部とを備えたフックが前記ベゼルアッパに形成され、
前記折り返し部の先端の下方に位置する前記ベゼルアッパの延出端部の裏面に、前記表皮材に形成された第1貫通孔に挿通する第1係合凸部が突設され、
前記第1係合凸部が係合する第1被係合部が前記ベゼルロアの延出端部に形成されている車両用シート。
【請求項2】
前記第1係合凸部は、断面においてシート幅方向に長いリング状に形成されている請求項1記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第1係合凸部のシート幅方向の中心と、前記フックの折り返し部の先端とがシート幅方向で略同一位置に位置している請求項2記載の車両用シート。
【請求項4】
前記操作ノブ挿通口はシート幅方向に長い長孔状に形成され、
前記ベゼルアッパの操作ノブ挿通口の周縁部の裏面に、前記表皮材に形成された第2貫通孔に挿通される第2係合凸部が突設され、
前記第2係合凸部が係合する第2被係合部が前記ベゼルロアの操作ノブ挿通口の周縁部に形成されている請求項2又は3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記第1被係合部は、前記ベゼルロアに形成された長孔と、前記長孔の周縁部に立設された縦壁と、この縦壁に形成され、前記第1係合凸部の係合突起が係合する被係合突起とを備え、
前記第2被係合部は、前記ベゼルロアのベルト挿入口の周縁部に立設された縦壁と、前記縦壁に形成され、前記第2係合凸部の係合突起が係合する被係合突起とを備えている請求項4記載の車両用シート。
【請求項6】
前記ベゼルロアの第1被係合部の縦壁と前記第2被係合部の縦壁とを接続する第1補強リブが前記ベゼルロアの上面に形成されている請求項5記載の車両用シート。
【請求項7】
前記ベゼルロアの周部に上方に張り出すフランジが形成され、
前記第1被係合部よりもシート幅方向外側に位置する前記ベゼルロアの周部のフランジと前記第1被係合部の縦壁とを接続する第2補強リブが前記ベゼルロアの上面に形成され、
前記第2被係合部よりもシート幅方向内側に位置する前記ベゼルロアの周部のフランジと前記第2被係合部の縦壁とを接続する第3補強リブが前記ベゼルロアの上面に形成されている請求項6記載の車両用シート。
【請求項8】
前記ベゼルアッパの上面は、シート前後方向の中心側ほど上方に位置する断面山形の傾斜面に形成され、
前記ベゼルアッパの上面のシート前後方向の中心にパーティションラインが位置するように前記ベゼルアッパが成形型で成形されている請求項1〜7のいずれか一つに記載の車両用シート。
【請求項9】
前記ベゼルアッパの周部及び前記ベゼルロアの周部よりも内側の表皮材収容空間の高さ寸法はシート前後方向中央側ほど長く設定されている請求項8記載の車両用シート。
【請求項10】
前記操作ノブは可撓性を備えたバンド部材で形成され、
前記操作ノブと前記フックの立ち上がり部との間に前記ウェビングが位置する請求項1〜9のいずれか一つに記載の車両用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−192892(P2012−192892A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59849(P2011−59849)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】