説明

車両用ドアハンドル装置

【課題】ベースへのレバーの組付作業性に優れ、レバーの回転範囲の制約を受けにくく、組付後のレバーの回転動作を安定させることのできる車両用ドアハンドル装置の提供。
【解決手段】ハンドル支持部とレバー軸受部を有するハンドルベース2と、ハンドルベース2のハンドル支持部に、一端側を回動可能に支持されるハンドルグリップと、ハンドルベース2のレバー軸受部に回動可能に支持される回転軸部を有し、ハンドルグリップに連動して回動可能な作動レバー4とを備える。作動レバー4は、回転軸部の少なくとも一端側に、大径部38、41と、大径部38、41よりも先端側に形成される小径部39、42とを備える。ハンドルベース2は、ハンドル支持部を構成する、大径部38、41を保持可能な第1軸受孔21、大径孔24aと、大径部38、41が大径孔に保持されるまで小径部39、42をガイドする第1案内溝22、第2案内溝25とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアハンドル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ドアハンドル装置として、ハンドルグリップの操作により回動するレバーをベースに回動可能に軸支した構成が公知である(例えば、特許文献1参照)。この車両用ドアハンドル装置では、レバーに軸部が一体化され、その先端部分に二面幅部が形成されている。また、ベースには、軸支孔と、この軸支孔に連通する挿通溝が形成されている。そして、ベースにレバーを装着する際、軸部の二面幅部を挿通溝を介して軸支孔まで挿通して回転させることにより、軸部は軸支孔から脱落不能となる。
【0003】
しかしながら、前記特許文献1に記載の構成では、ベースにレバーを装着可能な範囲では、レバーの軸部がベースの軸受孔から脱落する恐れがあり、レバーを回動可能に支持できないため、レバーの回動範囲が制限される。つまり、レバーの組付に適した範囲と、レバーの回動に適した範囲とは、必ずオーバーラップしないように構成する必要があり、設計上の制約が大きい。また、ハンドルグリップを組み付けるまでは、レバーを脱落しない範囲に維持しておかなければならず、ハンドルグリップの組付作業が完了する前にレバーが脱落する恐れがある。この場合、再度、レバーを組み付け直さなければならず、作業が繁雑になる。
【0004】
また、他の車両用ドアハンドル装置として、ハンドルの軸部を、スプリングによって突出方向に付勢された押込可能とした構成が公知である(例えば、特許文献2参照)。この車両用ドアハンドル装置では、軸部をスプリングの付勢力に抗して押し込んだ状態で、ハンドルをハンドルカバーの所定位置に配置し、スプリングの付勢力により軸部を突出させて軸受孔に回転可能に支持されるようにしている。
【0005】
しかしながら、前記特許文献2に記載の構成では、スプリングの付勢力に抗して手で軸部を押し込んだ状態で、ハンドルカバーに対してハンドルを装着しなければならない。この場合、軸部を手で押し込んだ状態で、この軸部を軸受孔に位置合わせする必要がある上、手がハンドルカバーと干渉し、軸部を押し込んだままの状態に維持しておくことが難しいため、組付作業性が非常に悪い。また、組付状態を安定させようとすれば、スプリングによる付勢力を大きくする必要があるが、それでは組付時に軸部を押し込んだ状態に維持するのが困難となる。逆に、スプリングによる付勢力を弱くして組付作業性を重視すれば、組付後に軸部が軸受孔から脱落しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−323689号公報
【特許文献2】実開昭61−69360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ベースへのレバーの組付作業性に優れ、レバーの回転範囲の制約を受けにくく、しかも組付後のレバーの回動動作を安定させることのできる車両用ドアハンドル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
ハンドル支持部とレバー軸受部を有するハンドルベースと、
前記ハンドルベースのハンドル支持部に、一端側を回動可能に支持されるハンドルグリップと、
前記ハンドルベースのレバー軸受部に回動可能に支持される回転軸部を有し、前記ハンドルグリップに連動して回動可能な作動レバーと、
を備えた車両用ドアハンドル装置であって、
前記作動レバーは、前記回転軸部の少なくとも一端側に、大径部と、該大径部よりも先端側に形成される小径部とを備え、
前記ハンドルベースは、前記レバー軸受部を構成する、前記大径部を保持可能な大径孔と、大径部が大径孔に保持されるまで前記小径部をガイドする案内溝と、を備えたものである。
【0009】
この構成により、ハンドルベースに作動レバーを組み付ける際、作動レバーの小径部を案内溝に位置合わせし、この案内溝に沿って移動させるだけでよい。しかも、小径部が大径孔に至った時点で、大径部を軸方向に移動させれば、この大径部を大径孔で保持し、回転軸部を回転可能に支持することができる。つまり、大径部が大径孔から脱落する方向と、小径部が案内溝へと脱落する方向とが直交し、容易には脱落しにくい。そして、組付完了後は、レバーの回動範囲が制約されることもなく、回動動作を安定させることができる。
【0010】
前記作動レバーの大径部を、前記回転軸部に対して軸方向に移動可能に取り付けられる軸受リングで構成し、前記作動レバーの回転軸部に、前記軸受リングを軸方向に付勢する付勢手段を設け、
前記作動レバーは、前記回転軸部が前記案内溝にガイドされて前記大径孔に至ると、前記付勢手段の付勢力により前記軸受リングが移動して前記大径孔に保持されて回転可能に支持されるのが好ましい。
【0011】
この構成により、ハンドルベースに対して作動レバーを装着する際、案内溝に沿って回転軸部を大径部まで移動させるだけで、付勢手段による付勢力によって軸受リングは自動的に大径部に保持される。したがって、ハンドルベースへの作動レバーの組付作業をより一層簡素化して、組付作業性を向上させることが可能となる。
【0012】
前記軸受リングは、前記作動レバーの回転軸部に回転可能に取り付けられ、前記大径孔に保持された状態で、前記回転軸部を回転可能に支持するようにしてもよい。
【0013】
前記ハンドルベースは、前記作動レバーの大径部が前記大径孔に位置した時点で、前記小径部を回転可能に支持する小径孔を備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ハンドルベースに作動レバーを組み付ける際、小径部を案内溝に沿って移動させ、大径孔に至った時点で、大径部を軸方向に移動させ、大径孔に大径部を保持するだけでよい。このため、組付作業を簡略化して作業性を向上させることができる。しかも、組付作業が完了した状態では、大径部が大径孔から脱落する方向と、小径部が案内溝へと脱落する方向とが直交しているので、容易には脱落しにくく、作動レバーの回動状態を安定させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態に係るドアハンドル装置の側面断面図である。
【図2】(a)は図1のハンドルベースの背面図、(b)はA−A線断面図、(c)はB−B線断面図である。
【図3】(a)は図2のハンドルベースに装着する作動レバーの平面図、(b)は左側面図、(c)は右側面図である。
【図4】(a)は図2のハンドルベースへの作動レバーの装着途中の状態を示す平面図、(b)はその部分断面図である。
【図5】(a)は図2のハンドルベースへの作動レバーの装着完了後の状態を示す平面図、(b)はその部分断面図である。
【図6】図2のハンドルベースへの作動レバーの装着前後の状態を示す側面断面図である。
【図7】図2のハンドルベースへの作動レバーの装着完了後の状態を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
(1.全体構成)
図1は、本実施形態に係る車両用ドアハンドル装置を示す。この車両用ドアハンドル装置は、大略、ドアパネル1に設けたハンドルベース2に、ハンドルグリップ3のほか、図3に示す、作動レバー4、及び、リターンスプリング5を取り付けた構成である。そして、ハンドルグリップ3を引っ張ると、リターンスプリング5の付勢力に抗して作動レバー4が回動し、ロッド(図示せず)を介してラッチ機構(図示せず)が動作してドアが開放するようになっている。
【0018】
(1−1.ドアパネル)
ドアパネル1は、ドアの外面を構成し、両端部には第1開口部6と第2開口部7とがそれぞれ形成されている。第1開口部6には、ハンドルグリップ3の一端側を構成するアーム部27が挿通される。第2開口部7には、ハンドルグリップ3の他端部を構成する操作部28が挿通され、かつ、エンドカバー8を装着するための固定部材9が配設される。また、第1開口部6と第2開口部7との間には、内側に向かって窪んだ湾曲部10が形成されている。
【0019】
(1−2.ハンドルベース)
ハンドルベース2は、ドアパネル1の湾曲部10に沿う湾曲面11を備え、一端部にはハンドル支持部12が形成され、他端部には作動レバー4が回動可能に取り付けられるレバー軸受部13が形成されている。ハンドルベース2は、ドアパネル1に内側から取り付けられる。詳しくは、ハンドルベース2は、ドアパネル1の外面側に配設した固定部材9にネジ止めされ、この固定部材9とでドアパネル1を両側から挟持する。また、ハンドルベース2は、ドアパネル1の第1開口部6の縁部に係止される鍔部を備えたナット14に雄ネジ14aをネジ止めされることにより、このナット14とでドアパネル1を両側から挟持する。
【0020】
ハンドル支持部12には、後述するハンドルグリップ3のアーム部27が挿通する第1連通部15が形成されている。第1連通部15を構成する内壁には、軸支部16(図面からははっきりとは分からないが、対向方向に突出する一対の円柱状突出部で構成されている。)が設けられている。軸支部16にはハンドルグリップ3の一端部(アーム部27の軸受部29)が回動可能に支持されている。
【0021】
レバー軸受部13には、図2に示すように、ハンドルグリップ3の操作部28が挿通する第2連通部17と、作動レバー4の回転軸部33の両端小径部39、42を支持する第1軸受部18及び第2軸受部19が設けられている。第1軸受部18及び第2軸受部19は、第2連通部17の近傍(図2中上側)に設けられ、ハンドルベース2の長手方向に沿って所定間隔をもって対向して設けられている。
【0022】
第1軸受部18は、内側に突出する第1支持壁20aに、大径孔である第1軸受孔21と、この第1軸受孔21に連通する第1案内溝22とをそれぞれ形成したものである。第1軸受孔21は、第2軸受部19側が開口した円筒状の孔である。第1案内溝22は、第1軸受孔21の径方向に連接して形成され、第2軸受部19側、及び、内側(図2(a)中、紙面手前側)端が開口し、外側端が第1軸受孔21に連通している。すなわち、第1案内溝22は、第1軸受孔21の軸方向(深さ方向)に対して直交する方向に延びて形成されている。第1案内溝22の幅寸法は、後述する作動レバー4の第1小径部39は移動可能であるが、そこに装着する軸受リング36の筒状部38は侵入できない値に形成されている。第1軸受孔21の内径寸法は、軸受リング36の筒状部38が没入可能な値に形成されている。また、第1軸受部18には、第2軸受部19に向かってスプリング受部23が延設されている。このスプリング受部23には、後述するリターンスプリング5の一方の圧接部44aが圧接する。なお、第1案内溝22の深さ寸法は、第1軸受孔21よりも深くなっている。
【0023】
第2軸受部19は、第2支持壁20bに、第1軸受部18側が開口した円筒状の第2軸受孔24と、この第2軸受孔24に連通する第2案内溝25とをそれぞれ形成したものである。第2案内溝25は、第2軸受孔24の径方向に連接して形成され、第1軸受部18側、及び、内側(図2(a)中、紙面手前側)端が開口し、外側端が第2軸受孔24に連通している。すなわち、第2案内溝25は、第2軸受孔24の軸方向(深さ方向)に対して直交する方向に延びて形成されている。第2案内溝25の幅寸法は、後述する作動レバー4の第2小径部42は移動可能であるが、大径部である第2鍔部41は侵入できない値に形成されている。第2軸受孔24は大径孔24aと小径孔24bとからなる段付き穴構造で、小径孔24bで作動レバー4の第2小径部42を回転自在に支持し、大径孔24aで第2鍔部41を保持可能となっている。なお、第2案内溝25と大径孔24aは同一深さであり、小径孔24bはさらに深くなっている。
【0024】
(1−3.ハンドルグリップ)
ハンドルグリップ3は、図1に示すように、本体部26と、その一端側から延設されるアーム部27と、他端側から延設される操作部28とを備える。
【0025】
アーム部27は、2枚の板状体を所定間隔で対向させ、本体部26の一端部から内側に突出させ、次いで側方へと屈曲させた形状となっている。アーム部27の先端には、両側面に形成される窪みにより、前記ハンドルベース2の軸支部16に回転自在に支持される軸受部29が形成されている。
【0026】
操作部28は、本体部26の他端部から内側に突出し、先端部分に、作動レバー4を押圧して回動させる押圧部30が形成されている。
【0027】
(1−4.作動レバー)
作動レバー4は、図3に示すように、ウェイト部31、作動部32、及び、回転軸部33を備える。ウェイト部31にはロッド連結部31aが形成され、このロッド連結部31aに連結したロッド(図示せず)等を介してラッチ機構(図示せず)を駆動できるようになっている。作動部32は、ウェイト部31から突出する板状部分からなり、先端は円弧状に膨出する押圧受部34となっている。押圧受部34にはハンドルグリップ3の押圧部30が当接し、ハンドルグリップ3の回動動作が作動レバー4へと伝達される。
【0028】
回転軸部33は、作動部32の基部側(ウェイト部31側)に設けられ、作動部32の両面から直交方向に突出している。
【0029】
回転軸部33の一方の突出部分(第1軸部35)には、回転可能でかつ軸方向に往復可能に、大径部である軸受リング36が外嵌されている。軸受リング36は合成樹脂製で、第1鍔部37と、その端面中央部から突出する筒状部38とからなる段付き形状に形成されている。第1鍔部37の端面には、後述するリターンスプリング5の一端部が圧接する。筒状部38はハンドルベース2の第1軸受部18に形成した第1軸受孔21内に保持され、作動レバー4の回転軸部33を回転可能に支持する。筒状部38からは回転軸部33の一端部である第1小径部39が突出可能であり、第1小径部39は第1軸受部18の第1案内溝22内を移動可能となっている。そして、第1小径部39は、軸受リング36に回転可能に支持される。
【0030】
回転軸部33の他方の突出部分(第2軸部40)は、第2鍔部41と、その端面中央部から突出する第2小径部42とで構成され、その突出寸法は第1軸部35に比べて小さく抑えられている。第2鍔部41は、大径部として第2軸受部19の大径孔24aに保持可能な径寸法に形成されている。第2小径部42は、第2軸受部19の第2案内溝25内を移動可能な径寸法に形成され、第2軸受孔24の小径孔24bに回転可能に支持される。
【0031】
(1−5.リターンスプリング)
リターンスプリング5は、コイル状に巻回されたコイル部43と、そこから延びる両端の圧接部44a、44bとからなり、作動レバー4の回転軸部33の外周に配設されている。コイル部43の一端側は作動レバー4の作動部32に圧接し、他端側は軸受リング36の第1鍔部37に圧接する。これにより、軸受リング36は、回転軸部33の一端側へと付勢される。また、作動レバー4をハンドルベース2に装着した状態で、リターンスプリング5の一方の圧接部44aは、図7に示すように、ハンドルベース2のスプリング受部23に圧接し、他方の圧接部44bは、作動レバー4のウェイト部31に圧接する。これにより、作動レバー4は、リターンスプリング5に付勢されて、図7中、回転軸部33を中心として時計回り方向に回動し、ハンドルグリップ3を初期位置(閉鎖位置)に位置決めする。このように、リターンスプリング5は、軸受リング36を軸方向に付勢するだけでなく、作動レバー4を回転方向に付勢するという2つの役割を果たし、部品点数を抑制して構成を簡略化している。
【0032】
なお、軸受リング36及び回転軸部33には、軸受リング36が回転軸部33の一端から脱落しないような構造を設けるのが好ましい。例えば、回転軸部33にリターンスプリング5のコイル部43、次いで軸受リング36を外装した後、回転軸部33の一端をカシメ等により外径側に膨出させることにより鍔部を形成しておけばよい。これにより、作動レバー4にリターンスプリング5及び軸受リング36を装着した状態としておくことができ、ハンドルベース2の組付時に軸受リング36が脱落するといった不具合がなく、作業性を向上させることが可能となる。
【0033】
(2.組立方法)
次に、前記構成からなる車両用ドアハンドル装置の組立方法について説明する。
【0034】
まず、ハンドルベース2に作動レバー4を装着する。作動レバー4には、予め、その回転軸部33に、一端側からリターンスプリング5のコイル部43と軸受リング36を順次外装しておく。この場合、回転軸部33の端は、軸受リング36が脱落しないように加締等により鍔部を形成しておくのが好ましい。
【0035】
作動レバー4の装着では、図4及び図6(a)に示すように、回転軸部33の一端側の第1小径部39を、第1軸受部18の第1案内溝22内に内側開口端から挿入する。このとき、リターンスプリング5の付勢力に抗して軸受リング36を他端側へと押し込む。また、回転軸部33の他端側の第2小径部42を、第2軸受部19の第2案内溝25内に内側開口端から挿入する。この状態で、作業者が軸受リング36から手を離すと、リターンスプリング5に付勢された軸受リング36は、ハンドルベース2の第1支持壁20aの端面に当接して他端側へ押し込まれた状態に維持される。そして、各小径部39、42を各案内溝22、25に沿ってスライド移動させ、軸受リング36の筒状部38を第1軸受孔21に対応する位置に位置させ、第2鍔部41を第2軸受孔24に対応する位置に位置させる。すると、軸受リング36が、リターンスプリング5の付勢力により回転軸部33に沿ってスライド移動すると共に、作動レバー4もリターンスプリング5の付勢力により第2軸受部19側に移動する。そして、図5及び図6(b)に示すように、軸受リング36の筒状部38が第1軸受孔21に保持され、第2鍔部41が第2軸受孔24に保持される。また、リターンスプリング5の一方の圧接部44aはハンドルベース2のスプリング受部23に圧接し、他方の圧接部44bは作動レバー4のウェイト部31に圧接する。
【0036】
このように、作動レバー4の装着では、回転軸部33の両端部(各小径部39、42)を各案内溝22、25に位置決めし、各軸受孔21、24までスライド移動させるだけでよく簡単である。すなわち、各小径部39、42が各軸受孔21、24まで移動すれば、リターンスプリング5の付勢力により、回転軸部33に沿って軸受リング36がスライド移動し、自動的に筒状部38と第2鍔部41が各軸受孔21、24にそれぞれ保持される。しかも、この保持状態では、各小径部39、42の各案内溝22、25に沿った脱落方向に対し、各軸受孔21、24からの筒状部38と第2鍔部41の脱落方向が直交する。したがって、装着状態が安定し、作動レバー4をいずれの位置に回動しても脱落することがない。そして、この装着状態で、作動レバー4は、第1小径部39が軸受リング36に回転可能に支持され、第2小径部42が第2軸受孔24の小径孔24bに回転可能に支持される。外周面の表面積の小さな小径部39、42が回転可能に支持されるので、回動抵抗が少なく、作動レバー4はスムーズに回動する。また、軸受リング36は作動レバー4の回転軸部33に外嵌されているため、組付作業時において、軸受リング36の操作が容易であり、軸受リング36を押込状態に保持する作業者の手がハンドルベース2に干渉することを抑制できる。
【0037】
続いて、ドアパネル1にハンドルベース2を装着する。この場合、ドアパネル1の外面側に固定部材9を配置する。そして、この固定部材9の雌ネジに、ドアパネル1の内面側からハンドルベース2に挿通した雄ネジを螺合する。これにより、ドアパネル1の第2開口部7の開口縁部が固定部材9とハンドルベース2との間に挟持された状態となる。また、ドアパネル1の第1開口部6の縁部に係止されるナット14に雄ネジを螺合することにより、ドアパネル1の第1開口部6の開口縁部がナット14とハンドルベース2との間に挟持された状態となる。これにより、ドアパネル1に対してハンドルベース2が固定される。そして、ハンドルベース2にエンドカバー8を装着し、固定部材9を被覆する。
【0038】
その後、ハンドルグリップ3の他端部(押圧部30)を、ドアパネル1の第2開口部7を介してハンドルベース2の第2連通部17内に挿入し、作動レバー4の押圧受部34を押圧可能な位置に位置決めする。そして、ハンドルグリップ3の一端部(軸受部29)を、ドアパネル1の第1開口部6を介してハンドルベース2の第1連通部15内に挿通して、ハンドル支持部12に形成した軸支部16に回動可能に取り付け、図1及び図7に示す状態となる。
【0039】
(3.動作)
次に、前記車両用ドアハンドル装置の動作について説明する。
【0040】
ハンドルグリップ3の本体部26を把持して引っ張れば、このハンドルグリップ3は、アーム部27の先端の軸受部29がハンドルベース2の軸支部16を中心として回動する。そして、ハンドルグリップ3の押圧部30が作動レバー4の押圧受部34を押圧し、作動レバー4が回転軸部33を中心として回動する。これにより、図示しないラッチ機構が駆動し、ドアが開放される。作動レバー4の回動動作では、大径部である筒状部38と第2鍔部41がリターンスプリング5によって各軸受孔21、24に向かって軸方向へと付勢されている。このため、作動レバー4の回動動作は安定し、簡単に脱落することがない。
【0041】
(4.他の実施形態)
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0042】
例えば、前記実施形態では、作動レバー4の回転軸部33の一端部に軸受リング36を回転及びスライド可能に設け、他端部に第2鍔部41と第2小径部42を一体的に形成するようにしたが、両端部に、回転及び軸方向にスライド可能に軸受リング36を設けたり、一端側にのみ大径部と小径部(軸受リング36を含む)を形成したりすることも可能である。
【0043】
また、前記実施形態では、リターンスプリング5によって軸受リング36を軸方向に付勢するようにしたが、このリターンスプリング5は必ずしも必要ではなく、例えば、作動レバー4を手動により軸方向に移動させることも可能である。また、リターンスプリング5に代えて、作動レバー4を回転方向に付勢するスプリングと、作動レバー4を回転軸部33の軸方向に付勢するスプリングの2つで構成することも可能である。この場合、ハンドルベース2に、軸受リング36を第1軸受孔21内に脱落不能に係合保持する係合爪等の保持手段を設けるようにしてもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、作動レバー4を回転軸部33の両端部の小径部39、42で回転可能に支持するように構成したが、大径部(筒状部38、第2鍔部41)で回転可能に支持するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…ドアパネル
2…ハンドルベース
3…ハンドルグリップ
4…作動レバー
5…リターンスプリング
6…第1開口部
7…第2開口部
8…エンドカバー
9…固定部材
10…湾曲部
11…湾曲面
12…ハンドル支持部
13…レバー軸受部
14…ナット
15…第1連通部
16…軸支部
17…第2連通部
18…第1軸受部
19…第2軸受部
20…軸受板
21…第1軸受孔
22…第1案内溝
23…スプリング受部
24…第2軸受孔
25…第2案内溝
26…本体部
27…アーム部
28…操作部
29…軸受部
30…当接片
31…ウェイト部
32…作動部
33…回転軸部
34…押圧受部
35…第1軸部
36…軸受リング
37…第1鍔部
38…筒状部(大径部)
39…第1小径部
40…第2軸部
41…第2鍔部(大径部)
42…第2小径部
43…コイル部
44…圧接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル支持部とレバー軸受部を有するハンドルベースと、
前記ハンドルベースのハンドル支持部に、一端側を回動可能に支持されるハンドルグリップと、
前記ハンドルベースのレバー軸受部に回動可能に支持される回転軸部を有し、前記ハンドルグリップに連動して回動可能な作動レバーと、
を備えた車両用ドアハンドル装置であって、
前記作動レバーは、前記回転軸部の少なくとも一端側に、大径部と、該大径部よりも先端側に形成される小径部とを備え、
前記ハンドルベースは、前記レバー軸受部を構成する、前記大径部を保持可能な大径孔と、大径部が大径孔に保持されるまで前記小径部をガイドする案内溝と、を備えたことを特徴とする車両用ドアハンドル装置。
【請求項2】
前記作動レバーの大径部を、前記回転軸部に対して軸方向に移動可能に取り付けられる軸受リングで構成し、前記作動レバーの回転軸部に、前記軸受リングを軸方向に付勢する付勢手段を設け、
前記作動レバーは、前記回転軸部が前記案内溝にガイドされて前記大径孔に至ると、前記付勢手段の付勢力により前記軸受リングが移動して前記大径孔に保持されて回転可能に支持されることを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項3】
前記軸受リングは、前記作動レバーの回転軸部に回転可能に取り付けられ、前記大径孔に保持された状態で、前記回転軸部を回転可能に支持することを特徴とする請求項2に記載の車両用ドアハンドル装置。
【請求項4】
前記ハンドルベースは、前記作動レバーの大径部が前記大径孔に位置した時点で、前記小径部を回転可能に支持する小径孔を備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ドアハンドル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−6909(P2011−6909A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151101(P2009−151101)
【出願日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)