説明

車両用ハンドルスイッチ装置

【課題】親指で操作するにあたって操作性が高いフラッシャースイッチを備えた車両用ハンドルスイッチ装置を提供する。
【解決手段】プッシュ式の右折用ボタン11または左折用ボタン12が操作されることにより車両の方向指示器を動作させるフラッシャースイッチ6を備える。右折用ボタン11と左折用ボタン12は、車両の左右方向の一方のハンドルグリップ3Lと隣り合う位置に車両の左右方向に並べて配置されている。また、右折用ボタン11と左折用ボタン12は、ハンドルグリップ3Lを把持した乗員の手の親指で操作可能な位置に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親指のみで操作可能な車両用ハンドルスイッチ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の例えば自動二輪車等の車両用ハンドルスイッチ装置としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。特許文献1に開示された車両用ハンドルスイッチ装置は、乗員が手で把持するハンドルグリップの近傍に設けられており、乗員の親指で操作する複数の操作部を備えている。これらの操作部は、ハンドルグリップを把持した手の親指が描く弧状軌跡上に配置されている。前記複数の操作部のうち、車両の方向指示器を作動させるフラッシャースイッチの操作部は、親指の指先で車両の左右方向にスライドさせるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平7−397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示す車両用ハンドルスイッチ装置では、フラッシャー操作を行い難く、頻繁にフラッシャー操作を行うと手が疲労し易いという問題があった。フラッシャー操作を行い難い理由は、親指の指先を前記弧状軌跡の径方向(車両の左右方向)に大きく移動させる必要があるからである。すなわち、親指を車両の左右方向の中央側に大きく伸ばしたり、これとは逆方向に大きく曲げなければならず、親指が大きく屈伸するようになるからである。
【0005】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、親指で操作するにあたって操作性が高いフラッシャースイッチを備えた車両用ハンドルスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明に係る車両用ハンドルスイッチ装置は、プッシュ式の右折用ボタンまたは左折用ボタンが操作されることにより車両の方向指示器を動作させるフラッシャースイッチを備え、前記右折用ボタンと前記左折用ボタンは、車両の左右方向の一方のハンドルグリップと隣り合う位置に車両の左右方向に並べて配置され、かつ前記ハンドルグリップを把持した乗員の手の親指で操作可能な位置に設けられているものである。
【0007】
本発明は、上記発明において、前記右折用ボタンと前記左折用ボタンとのうち、車両の左右方向の中央側に位置する一方のボタンは、前記親指の指先付近と対向する位置に設けられ、かつ平坦な操作面を有する板状に形成され、他方のボタンは、前記親指の第1関節付近と対向する位置に設けられ、かつ操作面の中央部が他の部位に較べて突出する山形状に形成されているものである。
【0008】
本発明は、上記発明において、前記右折用ボタンと、前記左折用ボタンとは、前記乗員が前記ハンドルグリップを手で把持した状態で親指をハンドルグリップに沿わせて揺動させたときの親指の末節の移動軌跡の近傍に配置され、前記移動軌跡と対応する位置であって両ボタンより上側または下側には、前記方向指示器の動作を停止させるキャンセル用ボタンが設けられているものである。
【0009】
本発明は、上記発明において、前記移動軌跡と対応する位置であって、フラッシャースイッチの右折用および左折用ボタンとキャンセル用ボタンより上側には、ヘッドライトのハイビーム、ロービームの切換えを行うためのディマースイッチの操作部が設けられ、前記移動軌跡と対応する位置であって、フラッシャースイッチの右折用および左折用ボタンとキャンセル用ボタンより下側には、ホーンスイッチの操作部が設けられ、前記ディマースイッチの操作部およびホーンスイッチの操作部は、前記移動軌跡に沿って操作可能なものであることを特徴とする。
【0010】
本発明は、上記発明において、前記ディマースイッチの操作部は、前記ハンドルグリップの軸心部に回動中心が位置するように車両の前後方向に回動するものであり、前記ディマースイッチは、このディマースイッチの操作部が車両前側へ押圧される毎にハイビームとロービームとの切換えが行われるものであることを特徴とする。
【0011】
本発明は、上記発明において、前記ディマースイッチは、ハイビームに切換えたときとロービームに切換えたときとで前記操作部の位置が車両の前後方向に異なるように形成され、このディマースイッチの前記操作部が相対的に車両後側に位置している状態でこの操作部によって覆われかつ前記操作部が相対的に車両前側に位置している状態で露出する位置識別用の指標を有しているものである。
【0012】
本発明は、上記発明において、前記ディマースイッチの操作部の操作面は、上方から見て車両の左右方向の中央側に向かうにしたがって次第に車両前側に位置するように傾斜して形成され、前記操作面の傾斜角度は、前記ハンドルグリップを把持した手の親指をハンドルグリップに沿うように揺動させたときの親指の角度に相当する角度であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る右折用ボタンと左折用ボタンは、ハンドルグリップを把持した手の親指を伸ばすことにより触ることができるものである。これらのボタンを操作するにあたっては、親指を大きく屈伸させる必要はなく、伸ばした状態の親指でボタンを押す単純な動作で行うことができる。
このため、フラッシャースイッチを車両の左右方向にスライドさせる場合に較べて親指の移動量を著しく低減でき、フラッシャースイッチを容易に操作することができる。
したがって、本発明によれば、親指で操作するにあたって操作性が高くなって親指が疲労し難いフラッシャースイッチを備えた車両用ハンドルスイッチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る車両用ハンドルスイッチ装置の平面図である。
【図2】本発明に係る車両用ハンドルスイッチ装置の車両後方から見た側面図である。
【図3】本発明に係る車両用ハンドルスイッチ装置の車両左側から見た正面図である。
【図4】本発明に係る車両用ハンドルスイッチ装置の底面図である。
【図5】本発明に係る車両用ハンドルスイッチ装置の左斜め後上方から見た斜視図である。
【図6】本発明に係る車両用ハンドルスイッチ装置の左斜め後下方から見た斜視図である。
【図7】ハンドルグリップを乗員が手で把持した状態を示す側面図である。
【図8】ハンドルグリップを乗員が手で把持した状態を示す平面図である。
【図9】フラッシャースイッチの構成を示す斜視図である。
【図10】フラッシャースイッチの操作部を拡大して示す平面図である。
【図11】ディマースイッチとホーンスイッチの操作部の支持構造を説明するための断面図である。
【図12】ディマースイッチの操作部を拡大して示す平面図である。
【図13】右折用ボタンを親指で押している状態を示す平面図である。
【図14】左折用ボタンを親指で押している状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る車両用ハンドルスイッチ装置の一実施の形態を図1〜図14によって詳細に説明する。
図1に示すハンドルスイッチ装置1は、スクータ型自動二輪車の操向ハンドル2に設けられたものである。前記操向ハンドル2の両端部には、乗員(図示せず)が手で把持するためのハンドルグリップ3が設けられている。なお、本明細書で想定している「手」は、一般的な成人男性の手である。図1〜図6は、操向ハンドル2の車両左側の端部を図示してあり、これらの図には、車両左側のハンドルグリップ3Lが図示されている。この操向ハンドル2の車両左側の端部であって、前記ハンドルグリップ3Lの近傍には、ブレーキレバー4が設けられている。また、操向ハンドル2は、外観部品となるカバー5を備えている。
【0016】
この実施の形態によるハンドルスイッチ装置1は、前記操向ハンドル2の車両左側の端部であって、前記ハンドルグリップ3Lの車両右側の端部と隣接する位置に設けられている。
このハンドルスイッチ装置1は、図1および図2に示すように、フラッシャースイッチ6と、ディマースイッチ7と、ホーンスイッチ8とを備えている。
【0017】
前記フラッシャースイッチ6は、図示していない方向指示器を動作させたり停止させたりするためのものである。このフラッシャースイッチ6は、前記カバー5の後面5aに露出する3個の操作用のボタン(右折用ボタン11、左折用ボタン12、キャンセル用ボタン13)と、これらのボタン毎の第1〜第3のスイッチ本体14〜16(図9参照)などによって構成されている。
前記3個のボタンは、いずれもプッシュ式のもので、車両の前後方向に移動自在となるようにスイッチ用フレーム(図示せず)に支持されている。このスイッチ用フレームは、操向ハンドル2に対して固定されており、前記カバー5で覆われている。
【0018】
前記右折用ボタン11は、乗員により押されることによって、第1のスイッチ本体14を押す。左折用ボタン12は、乗員により押されることによって、第2のスイッチ本体15を押す。キャンセル用ボタン13は、乗員により押されることによって、第3のスイッチ本体16を押す。以下においては、これらのボタン11〜13が乗員によって押されることを単に「ボタンが操作される」という。
【0019】
前記右折用ボタン11に接続された第1のスイッチ本体14は、右折用ボタン11が操作されたときに方向指示器の右折用回路(図示せず)をON状態とする。この右折用回路は、ON状態で車両右側のフラッシャーランプ(図示せず)が点滅するように構成されている。また、左折用ボタン12に接続された第2のスイッチ本体15は、左折用ボタン12が操作されたときに方向指示器の左折用回路(図示せず)をON状態とする。この左折用回路は、ON状態で車両左側のフラッシャーランプ(図示せず)が点滅するように構成されている。さらに、キャンセル用ボタン13に接続された第3のスイッチ本体16は、キャンセル用ボタン13が操作されたときに方向指示器の前記右折用回路と左折用回路とをOFF状態とする。
【0020】
前記右折用ボタン11と左折用ボタン12は、図2に示すように、前記ハンドルグリップ3Lと隣り合う位置に車両の左右方向に並べて配置されている。また、これらのボタン11〜13は、図7に示すように、前記ハンドルグリップ3Lを把持した乗員の手17の親指18で操作可能な位置に設けられている。この実施の形態による右折用ボタン11と左折用ボタン12とは、車両中央側に向けて伸ばされた状態にある親指18の末節18aと対向する位置に設けられている。前記親指18の末節18aとは、指先18bと第1関節18cとの間の部位をいう。
【0021】
前記キャンセル用ボタン13は、前記車両中央側に向けて伸ばされた親指18をハンドルグリップ3Lに沿うように上に揺動させたときの前記末節18aの移動軌跡19と対応する位置であって、前記右折用および左折用ボタン11,12より上側に設けられている。前記移動軌跡19は、図3に示すように、車両の左側から見るとハンドルグリップ3Lの外周面に沿うような円弧状に形成されている。また、移動軌跡19は、図7に示すように、車両の後方から見ると、親指18の付け根付近を中心とする円弧状に形成されている。
【0022】
前記右折用ボタン11と左折用ボタン12は、前記移動軌跡19の近傍に位置付けられている。前記右折用ボタン11は、請求項2記載の発明でいう「車両の左右方向の中央側に位置する一方のボタン」を構成するものである。前記左折用ボタン12は、請求項2記載の発明でいう「他方のボタン」を構成するものである。
【0023】
右折用ボタン11と左折用ボタン12とは、これらを押圧する親指18の位置に対応させてそれぞれ操作し易い形状に形成されている。右折用ボタン11は、図10に示すように、前記親指18の指先付近と対向する位置に設けられており、相対的に細い指先18bを広い範囲で受けることが可能な形状に形成されている。すなわち、右折用ボタン11は、平坦な操作面11aを有する円板状に形成されている。この右折用ボタン11を操作するためには、図13に示すように、指先18bが操向ハンドル2側(同図においては上側)を指向するように親指18を僅かに曲げ、指先18bを右折用ボタン11に押し付けて行う。
【0024】
左折用ボタン12は、前記親指18の第1関節付近と対向する位置に設けられており、相対的に柔らかい親指18の腹18dであっても押すことができる形状に形成されている。すなわち、左折用ボタン12は、車両の後方から見て円形であって、後方を指向する操作面12aの中央部が他の部位(周縁部)に較べて車両の後方に突出する山(球面)形状に形成されている。この左折用ボタン12の外径は、右折用ボタン11の外径と略等しくなるように形成されている。この左折用ボタン12を操作するためには、図14に示すように、指先18bが操向ハンドル2とは反対側を指向するように親指18を反らせ、親指18の腹18dを左折用ボタン12に押し付けて行う。
【0025】
前記キャンセル用ボタン13は、これを親指18で触ったときに右折用ボタン11および左折用ボタン12とは感触が明らかに異なるような形状に形成されている。すなわち、キャンセル用ボタン13は、前記右折用および左折用ボタン11,12より細い円柱状に形成されている。また、キャンセル用ボタン13の位置は、車両の左右方向の中央を指向するように伸ばした状態の親指18(右折用ボタン11と左折用ボタン12との両方に触る状態の親指18)をハンドルグリップ3Lに沿って上に揺動させたときに親指18の腹18dが当たる位置に位置付けられている。
【0026】
前記ディマースイッチ7は、ヘッドライト(図示せず)のハイビームとロービームとの切換えを行うためのものである。このディマースイッチ7は、図1および図2に示すように、前記カバー5の上端部から上方に突出する切換用ボタン21と、この切換用ボタン21に図示していないリンク機構を介して接続されたディマースイッチ本体22(図1参照)とによって構成されている。この実施の形態においては、前記切換用ボタン21によって、請求項4記載の発明でいう「ディマースイッチの操作部」が構成されている。
【0027】
切換用ボタン21は、前記移動軌跡19と対応する位置であって、前記フラッシャースイッチ6の3個のボタン11〜13より上側に位置付けられている。また、この切換用ボタン21は、図11に示すように、前記移動軌跡19に沿って操作できるように形成されている。この実施の形態による切換用ボタン21は、カバー5の上面に沿って車両の前後方向に回動する。すなわち、切換用ボタン21は、図11および図12において実線で示す車両前側の位置と、これらの図において二点鎖線で示す車両後側の位置との間で前後方向に回動する。
【0028】
切換用ボタン21をこのように回動させるためには、図11に示すように、例えば切換用ボタン21に設けた円弧状のガイドレール23を図示していないスイッチ用フレームに移動自在に嵌合させることによって行うことができる。前記ガイドレール23は、車両の前後方向に延びるとともに、円弧の中心Cが前記ハンドルグリップ3Lの軸心部に位置するように形成することが好ましい。このようにガイドレール23を形成することによって、切換用ボタン21が移動するときの移動軌跡と、前記親指18の移動軌跡19とがハンドルグリップ3Lの軸方向から見て重なるようになる。
【0029】
この実施の形態による切換用ボタン21の形状は、図3に示すように、ハンドルグリップ3Lの軸方向から見て上方を指向する略三角形であって、図1および図8に示すように、上方から見て左右の2辺が平行な四角形に形成されている。前記四角形の4つの辺のうち、車両前側と車両後側に位置する2辺は、上方から見て右上がりに傾斜している。すなわち、この切換用ボタン21における車両の後方を指向する操作面21aは、上方から見て車両の左右方向の中央側に向かうにしたがって次第に車両前側に位置するように傾斜して形成されている。
【0030】
この操作面21aの傾斜角度θ(図8参照)は、ハンドルグリップ3Lを把持した手17の親指18をハンドルグリップ3Lに沿うように揺動させたときの親指18の角度に相当する角度である。この操作面に親指18を沿わせることができるようにするためには、上方から見て操作面21aがハンドルグリップ3Lの軸線に対して約20°〜30°で傾斜していることが望ましい。また、この実施の形態による前記操作面21aは、図3に示すように、その上下方向の中央部が最も凹む凹曲面となるように形成されている。
【0031】
この実施の形態によるディマースイッチ7は、前記切換用ボタン21が車両前側へ押圧される毎にヘッドライトにおいてハイビームとロービームとの切換えが行われるように形成されている。すなわち、乗員が親指18で切換用ボタン21を前方に押すだけでハイビームとロービームとの切換えを行うことができる。また、このディマースイッチ7は、ハイビームに切換えたときとロービームに切換えたときとで切換用ボタン21の位置が車両の前後方向に異なるように形成され、乗員が目視しなくても触感でディマースイッチ7の状態を認識できるように構成されている。すなわち、乗員は、親指18で切換用ボタン21を触ることによって、ハイビームに切換えられているか、それともロービームに切換えられているかを認識することができる。図1〜図3と図5は、切換用ボタン21が車両前側に位置している状態で描いてある。
【0032】
図1〜図3と図5とに示すように相対的に前側に位置している切換用ボタン21と、前記キャンセル用ボタン13との間には、位置識別用の指標24が設けられている。この指標24は、前記カバー5の表面に開口する凹溝によって形成されている。この凹溝の底部は、カバー5とは異なる色で塗装されている。この指標24は、切換用ボタン21が相対的に車両前側に位置しているハイビーム状態では露出する位置であって、図12中に二点鎖線で示すように、ロービーム状態では相対的に車両後側に位置している切換用ボタン21によって覆われるような位置に設けられている。すなわち、この指標24の露出の有無によって、視覚的にも切換用ボタン21の前後方向の位置、ひいてはハイビームかロービームかを識別することができる。
【0033】
前記ホーンスイッチ8は、ホーン(図示せず)を動作させるためのものである。このホーンスイッチ8は、図2および図4に示すように、前記カバー5の下端部から下方に突出するホーンボタン31と、このホーンボタン31に接続されたホーンスイッチ本体32とによって構成されている。
前記ホーンボタン31は、前記移動軌跡19と対応する位置であって、前記フラッシャースイッチ6の3個のボタン11〜13より下側に位置付けられている。また、このホーンボタン31は、図11に示すように、支軸33を中心にして回動するように構成されている。支軸33は、図4に示すように、車両の左右方向の中央に向かうにしたがって次第に車両前側(図4においては下側)に位置するように傾斜している。
【0034】
この支軸33は、図4に示すように、上下方向に見てハンドルグリップ3Lの軸線に対して傾斜角度αが約20°〜30°となるように傾斜している。 このホーンボタン31の形状は、図3に示すように、ハンドルグリップ3Lの軸方向から見て下方を指向する三角形に形成されている。また、ホーンボタン31は、図4に示すように、下方から見ても三角形に形成されている。このホーンボタン31における車両後方を指向する操作面31aは、図4に示すように、下方から見て前記支軸33と略平行に形成されている。
【0035】
このため、ハンドルグリップ3Lに沿って下に揺動させられた親指18がホーンボタン31の操作面31aに沿うようになる。ホーンボタン31に接触している状態で親指18をさらに前記揺動方向に押すことによって、ホーンボタン31が支軸33を中心にして回り、ホーンスイッチ本体32がON操作される。すなわち、ホーンボタン31は、前記移動軌跡19に沿って操作可能なものである。
ホーンスイッチ本体32は、ホーンに通電する回路を開閉するもので、ホーンボタン31によって押されたときに前記回路を閉じるように構成されている。
【0036】
上述したように構成された車両用ハンドルスイッチ装置1の右折用ボタン11と左折用ボタン12は、ハンドルグリップ3Lを把持した手17の親指18を伸ばすことにより触ることができるものである。これらのボタン11,12を操作するにあたっては、親指18を大きく曲げて屈伸させる必要はなく、伸ばした状態の親指18でボタン11,12を押す単純な動作で行うことができる。
【0037】
このため、フラッシャースイッチ6を車両の左右方向にスライドさせる場合に較べて親指18の移動量を著しく低減でき、フラッシャースイッチ6を容易に操作することができる。
したがって、この実施の形態によれば、親指18で操作するにあたって操作性が高くなって親指18が疲労し難いフラッシャースイッチ6を備えた車両用ハンドルスイッチ装置を提供することができる。
【0038】
この実施の形態による前記右折用ボタン11と前記左折用ボタン12とのうち、車両の左右方向の中央側に位置する右折用ボタン11は、前記親指18の指先付近と対向する位置に設けられ、かつ平坦な操作面11aを有する板状に形成されている。他方の左折用ボタン12は、前記親指18の第1関節付近と対向する位置に設けられ、かつ操作面12aの中央部が他の部位に較べて突出する山形状に形成されている。
【0039】
前記右折用ボタン11は、操作面11aが平坦に形成されているから、親指18の指先18bを重ね易いものとなる。すなわち、右折用ボタン11は、親指18の指先18bで容易に押すことができる。
他方の左折用ボタン12は、山形状に形成されているために、親指18を反らすように曲げて親指18のいわゆる腹18dの部分で押すことができる。
したがって、この実施の形態によれば、親指18を伸ばした状態のまま右折用ボタン11と左折用ボタン12とを操作することができるから、フラッシャー操作がより一層容易な車両用ハンドルスイッチ装置を提供することができる。
【0040】
この実施の形態による前記右折用ボタン11と前記左折用ボタン12とは、親指18の前記移動軌跡19の近傍に配置されている。また、前記移動軌跡19と対応する位置であって、前記両ボタン11,12より上側には、キャンセル用ボタン13が設けられている。
このため、方向指示器の動作を停止させるキャンセル用ボタン13を右折用ボタン11や左折用ボタン12とは明確に区別することができる。
【0041】
また、ハンドルグリップ3Lを把持した手17の親指18を、前記右折用ボタン11と左折用ボタン12とを操作可能な位置から上に揺動させることによって、この親指18が前記キャンセル用ボタン13と対向するようになる。このため、フラッシャー操作を行った位置から親指18をハンドルグリップ3Lに沿うように上に揺動させることによって、この親指18をキャンセル用ボタン13に重ねることができ、キャンセル操作を行うことができる。
したがって、この実施の形態によれば、前記キャンセル操作を正確にかつ容易に行うことが可能になる。
【0042】
この実施の形態による車両用ハンドルスイッチ装置1において、ディマースイッチ7の切換用ボタン21は、前記移動軌跡19と対応する位置であって、フラッシャースイッチ6の右折用および左折用ボタン11,12とキャンセル用ボタン13より上側に設けられている。また、ホーンスイッチ8のホーンボタン31は、前記移動軌跡19と対応する位置であって、フラッシャースイッチ6の右折用および左折用ボタン11,12とキャンセル用ボタン13より下側に設けられている。
【0043】
前記ディマースイッチ7の切換用ボタン21およびホーンスイッチ8のホーンボタン31は、前記移動軌跡19に沿って操作可能なものである。
このため、ハンドルグリップ3Lを把持した手17の位置を変えることなく、フラッシャースイッチ6の3個のボタン11〜13と、ディマースイッチ7の切換用ボタン21と、ホーンスイッチ8のホーンボタン31とをそれぞれ親指18で操作することができる。
したがって、この実施の形態によれば、フラッシャー操作のみならず、ディマースイッチ7の操作とホーンスイッチ8の操作とを容易に行うことが可能な車両用ハンドルスイッチ装置を提供することができる。
【0044】
この実施の形態による前記ディマースイッチ7の切換用ボタン21は、前記ハンドルグリップ3Lの軸心部を回動中心として車両の前後方向に回動するものである。また、ディマースイッチ7は、前記切換用ボタン21が車両前側へ押圧される毎にハイビームとロービームとの切換えが行われるものである。
このため、親指18をハンドルグリップ3Lに沿うように揺動させる単純な動作でディマースイッチ7の切換用ボタン21を操作することができる。したがって、この実施の形態によれば、ディマースイッチ7の操作をより一層簡単に行うことが可能な車両用ハンドルスイッチ装置を提供することができる。
【0045】
この実施の形態によるディマースイッチ7は、ハイビームに切換えたときとロービームに切換えたときとで前記切換用ボタン21の位置が車両の前後方向に異なるように形成されている。また、この実施の形態によるハンドルスイッチ装置1は、前記切換用ボタン21の位置を識別するための指標24を備えている。この指標24は、ディマースイッチ7の前記切換用ボタン21が相対的に車両後側に位置している状態でこの切換用ボタン21によって覆われ、かつ前記切換用ボタン21が相対的に車両前側に位置している状態で露出する。
【0046】
このため、この実施の形態においては、指標24の露出の有無を確認することによって、ディマースイッチ7の状態を識別することができる。したがって、この実施の形態による車両用ハンドルスイッチ装置1によれば、日中にヘッドライトを点灯する場合に、ハイビームに切り換えられているか、ロービームに切り換えられているかの識別を容易に行うことができる。
【0047】
この実施の形態による前記切換用ボタン21の操作面21aは、上方から見て車両の左右方向の中央側に向かうにしたがって次第に車両前側に位置するように傾斜して形成されている。前記操作面21aの傾斜角度は、前記ハンドルグリップ3Lを把持した手17の親指18をハンドルグリップ3Lに沿うように揺動させたときの親指18の角度に相当する角度である。
【0048】
このため、ハンドルグリップ3Lを把持した手17の親指18を車両前側に揺動させることによって、この親指18が前記操作面21aに沿う状態で触れるようになる。したがって、この実施の形態によれば、ディマースイッチ7の切換用ボタン21を前記親指18の単純な動作で操作することができるから、ディマースイッチ7の操作性を更に向上させることができる。
なお、上述した実施の形態においては、本発明に係るハンドルスイッチ装置1を操向ハンドル2の車両左側に設ける例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、ハンドルスイッチ装置1を操向ハンドル2の車両右側の端部に設けることができる。
【符号の説明】
【0049】
1…車両用ハンドルスイッチ装置、3,3L…ハンドルグリップ、6…フラッシャースイッチ、7…ディマースイッチ、8…ホーンスイッチ、11…右折用ボタン、12…左折用ボタン、13…キャンセル用ボタン、18…親指、19…移動軌跡、21…切換用ボタン、21a…操作面、31…ホーンボタン、24…指標。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プッシュ式の右折用ボタンまたは左折用ボタンが操作されることにより車両の方向指示器を動作させるフラッシャースイッチを備え、
前記右折用ボタンと前記左折用ボタンは、車両の左右方向の一方のハンドルグリップと隣り合う位置に車両の左右方向に並べて配置され、かつ前記ハンドルグリップを把持した乗員の手の親指で操作可能な位置に設けられていることを特徴とする車両用ハンドルスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用ハンドルスイッチ装置において、前記右折用ボタンと前記左折用ボタンとのうち、車両の左右方向の中央側に位置する一方のボタンは、前記親指の指先付近と対向する位置に設けられ、かつ平坦な操作面を有する板状に形成され、
他方のボタンは、前記親指の第1関節付近と対向する位置に設けられ、かつ操作面の中央部が他の部位に較べて突出する山形状に形成されていることを特徴とする車両用ハンドルスイッチ装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の車両用ハンドルスイッチ装置において、前記右折用ボタンと、前記左折用ボタンとは、前記乗員が前記ハンドルグリップを手で把持した状態で親指をハンドルグリップに沿わせて揺動させたときの親指の末節の移動軌跡の近傍に配置され、
前記移動軌跡と対応する位置であって両ボタンより上側または下側には、前記方向指示器の動作を停止させるキャンセル用ボタンが設けられていることを特徴とする車両用ハンドルスイッチ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用ハンドルスイッチ装置において、前記移動軌跡と対応する位置であって、フラッシャースイッチの右折用および左折用ボタンとキャンセル用ボタンより上側には、ヘッドライトのハイビーム、ロービームの切換えを行うためのディマースイッチの操作部が設けられ、
前記移動軌跡と対応する位置であって、フラッシャースイッチの右折用および左折用ボタンとキャンセル用ボタンより下側には、ホーンスイッチの操作部が設けられ、
前記ディマースイッチの操作部およびホーンスイッチの操作部は、前記移動軌跡に沿って操作可能なものであることを特徴とする車両用ハンドルスイッチ装置。
【請求項5】
請求項4記載の車両用ハンドルスイッチ装置において、前記ディマースイッチの操作部は、前記ハンドルグリップの軸心部に回動中心が位置するように車両の前後方向に回動するものであり、
前記ディマースイッチは、このディマースイッチの操作部が車両前側へ押圧される毎にハイビームとロービームとの切換えが行われるものであることを特徴とする車両用ハンドルスイッチ装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5記載の車両用ハンドルスイッチ装置において、
前記ディマースイッチは、ハイビームに切換えたときとロービームに切換えたときとで前記操作部の位置が車両の前後方向に異なるように形成され、
このディマースイッチの前記操作部が相対的に車両後側に位置している状態でこの操作部によって覆われかつ前記操作部が相対的に車両前側に位置している状態で露出する位置識別用の指標を有していることを特徴とする車両用ハンドルスイッチ装置。
【請求項7】
請求項4ないし請求項6に記載の車両用ハンドルスイッチ装置において、前記ディマースイッチの操作部の操作面は、上方から見て車両の左右方向の中央側に向かうにしたがって次第に車両前側に位置するように傾斜して形成され、
前記操作面の傾斜角度は、前記ハンドルグリップを把持した手の親指をハンドルグリップに沿うように揺動させたときの親指の角度に相当する角度であることを特徴とする車両用ハンドルスイッチ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−71592(P2013−71592A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212002(P2011−212002)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)