説明

車両用バンパのグリル取付構造

【課題】車両のバンパの開口にこれを閉じるように合成樹脂のグリルを取付ける取付作業性を良好にするとともに、ガタツキやはずれのないグリルの取付状態を実現すること。
【解決手段】車両のバンパ1には開口10の周縁に、背面側へ突出し、先端に起立する爪部31を設けた舌片状の係止片3を形成し、一方、グリル2にはその外周部20に、係止片3に対応する角形の係合穴4を設け、かつ係合穴4の幅方向両側から左右方向に延びる左右一対のスリット43,43を設け、係合穴4への係止片3の圧入時にスリット43,43が拡開して係合穴3の上下幅を拡大せしめ、爪部31が開口10を通過したときに係合穴10の上下幅が元の幅に復元する構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバンパに設けた開口を閉じるように取付ける合成樹脂製のグリルの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、合成樹脂からなる自動車のバンパ1には下部に開口10を設け、これを背面側から閉じるように格子状の合成樹脂製のロアグリル2が取付けられたものがある。この種のロアグリル2は、その外周部20の複数箇所が開口10の周縁に係止固定されている(図5の符号3)。なお図5の25,26はロアグリル2の格子状をなす横板と縦板を示す。
【0003】
図6、図7に示すように、バンパ1の開口10にはその周縁11(図は下縁を示す)から背面側に向けて舌片状に突出し、先端に爪部31を備えた係止片3が設けてある。
ロアグリル2の外周部20は、内壁部21と外壁部22、およびこれらをつなぐ縦壁部23とで断面コ字状をなし、係止片3に対応して縦壁部23に係合穴4が設けられている。
【0004】
ロアグリル2は、バンパ1の背面側から開口10に押し込み、係止片3を係合穴4に圧入して爪部31が係合穴4の上縁たる内壁部21の後縁に係止して取付けられている。
係合穴4には外壁部22から起立して係止片3を支える一対の当てリブ45,45が設けてあり、これらにより係止片3の爪部31と内壁部21の後縁との係止はずれを防止することがなされている。
【0005】
ところで、パンパ1の開口10の周縁に沿う複数箇所を係止するグリルの取付構造では、各係止片3の係合穴4への圧入時の抵抗が総合されて、バンパ1へのグリル2の取付作業の取付荷重が大きくなる。そこで、従来の取付構造では、内壁部21と当てリブ45間の間隔を係止片3の爪部31の厚さよりも若干小さい程度に設定して上記圧入時の抵抗を減らすようにしている。
しかしながらこれでは、爪部31の係合穴4への掛りが浅く、ロアグリル2にガタツキが生じ、更には爪部31と係合穴4との係止が外れるおそれがあるといった問題があった。
【0006】
また下記特許文献1に記載されたように、一方の部材に設けた係止片を、相手側の部材の係合穴に圧入係止する構造として、係止片の中間位置に片側へ突出する爪部を設けるとともに該爪部の3方を囲むコ字状のスリットを設けておき、上記係合穴への圧入時に上記爪部を弾性変形させることが提案されている。
係止片の中間位置に爪部とこれを囲むスリットを設ける分、係止片の構造が複雑なり係止片の成形性がよくない。
【特許文献1】特開2003−200864号公報(第6図、第7図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明はパンパの開口にこれを閉じるようにグリルを係止固定せしめる取付構造において、構造簡素で、バンパへのグリル取付作業の取付荷重を軽減でき、かつグリルのガタツキや外れの生じない取付構造を実現することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車両のバンパに形成された開口に嵌合係止せしめて上記開口を閉じる合成樹脂製のグリルの取付構造であって、バンパには上記開口の周縁に、背面側へ突出し、先端に起立する爪部を設けた舌片状の係止片を形成し、上記グリルにはその外周部に、上記係止片に対応する角形の係合穴を設け、上記グリルをバンパの上記開口にその背面側から嵌入し、上記係止片を上記係合穴に圧入係止せしめてなる車両用バンパのグリル取付構造において、上記グリルの外周部にはその上記係合穴の幅方向両側から左右方向に延び、係合穴への上記係止片の圧入時に上記係合穴を上下方向に拡大せしめるスリットを設ける(請求項1)。
係止片を係合穴へ圧入する際、スリットが拡開して係合穴が上下方向に拡大するので、係止片の圧入抵抗を小さくすることができる。
【0009】
上記係止片は上記爪部を上記係合穴の上下いずれか一方の開口縁に係止せしめるようになし、上記係合穴の両側の上記スリットを、上記係合穴の他方の開口縁を左右両側へ延長する方向に形成する(請求項2)。
スリットが拡開することで他方の開口縁を撓ませて係合穴が拡大し、係止片を容易に圧入することができる。
【0010】
上記係合穴の上記他方の開口縁には、互いに間隔をおいて起立して上記係止片の挿入方向に延び、圧入係止した係止片を支える左右一対の当てリブを設ける。上記両当てリブの前端およびこれらと対向する上記係止片の爪部の左右両側の先端縁をそれぞれ、上記係止片を係合穴に圧入するときに、係止片を圧入容易となすテーパー状に形成する(請求項3)。
当てリブの前端と係止片の先端縁をテーパー状としたことで係止片の係合穴への圧入を容易にする。
【0011】
上記グリルは、枠状の外周部とその内部に格子状に設置された複数の横板および縦板を備え、上記外周部は、内壁部、外壁部および縦壁部とで前側に向かって開口する断面ほぼコ字状をなす。上記縦壁部には、上下幅が上記縦壁部の上下幅の全幅にわたる上記係合穴を設け、該係合穴の左右両側には上記外壁部と上記縦壁部との境に沿って上記スリットを形成し、かつ係合穴の上記外壁部側の開口縁には、これからグリル背面側へ延出する棚板部を形成し、上記外壁部から棚板部にかけて上記当てリブを設け、係合穴に挿入せしめた上記係止片の上記爪部を上記係合穴の上記内壁部側の開口縁に係止せしめる(請求項4)。
断面コ字状のグリル外周部の縦壁部に形成した係合穴にバンパの係止片を圧入させる構造として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図5に示す自動車の合成樹脂製のフロントバンパ1の下部中央に形成された開口10へのロアグリル2の取付けに本発明を適用した実施形態を説明する。
フロントバンパ1の開口10は横長の長方形状としてある。
ロアグリル2は合成樹脂製で、開口10の周縁に沿う枠状の外周部20と、その内部に格子状に複数の横板25と縦板26とが一体成形してある。ロアグリル2はその外周部20を開口10の周縁の複数箇所(図の符号3)に係止固定して取付けてある。
【0013】
以下、図1ないし図4に基づいて、上記係止固定部のうち、開口10の下縁に沿う係止固定部を中心にその構造を説明する。
図1、図2に示すように、開口10の下縁11を構成するフロントバンパ1の下端部は後方に向けて開口する断面ほぼU字状をなす。開口10の下縁11には後方へ向けてほぼ水平舌片状に突出し、先端に爪部31を備えた係止片3が一体に形成してある。
【0014】
係止片3は上記フロントバンパ1の下端部を後方へ延長する板状で、先端の中央部に係止片3の先端よりも幅を狭くした爪部31が形成してある。爪部31は係止片3の先端よりほぼ直角に上方へ突出する厚肉状で、上端はバンパ後方へ向けて漸次厚さを薄くした断面ほぼ直角三角形状に形成してある。
また係止片3は爪部31両脇の左右の先端縁32,32の下側がそれぞれ、後斜め上方へ向けたテーパー状に形成してある。
【0015】
図1ないし図4に示すように、ロアグリル2の外周部20は、上下に間隔を置いてほぼ平行に配した内壁部21と外壁部22およびこれらの後縁間をつなぐ縦壁部23とで断面ほぼコ字状をなす。
また外周部20には係止片3に対応する位置に、縦壁部23を貫通する係合穴4が形成してある。
【0016】
係合穴4は長方形状をなし、その幅は係止片3を挿入するように係止片3よりも若干広幅に形成してあり、係合穴4の上下寸法T1は内壁部21および外壁部22の対向面の間隔と同じに設定してあり、係合穴4の上縁 (一方の開口縁)41は内壁部21の後縁からなり、下縁(他方の開口縁)42は外壁部22の後縁で構成される。
【0017】
縦壁部23には、係合穴3の下縁42を左右両側へ延長するように外壁部22と縦壁部23との境界に沿って両側に延びる左右一対のスリット43,43が形成してある。両スリット43,43の基端は係合穴4と連通してある。両スリット43,43の長さはそれぞれ係合穴4の幅の半分程度に設定してある。
【0018】
また係合穴4の後方には、外壁部22を後方へ延長せしめた棚板部44が形成してある。棚板部44は一方のスリット43の先端から他方のスリット43の先端に至る幅に設定してある。
【0019】
係合穴4の下縁42の左右両側位置には、外壁部22および棚板部44の上面から互いに間隔をおいて起立し、係合穴4を通過して前後方向に延びる左右一対の縦板状の当てリブ45,45が設けてある。
両当てリブ45,45の高さは、それらの上端と係合穴4の間の間隙幅T2が係止片3の板厚T3とほぼ同じかそれよりも若干大きく、上記板厚T3を含む爪部1の高さ寸法よりも小さく設定してある。
また両当てリブ45,45間の間隔は係止片3の爪部31の幅よりも広く設定してあり、爪部31を係合穴4に圧入する際に爪部31が上記間隔を通過するようにしてある。
【0020】
各当てリブ45,45は、これらの前端が外壁部22の上面の前後中間位置から始まり、棚板部44の後縁に至る長さに設定してある。各当てリブ45,45の前端46,46はそれぞれ、係止片3の左右の先端32,32に対応して、これらとほぼ同じ傾斜角で前斜め下方へ向けたテーパー状に形成してある。
【0021】
ロアグリル2は、バンパ1の背面側からバンパ1の開口10に押し込むことにより取付けられる。
このとき、図4(A)に示すように初期の段階では、爪部31を有する係止片3の先端が断面コ字状のロアグリル2の外周部20内に進入し、係止片3の左右の先端縁32が両側の当てリブ45の前端46に当接する。
【0022】
更に押し込むことで、図4(B)に示すように、テーパー状の係止片3の先端縁32が同じくテーパー状の当てリブ45の前端46の案内により係止片3が上方へ押し上げられ、爪部31が内壁部21の下面に当接し、内壁部21からの反力で係止片3が当てリブ45を介して外壁部22の後半部および棚板部44を下方へ押すこととなる。これにより係合穴4の左右のスリット43,43が下方へ開き、これにより係合穴4の下縁をなす外壁部22の後半部およびこれと一体に棚板部44が下方へ押し下げられて撓み、当てリブ45と係合穴4との開口上縁との間隙が拡開され(T20)、爪部31を形成した係止片3の先端は大きな抵抗なく開口10を通過して更に進む。
爪部31が係合穴4を通過すると、外壁部22および棚板部44が復元し、当てリブ45が係止片3を下方より支え、爪部31の上端が係合穴4の上縁41に深く係止され、この状態に保持される。
【0023】
なお、バンパ1の開口10の下縁およびロアグリル1の外周部20の下縁には同様の係止片3および係合穴4が間隔をおいて複数設けられ、かつ開口10の上縁および外周部20の上縁には、上下逆向きに係止片3および係合穴4が複数設けられ、これらが一体に圧入係止される。
【0024】
本実施形態によれば、ロアグリル2は係合穴4の左右両側にスリット43,43を設け、係止変3の爪部31の圧入時に、係合穴4が上下に容易に拡大するようにしたので、併合穴の上下幅を必要以上に大きくすることなく圧入時の抵抗を小さくでき、バンパ1へロアグリル2を取付ける際の押し込み作業が容易にできる。また係止片3の爪部31両側の先端縁32,32およびこれと対向する当てリブ45,45の前端46,46をそれぞれテーパー状としたので、より取付作業性が良好である。
また、係止片3の爪部31の係合穴4の開口縁41への掛りが深くでき、バンパ1に対するロアグリル2のガタツキや係止はずれの問題も解消できる。
【0025】
なお、本発明によるグリルの取付構造は、図略ではあるが、バンパの開口の左右の開口側縁およびグリルの外周部の左右の側縁に同様の係止片および係合穴を形成して、圧入係止するようにしてもよい。
また本発明のグリル取付構造は、ロアグリルに限らずメイングリルのバンパへの取付けに用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のグリル取付構造を示すもので、要部を拡大した分解斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う位置での係止状態を示す断面図である。
【図3】上記グリル取付構造の要部拡大正面図である。
【図4】図2に対応して、上記グリル取付構造の係止片の係合穴への圧入過程を示すもので、図4(A)は圧入初期段階、図4(B)は圧入途中の状態を示す説明図である。
【図5】本発明を適用する車両のバンパおよびロアグリルを示す一部断面とした斜視図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う従来のグリル取付構造の断面図である。
【図7】図6に示す従来のグリル取付構造の正面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 フロントバンパ(バンパ)
10 開口
11 下縁(周縁)
2 ロアグリル(グリル)
20 外周部
21 内壁部
22 外壁部
23 縦壁部
25 横板
26 縦板
3 係止片
31 爪部
32 先端縁
4 係合穴
41 上縁(一方の開口縁)
42 下縁(下方の開口縁)
43,43 スリット
44 棚板部
45,45 当てリブ
46 前端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のバンパに形成された開口に嵌合係止せしめて上記開口を閉じる合成樹脂製のグリルの取付構造であって、バンパには上記開口の周縁に、背面側へ突出し、先端に起立する爪部を設けた舌片状の係止片を形成し、上記グリルにはその外周部に、上記係止片に対応する角形の係合穴を設け、上記グリルをバンパの上記開口にその背面側から嵌入し、上記係止片を上記係合穴に圧入係止せしめてなる車両用バンパのグリル取付構造において、
上記グリルの外周部にはその上記係合穴の幅方向両側から左右方向に延び、係合穴への上記係止片の圧入時に上記係合穴を上下方向に拡大せしめるスリットを設けたことを特徴とする車両用バンパのグリル取付構造。
【請求項2】
上記係止片は上記爪部を上記係合穴の上下いずれか一方の開口縁に係止せしめるようになし、
上記係合穴の両側の上記スリットを、上記係合穴の他方の開口縁を左右両側へ延長する方向に形成した請求項1に記載の車両用バンパのグリル取付構造。
【請求項3】
上記係合穴の上記他方の開口縁には、互いに間隔をおいて起立して上記係止片の挿入方向に延び、圧入係止した係止片を支える左右一対の当てリブを設け、
上記両当てリブの前端およびこれらと対向する上記係止片の爪部の左右両側の先端縁をそれぞれ、上記係止片を係合穴に圧入するときに、係止片を圧入容易となすテーパー状に形成した請求項2に記載の車両用バンパのグリル取付構造。
【請求項4】
上記グリルは、枠状の外周部とその内部に格子状に設置された複数の横板および縦板を備え、上記外周部は、内壁部、外壁部および縦壁部とで前側に向かって開口する断面ほぼコ字状をなし、
上記縦壁部には、上下幅が上記縦壁部の上下幅の全幅にわたる上記係合穴を設け、該係合穴の左右両側には上記外壁部と上記縦壁部との境に沿って上記スリットを形成し、かつ係合穴の上記外壁部側の開口縁には、これからグリル背面側へ延出する棚板部を形成し、上記外壁部から棚板部にかけて上記当てリブを設け、係合穴に挿入せしめた上記係止片の上記爪部を上記係合穴の上記内壁部側の開口縁に係止せしめた請求項3に記載の車両用バンパのグリル取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−262761(P2009−262761A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114782(P2008−114782)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)