説明

車両用バンパー

【課題】車幅方向に沿った広い範囲に亘って衝突エネルギーをより均一に吸収することができる車両用バンパーを提供する。
【解決手段】バンパーアブソーバー9は、上下および車幅方向に沿って延在する縦面11と、該縦面11の上端および下端から車両前後方向の中央側に延在する上面12および下面13と、から断面コ字状に形成され、車幅方向端部9bの前後方向長さが車幅方向中央部9aよりも小さく形成されている。前記バンパーアブソーバー9の車幅方向端部9bに、前後方向の圧縮荷重に対して前後方向の変形量を増大させる易変形手段40となる開口部41を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バンパーレインフォースの前側にエネルギー吸収体を配設したフロントバンパーが知られている。前記エネルギー吸収体の前面は、平面視で円弧状に形成されているため、車両が前面衝突を起こした際に、エネルギー吸収体における車幅方向中央部が最も圧縮変形し、車幅方向端部の圧縮変形量は小さくなる。そこで、特許文献1に記載された車両用バンパーにおいては、車幅方向全体に亘って衝突エネルギーの吸収量を均一化するために、断面E字状に形成したエネルギー吸収体の断面積を、車幅方向の端部に向かうにつれて徐々に大きく設定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−341634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたエネルギー吸収体においては、車幅方向端部は車幅方向中央部よりも車両前後方向の長さが小さく形成されている。従って、前面衝突時に車幅方向端部に潰れ残りが生じやすく、衝突エネルギーを車幅方向全長に亘って均一に吸収することが困難であった。
【0005】
そこで、本発明は、衝突エネルギーを車幅方向に沿った広い範囲でより均一に吸収することができる車両用バンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用バンパーは、車両の前端または後端に配置されて車幅方向に延在する車両用バンパー、具体的にはフロントバンパーまたはリヤバンパーである。車両の前端または後端に配設されて車幅方向に延設されたバンパーフェイシアと、該バンパーフェイシアの車両前後方向の車両中央側に配置されて車幅方向に延設されたバンパーアブソーバーと、該バンパーアブソーバーの車両前後方向の車両中央側に配置されてバンパーアブソーバーを支持するバンパーレインフォースとを備えている。前記バンパーアブソーバーは、上下および車幅方向に沿って延在する縦面と、該縦面の上端および下端から車両前後方向の車両中央側に延在する上面および下面と、から断面コ字状に形成され、車幅方向端部の前後方向長さが車幅方向中央部よりも小さく形成されている。前記バンパーアブソーバーの車幅方向端部に易変形手段を設けている。この易変形手段は、前後方向の圧縮荷重が入力されたときに、バンパーアブソーバーの前後方向の変形量を増大させる作用を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衝突荷重が入力された場合に変形しにくいバンパーアブソーバーの車幅方向端部に易変形手段を設けている。従って、車幅方向端部の変形量が増大するため、バンパーアブソーバーの車幅方向に沿った広い範囲に亘ってエネルギー吸収量をより均一化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態による車両前端部を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線による断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態によるバンパーアブソーバーとバンパーレインフォースを示す斜視図である。
【図4】本図のうち、(a)は図3のB−B線による断面図、(b)は図3のC−C線による断面図である。
【図5】図3の分解斜視図である。
【図6】図3を上から見た平面図である。
【図7】図3を前から見た正面図である。
【図8】図5におけるバンパーアブソーバーの車幅方向端部の拡大斜視図である。
【図9】(a)は図8のD−D線による断面図、(b)は車両前方から後方に向かう衝突荷重が入力された場合の変形した断面図である。
【図10】開口部のない比較例における図9に対応する断面図であり、(a)は衝突荷重入力前の断面図、(b)は車両前方から後方に向かう衝突荷重が入力された場合の変形した断面図である。
【図11】第2の実施形態によるバンパーアブソーバーの車幅方向端部を拡大して示す斜視図である。
【図12】第3の実施形態によるバンパーアブソーバーの車幅方向端部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。なお、以下の各実施形態では、フロントバンパーを一例にするが、車両後端に配設されるリアバンパーにも本発明は適用可能である。
【0010】
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態について説明する。
【0011】
図1,2に示すように、車両前端部1には、車幅方向に沿って延在するフロントバンパー2と、該フロントバンパー2の上側に配置した上側フロントグリル3と、フロントバンパー2の下側に配置した下側フロントグリル4と、該下側フロントグリル4の下端から後方に延在するアンダーカバー5とが設けられている。
【0012】
前記上側フロントグリル3および下側フロントグリル4には、複数の通気口6,7が形成され、車両走行風が通気口6,7を介してエンジンルーム内に流入する。
【0013】
図2〜図4に示すように、前記フロントバンパー2は、車両前端に配置したバンパーフェイシア8と、該バンパーフェイシア8の後側(車両前後方向の中央側)にバンパーフェイシア8と対向して配置されたバンパーアブソーバー9と、該バンパーアブソーバー9の後側(車両前後方向の中央側)に配置されてバンパーアブソーバー9を支持するバンパーレインフォース10とを備えている。なお、前記下側フロントグリル4は、バンパーフェイシア8に形成されている。
【0014】
前記バンパーアブソーバー9は、上下および車幅方向に沿って延在する縦面11と、該縦面11の上端および下端から後方(車両前後方向の中央側)に延在する上面12および下面13と、から断面コ字状に形成されている。
【0015】
前記バンパーフェイシア8は、上下および車幅方向に沿って延在する縦壁面14と、該縦壁面14の上端から後方に屈曲して延在し、前記バンパーアブソーバー9の上面12の上側に対向配置される上壁面15と、前記縦壁面14の下端から後方に屈曲して延在し、前記バンパーアブソーバー9の下面13の下側に対向配置される下壁面17と、から構成されている。
【0016】
また、図3,6に示すように、バンパーアブソーバー9およびバンパーレインフォース10は平面視で弧状に湾曲して形成されており、車幅方向中央部9a,10aが車幅方向の両端部9b,10bよりも車両前方側に配置されている。なお、バンパーアブソーバー9における車幅方向の両端部9b,9bは、車幅方向外側に向かうにつれて前後方向の長さが徐々に小さくなる平坦な傾斜面18に形成されている。即ち、傾斜面18は、車幅方向外側に向かうにつれて徐々に後方に傾斜している。
【0017】
そして、バンパーレインフォース10は、図4(a)(b)に示すように、縦長の長方形断面に構成され、上下の中間高さ位置にリブ19が設けられている。このリブ19によって、バンパーレインフォース10は、上下2つの閉断面構造に構成されている。さらに、図4(b)に示すように、バンパーレインフォース10の前面20の上端および下端には、後方に窪んだ溝21,22が上下一対に形成されており、バンパーアブソーバー9の上面12および下面13の後端が溝21,22に嵌合されている。また、図4(a)に示すように、車幅方向中央部においては、バンパーアブソーバー9の上面12および下面13に一体形成された取付部材25,26がバンパーレインフォース10の上壁29および下壁30にボルト28を介して締結されている。
【0018】
そして、図3,5〜7に示すように、バンパーアブソーバー9の上面12には、車幅方向に沿って4箇所の取付部材23,25,26,27が上面12および下面13に一体に形成されている。これらの取付部材23〜27は、断面L字状に屈曲しており、ボルト28を介してバンパーレインフォース10の上壁29および下壁30に締結されている。
【0019】
そして、図8に詳細に示すように、バンパーアブソーバー9の車幅方向端部9bの傾斜面18には、前後方向の圧縮荷重が入力された場合にバンパーアブソーバー9の前後方向の変形を容易にする易変形手段40としての開口部41が形成されている。この開口部41は、車幅方向内側から車幅方向外側に向かうにつれて上下高さが徐々に大きくなる正面視略台形状に形成されている。即ち、開口部41は、車幅方向内側の短辺41aと、車幅方向外側の円弧状辺41bと、これらの短辺41aおよび円弧状辺41bを繋ぐ上辺41c、下辺41dとから画成されている。また、バンパーアブソーバー9の車幅方向外側端には、L字状に屈曲して後方に延在するフランジ44が一体形成されている。さらに、フランジ44の車幅方向内側の上下方向中央部には、後方に窪んだ円形状の取付面45が形成されている。この取付面45には、貫通孔46が穿設されており、ボルト28が貫通孔46に挿通されてバンパーレインフォース10の前面20に締結されている。
【0020】
次いで、図9,10を用いて本実施形態と比較例とについて、圧縮荷重が加わった場合の変形挙動を説明する。
【0021】
本実施形態においては、図9(a)に示すように、開口部41が形成されたバンパーアブソーバー9の車幅方向端部9bにおける縦面11に前方から後方に向かう荷重Fが入力されると、図9(b)に示すように、モーメントMが生じることによって縦面11が後方に向けて円弧状に湾曲変形する。
【0022】
一方、比較例においては、図10(a)に示すように、開口部41が形成されていないバンパーアブソーバー109は剛性が高いため、前方から後方に向かう荷重Fが入力されても、図10(b)に示すように、縦面111がほとんど変形しない。
【0023】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0024】
本実施形態による車両用バンパーは、車両の前端または後端に配置されて車幅方向に延在するフロントバンパー2である。車両の前端に配設されたバンパーフェイシア8と、該バンパーフェイシア8の車両前後方向の中央側(後方)に配置されたバンパーアブソーバー9と、該バンパーアブソーバー9の車両前後方向の中央側(後方)に配置されてバンパーアブソーバー9を支持するバンパーレインフォース10とを備えている。
【0025】
前記バンパーアブソーバー9は、上下および車幅方向に沿って延在する縦面11と、該縦面11の上端および下端から車両前後方向の中央側に延在する上面12および下面13と、から断面コ字状に形成され、車幅方向端部9bの前後方向長さが車幅方向中央部9aよりも小さく形成されている。前記バンパーアブソーバー9の車幅方向端部9bに、前後方向の圧縮荷重に対して前後方向の変形量を増大させる易変形手段40を設けている。具体的には、前記易変形手段40は、バンパーアブソーバー9の車幅方向端部9bの縦面11に形成した開口部41である。
【0026】
従って、バンパーアブソーバー9の車幅方向端部9bにおける縦面11に前方から後方に向かう荷重Fが入力されると、図9(b)に示すように、モーメントMが生じることによって縦面11が後方に向けて円弧状に湾曲変形する。ここで、本実施形態では、縦面11に開口部41が形成されているため、開口部41を設けない場合よりも、車幅方向端部9bの変形量が大きくなる。従って、車幅方向端部9bにおいてもエネルギー吸収が効率的に行われるため、衝突荷重の入力時にバンパーアブソーバー9の車幅方向全体の広い範囲に亘ってより均一なエネルギー吸収を行うことができる。
【0027】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。ただし、前記第1実施形態と同一構造には、同一符号を付して説明を省略する。
【0028】
図11に示すように、本実施形態によるバンパーアブソーバー209は、車幅方向中央部209aと、車幅方向端部209bとからなる。車幅方向端部209bは、第1実施形態で説明した平坦な傾斜面18のみから構成されている。即ち、第1実施形態では、図11の二点鎖線に示すフランジ44が設けられていたが、本実施形態ではこのL字型のフランジ44がない。このように、本実施形態では、フランジ44がない傾斜面18からなる車幅方向端部209bが易変形手段40となっている。
【0029】
従って、車幅方向端部209bに前方から後方に向けて衝突荷重が入力されたときに、フランジ44によって車幅方向端部209bの変形が阻害されないため、車幅方向端部209bが容易に変形する。これによって、車幅方向端部209bにおいてもエネルギー吸収が効率的に行われるため、衝突荷重の入力時にバンパーアブソーバー209の車幅方向全体に亘って均一なエネルギー吸収を行うことができる。
【0030】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。ただし、前記第1,2実施形態と同一構造には、同一符号を付して説明を省略する。
【0031】
図12に示すように、本実施形態によるバンパーアブソーバー309は、車幅方向中央部309aと、車幅方向端部209bとからなる。車幅方向端部309bは、傾斜面18と、該傾斜面18の端縁から後方に屈曲して延びるフランジ44とから構成されている。
【0032】
ここで、前述した第1実施形態では、取付面45に貫通孔46が穿設されており、ボルト28が貫通孔46に挿通されてバンパーレインフォース10の前面20に締結されていた。しかし、本実施形態では、車幅方向端部309bはバンパーレインフォース10に支持されておらず、車幅方向中央部309aが4箇所の取付部材23,25,26,27を介してバンパーレインフォース10に締結および支持されている。従って、バンパーアブソーバー309は、車幅方向端部309bの支持剛性が車幅方向中央部309aの支持剛性よりも低く設定されている。このように、本実施形態においては、バンパーレインフォース10に支持されない車幅方向端部309bを易変形手段40に構成している。
【0033】
このため、車幅方向端部309bに前方から後方に向けて衝突荷重が入力されたときに、車幅方向端部309bが容易に変形する。これによって、車幅方向端部309bにおいてもエネルギー吸収が効率的に行われるため、衝突荷重の入力時にバンパーアブソーバー309の車幅方向全体に亘って均一なエネルギー吸収を行うことができる。
【符号の説明】
【0034】
2 フロントバンパー(車両用バンパー)
8 バンパーフェイシア
9,209,309 バンパーアブソーバー
10 バンパーレインフォース
11 縦面
12 上面
13 下面
18 傾斜面
40 易変形手段
41 開口部(易変形手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前端または後端に配置されて車幅方向に延在する車両用バンパーであって、
車両の前端または後端に配設されたバンパーフェイシアと、該バンパーフェイシアの車両前後方向の車両中央側に配置されたバンパーアブソーバーと、該バンパーアブソーバーの車両前後方向の車両中央側に配置されてバンパーアブソーバーを支持するバンパーレインフォースとを備え、
前記バンパーアブソーバーは、上下および車幅方向に沿って延在する縦面と、該縦面の上端および下端から車両前後方向の車両中央側に延在する上面および下面と、から断面コ字状に形成され、車幅方向端部の前後方向長さが車幅方向中央部よりも小さく形成されており、
前記バンパーアブソーバーの車幅方向端部に、前後方向の圧縮荷重に対する反力を低減することにより、前後方向の変形量を増大させる易変形手段を設けたことを特徴とする車両用バンパー。
【請求項2】
前記易変形手段は、バンパーアブソーバーの車幅方向端部の縦面に形成した開口部であることを特徴とする請求項1に記載の車両用バンパー。
【請求項3】
前記バンパーアブソーバーの車幅方向端部における縦面を、車幅方向外側に向かうにつれて前後方向内側に延びる平坦な傾斜面のみから構成することにより、この車幅方向端部における縦面を前記易変形手段としたことを特徴とする請求項1に記載の車両用バンパー。
【請求項4】
前記バンパーアブソーバーにおいて車幅方向中央部のみを前記バンパーレインフォースに支持して、バンパーアブソーバーにおける車幅方向端部の支持剛性を車幅方向中央部よりも低下させることにより、バンパーアブソーバーの車幅方向端部を前記易変形手段としたことを特徴とする請求項1に記載の車両用バンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−153280(P2012−153280A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14891(P2011−14891)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)