説明

車両用バンパ装置

【課題】バンパリインホースの軽量化を図りながら、バンパリインホースに荷重を受けた場合、バンパリインホースとバンパリインホースが結合される結合部材との間に発生する集中的な荷重を減少する。
【解決手段】車両幅方向に延在するとともに両端部が車両前後方向に延びる一対のクラッシュボックス13に結合されるバンパリインホース16を備える。バンパリインホース16は、車両前後方向内側が開口した断面形状を呈し、開口の上下端から連続する一対の内側フランジ22を一体的に有する。バンパリインホース16の各端部の両内側フランジ22間を橋渡しするようにバンパリインホース16に結合され、バンパリインホース16と共にクラッシュボックス13に結合される補強部材23を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用バンパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用バンパ装置としては、バンパリインホースに荷重を受けた場合、変形を小さくするために、閉じた中空断面、又は、閉じた中空断面と同等の断面二次モーメントを有すると共に、軽量化を図るため、バンパリインホースの取り付け側に開口を設けた断面を有するものがある。バンパリインホースの取り付け側に開口を設けた断面を有するバンパリインホースとしては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。このバンパリインホース(本体部)は、取り付け側の一部に切欠部を有する断面視略C字状で、上下に縦壁を有する断面形状を呈する筒状に形成されている。また、バンパリインホースは、バンパーステー(結合部材)に接して固定されている。
【特許文献1】特開平11−301382
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、バンパリインホースに荷重を受けた場合、バンパリインホースが撓むことにより、バンパリインホースが結合される結合部材(例えば、バンパーステー、クラッシュボックス或いはサイドメンバなど)の稜線又は角と接するバンパリインホースの位置に荷重が集中する。取り付け側の一部に切欠部を有するバンパリインホースの場合、切欠部では荷重を受けることができないため、縦壁に荷重が集中的に加わる。このため、縦壁が変形し、荷重を支えきれない懸念がある。
【0004】
本発明の目的は、バンパリインホースの軽量化を図りながら、バンパリインホースに荷重を受けた場合、バンパリインホースとバンパリインホースが結合される結合部材との間に発生する集中的な荷重を減少する車両用バンパ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両幅方向に延在するとともに両端部が車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合され、車両前後方向内側が開口した断面形状を呈し、前記開口の上下端から連続する一対の内側縦壁を一体的に有するバンパリインホースを備える車両用バンパ装置において、前記バンパリインホースの各端部の前記両内側縦壁間を橋渡しするように前記バンパリインホースに結合され、該バンパリインホースと共に前記結合部材に結合される補強部材を備えたことを要旨とする。
【0006】
同構成によれば、前記バンパリインホースは、車両前後方向内側が開口した断面形状を呈し、開口の上下端から連続する一対の内側縦壁を一体的に有することにより、内側縦壁間に空間が設けられ、バンパリインホースの軽量化を図ることができる。また、各端部の両内側縦壁間を橋渡しするように補強部材を備えたことにより、バンパリインホースが撓んでも、結合部材の稜線又は角から受ける荷重を補強部材で受け、補強部材により、バンパリインホースへの荷重を分散し減少することができる。また、両内側縦壁の変形を防止できる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用バンパ装置において、前記補強部材の車両幅方向の幅は、前記結合部材の前記補強部材と接する車両幅方向の幅より大きいことを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、補強部材の車両幅方向の幅は、結合部材の補強部材と接する車両幅方向の幅より大きいことにより、縦壁と補強部材により、バンパリインホースと結合部材との間に発生する荷重を減少できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の車両用バンパ装置において、前記バンパリインホースが、前記上下端から突設された一対の嵌合突部を有し、前記補強部材は、前記両嵌合突部に嵌合する一対の曲成部を有することを要旨とする。
【0010】
同構成によれば、前記補強部材は、前記一対の曲成部を前記両嵌合突部に嵌合することで前記バンパリインホースと結合される。従って、例えばバンパリインホース及び補強部材を結合するためのボルト−ナット等の締結手段を割愛することができ、部品点数及び製造工数を削減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、バンパリインホースの軽量化を図りながら、バンパリインホースに荷重を受けた場合、バンパリインホースとバンパリインホースが結合される結合部材との間に発生する集中的な荷重を減少する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1は、自動車などの車両のフロント部分に適用される本実施形態に係る車両用バンパ装置を示す斜視図であり、図2及び図3は、その断面図及び平面図である。なお、図2は、図1のA−A線に沿った断面図となっている。図3に示されるように、この車両用バンパ装置は、車両の幅方向両側に配設されてボデーの一部を構成する一対のサイドメンバ11に、クラッシュボックス(結合部材)13を介して取り付けられる。各サイドメンバ11は、例えば金属板からなり、断面略四角形の中空構造を有して車両の前後方向に延びる。
【0013】
前記各サイドメンバ11の前端には、該サイドメンバ11の開口部を閉塞する態様で、例えば金属板からなる略四角形のブラケット12が溶接にて固着されている。なお、一対のブラケット12は、ラジエータの支持に供される。
【0014】
前記各ブラケット12の前面には、例えば金属板からなり、車両の前後方向に延びるクラッシュボックス(結合部材)13が取着されている。このクラッシュボックス13は、前後方向の中心線が前記サイドメンバ11の前後方向の中心線と一致するように配置されており、その後端に溶接にて固着されたブラケット14において、前記ブラケット12にボルト及びナット(図示略)にて締結されている。一対のクラッシュボックス13は、加えられた荷重を軸方向の塑性変形で吸収して衝撃エネルギーを吸収する。なお、各クラッシュボックス13は、軸方向に蛇腹状に塑性変形する。
【0015】
前記各クラッシュボックス13の前端には、該クラッシュボックス13の開口部を閉塞する態様で、例えば金属板からなるプレート15が溶接にて固着されるとともに、該プレート15には、車両の幅方向に延びるバンパリインホース16の各端部が結合されている。
【0016】
詳述すると、図1及び図2に示すように、本実施形態のバンパリインホース16は、車両幅方向に延在する断面一定の、例えばアルミニウムの押出材からなり、車両前後方向内側が開口したコの字型断面形状の本体部21及び該本体部21の開口の上下端から連続する一対の内側フランジ(縦壁)22を一体的に有する。そして、前記バンパリインホース16の車両幅方向(長手方向)の各端部には、高さ方向に並設された前記両内側フランジ22間を橋渡しするように、金属板からなる補強部材23がボルト及びナットからなる締結手段24にて締結されている。これら補強部材23の取着されたバンパリインホース16は、各端部において前記内側フランジ22と共に補強部材23がボルト及びナット(図示略)にて前記プレート15に締結されることで前記クラッシュボックス13に支持される。図8に示すように、補強部材23の車両幅方向の幅Bは、クラッシュボックス13の補強部材23と接する車両幅方向の幅Aより大きい。
【0017】
ここで、車両の衝突等により前方から衝撃が加えられると、この衝撃は、バンパリインホース16及びクラッシュボックス13を介してサイドメンバ11(ボデー)に伝達される。このとき、バンパリインホース16とともにクラッシュボックス13が塑性変形することで、ボデーへ伝達される衝撃を緩衝する。これにより、ボデー及び乗員に加えられる衝撃エネルギーが吸収される。
【0018】
次に、本実施形態の動作について説明する。既述のように、前記バンパリインホース16は、その各端部に結合された前記補強部材23とともに前記クラッシュボックス13に結合される。この場合、前記バンパリインホース16の各端部は、前記補強部材23が結合されることで、内側フランジ22に加わる荷重が減少されると共に、内側フランジ22を含むバンパリインホース16の変形が防止される。なお、本実施形態の補強部材23は、両内側フランジ22間に配置される中央部が前側に突出して溝部23aを形成しているが、周辺部品(プレート15等)との干渉を回避し得るのであれば該溝部23aを割愛した面一な補強部材であってもよい。
【0019】
また、前記補強部材23の取着されたバンパリインホース16は、ポール衝突を想定した3点曲げ評価において優れていることが確認されている。図4は、各種断面形状を有するバンパリインホース16の変形量(ストローク)に対する荷重の推移を示すグラフである。同図において、前記補強部材23の取着されたバンパリインホース16の荷重の推移を実線で、補強部材23を割愛したバンパリインホース16単独の荷重の推移を破線でそれぞれ示す。
【0020】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)本実施形態では、前記バンパリインホース16は、内側フランジ22間に空間が設けられ、バンパリインホース16の軽量化を図ることができる。また、各端部の両内側フランジ22間を橋渡しするように補強部材23を備えたことにより、バンパリインホース16が撓んでも、クラッシュボックス13の稜線から受ける荷重を補強部材23で受け、補強部材23により、バンパリインホース16への荷重を分散し減少することができる。また、両内側フランジ22の変形を防止できる。
【0021】
(2)また、補強部材23の車両幅方向の幅Bは、クラッシュボックス13の補強部材23と接する車両幅方向の幅Aより大きいことにより、内側フランジ22と補強部材23により、バンパリインホース16とクラッシュボックス13との間に発生する荷重を減少できる。
【0022】
(3)本実施形態では、バンパリインホース16をアルミニウムの押出材としたことで、例えば鉄板プレスでは1工程で成形できない内側フランジ22を容易に設けることができる。
【0023】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図5に示すように、前記本体部21に、その端上下端(図5では上端のみ図示)から一対の嵌合突部26を突設し、前記補強部材23の車両高さ方向両端部に、前記両嵌合突部26に嵌合する断面略L字形状の一対の曲成部27を形成してもよい。この場合、前記補強部材23は、前記一対の曲成部27を前記両嵌合突部26に嵌合することで前記バンパリインホース16と結合される。従って、例えばバンパリインホース16及び補強部材23を結合するための前記締結手段24を割愛することができ、部品点数及び製造工数を削減することができる。
【0024】
・前記実施形態において、前記締結手段24をブラインドナットで構成してもよい。同様に、その他の各部材の締結に係るボルト及び当該ボルトと組み合わされるナットに代えて、ブラインドナットを採用してもよい。この場合、ボルト及びナットの組み合わせのように組み付け方向を二方向にする必要がなく、組み付け方向が一方向のみでよいため、組付け性を向上することができる。
【0025】
・前記実施形態において、バンパリインホース16及び補強部材23を溶接にて結合してもよい。
・前記実施形態において、サイドメンバ11及びクラッシュボックス13、あるいはクラッシュボックス13及びバンパリインホース16(補強部材23)を溶接にて結合してもよい。
【0026】
・前記実施形態において、クラッシュボックス13を割愛し、バンパリインホース16(補強部材23)をサイドメンバ11に直結してもよい。
・本発明は、車両のリヤ部分に適用してもよい。
【0027】
・バンパリインホース16の断面は、図6に示すように、車両前後方向外側の上下端に斜辺部31が設けられていてもよい。また、図7に示すように、車両前後方向外側が円弧形状32でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態を示す斜視図。
【図2】同実施形態を示す断面図。
【図3】同実施形態を示す平面図。
【図4】同実施形態の変形量と荷重との関係を示すグラフ。
【図5】本発明の変形形態を示す断面図。
【図6】本発明の変形形態を示す断面図。
【図7】本発明の変形形態を示す断面図。
【図8】補強部材の車両幅方向の幅と、クラッシュボックスの補強部材と接する車両幅方向の幅との関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0029】
13…クラッシュボックス(結合部材)、16…バンパリインホース、22…内側フランジ(内側縦壁)、23…補強部材、26…嵌合突部、27…曲成部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に延在するとともに両端部が車両前後方向に延びる一対の結合部材に結合され、車両前後方向内側が開口した断面形状を呈し、前記開口の上下端から連続する一対の内側縦壁を一体的に有するバンパリインホースを備える車両用バンパ装置において、
前記バンパリインホースの各端部の前記両内側縦壁間を橋渡しするように前記バンパリインホースに結合され、該バンパリインホースと共に前記結合部材に結合される補強部材を備えたことを特徴とする車両用バンパ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用バンパ装置において、
前記補強部材の車両幅方向の幅は、前記結合部材の前記補強部材と接する車両幅方向の幅より大きいことを特徴とする車両用バンパ装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用バンパ装置において、
前記バンパリインホースは、前記上下端から突設された一対の嵌合突部を有し、
前記補強部材は、前記両嵌合突部に嵌合する一対の曲成部を有することを特徴とする車両用バンパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−83529(P2009−83529A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251871(P2007−251871)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)