説明

車両用フロアマットクリップ

【課題】簡単な構成でありながら、破損しづらいフロアマットクリップを提供する。
【解決手段】本発明のフロアマットクリップ1は、フロアマット60の係止孔62に挿入される係止部2と車体立壁部81の取付孔85に取り付けられる取付部4とを一体的に連結する基部3で構成されているため、簡単な構成のフロアマットクリップ1を提供する事ができる。さらに、前記基部3は、係止部2を有し、カーペット70上に配置される第1基部31と、前記車体立壁部81と略平行な面を有し、取付部4が設けられた取付板部33と、前記第1基部31と前記取付板部33とを一体的に連結し、車体床面83に向かって湾曲している第2基部32からなり、該湾曲全体で可撓し、荷重を分散して受ける事ができる。その為、簡単な構成で破損しづらいフロアマットクリップ1を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のフロアマットを固定する為のクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車車室内には、フロアの汚れを防止するために、フロアマットが用いられる。フロアマットは、クリップにより車両に固定されている。
【0003】
自動車のフロアマットを固定するためのクリップについて、例えば特許文献1には、係止部2にフロアマット21を固定し、ベース部5の湾曲部7裏面に設けられた取付部3を車体壁部19に固定させることでフロアマット21を固定出来る留め具1が開示されている。この特許文献1に開示されている留め具1は、車体壁部19に当接するシート部13を有しており、当接リブ16を中心に車体壁部19に対して留め具1全体を傾けることができる為、乗員の足が強く留め具1を押した場合でも傾斜することにより取付部3の破壊を防ぐことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−027381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の留め具1のシート部13は、支持部14、当接部15、及び当接リブ16からなり、中心が中空になっており、当接リブ16を中心に当接部15が車体壁部19に当接する範囲内でしか留め具1全体を傾けることができず、大きな負荷がかかった場合には、シート部13が破損する恐れがあり、構成が複雑である。その為、簡単な構成でありながら、破損しづらいクリップが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明では、フロアマットの係止孔に挿入される係止部と、
車体立壁部の取付孔に取り付けられる取付部と、
前記係止部と前記取付部とを一体的に連結する基部とを有するフロアマットクリップであって、
前記基部は可撓性を有しており、
係止部を有し、カーペット上に配置される第1基部と、
前記車体立壁部と略平行な面を有し、取付部が設けられた取付板部と、
前記第1基部と前記取付板部とを一体的に連結し、車体床面に向かって湾曲している第2基部からなることを特徴とする車両用フロアマットクリップを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0008】
本発明のフロアマットクリップは、フロアマットの係止孔に挿入される係止部と車体立壁部の取付孔に取り付けられる取付部と、前記係止部と前記取付部とを一体的に連結する基部で構成されている為、簡単な構成のフロアマットクリップを提供することが出来る。さらに、乗員がフロアマットクリップの第1基部を踏みつけた時に、第2基部が車体床面に向かい湾曲しているため、該湾曲全体で可撓し、荷重を分散して受けることができる。荷重を分散して受けることにより、取付部にかかる応力が減り、破損しづらいフロアマットクリップを提供することが出来る。
また、第2基部は車体床面に向かい湾曲している為、乗員が第2基部を直接踏むことは無く、取付部に直接応力が加わることはない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1はフロアマットクリップの斜視図である。
【図2】図2は本発明のフロアマットを車体に取り付けた様子を示す図である。
【図3】図3は本発明のフロアマットクリップの被取付部材である車体の要部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0011】
図1〜図2には、本発明の第1実施形態に係る、車両用フロアマットクリップ1が示されている。図2に示すように、フロアマットクリップ1は、車体80の車体立壁部81に開けられている取付孔85に基部3の取付板部33に設けられた取付部4の頭部42を挿入させて車体80に固定されており、係止部2をフロアマット60の係止孔62に挿入させてフロアマット60を固定させている。
【0012】
図1に示すように、フロアマットクリップ1は、樹脂により一体成形されており、フロアマット60の係止孔62に挿入されるフック形状を成す係止部2と車体立壁部81の取付孔85に挿入される取付部4とを有し、前記係止部2と前記取付部4とを一体的に連結する基部3とを有する。フロアマットクリップ1の取付部4は、車体立壁部81側の端部にあり、係止部2は、取付部4とは反対側の端部にそれぞれ設けられている。係止部2と取付部4とは、基部3により一体的に連結されている為、構成が簡単でありながら、剛性を得ることが出来、連結後の強度も維持される。
【0013】
基部3は、係止部2を有し、カーペット70上に配置される第1基部31と、
車体立壁部81と略平行な面を有し、取付部4が設けられた取付板部33と、
前記第1基部31と前記取付板部33とを一体的に連結し、車体床面83に向かって湾曲している第2基部32と、からなる。基部3の第2基部32は車体床面83に向かってゆるやかに湾曲している。その為、乗員がフロアマットクリップ1の第1基部31を踏みつけた際、該湾曲により第2基部32が撓み、荷重を分散して受ける。その為、取付部4にかかる応力が減り、破損しづらいフロアマットクリップ1を提供することが出来る。
【0014】
第2基部32は車体床面83に向かって湾曲している。その為、乗員の足がフロアマットクリップ1を踏みつけた際に第2基部32の湾曲により可撓するため、荷重を分散して受けることが出来るだけでなく、第2基部32を直接踏むことはなく、取付部4に直接応力が加わることはないため、フロアマットクリップ1が破損しづらい。
【0015】
基部3の裏面には、リブ5が設けられている。このリブ5は、取付板部33の端部E1より、係止部2に向かい、長手方向に水平にのびている。この為、乗員の足がフロアマットクリップ1を踏みつけた際に、基部3を破損しづらくすることができる。
【0016】
取付板部33裏面のリブ5は車体80に取付られた状態では、車体立壁部81に当接している。そのため、乗員の足がフロアマットクリップ1を踏みつけた際には、リブ5に沿ってフロアマットクリップ1全体を傾けることが可能となる。
【0017】
取付部4は、首部41と頭部42とを有しており、首部41の一部は、取付板部33裏面のリブ5に当接している。そのため、取付部4を補強する効果がある。
【0018】
図2に示すように、フロアマットクリップ1は車体80の車体立壁部81に固定された状態で、取付板部33の端部E1が車体立壁部81の端部E2よりも低い位置に取付られる。取付板部33の端部E1が車体立壁部81の端部E2よりも低い位置に取付られることにより、フロアマットクリップ1の取付板部33の端部と車体立壁部81の端部が同一の場合に比べ、フロアマットクリップ1を踏みづらくすることが出来る。
【0019】
また、カーペット70裏面には、クッション材75が設けられている。車体立壁部81側のカーペット70の端部にも図示しないクッション材75が設けられており、このクッション材75により、車体上面82からカーペット70が相当距離離間している。そのため、フロアマットクリップ1の取付板部33を踏みにくく、取付部4が破損しづらい。さらに、クッション材75により乗員の足によるカーペット70及びフロアマット60に対する荷重を緩衝することが出来る。
【0020】
フロアマットクリップ1の取付部4は首部41と頭部42を有しており、頭部42は略長円形状で板状を成しており、車体80の車体上面82から車体床面83までの距離が短いため、高さ方向の直径L1が、幅方向の直径L2よりも長く形成されている。この頭部42が挿入される車体立壁部81に設けられた取付孔85は、図3に示すように、高さ方向の直径L1が、幅方向の直径L2よりも短く形成されている。さらにこの頭部42の外形は取付孔85よりも小さく、取付孔85に挿入可能な大きさとされている。
【0021】
図2に示すように、車体床面83には、裏面にクッション材75を有するカーペット70が敷かれており、車体立壁部81から車体上面82にも拡がりつつ、車体80を覆っている。フロアマット60はカーペット70が敷かれた後、カーペット70上に配置され、車体立壁部81に取り付けられたフロアマットクリップ1によってずれないように固定される。車体立壁部81には、フロアマットクリップ1を取付る為の取付孔85が形成されており、カーペット70は、取付孔85の周りが切り抜かれており、取付孔85を露出できるようにされている。
【0022】
まず、車体立壁部81の取付孔85部分のカーペット70をめくり、フロアマットクリップ1の頭部42の長径方向であるL1が取付孔85の長径方向であるL2と平行になるようにする。このとき、基部3は車体床面83に対し、垂直な状態となっている。この状態で車体立壁部81の取付孔85に頭部42を挿入する。この時、頭部42は高さ方向の直径L1が幅方向の直径L2よりも長く、取付孔85は高さ方向の直径L1が幅方向の長さL2よりも短いため、車体80の車体上面82から車体床面83までの距離が短く、取付孔85の高さ方向の直径L1を幅方向の直径L2よりも短く形成することしか出来ない場合であっても、距離の制限を受けずにフロアマットクリップ1を車体80に取り付けることが出来る。
【0023】
次に、フロアマットクリップ1を首部41の軸周りに回転させ、頭部42の長径方向であるL1が取付孔85の長径方向であるL2と直交する状態となるように、90度回転させる。すると、頭部42の長径方向L1は取付孔の高さ方向の直径L1よりも長いため、車体立壁部81にフロアマットクリップ1を固定することが出来る。
【0024】
フロアマットクリップ1を車体立壁部81に固定後、フロアマット60の係止孔62を係止部2に通して、フロアマット60をカーペット70の上に配置する。フロアマット60の係止孔62の周縁には、鳩目61が設けられている。
【0025】
フロアマットクリップ1の基部3は、第2基部32が、車体床面83に向かい湾曲しており、基部3の裏面にはリブ5を有しているが、第2基部32の湾曲はゆるやかであり、第1基部31裏面のリブ5の略水平な面から第2基部32の最も飛び出している面までの距離は、5〜10mm程度あるため、車体床面83から取付孔85までの距離が短い場合でも、車体立壁部81への取付が可能である。また、フロアマットクリップ1に乗員の足により荷重がかかった場合でも、第2基部が車体床面に向かい湾曲しているため、該湾曲により可撓し、荷重を分散して受けることができる。荷重を分散して受けることにより、取付部4にかかる応力が減り、破損しづらいフロアマットクリップを提供することが出来る。
【0026】
車体立壁部81にフロアマットクリップ1を取り付けた状態では、フロアマットクリップ1の取付板部33裏面のリブ5は、車体立壁部81に当接した状態である。そのため、より強固にフロアマットクリップ1を車体立壁部81に取り付けることが出来る。また、リブ5は首部41に当接している。そのため、取付部4を補強することが可能である。
【0027】
なお、本実施形態は以下のように変更してもよい。
【0028】
フロアマットクリップ1の頭部42は、高さ方向の直径L1が、幅方向の直径L2よりも短く形成されていてもよい。この場合、頭部42が挿入される取付孔85は、高さ方向の直径L1が、幅方向の直径L2よりも長く形成される。この形状によれば、乗員の足がフロアマットクリップ1を踏みつけた場合でも、取付孔85の高さ方向の直径L1が長く、頭部42の高さ方向の長さL1が短いため、荷重のかかる方向と頭部42の短手方向にあたるL1が干渉しづらい為、頭部42にかかる応力が減り、取付部4の頭部42がより破損しづらい。
【0029】
また、本発明によるフロアマットクリップ1によれば、車体80の車体上面82から車体床面83までの距離が短く、取付孔85の高さ方向の直径L1を幅方向の直径L2よりも短く形成することしか出来ない場合であっても、距離の制限を受けずにフロアマットクリップ1を車体80に取り付けることが出来るだけでなく、第2基部が車体床面に向かい湾曲しているため、該湾曲により基部3が可撓し、荷重を分散して受けることができる。荷重を分散して受けることにより、取付部4にかかる応力が減り、破損しづらいフロアマットクリップを提供することが出来る。
【符号の説明】
【0030】
1 フロアマットクリップ
2 係止部
3 基部
31 第1基部
32 第2基部
33 取付板部
4 取付部
41 首部
42 頭部
5 リブ
60 フロアマット
61 鳩目
62 係止孔
70 カーペット
75 クッション材
80 車体
81 車体立壁部
82 車体上面
83 車体床面
85 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアマットの係止孔に挿入される係止部と、
車体立壁部の取付孔に取り付けられる取付部と、
前記係止部と前記取付部とを一体的に連結する基部とを有するフロアマットクリップであって、
前記基部は可撓性を有しており、
係止部を有し、カーペット上に配置される第1基部と、
前記車体立壁部と略平行な面を有し、取付部が設けられた取付板部と、
前記第1基部と前記取付板部とを一体的に連結し、車体床面に向かって湾曲している第2基部からなることを特徴とする車両用フロアマットクリップ。
【請求項2】
前記基部の裏面には、長手方向に向かい水平に伸びるリブが設けられており、
前記基部の取付板部の裏面のリブは、車体立壁部に当接することを特徴とする請求項1に記載の車両用フロアマットクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−93448(P2011−93448A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249971(P2009−249971)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】