説明

車両用リアアウトレット構造

【課題】走行風により車両後面部側に発生する渦流等の乱流の発生を抑制し、空力性能を向上させることが出来る車両用リアアウトレット構造を提供する。
【解決手段】エアアウトレット開口部13の前側周縁に沿って、車外側に向けて凸設される突起部14が、一体に設けられている。
突起部14は、長手方向を斜め下方向に向けて、前端縁10cに沿うように形成されることにより、エアアウトレット開口部13と、カバーレンズ部材10の前端縁10cとの間で、レンズ側面部10bが、車体後部2のコーナ部9の造形により、絞り込みが開始される部分の近傍に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の走行時に発生する空気抵抗を低減することが出来、特に、車体後部に発生する渦流を解消出来る車両用リアアウトレット構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の後部の外側面に、空気流の流れを阻害する阻害手段が、設けられているものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような従来の車両構造では、車体後部の車幅方向左,右側端部には、アウタ部材としての左,右リヤフェンダパネル部材が、設けられている。
【0004】
また、この左,右リヤフェンダパネル本体の後端からは、車室内方向へ向けて湾曲された湾曲部が形成されて、角部が構成されている。
【0005】
そして、この湾曲部の前端部の外面には、前記阻害手段としての突出部が、突設形成されている。
【0006】
次に、この従来の車両の阻害手段の作用効果について説明する。
【0007】
このように構成された従来の車両では、走行により、走行風が前記突出部に当たると、湾曲部の前半で剥離した空気が、車両後方に向かう乱流となる。
【0008】
このため、車両の後端近傍の空気流の流速を低下させて、気圧が大きく下がることを抑制出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許4321063号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の車両の阻害手段では、前記湾曲部の前端部近傍に突出部を設けるのみでは、車両後側面側への走行風の巻き込みを、充分に抑制出来ないといった問題があった。
【0011】
そこで、本発明の目的は、走行風により車両の後面部側に発生する渦流等の乱流の発生を抑制し、空力性能を向上させることが出来る車両用リアアウトレット構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、車体後部の外表面に設けられたアウタ部材の内側に、内側面側空間が形成されている。
【0013】
また、車外側空間と、該内側面側空間とを連通させるエアアウトレット開口部を設け、該エアアウトレット開口部の周縁には、車外側に向けて凸設される突起部を上下方向に連設している。
【0014】
そして、前記車体後側の表面に沿って流れる走行風が、該突起部の後方に形成された前記エアアウトレット開口部の車外側に向けて、該内側面側空間内の空気を、車両外方へ吸い出すように構成している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、走行風が、前記車体後側の表面に沿って流れると、前記突起部の後方で、前記エアアウトレット開口部の車外側位置に負圧領域が、形成される。
【0016】
このため、前記エアアウトレット開口部の車外側に向けて、前記内側面側空間内の空気が、吸い出されて、前記車体後側の表面に沿って流れる走行風に、該アウタ部材側から合流して、車体後方へ向かう該走行風が整流される。
【0017】
従って、車両の後側面側に走行風が巻き込まれること無く、車両後方に発生する渦流等の乱流が減少して、空気抵抗の増大を抑制することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態の車両用リアアウトレット構造で、車両斜め後方から見た要部の構成を説明するリヤコンビネーションランプ装置の斜視図である。
【図2】実施の形態の車両用リアアウトレット構造で、要部の構成を説明する図1中A−A線に沿った位置での断面図である。
【図3】実施の形態の車両用リアアウトレット構造で、図2中A部の拡大断面図である。
【図4】実施の形態の車両用リアアウトレット構造が設けられる自動車の後部を示し、開口部の存在する領域をB−B線以降の矢印領域で示す模式的な車両の側面図である。
【図5】実施の形態の車両用リアアウトレット構造で、アウタ部材の内側に形成される内側面側空間による空気の通風流路断面形状を、代表位置で説明する模式的な一部断面斜視図である。
【図6】実施の形態の車両用リアアウトレット構造で、図3に相当する位置での開口部と突起部との寸法関係を説明する模式的な水平方向断面図である。
【図7】実施の形態の車両用リアアウトレット構造で、突起中心の位置と、CD効果との関係を説明する実験データをプロットしたグラフ図である。
【図8】実施の形態の車両用リアアウトレット構造で、アウトレット幅方向寸法と、CD効果との関係を説明する実験データをプロットしたグラフ図である。
【図9】実施の形態の車両用リアアウトレット構造で、(a)は、エアアウトレットを設けていない車両、(b)は、エアアウトレットを設けた車両の後部の空気流れの様子を可視化して示す解析図である。
【図10】実施の形態の実施例1の車両用リアアウトレット構造で、車両斜め後方から見た要部の構成を説明するリヤコンビネーションランプ装置の斜視図である。
【図11】実施の形態の実施例2の車両用リアアウトレット構造で、車両を斜め後方から見た全体の構成を説明する模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態の車両用リアアウトレット構造を図面に基づいて説明する。
【0020】
まず、図1乃至図9を用いて、全体の構成から説明すると、この実施の形態の車両用リアアウトレット構造が適用される自動車1では、図4に示すように、車体後部2の車幅方向左右両側縁に位置する各コーナ部9,9には、一対のリヤコンビネーションランプ装置3,3が、各々装着されている。
【0021】
これらのリヤコンビネーションランプ装置3,3は、図1又は、図2に示すように、前記車体後部2の後側面2aに開口形成されるトランクルーム開口部4に回動可能に設けられたトランクリッド部材5を、車幅方向中心として、左,右対称位置に各々設けられている。
【0022】
このうち、図4に示す車体後部2の左側に位置するリヤコンビネーションランプ装置3の構成を、図1乃至図9を用いて説明する。尚、車体後部2の右側に位置するリヤコンビネーションランプ装置3の構成は、この左側のリヤコンビネーションランプ装置3と、左,右対称に構成されて、略同一機能を有するものであるので、図示及び説明を省略する。
【0023】
このリヤコンビネーションランプ装置3では、このトランクルーム開口部4の開口左,右各側縁部4a,4aに、各々凹設形成された取付凹部4b,4b内に、筐体の一部を構成する樹脂製のランプハウジング部材3a,3aが嵌着されている。
【0024】
このランプハウジング部材3a,3aの外表面には、透明樹脂製のカバーレンズ部材10,10が外嵌されていて、これらのランプハウジング部材3a及びカバーレンズ部材10が、車体後部2の左,右側面2b,2bに位置するリヤフェンダパネル部材8の外表面に近接するまで、車両前方に向けて廻り込んで延設されることにより、図2に示す水平断面形状で、湾曲する外形形状を有した前記各コーナ部9,9が構成されている。
【0025】
また、これらのランプハウジング部材3a,3aには、主に、夜間時等に、常時点灯することにより、自車の存在を認識させるテールランプ6,6と、ブレーキを踏んだことを自車後方を走行する車両に視認させるストップランプ7,7等とが、一体となるように組み込まれている。
【0026】
そして、このリヤコンビネーションランプ装置3,3のランプハウジング部材3a,3aには、これらの各テールランプ6,…等の点灯を、車両後方から視認可能とする透明樹脂製のカバーレンズ部材10,10が、水密状態で外嵌装着されている。
【0027】
このカバーレンズ部材10の外表面は、前記車体後部2のコーナ部9に沿って、湾曲形成されていて、レンズ後面部10a及びレンズ側面部10bとが一体に連設されている。
【0028】
このうち、前記レンズ後面部10aは、車体後部2の後側面2aの前記トランクリッド部材5の外表面と略面一となる外表面を有する内側縁部が形成されている。
【0029】
また、左,右側面2b,2bに位置するこのカバーレンズ部材10の前記レンズ側面部10bは、前記レンズ後面部10aから一体に湾曲されて、車体後部2の左,右側面2b,2bに設けられた各リヤフェンダパネル部材8の各外表面と略面一となるように、この車体側面に沿って、車体前方へ向けて延設されている。
【0030】
そして、このカバーレンズ部材10によって、この実施の形態のアウタ部材の一部が構成されていて、図4及び図5に示すように、このカバーレンズ部材10の内側には、取付凹部4bの外側パネル部材との間に空気が通気可能な流路断面積を有する内側面側空間11の上部が、形成されている。
【0031】
更に、図1に示すように、このカバーレンズ部材10の車両前側に位置する前端縁10cは、車両側面視で、車体後方に向けて下方へ斜めに形成されて、リヤフェンダパネル部材8に凹設された取付凹部4bの前側凹部4cに沿って延設されている。
【0032】
この前端縁10cには、高さ方向で、略全長に亘り延設されて、図2及び図3に示すように、車外側空間12と、前記内側面側空間11とを連通させるように、エアアウトレット開口部13が、開口形成されている。
【0033】
このエアアウトレット開口部13は、図6に示すように、車両前後方向の開口寸法W1が、車両高さ方向で略均一となるように、長手方向を斜行させた細長孔形状に形成されている。
【0034】
この開口寸法W1は、図8に示すように、アウトレット幅が、2〜20mmの間に設定された場合に、CD値を良好なものとする空力効果への寄与が、最も大きくなるといった実験データに基づいて設定される。
【0035】
更に、このエアアウトレット開口部13の前側周縁に沿って、車外側に向けて凸設される突起部14が、一体に設けられている。
【0036】
この突起部14は、長手方向を斜め下方向に向けて、前記前端縁10cに沿うように形成されている。
【0037】
この突起部14は、図2及び図3に示すように、前記エアアウトレット開口部13と、前記カバーレンズ部材10の前端縁10cとの間で、レンズ側面部10bが、車体後部2のコーナ部9の造形により、絞り込みが開始される部分の近傍に設けられていて、図6に示すように、車内方向へ傾斜する傾斜角度αが、45度以下となる部分に配置されている。
【0038】
この突起部14が設けられる箇所のアウタ部材の傾斜角度αは、図7に示すように、後部の絞り込みが開始される0度付近から、45度付近までの間で、好ましくは、約15度〜約40度までの間に設定された場合に、CD値を良好なものとする空力効果への寄与が、最も大きくなるといった実験データに基づいて設定される。
【0039】
また、この実施の形態の突起部14は、図6に示すように、水平方向断面形状を、最外側に頂点Tを有して稜線状に連設する断面三角形形状とすると共に、前記エアアウトレット開口部13とは、この頂点Tを挟んで反対側に位置する傾斜面状の前方スロープ部16が、形成されている。
【0040】
前記突起部14は、前記後側面2aを構成するアウタ部材の外側面垂線17が、45度未満で、車両内側に向けて絞り込まれているリヤフェンダパネル部材8の外側面に、略面一で隣接配置されるレンズ側面部10bの前端縁10cに沿って設けられている。
【0041】
また、この突起部14は、水平断面形状で、車体前後方向中央となる突起中心Sを有して、車両前後方向寸法と近似する幅方向寸法W2が、車両上下方向で略均一の幅寸法となるように突条状に形成されている。
【0042】
更に、この突起部14の前記頂点Tの位置が、前記突起中心Sからの外側面垂線17よりも、車両後方に設けられることにより、前記前方スロープ部16の傾斜角度を減少させて、前記隣接するリヤフェンダパネル部材8の外側面の絞り込み傾斜角度に近付けられている。
【0043】
そして、前記車体後部2の後側面2aの表面に沿って流れる走行風が、この突起部14の後方に負圧領域15を形成して、このエアアウトレット開口部13の車外側に位置されたこの負圧領域15によって、前記内側面側空間11内の空気が、車両外方の車外側空間12に向けて吸い出されるように構成されている。
【0044】
具体的には、図3に示すように、レンズ側面部10bの前端縁10c近傍の点線で示す様な一般面と同じ板厚で切り起こすように、図中実線で表される突起部14が一体に形成されて、この突起部14の内側及び直後に連続して位置するエアアウトレット開口部13の車外側に、走行風により、負圧となる負圧領域15が形成されるように構成されている。
【0045】
また、この実施の形態の前記内側面側空間11の下部は、図5に示すように、前記車体後部2のリヤホイールハウジング部材18の裏面側18aと、車幅方向に延設されるリヤバンパ部材19のうち、アウタ部材の一部として、この車体後部2を覆うバンパフェイシャ部材19aの裏面側19bとの間に形成されている。
【0046】
この内側面側空間11の下部には、前記車体後部2の車体下面側に開口形成されて、車体下面側の空気を、走行風として導入するエアインテーク開口部20が設けられていて、上方に位置するカバーレンズ部材10裏面側の前記内側面側空間11に連通されている。
【0047】
このため、この実施の形態の車体後部2の下面側を通過する走行風は、このエアインテーク開口部20から、前記内側面側空間11内に導入されて、バンパフェイシャ部材19aの裏面側19bで正圧となり、この内側面側空間11を通過して、前記カバーレンズ部材10に設けられたエアアウトレット開口部13に導かれて、外方に位置する前記負圧領域15に向けて吸い出されるように構成されている。
【0048】
このバンパフェイシャ部材19a及びカバーレンズ部材10の内側に位置する前記内側面側空間11では、空気の通過経路の断面形状が、車体上方へ向かう通風方向で、各断面積S1,S2…を徐減させるように形成されていると共に、前記エアアウトレット開口部13の開口断面積に比して、前記エアインテーク開口部20の開口面積及び各通過経路の各断面積S1,S2…が、大きくなるように設定されている。
【0049】
また、図2に示すように、前記エアアウトレット開口部13は、前記リヤコンビネーションランプ装置3を構成するランプハウジング部材3aと、前記カバーレンズ部材10との間を雪像して、固定若しくは、水密を行うシール接合部21a,21bよりも、外側方位置となる前記カバーレンズ部材10の外周縁のうち、前端縁10cに沿って、設けられている。
【0050】
更に、この実施の形態では、この前端縁10cと、前記エアアウトレット開口部13の前側周縁部との間に、前記突起部14が一体に延設されている。
【0051】
次に、この実施の形態の車両用リアアウトレット構造の作用効果について説明する。
【0052】
この実施の形態の車両用リアアウトレット構造が設けられた前記自動車1の車体後部2では、走行風が、前記左,右側面2b,2bを構成するリヤフェンダパネル部材8の表面に沿って流れると、図3に示すように、面一に設けられたカバーレンズ部材10の前端縁10cから、この突起部14の傾斜面状の前方スロープ部16に沿って、前記頂点Tまで円滑に導かれる。
【0053】
更に、走行風は、この前方スロープ部16の後端縁に位置する頂点Tを通過することにより、前記レンズ側面部10bの外表面から円滑に離間して、前記突起部の後方に負圧領域15が、形成される。
【0054】
このため、前記エアアウトレット開口部13では、車外側に形成されたこの負圧領域15に向けて、前記内側面側空間11内の空気が、吸い出される。
【0055】
そして、前記車体後部2の左,右側面2b,2bの表面に沿って流れる走行風に、このカバーレンズ部材10側から、車両内側から車両外側に向けて合流して、図9中(b)に示すように車体後方へ向かう走行風が、図9中(a)に示すような突起部14及びエアアウトレット開口部13が設けられていない車両に比して、整流される。
【0056】
従って、自動車1の後側面2a側に沿う走行風が、図9中(a)に示すように、コーナ部9で巻き込まれて、渦流を発生させてしまう虞を減少させて、空気抵抗の増大を抑制することが出来る。
【0057】
また、この実施の形態では、前記自動車1の車体下面側で、リヤタイヤのリヤホイールハウジングと、前記バンパフェイシャ部材19aとの間に、開口形成された前記エアインテーク開口部20から導入された車体後部2の下面側の空気が、前記内側面側空間11内を通過して、前記エアアウトレット開口部13から排出される。
【0058】
この際、前記内側面側空間11内の空気の圧力は、正圧で、このエアアウトレット開口部13の外側面近傍に形成される負圧領域15よりも高い圧力となっている。
【0059】
また、前記エアインテーク開口部20から、前記内側面側空間11を通過して、前記エアアウトレット開口部13の外方に位置する前記負圧領域15に向けて吸い出される空気の通風流路断面形状が、図5に示すように、前記内側面側空間11内では、前記エアアウトレット開口部13の開口断面積に比して、大きくなるように設定されている。
【0060】
しかも、この実施の形態では、空気の通過経路の断面形状が、車体上方へ向かう通風方向で徐減するように形成されている。
【0061】
このため、前記エアアウトレット開口部13では、車外側に形成されたこの負圧領域15に向けて、前記内側面側空間11内で、正圧となった空気が、気圧差によって、更に円滑に吸い出される。
【0062】
例えば、CD値が0.3の自動車1を用いて実験を行い、単体で前記エアアウトレット開口部13若しくは、突起部14を各々設けたものと、本実施の形態の凸設される突起部14に、エアアウトレット開口部13を組み合わせたものとを、比較すると、単体で前記エアアウトレット開口部13を有する車両では、1.0%(Δ0.003)、単体で、突
起部14を有する車両では、1.4%(Δ0.005)のCD値改善効果があるのに対し
て、前記突起部14に、エアアウトレット開口部13を組み合わせた構成を有するこの実施の形態の自動車1では、2.4%(Δ0.008)のCD値改善効果が得られ、単体で
各々前記エアアウトレット開口部13若しくは、突起部14を用いた場合より、相乗効果が大きいことが分かる。
【0063】
更に、この実施の形態では、図6に示すように、前記突起部14の位置が、前記カバーレンズ部材10のレンズ側面部10bからの外側面垂線17が、45度未満となるように絞り込まれている後側面2aの一部分に、水平断面形状で、車体前後方向中央となる突起中心Sを有するように形成されている。
【0064】
このため、前記後側面2aからの突出量を、良好な部材効率で確保出来、例えば、図3中点線で示すように、レンズ側面部10bの前端縁10c近傍に、一般面と同じ板厚を有して切り起こす形状とすることにより、容易に前記突起部14を、前記カバーレンズ部材10に一体となるように形成出来る。
【0065】
また、この実施の形態の前記突起部14は、図6に示すように、水平断面形状で、車両前後方向に所定の幅方向寸法W2を有して、前記突起中心Sからの外側面垂線17よりも、車体後方に、前記突起部14の頂点Tをずらして位置させている。
【0066】
このため、前方スロープ部16の傾斜角度を、前記後側面2aの外表面に近接させながら、更に、前記後側面2aからの前記頂点Tの突出量を大きく設定出来る。
【0067】
しかも、この実施の形態の突起部14では、図3に示すように、前記前方スロープ部16を、点線位置から実線で示すように、前記エアアウトレット開口部13の前側周縁を一体に屈曲させる切り起こし形状としている。
【0068】
このため、負圧領域15を、この突起部14の頂点Tの後方位置だけでなく、車両内側にも、拡大して設けることが出来、更に、空気の吸い出し量を増大させることが出来る。
【0069】
また、この実施の形態では、前記エアアウトレット開口部13及び突起部14が、車体後部2の車幅方向左,右側縁に位置するリヤコンビネーションランプ装置3,3に設けられている。
【0070】
このため、別途部材を追加する必要が無く、部品点数の増大を抑制できる。
【0071】
しかも、この実施の形態では、前記エアアウトレット開口部13及び突起部14は、車体後部2に配置されたリヤコンビネーションランプ装置3を構成するカバーレンズ部材10のうち、車体側面前方へ向けて延設されたレンズ側面部10bに、設けられている。
【0072】
このため、容易に、車体後部2の左,右側面2b,2bに前記エアアウトレット開口部13及び突起部14を配置出来る。
【0073】
また、この実施の形態では、前記突起部14の後方に開口形成されるエアアウトレット開口部13が、図2に示すように、前記リヤコンビネーションランプ装置3を構成するランプハウジング部材3aに外嵌装着される前記カバーレンズ部材10とのシール接合部21a,21bよりも、外側方で、lpmpカバーレンズ部材10の外周縁である前端縁10cに沿って、設けられている。
【0074】
このため、水密を保持する二重のシール接合部21a,21bとは、別に、空気を排出するエアアウトレット開口部13を構成出来、形状や数量等の設定の自由度を向上させることが出来る。
【0075】
しかも、この実施の形態では、この前端縁10cと、前記エアアウトレット開口部13の前側周縁部との間に、前記突起部14が一体に延設されている。
【0076】
このため、前記エアアウトレット開口部13を前端縁10cに近接させて開口形成しても、前端縁10c近傍の前記カバーレンズ部材10の剛性の低下を抑制することが出来る。
【実施例1】
【0077】
図10は、この発明の実施の形態の実施例1の車両用リアアウトレット構造を示すものである。
【0078】
なお、前記実施の形態の車両用リアアウトレット構造と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0079】
まず、構成上の相違点を中心に説明すると、この実施例1の車両用リアアウトレット構造では、前記実施の形態のエアアウトレット開口部13,13に代えて、自動車101の車体後部22の左,右各リヤコンビネーションランプ装置23,23に設けられる各カバーレンズ部材23aに、複数のエアアウトレット開口部25…を一定間隔を置いて開口形成するエアアウトレット24,24が、設けられている。
【0080】
この実施例1のエアアウトレット24の各エアアウトレット開口部25…は、各々長孔形状を呈して、前記突起部14の延設方向に沿って、縦列に隣接配置されて、側面視では、一本の破線状となるように開口形成されている。
【0081】
また、これらのエアアウトレット開口部25,25間には、補強部26,26…が設けられている。
【0082】
この補強部26は、エアアウトレット開口部25の開口幅方向で、対向する両側縁間を一体に連結するように掛け渡されて、縦列方向では、このエアアウトレット開口部25,25…と交互に配置されている。
【0083】
そして、これらの補強部26…により、車体後部22に装着される前記カバーレンズ部材23aに対して、斜行して配置される前端縁23cの突起部14を、複数箇所で支持するように一体に形成されている。
【0084】
また、この実施例1の補強部26…の車両上下方向寸法h3は、空気の排出を妨げないように、各々約20mm以下として、前記隣接配置される各エアアウトレット開口部25,25の上,下端部が、水平方向では、一部重複するように構成されている。
【0085】
次に、この実施例1の車両用リアアウトレット構造の作用効果について説明する。
【0086】
この実施例1では、前記実施の形態の車両用リアアウトレット構造の作用効果に加えて更に、複数のエアアウトレット開口部25…を一定間隔を置いて開口形成するエアアウトレット24が、前記カバーレンズ部材23aの前端縁23cに沿って、形成されている。
【0087】
そして、この前端縁23cに近接配置される突起部14に対して、これらのエアアウトレット開口部25,25間に形成された補強部26,26…が、孔幅方向で、内側面周縁部間を一体に連結接続するように設けられている。
【0088】
このため、前記エアアウトレット24が、複数のエアアウトレット開口部25…を開口形成していても、前記突起部14を有する前端縁23cが、複数箇所で支持されて車体後部22への取付強度を向上させることが出来る。
【0089】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と同一であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0090】
図11は、この発明の実施の形態の実施例2の車両用リアアウトレット構造を示すものである。
【0091】
なお、前記実施の形態の車両用リアアウトレット構造と同一乃至均等な部分については、同一符号を付して説明する。
【0092】
まず、構成上の相違点を中心に説明すると、この実施例2の車両用リアアウトレット構造では、自動車102の車体後部32の車幅方向左右両側縁に位置する各コーナ部9,9のリヤピラー下方には、アウタ部材の一部としてのコーナアウタパネル部材110,110が、各々装着されている。
【0093】
このコーナアウタパネル部材110の外表面は、前記コーナ部9,9の湾曲形状に沿って、パネル後面部110a及びパネル側面部110bとが一体に連設されている。
【0094】
このうち、パネル側面部110bの車両前後方向の前端縁110cは、前記リヤフェンダパネル部材8の各外表面と略面一となるように、この車体後部32の側面に沿って前方へ向けて延設されて、略車両上,下方向に沿って一定の上,下方向寸法h4を有している。
【0095】
また、このパネル側面部110bの前端縁110c近傍には、上,下方向略全長に亘り、車外側空間12と、内側面側空間11とを連通させるエアアウトレット開口部113が、開口形成されている。
【0096】
このエアアウトレット開口部113は、前側周縁に沿って、車外側に向けて凸設される突起部114が、上下方向に向けて延設されている。
【0097】
この突起部114は、図11に示すように、前記エアアウトレット開口部113と、前端縁110cとの間で、パネル側面部110bが、車体後部2のコーナ部9の造形により、絞り込みが開始される部分の近傍に設けられていて、車内方向へ傾斜する傾斜角度αが、45度以下となる部分に配置されている。
【0098】
次に、この実施例2の車両用リアアウトレット構造の作用効果について説明する。
【0099】
この実施例2では、前記実施の形態及び実施例1の作用効果に加えて、更に、走行風は、前記パネル側面部110bの突起部114によって、外表面から円滑に離間して、この突起部114の後方の前記エアアウトレット開口部113の車外側に、負圧領域15が形成される。
【0100】
このため、前記内側面側空間11内を通過した空気は、このエアアウトレット開口部113を介して、車外側空間12に向けて円滑に吸い出される。
【0101】
そして、前記左右側面2b,2bの外表面に沿って流れる走行風に車両内側から合流して、車体後方へ向かう走行風が、整流される。
【0102】
また、この実施例2では、前記リヤピラー下方に設けられるアウタ部材の一部としてのコーナアウタパネル部材110に、前記エアアウトレット開口部113及び突起部114が設けられている。
【0103】
このため、別途部品を追加すること無く構成出来るので、部品点数を増大させることが無い。
【0104】
また、実施の形態のカバーレンズ部材10に、前記エアアウトレット開口部113及び突起部114を設ける必要がないので、リヤコンビネーションランプ装置の造形等、配置及び構成の自由度が向上する。
【0105】
他の構成及び作用効果については、前記実施の形態及び実施例1と同一であるので説明を省略する。
【0106】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態及び実施例1,2を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例1,2の車両用リアアウトレット構造に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0107】
即ち、前記実施の形態及び実施例1,2では、車両用リアアウトレット構造として、前記突起部14が、長手方向を斜め下方向に向けられて、前記カバーレンズ部材10の前端縁10c及び前記エアアウトレット開口部13の前縁部に沿う長手方向へ向けて延設されているもの等を示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、前記突起部14が、複数条本設けられる等、突起部14の形状、数量、配設位置及び材質が特に限定されるものではない。
【0108】
更に、前記実施の形態及び実施例1,2では、車両用リアアウトレット構造として、前記突起部14の後方に、長孔状のエアアウトレット開口部13を開口形成したものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、例えば、エアアウトレット開口部13の開口形状が、円形、長円形若しくは楕円形等、他の形状であっても良く、エアアウトレット開口部の形状、数量及び組み合わせが特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0109】
前記実施の形態では、車両用リアアウトレット構造が適用される構成の一例として、車両用のリヤコンビネーションランプ装置3,23及びコーナアウタパネル部材110を示して説明してきたが、特にこれに限らず、車体後部であれば、例えば、ターンシグナルランプ等他の機能ランプを収納するリヤコンビネーションランプ装置や、車体後部屋根部の後端縁に持ちいられているパネル部材や、或いは、リヤハイマウントストップランプ装置の一部等、どの箇所に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1,101,102 自動車
2 ,22,32 車体後部
2a 後側面
2b,2b 左,右側面
3,3 リヤコンビネーションランプ装置
3a,3a ランプハウジング部材
10,23a カバーレンズ部材(アウタ部材の一部)
10c 前端縁
11 内側面側空間
12 車外側空間
13,25,113 エアアウトレット開口部
14,114 突起部
16 前方スロープ部
19a バンパフェイシャ部材(アウタ部材の一部)
110 コーナアウタパネル部材(アウタ部材の一部)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後部の外表面に設けられたアウタ部材の内側に、内側面側空間を形成すると共に、車外側空間と、該内側面側空間とを連通させるエアアウトレット開口部を設け、該エアアウトレット開口部の周縁には、車外側に向けて凸設される突起部を上下方向に連設して、前記車体後側の表面に沿って流れる走行風が、該突起部の後方に形成された前記エアアウトレット開口部の車外側に、該内側面側空間内の空気を、車両外方に向けて吸い出すことを特徴とする車両用リアアウトレット構造。
【請求項2】
前記突起部は、車体後部に開口形成されたエアアウトレット開口部の前側周縁に沿って、隣接配置されて、水平方向断面形状を、最外側に頂点を有して稜線状に連設する断面三角形形状とすると共に、前記エアアウトレット開口部とは、該頂点を挟んで反対側に位置する傾斜面状の前方スロープ部を形成したことを特徴とする請求項1記載の車両用リアアウトレット構造。
【請求項3】
前記突起部は、前記アウタ部材の外側面垂線が、45度未満に絞り込まれている部分に、水平断面形状で、車体前後方向中央となる突起中心を有して形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の車両用リアアウトレット構造。
【請求項4】
前記突起部は、水平断面形状で、車両前後方向に所定の幅寸法を有して、前記突起中心からの垂線よりも、車体後方に、前記突起部の頂点をずらして位置させていることを特徴とする請求項3記載の車両用リアアウトレット構造。
【請求項5】
前記突起部を、前記エアアウトレット開口部の前側周縁を一体に屈曲させることにより、車両内側及び後方に、前記エアアウトレット開口部の車外側に位置する負圧領域を形成することを特徴とする請求項1乃至4のうち、何れか一項記載の車両用リアアウトレット構造。
【請求項6】
前記エアアウトレット開口部及び突起部は、車体後部の車幅方向左,右側面に位置することを特徴とする請求項1乃至5のうち、何れか一項記載の車両用リアアウトレット構造。
【請求項7】
前記エアアウトレット開口部及び突起部は、車体後部に配置されたリヤコンビネーションランプ装置が、車体側面前方へ向けて延設されたレンズ側面部に、設けられていることを特徴とする請求項6記載の車両用リアアウトレット構造。
【請求項8】
前記内側面側空間は、前記車体後部のリヤホイールハウジング部材の裏面側と、リヤバンパ部材の裏面側との間に形成されて、車体下面側の空気を導入するエアインテーク開口部に連通されていることを特徴とする請求項1乃至7のうち、何れか一項記載の車両用リアアウトレット構造。
【請求項9】
前記エアインテーク開口部から、前記内側面側空間を通過して、前記エアアウトレット開口部の外方に位置する前記負圧領域に向けて吸い出される空気の通風流路断面形状のうち、前記内側面側空間内では、前記エアアウトレット開口部の開口断面積に比して、大きくなるように設定されていることを特徴とする請求項8記載の車両用リアアウトレット構造。
【請求項10】
前記エアアウトレット開口部は、前記リヤコンビネーションランプを構成するランプハウジング部材と車体後部との接合部の外側方で、該ランプハウジング部材に外嵌装着されるリヤアウタレンズ部材の外周縁に沿って設けられていることを特徴とする請求項7記載の車両用リアアウトレット構造。
【請求項11】
前記エアアウトレット開口部は、前記突起部の延設方向に沿って、複数開口形成されると共に、隣接配置されるエアアウトレット開口部間には、前記突起部を間隔を置いて支持する補強部が設けられてなるエアアウトレットであることを特徴とする請求項1乃至10のうち、何れか一項記載の車両用リアアウトレット構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−240776(P2011−240776A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113181(P2010−113181)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】