説明

車両用ルームランプの取付構造

【課題】ルーフトリムとルームランプユニットのモジュール化を組付け上有利に行える車両用ルームランプの取付構造の提供を図る。
【解決手段】リテーナ部材16の周方向の複数ヶ所には、内周縁の立上がり壁18を側壁の一部とするボックス状のタワー部19を一体に備える。タワー部19のルームランプユニット13の周側面に対向する側壁に、上縁側に支持点を持ち、下端縁に係止爪20aを備えた板ばね片20を設け、その弾性作用により係止爪20aとルームランプユニット13の周側面の係止部13aとを相互に係着可能としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ルームランプの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ルーフトリムに形成した開口部の一側縁部に、ルームランプユニットの一側縁を下側から挿し込み係着して、該ルームランプユニットをこの係着部を支点に斜め下がりに仮止め可能としたルームランプの取付構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−137822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の開示技術は、ルーフパネルの室内側の面に沿って配設したルーフトリムに対して、ルームランプユニットを後付けする構造を前提とするものである。そして、上述のように、ルームランプユニットを斜め下がりに仮止めすることにより、仮止め点と反対側に確保された開口部の隙間を利用して、ルーフトリム背面側の空間に配索したハーネスのコネクタ接続を可能としたものである。
【0005】
近年、車両用艤装部品の輸送,搬送工数の削減、および車体への組付工数の削減等を目的として、ルームランプユニットをルーフトリムにサブアッセンブリしてモジュール化することが行われている。
【0006】
しかし、特許文献1の開示技術は、前述のようにルームランプユニット後付けタイプの構造であるため、構造上、上述のモジュール化には馴染まない。
【0007】
そこで、本発明はルーフトリムとルームランプユニットのモジュール化を組付け上有利に行える車両用ルームランプの取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用ルームランプの取付構造にあっては、ルーフトリムの開口部に下側から挿入配置され、該開口部の下側周縁部に係止可能なフランジを有するルームランプユニットと、この開口部の上側周縁部に配置された枠状のリテーナ部材と、を備えていて、該リテーナ部材を用いて前記開口部の周縁部をルームランプユニットのフランジとで挟んだ状態で、ルームランプユニットをルーフトリムにサブアッセンブリするようにしている。
【0009】
リテーナ部材は、ルーフトリムの開口部の周縁部に当接する押え壁と、該押え壁の少なくとも内周縁側に設けた立上がり壁と、を備えて一定の型断面に形成してある。
【0010】
このリテーナ部材の周方向の複数ヶ所には、内周縁側の立上がり壁を側壁の一部とする、下側が開放したボックス状のタワー部を一体に備えている。
【0011】
そして、このタワー部のルームランプユニット周側面に対向する側壁に、該タワー部の上縁側に支持点を持ち、下端縁に係止爪を備えて、リテーナ部材の径方向に撓み変形可能な板ばね片を設け、該板ばね片の弾性作用により、前記係止爪とルームランプユニットの周側面に設けた係止部とを相互に係着可能としたことを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ルーフトリムとルームランプユニットおよびリテーナ部材とを位置合わせして、ルームランプユニットとリテーナ部材とを上下方向に押圧することにより、板ばね片が弾性作用により撓み変形して、係止爪と係止部相互がくぐり抜けて係着する。このとき、複数の板ばね片がルームランプユニットの周側面に摺接することにより、リテーナ部材とルームランプユニット相互の芯出し作用が得られて、上述の位置合わせを容易に行うことができる。そして、一方向の押圧作業でルームランプユニットの係着固定を行えるため、組付け作業が単純化してロボットによる自動組付けが可能となる。
【0013】
この結果、ルーフトリムとルームランプユニットとの一体モジュール化をコスト的に有利に行うことができる。
【0014】
しかも、リテーナ部材は一定の型断面としてあると共に、その周方向の複数ヶ所にボックス状のタワー部を一体に備えた剛体構造としてあり、このタワー部に板ばね部材を設けてあるため、ルームランプユニットの保持力を強くして、取付剛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の構造に用いられるリテーナ部材の一例を示す斜視図。
【図2】本発明の取付構造を示す図1のA−A線に沿う断面説明図。
【図3】図2のB範囲部の拡大図。
【図4】図2のC範囲部の拡大図。
【図5】板ばね部材の形成部周りの構造を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0017】
図2に示す本実施形態の構造にあっては、ルーフトリム11に形成した開口部12に下側から挿入配置され、該開口部12の下側周縁部に係止可能なフランジ14を有するルームランプユニット13と、開口部12の上側周縁部に配置された枠状のリテーナ部材16と、を備えている。
【0018】
ルーフトリム11は、図3,図4に示すように、芯材11aと、その下面側の表皮11bとから成る合成樹脂成形体として構成し、ルーフパネル1の室内側の面を覆って装着してある。
【0019】
ルームランプユニット13は、合成樹脂製の化粧ケースに組付けた構成としてあって、フランジ14はこの化粧ケースに形成してある。
【0020】
このルームランプユニット13は、フランジ14とリテーナ部材16とで開口部12の周縁部を挟んだ状態で、該リテーナ部材16によってルーフトリム11にサブアッセンブリして、ルーフトリム11とルームランプユニット13とを一体としたルーフモジュールを構成している。
【0021】
このルーフモジュールは、ルーフトリム11の周縁部分をルーフパネル1の周縁部分のルーフレール(ルーフ骨格部材)2にクリップ等の止着部材で固定すると共に、ルームランプユニット13をその背面に突設したクリップ15等の係着部材により、近傍のルーフレール2に係着固定するようにしている。
【0022】
リテーナ部材16は、ルームランプユニット13およびルーフトリム11の開口部12の形状に対応した枠状、例えば、図1に示す例では略矩形の枠状に形成してある。
【0023】
このリテーナ部材16は、適宜の合成樹脂材からなり、ルーフトリム11の開口部12の周縁部に当接する押え壁17と、該押え壁17の少なくとも内周縁側に設けた立上がり壁18と、を備えて一定の型断面に形成してある。
【0024】
本実施形態では、立上がり壁18を押え壁17の内,外周縁に設けて、リテーナ部材16を溝型(凹型)断面として形成してある。
【0025】
このリテーナ部材16の周方向の複数ヶ所には、内,外周縁の立上がり壁18を側壁の一部とする、下側が開放したボックス状のタワー部19を一体に備えている。
【0026】
タワー部19は、立上がり壁18の上縁よりも成形高さを大きくしてある。また、この立上がり壁18の上側外縁にはR(丸み)を付与して、後述する再組付け補助具としての紐3の引掛かりを回避し得るようにしている。
【0027】
タワー部19のルームランプユニット周側面に対向する側壁には、該タワー部19の上縁側に支持点を持ち、下端縁に係止爪20aを備えて、リテーナ部材16の径方向に撓み変形可能な板ばね片20を設けてある。この板ばね片20は、リテーナ部材16の径方向内側に向けて傾斜して形成してある。
【0028】
一方、ルームランプユニット13の周側面には、板ばね片20の係止爪20aと係着する係止部13aを形成してある。図3,図4に示す例では、係止部13aを突縁部として形成してあるが、係止溝や係止孔として形成してもよい。
【0029】
そして、これら係止爪20aと係止部13aとを相互に係着して、前述のようにルームランプユニット13を、フランジ14とリテーナ部材16とで、開口部12の周縁部を挟んだ状態でルーフトリム11にサブアッセンブリしてある。
【0030】
本実施形態によれば、ルームランプユニット13とルーフトリム11との組付けに際しては、ルーフトリム11とルームランプユニット13およびリテーナ部材16とを位置合わせして、ルームランプユニット13とリテーナ部材16とを上下方向に押圧する。これにより、リテーナ部材16の板ばね片20が弾性作用により撓み変形して、係止爪20aとルームランプユニット13の係止部13aの相互がくぐり抜けて係着する。
【0031】
このとき、複数の板ばね片20がルームランプユニット13の周側面に摺接することにより、リテーナ部材16とルームランプユニット13相互の芯出し作用が得られて、上述の位置合わせを容易に行うことができる。この位置合わせ作業を治具を用いて行う場合、ルームランプユニット13とリテーナ部材16相互の芯出し作用が得られるため、治具の構成を簡単にすることができる。
【0032】
そして、この一方向の押圧作業でルームランプユニット13のルーフトリム11への係着固定を行えるため、組付け作業が単純化してロボットによる自動組付けが可能となる。
【0033】
この結果、ルーフトリム11とルームランプユニット13との一体モジュール化をコスト的に有利に行うことができる。
【0034】
また、リテーナ部材16は押え壁17とその周縁の立上がり壁18とで一定の型断面としてあると共に、周方向の複数ヶ所にボックス状のタワー部19を一体に備えた剛体構造としてあり、このタワー部19に板ばね片20を設けてあるため、ルームランプユニット13の保持力を強くして、取付構造を高めることができる。
【0035】
ルーフトリム11は、車両の仕様によって表皮11bの意匠模様や材質を変えることから板厚が大,小異なる場合がある。本実施形態では、リテーナ部材16の板ばね片20を、該リテーナ部材16の径方向内側に向けて傾斜して形成してあるため十分な撓み変形量を確保でき、ルーフトリム11の板厚の大,小に関わらずルームランプユニット13をしっかりと保持することができる。
【0036】
また、タワー部19を立上がり壁18の上縁よりも成形高さを大きくしてあるため、リテーナ部材16の全体的な嵩張りを伴うことなく板ばね片20の脚長を長くして形成することができて、上述の撓み変形量の確保を構造的に有利に行うことができる。
【0037】
ここで、ルーフトリム11をルーフレール2に固定した状態のままルームランプユニット13を再組付けする必要が生じた場合、以下に述べるようにルームランプユニット13とリテーナ部材16とを簡単に相互係着することができる。
【0038】
ルームランプユニット13をルーフトリム11から取り外すと、リテーナ部材16はルーフトリム11に対して非固定状態にある。
【0039】
そこで、図3に鎖線で示すように再組付け補助具として、紐3をリテーナ部材16に巻回して両端をルーフトリム11の開口部12から引き出して、これを作業者が把持することでリテーナ部材16を開口部12の上側周縁部に暫定的に止め置くことが可能である。従って、この紐3を例えば、各タワー部19の近傍に配置しておいて、ルームランプユニット13を開口部12に挿入し、その周方向で順次紐3の下方への牽引操作とルームランプユニット13の上方への押し込み操作を行う。これにより、前述と同様に係止爪20aと係止部13aとを係着させて、該ルームランプユニット13の再組付けが可能となる。
【0040】
このとき、タワー部19が立上がり壁18の上縁よりも上方に突出しているので、開口部12の下側から手を差し込んでリテーナ部材16に紐3を巻回する際に、該タワー部19に触れることで位置を確認して紐3を最適位置に配置することができて、作業をし易くすることができる。また、立上がり壁18の上側外縁にRを付与してあるため、再組付け完了後に紐3の一端を把持してこれを引き抜く際に、紐3の引掛かりを回避して、紐3の引き抜き作業を容易に行える。また、このRは上述の再組付け時における紐切れ防止としても役立つ。
【0041】
なお、上述の実施形態ではリテーナ部材16を溝型断面としているが、立上がり壁18を内周縁に設けたL型断面とした構成であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
11…ルーフトリム
12…開口部
13…ルームランプユニット
13a…係止部
14…フランジ
16…リテーナ部材
17…押え壁
18…立上がり壁
19…タワー部
20…板ばね片
20a…係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルーフトリムの開口部に下側から挿入配置され、該開口部の下側周縁部に係止可能なフランジを有するルームランプユニットと、
前記開口部の上側周縁部に配置された枠状のリテーナ部材と、を備え、
前記開口部の周縁部を前記ルームランプユニットのフランジと、前記リテーナ部材とで挟んだ状態で、該リテーナ部材によりルームランプユニットをルーフトリムにサブアッセンブリする構造であって、
前記リテーナ部材は、前記ルーフトリムの開口部の周縁部に当接する押え壁と、該押え壁の少なくとも内周縁側に設けた立上がり壁と、を備えて一定の型断面に形成してあって、その周方向の複数ヶ所には、前記内周縁側の立上がり壁を側壁の一部とする、下側が開放したボックス状のタワー部を一体に備え、
前記タワー部の前記ルームランプユニットの周側面に対向する側壁には、該タワー部の上縁側に支持点を持ち、下端縁に係止爪を備えて、前記リテーナ部材の径方向に撓み変形可能な板ばね片を設け、
前記板ばね片の弾性作用により、前記係止爪と前記ルームランプユニットの周側面に設けた係止部とを相互に係着可能としたことを特徴とする車両用ルームランプの取付構造。
【請求項2】
前記板ばね片を、前記リテーナ部材の径方向内側に向けて傾斜して形成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用ルームランプの取付構造。
【請求項3】
前記タワー部を、前記立上がり壁の上縁部よりも上方に突出して形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用ルームランプの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−166707(P2012−166707A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29687(P2011−29687)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000124454)河西工業株式会社 (593)
【Fターム(参考)】