説明

車両用冷却装置

本発明は、車両の内燃機関(12)用、好ましくは農業用車両または工業用車両用特にトラクタ用冷却装置に関するものである。冷却装置(10)は高温回路(14)および低温回路(20)を有している。高温回路(14)は内燃機関(12)を冷却するために設けられ且つ少なくとも1つの冷却器(18)を有している。低温回路(20)は給気冷却器(22)および場合によりオイル冷却器(24)を冷却するために設けられ且つ少なくとも1つの冷却器(26)を有している。給気冷却器(22)は少なくとも2つの部分でまたは2段に形成されている。冷却装置は改善された冷却能力を有するべきである。このために、本発明による冷却装置(10)は、低温回路(20)の冷却媒体の流れ方向において冷却器(26)の後方に、給気冷却器(22)の一方の部分(46)、オイル冷却器(24)および給気冷却器の他方の部分(44)が配置されている。代替態様または追加態様として、他の冷却回路(36)が設けられ、この他の冷却回路(36)により、同様に、給気冷却器(22)が冷却可能であり、且つ他の冷却回路(36)は少なくとも1つの冷却器(38)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の内燃機関用、好ましくは農業用車両または工業用車両用特にトラクタ用冷却装置に関するものである。冷却装置は高温回路および低温回路を有している。高温回路は内燃機関を冷却するために設けられ且つ少なくとも1つの冷却器を有している。低温回路は給気冷却器および場合によりオイル冷却器を冷却するために設けられ且つ少なくとも1つの冷却器を有している。給気冷却器は少なくとも2つの部分でまたは2段に形成されている。
【背景技術】
【0002】
冒頭記載のタイプの冷却装置は例えばドイツ特許公開第4114704号から既知である。この冷却装置においては、高温回路内において、内燃機関および給気冷却器が、そこに設けられている高温再冷却器により冷却される。高温回路内に存在する冷却媒体の温度は約90−110℃の値であり、この場合、冷却媒体は冷却媒体液である。高温回路から分離されている低温回路内において、給気冷却器のみならずギヤ・オイル用オイル冷却器もまた、そこに設けられている低温再冷却器により冷却される。低温回路内に存在する冷却媒体の温度は約45−90℃の値である。高温再冷却器のみならず低温再冷却器もまた、空気/冷却媒体熱交換器の形に設計され且つ以下においては単に冷却器と呼ばれる。
【0003】
しかしながら、多くの運転状態において、高温回路により冷却された内燃機関が、少なくとも短時間、内燃機関の所定の最大出力以上の出力で運転される場合が発生することがある。これは、特に車両においては、例えば欧州特許出願第1239133号に記載されているように、いわゆる出力増幅を提供する場合である。この場合、車両の冷却装置に著しく負荷がかかり且つ冷却装置が過負荷となることがあるので、内燃機関はこれにより損傷されることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、それにより上記問題点が解決される、冒頭記載のタイプの冷却装置を提供し且つ改良することが本発明の課題である。特に、冷却装置の短時間の過負荷の場合においても、内燃機関の損傷を阻止するために冷却装置が過負荷とならないことが保証されるように、冷却装置の冷却能力が特に上昇されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、本発明により、請求項1および4の教示によって解決される。本発明の他の有利な形態および変更態様が従属請求項から明らかである。
【0006】
本発明により、冒頭記載のタイプの冷却装置は、低温回路の冷却媒体の流れ方向において冷却器の後方に、給気冷却器の一方の部分、オイル冷却器および給気冷却器の他方の部分が配置されていることを特徴とする。
【0007】
基本的に、給気冷却器を、少なくとも2つの部分でまたは2段に、即ち高温段および低温段に形成するように設計されている。給気冷却器の多段分割例えば3段分割もまた同様に考えられよう。これにより、例えば周囲から吸い込まれ且つ圧縮された給気は、はじめに、給気冷却器の高温段に対応する部分により冷却可能であるので、給気の冷却効率を上昇させることができる。次に、給気冷却器の低温段に対応する部分により給気はさらに冷却されるので、全体として給気冷却器の改善された冷却能力が達成されることが有利である。これにより、給気冷却器の一方の段または一方の部分を高温回路により冷却することが必ずしも必要ではないので、この構造的手段により、高温回路の負荷が軽減され、これによって内燃機関に対する高温回路の冷却能力を上昇させることができる。
【0008】
低温回路の冷却媒体は、冷却媒体ポンプにより、給気冷却器の低温回路に搬送される。冷却媒体ポンプから、冷却媒体は、オイル冷却器、給気冷却器の高温段および低温回路の冷却器内を流動して冷却媒体ポンプに戻される。低温回路の冷却器は例えば空気/冷却媒体熱交換器を有していてもよい。言い換えると、低温回路の冷却媒体の流れ方向において冷却器の後方に、給気冷却器の一方の部分、オイル冷却器および給気冷却器の他方の部分が配置されている。それに対応して、2つの部分でまたは2段に設計されている給気冷却器は、1つの同じ回路即ち低温回路に付属されている。車両の低温始動において、低温回路の冷却器が短絡されたとき、低温回路は、給気冷却器から低温回路の冷却媒体に放出された全熱量をオイル冷却器に伝達するように使用可能であり、これにより、オイル冷却器内を流動するオイルは急速に加熱され、これによって車両の完全な運転準備がより急速に形成されることが有利である。
【0009】
特に有利な実施形態においては、好ましくは、低温回路内において、給気冷却器およびオイル冷却器のみが相互に作業結合されているように、低温回路内において搬送される冷却媒体を、それにより低温回路の冷却器をバイパス可能に案内する手段が設けられている。きわめて一般的には、冷却回路内において搬送される冷却媒体を、それにより冷却回路の冷却器をバイパス可能に案内する手段が設けられている。この手段は、低温回路の冷却器をバイパスないしは短絡するための、上記の可能な手段である。
【0010】
この手段は例えば切換弁の形に設計されていてもよく、切換弁は、冷却器に供給される冷却媒体を、例えばバイパス配管により、冷却器をバイパス案内する。給気冷却器およびオイル冷却器の作業結合は、例えば、車両の低温始動後に支配的である上記の運転状態において適している。特に、低温回路の冷却器の短絡ないしは遮断の間にオイル温度の意図する上昇が達成されるので、オイル冷却器により冷却されたオイルは適切に所定の温度値に制御可能であることが有利であり、この場合、所定の温度値の偏差は制御により小さく保持することができる。具体的には、冷却媒体をバイパス案内する手段は、例えば従来技術から既知の切換弁であってもよく、切換弁は、例えば4/2方弁の形に形成されていてもよく且つ冷却器の片側に配置され、この場合、この側において、冷却媒体は冷却器内に流入するのみならず冷却器から流出もする。
【0011】
これにより、特に低温始動後においては車両の最適運転状態の形成が比較的多くの時間を必要とするという、そこに設けられている冷却媒体回路に関する、従来技術から発生している問題点を解決することができる。即ち、例えば、ギヤ・オイルの温度は車両の比較的長い時間の運転後にはじめて達成されるので、少なくとも加熱過程に対して、油圧ユニット、弁および変速機のクラッチは、このとき、車両の運転だけでは所定の応答時間を完全には満たすことはできない。
【0012】
好ましい実施形態においては、低温回路の給気冷却器、オイル冷却器および冷却器は相互に直列に結合されている。
【0013】
冒頭記載の課題を解決するために、車両の冷却装置の冷却能力はさらに上昇されてもよい。これは、特に、内燃機関から発生する排気ガスの少なくとも一部が燃焼空気として内燃機関に再循環されてもよいからである。しかしながら、排気ガスは、車両の周囲から吸い込まれる燃焼空気に比較してより高い温度を有しているので、給気冷却器の冷却能力および内燃機関を冷却するための高温回路の冷却能力もまた上昇されなければならない。
【0014】
基本的に、車両の冷却装置の冷却能力の上昇は、それに対応して冷却器がより大きい寸法に形成されることによって達成されてもよい。これは一方で追加の設置空間を必要とし、この設置空間は、通常、車両の1つないしは複数の冷却器が配置されている場所に常に存在しているとは限らない。
【0015】
冒頭記載の課題は、請求項4の教示によっても解決される。請求項4により、冒頭記載のタイプの本発明による冷却装置は、他の冷却回路が設けられ、この冷却回路により、同様に、給気冷却器が冷却可能であり、且つこの冷却回路が少なくとも1つの冷却器を有していることを特徴としている。
【0016】
はじめに、2つの冷却回路即ち高温回路および低温回路の既存の冷却器をさらに大きくすることは、車両に対して一般に限られた空間が利用できるにすぎないので、あらゆる場合に対して可能ではないことは明らかである。したがって、本発明により、他の冷却回路が設けられ、この冷却回路は少なくとも1つの冷却器を有している。他の冷却回路の冷却器は、車両の任意の位置に配置可能なので、通常、冷却器が配置されている車両の場所における設置空間の要求を本質的に高めることなく、この場合、3つの冷却器を有する3つの冷却回路からなる冷却装置の全体能力を上昇させることができる。しかしながら、3つの冷却回路の冷却器が隣接して配置されているときでさえも、3つの冷却器がこの場合より大きな設置空間を要求するときにおいても、これにより、冷却装置の冷却能力を上昇可能である。したがって、内燃機関は、過熱の危険にさらされることなく、少なくとも短時間その定格出力以上で運転可能であることが有利である。この場合、結果として発生する、他の冷却回路に対する構成部品の追加費用は、本発明の冷却装置により、少なくとも冷却によって厳しい排ガス規制を満たすことができるので、許容されるものである。即ち、厳しい排ガス規制に適合させるために、従来技術に比較して上昇された冷却能力を有する冷却装置を提供する幾つかの解決方法が行われている。
【0017】
特に好ましい実施形態においては、少なくとも2つの冷却回路が相互に分離されて形成されているので、1つの冷却回路内を流動する冷却媒体が他の冷却回路内を流動する冷却媒体と混合されることはない。冷却媒体として、冷却媒体液、例えば、水および不凍液を有してもよい混合物が使用されることが好ましい。冷却回路は、その分離配置により、相互に独立して運転可能であり、このことは、結果として、車両のきわめて効率的な冷却を可能にし且つ車両のそれぞれの運転状態に適合された冷却装置の操作/制御を可能にする。
【0018】
即ち、例えば車両の低温始動において他の冷却回路は最初に非作動とすることができるので、圧縮された給気から給気冷却器に放出された熱は低温回路を介して排出され且つ直接オイル冷却器に供給可能であり、このとき、オイル冷却器自身はオイル冷却器内を流動するオイルを加熱する。即ち、給気冷却器は、車両のこの運転状態においては、圧縮されるべき給気によりきわめて急速に加熱される第1のユニットの1つである。しかしながら、この熱は直接結合を介してオイル冷却器に排出され且つオイル冷却器内を流動するオイルの加熱に利用することができる。これによりオイルは急速にその運転温度に上昇されるので、車両の低温始動後において、少なくともこれに関係するユニットは完全に作動可能である。これにより、オイル冷却器内を流動するオイルのその運転温度への急速加熱が可能であることが特に有利である。いずれにしても、給気冷却器から排出された熱はほとんどオイル冷却器内を流動するオイルを加熱するためにのみ使用されることになるので、車両のこの運転状態においては他の冷却回路が作動されている必要はない。
【0019】
特に少なくとも2つの冷却回路が相互に分離されて形成されているとき、各冷却回路がそれぞれ1つの冷却媒体ポンプを有していることが必要である。これらの機器におけるこの余分な費用もまたそれ自身利点を提供する。即ち、例えば対応冷却媒体ポンプが作動または非作動とされることにより、例えば冷却回路をきわめて簡単に作動または非作動とすることができる。冷却媒体ポンプを作動ないしは非作動とするとき、冷却媒体ポンプを電気駆動することが考えられる。電気駆動冷却媒体ポンプは、例えばVベルト伝動による機械的動力伝達を必要としないので、内燃機関から離れた設置位置に配置することができる。これにより、車両冷却装置の設計において、利用可能な設置空間に関して、フレキシビリティが得られることが特に有利である。この場合、作動は対応電気接触の形成により行われるので、冷却媒体ポンプを例えばVベルト伝動装置から切り離す機械式継手を設ける必要はない。最後に、冷却媒体回路の分離形成により、効率的で且つ車両のそれぞれの運転状態に適合された冷却を行えることがきわめて有利であり、この冷却は、冷却されるべき車両のユニットの急速な温度変化にも応答することができる。しかしながら、1つの冷却媒体ポンプのみが設けられ、この冷却媒体ポンプが別々のポンプ・チャンバを有し、これらのポンプ・チャンバにより、冷却媒体が2つの分離された冷却回路に同時に供給可能な冷却装置の形態もまた考えられる。
【0020】
冷却器は空気/冷却媒体熱交換器を有していてもよく、空気/冷却媒体熱交換器内を、周囲から流入する空気が流動可能であることが好ましい。このかぎりにおいて、このような冷却器は、通常設けられている、従来技術から既知の空気/冷却媒体熱交換器であり、この空気/冷却媒体熱交換器は、それに供給された、冷却媒体の熱エネルギーを、少なくとも大部分、その中を流動ないしはその周りを流動する空気に放出する。
【0021】
好ましい実施形態においては、少なくとも2つの部分で形成されている給気冷却器の一方の部分が低温回路と、および給気冷却器の他方の部分が他の冷却回路と結合可能である。給気冷却器が他の冷却回路と結合されているとき、これにより、給気冷却器内を流動する空気は、給気冷却器が低温回路によってのみ冷却される場合よりもさらに低い温度レベルまで冷却される。このために、他の冷却回路は、給気冷却器の一部と、他の冷却回路の冷却器と、および冷却媒体ポンプの1つとを有するように設計されていてもよい。このかぎりにおいて、このような配置により、内燃機関から排出され且つきわめて高い温度を有する内燃機関の排気ガスは、冷却されて、燃焼空気として再循環されてもよい。この手段により、さらに、内燃機関に対する給気の温度は、内燃機関ないしは車両のその時点の負荷の関数として、フレキシブルに最適値に制御可能である。
【0022】
それに対応して、オイル冷却器が、2つの異なる冷却回路に接続されるように、少なくとも2つの部分で形成されていてもよい。オイル冷却器の一方の部分が低温回路と、およびオイル冷却器の他方の部分が他方の冷却回路と結合可能であることが好ましく、さらに他の冷却回路と結合可能であることが特に好ましい。これにより、オイルが、オイル冷却器の分割比に対応した混合温度で冷却または加熱可能であるので、よりフレキシブルで且つ車両のそれぞれの運転状態に適合されたオイルの温度制御が可能であることが特に有利である。オイル冷却器の一方の部分がオイル冷却器容積の1/3を、およびオイル冷却器の第2の部分がオイル冷却器容積の2/3を有していてもよく、この場合、オイル冷却器の一方の部分のみならず他方の部分もまたそれぞれ高温回路と結合可能であってもよい。
【0023】
特に車両の内燃機関の加熱過程において、一実施形態においては、オイル冷却器が高温回路とのみ結合可能であってもよい。これは、特に、ギヤ・オイルの冷却を行うオイル冷却器に対応し、その理由は、特に油圧ユニット、弁およびクラッチは、ギヤ・オイルがその最適作動温度を有しているとき、所定の応答時間を満たすことができるからである。この運転状態においては、高温回路の冷却器が高温回路から分離可能であるので、その作動温度がまだ達成されていない高温回路の冷却媒体は、冷却器によってさらに冷却されることはない。これにより、車両のこの運転状態においては、高温回路は、特に、それに接続されている構成部分の加熱のために利用され、したがって、これは給気冷却器とオイル冷却器との間を短絡させるための代替態様を示す。
【0024】
冷却されるべきユニットと少なくとも1つの冷却回路との急速な遮断ないしは結合を達成するために、内燃機関と、オイル冷却器と、場合により給気冷却器と、および/または冷却回路の少なくとも1つの冷却器との配管結合が、少なくとも1つの弁により結合可能および/または遮断可能である。この弁ないしはこれらの弁は、冷却装置内において、一方でできるだけ短い配管経路が保証されているが、他方で少なくとも給気冷却器および/またはオイル冷却器の、それぞれの冷却回路へのフレキシブルな割当が可能なように配置されている。
【0025】
このような弁がサーモスタットを有しおよび/または電気的にまたは油圧により切換可能に設計されていてもよい。最終的には、この場合、従来技術から既知の弁が使用されてもよく、この場合、急速制御のために電気的にまたは油圧により切換可能な弁が好ましい。
【0026】
特に好ましい実施形態においては、冷却装置を操作ないしは制御するために、制御装置と、および冷却回路内を流動する冷却媒体の温度を検出するための少なくとも1つの温度センサとが設けられている。即ち、例えば温度センサが、内燃機関に、しかも高温回路の冷却媒体が内燃機関を離れる場所に配置されていてもよい。他の温度センサが、例えばオイル冷却器に設けられていてもよく、この場合、この温度センサは直接オイル温度を検出し、且つオイル冷却器内を流動する冷却媒体の温度を検出しないことが好ましい。さらに、温度センサが給気冷却器に配置されていてもよく、温度センサは、同様に、直接給気の温度を検出することが好ましい。
【0027】
温度センサは、冷却媒体液の温度ないしは検出された温度の関数である信号好ましくは電気信号を発生する。この信号を温度センサは制御装置に供給する。制御装置は例えば単基板コンピュータの形で設計されていてもよい。制御装置は検出された温度と所定の温度または所定の温度範囲との比較を実行し且つ1つの弁ないしは複数の弁および/または少なくとも1つの冷却媒体ポンプをそれに対応して操作するので、所定の温度範囲ないしは所定の温度値が保持される。
【0028】
基本的に、冷却回路の冷却器は車両の一カ所にまとめて配置されているように設計されている。特に、好ましい実施形態により、少なくとも2つの冷却回路の冷却器が空間的にほぼ相前後して配置されている。それらの配置順序に対応して空気がそれらの中を流動し、この場合、空気は周囲から流入することが好ましい。したがって、例えば、高温回路および低温回路の冷却器が車両の一カ所にまとめておよび空間的にほぼ相前後して配置されていてもよい。他の冷却回路の冷却器のみは、このとき、車両の他の場所に配置されている。
【0029】
特に好ましい実施形態においては、少なくとも2つの冷却回路の冷却器の配置の順序、およびこれらの冷却器と冷却されるべきユニットとの結合は、2つの冷却回路が、少なくともこのユニットに関して、向流熱交換器を形成し、ないしは向流原理に従って作動するように行われる。この場合、例えば、他の冷却回路および低温回路の冷却器は、冷たい周囲空気がはじめに他の冷却回路の冷却器内を流動し、および周囲空気が他の冷却回路の冷却器の熱を受け取ったのちに、次に低温回路の冷却器内を流動するように配置されていてもよい。これにより、いずれにしても、周囲空気の冷却能力に関する熱力学的観点から、他の冷却回路の冷却器により冷却された冷却媒体は低温回路の冷却器により冷却された冷却媒体よりも低い温度を有している。ここで、低温回路が、給気の流れ方向に関して上流側に配置されている給気冷却器の部分を冷却したとき、および他の冷却回路が、給気の流れ方向に関して下流側に配置されている給気冷却器の部分を冷却したとき、この形状は向流熱交換器を形成している。
【0030】
例えば車両の一カ所に十分な設置空間が存在しないために、車両のこの一カ所に冷却回路の冷却器を配置できない場合、少なくとも2つの冷却回路の冷却器が車両の異なる位置に配置されていてもよい。この場合、冷却器内を流動する空気流れは、空間的に相互に分離されて行われてもよい。
【0031】
好ましい実施形態においては、少なくとも2つの冷却器にそれぞれ1つのファンが付属され、この場合、ファンがそれに付属の冷却器内に空気を送り、例えば送風または吸引する。それぞれ1つの冷却器に対して1つのファンを設けることは、特に、少なくとも2つの冷却回路の冷却器が車両の異なる位置に配置されているときに考慮される。ファンは電気駆動されることが好ましく、この場合、ファンの温度制御運転が実行可能である。ファンの電気駆動により、ファンを駆動するために機械式駆動装置例えばVベルトを設ける必要はない。
【0032】
ここで、本発明の教示を、有利な形に形成し且つ改良する種々の可能性が存在する。このために、一方で、請求項1に後続する請求項が、および他方で、本発明による好ましい実施例の、図面による以下の説明が参照される。本発明の好ましい実施例の、図面による説明と共に、一般的に好ましい教示の形成および改良もまた説明する。図面は略図で示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
複数の図において、同じまたは類似の部品は同じ符号で表わされている。図1および2内に示されている冷却装置10は、図1および2には示されていない車両に対して使用される。具体的には、車両は農業用車両即ちトラクタである。
【0034】
車両は内燃機関12を含み、内燃機関12は冷却装置10の高温回路に接続されている。高温回路14は、さらに、冷却媒体ポンプ16および冷却器18を含む。車両は低温回路20を含み、低温回路20は、給気冷却器22、オイル冷却器24、冷却器26および冷却媒体ポンプ28を有している。
【0035】
さらに、変速機ユニット30が示され、変速機ユニット30に、内燃機関12により発生されたトルクが軸32を介して伝達される。加熱ユニット34は図1に示されていない車室を加熱するために使用され且つ高温回路14に接続されていることが略図でのみ示されている。
【0036】
本発明により、他の冷却回路36が設けられ、他の冷却回路36により、同様に、給気冷却器22が冷却される。他の冷却回路36は冷却器38を含む。他の冷却回路36もまた冷却媒体ポンプ40を含む。
【0037】
高温回路14、低温回路20および他の冷却回路36は分離されて相前後して形成され、即ち、冷却回路14、20および36の冷却媒体の混合は行われない。それに対応して、各冷却回路14、20、36に対してそれぞれ1つの冷却媒体ポンプ16、28ないしは40が設けられている。
【0038】
3つの冷却回路14、20および36の冷却器18、26および38はそれぞれ空気/冷却媒体熱交換器として形成され、空気/冷却媒体熱交換器内を、周囲から流入する空気が流動可能である。周囲から流入する空気の流れ方向が矢印42で示されている。
【0039】
異なる冷却回路20、36に接続するために、給気冷却器22は2つの部分で形成されている。給気冷却器22の上部部分44は低温回路20と結合されている。給気冷却器22の下部部分46は他の冷却回路36と結合されている。給気冷却器22の上部部分44、冷却器26、冷却媒体ポンプ28およびオイル冷却器24は相互に直列に低温回路20に結合されている。
【0040】
4/2方弁48が設けられ、4/2方弁48により、低温回路20の冷却器26をバイパスさせることができる。4/2方弁の左部分が作動位置にあるとき、冷却器26はバイパスされる。図1に示されている弁48の位置においては、冷却器26は低温回路20と結合されている。同様に、サーモスタット弁50により、高温回路14の冷却器18を分離ないしは短絡させることができる。この場合、特に車両の低温始動後においては、冷却器18による内燃機関12の冷却は行われない。
【0041】
冷却器38、26および18は空間的に相前後して配置され、およびこれらの配置順序に対応して、周囲から流入する空気は、流れ方向42に従って、冷却器38、26および18内を流動する。このために、空気は、ファン52により、冷却器38、26および18内を通過して吸い込まれる。
【0042】
冷却器38および26の配置の順序並びに2つの部分からなる給気冷却器22の結合順序ないしは冷却順序は、2つの冷却回路20、36が、給気冷却器22に関して、向流熱交換器を形成するように行われる。
【0043】
周囲から吸い込まれた燃焼空気54は、ターボチャージャ56により圧縮され、および給気冷却器22により、約45℃の温度まで冷却される。冷却媒体タンク58は高温回路14および低温回路20の充填および空気抜きのために使用される。
【0044】
図2は、第2の実施例において、高温回路14および低温回路20を有する車両に対する冷却装置を示す。図2からの高温回路14は図1からの高温回路14にほぼ対応する。図2からの低温回路20は、冷却器26、冷却媒体ポンプ28、給気冷却器22の第1の部分46、オイル冷却器24および給気冷却器22の第2の部分44を含む。この場合、冷却媒体ポンプ28により、低温回路20の冷却器26により冷却された冷却媒体は給気冷却器22の第1の部分46に案内され、給気冷却器22の第1の部分46は給気冷却器22の低温段を形成する。この中を通過して加熱された冷却媒体はオイル冷却器24内を流動し、およびさらに加熱された冷却媒体は給気冷却器22の高温段ないしは第2の部分44内を流動し、且つその後に冷却のために冷却器26に案内される。
【0045】
最後に、特に、上記の実施例は単に請求項の教示を説明するためにのみ使用され、これらは実施例を制約するものではないことを注記しておく。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は本発明による冷却装置の一実施例を示す。
【図2】図2は本発明による冷却装置の第2の実施例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温回路(14)が内燃機関(12)を冷却するために設けられ且つ少なくとも1つの冷却器(18)を有し、
低温回路(20)が給気冷却器(22)および場合によりオイル冷却器(24)を冷却するために設けられ且つ少なくとも1つの冷却器(26)を有し、および
給気冷却器(22)が少なくとも2つの部分でまたは2段に形成されている、
高温回路(14)および低温回路(20)を有する、車両の内燃機関(12)用、好ましくは農業用車両または工業用車両用特にトラクタ用冷却装置において、
低温回路(20)の冷却媒体の流れ方向において冷却器(26)の後方に、給気冷却器(22)の一方の部分(46)、オイル冷却器(24)および給気冷却器の他方の部分(44)が配置されていることを特徴とする車両の内燃機関(12)用冷却装置。
【請求項2】
好ましくは、低温回路(20)内において、給気冷却器(22)およびオイル冷却器(24)のみが相互に作業結合されているように、低温回路(20)内において搬送される冷却媒体を、それにより低温回路(20)の冷却器(26)をバイパス可能に案内する手段(48)が設けられていることを特徴とする請求項1の冷却装置。
【請求項3】
低温回路(20)の給気冷却器(22)、オイル冷却器(24)および冷却器(26)が相互に直列に結合されていることを特徴とする請求項1または2の冷却装置。
【請求項4】
高温回路(14)が内燃機関(12)を冷却するために設けられ且つ少なくとも1つの冷却器(18)を有し、
低温回路(20)が給気冷却器(22)および場合によりオイル冷却器(24)を冷却するために設けられ且つ少なくとも1つの冷却器(26)を有し、および
給気冷却器(22)が少なくとも2つの部分でまたは2段に形成されている、
高温回路(14)および低温回路(20)を有する、特に請求項1ないし3のいずれかの、車両の内燃機関(12)用、好ましくは農業用車両または工業用車両用特にトラクタ用冷却装置において、
他の冷却回路(36)が設けられ、この冷却回路(36)により、同様に、給気冷却器(22)を冷却可能であり、且つこの冷却回路(36)が少なくとも1つの冷却器(38)を有していることを特徴とする車両の内燃機関(12)用冷却装置。
【請求項5】
少なくとも2つの冷却回路(14、20、36)が相互に分離されて形成されているので、1つの冷却回路内を流動する冷却媒体が他の冷却回路内を流動する冷却媒体と混合されることはないことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの冷却装置。
【請求項6】
各冷却回路(14、20、36)がそれぞれ1つの冷却媒体ポンプ(16、28、40)を有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの冷却装置。
【請求項7】
冷却器(18、26、38)が空気/冷却媒体熱交換器を有し、空気/冷却媒体熱交換器内を、周囲から流入する空気が流動可能であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかの冷却装置。
【請求項8】
オイル冷却器(24)が、内燃機関オイルおよび/またはギヤ・オイルを冷却するために設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかの冷却装置。
【請求項9】
少なくとも2つの部分で形成されている給気冷却器(22)の一方の部分(44)は低温回路(20)と、および給気冷却器(22)の他方の部分(46)は他の冷却回路(36)と結合可能であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかの冷却装置。
【請求項10】
オイル冷却器(24)が高温回路(14)とのみ結合可能であり、この場合、好ましくは高温回路(14)の冷却器(18)が高温回路(14)から分離可能であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかの冷却装置。
【請求項11】
内燃機関(12)と、給気冷却器(22)と、場合によりオイル冷却器(24)と、および/または冷却回路(14、20、36)の少なくとも1つの冷却器(18、26、38)との配管結合が、少なくとも1つの弁により結合可能および/または遮断可能であることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかの冷却装置。
【請求項12】
弁がサーモスタットを有しおよび/または電気的にまたは油圧により切換可能であることを特徴とする請求項11の冷却装置。
【請求項13】
制御装置と、および冷却回路(14、20、36)内を流動する冷却媒体の温度を検出するための少なくとも1つの温度センサとが設けられ、この場合、温度センサが、冷却媒体の温度の関数である信号を発生し、この信号を制御装置に供給可能であり、および1つの弁ないしは複数の弁および/または冷却媒体ポンプ(16、28、40)を制御装置により操作可能であることを特徴とする請求項11または12の冷却装置。
【請求項14】
少なくとも2つの冷却回路(14、20、36)の冷却器(18、26、38)が空間的にほぼ相前後して配置され且つそれらの配置順序に対応して空気がそれらの中を流動し、この場合、空気は好ましくは周囲から流入することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかの冷却装置。
【請求項15】
少なくとも2つの冷却回路(36、20)の冷却器(38、26)の配置の順序、およびこれらの冷却器(38、26)と冷却されるべきユニット(22)との結合は、2つの冷却回路(36、20)が、少なくともこのユニット(22)に関して、向流熱交換器を形成するように行われることを特徴とする請求項14の冷却装置。
【請求項16】
少なくとも2つの冷却回路(14、20、36)の冷却器(18、26、38)が車両の異なる位置に配置され、この場合、冷却器(18、26、38)内を流動する空気流れが、好ましくは空間的に相互に分離されて行われることを特徴とする請求項1ないし15のいずれかの冷却装置。
【請求項17】
少なくとも2つの冷却器(18、26、38)にそれぞれ1つのファンが付属され、この場合、ファンがそれに付属の冷却器内に空気を送り、好ましくはファンが電気駆動され、ファンの温度制御運転が実行可能であることを特徴とする請求項16の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−538188(P2007−538188A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−512221(P2007−512221)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052207
【国際公開番号】WO2005/111392
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(591005165)ディーア・アンド・カンパニー (109)
【氏名又は名称原語表記】DEERE AND COMPANY