説明

車両用冷暖房装置

【課題】車両用冷暖房装置において、各運転状態における装置の機能を担保しつつ、システムの構築に嵩むコストをトータル的に抑制する。
【解決手段】ある態様の車両用冷暖房装置100は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機2と、車室外に配置され、冷房運転時に冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する室外熱交換器5と、車室内に配置されて冷媒を蒸発させる室内蒸発器7と、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる室内凝縮器3と、いずれかの凝縮器といずれかの蒸発器とを配し、その凝縮器と蒸発器の組合せが異なる複数の冷媒循環通路と、各冷媒循環通路における凝縮器と蒸発器との間に一つずつ配設され、その凝縮器から導入された冷媒を膨張させてその蒸発器に導出可能な複数の膨張装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の冷媒循環通路を備えた車両用冷暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。そして、このように暖房運転時と冷房運転時とで装置の機能を切り替えるために、冷凍サイクルには複数の冷媒循環通路が設けられ、各冷媒循環通路の冷媒の流れを切り替えるための種々の制御弁が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような車両用冷暖房装置において制御弁が数多く用いられると、当然にコストが嵩み、また設置スペース上の問題も生じる。このため、制御弁のトータルの数や部品コストをできる限り少なくするのが望ましい。一方、そのように制御弁の数やコストを抑えつつも、運転状態に応じた空調性能を良好に確保する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、運転状態に応じて冷媒循環通路が切り替えられる車両用冷暖房装置において、各運転状態における装置の機能を担保しつつ、システムの構築に嵩むコストをトータル的に抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用冷暖房装置は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室外に配置され、冷房運転時に冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する室外熱交換器と、車室内に配置されて冷媒を蒸発させる室内蒸発器と、室外熱交換器とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器と、いずれかの凝縮器といずれかの蒸発器とを配し、その凝縮器と蒸発器の組合せが異なる複数の冷媒循環通路と、各冷媒循環通路における凝縮器と蒸発器との間に一つずつ配設され、その凝縮器から導入された冷媒を膨張させてその蒸発器に導出可能な複数の膨張装置と、を備える。
【0008】
この態様によると、複数の冷媒循環通路のそれぞれにおいて凝縮器と蒸発器との間に膨張装置が一つずつ配設されるよう、冷媒循環通路の形成および各機器の配置構成がなされている。すなわち、圧縮機を中心とする冷媒循環システムが構成される都合上、複数の冷媒循環通路には他の冷媒循環通路との共用通路と個別通路とが存在するところ、この態様では、各冷媒循環通路の個別通路に膨張装置が配置される。それにより、各膨張装置が各冷媒循環通路の冷媒の流れを調整するようになり、複数の膨張装置間で制御が干渉し合うこともなく、安定した適正な運転状態が得られるようになる。また、仮に共用通路に膨張装置を設けるとした場合、各冷媒循環通路におけるその膨張装置の上流側に通路を開放または遮断するための機器を設ける必要があるところ、この態様では、そうした機器を設けない構成とすることもできる。その結果、部品点数を抑えることができ、システムの構築に嵩むコストをトータル的に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、運転状態に応じて冷媒循環通路が切り替えられる車両用冷暖房装置において、各運転状態における装置の機能を担保しつつ、システムの構築に嵩むコストをトータル的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。
【図2】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図3】第1制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図4】第1制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図5】第1制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図6】第2制御弁の構成を表す断面図である。
【図7】第2制御弁の弁本体の部分を示す拡大断面図である。
【図8】第3制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図9】第3制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図10】第3制御弁の構成および動作を表す断面図である。
【図11】変形例に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
【0012】
車両用冷暖房装置100は、圧縮機2、室内凝縮器3、室外熱交換器5、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置100は、冷媒としての代替フロン(HFO−1234yf)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0013】
車両用冷暖房装置100は、また、冷房運転時と暖房運転時とで複数の冷媒循環通路を切り替えるように運転される。この冷凍サイクルは、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されている。すなわち、冷房運転時に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、除湿運転時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
【0014】
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路とで逆方向となっている。
【0015】
具体的には、圧縮機2の吐出室につながる通路が分岐し、その一方である第1通路21が室外熱交換器5の一方の出入口につながり、他方である第2通路22が室内凝縮器3の入口につながっている。室外熱交換器5の他方の出入口は、第3通路23を介して蒸発器7の入口につながっている。室内凝縮器3の出口につながる第4通路24は、その下流側にて第1分岐通路25と第2分岐通路26とに分岐しており、それぞれ第3通路23に接続されている。蒸発器7の出口は第5通路27(戻り通路)を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。また、第1通路21の中間部においてバイパス通路28が分岐し、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。
【0016】
第1通路21と第2通路22との分岐点には第1制御弁4が設けられている。第1分岐通路25と第2分岐通路26との分岐点には第2制御弁6が設けられている。さらに、第5通路27とバイパス通路28との合流点には第3制御弁9が設けられている。
【0017】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。
【0018】
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。車室内に導入された空気は、室内凝縮器3を通過する過程で温められる。
【0019】
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外熱交換器5が蒸発器として機能する際には、膨張装置(後述する比例弁32)の通過により低温・低圧となった冷媒が、室外熱交換器5を通過する際に蒸発する。
【0020】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、膨張装置(後述する比例弁31や比例弁33)の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。車室内に導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却され、除湿される。このとき冷却・除湿された空気は、室内凝縮器3の通過過程で加熱される。
【0021】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。
【0022】
第1制御弁4は、共用のボディに比例弁34(「第4比例弁」に対応する)と比例弁37(「第7比例弁」に対応する)とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。比例弁34は大口径の弁であり、第1通路21の開度を調整する。比例弁37は大口径の弁であり、第2通路22の開度を調整する。本実施形態では、第1制御弁4として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第1制御弁4の具体的構成については後述する。
【0023】
第2制御弁6は、共用のボディに比例弁31(「第1比例弁」に対応する)、比例弁32(「第2比例弁」に対応する)および比例弁33(「第3比例弁」に対応する)を収容する複合弁として構成されている。比例弁31と比例弁32は共用のアクチュエータにて駆動され、比例弁33はもう1つのアクチュエータにて駆動される。比例弁31は、第3通路23における第1分岐通路25との合流点と第2分岐通路26との合流点との間に設けられている。
【0024】
比例弁31は小口径の弁であり、第3通路23の開度を調整する。比例弁32は小口径の弁であり、第1分岐通路25の開度を調整する。比例弁33小口径の弁であり、第2分岐通路26の開度を調整する。これら比例弁31,比例弁32および比例弁33は、膨張装置としても機能する。本実施形態では、第2制御弁6として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第2制御弁6の具体的構成については後述する。
【0025】
第3制御弁9は、共用のボディに比例弁35(「第5比例弁」に対応する)と比例弁36(「第6比例弁」に対応する)とを収容し、それらを1つのアクチュエータにて駆動する複合弁として構成されている。比例弁35は大口径の弁であり、バイパス通路28の開度を調整する。比例弁36は大口径の弁であり、第5通路27の開度を調整する。本実施形態では、第3制御弁9として、ステッピングモータの駆動により各弁の開度を調整可能な電動弁が用いられるが、ソレノイドへの通電によって各弁の開度を調整可能な電磁弁を用いるようにしてもよい。第3制御弁9の具体的構成については後述する。
【0026】
以上のように構成された車両用冷暖房装置100は、図示しない制御部により制御される。制御部は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。制御部は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて各制御弁の制御量(弁開度や開閉状態)を決定し、その制御量が実現されるようアクチュエータに電流を供給する。本実施例ではアクチュエータとしてステッピングモータを用いるため、制御部は、各制御弁の制御量が実現されるようステッピングモータに制御パルス信号を出力する。このような制御により、圧縮機2は、その吸入室を介して吸入圧力Psの冷媒を導入し、これを圧縮して吐出圧力Pdの冷媒として吐出する。なお、本実施形態ではこのような制御を実現するために、室内凝縮器3の出口、室外熱交換器5の一方の出入口と他方の出入口、蒸発器7の入口と出口のそれぞれの温度を検出するための複数の温度センサが設置されている。
【0027】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は特殊冷房運転時の状態を示し、(B)は通常冷房運転時の状態を示し、(C)は特定暖房運転時の状態を示し、(D)は通常暖房運転時の状態を示し、(E)は特殊暖房運転時の状態を示している。なお、「特殊冷房運転」は、冷房運転において室内凝縮器3を機能させない運転状態である。「特定暖房運転」は、暖房運転において特に除湿の機能を高めた運転状態である。「特殊暖房運転」は、室外熱交換器5を機能させない運転状態である。なお、図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。
【0028】
図2(A)に示すように、特殊冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34が開弁状態とされ、比例弁37が閉弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁31が開弁状態とされ、比例弁32および比例弁33が閉弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ、比例弁36が開弁状態とされる。それにより第1冷媒循環通路が開放され、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路は遮断される。このため、圧縮機2から吐出された冷媒は、室外熱交換器5を経て蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
【0029】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室外熱交換器5を経由した冷媒が比例弁31にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7に導入される。蒸発器7の入口に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。制御部は、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁31の開度を制御する。
【0030】
図2(B)に示すように、通常冷房運転時においては、第1制御弁4において比例弁34および比例弁37がともに開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁31および比例弁33が開弁状態とされ、比例弁32が閉弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ、比例弁36が開弁状態とされる。それにより第1冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放され、第2冷媒循環通路は遮断される。このため、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室外熱交換器5を経て蒸発器7に導かれ、他方で室内凝縮器3を経て蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。
【0031】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で室内凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室内凝縮器3を経由した冷媒が比例弁33にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。また、室外熱交換器5を経由した冷媒が比例弁31にて断熱膨張され、冷温・低圧の気液二相冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入される。制御部は、室内凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁33の開度を制御する。制御部は、また、室外熱交換器5の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁31の開度を制御する。
【0032】
図2(C)に示すように、特定暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34が閉弁状態とされ、比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁31が閉弁状態とされ、比例弁32および比例弁33が開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35および比例弁36がともに開弁状態とされる。それにより第1冷媒循環通路が遮断され、第2冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が開放される。このため、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3にて凝縮され、一方で室外熱交換器5に導かれ、他方で蒸発器7に導かれる。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。
【0033】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮される。室内凝縮器3から導出された冷媒は、一方で比例弁32にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、室外熱交換器5を通過する際に蒸発される。室外熱交換器5から導出された冷媒は、比例弁35を経てアキュムレータ8に導入される。また、室内凝縮器3から導出された冷媒は、他方で比例弁33にて断熱膨張されて冷温・低圧の気液二相冷媒となり、蒸発器7を通過する際に蒸発される。蒸発器7から導出された冷媒は、比例弁36を経てアキュムレータ8に導入される。
【0034】
このとき、制御部は、室外熱交換器5による熱吸収と蒸発器7による除湿とを適正に行うべく、室外熱交換器5における冷媒の蒸発量と蒸発器7における冷媒の蒸発量との比率を適正に調整する。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率は、比例弁32と比例弁33の弁開度の比率により制御される。制御部は、比例弁32の開度と比例弁33の開度を調整することにより室内凝縮器3の出口側の過冷却度が設定値SCとなるように調整するとともに、その開度比率を調整することにより両蒸発器における蒸発量を調整する。その際、制御部は、蒸発器7が凍結することがないよう、蒸発器7の出口側の温度が適正範囲に保たれるように制御する。
【0035】
また、制御部は、第3制御弁9における比例弁35および比例弁36の一方の全開状態を維持したまま他方の開度を調整する。本実施形態では、室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低い場合には比例弁36を全開状態にして比例弁35の開度を制御する。一方、蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低い場合には比例弁35を全開状態にして比例弁36の開度を制御する。
【0036】
例えば、前者のように室外熱交換器5よりも蒸発器7の温度が低く、室外熱交換器5の出口側に過熱度(スーパーヒート)が発生している場合、比例弁35の開度を絞ることによりその過熱度が設定値(ゼロまたは小さな適正値)に近づくように制御する。このとき、室外熱交換器5における外部からの熱吸収量は、その比例弁35の絞り量により調整される。すなわち、比例弁36を全開状態に維持しつつ比例弁35の開度を絞ることで、室外熱交換器5の蒸発圧力Poと蒸発器7の出口の圧力Peとの差圧ΔP=Po−Peが適正となり、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整することができる。すなわち、差圧ΔPが大きくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、差圧ΔPが小さくなると、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部は、室外熱交換器5の出口側に過熱度に応じて比例弁35の開度を制御して差圧ΔPを適正に調整することで、特定暖房運転時における除湿機能を確保する。なお、室外熱交換器5の出口側の過熱度の有無およびその大きさは、室外熱交換器5の入口側の温度と出口側の温度を検出することで特定することができる。
【0037】
逆に、後者のように蒸発器7よりも室外熱交換器5の温度が低く、蒸発器7の出口側に過熱度が発生している場合、比例弁36の開度を絞ることによりその過熱度が設定過熱度(ゼロまたは小さな適正値)に近づくように制御する。すなわち、比例弁35を全開状態に維持しつつ比例弁36の開度を絞ることで、蒸発器7の出口の圧力Peと室外熱交換器5の蒸発圧力Poとの差圧ΔP=Pe−Poが適正となり、特定暖房運転時における除湿機能を確保することができる。なお、蒸発器7の出口側の過熱度の有無およびその大きさは、蒸発器7の入口側の温度と出口側の温度を検出することで特定することができる。
【0038】
図2(D)に示すように、通常暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34が閉弁状態とされ、比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁31および比例弁33が閉弁状態とされ、比例弁32が開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が開弁状態とされ、比例弁36が閉弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路および第3冷媒循環通路が遮断され、第2冷媒循環通路が開放される。このため、室内凝縮器3から導出された冷媒は、室外熱交換器5に導かれる。このとき、蒸発器7には冷媒が供給されないため、蒸発器7は実質的に機能しなくなり、室外熱交換器5のみが蒸発器として機能するようになる。制御部は、室内凝縮器3の出口側の温度に基づき、その出口側の過冷却度が適正となるよう比例弁32の開度を制御する。
【0039】
図2(E)に示すように、特殊暖房運転時においては、第1制御弁4の比例弁34が閉弁状態とされ、比例弁37が開弁状態とされる。また、第2制御弁6において比例弁31および比例弁32が閉弁状態とされ、比例弁33が開弁状態とされる。さらに、第3制御弁9において比例弁35が閉弁状態とされ、比例弁36が開弁状態とされる。それにより、第1冷媒循環通路および第2冷媒循環通路が遮断され、第3冷媒循環通路が開放される。このため、室内凝縮器3から導出された冷媒は、蒸発器7に導かれる。つまり、冷媒が室外熱交換器5を迂回するため室外熱交換器5が実質的に機能しなくなる。蒸発器7に導入された冷媒は、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を除湿する。このような特殊冷暖房運転は、外部からの吸熱が困難な場合、例えば車両が極寒状況におかれた場合などに有効に機能する。
【0040】
次に、本実施形態の制御弁の具体的構成について説明する。
図3〜図5は、第1制御弁4の構成および動作を表す断面図である。図3に示すように、第1制御弁4は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体101とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体101は、有底筒状のボディ104に大口径の比例弁34と大口径の比例弁37とを同軸状に収容して構成されている。第1制御弁4は、一方の比例弁の全開状態を維持しつつ他方の比例弁の開度が設定開度に調整される複合弁として構成されている。
【0041】
ボディ104の一方の側部には導入ポート110が設けられ、他方の側部には上下に第1導出ポート112、第2導出ポート114が設けられている。導入ポート110は圧縮機2の吐出室に連通し、第1導出ポート112は第1通路21に連通し、第2導出ポート114は第2通路22に連通する。すなわち、ボディ104には、導入ポート110と第1導出ポート112とをつなぐ第1内部通路と、導入ポート110と第2導出ポート114とをつなぐ第2内部通路が形成される。
【0042】
ボディ104の上半部には、円筒状の区画部材116が配設されている。区画部材116は、シール部材を介してボディ104に同心状に組み付けられている。区画部材116の下端部は弁孔120を形成している。また、弁孔120の下端開口端縁により弁座122が形成されている。区画部材116における第1導出ポート112との対向面には、内外を連通する連通孔が設けられている。
【0043】
ボディ104の上端部には、段付円筒状の区画部材124が配設されている。区画部材124は、弁本体101の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材124の上端部中央には、円ボス状の軸受部126が設けられている。軸受部126の内周面には雌ねじ部が設けられ、外周面は滑り軸受として機能する。区画部材124の内方にはガイド孔128が形成され、その下端部にシール部材としてのOリング130が嵌着されている。
【0044】
ボディ104の内方には、弁駆動体132、弁作動体134、伝達部材136が同軸状に配設されている。弁駆動体132は段付円筒状をなし、その軸線方向中央の縮径部が弁孔120を貫通するように配設されている。弁駆動体132の下端部には共用弁体138が設けられ、上端部にはガイド部140が設けられている。すなわち、共用弁体138は弁孔120の上流側にて導入ポート110に連通する圧力室に配置されている。一方、ガイド部140は、弁孔120の下流側にて第1導出ポート112に連通する圧力室に配置され、区画部材124に摺動可能に支持されている。
【0045】
共用弁体138は段付円柱状をなし、その上端部に第1弁部材141が嵌着され、下端部に第2弁部材142が嵌着されている。第1弁部材141および第2弁部材142は、ともに環状の弾性体(本実施形態ではゴム)からなる。導入ポート110と第2導出ポート114とをつなぐ通路には弁孔144が設けられ、その上端開口端縁に弁座146が形成されている。第1弁部材141は、弁座122に接離して比例弁34の開度を調整する。一方、第2弁部材142は、弁座146に接離して比例弁37の開度を調整する。
【0046】
共用弁体138の下端部には弁孔144に摺動しつつ支持される複数の脚部(同図にはその1つのみ表示)が延設されている。すなわち、弁駆動体132は、その下端部の複数の脚部が弁孔144に沿って摺動し、上端部のガイド部140がガイド孔128に沿って摺動することにより、軸線方向に安定に動作することができる。ガイド部140と区画部材124との間には背圧室148が形成される。また、共用弁体138を軸線方向に貫通する連通路150が形成されている。このため、背圧室148には常に、第2導出ポート114から導出される下流側圧力Pout2が満たされる。
【0047】
本実施形態においては、弁孔120の有効径Aと、弁孔144の有効径B(正確にはOリング130の内径)と、ガイド孔128の有効径Cとが等しく設定されている。このため、共用弁体138に作用する冷媒圧力の影響はキャンセルされる。特にOリング130を設けたことにより、ガイド部140の摺動部のシール性が確保されるとともに、その摺動部にゴミなどが挟み込まれることが防止されている。
【0048】
弁駆動体132のガイド部140の内方には、ばね受け152と伝達部材136が同軸状に挿通されている。ばね受け152は円板状をなし、その中央部を伝達部材136が貫通している。ガイド部140の上端開口部とばね受け152との間には、スプリング154(「付勢部材」として機能する)が介装されている。一方、弁駆動体132の縮径部の内方には、円板状のばね受け156が挿通されている。共用弁体138とばね受け156との間には、スプリング158(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0049】
そして、弁作動体134と弁駆動体132とが伝達部材136を介して作動連結可能に構成されている。すなわち、伝達部材136の上端部は弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて連結されている。伝達部材136の側部には半径方向外向きに突出した係止部160が設けられ、その係止部160がばね受け152に係止されることで、弁作動体134と弁駆動体132とが上方に一体動作可能となるように構成されている。また、伝達部材136の下端がばね受け156に係止されることで、弁作動体134と弁駆動体132とが下方に一体動作可能となるように構成されている。弁駆動体132と弁作動体134とは、比例弁34と比例弁37がともに開弁状態であるときはスプリング154,158の付勢力により突っ張った状態で一体変位するが(図4参照)、いずれか一方が閉弁状態になれば軸線方向に相対変位可能となる(図3,図5参照)。
【0050】
なお、スプリング154,158は、いずれもその荷重が弁駆動体132とOリング130との間の摺動抵抗(弁駆動体132の摺動力)よりも大きくなるように設定されている。それにより、弁作動体134と弁駆動体132とが一体動作しているときにスプリング154,158が縮むことなく、比例弁34および比例弁37の弁開度を正確に制御できるようになっている。
【0051】
弁作動体134は、段付円筒状をなし、その外周部に雄ねじ部が形成されている。雄ねじ部は、軸受部126の雌ねじ部に螺合する。弁作動体134の上端部には半径方向外向きに延出する複数(本実施形態では4つ)の脚部153が設けられており、モータユニット102のロータに嵌合している。弁作動体134は、モータユニット102の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体134が回転すると、ねじ機構(「作動変換機構」として機能する)によって弁作動体134が軸線方向に変位し、共用弁体138を軸線方向(比例弁34、比例弁37の開閉方向)に駆動する。
【0052】
一方、モータユニット102は、ロータ172とステータ173とを含むステッピングモータとして構成されている。モータユニット102は、有底円筒状のスリーブ170の内方にロータ172を回転自在に支持するようにして構成されている。スリーブ170の外周には、励磁コイル171を収容したステータ173が設けられている。スリーブ170は、その下端開口部がボディ104に組み付けられており、ボディ104とともに第1制御弁4のボディを構成する。
【0053】
ロータ172は、円筒状に形成された回転軸174と、その回転軸174の外周に配設されたマグネット176を備える。本実施形態では、マグネット176は24極に磁化されている。回転軸174の内方にはモータユニット102のほぼ全長にわたる内部空間が形成されている。回転軸174の内周面の特定箇所には、軸線に平行に延びるガイド部178が設けられている。ガイド部178は、後述する回転ストッパと係合するための突部を形成するものであり、軸線に平行に延びる一つの突条により構成されている。
【0054】
回転軸174の下端部はやや縮径され、その内周面に軸線に平行に延びる4つのガイド部180が設けられている。ガイド部180は、軸線に平行に延びる一対の突条により構成され、回転軸174の内周面に90度おきに設けられている。この4つのガイド部180には、上述した弁作動体134の4つの脚部153が嵌合し、ロータ172と弁作動体134とが一体に回転できるようになっている。ただし、弁作動体134は、ロータ172に対する回転方向の相対変位は規制されるものの、そのガイド部180にそった軸線方向の変位は許容される。すなわち、弁作動体134は、ロータ172とともに回転しつつ共用弁体138の開閉方向に駆動される。
【0055】
ロータ172の内方には、その軸線に沿って長尺状のシャフト182が配設されている。シャフト182は、その上端部がスリーブ170の底部中央に圧入されることにより片持ち状に固定され、ガイド部178に平行に内部空間に延在している。シャフト182は、弁作動体134と同一軸線上に配置されている。シャフト182には、そのほぼ全長にわたって延在する螺旋状のガイド部184が設けられている。ガイド部184は、コイル状の部材からなり、シャフト182の外面に嵌着されている。ガイド部184の上端部は折り返されて係止部186となっている。
【0056】
ガイド部184には、螺旋状の回転ストッパ188が回転可能に係合している。回転ストッパ188は、ガイド部184に係合する螺旋状の係合部190と、回転軸174に支持される動力伝達部192とを有する。係合部190は一巻きコイルの形状をなし、その下端部に半径方向外向きに延出する動力伝達部192が連設されている。動力伝達部192の先端部がガイド部178に係合している。すなわち、動力伝達部192は、ガイド部178の一つの突条に当接して係止される。このため、回転ストッパ188は、回転軸174により回転方向の相対変位は規制されるが、ガイド部178に摺動しつつその軸線方向の変位が許容される。
【0057】
すなわち、回転ストッパ188は、ロータ172と一体に回転し、その係合部190がガイド部184にそってガイドされることで、軸線方向に駆動される。ただし、回転ストッパ188の軸線方向の駆動範囲はガイド部178の両端に形成された係止部により規制される。同図には、回転ストッパ188が下死点にて係止された状態が示されている。回転ストッパ188が上方へ変位して係止部186に係止されると、その位置が上死点となる。
【0058】
ロータ172は、その上端部がシャフト182に回転自在に支持され、下端部が軸受部126に回転自在に支持されている。具体的には、回転軸174の上端開口部を封止するように有底円筒状の端部部材194が設けられ、その端部部材194の中央に設けられた円筒軸196の部分がシャフト182に支持されている。すなわち、軸受部126が一端側の軸受部となり、シャフト182における円筒軸196との摺動部が他端側の軸受部となっている。
【0059】
以上のように構成された第1制御弁4は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。
第1制御弁4の流量制御において、車両用冷暖房装置の図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、一方で弁作動体134が回転駆動されて比例弁34および比例弁37の開度が設定開度に調整され、他方で回転ストッパ188がガイド部184にそって駆動されることにより、各弁体の動作範囲が規制される。
【0060】
図3は、比例弁34が全開状態となり、比例弁37が閉弁状態となる場合を示している。第1制御弁4は、例えば特殊冷房運転時においてこのような状態をとる。したがって、特殊冷房運転時においては、圧縮機2から吐出された高温のガス冷媒が室内凝縮器3へ漏洩することが防止される。
【0061】
図4は、比例弁34および比例弁37がともに開弁状態となる場合を示している。第1制御弁4は、例えば通常冷房運転時において状況に応じてこのような状態をとり得る。すなわち、図3の状態からロータ172が一方向に回転駆動(正転)されることにより弁駆動体132が比例弁37の開弁方向に変位し、図4に示すように比例弁34と比例弁37がともに開弁した状態となる。すなわち、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって上昇し、伝達部材136がその係止部160にてばね受け152に係止された状態で、弁作動体134が弁駆動体132を吊り上げるようにして変位させる。なお、図4は比例弁34および比例弁37がともに全開となった状態を示している。比例弁37の弁開度は、共用弁体138が図3に示す位置と図4に示す位置との間の範囲で駆動されることで調整される。そのように比例弁37の弁開度が調整される状態においては、比例弁34の全開状態が維持される。なお、ここでいう「全開状態」とは、弁開度が大きくなって冷媒の流量が飽和状態となることを意味する。
【0062】
図5は、比例弁34が閉弁状態となり、比例弁37が全開状態となる場合を示している。第1制御弁4は、例えば暖房運転時においてこのような状態をとる。図4の状態からロータ172がさらに同方向に回転駆動されることにより弁駆動体132が比例弁34の閉弁方向に変位し、図5の状態となる。したがって、暖房運転時においては、圧縮機2から吐出された高温のガス冷媒が室外熱交換器5へ漏洩することが防止される。なお、図5の状態からロータ172を逆方向に回転駆動することにより、比例弁34を開弁させることができることは言うまでもない。比例弁34の弁開度は、共用弁体138が図5に示す位置と図4に示す位置との間の範囲で駆動されることで調整される。
【0063】
なお、図5には、比例弁34が閉弁した後にロータ172が所定量回転した状態が示されている。すなわち、比例弁34の閉弁と同時にロータ172が停止しなくとも、図示のように伝達部材136がばね受け156から離間することで弁座122に過度な面圧がかかるのを防止する遊び機構が設けられている。同様に、図3には比例弁37が閉弁した後にロータ172が所定量回転した状態が示されている。すなわち、比例弁37の閉弁と同時にロータ172が停止しなくとも、図示のように伝達部材136がばね受け152から離間することで弁座146に過度な面圧がかかるのを防止する遊び機構が設けられている。
【0064】
このように、比例弁34と比例弁37は共用のモータユニット102により駆動され、一方の開度の制御状態において他方は全開状態に維持される。それにより、複合弁でありながら、その一方の比例弁の開度を正確に制御することが可能となっている。
【0065】
図6は、第2制御弁6の構成を表す断面図である。図7は、第2制御弁6の弁本体の部分を示す拡大断面図である。なお、各図において図3に示した第1制御弁4と実質的に同様の構成部分には同一の符号を付している。
図6に示すように、第2制御弁6は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体201と2つのモータユニット102,202とを組み付けて構成されている。弁本体201は、有底筒状のボディ204に小口径の比例弁31と小口径の比例弁32とを同軸状に収容するとともに、その軸線に対して小口径の比例弁33を直角方向に組み付けるようにして構成されている。比例弁31と比例弁32は共用のモータユニット102により駆動され、比例弁33はもう一つのモータユニット202により駆動される。なお、モータユニット202は、モータユニット102と同様の構成を有する。2つのモータユニット102,202は、互いの軸線が直交するようにボディ204に組み付けられている。第2制御弁6は、比例弁31および比例弁32の一方の閉弁状態を維持しつつ他方の開度が設定開度に調整される複合弁として構成され、また、その複合弁と比例弁33とを共用のボディ204に組み込んだ集合弁として構成されている。
【0066】
ボディ204の一方の側部には導入ポート210、導入出ポート212および導出ポート214が設けられている。導入ポート210は第4通路24を介して室内凝縮器3に連通し、導入出ポート212は第3通路23を介して室外熱交換器5に連通し、導出ポート214は第3通路23を介して蒸発器7に連通する。すなわち、ボディ204には、導入ポート210と導入出ポート212とをつなぐ第1内部通路と、導入ポート210と導出ポート214とをつなぐ第2内部通路と、導入出ポート212と導出ポート214とをつなぐ第3内部通路が形成される。第1分岐通路25および第2分岐通路26は、ボディ204の内部に形成されている。
【0067】
図7に示すように、ボディ204の中間部には、段付円筒状の区画部材220が上下に延在するように組み付けられている。そして、区画部材220の上端開口部に上方から弁体218が挿通され、下端開口部に下方から弁体224が挿通されている。また、区画部材220の側面には、上方から導入ポート210に連通する連通孔226、導入出ポート212に連通する連通孔228、導出ポート214に連通する連通孔230が設けられている。区画部材220の下端部はボディ204との間に室229を形成している。区画部材220の外周面における連通孔226と連通孔228との間、連通孔228と連通孔230との間、連通孔230と室229との間には、それぞれシール用のOリングが嵌着されている。
【0068】
区画部材220における連通孔226と連通孔228とをつなぐ通路には弁孔232が形成され、その上端開口端縁により弁座234が形成されている。弁孔232は、区画部材220の上端開口部よりも内径がやや小さく構成されている。弁体218が上方から弁座234に接離することにより比例弁32の開度が調整される。また、区画部材220における連通孔228と連通孔230とをつなぐ通路には弁孔236が形成され、その下端開口端縁により弁座238が形成されている。弁孔236は、区画部材220の下端開口部よりも内径がやや小さく構成されている。弁体224が下方から弁座238に接離することにより比例弁31の開度が調整される。また、区画部材220には、その軸線からずれた位置にその軸線に平行な複数の貫通孔240が設けられている。貫通孔240の一端は導入ポート210に連通し、他端は室229に連通している。そして、その複数の貫通孔240を貫通するように長尺状の伝達ロッド242がそれぞれ配設されている。なお、本実施形態では区画部材220の軸線の周りに3つの貫通孔240と3つの伝達ロッド242が設けられるが(同図には1つのみ表示)、変形例においては貫通孔240と伝達ロッド242を2つずつ設けてもよい。
【0069】
ボディ204の内方には、小径の弁体218、小径の弁体224、および弁作動体134が同軸状に配設されている。弁体218と弁体224は、軸線に沿って対向配置されている。弁体218は段付円柱状をなし、その下半部が区画部材220の上端開口部に摺動可能に挿通され、その先端部が弁座234に対向配置されている。弁体218は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔232に挿抜される。そして、弁体218が弁座234に接離することにより比例弁32の開度が調整される。弁体218の上半部はやや縮径されて弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部235となっている。弁作動体134の上端部と係止部235との間には、弁体218を閉弁方向(係止部235を弁作動体134の底部に押しつける方向)に付勢するスプリング244(「付勢部材」として機能する)が介装されている。
【0070】
ボディ104の上端部には、円板状の区画部材124が配設されている。区画部材124は、弁本体101の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材124の中央部には軸受部126が設けられている。区画部材124と区画部材220との間には、円板状の伝達部材246が配設されている。伝達部材246の中央には貫通孔が設けられ、弁体218の上半部がこれを貫通している。伝達部材246の下面は伝達ロッド242の上端面に当接している。一方、伝達部材246と区画部材124との間には、伝達部材246を下方に付勢するスプリング248が介装されている。このような構成により、伝達部材246に作用する付勢力は伝達ロッド242を介して下方に伝達される。
【0071】
弁体224は段付円柱状をなし、区画部材220の下端開口部に摺動可能に挿通され、その上端部が弁座238に対向配置されている。弁体224の外周面にはシール部材としてのOリング251が嵌着されている。弁体224は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔236に挿抜される。そして、弁体224が弁座238に接離することにより比例弁31の開度が調整される。弁体224の下端部には半径方向外向きに延出するフランジ部249が設けられ、室229に配置されている。フランジ部249の上面は伝達ロッド242の下端面に当接している。一方、フランジ部249の下面とボディ204の底部との間には、弁体224を閉弁方向に付勢するスプリング250(「付勢部材」として機能する)が介装されている。このような構成により、伝達ロッド242による伝達力が弁体224に伝達されるようになる。
【0072】
一方、ボディ204の下半部には、側方から比例弁33が組み込まれている。比例弁33は、比例弁32と近似した構造を有する。すなわち、ボディ204の下半部には、段付円筒状の区画部材260が左右に延在するように組み付けられている。区画部材260は、区画部材220の上半部と区画部材124とを一体化したような構造を有する。区画部材260には、弁体262および弁作動体134が同軸状に挿通されている。また、区画部材260には、導入ポート210に連通する連通孔264、導出ポート214に連通する連通孔266が設けられている。
【0073】
区画部材260における連通孔264と連通孔266とをつなぐ通路には弁孔268が形成され、その開口端縁により弁座270が形成されている。弁孔268が弁座270に接離することにより比例弁33の開度が調整される。弁体262は段付円柱状をなし、その一端側が区画部材260に摺動可能に挿通され、その先端部が弁座270に対向配置されている。弁体262は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔268に挿抜される。そして、弁体262が弁座270に着脱することにより比例弁33が開閉される。弁体262の他端側はやや縮径されて弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部235となっている。弁作動体134の上端部と係止部235との間には、弁体262を閉弁方向に付勢するスプリング244が介装されている。
【0074】
以上のように構成された第2制御弁6は、モータユニット102,202の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、例えば通常暖房運転時など比例弁31を閉弁状態、比例弁32を開弁状態、比例弁33を閉弁状態とする場合、図6および図7に示す状態とされる。このとき、弁作動体134が伝達部材246から離間しているため、モータユニット102の駆動力が弁体224に伝わることはない。一方、スプリング244の付勢力により係止部235が弁作動体134の底部に押しつけられており、弁体218が弁作動体134に対して下死点に位置するため、モータユニット102の駆動力がそのまま弁体218に作用する。その結果、弁体218は、ロータ172の回転量に応じて変位し、比例弁32が設定開度に制御される。すなわち、弁体218が全開状態と全閉位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁32の開度が調整される。
【0075】
一方、特定暖房運転時など比例弁31を閉弁状態とし、比例弁32および比例弁33を開弁状態とする場合、図6の状態からモータユニット202のロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、弁体262が弁座270から離間し、比例弁33が開弁状態となる。弁体262は、ロータ172の回転量に応じて変位し、比例弁33が設定開度に制御される。すなわち、弁体262が全開状態と全閉位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁33の開度が調整される。
【0076】
特殊暖房運転時など比例弁31および比例弁32をともに閉弁状態とし、比例弁33を開弁状態とする場合、図6の状態からモータユニット102のロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって下降し、弁体218が弁座234に着座し、比例弁32が閉弁状態となる。このとき、弁作動体134が伝達部材246に当接するまでにロータ172の回転を停止させることで、比例弁31についても閉弁状態を維持することができる。なお、弁体218が弁座234に着座すると、弁体218がその反力によりスプリング244を押し縮めることで弁作動体134に対して相対変位可能となるため、弁体218が弁座234に対して過度に押しつけられることはない。また、図6の状態からモータユニット202のロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、弁体262が弁座270から離間し、比例弁33が開弁状態となる。弁体262は、ロータ172の回転量に応じて変位し、比例弁33が設定開度に制御される。すなわち、弁体262が全開状態と全閉位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁33の開度が調整される。
【0077】
通常冷房運転時など比例弁31を開弁状態とし、比例弁32を閉弁状態とし、比例弁33を開弁状態とする場合、モータユニット102のロータ172をさらに同方向に回転駆動する。それにより、モータユニット102による駆動力が弁作動体134、伝達部材246および伝達ロッド242を介して弁体224に伝達され、弁体224が押し下げられ、比例弁31が開弁状態となる。すなわち、弁体224が全閉状態と全開位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁31の開度が調整される。
【0078】
特殊冷房運転時など比例弁31を開弁状態とし、比例弁32および比例弁33を閉弁状態とする場合、モータユニット202のロータ172を他方向に回転駆動(逆転)する。それにより、比例弁33については図6の閉弁状態に戻す。
【0079】
このように、比例弁31と比例弁32は、共用のモータユニット102により駆動され、一方の開度の制御状態において他方は閉弁状態に維持される。それにより、複合弁でありながら、その一方の比例弁の開度を正確に制御することが可能となっている。一方、比例弁33については個別のモータユニット202により駆動するため、比例弁31および比例弁32とは独立して弁開度が制御可能となっている。
【0080】
図8〜図10は、第3制御弁9の構成および動作を表す断面図である。なお、各図において図3に示した第1制御弁4と実質的に同様の構成部分には同一の符号を付している。 図8に示すように、第3制御弁9は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体301とモータユニット102とを組み付けて構成されている。弁本体301は、有底筒状のボディ304に大口径の比例弁35と大口径の比例弁36とを同軸状に収容して構成され、一方の弁の全開状態を維持しつつ他方の弁の開度を設定開度に調整する比例弁として構成されている。
【0081】
ボディ304の一方の側部には第1導入ポート310および第2導入ポート312が設けられ、他方の側部には導出ポート314が設けられている。第1導入ポート310は第5通路27に連通し、第2導入ポート312はバイパス通路28に連通し、導出ポート314は下流側通路に連通する。その下流側通路はアキュムレータ8の入口につながっている。すなわち、ボディ304には、第1導入ポート310と導出ポート314とをつなぐ第1内部通路と、第2導入ポート312と導出ポート314とをつなぐ第2内部通路が形成される。
【0082】
ボディ304は、その上端開口部から底部に向けてその上部、中央部、下部の内径が段階的に小さくなる穴形状を有し、その上部に第2導入ポート312が設けられ、中央部に導出ポート314が設けられ、下部に第1導入ポート310が設けられている。そして、下部の上端開口部に弁孔320が設けられ、その上端開口縁により弁座325が形成されている。
【0083】
ボディ304の上部には、円筒状の区画部材330が内挿されている。区画部材330は、ボディ304に同心状に組み付けられており、その第2導入ポート312との対向面には内外を連通する連通孔が形成されている。また、区画部材330の下端面とボディ304との間に挟まれるようにシール部材としてのOリング322が設けられている。
【0084】
ボディ304の上端部には、円板状の区画部材323が配設されている。区画部材323は、弁本体301の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材323の中央部には軸受部126が設けられている。区画部材323の下面には、リング状の弁座部材336が嵌着されるとともに、ガイド部材338が固定されている。ガイド部材338は、複数の脚部(本実施形態では3本)がボディ304に同心状に立設されるようにして構成されている。ガイド部材338の底部が弁座部材336に部分的にオーバラップすることにより、弁座部材336の脱落が防止されている。
【0085】
ボディ304の内方には、弁駆動体340、弁作動体134および伝達ロッド345が同軸状に(同一軸線上に)配設されている。区画部材323の軸受部126の内周面には雌ねじ部が設けられている。弁作動体134の下端部には、伝達ロッド345が連結されている。弁駆動体340は段付円筒状をなし、大径の弁体部342と大径のガイド部344とが小径の縮径部346を介して一体に設けられている。
【0086】
弁体部342は、その上端開口部に設けられた第1弁体350と、下端部に設けられた第2弁体352とを一体に含む。第1弁体350が弁座部材336に接離することにより比例弁35の開度が調整される。また、第2弁体352が弁座325に接離することにより比例弁36の開度が調整される。弁体部342の側部には、その内部と導出ポート314とを連通させる連通孔が設けられている。弁体部342の外周部のシールは、Oリング322により実現されている。Oリング322は、弁体部342を摺動可能に支持するガイド部を構成する。ガイド部344は円板状をなし、その外周面がボディ304の下部内周面に摺動可能に支持されている。すなわち、ボディ304の下部は、ガイド部344を摺動可能に支持するガイド孔347を形成する。縮径部346は、弁孔320を貫通するように配設されている。
【0087】
伝達ロッド345は段付円柱状をなし、弁駆動体340を軸線方向に貫通している。伝達ロッド345の上端部は小径化されて弁作動体134の底部を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部355となっている。弁作動体134の底部と係止部355との間には、伝達ロッド345を上方に付勢するスプリング348(「付勢部材」として機能する)が介装されている。このため、通常の状態においては図示のように、弁作動体134と伝達ロッド345とが互いを係止して一体化した状態となる。
【0088】
伝達ロッド345の下半部は小径化されて弁駆動体340の縮径部346を貫通し、その先端部が半径方向外向きに加締められて係止部となっている。伝達ロッド345の下半部の基端と第2弁体352との間には、弁駆動体340を下方に付勢するスプリング349(「付勢部材」として機能する)が介装されている。このため、通常の状態においては図示のように、伝達ロッド345と弁駆動体340とが互いを係止して一体化した状態となる。
【0089】
なお、スプリング348,349は、いずれもその荷重が弁駆動体340とOリング322との間の摺動抵抗(弁駆動体340の摺動力)よりも大きくなるように設定されている。それにより、弁作動体134と弁駆動体340とが一体動作しているときにスプリング348,349が縮むことなく、比例弁35および比例弁36の弁開度を正確に制御できるようになっている。
【0090】
ここで、本実施形態においては、第1弁体350の弁部の有効径Aと弁駆動体340の摺動部の有効径Bとが等しく設定され、また、弁孔320の有効径Cとガイド孔347の有効径Dとが等しく設定されているため、弁駆動体340に作用する冷媒圧力の影響が実質的にキャンセルされる。このため、冷媒圧力の変化によりモータユニット102に過度な負荷がかかることがなく、弁開度の制御を安定に行うことができる。
【0091】
以上のように構成された第3制御弁9は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。すなわち、車両用冷暖房装置の運転状態に応じて比例弁35を閉弁状態とし、比例弁36を全開状態とする場合、図8に示す状態とされる。第3制御弁9は、例えば特殊冷房運転時、通常冷房運転時、特殊暖房運転時などにおいてこのような状態をとる。
【0092】
一方、比例弁35または比例弁36の開度を調整する場合、図8の状態からロータ172を一方向に回転駆動(正転)する。それにより、図9に示すように、ロータ172とともに回転する弁作動体134がねじ機構によって下降し、弁駆動体340(つまり第1弁体350および第2弁体352)を押し下げるようにして変位させ、比例弁35が開弁状態となる。なお、図9には比例弁35および比例弁36の双方が全開となる中立状態が示されているが、いずれか一方の開度を小さくしてその開度を制御することにより、その小さくした側の弁を流れる冷媒の流量を調整することができる。このとき、開度が大きくなる側の弁は、その開度が大きくなっても冷媒の流量は飽和状態となり、図9に示す状態と実質的に変わらない全開状態を維持する。すなわち、第1弁体350が図8に示す全閉状態と図9に示す全開位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁35の開度が調整される。
【0093】
また、比例弁36の開度を調整する場合、図9の状態からロータ172をさらに同方向に回転駆動する。それにより、図10に示すように、弁駆動体340がさらに押し下げられ、第2弁体352が弁座325に近接する方向に動作し、比例弁36の開度が調整される。このとき、第1弁体350が図9の状態からさらに開弁方向に駆動されるが、比例弁35は、その開度が大きくなっても冷媒の流量は飽和状態となり、図9に示す状態と実質的に変わらない全開状態を維持する。比例弁36を閉弁させる場合には、図10の状態からロータ172をさらに同方向に回転駆動させればよい。すなわち、第2弁体352が全閉状態と図9に示す全開位置との間の範囲で駆動されることにより比例弁36の開度が調整される。
【0094】
なお、本実施形態では、比例弁36の閉弁と同時にロータ172が停止しなくとも、スプリング349が押し縮められて伝達ロッド345が弁駆動体340に対して相対変位することで、弁座325に過度な面圧がかかるのを防止する遊び機構が設けられている。同様に、比例弁35の閉弁と同時にロータ172が停止しなくとも、スプリング348が押し縮められて弁作動体134が伝達ロッド345に対して相対変位することで、弁座336に過度な面圧がかかるのを防止する遊び機構が設けられている。
【0095】
なお、本実施形態では図示のように、比例弁35については弁座部材336やOリング322を配置して閉弁時のシール性を厳密に確保するのに対し、比例弁36についてはそのような構成としていない。これは、図2(D)に示したように、比例弁36を閉弁させるのは通常暖房運転時のみであるところ、その場合には図示のように蒸発器7が休止状態にあり、また、比例弁31および比例弁33が閉弁状態であるため、比例弁36には実質的に冷媒が流れ込んでこないためである。また、この運転は室外熱交換器5が低温状態で低圧となるときに行われるため、室外熱交換器5側からの逆流の心配も少ないためである。なお、このようにOリング322を比例弁35側のみに設け、比例弁36側には設けないようにすることで、弁駆動体340に作用するシール部材からの摺動抵抗を抑えることができ、モータユニット102に過度な負荷をかけずに済むといったメリットもある。
【0096】
このように、比例弁35と比例弁36は、共用のモータユニット102により駆動され、一方の開度の制御状態において他方の全開状態が維持される。それにより、複合弁でありながら、その一方の比例弁の開度を正確に制御することが可能となっている。
【0097】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0098】
上記実施形態では、第1制御弁4、第2制御弁6および第3制御弁9を、それぞれ複数の比例弁に対して共用のボディと共用のモータユニットを備える複合弁として構成する例を示した。変形例においては、比例弁31〜37のそれぞれを個別のボディとモータユニットとを備える制御弁として独立に構成してもよい。また、上記実施形態ではアクチュエータとしてステッピングモータを採用する例を示したが、少なくともいずれかの複合弁のアクチュエータをソレノイド等により構成してもよい。比例弁31〜37のそれぞれを独立に構成する場合には、その少なくともいずれかの比例弁のアクチュエータをソレノイド等により構成してもよい。
【0099】
上記実施形態では、図6に示したように、第2制御弁6として、比例弁31および比例弁32に対して比例弁33を直角方向に組み付ける構成例を示した。変形例においては、比例弁31および比例弁32に対して比例弁33を平行に組み付けるようにしてもよい。それにより、モータユニット102とモータユニット202とをその軸線が互いに平行となるように共用のボディに組み付けてもよい。すなわち、第2制御弁6としての集合弁の構成を車両への設置スペースに応じて変化させてもよい。
【0100】
上記実施形態では、車両用冷暖房装置100として、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として並列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成されるものを例示した。変形例においては、これとは異なるシステム構成としてもよい。図11は、変形例に係る車両用冷暖房装置のシステム構成を表す図である。同図において、図1に示した実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付している。
【0101】
すなわち、図11に示すように、室内凝縮器3と室外熱交換器5とが凝縮器として直列に動作可能に構成され、また、蒸発器7と室外熱交換器5とが蒸発器として並列に動作可能に構成される車両用冷暖房装置200としてもよい。車両用冷暖房装置200では、冷房運転時(除湿時)に冷媒が循環する第1冷媒循環通路、暖房運転時に冷媒が循環する第2冷媒循環通路、暖房運転中の除湿時に冷媒が循環する第3冷媒循環通路が形成される。
【0102】
第1冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第2冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→室外熱交換器5→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。第3冷媒循環通路は、圧縮機2→室内凝縮器3→蒸発器7→アキュムレータ8→圧縮機2のように冷媒が循環する通路である。室外熱交換器5を流れる冷媒の流れは、第1冷媒循環通路と第2冷媒循環通路とで逆方向となっている。
【0103】
具体的には、圧縮機2の吐出室は第1通路221を介して室内凝縮器3の入口に接続され、室内凝縮器3の出口は第2通路222を介して室外熱交換器5の一方の出入口に接続されている。室外熱交換器5の他方の出入口は第3通路23を介して蒸発器7の入口に接続され、蒸発器7の出口は第5通路27を介してアキュムレータ8の入口に接続されている。これら第1通路221、第2通路222、第3通路23および第5通路27により第1冷媒循環通路が形成される。
【0104】
第2通路222には、室内凝縮器3の側から第1分岐点、第2分岐点、第3分岐点が設けられている。すなわち、第2通路222は、第1分岐点にてバイパス通路225に分岐し、第2分岐点にてバイパス通路223に分岐し、第3分岐点にてバイパス通路28に分岐している。そして、バイパス通路225が第3通路23に接続されることにより、室内凝縮器3から導出された冷媒の少なくとも一部を室外熱交換器5を迂回させて蒸発器7へ供給可能な第3冷媒循環通路が形成される。また、バイパス通路223が室外熱交換器5の他方の出入口に接続され、バイパス通路28がアキュムレータ8の入口に接続されることにより、第2冷媒循環通路が形成される。
【0105】
室内凝縮器3の出口と室外熱交換器5の一方の出入口との間には第1制御弁404が設けられている。また、室外熱交換器5の他方の出入口と蒸発器7の入口との間には第2制御弁406が設けられている。さらに、室外熱交換器5の一方の出入口と蒸発器7の出口との間には第3制御弁9が設けられている。第1制御弁404は、比例弁32および比例弁34に対して共用のボディと共用のモータユニットを備える複合弁として構成される。第2制御弁406は、比例弁31および比例弁33に対して共用のボディと共用のモータユニットを備える複合弁として構成される。第3制御弁9は、上記実施形態と同様である。なお、別の変形例においては、本変形例の比例弁31〜36のそれぞれを個別のボディとモータユニットを備える制御弁として独立に構成してもよい。
【0106】
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【0107】
上記実施形態においては、補助凝縮器として室内凝縮器を設ける例を示した。変形例においては、補助凝縮器を室外熱交換器とは別に設けられる熱交換器として構成してもよい。その熱交換器は、例えば車室外に配置され、冷却水(ブラインなどでもよい)を利用して熱交換を行うものでもよい。具体的には、例えば図1における第1制御弁4と第2制御弁6との間に熱交換器を設ける一方、車室内に放熱器を配置し、これら熱交換器と放熱器とを冷却水の循環回路にて接続してもよい。あるいは、図11におけるバイパス通路225への分岐点と圧縮機2との間に熱交換器を設ける一方、車室内に放熱器を配置し、これら熱交換器と放熱器とを冷却水の循環回路にて接続してもよい。その循環回路には冷却水を汲み上げるポンプを設けてもよい。このようにすれば、圧縮機2から第1制御弁4へ向かう高温の冷媒と、循環回路を循環する冷却水との間で熱交換を行うことができる。このような構成においても、圧縮機2から吐出された冷媒を熱交換器により凝縮させて循環させることが可能となる。
【符号の説明】
【0108】
2 圧縮機、 3 室内凝縮器、 4 第1制御弁、 5 室外熱交換器、 6 第2制御弁、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 9 第3制御弁、 31,32,33,34,35,36,37 比例弁、 100 車両用冷暖房装置、 101 弁本体、 102 モータユニット、 104 ボディ、 110 導入ポート、 112 第1導出ポート、 114 第2導出ポート、 120 弁孔、 122 弁座、 132 弁駆動体、 134 弁作動体、 136 伝達部材、 138 共用弁体、 140 ガイド部、 144 弁孔、 146 弁座、 148 背圧室、 172 ロータ、 173 ステータ、 200 車両用冷暖房装置、 201 弁本体、 202 モータユニット、 204 ボディ、 210 導入ポート、 212 導入出ポート、 214 導出ポート、 218,224 弁体、 232 弁孔、 234 弁座、 236 弁孔、 238 弁座、 242 伝達ロッド、 244 スプリング、 246 伝達部材、 262 弁体、 268 弁孔、 270 弁座、 301 弁本体、 304 ボディ、 310 第1導入ポート、 312 第2導入ポート、 314 導出ポート、 320 弁孔、 325 弁座、 340 弁駆動体、 342 弁体部、 344 ガイド部、 345 伝達ロッド、 350 第1弁体、 352 第2弁体、 404 第1制御弁、 406 第2制御弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
車室外に配置され、冷房運転時に冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する室外熱交換器と、
車室内に配置されて冷媒を蒸発させる室内蒸発器と、
前記室外熱交換器とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器と、
いずれかの凝縮器といずれかの蒸発器とを配し、その凝縮器と蒸発器の組合せが異なる複数の冷媒循環通路と、
各冷媒循環通路における凝縮器と蒸発器との間に一つずつ配設され、その凝縮器から導入された冷媒を膨張させてその蒸発器に導出可能な複数の膨張装置と、
を備えることを特徴とする車両用冷暖房装置。
【請求項2】
前記圧縮機から吐出された冷媒が前記室外凝縮器および前記室内蒸発器を順次経由して前記圧縮機に戻るように循環可能な第1冷媒循環通路と、
前記圧縮機から吐出された冷媒が前記補助凝縮器および前記室外蒸発器を順次経由して前記圧縮機に戻るように循環可能な第2冷媒循環通路と、
前記圧縮機から吐出された冷媒が前記補助凝縮器および前記室内蒸発器を順次経由して前記圧縮機に戻るように循環可能な第3冷媒循環通路と、
前記第1冷媒循環通路に前記膨張装置として設けられ、その弁開度が電気的に設定可能な第1比例弁と、
前記第2冷媒循環通路に前記膨張装置として設けられ、その弁開度が電気的に設定可能な第2比例弁と、
前記第3冷媒循環通路に前記膨張装置として設けられ、その弁開度が電気的に設定可能な第3比例弁と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用冷暖房装置。
【請求項3】
前記第1冷媒循環通路における前記圧縮機と前記室外凝縮器との間に設けられ、その弁開度が電気的に設定可能な第4比例弁と、
前記第2冷媒循環通路における前記室外蒸発器と前記圧縮機との間に設けられ、その弁開度が電気的に設定可能な第5比例弁と、
前記第3冷媒循環通路における前記室内蒸発器と前記圧縮機との間に設けられ、その弁開度が電気的に設定可能な第6比例弁と、
をさらに備え、
前記第1比例弁、前記第2比例弁、前記第3比例弁、前記第4比例弁、前記第5比例弁および前記第6比例弁が、いずれもステッピングモータにより駆動される制御弁であることを特徴とする請求項2に記載の車両用冷暖房装置。
【請求項4】
前記第2冷媒循環通路において前記圧縮機と前記補助凝縮器とをつなぐ通路が、前記第3冷媒循環通路と共用の共用通路として構成されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用冷暖房装置。
【請求項5】
前記共用通路に設けられ、その弁開度が電気的に設定可能であり、ステッピングモータにより駆動される第7比例弁をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の車両用冷暖房装置。
【請求項6】
前記第4比例弁と前記第7比例弁とを収容する共用のボディと、前記第4比例弁と前記第7比例弁の開度を電気的に調整するための共用のステッピングモータと、前記ステッピングモータによる前記第4比例弁および前記第7比例弁の一方の開度の制御状態において他方を全開状態に維持可能な作動切替機構と、を有する複合弁を備えることを特徴とする請求項5に記載の車両用冷暖房装置。
【請求項7】
前記第5比例弁と前記第6比例弁とを収容する共用のボディと、前記第5比例弁と前記第6比例弁の開度を電気的に調整するための共用のステッピングモータと、前記ステッピングモータによる前記第5比例弁および前記第6比例弁の一方の開度の制御状態において他方を全開状態に維持可能な作動切替機構と、を有する複合弁を備えることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の車両用冷暖房装置。
【請求項8】
前記第1比例弁と前記第2比例弁とを収容する共用のボディと、前記第1比例弁と前記第2比例弁の開度を電気的に調整するための共用のステッピングモータと、前記ステッピングモータによる前記第1比例弁および前記第2比例弁の一方の開度の制御状態において他方を閉弁状態に維持可能な作動切替機構と、を有する複合弁を備えることを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の車両用冷暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−183905(P2012−183905A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48001(P2011−48001)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】